(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6735761
(24)【登録日】2020年7月16日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】卵加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20200728BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-540043(P2017-540043)
(86)(22)【出願日】2016年9月16日
(86)【国際出願番号】JP2016077601
(87)【国際公開番号】WO2017047809
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-183474(P2015-183474)
(32)【優先日】2015年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 優
(72)【発明者】
【氏名】関 吾麿
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆司
(72)【発明者】
【氏名】野倉 望
(72)【発明者】
【氏名】相浦 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】関口 友治
(72)【発明者】
【氏名】佃 康貴
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄一朗
【審査官】
堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−210581(JP,A)
【文献】
特開平11−075778(JP,A)
【文献】
特開2001−157561(JP,A)
【文献】
特開2005−073572(JP,A)
【文献】
特開平10−313826(JP,A)
【文献】
特開2006−129803(JP,A)
【文献】
特開2016−101114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固卵を20〜90%含有し、下記の(a)(b)の手順で測定された値が5.5〜30
cmの卵加工品の製造方法であって、
粘度2000mPa・s以下の低粘度溶液中で卵混合液を凝固させる凝固卵含有溶液調製
工程と、
前記凝固卵含有溶液の粘度を油脂含有乳化液を添加することにより増粘させる増粘工程と
を有する、
卵加工品の製造方法。
(a)直径5cm、高さ5cmのセルクルに、品温10℃の卵加工品を100g絞り出す
。
(b)前記セルクルを取り外し、30秒後の卵加工品の直径を測定する、ただし、30秒
後の卵加工品が真円状でない場合は、直径が最大となる部分を測定した値とする。
【請求項2】
請求項1に記載の卵加工品の製造方法であって、
前記増粘工程で用いる油脂含有乳化液中の増粘剤の量が卵加工品全体に対し0.2〜10
%である、
卵加工品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の卵加工品の製造方法であって、
前記油脂含有乳化液の量が卵加工品全体に対し10〜40%である、
卵加工品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の卵加工品の製造方法であって、
前記油脂含有乳化液に用いた油脂の量が油脂含有乳化液に対し1〜30%である、
卵加工品の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の卵加工品の製造方法であって、
前記低粘度溶液の量が、
凝固卵含有溶液調製工程で加える卵混合液1質量部に対して1〜4質量部である、
卵加工品の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の卵加工品の製造方法であって、
前記凝固卵が薄膜状である、
卵加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品の効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動性を有する卵加工品は、丼の素やスクランブルエッグ、オムレツの中具等様々な用途に利用される。これらは、とろっとした食感や見た目が好まれ、ファストフード店やホテルの朝食ブッフェにおいて人気のメニューであるが、厨房で大量に作るには手間がかかりすぎるため、温めただけで提供することができる卵加工品に対する需要が高い。
これまで、そのような卵加工品をより手作りに近づけるため、例えば凝固卵を熱水中で作り、水切りしたものを用いる等の工夫がなされている(特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1,2のような方法で得られる卵加工品は、手作りに非常に近い見た目ものになるが、凝固卵と液部を別々に作る必要が生じ、製造効率が悪いことが問題であった。
