特許第6737276号(P6737276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6737276正孔輸送材料とポリ(アリールエーテルスルホン)とを含有する組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6737276
(24)【登録日】2020年7月20日
(45)【発行日】2020年8月5日
(54)【発明の名称】正孔輸送材料とポリ(アリールエーテルスルホン)とを含有する組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20200728BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20200728BHJP
   C08L 65/04 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20200728BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20200728BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   C08L81/06
   C08L65/04
   H01L31/04 152C
   H01L31/04 152H
   H01L31/04 162
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250G
   H01L29/28 220A
【請求項の数】45
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-531909(P2017-531909)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2018-507535(P2018-507535A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】US2015065788
(87)【国際公開番号】WO2016100321
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年7月13日
(31)【優先権主張番号】62/091,853
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デ・カンポ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】スウィッシャー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シェイナ,エレナ
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−531497(JP,A)
【文献】 特表2010−514162(JP,A)
【文献】 特表2011−516695(JP,A)
【文献】 特表2014−530940(JP,A)
【文献】 特表2013−526636(JP,A)
【文献】 国際公開第1995/025149(WO,A1)
【文献】 特表2011−513556(JP,A)
【文献】 特表2008−533701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C08L 65/04
C08L 81/06
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの正孔輸送材料と、
(b)少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)と
を含み、
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)が、式(1)
【化1】

で表される繰返し単位、もしくは、式(2)
【化2】

で表される繰返し単位、又はそれらの組合せ[これらの単位中、Xが、それぞれ独立して、O、S、又は−C(O)−であり、単位間で異なってもよく、kがそれぞれ1〜3であり、zがそれぞれ1〜3であり、aが、0又は1である]
を含み、
前記ポリ(アリールエーテルスルホン)の数平均分子量が、2000〜60000であり、
正孔輸送材料とポリ(アリールエーテルスルホン)との重量比(正孔輸送材料:ポリ(アリールエーテルスルホン)比)が、10:1〜1:10である、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの正孔輸送材料が、ポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの正孔輸送材料が、共役ポリマーである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの正孔輸送材料が、ポリチオフェンである、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
ポリチオフェンが、式(I)
【化3】

[式中、
及びRが、それぞれ独立して、H、フルオロアルキル、−O[C(R)−C(R)−O]−R、又は−ORであり、そしてここで、各々のR、R、R、及びRが、それぞれ独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり、Rが、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり、pが、1、2、又は3であり、Rが、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである]
に従った繰返し単位を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
が、Hであり、Rが、H以外である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
が、Hであり、Rが、−O[C(R)−C(R)−O]−R又は−ORである、請求項5又は6記載の組成物。
【請求項8】
が、Hであり、Rが、−O[C(R)−C(R)−O]−Rである、請求項5〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
ポリチオフェンが、位置規則性である、請求項6〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
位置規則性の程度が、25〜99.9%である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
及びRが両方とも、H以外である、請求項5記載の組成物。
【請求項12】
及びRが、それぞれ独立して、−O[C(R)−C(R)−O]−R又は−ORである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
及びRが両方とも、−O[C(R)−C(R)−O]−Rである、請求項11又は12記載の組成物。
【請求項14】
及びRがそれぞれ、−O[CH−CH−O]−Rである、請求項11〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
及びRがそれぞれ、−O[CH(CH)−CH−O]−Rである、請求項11〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
各々のR、R、R、及びRが、それぞれ独立して、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)フルオロアルキル、又はフェニルであり、Rが、(C〜C)アルキル、(C〜C)フルオロアルキル、又はフェニルである、請求項5〜13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
が、メチル、プロピル、又はブチルである、請求項5〜16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
ポリチオフェンが、
【化4】

及びそれらの組み合わせからなる群より選択される繰返し単位を含む、請求項5〜17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
ポリチオフェンが、式(I)に従った繰返し単位を、共役ポリマーの70重量%超の量で含む、請求項5〜18のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
ポリチオフェンが、ホモポリマーである、請求項5〜19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
共役ポリマーが、1,000〜1,000,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1〜20のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの正孔輸送材料が、ドーパントによりドープされている、請求項1〜21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項23】
ドーパントが、テトラアリールボラートを含む、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
ドーパントが、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを含む、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
ドーパントが、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
Xが、それぞれ独立して、O又はSである、請求項1〜25いずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、式(1a)〜(1e)、式(2a)〜(2b)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される繰返し単位を含む、請求項1〜26のいずれか一項記載の組成物。
【化5】

