【実施例】
【0038】
以下、本発明の具体的な実験例を挙げながら本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は下記の実験例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、「部」及び「%」などの濃度は質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0039】
実験1(キャリア方式)
種々の接着剤用組成物から、いわゆるステインホール方式(キャリア方式)によって糊を調製し、段ボールを製造した。得られた糊(接着剤)について、下記のようにして粘度、耐水強度などを評価した。
【0040】
(糊液の調製)
40℃の水1450mlにコーンスターチ(未糊化澱粉、昭和コーンスターチ、敷島スターチ社製)120gを分散してスラリーとした後、50mlの水に溶解した水酸化ナトリウム25gを撹拌しながら加え、さらに40℃で20分間撹拌して糊化し、キャリア部を調製した。
【0041】
次に、このキャリア部に、下表(メイン部)に示す接着剤用組成物を添加して、糊液を調製した。具体的には、40℃の水1500mlに対して、接着剤用組成物を撹拌しながら加えた後、さらに20分間撹拌して糊液を得た。なお、メイン部に用いたコーンスターチはキャリア部に用いたコーンスターチと同じである。
【0042】
(アミログラフ糊化粘度の測定)
アミログラフ試験機(ブラベンダー社)を用いて、試料(サンプル)のブラベンダー粘度(単位:BU)を測定した。具体的には、澱粉の固形分濃度として6質量%となるよう、製糊直後の糊を水で希釈して試料とした。試料450mlを、アミログラフ試験機の測定容器に入れて装置に設置し、1.5℃/分で95℃まで昇温し、95℃到達後30分間同温度に保持した後、1.5℃/分で25℃まで降温し、この間の粘度を測定した(
図1)。
【0043】
また、(a)粘度上昇開始温度(F点)における粘度(A点)、および、(b)粘度上昇開始温度〜95℃における最高粘度、から粘度上昇値(b−a:ΔBU)を算出した(粘度特性)。この数値が小さいほど、粘度変化が少ないため糊として取り扱いやすい。
【0044】
(製糊後の糊液粘度の測定)
全国段ボール工業組合連合会のフォードカップ法に基づいて、製糊直後、製糊1時間後、製糊3時間後、製糊24時間後の糊液のフォードカップ粘度(FCV)を測定した。下表に40℃における流出時間(秒)を示す。
【0045】
(段ボールの製造と接着強度の測定)
上記のように調製した糊液(接着剤)をガラス板に0.1mmの厚みで塗布した後、50mm(段と平行方向)×85mm(段と直角方向)の大きさのAフルート片段ボール(Kライナー、280g/m
2)の試験片(5cm×10cm、10段)と強化中芯(180g/m
2)の片段ボール片を押し付け、中芯の段頂に接着剤を転移させた。これに、同じ寸法のKライナー(280g/m
2)を180℃に加熱した鉄板に乗せ、2〜7秒間、2.2kgの荷重をかけて圧着して、段ボールを製造した。糊液は、製糊後1時間以内に使用した。
【0046】
次いで、圧着したサンプルを25℃の水へ10分間浸した後、リングクラッシャー試験機(日本TMC社製)を用いて耐水接着強度を測定した。耐水強度は、試験片のすべての段がライナーから剥がれるのにかかった重量(kg)として測定した。
【0047】
【表1】
【0048】
結果を上記の表に示す。表から明らかなように、本発明に基づいて調製された接着剤(実験番号1−1〜1−6)は、比較例(実験番号1−7、1−8)と比較して2倍程度も耐水強度が大きくなっていた。また、製糊直後から24時間後までの粘度変化を追跡したところ、粘度は経時的に大きく変化することはなく、実用上、取り扱いやすいものであった。
【0049】
また、図からも明らかなように、実験1−7や実験1−8の糊液と比較して、本発明に係る糊液(実験1−1〜実験1−6)は大きな粘度上昇がなく、段ボール製造用の糊液として使用しやすいものであった。
【0050】
実験2(キャリア方式)
キャリア部に用いる澱粉の種類を変更した以外は実験1と同様にして、いわゆるステインホール方式(キャリア方式)によって糊を調製し、段ボールを製造した。
【0051】
本実験においては、澱粉として下記を使用した。
・コーンスターチ(敷島スターチ社製 昭和コーンスターチ:未糊化、実施例1と同じ)
・ハイアミロースコーンスターチ(敷島スターチ社製:未糊化)
・タピオカ澱粉(敷島スターチ社製 SF−500:未糊化)
・架橋タピオカ澱粉(敷島スターチ社製 SF−1900:未糊化)
・小麦澱粉(敷島スターチ社製 白木蓮:未糊化)
結果を下記の表に示す。表2から明らかなように、本発明に基づいて調製された接着剤(実験番号2−1〜2−4)は、比較例(実験番号2−5〜2−9)と比較して2倍程度も耐水強度が大きくなっており、これは、キャリア部の澱粉の種類を変更しても同様の結果だった。また、製糊直後から24時間後までの粘度変化を追跡したところ、粘度は経時的に大きく変化することはなく、実用上、取り扱いやすいものであった。
【0052】