凝固卵を作った溶液をそのまま最終製品の卵加工品の液部として用いることができれば別々に作る必要はないが、薄膜状の凝固卵を作るためには多量の溶液が必要であり、それをそのまま卵加工品に使ってしまうと、凝固卵を多く含有し、卵加工品全体がとろっとした状態の製品にすることができない。
仮に多量の溶液をそのまま卵加工品に使うと、多量の溶液に粘度を付与して全体をとろっとさせるため、多量の増粘剤を溶液に添加しなくてはならないが、多量の増粘剤を、ダマを生じさせることなく添加するには、大量の液体に溶かして濃度を下げなくてはならない。ここでも液量が増えると、結果として卵加工品全体における凝固卵の割合が下がってしまい、凝固卵を多く含む卵加工品が得られなくなってしまう。一方で、多量の増粘剤を少量液体に溶かして添加すると、ダマを生じてしまうことは明らかである。
このように、凝固卵が多く高粘度のとろっとした物性の卵加工品を効率よく製造するのは極めて困難であり、凝固卵と液部を別々に作って後で混合するという方法をとらざるをえなかった。
【0004】
しかし、この製造方法は、製造効率が悪いだけでなく、味にも悪影響を与えている。液卵を溶液中で凝固させると、溶液中に卵の成分が溶出する。そこから凝固卵だけを取り出して溶液を捨ててしまうため、溶液中の卵成分をも捨ててしまうことになる。そのため、この製造方法で得られた凝固卵は卵風味を逃がしていることになり、うまみ調味料などを添加して味を強める必要が生じ、手作りで感じられる卵素材由来の美味しさの再現を困難にしていた。
【0005】
特許文献3には、水切り工程をとることなく、高粘度で凝固卵の多い卵加工品を製造する方法について記載されているが、この方法では凝固卵の形状が手作り感のある形状にはならず、手作り感のある卵加工品を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−113534号公報
【特許文献2】特開平11−113535号公報
【特許文献3】特開2010−110285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、凝固卵含有溶液調製工程と増粘工程を工夫し、油脂含有乳化液を添加することにより、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品の効率的な製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)凝固卵を20〜90%含有し、下記の(a)(b)の手順で測定された値が5.5〜30cmの卵加工品の製造方法であって、
粘度2000mPa・s以下の低粘度溶液中で卵混合液を凝固させる凝固卵含有溶液調製工程と、
前記凝固卵含有溶液の粘度を増粘させる増粘工程とを有し、
前記低粘度溶液、あるいは前記増粘前後の凝固卵含有溶液のいずれかの溶液部分に油脂含有乳化液を添加する、
卵加工品の製造方法。
(a)直径5cm、高さ5cmのセルクルに、品温10℃の卵加工品を100g絞り出す、
(b)前記セルクルを取り外し、30秒後の卵加工品の直径を測定する、ただし、30秒後の卵加工品が真円状でない場合は、直径が最大となる部分を測定した値とする、
(2)(1)に記載の卵加工品の製造方法であって、
前記増粘工程で用いる増粘剤の量が卵加工品全体に対し0.2〜10%である、
卵加工品の製造方法。
(3)(1)又は(2)に記載の卵加工品の製造方法であって、
前記油脂含有乳化液の量が卵加工品全体に対し10〜40%である、
卵加工品の製造方法。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の卵加工品の製造方法であって、
前記油脂含有乳化液に用いた油脂の量が油脂含有乳化液に対し1〜30%である、
卵加工品の製造方法。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の卵加工品の製造方法であって、
前記低粘度溶液の量が、
凝固卵含有溶液調製工程で加える卵混合液1質量部に対して1〜4質量部である、
卵加工品の製造方法。
(6)(5)(1)乃至(5)のいずれかに記載の卵加工品の製造方法であって、
前記凝固卵が薄膜状である、
卵加工品の製造方法。
(7)凝固卵を20〜90%含有し、下記の(a)(b)の手順で測定された値が5.5〜30cmの卵加工品であって、
油脂を卵加工品全体に対して0.5〜15%、
増粘剤を卵加工品全体に対して0.2〜10%含む、
卵加工品、
(a)直径5cm、高さ5cmのセルクルに、品温10℃の卵加工品を100g絞り出す、
(b)前記セルクルを取り外し、30秒後の卵加工品の直径を測定する、ただし、30秒後の卵加工品が真円状でない場合は、直径が最大となる部分を測定した値とする、
(8)(7)に記載の卵加工品であって、
油脂含有乳化液を10〜40%含有する、
卵加工品、
(9)(7)又は(8)に記載の卵加工品であって、
前記凝固卵が増粘多糖類を0.05〜7%含有する、
卵加工品、
(10)(7)乃至(9)に記載の卵加工品であって、