【請求項28】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、式(3)
【化6】

[式中、Aが、直接結合、酸素、硫黄、−C(O)−、又は二価の炭化水素基である]
で表される繰返し単位を更に含む、請求項1〜27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
式(3)で表される繰返し単位が、式(3a)
【化7】

[式中、R及びRが、それぞれ独立して、H又は(C〜C)アルキルである]
で表される繰返し単位である、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
式(3a)で表される繰返し単位が、式(3b)
【化8】

で表される繰返し単位である、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
式(3)で表される繰返し単位が、式(3c)
【化9】

[式中、Q及びQ’が、同じでも又は異なってもよく、CO又はSOであり、Arが、
アリーレンであり、yが、0、1、2、又は3であり、ただし、QがSOである場合に
は、yが、ゼロでないという条件である]
で表される繰返し単位である、請求項28記載の組成物。
【請求項32】
式(3c)が、式(3d)
【化10】

[式中、mが、1、2、又は3である]
で表される繰返し単位である、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、式(4a)、式(4b)、又はそれらの組み合わせで表される繰返し単位を含む、請求項1〜32のいずれか一項記載の組成物。
【化11】
【請求項34】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、式(1a)〜(1f)、式(2a)〜(2b)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも2つの繰返し単位を含む、請求項27記載の組成物。
【請求項35】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、式(1a)〜(1f)、式(2a)〜(2b)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位と、式(3a)〜(3d)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位とを含む、請求項28記載の組成物。
【請求項36】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、式(1a)〜(1f)、式(2a)〜(2b)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位と、式(4a)及び(4b)ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位とを含む、請求項33記載の組成物。
【請求項37】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、ポリフェニルスルホン(PPSU)である、請求項27記載の組成物。
【請求項38】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、ポリエーテルスルホン(PESU)である、請求項27記載の組成物。
【請求項39】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、ビスフェノールAポリスルホン(PSU)である、請求項33記載の組成物。
【請求項40】
SO含量が、少なくとも12%である、請求項1〜39のいずれか一項記載の組成物。
【請求項41】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、少なくとも150℃のガラス転移点を有する、請求項1〜40のいずれか一項記載の組成物。
【請求項42】
ポリ(アリールエーテルスルホン)が、200℃〜225℃のTgを有する、請求項1〜41のいずれか一項記載の組成物。
【請求項43】
1つ以上のマトリックス材料を更に含む、請求項1〜42のいずれか一項記載の組成物。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれか一項記載の組成物と、液状担体とを含む、インク組成物。
【請求項45】
請求項1〜43のいずれか一項記載の組成物を含むデバイスであり、
デバイスが、OLED、OPV、トランジスタ、キャパシタ、センサ、トランスデューサ、薬剤放出デバイス、エレクトロクロミックデバイス、又はバッテリーデバイスである、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、仮出願である。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、正孔輸送材料、典型的には、共役ポリマーと、ポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む組成物、正孔輸送材料とポリ(アリールエーテルスルホン)とを含むインク組成物、及び、例えば、有機電子デバイスにおけるその使用に関する。
【0003】
[背景]
