【文献】
Int. J. Pharm. Sci. Rev. Res.,2010年,Vol.5, No.1,p.67-76
【文献】
Frontiers in Cell and Developmental Biology,2018年 2月15日,Vol.6:10,p.1-12,doi:10.3389/fcell.2018.00010
【文献】
Prostaglandins, Leukotrienes and Essential Fatty Acids,2004年,Vol.70,p.521-528
【文献】
J. Soc. Cosmet. Jpn.,2012年,Vol.46,p.188-196
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
血管は、血管内皮細胞と血管壁細胞(血管平滑筋細胞やペリサイト)とが、細胞外マトリックスを介して、間接的に又は直接的に接着する構造を有しており、酸素及び栄養素を生体組織に供給して生体組織から老廃物を除去する機能を有する。
【0003】
一般に、血管の形成は、新たに血管が形成される血管発生(vasculogenesis)と、形成された既存の血管が伸長して分岐することにより、新たな血管のネットワークが形成される血管新生(angiogenesis)との2段階に分けられる。前者は、血管内皮増殖因子(VEGF)が作用し、脈管形成とよばれる血管の初期発生からその後の血管新生に至るまで非常に広い範囲の血管形成に関与するものであり、後者は、アンジオポエチン(Ang)が作用し、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着の制御、血管の構造的安定化に関与するものである。
【0004】
血管は通常の酸素状況では、血管内皮細胞とその周囲を裏打ちする血管壁細胞とが強固に接着しており、血管構造が安定に保たれているが、組織で低酸素が生じると血管壁細胞が血管内皮細胞から脱離し、無秩序な血管が増生することがある。このような現象は、血管新生と呼ばれており、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、高脂血症、高血圧などの血管病変を主体とした疾患において、しばしば観察される。
【0005】
これらの血管新生は、血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼTie2(Tyrosine kinase with Ig and EGF homology domain2)を活性化させることにより、抑制されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。血管狭小化あるいは血管拡大化の抑制が原因となって生じる虚血性疾患は、Tie2の活性化により、血管腔が拡大化されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、Tie2の活性化により、血管内皮細胞の細胞死を抑制することが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
このように、Tie2の活性化は、血管新生を抑制することができるだけでなく、血管を成熟化、正常化、及び安定化させることも知られている。
例えば、血管再生医療では、Tie2の活性化により、血管における血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管を成熟化させることが知られている。
例えば、腫瘍、糖尿病性網膜症等で観察される血管壁細胞が血管内皮細胞に接着しないことにより無秩序な血管が増生する疾患では、Tie2の活性化により、血管壁細胞を内皮細胞に接着させ、血管を正常化させることが知られている。
例えば、種々の細胞内外の血管構造を破綻させる環境因子に対しては、Tie2の活性化により、血管の不安定化を抑制し、血管を安定化させることが知られている。
【0007】
このようなTie2の活性化により血管新生を抑制する天然物としては、桂皮の抽出物などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの活性が不十分であるという問題がある。また、血管新生を抑制する物質としては、スラミン(ポリスルホン化ナフチルウレア化合物)が知られているが(例えば、特許文献2参照)、安全性に優れないという問題がある。
【0008】
血管やリンパ管を構成する内皮細胞には、クローディン−5(claudin−5、CLD5)と呼ばれるタイトジャンクション構成タンパク質の一つが存在し、細胞同士の密着結合に関与している。特に、リンパ管内皮細胞では、加齢とともにクローディン−5の発現が低下することが報告され、クローディン−5とリンパ管の安定化との関連が示唆されている。また、リンパ管内皮細胞にもTie2が発現し、リガンドであるアンジオポエチン−1(Ang1)により刺激されたリンパ管内皮細胞は、Ang1/Tie2シグナルを介してクローディン−5の発現を亢進することで、リンパ管の安定化に寄与することが明らかとなった(例えば、非特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、クローディン−5の産生を促進する物質については、未だ報告がなく、そのような活性を有する物質の同定が望まれている。
【0010】
一酸化窒素については、その生理学的作用又は薬理学的作用が注目されており、様々な研究が行われてきている。一酸化窒素は、生体内において、L−アルギニンと分子状酸素とを基質とし、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、テトラヒドロビオプテリンを補酵素として、一酸化窒素合成酵素(NOS)により生成される。NOSには、酵素学的にもタンパク質分子としても異なる3種のアイソフォームが存在し、それぞれ誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)が知られている。