前記凝固卵が厚さ3mm以下の薄膜状である、
卵加工品、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、
味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品の効率的な製造方法を提供することができ、
卵加工品市場のさらなる市場拡大に貢献することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の卵加工品を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
<本発明の特徴>
本発明は、凝固卵を20〜90%含有し、高粘度の卵加工品の製造方法であって、
粘度2000mPa・s以下の低粘度溶液中で卵混合液を凝固させる凝固卵含有溶液調製工程と、
前記凝固卵含有溶液の粘度を増粘させる増粘工程とを有し、
前記低粘度溶液、あるいは前記増粘前後の凝固卵含有溶液のいずれかの溶液部分に油脂含有乳化液を含む、卵加工品の製造方法であることに特徴を有する。
【0013】
<卵加工品>
本発明の卵加工品は、凝固卵、増粘剤及び油脂を含み、粘度の高いものである。
本発明で得られる卵加工品は、スクランブルエッグ、丼の素、オムレツの中具、料理のトッピングなどの用途に用いることができる。
【0014】
<粘度測定方法>
本発明の卵加工品は、下記(a)(b)の手順で卵加工品のまとまり特性を示した。
なお、測定は、地面に対して水平且つ平らな台の上で行うものとする。
(a)直径5cm、高さ5cmのセルクルに、品温10℃の卵加工品を100g絞り出す。
(b)前記セルクルを取り外し、30秒後の卵加工品の直径を測定する。ただし、30秒後の卵加工品が真円状でない場合は、直径が最大となる部分を測定した値とする。
【0015】
<卵加工品の粘度>
本発明の卵加工品は、上述した段落[0014]の手順で測定された値が5.5cm以上であり、さらに8cm以上であるとよい。卵加工品の粘度が前記下限値を下回ると、とろっとした食感にならず、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を得ることができない。
また、上述した手順で測定された値の上限は30cm以下であり、さらに25cm以下であるとよい。前記上限値を上回ると、凝固卵と液部がなじまず、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品が得られない。
なお、卵スープのようにほとんど粘度がないものを本方法で測定した場合の値は40cm以上となる。
【0016】
<凝固卵の含有量>
本発明の卵加工品に含まれる凝固卵の含有量は、卵加工品全体に対して20%以上であり、さらに30%以上であるとよい。凝固卵の割合が前記下限を下回ると、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品とすることができない。
また、凝固卵の含有量は、卵加工品全体に対して90%以下であり、80%以下であるとよく、さらに60%以下であるとよく、特に55%以下であるとよい。凝固卵の割合が前記上限を上回ると、凝固卵を作るための溶液量を確保できず、本発明の製造方法で味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を製造することができない。
なお、卵混合液を溶液中で凝固させると、卵混合液凝固時に溶液中の水分が卵混合液に一部含まれるため、得られる凝固卵の量は、用いた卵混合液量の約1.5倍程度の量になる。
【0017】
<凝固卵の形状>
卵加工品に含まれる凝固卵の形状としては、薄膜状、棒状、鱗片状、薄肉偏平状の小片、大豆状等の様々な形状が考えられるが、本発明の卵加工品に含まれる凝固卵は薄膜状であるとよく、その厚みは3mm以下、さらに2mm以下であるとよい。凝固卵が前述したような形状であることにより、卵加工品全体の粘度を高め、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品が得られ易い。
さらに、凝固卵すべてが前述した形状でなくとも、前述した厚みの凝固卵が、卵加工品に含まれる凝固卵のうち70%以上、さらに80%以上であることにより、より手作り感にあふれた卵加工品を得ることができる。
【0018】
<凝固卵の大きさ>
本発明の卵加工品に含まれる凝固卵の大きさ(面積)は、5mm
2以上であるとよく、さらに10mm
2以上であるとよい。また、上限は、500mm
2であるとよく、さらに300mm
2であるとよい。凝固卵の大きさ(面積)が前記範囲内であることにより、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品が得られ易い。
さらに、凝固卵すべてが前述した大きさ(面積)でなくとも、前述した大きさ(面積)の凝固卵が、卵加工品に含まれる凝固卵のうち70%以上、さらに80%以上であることにより、より手作り感にあふれた卵加工品を得ることができる。
【0019】