有用な進歩が、省エネルギーデバイス、例えば、有機系有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、リン光有機発光ダイオード(PHOLED)、及び有機光電池デバイス(OPV)等になされているが、更なる改善が、より良好な材料処理及び/又は商品化に向けたデバイス性能を提供するのに未だに必要とされている。例えば、有機電子デバイスに使用される1つの有望な種類の材料は、導電性ポリマーである。同ポリマーは、例えば、ポリチオフェンを含む。しかしながら、そのニュートラル及び/又は導電状態でのポリマーの純度、加工性、及び不安定性についての問題が生じるおそれがある。また、種々のデバイスアーキテクチャの交互の層に利用されるポリマーの溶解性(例えば、特定のデバイスアーキテクチャにおいて隣接する層間の直交又は交互の溶解性)に対して、非常に良好な制御を有するのが重要である。例えば、正孔注入層(HIL)及び正孔輸送層(HTL)としても知られている、これらの層は、競合する要求、そして非常に薄いが高品質な薄膜の必要性を考慮すると、困難な問題を提起することがある。
【0004】
材料を種々の用途に適合させ、また種々の材料、例えば発光層、光活性層、及び電極と共に機能するよう適合させることができるように、正孔注入及び輸送層の特性、例えば、溶解性、熱/化学安定性、及び電子エネルギーレベル(例えば、HOMO及びLUMO)を制御するための、良好なプラットフォームシステムについての現在解決されていない必要性が存在する。良好な溶解性、溶媒抵抗性、及び熱安定性が重要である。高い透明性及び低い動作電圧を保持しつつ、HIL抵抗率及びHIL層の厚みを調節できることもまた重要である。特定の応用のためにシステムを組み立て、このような特性の必要とされるバランスを提供できることも重要である。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む、組成物に関する。
【0006】
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)と、液状担体とを含む、インク組成物に関する。
【0007】
第3の態様では、本発明は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む、デバイスに関する。
【0008】
本発明の目的は、本明細書に記載の組成物を含むデバイスにおいて、調節可能なHIL抵抗率を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、本明細書に記載の組成物を含むデバイスにおいて、可視スペクトルにおける高い透明性又は低い吸光度(透過率 90%T超)を保持して、薄膜厚を調節できるようにすることである。
【0010】
本発明の更に別の目的は、本明細書に記載の組成物を含むデバイスにおいて、低い動作電圧を保持して、薄膜厚を調節できるようにすることである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、本明細書に記載の組成物を含む正孔注入層(HIL)の上面にある正孔輸送層(HTL)を溶液処理できるようにすることである。
【0012】
[詳細な説明]
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、又は「the」という用語は、特に断りない限り、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」を意味する。
【0013】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」という用語は、「から本質的になる(consists essentially of)」及び「からなる(consists of)」を含む。「含む(comprising)」という用語は、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を含む。
【0014】
本開示全体を通して、種々の刊行物を、参照により組み入れることができる。参照により組み入れられるこのような刊行物における任意の語の意味が、本開示の語の意味と矛盾する場合には、特に断りない限り、本開示の語の意味が優先されるものとする。
【0015】
本明細書で使用する場合、有機基への言及において、「(Cx〜Cy)」(式中、x及びyはそれぞれ、整数である)という専門用語は、この基が、基当たりにx個の炭素原子〜y個の炭素原子を含有することができることを意味する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、一価の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基、より典型的には、一価の直鎖又は分岐鎖の飽和(C〜C40)炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、へキシル、2−エチルへキシル、オクチル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ベヘニル、トリアコンチル、及びテトラコンチル等を意味する。
【0017】
本明細書で使用する場合、「フルオロアルキル」という用語は、1つ以上のフッ素原子により置換されている、本明細書で定義されたアルキル基、より典型的には、(C〜C40)アルキル基を意味する。フルオロアルキル基の例は、例えば、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチル、及びパーフルオロエチルを含む。
【0018】