【0011】
これらNOSのうちeNOSは、血管内皮細胞に局在しており細胞膜に結合している。このeNOSが活性化されると、一酸化窒素が継続的に産生され、その一酸化窒素は直ちに血管平滑筋に取り込まれ、グアニル酸シクラーゼを活性化する。これによりサイクリックグアノシン3’,5’−一リン酸(cGMP)が産生され、cGMP依存性タンパク質リン酸化酵素の活性化を介して血管平滑筋が弛緩されることにより、血管拡張作用を有し、血圧が低く保たれる。また、eNOSにより産生された一酸化窒素は、血液中の血小板に作用することにより、血小板の凝集を抑制するとともに、凝固した血液の血管壁への接着を阻害する(例えば、非特許文献4参照)。
【0012】
このような血管内皮型一酸化窒素合成酵素の産生を促進する天然物としては、ヒハツの抽出物などが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、その有効成分に関しては同定されておらず、更に高い活性を有する物質が望まれている。
【0013】
したがって、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、血管の安定化作用、クローディン−5産生促進作用、リンパ管の安定化作用、eNOS産生促進作用、血管拡張作用、及び血小板凝集抑制作用を有する安全性の高い物質について、速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたTie2活性化作用を有し、安全性の高いTie2活性化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血管新生抑制作用を有し、安全性の高い血管新生抑制剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血管の成熟化作用、血管の正常化作用又は血管の安定化作用を有し、安全性の高い血管の成熟化剤、血管の正常化剤又は血管の安定化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたクローディン−5産生促進作用を有し、安全性の高いクローディン−5産生促進剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたリンパ管の安定化作用を有し、安全性の高いリンパ管の安定化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたeNOS産生促進作用を有し、安全性の高いeNOS産生促進剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血管拡張作用を有し、安全性の高い血管拡張剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血小板凝集抑制作用を有し、安全性の高い血小板凝集抑制剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、血管の安定化作用、クローディン−5産生促進作用、リンパ管の安定化作用、eNOS産生促進作用、血管拡張作用、及び血小板凝集抑制作用の少なくともいずれかの作用を有し、安全性の高い医薬品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、ピペリジンアルカロイドの一種であるピペリンが、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、血管の安定化作用、クローディン−5産生促進作用、リンパ管の安定化作用、eNOS産生促進作用、血管拡張作用、及び血小板凝集抑制作用を有することを知見し、本発明を完成したものである。
【0018】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ピペリンを含有することを特徴とするTie2活性化剤である。
<2> ピペリンを含有することを特徴とする血管新生抑制剤である。
<3> ピペリンを含有することを特徴とする血管の成熟化剤、血管の正常化剤又は血管の安定化剤である。
<4> ピペリンを含有することを特徴とするクローディン−5産生促進剤である。
<5> ピペリンを含有することを特徴とするリンパ管の安定化剤である。
<6> ピペリンを含有することを特徴とする血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)産生促進剤である。
<7> ピペリンを含有することを特徴とする血管拡張剤である。
<8> ピペリンを含有することを特徴とする血小板凝集抑制剤である。
<9> 前記<1>に記載のTie2活性化剤、前記<2>に記載の血管新生抑制剤、前記<3>に記載の血管の成熟化剤、血管の正常化剤又は血管の安定化剤、前記<4>に記載のクローディン−5産生促進剤、前記<5>に記載のリンパ管の安定化剤、前記<6>に記載の血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)産生促進剤、前記<7>に記載の血管拡張剤、及び前記<8>に記載の血小板凝集抑制剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする医薬品組成物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のTie2活性化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れたTie2活性化作用を有し、安全性の高いTie2活性化剤を提供することができる。