<凝固卵の含有量と大きさの測定方法>
本発明の卵加工品における凝固卵の含有量と大きさ(面積)は以下のように測定する。
まず、卵加工品200gをフルイ(目開き30メッシュ、18−8ステンレススチール製)にあけた後、凝固卵に付着した液部を清水により洗い流す。続いて、フルイの裏側から水分をふきとり、フルイの上に残った凝固卵の重量を測定し、凝固卵の含有量とした。ただし、卵加工品が凝固卵以外の固形物を含む場合は、凝固卵以外の固形物を除いて重量を測定するものとする。
さらに、フルイ上に残った凝固卵をバットの上に取り出し、大きさ(面積)を測定した。凝固卵が丸まっている場合には、広げて大きさ(面積)の測定を行った。
【0020】
<凝固卵含有溶液調製工程>
本発明の卵加工品の製造方法は、まず、加熱した低粘度溶液に卵混合液を加えることにより凝固卵含有溶液を調製する凝固卵含有溶液調製工程を有する。
凝固卵含有溶液調製工程では、卵混合液の全てを凝固させる必要はなく、一部凝固しているものでもよい。
凝固卵は、前述したような形状に調製するとよく、調製方法としては、例えば、撹拌等により流れを作った溶液に卵混合液を加えることにより、薄膜状の凝固卵を得ることができる。
凝固卵調製時の溶液温度は、薄膜状の凝固卵が得られ易いことから、65℃以上とすることができ、さらに、70℃以上とすることができる。また、上限は、100℃以下とすることができ、さらに、90℃以下とすることができる。
【0021】
<低粘度溶液の粘度>
凝固卵含有溶液調製工程において卵混合液を凝固する低粘度溶液の粘度は、2000mPa・s以下であり、1500mPa・s以下であるとよい。低粘度溶液の粘度が前記上限を上回ると、溶液中に凝固卵をたくさん作ることができないか、薄膜状にならず不自然な形状の凝固卵になってしまうために手作り感ある卵加工品を得ることができない。
また、粘度の下限は特に制限されないが、0.1mPa・s以上とすることができ、さらに1mPa・s以上とすることができる。
【0022】
<低粘度溶液の粘度の測定方法>
凝固卵含有溶液調製工程において卵混合液を凝固する低粘度溶液の粘度の測定は、BH形粘度計により測定する。
測定は、品温80℃にて行い、回転数4rpmの条件で、ローターNo.6を使用し、測定開始後ローターが5回転した時の示度により求めた。
【0023】
<低粘度溶液の成分>
凝固卵含有溶液調製工程において卵混合液を凝固する低粘度溶液は、清水を用いてもよいし、粘度が上述した範囲内であれば、各種成分を含むものであってもよい。
溶液が含みうる成分は特に制限されないが、例えば、醤油、砂糖、糖アルコール、食塩、グルタミン酸ナトリウム等の各種調味料、小麦粉、米粉等の穀粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、物理的及び/又は酵素的及び/又は化学的処理を施した澱粉等の澱粉類、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等の増粘多糖類、グリシン等の静菌剤、有機酸、有機酸塩等のpH調整剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤、香料などが挙げられる。
【0024】
<低粘度溶液と卵混合液の割合>
凝固卵含有溶液調製工程において、卵混合液を凝固する低粘度溶液の量の下限は、加える卵混合液1部に対して1部以上、さらに1.5部以上、さらに1.8部以上であるとよい。
本工程においては、卵混合液に対する低粘度溶液量は多ければ多いほど手作り感のある凝固卵を容易に作ることができるが、低粘度溶液量を増やすと、卵加工品全体として凝固卵の含有量を高くするため、後の増粘工程において使用できる水分量が極端に制限されてしまう。
その結果、ダマを生じて不自然な見た目の卵加工品になってしまう可能性が高くなる。
そのような観点から、低粘度溶液量の上限としては、4部以下、さらに3.5部以下、さらに3部以下であるとよい。
卵混合液と低粘度溶液の割合が前記範囲内であることにより、高粘度で味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品が得られ易い。
【0025】
<卵混合液>
凝固卵含有溶液調製工程で用いる卵混合液としては、鶏卵を割卵して得られる液卵黄、液卵白、液全卵、乾燥卵を水戻ししたもの又はそれらを完全にもしくは一部混合したものをはじめ、それらを殺菌処理、冷凍処理、酵素処理、脱糖処理、脱コレステロール処理したもの等を用いることができる。
また、前記卵混合液には、必要に応じて他の成分を含有させることができる。例えば、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、トレハロース、糖アルコール、澱粉を加水分解して製したデキストリン、サイクロデキストリン、還元デキストリン、イヌリン等の糖類、小麦粉、米粉等の穀粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の生澱粉、物理的及び/又は酵素的及び/又は化学的処理を施した澱粉等の澱粉類、大豆油、菜種油、コーン油、べに花油、綿実油、オリーブオイル等の油脂類、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等の増粘多糖類、β―カロテン、クチナシ色素、アトナー色素などの着色成分等が挙げられる。