本明細書で使用する場合、「アリール」という用語は、1つ以上の6員炭素環を含有する、一価で不飽和の炭化水素基(同環において、不飽和は、3つの共役二重結合により表わすことができる)を意味する。アリール基は、単環式アリール及び多環式アリールを含む。多環式アリールは、2つ以上の6員炭素環を含有する、一価で不飽和の炭化水素基(同環において、不飽和は、3つの共役二重結合により表わすことができ、そしてここで、隣接する環は、1つ以上の結合もしくは二価の架橋基により互いに連結されていてもよく、又は、互いに縮合していてもよい)を意味する。アリール基の例は、フェニル、アントラセニル、ナフチル、フェナントレニル、フルオレニル、及びピレニルを含むが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書に記載の任意の置換基は、場合により、1つ以上の炭素原子において、1つ以上の同じか又は異なる、本明細書に記載の置換基により置換されていることができる。例えば、アルキル基は、アリール基又は別のアルキル基により、更に置換されていることができる。本明細書に記載の任意の置換基は、場合により、1つ以上の炭素原子において、ハロゲン、例えば、F、Cl、Br、及びI等;ニトロ(NO)、シアノ(CN)、ならびにヒドロキシ(OH)からなる群より選択される、1つ以上の置換基により置換されていることができる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「正孔輸送材料」という用語は、例えば、電子デバイスにおいて、正孔、すなわち、正の電荷キャリアの移動を容易にし、及び/又は、電子の移動を阻止することができる、任意の材料又は化合物を意味する。正孔輸送材料は、電子デバイス、典型的には、有機電子デバイス、例えば、有機発光デバイス等の層(HTL)、正孔注入層(HIL)、及び電子阻止層(EBL)に有用な材料又は化合物を含む。
【0021】
本発明は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む、組成物に関する。
【0022】
正孔輸送材料は、当技術分野において公知であり、市販されている。正孔輸送材料は、例えば、低分子量材料又は高分子量材料であることができる。正孔輸送材料は、非ポリマー性又はポリマー性であることができる。非ポリマー性正孔輸送材料は、架橋性及び非架橋性の小分子を含むが、これらに限定されない。非ポリマー性正孔輸送材料の例は、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(CAS # 65181-78-4);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン;N,N’−ビス(2−ナフタレニル)−N−N’−ビス(フェニルベンジジン)(CAS # 139255-17-1);1,3,5−トリス(3−メチルジフェニルアミノ)ベンゼン(m−MTDABとも呼ばれる);N,N’−ビス(1−ナフタレニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(CAS # 123847-85-8、NPB);4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATAとも呼ばれる、CAS # 124729-98-2);4,4’,N,N’−ジフェニルカルバゾール(CBPとも呼ばれる、CAS # 58328-31-7);1,3,5−トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;1,3,5−トリス(2−(9−エチルカルバジル−3)エチレン)ベンゼン;1,3,5−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン;1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン;1,4−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル;4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル;4−(ジベンジルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン;4−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;9−エチル−3−カルバゾールカルボキシアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;銅(II)フタロシアニン;N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン;N,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−p−トリルベンゼン−1,4−ジアミン;テトラ−N−フェニルベンジジン;チタニルフタロシアニン;トリ−p−トリルアミン;トリス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アミン;及びトリス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]アミンを含むが、これらに限定されない。
【0023】
一実施態様において、少なくとも1つの正孔輸送材料は、ポリマー性である。ポリマー性正孔輸送材料は、主鎖又は側鎖に正孔輸送部分を含むポリマー及び共役ポリマー、例えば、直鎖の共役ポリマー又は共役ポリマーブラシ等を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「共役ポリマー」は、π電子が非局在化することができる、sp混成原子の連続的な系を含む骨格を有する、任意のポリマーを意味する。
【0024】
一実施態様において、少なくとも1つの正孔輸送材料は、共役ポリマーである。共役ポリマーは、有機電子デバイスにおけるその使用を含めて、当技術分野において公知である。本発明に使用される共役ポリマーは、ホモポリマー、コポリマーであることができる。同コポリマーは、ブロックコポリマー、例えば、A−Bジブロックコポリマー、A−B−Aトリブロックコポリマー、及び−(AB)−マルチブロックコポリマー等を含む。側鎖基を有する位置規則性のポリチオフェンを含めて、合成方法、ドーピング、及びポリマー特徴決定は、例えば、米国特許第6,602,974号(McCullough et al.)及び同第6,166,172号(McCullough et al.)に提供されている。これらの文献の全体が、参照により組み入れられる。
【0025】
共役ポリマーの例は、例えば、
【化1】