本発明の血管新生抑制剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた血管新生抑制作用を有し、安全性の高い血管新生抑制剤を提供することができる。
本発明の血管の成熟化剤、血管の正常化剤又は血管の安定化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた血管の成熟化作用、血管の正常化作用又は血管の安定化作用を有し、安全性の高い血管の成熟化剤、血管の正常化剤又は血管の安定化剤を提供することができる。
本発明のクローディン−5産生促進剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れたクローディン−5産生促進作用を有し、安全性の高いクローディン−5産生促進剤を提供することができる。
本発明のリンパ管の安定化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れたリンパ管の安定化作用を有し、安全性の高いリンパ管の安定化剤を提供することができる。
本発明のeNOS産生促進剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れたeNOS産生促進作用を有し、安全性の高いeNOS産生促進剤を提供することができる。
本発明の血管拡張剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた血管拡張作用を有し、安全性の高い血管拡張剤を提供することができる。
本発明の血小板凝集抑制剤によると、従来における前記諸問題を解決し、優れた血小板凝集抑制作用を有し、安全性の高い血小板凝集抑制剤を提供することができる。
本発明の医薬品組成物によると、従来における前記諸問題を解決し、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、血管の安定化作用、クローディン−5産生促進作用、リンパ管の安定化作用、eNOS産生促進作用、血管拡張作用、及び血小板凝集抑制作用の少なくともいずれかの作用を有し、安全性の高い医薬品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(Tie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤)
本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤は、ピペリンを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0021】
前記Tie2活性化剤は、Tie2をリン酸化することで、その活性体(リン酸化Tie2)に変換するTie2活性化作用を有する。前記Tie2の活性化により、細胞内チロシンキナーゼドメインの自己リン酸化が惹起され、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着が誘導される。血管狭小化あるいは血管拡大化の抑制が原因となって生じる虚血性疾患では、Tie2の活性化により、血管腔が拡大化される。また、Tie2の活性化により、血管内皮細胞の細胞死を抑制することができる。
【0022】
前記血管新生抑制剤は、既存の血管から形成される新たな血管のネットワークを抑制する血管新生抑制作用を有する。低酸素状態では、Tie2の活性化が一時的に抑制され、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着が乖離し、接着が乖離された血管内皮細胞から新しい血管のネットワークが形成される。前記血管新生抑制剤は、このような血管壁細胞が内皮細胞に接着しないことによる無秩序な血管の増生を抑制することができる。
【0023】
前記血管の成熟化剤は、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管内環境因子(細胞及び液性因子)が容易に血管外に漏出しないように血管内皮細胞間の接着斑を形成する成熟化作用を有する。また、血管再生医療においては、Tie2の活性化により、血管における血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管を成熟化させることができる。
【0024】
前記血管の正常化剤は、血管内皮細胞同士の接着を高めて血管壁細胞の血管内皮細胞への裏打ちを促進することにより、血管透過性の破綻した血管や無秩序な血管の増生を招く異常な血管を、正常な状態にする正常化作用を有する。また、腫瘍、糖尿病性網膜症等で観察されるような血管壁細胞が血管内皮細胞に接着しないことによる無秩序な血管の増生を引き起こす疾患では、Tie2の活性化により、血管壁細胞を内皮細胞に接着させ、血管を正常化させることができる。
【0025】
前記血管の安定化剤は、既存の血管に対する障害、血管内皮細胞同士の解離、及び血管内皮細胞と血管壁細胞との解離を抑制して、血管内皮細胞の細胞死を抑制する血管の安定化作用を有する。また、種々の細胞内外の血管構造を破綻させる環境因子に対しては、Tie2の活性化により、血管の不安定化を抑制し、血管を安定化させることができる。
【0026】
前記クローディン−5産生促進剤は、血管やリンパ管を構成する内皮細胞においてクローディン−5の産生を促進する作用を有する。タイトジャンクション構成タンパク質の一つであるクローディン−5の産生促進により、内皮細胞同士の接着が安定化され、血管やリンパ管の構造を維持、安定化することができる。