ただし、手作り感を損なわないため、卵混合液中の液卵以外の成分の含有量は、30%以下であるとよく、さらに25%以下であるとよい。
なお、見た目も味も手作り感のある凝固卵が得られ易いことから、本工程で用いる卵混合液は、増粘多糖類を0.05%以上、さらに0.1%以上含有するとよい。また、増粘多糖類含有量の上限としては、1%以下、さらに0.7%以下含有するとよい。
【0026】
<増粘工程>
本発明の卵加工品の製造方法は、凝固卵調製後の、凝固卵を含んだままの凝固卵含有溶液に対して増粘剤を混合することで凝固卵含有溶液の粘度を増粘させる、増粘工程を有する。
増粘剤を混合する方法は特に限定しないが、凝固卵含有溶液に添加した際に、増粘剤がダマになりにくいことから、予め増粘剤を清水等の溶液に溶かしたものを凝固卵含有溶液に添加するとよく、特に工程が簡略化し、生産効率を上げることができることから、後述の油脂含有乳化液に予め溶かしたものを添加すると良い。
また増粘剤を清水に溶かして添加する場合、凝固卵含有溶液に加えた際にダマを生じやすいため、溶液中の増粘剤の量は50%以下がよく、さらに30%以下がよい。
さらに、増粘剤を油脂含有乳化液に溶かして添加する場合、油脂乳化液中の増粘剤の量は1%以上であるとよく、1.5%以上であるとよく、さらに2%以上であるとよい。また、上限としては、油脂乳化液中の増粘剤の量は20%以下であり、18%以下であるとよく、さらに15%以下であるとよい。
増粘剤の量が前記上限を上回ると、凝固卵含有溶液に加えた際にダマを生じてしまうため、高粘度の卵加工品を製造することができない。
【0027】
<増粘工程に用いる増粘剤>
本発明の増粘工程で用いる増粘剤は、凝固卵含有溶液を増粘させ粘度を上昇させるものであれば特に限定されず、例えば、澱粉類や増粘多糖類などが挙げられる。
より具体的には、澱粉類としては、小麦粉、米粉等の穀粉、片栗粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉等の生澱粉、これらを常法によりα化処理、湿熱処理等の物理的処理を行った澱粉、酵素処理を行った澱粉、更に、常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理等の化学的処理の1種又は2種以上を行った架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酸化澱粉等の加工澱粉などから選ばれる1種又は2種以上用いることができ、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を製造し易いことから、加工澱粉を含有するとよく、中でもヒドロキシプロピル澱粉を含有するとよい。
また増粘多糖類としては、キサンタンガム、グァーガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等が挙げられ、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を製造し易いことから、キサンタンガム、グァーガム、アルギン酸ナトリウムを含有するとよい。
【0028】
<増粘工程に用いる増粘剤の添加量>
本発明の増粘工程に用いる増粘剤の添加量は、本発明の卵加工品の粘度が上述の値になるように添加すればよく、本発明の卵加工品全体に対して0.2%以上とするとよく、さらに0.5%以上になるように調整するとよい。また、上限としては、本発明の卵加工品全体の10%以下とするとよく、さらに8%以下になるように調整するとよい。
増粘剤含有量が前記範囲内であることにより、高粘度の卵加工品を効率的に製造しやすく、見た目も味も手作り感にあふれた卵加工品が得られ易い。
増粘剤含有量が前記上限を上回ると、卵加工品の粘度が高すぎるため、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を製造し難い。
また、増粘剤含有量が前記下限を下回ると、卵加工品に十分な粘度を付与することができない。
【0029】
本発明の増粘剤を添加するタイミングは、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を製造しやすく、また効率的に卵加工品を製造しやすいことから、増粘工程時に一度に行えばよいが、本発明の効果を失わない範囲で、一部を他のタイミングで加えてもよい。
【0030】
<油脂含有乳化液>
本発明の油脂含有乳化液とは油脂を含有した乳化状液であれば特に限定はない。