等の繰返し単位を含むポリチオフェン、
例えば、
【化2】

等の繰返し単位を含むポリチエノチオフェン、
例えば、
【化3】

等の繰返し単位を含むポリセレノフェン、
例えば、
【化4】

等の繰返し単位を含むポリピロール、
ポリフラン、ポリテルロフェン、ポリアニリン、ポリアリールアミン、及びポリアリーレン(例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、及びポリフルオレン)を含むが、これらに限定されない。上記構造において、基R、R、及びRは、それぞれ独立して、場合により置換されているC〜C25基、典型的には、C〜C10基、より典型的には、C〜C基であることができ、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、及びポリエーテル基を含む。基R及び/又はRは、水素(H)であることもできる。これらの基は、電子吸引基又は電子供与性基であることができる。側鎖基は、溶解性を提供することができる。本明細書に記載され、例示された構造は、ポリマー骨格又は側鎖に包含させることができる。
【0026】
更なる適切なポリマー性正孔輸送材料は、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(N,N’ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)];ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1’−ビフェニレン−4,4’−ジアミン)];ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFBとも呼ばれる)、及びポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン](ポリ−TPDと一般的に呼ばれる)を含むが、これらに限定されない。
【0027】
一実施態様において、共役ポリマーは、ポリチオフェンである。
【0028】
一実施態様において、ポリチオフェンは、式(I)
【化5】

[式中、
及びRが、それぞれ独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、ポリエーテル、又はアルコキシ基である]
に従った繰返し単位を含む。
【0029】
一実施態様において、R及びRは、それぞれ独立して、H、フルオロアルキル、−O[C(R)−C(R)−O]−R、又は−ORであり、そしてここで、各々のR、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり、Rは、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり、pは、1、2、又は3であり、Rは、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである。
【0030】
一実施態様において、Rは、Hであり、Rは、H以外である。このような実施態様では、繰返し単位は、3−置換チオフェンに由来する。
【0031】
一実施態様において、Rは、Hであり、Rは、−O[C(R)−C(R)−O]−R又は−ORである。一実施態様において、Rは、Hであり、Rは、−O[C(R)−C(R)−O]−Rである。
【0032】
ポリチオフェンは、位置ランダム性又は位置規則性の材料であることができる。その非対称構造のために、3−置換チオフェンの重合により、繰返し単位間に3つの可能性のある位置化学結合を含有するポリチオフェン構造の混合物が生成される。2つのチオフェン環が連結される際に利用可能な3つの配向は、2,2’;2,5’、及び5,5’カップリングである。2,2’(又はヘッド−to−ヘッド)カップリング及び5,5’(又はテイル−to−テイル)カップリングは、位置ランダム性カップリングと呼ばれる。対照的に、2,5’(又はヘッド−to−テイル)カップリングは、位置規則性カップリングと呼ばれる。位置規則性の程度は、例えば、約0〜100%又は約25〜99.9%又は約50〜98%であることができる。位置規則性は、当業者に公知の標準的な方法により、例えば、NMR分光法等を使用して決定することができる。
【0033】
一実施態様において、ポリチオフェンは、位置規則性である。ある実施態様では、ポリチオフェンの位置規則性は、少なくとも約85%、典型的には、少なくとも約95%、より典型的には、少なくとも約98%であることができる。ある実施態様では、位置規則性の程度は、少なくとも約70%、典型的には、少なくとも約80%であることができる。更に他の実施態様では、位置規則性のポリチオフェンは、少なくとも約90%の位置規則性の程度、典型的には、少なくとも約98%の位置規則性の程度を有する。
【0034】
3−置換チオフェンモノマーは、このようなモノマー由来のポリマーを含めて、市販されているか、又は当業者に公知の方法により調製することができる。側鎖基を有する位置規則性のポリチオフェンを含めて、合成方法、ドーピング、及びポリマー特徴決定は、例えば、米国特許第6,602,974号(McCullough et al.)及び同第6,166,172号(McCullough et al.)に提供されている。
【0035】
別の実施態様では、R及びRは両方とも、H以外である。このような実施態様では、繰返し単位は、3,4−二置換チオフェンに由来する。
【0036】
一実施態様において、R及びRは、それぞれ独立して、−O[C(R)−C(R)−O]−R又は−ORである。一実施態様において、R及びRは両方とも、−O[C(R)−C(R)−O]−Rである。R及びRは、同じでも又は異なってもよい。
【0037】
一実施態様において、各々のR、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H、(C〜C)アルキル、(C〜C)フルオロアルキル、又はフェニルであり、Rは、(C〜C)アルキル、(C〜C)フルオロアルキル、又はフェニルである。
【0038】
一実施態様において、R及びRはそれぞれ、−O[CH−CH−O]−Rである。一実施態様において、R及びRはそれぞれ、−O[CH(CH)−CH−O]−Rである。
【0039】
一実施態様において、Rは、メチル、プロピル、又はブチルである。
【0040】
一実施態様において、ポリチオフェンは、
【化6】