【0027】
前記リンパ管の安定化剤は、リンパ管内皮細胞同士の接着を高めてリンパ管の構造を維持、安定化する作用を有する。前記クローディン−5産生の促進により、内皮細胞同士の接着が安定化され、リンパ管を安定化させることができる。また、リンパ管内皮細胞に発現するTie2の活性化によっても、クローディン−5の産生を促進でき、リンパ管の不安定化を抑制し、リンパ管を安定化させることができる。
【0028】
前記eNOS産生促進剤は、血管内皮細胞に局在する血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の産生を促進する作用を有する。前記eNOS産生の促進により、血管内皮における一酸化炭素の産生が促進され、cGMP依存性タンパク質リン酸化酵素の活性化を介して血管平滑筋が弛緩されることにより、血管が拡張され、血圧が低く保たれる。また、eNOSにより産生された一酸化窒素は、血液中の血小板に作用することにより、血小板の凝集を抑制するとともに、凝固した血液の血管壁への接着を阻害することができる。
【0029】
前記血管拡張剤は、前記eNOSにより産生された一酸化窒素によって血管平滑筋が弛緩されることにより、血管を拡張し、血圧を低く保つ作用を有する。
【0030】
前記血小板凝集抑制剤は、前記eNOSにより産生された一酸化窒素によって血小板内のcGMPレベルを上昇させることにより血小板凝集を抑制する作用を有する。
【0031】
<ピペリン>
前記ピペリンは、ピペリジンアルカロイドの一種であり、下記構造式(1)で表される化合物である。
前記ピペリンとしては、ピペリンを含む植物から製造したものであってもよく、市販品であってもよい。前記市販品としては、例えば、販売元コードNo.162−17241(和光純薬工業株式会社)などが挙げられる。
【化1】
【0032】
<<ピペリンの製造方法>>
前記ピペリンの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物抽出物調製工程、植物抽出物溶出工程、及び溶出物精製工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0033】
−植物抽出物調製工程−
前記植物抽出物調製工程は、植物の抽出物を調製する工程である。
前記植物としては、前記ピペリンを抽出できる植物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コショウ(Piper nigrum)、ヒハツ(Piper longum又はPiper retrofructum)、西アフリカ産のコショウ(Piper guineense)などが挙げられる。これらの中でも、ヒハツが好ましい。
【0034】
前記植物抽出物の抽出原料であるヒハツは、コショウ科コショウ属の蔓性の常緑木本であり、学名は、Piper longum又はPiper retrofructumである。前記ヒハツは、インドや東南アジアの地域から容易に入手可能である。前記ヒハツの果穂は、多肉質の円筒状であり、乾燥物は、香辛料として広く用いられている。
【0035】
前記植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。なお、前記植物抽出物には、前記植物の抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0036】
前記植物の抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記植物がヒハツの場合、ヒハツの果穂部、葉部、茎部、花部、根部などが挙げられる。これらの中でも、果穂部が好ましい。
【0037】
前記植物の抽出部位の調製方法としては、各部位を乾燥させた後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0038】
前記植物を抽出する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出する方法などが挙げられ、具体例としては、抽出溶媒を満たした処理槽内に、抽出原料としてのヒハツを投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分間〜2時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出する方法などが挙げられる。
【0039】
前記植物の抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる
【0040】
前記植物の抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。なお、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0041】
前記植物の抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1質量部〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0042】
前記植物の抽出条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、抽出溶媒量としては、抽出原料の5倍量〜15倍量(質量比)が好ましく、抽出溶媒として水を用いた場合には、50℃〜95℃で1時間〜4時間程度で抽出することが好ましく、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40℃〜90℃で30分間〜4時間程度で抽出することが好ましい。