本発明の油脂含有乳化液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した以外の成分を含んでもよく、例えば、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、トレハロース、糖アルコール、澱粉を加水分解して製したデキストリン、サイクロデキストリン、還元デキストリン、イヌリン等の糖類、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等の増粘多糖類、β―カロテン、クチナシ色素、アトナー色素などの着色成分等が挙げられる。
本発明の油脂含有乳化液を添加するタイミングは特に限定しないが、卵加工品の製造工程で粘度2000mPa・s以下の低粘度溶液、あるいは増粘前後の凝固卵含有溶液のいずれかの溶液部分に油脂含有乳化液を添加することができる。
また工程が簡略化し、生産効率を上げることができることから、予め増粘剤等と混合し、増粘工程で用いるとよい。
さらに、高温であると乳化状態が壊れやすいため、温度が90℃以下になった凝固卵含有溶液に添加することが好ましい。
【0031】
<油脂含有乳化液の添加量>
卵加工品に用いる油脂含有乳化液の添加量の下限は、卵加工品全体に対し10%以上含有するように添加するとよく、さらに15%以上、さらに20%以上であるとよい。また、上限は、卵加工品全体に対し40%以下含有するように添加するとよく、さらに35%以下、さらに30%以下であるとよい。
油脂含有乳化液の添加量が前記範囲内であることにより、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を製造し易い。
【0032】
<油脂含有乳化液の粘度>
本発明の油脂含有乳化液の粘度は、50mPa・s以上であるとよく、さらに100mPa・sであるとよい。また、上限としては、30000mPa・s以下であるとよく、さらに20000mPa・s以下であるとよい。
油脂含有乳化液の粘度が前記範囲内であることにより、味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品を製造し易い。
なお、粘度の測定は、BH型粘度計を用いて行う。具体的には、品温20℃にて行い、回転数4rpmの条件で、ローターNo.6を使用し、測定開始後ローターが5回転した時の示度により求めた。
【0033】
<油脂含有乳化液に用いる油脂>
上記油脂含有乳化液に用いる油脂は、食用ならば特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、べに花油、綿実油、オリーブオイル等の食物油脂又は、バター、生クリーム等の動物油脂から選ばれる1種又は2種以上用いることができる。
【0034】
<油脂含有乳化液に用いる油脂の含有量>
本発明の油脂含有乳化液に用いる油脂の含有量は、前記油脂含有乳化液に対し1%以上であるとよく、さらに2%以上になるように調整するとよい。また、上限としては、前記油脂含有乳化液に対して30%以下とするとよく、さらに25%以下になるように調整するとよい。
油脂含有量が前記範囲内であることにより、凝固卵と液部がなじみやすく、高粘度で味も見た目も手作り感にあふれた卵加工品が得られ易い。
【0035】
<卵加工品全体に対する油脂の含有量>
本発明の卵加工品全体に対する油脂含有量は、本発明の卵加工品全体に対して0.5%以上とするとよく、さらに1.1%以上になるように調整するとよい。また、上限としては、本発明の卵加工品全体の15%以下とするとよく、さらに7%以下になるように調整するとよい。
油脂含有量が前記範囲内であることにより、見た目も味も手作り感にあふれた卵加工品が得られ易い。
【0036】
<その他の工程>
本発明の卵加工品の製造方法は、上述した凝固卵含有溶液調製工程と増粘工程以外の工程を有してもよい。たとえば、得られた卵加工品に対して冷凍処理・加熱殺菌処理等を施すことができ、味と見た目の手作り感を維持する観点から、冷凍処理を施して、冷凍卵加工品とすることができる。
また、高温であると乳化状態が壊れやすいため、レトルト処理等は適さない。
【実施例】
【0037】
以下に本発明の卵加工品を実施例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0038】
[実施例1]
配合表1の割合で混合した卵混合液200gを低粘度溶液520gに注加し、厚み1mmの薄膜状凝固卵を調製し、凝固卵含有溶液を得た。
なお、ここでは低粘度溶液として清水を用い、粘度は1mPa・sであった。
また、低粘度溶液の液温は85℃であり、卵混合液1部に対して2.6部であった。
続いて、前記凝固卵含有溶液に、配合表2の割合で原料をミキサーで混合することにより調製した粘度4000mPa・sの増粘させた油脂含有乳化液280gを加え、凝固卵含有溶液を増粘させることで卵加工品1000gを調製し、200gずつ小袋に充填・密封後冷凍した。
得られた卵加工品は段落[0014]に記載の方法で示す値(以下、まとまりを示す値)が11cmであり、卵加工品全体に対して凝固卵は30%、増粘剤3.5%と油脂3.4%含有されており、油脂含有乳化液中の油脂の含有量は、油脂含有乳化液に対して12%であった。
さらに、凝固卵の形状は厚さ1mmの薄膜状であり、凝固卵のうち85%が、5〜300mm