及びそれらの組み合わせからなる群より選択される繰返し単位を含む。
【0041】
当業者であれば、繰返し単位
【化7】

は、構造
【化8】

で表されるモノマー、3,4−ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン[本明細書において、3,4−ジBEETと呼ばれる]に由来し、
繰返し単位
【化9】

は、構造
【化10】

で表されるモノマー、3,4−ビス((1−プロポキシプロパン−2−イル)オキシ)チオフェン[本明細書において、3,4−ジPPTと呼ばれる]に由来し、
繰返し単位
【化11】

は、構造
【化12】

で表されるモノマー、3,4−ビス((1−メトキシプロパン−2−イル)オキシ)チオフェン[本明細書において、3,4−ジMPTと呼ばれる]に由来することを理解するであろう。
【0042】
3,4−二置換チオフェンモノマーは、このようなモノマー由来のポリマーを含めて市販されており、又は、当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、3,4−二置換チオフェンモノマーは、3,4−ジブロモチオフェンを、式HO[C(R)−C(R)−O]−R又はHOR(式中、R〜R及びpは、本明細書で定義された通りである)で与えられる化合物の金属塩、典型的には、ナトリウム塩と反応させることにより生成することができる。
【0043】
3,4−二置換チオフェンモノマーの重合は、まず、3,4−二置換チオフェンモノマーの2及び5位を臭素化して、3,4−二置換チオフェンモノマーの対応する2,5−ジブロモ誘導体を形成することにより行うことができる。ついで、ニッケル触媒の存在下における、3,4−二置換チオフェンの2,5−ジブロモ誘導体のGRIM(グリニヤールメタセシス)重合により、ポリマーを得ることができる。このような方法は、例えば、米国特許第8,865,025号に記載されている。同文献の全体は、参照により組み入れられる。チオフェンモノマーを重合する別の公知の方法は、酸化剤として、有機非金属含有酸化剤、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)を使用し、又は、ハロゲン化遷移金属、例えば、塩化鉄(III)、塩化モリブデン(V)、及び塩化ルテニウム(III)等を使用する酸化的重合による。
【0044】
金属塩、典型的には、ナトリウム塩に変換することができ、3,4−二置換チオフェンモノマーを生成するのに使用することができる、式HO[C(R)−C(R)−O]−R又はHORを有する化合物の例は、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(hexyl Cellosolve)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(ethyl Carbitol)、ジプロピレングリコール n−ブチルエーテル(Dowanol DPnB)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(phenyl Carbitol)、エチレングリコールモノブチルエーテル(butyl Cellosolve)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(butyl Carbitol)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol DPM)、ジイソブチルカルビノール、2−エチルヘキシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol Eph)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol PnP)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol PPh)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(propyl Carbitol)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(hexyl Carbitol)、2−エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol DPnP)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol TPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(methyl Carbitol)、及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
一実施態様において、本発明に有用な共役ポリマーは、コポリマーであることができる。同コポリマーは、ランダムコポリマーならびにブロックコポリマー、例えば、A−Bジブロックコポリマー、A−B−Aトリブロックコポリマー、及び−(AB)−マルチブロックコポリマー等を含む。共役ポリマーは、他の種類のモノマー、例えば、チエノチオフェン、セレノフェン、ピロール、フラン、テルロフェン、アニリン、アリールアミン、ならびにアリーレン、例えば、フェニレン、フェニレンビニレン、及びフルオレン等由来の繰返し単位を含むことができる。
【0046】
一実施態様において、ポリチオフェンは、式(I)に従った繰返し単位を、共役ポリマーの70重量%超、典型的には、80重量%超、より典型的には、90重量%超、更により典型的には、95重量%超の量で含む。