【0043】
前記植物抽出物の精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液−液分配抽出、各種クロマトグラフィー、膜分離などの精製方法が挙げられる。
【0044】
−植物抽出物溶出工程−
前記植物抽出物溶出工程は、前記植物抽出物調製工程により得られた前記植物抽出物からピペリンを含有する成分を溶出して、ピペリンを含有する溶出物を得る工程である。
【0045】
前記植物抽出物からピペリンを含有する成分を溶出する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ヒハツ抽出物を極性溶媒により溶出する方法が好ましく、具体的には、前記ヒハツ抽出物をODSカラムに付して、50質量%エタノール、70質量%エタノール、メタノール、及びアセトンにより順次溶出する方法がより好ましい。
【0046】
−溶出物精製工程−
前記溶出物精製工程は、前記植物抽出物溶出工程により得られた溶出物からピペリンを精製する工程である。
【0047】
前記溶出物からピペリンを精製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記極性溶媒により得られた溶出物を粗精製して分取HPLCを用いてピペリンを分離精製する方法が好ましく、具体的には、得られた50質量%エタノール溶出物、70質量%メタノール溶出物、メタノール溶出物、及びアセトン溶出物のうち、メタノール溶出物をSiO
2カラムにより粗精製し、前記粗精製することにより得られた粗精製物から分取HPLCを用いてピペリンを単離して精製する方法が好ましい。
【0048】
<<ピペリンが製造されたことを確認する方法>>
前記ピペリンが製造されたことを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、単離された目的物の
13CNMRスペクトルを、超伝導多核種核磁気共鳴装置(JEOL JNM AL−400、日本電子株式会社製)を用いて解析することにより確認する方法が好ましい。
なお、
13CNMRスペクトルは、以下に示す通りである。
13C−NMRスペクトル(100MHz,CDCl
3)δC:165.3(C−1),148.1(C−4’),148.0(C−3’),142.4(C−3),138.1(C−5),131.0(C−1’),125.3(C−4),122.4(C−6’),120.0(C−2),108.4(C−5’),105.7(C−2’),101.2(OCH2O),46.9(C−5’’),43.1(C−1’’),26.5(C−4’’),25.3(C−2’’),24.7(C−3’’).
【0049】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料等、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。
また、前記その他の成分の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸加水分解物、コラーゲン、コラーゲン加水分解物、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、アスコルビン酸配糖体、コエンザイムQ10、プロポリス、ローヤルゼリー、ローヤルゼリー蛋白分解物、フコイダン、アロエ粉末、アロエ抽出物、ブルーベリー粉末、ブルーベリー抽出物、イソフラボン、ノニ粉末、ノニ抽出物、ニンニク粉末、ニンニク抽出物、ウコン粉末、ウコン抽出物、キトサン、グルコサミン、クロレラ粉末、クロレラ抽出物、カルニチン、マカ粉末、マカ抽出物、カシス粉末、カシス抽出物、ハナビラタケ粉末、ハナビラタケ抽出物、その他の植物の粉末及び/又は抽出物などが挙げられる。
【0050】
<用途>
本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤は、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、血管の安定化作用、クローディン−5産生促進作用、リンパ管の安定化作用、eNOS産生促進作用、血管拡張作用、及び血小板凝集抑制作用を有するため、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、高脂血症、高血圧等の血管病変を主体とした疾患、アトピー性皮膚炎、及び花粉症などのアレルギー性疾患に関する医薬品、並びにこれらの疾患に関する安全な予防薬として好適に用いることができる。
また、本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤は、消化管で消化されるようなものでないことが確認されているため、美容用飲食品、健康用飲食品等の飲食品として、幅広く用いることができる。
【0051】
本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤における前記ピペリンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ピペリンそのものを本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤として用いてもよい。Tie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤1mLあたりの前記ピペリンの含有量としては、0.01μg以上が好ましく、0.1μg以上100μg以下がより好ましく、1μg以上30μg以下が更に好ましく、5μg以上15μg以下が特に好ましい。