2の大きさであった。
【0039】
[配合表1(卵混合液)]
【0040】
[配合表2(油脂含有乳化液)]
【0041】
続いて、実施例1で調製した卵加工品を湯煎で60℃に温め、見た目と味の評価を行った。
その結果、手作りにかなり近い見た目であった。また、卵素材由来の味を強く感じ、手作りにかなり近い味の卵加工品であった。
【0042】
[比較例1]
油脂含有乳化液の状態が本発明の卵加工品に与える影響を検証するため、比較例1の卵加工品を調製した。
具体的には、実施例1の油脂含有乳化液に含まれる油脂を清水に置き換え、キサンタンガム0.2%を足して粘度を調整した以外は実施例1と全く同様に卵加工品を調製し、比較例1とした。
比較例1で調製した油脂を含有しない乳化液の粘度は、4200mPa・sであった。
また、得られた卵加工品は、まとまりを示す値が13cmであった。
また凝固卵の含有量とその形状は実施例1と同様であった。
【0043】
続いて、実施例1と同様に、比較例1の卵加工品の見た目と味の評価を行った。
その結果、比較例1は、見た目は液部が凝固卵部とうまくなじまず、また色も本物らしさに欠け、不自然であった。
また、味についても、卵素材由来の味が感じられず、とても手作りとは思えない味であった。
すなわち、実施例1及び比較例1より、低粘度溶液、あるいは増粘前後の凝固卵含有溶液のいずれかの溶液部分に、油脂を含んだ乳化液を添加することが重要あると理解できる。
【0044】
[試験例1]
低粘度溶液の粘度及び増粘させた油脂含有乳化液中の増粘剤含有量による卵加工品への影響を検証するため、試験例1をおこなった。
試験例1では、低粘度溶液に含まれる増粘剤含有量と増粘させた油脂含有乳化液中の増粘剤含有量を変更した実施例2乃至4、比較例2を調製した。
具体的には、実施例1の増粘させた油脂含有乳化液中の増粘剤含有量(増粘工程の増粘剤含有量)と低粘度溶液中の増粘剤含有量を表1のように変更し、その増減分は清水に置き換えた以外は実施例1と同様に卵加工品を調製した。
なお、低粘度溶液に用いた増粘剤はヒドロキシプロピル澱粉を用い、低粘度溶液中の清水に置き換え増粘剤を用いた。
また実施例4において油脂含有乳化液は配合表2で用いた油脂含有乳化液の配合割合はそのままで、400gを用いた。
得られた比較例2及び実施例2乃至4の卵加工品は、すべて凝固卵を30%含み、油脂含有乳化液の粘度は50〜30000mPa・sの範囲内、卵加工品のまとまりを示す値は6〜30cmの範囲内であった。
また、凝固卵の形状および油脂含有乳化液中の油脂の含有割合は実施例1と同じであった。
卵加工品全体中の油脂含有量は、比較例2および実施例2,3は、実施例1と同じ3.4%であり、実施例4は4.8%であった。
【0045】
[表1]
【0046】
[評価基準(見た目)]
◎:手作りにかなり近い見た目であった。
○:手作りに近い見た目であった。
△:やや不自然であるが問題のない範囲であった。
×:不自然であり、とても手作りには見えなかった。
【0047】
[評価基準(味)]
◎:卵素材由来の味を強く感じ、手作りにかなり近い味であった。
○:卵素材由来の味を感じ、手作りに近い味であった。
△:卵素材由来の味をやや感じ難いが、問題のない範囲であった。
×:卵素材由来の味が感じられず、とても手作りとは思えない味であった。
【0048】
比較例2及び実施例2乃至4の卵加工品について、実施例1と同様に見た目と味の評価を行い、表1に示した。
なお、評価には、上記評価基準を用いた。
その結果、比較例2は、低粘度溶液の粘度が非常に高く、手作りのような薄膜状凝固卵を作ることができず、得られた卵加工品は不自然な見た目であり、とても手作りには見えないものであった。
一方で、実施例2,3は、見た目、味ともに手作りに近いものが得られたが、実施例1ほどではなく、実施例4は増粘剤含有量がやや多いために卵素材由来の味をやや感じ難いが、問題のない範囲であった。
以上より、卵加工品全体に対する増粘剤含有量は、0.2〜10%であるとよく、さらに0.5〜8%であるとよいことが理解できる。
以上より、低粘度溶液の粘度は、2000mPa・s以下であり、1500mPa・s以下であるとよいことが理解できる。
また、実施例の低粘度溶液の粘度は、2000mPa・s以下であり、卵加工品のまとまりを示す値は6〜30cmの範囲内であり、油脂含有乳化液の粘度は50〜30000mPa・sの範囲内であった。
【0049】
[試験例2]
油脂含有乳化液中の油脂含有量が卵加工品への影響を検証するため、試験例2をおこなった。
試験例2では、油脂含有乳化液中の油脂含有量を表2のように変更した以外は実施例1と同様に、実施例5乃至7を調製した。得られた実施例5乃至7の卵加工品は、すべて凝固卵を30%含み形状は実施例1と同様であった。
また、油脂含有乳化液の粘度は50〜30000mPa・sの範囲内であり、卵加工品のまとまりを示す値は6〜30cmの範囲内であった。
【0050】
[表2]
【0051】
続いて、得られた卵加工品を実施例1と同様に、試験例1の評価基準を用いて見た目と味の評価を行った。