一方、メイン部に未糊化澱粉と架橋剤を使用した実験2−1と比較すると、メイン部の澱粉として予め架橋した架橋タピオカ澱粉を使用した実験2−9では、耐水性(耐水強度)が低くなっていた。
【0053】
【表2】
【0054】
実験3(ノーキャリア方式)
種々の接着剤用組成物から、いわゆるノーキャリア方式によって糊を調製し、段ボールを製造した。本実験で使用した材料は実験1と同様であり、得られた糊(接着剤)については、実験1と同様にして粘度、耐水強度などを評価した。
【0055】
(糊液の調製)
下表に示す接着剤用組成物を添加して、糊液を調製した。具体的には、40℃の水2500mlに、コーンスターチと架橋剤(トリメタリン酸ナトリウムまたは無水アジピン酸)を分散してスラリーとした後、500mlの水に溶解した水酸化ナトリウム30gを撹拌しながら加えて粘度(FCV)が40秒になったら、ホウ酸14.5g、熱硬化性樹脂(ケトンホルムアルデヒド樹脂:アイカ工業社製 アイカアイボンVL−3340)50gを撹拌しながら添加し、さらに20分間撹拌して糊液を得た。
【0056】
結果を下記の表に示す。表から明らかなように、本発明に基づいて調製された接着剤(実験番号3−1〜3−6)は、比較例(実験番号3−7、3−8)と比較して2倍程度も耐水強度が大きくなっていた。また、製糊直後から24時間後までの粘度変化を追跡したところ、粘度は経時的に大きく変化することはなく、実用上、取り扱いやすいものであった。
【0057】
【表3】
【0058】
実験4(ノーキャリア方式)
澱粉の種類を変更した以外は実験3と同様にして、いわゆるノーキャリア方式によって糊を調製し、段ボールを製造した。本実験で使用した各種澱粉は、実験2で使用したものと同様である。
【0059】
結果を下記の表に示す。表4から明らかなように、本発明に基づいて調製された接着剤(実験番号4−1〜4−4)は、比較例(実験番号4−5〜4−9)と比較して2倍程度も耐水強度が大きくなっており、これは、澱粉の種類を変更しても同様の結果だった。また、製糊直後から24時間後までの粘度変化を追跡したところ、粘度は経時的に大きく変化することはなく、操業上、取り扱いやすいものであった。
【0060】
一方、未糊化澱粉と架橋剤を使用した実験4−1と比較すると、予め架橋した架橋タピオカ澱粉を使用して調整された実験4−9では、耐水性(耐水強度)が低くなっていた。
【0061】
【表4】
【0062】
実験5(キャリア方式)
メイン部の組成を変更した以外は実験1と同様にして、いわゆるステインホール方式(キャリア方式)によって糊を調製し、段ボールを製造した。変性ケトン樹脂としてはケトンホルムアルデヒド樹脂(アイカ工業社製 アイカアイボンVL−3340)、ポリアミド樹脂としてはポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(理研グリーン社製 カイメン557−H)を使用した。
【0063】
ただし、本実験においては、より長期間における糊液の安定性を評価するため、製糊後の糊液粘度を製糊直後から製糊48時間後まで追跡した。また、接着強度に関しては、製糊後48時間経過後の糊液を使用した以外は、実験1と同様に測定した。
【0064】
結果を下記の表に示す。表から明らかなように、本発明に基づいて調製された接着剤は、製糊後24時間を経過した後も粘度が大きく変化することがなく、好適なものであった。特に、実験番号5−5〜5−9に関しては、製糊後48時間を経過しても製糊直後の粘度からの変化が±10秒以内であり、粘度安定性が極めて良好で、実用上、取り扱いやすいものであった。
【0065】
【表5】
【0066】
実験6(ノーキャリア方式)
接着剤成分の組成を変更した以外は実験3と同様にして、いわゆるノーキャリア方式によって糊を調製し、段ボールを製造した。変性ケトン樹脂としてはケトンホルムアルデヒド樹脂(アイカ工業社製 アイカアイボンVL−3340)、ポリアミド樹脂としてはポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(理研グリーン社製 カイメン557−H)を使用した。
【0067】
ただし、本実験においては、より長期間における糊液の安定性を評価するため、製糊後の糊液粘度を製糊直後から製糊48時間後まで追跡した。また、接着強度に関しては、製糊後48時間経過後の糊液を使用した以外は、実験1と同様に測定した。
【0068】
結果を下記の表に示す。表から明らかなように、本発明に基づいて調製された接着剤は、製糊後24時間を経過した後も粘度が大きく変化することがなく、好適なものであった。特に、実験番号6−5〜6−9に関しては、製糊後48時間を経過しても製糊直後の粘度からの変化が±10秒以内であり、粘度安定性が極めて良好で、実用上、取り扱いやすいものであった。
【0069】
【表6】
【0070】
上記の実験結果から、本発明の接着剤用組成物が、ステインホール方式(キャリア方式)およびノーキャリア方式のいずれにおいても優れた耐水性を発揮することが確認できた。また、本発明の効果は、本発明の接着剤用組成物に含まれる澱粉の種類に関わらず発揮されることが確認できた。さらに、本発明の接着剤用組成物は、製糊後の経時的な安定性も優れたものであった。