【0052】
本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤の投与形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口、外用などが挙げられる。
【0053】
本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与剤;軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤、頭髪化粧料等の外用剤などが挙げられる。
【0054】
(医薬品組成物)
本発明の医薬品組成物は、上述した本発明のTie2活性化剤、血管新生抑制剤、血管の成熟化剤、血管の正常化剤、血管の安定化剤、クローディン−5産生促進剤、リンパ管の安定化剤、eNOS産生促進剤、血管拡張剤、及び血小板凝集抑制剤の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じて医薬品に通常使用される添加剤を含有してもよい。
【0055】
本発明の医薬品組成物は、優れたTie2活性化作用、血管新生抑制作用、血管の成熟化作用、血管の正常化作用、血管の安定化作用、クローディン−5産生促進作用、リンパ管の安定化作用、eNOS産生促進作用、血管拡張作用、及び血小板凝集抑制作用の少なくともいずれかの作用を有するため、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、高脂血症、高血圧等の血管病変を主体とした疾患、アトピー性皮膚炎、及び花粉症などのアレルギー性疾患に関する医薬品、並びにこれらの疾患に関する安全な予防薬として好適に用いることができる。
また、本発明の医薬品組成物は、消化管で消化されるようなものでないことが確認されているため、美容用飲食品、健康用飲食品等の飲食品として、幅広く用いることができる。
【0056】
本発明の医薬品組成物における前記ピペリンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記ピペリンそのものを本発明の医薬品組成物として用いてもよいが、医薬品組成物1mLあたり、0.01μg以上が好ましく、0.1μg以上100μg以下がより好ましく、1μg以上30μg以下が更に好ましく、5μg以上15μg以下が特に好ましい。
【0057】
本発明の医薬品組成物の投与形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口、外用などが挙げられる。
【0058】
本発明の医薬品組成物の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与剤;軟膏等の外用剤などが挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
[試験例1:Tie2活性化作用(イムノアッセイ)試験]
(実施例1:ピペリン)
コンフルエントまで培養した正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、96ウェルプレートへ2.0×10
4細胞/0.1mL/ウェルとなるように播種し、低血清血管内皮細胞増殖用培地(倉敷紡績株式会社製、Humedia−EG2)を用いて一晩培養した。次に、一晩培養後の前記HUVECを、細胞刺激(被験試料添加)の3時間前に0.1mLの血管内皮細胞基礎培地(倉敷紡績株式会社製、Humedia−EB2)に置換し、再度培養を行った。その後、前記ウェル内に、被験試料として前記Humedia−EB2で表1に記載の濃度に調製したピペリン(和光純薬工業株式会社製)を0.1mL添加し、10分間のインキュベーションを行った。インキュベーション後、イムノアッセイキット(R&D Systems社製、Human Phospho−Tie2(Y992)Immunoassay)を用いてプロトコールに従い、細胞内のリン酸化型Tie2量及び総Tie2量を測定し、総Tie2に対するリン酸化型Tie2の比率を計算した。
また、陰性コントロールとして用いたジメチルスルホキシド(DMSO)についても、同様に総Tie2に対するリン酸化型Tie2の比率を計算した。
Tie2活性化率は、下記式(1)を用いて計算した。そして、得られた活性化率をもとに、リン酸化作用を評価した。結果を表1に示す。
【数1】
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1におけるTie2活性化作用(リン酸化作用)の結果について説明する。
前記イムノアッセイキットによりTie2活性化作用の評価を実施したところ、ピペリンにより、Tie2がリン酸化して活性化されることが認められた。なお、陰性コントロールであるDMSOを添加した系では、Tie2の顕著なリン酸化は認められなかった。なお、Tie2のリン酸化により、血管成熟化、血管正常化、及び血管安定化がもたらされ、血管新生が抑制されることが知られている。
以上より、ピペリンが、Tie2リン酸化効果を有することにより、血管成熟化、血管正常化、及び血管安定化がもたらされ、血管新生が抑制されることが示唆された。
【0063】
[試験例2:クローディン−5産生促進作用試験]
(実施例2:ピペリン)
以下の手順により、リンパ管内皮細胞におけるクローディン−5産生促進作用を評価した。
正常ヒト皮膚微小リンパ管内皮細胞(HMVEC−dLy)を、微小血管内皮細胞増殖培地(EGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞をEGMを用いて1.0×10