表2に記載した評価から、油脂含有乳化液に対する油脂含有量は、1〜30%であるとよく、さらに2〜25%であるとよいことが理解できる。また、卵加工品全体に対する油脂含有量は、0.5〜15%であるとよく、さらに1.1〜7%であるとよいことが理解できる。
【0052】
[試験例3]
凝固卵を調製する低粘度溶液の粘度及び低粘度溶液と卵混合液の比率が本発明の卵加工品に与える影響を調べるため、実施例8,9の卵加工品を調製した。
具体的には、実施例1の凝固卵含有溶液調製工程で用いた低粘度溶液を、表3のものに置き換え、また、卵混合液の量と低粘度溶液の量を表3に記載の量に変更した以外は実施例1と同様に卵加工品を調製し実施例8,9とした。
なお、実施例8、実施例9において卵混合液は配合表2で用いた卵混合液の配合割合はそのままで、各例に沿って増量し用いた。
実施例8の卵加工品は、卵加工品全体に対する凝固卵の含有量は36%であり、実施例9の卵加工品は、卵加工品全体に対する凝固卵の含有量は45%であった。
また、実施例8,9は、まとまりを示す値、凝固卵の形状、油脂の含有量は、実施例1と同じであり、増粘剤の含有量は卵加工品全体に対し、実施例8が3.7%、実施例8が3.6%であった。
【0053】
[表3]
【0054】
続いて、得られた卵加工品を実施例1と同様に、試験例1の評価基準を用いて見た目と味の評価を行った。
表3に示された実施例1,8の結果から、溶液中の成分によって、本発明の効果が左右されないことが理解できる。
また、実施例9は、溶液に対する卵混合液の量が多いために溶液の温度が低下し、凝固させるのに時間を要した上に、凝固卵の形状が薄膜状にならなかった。すなわち、卵混合液1部に対する溶液の量は、1部未満であることにより、見た目の手作り感が得られ難く、また、効率的に卵加工品を製造しにくいことがわかる。さらに、凝固卵の形状が薄膜状であることにより、本発明の効果が得られ易いことも理解できる。
【0055】
[実施例10]
卵混合液中のキサンタンガムを清水に置き換えた以外は実施例1と同様に卵加工品を調製し、実施例10とした。
得られた実施例10の卵加工品はまとまりを示す値、油脂含有乳化液の粘度、凝固卵の含有量、増粘剤と油脂の含有量は、すべて実施例1と同じであった。
続いて、実施例1と同様に見た目と味の評価を行った結果、卵素材由来の味を強く感じられ、見た目も手作りに近いものであったが、実施例1ほどは手作り感のある見た目ではなかった。
【0056】
[実施例11,12]
油脂含有乳化液中のヒドロキシプロピル澱粉を、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、また、生澱粉(馬鈴薯澱粉)に変更した以外は実施例1と同様に卵加工品を調製し、実施例11,12とした。
得られた実施例11,12の卵加工品は、まとまりを示す値、油脂含有乳化液の粘度、凝固卵の含有量及び形状、増粘剤と油脂の含有量は、すべて実施例1と同じであった。
続いて、実施例1と同様に見た目と味の評価を行った結果、アセチル化アジピン酸架橋澱粉を用いた実施例11は、卵素材由来の味を強く感じられ、見た目も手作りに近いものであったが、実施例1ほどは手作り感のある見た目ではなかった。また、生澱粉に変更した実施例12も、卵素材由来の味を強く感じられた。一方で、見た目は、若干分離がみられやや不自然だが、問題のない範囲であった。
すなわち、油脂含有乳化状液に用いる増粘剤としては、加工澱粉がよく、中でもヒドロキシプロピル澱粉がよいことが理解できる。
【0057】
[実施例13]
卵混合液と低粘度溶液と油脂含有乳化液の配合比率と、卵混合液の配合を変更した以外は実施例1と同様に卵加工品を調製し、実施例13とした。
具体的には、配合表1の清水の量を39gから24gに減らし、その減少分をヒドロキシプロピル澱粉15gにし、実施例13で用いる卵混合液とした。
上記配合と同じ配合比率の卵混合液440gを低粘度溶液440gに注加し、厚み3mmの薄膜状凝固卵を調製し、凝固卵含有溶液を得た。なお、ここでは低粘度溶液として清水を用い、粘度は1mPa・sであった。また、溶液の液温は85℃であり、卵混合液1部に対して1部であった。
続いて、前記凝固卵含有溶液に、配合表2の割合で原料をミキサーで混合することにより調製した粘度4000mPa・sの増粘させた油脂含有乳化液120gを加え、溶液を増粘させることで卵加工品1000gを調製し、200gずつ小袋に充填・密封後冷凍した。
得られた卵加工品は、まとまりを示す値が6cmであり、卵加工品全体に対して凝固卵は80%、増粘剤4.9%と油脂1.4%含有されており、油脂含有乳化液中の油脂の含有量は、油脂含有乳化液に対して12%であった。
さらに、凝固卵の形状は厚さ3mmの薄膜状であり、凝固卵のうち70%が、5〜300mm
2の大きさであった。
続いて、実施例1と同様に見た目と味の評価を行った結果、卵加工品全体に対して凝固卵を80%含有する実施例13は、凝固卵の含有量が多いせいか、やや不自然な見た目であるが問題のない範囲であった。また味については、卵混合液中の澱粉含有量が多いせいか、卵素材由来の味をやや感じ難いが、問題のない範囲であった。