5細胞/mLの濃度に希釈した後、6ウェルコラーゲンコートプレートに2.0mL播種し、一晩培養した。培養終了後培地を捨て、EGMで表2に記載の濃度に調製したピペリン(和光純薬工業株式会社製)を1.0mL添加し、10分間培養した。培養終了後、1.0mLのPBS(−)(137mmol/L NaCl,8.1mmol/L Na
2HPO
4,2.68mmol/L KCl,1.47mmol/L KH
2PO
4,pH7.4)で洗浄後、200μLのM−PER(登録商標)Mammalian Protein Extraction Reagent(サーモフィッシャーサインティフィック株式会社製)を加えタンパク抽出液を得、常法により電気泳動用の試料を調製した。
調製した試料のタンパク量をそろえて(4μg/レーン)、Laemmli法に従いSDSポリアクリル電気泳動を行い、抗クローディン−5抗体(Assay Biotech社製)及びペルオキシダーゼ標識2次抗体(Jackson社製)を用いてウエスタンブロッティングを行い、ECL Prime Western Blotting Detection Reagents(GE Healthcare社製)の発光により画像撮影装置ChemiDoc XRS Plus(Bio−Rad Laboratories社製)を用いてクローディン−5の検出を行った。クローディン−5産生促進効果の評価は、検出したバンドをImage Lab Software version2.0(Bio−Rad Laboratories社製)にて定量的に測定してクローディン−5のバンド強度を数値化し、クローディン−5産生促進率を算出した。
【0064】
クローディン−5産生促進率の計算方法は、以下のとおりである。
クローディン−5産生促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時のバンド強度
B:被験試料無添加時(対照)のバンド強度
【0065】
(参考例1:ヒハツ抽出物)
実施例2において、ピペリンを、ヒハツ抽出物(Tie2ヒハツエキスパウダーMF、丸善製薬株式会社製)に変更し、表2に記載の濃度を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、クローディン−5産生促進作用を評価した。結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
以上より、ピペリンが、クローディン−5産生促進効果を有することが示唆された。また、ヒハツ抽出物にクローディン−5産生促進作用が認められ、ピペリンにも低濃度でクローディン−5産生促進作用が認められたことから、ピペリンが有効成分の一つであることが示唆された。
【0068】
[試験例3:eNOS産生促進作用試験]
(実施例3:ピペリン)
以下の手順により、ヒト皮膚微小血管内皮細胞における血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)産生促進作用を評価した。
ヒト微小血管由来内皮細胞(HMVEC、倉敷紡績株式会社製)は、専用培地HuMedia−MvG(倉敷紡績株式会社製)を用いて、37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。細胞はあらかじめコラーゲンコートした80cm
2フラスコで80%コンフルエントになるまで培養した後、トリプシン処理により細胞を回収し、6ウェルプレートに3.0×10
5細胞/ウェルの密度で細胞を播種した。翌日、表3に記載の各濃度に調製した被験試料(ピペリン、和光純薬工業株式会社製)を含む培地に交換し、さらに培養を続けた。同時にサンプルを含まない培地で同様の培養を行い、これをコントロールとした。なお、被験試料は50v/v%DMSOに溶解後ろ過滅菌し、培地中におけるDMSOの最終濃度が0.5v/v%になるように調製した。
培養24時間後に細胞を回収し、この細胞のタンパク量をそろえて(10μg/レーン)、Laemmli法に従いSDSポリアクリル電気泳動を行い、抗eNOS抗血清(CAYMAN社製)及びアルカリホスファターゼ標識2次抗体(CHEMICON社製)を用いてウエスタンブロッティングを行い、eNOSの検出を行った。eNOS産生促進効果の評価は、画像解析ソフト(Kodak(登録商標)1D Image Analysis Software、Kodak社製)を用いてeNOSのバンド強度を数値化し、eNOS産生促進率を算出した。
【0069】
eNOS産生促進率の計算方法は、以下のとおりである。
eNOS産生促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時のバンド強度
B:被験試料無添加時(対照)のバンド強度
【0070】
(参考例2:ヒハツ抽出物)
実施例3において、ピペリンを、ヒハツ抽出物(Tie2ヒハツエキスパウダーMF、丸善製薬株式会社製)に変更し、表3に記載の濃度を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、eNOS産生促進作用を評価した。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
以上より、ピペリンが、eNOS産生促進効果を有することが示唆された。また、ヒハツ抽出物にeNOS産生促進作用が認められ、ピペリンにも低濃度でeNOS産生促進作用が認められたことから、ピペリンが有効成分の一つであることが示唆された。ここで、eNOS産生促進により、血管内の血流が促進されることが知られている。
以上より、ヒハツ抽出物から単離されたピペリンが、eNOS産生促進効果を有することにより、血流促進効果がもたらされることが示唆された。