【0047】
当業者であれば、重合に使用される開始モノマー材料の純度に応じて、形成されるポリマーが、不純物由来の繰返し単位を含有する場合があることは明らかであろう。本明細書で使用する場合、「ホモポリマー」という用語は、1種類のモノマー由来の繰返し単位を含むポリマーを意味することを意図しているが、不純物由来の繰返し単位を含有することができる。一実施態様において、ポリチオフェンは、本質的にすべての繰返し単位が式(I)に従った繰返し単位である、ホモポリマーである。
【0048】
共役ポリマーは、典型的には、約1,000〜1,000,000g/molの数平均分子量を有する。より典型的には、共役ポリマーは、約5,000〜100,000g/mol、更により典型的には、約10,000〜約50,000g/molの数平均分子量を有する。数平均分子量は、当業者に公知の方法に従って、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー等により決定することができる。
【0049】
また、更なる正孔輸送材料は、例えば、2010年11月18日公開の米国特許出願公開公報第2010/0292399号、2010年5月6日公開の同第2010/010900号、及び2010年5月6日公開の同第2010/0108954号にも記載されている。
【0050】
少なくとも1つの正孔輸送材料、典型的には、共役ポリマーは、ドープされていてもよいし、又は、ドープされていなくてもよい。
【0051】
一実施態様において、少なくとも1つの正孔輸送材料は、ドーパントによりドープされている。ドーパントは、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第7,070,867号;米国特許出願公開公報第2005/0123793号;及び同第2004/0113127号を参照のこと。ドーパントは、イオン性化合物であることができる。ドーパントは、カチオン及びアニオンを含むことができる。1つ以上のドーパントを、少なくとも1つの正孔輸送材料をドープするのに使用することができる。
【0052】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、又はAuであることができる。
【0053】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、金、モリブデン、ルテニウム、鉄、及び銀カチオンであることができる。
【0054】
ある実施態様では、ドーパントは、スルホナート又はカルボキシラートを含むことができる。同スルホナート又はカルボキシラートは、アルキル、アリール、及びヘテロアリールスルホナート及びカルボキシラートを含む。本明細書で使用する場合、「スルホナート」は、−SOM基(基中、Mは、H又はアルカリ金属イオン、例えば、Na、Li、K、Rb、Cs等;又はアンモニウム(NH)であることができる)を意味する。本明細書で使用する場合、「カルボキシラート」は、−COM基(基中、Mは、H又はアルカリ金属イオン、例えば、Na、Li、K、Rb、Cs等;又はアンモニウム(NH)であることができる)を意味する。スルホナート及びカルボキシラートのドーパントの例は、ベンゾアート化合物、ヘプタフルオロブチラート、メタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、p−トルエンスルホナート、ペンタフルオロプロピオナート、及びポリマー性スルホナート、例えば、ポリ(スチレンスルホン)酸(PSS)、パーフルオロスルホナート含有アイオノマー等を含むが、これらに限定されない。
【0055】
ある実施態様では、ドーパントは、スルホナート又はカルボキシラートを含まない。
【0056】
ある実施態様では、ドーパントは、スルホニルイミド、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等;アンチモナート、例えば、ヘキサフルオロアンチモナート等;アルセナート、例えば、ヘキサフルオロアルセナート等;リン化合物、例えば、ヘキサフルオロホスファート等;ならびにボラート、例えば、テトラフルオロボラート、テトラアリールボラート、及びトリフルオロボラート等を含むことができる。テトラアリールボラートの例は、ハロゲン化テトラアリールボラート、例えば、テトラキスペンタフルオロフェニルボラート(TPFB)を含むが、これらに限定されない。トリフルオロボラートの例は、(2−ニトロフェニル)トリフルオロボラート、ベンゾフラザン−5−トリフルオロボラート、ピリミジン−5−トリフルオロボラート、ピリジン−3−トリフルオロボラート、及び2,5−ジメチルチオフェン−3−トリフルオロボラートを含むが、これらに限定されない。
【0057】
一実施態様において、ドーパントは、テトラアリールボラートを含む。
【0058】
一実施態様において、ドーパントは、テトラアリールボラート、典型的には、ハロゲン化テトラアリールボラートを含む銀塩であることができる。
【0059】
一実施態様において、ドーパントは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TPFB)を含む。
【0060】
一実施態様において、ドーパントは、構造
【化13】

で表される銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである。
【0061】
ドーパントは、商業的に得ることができ、又は、当業者に公知の技術を使用して合成することができる。例えば、テトラアリールボラートを含む銀塩、例えば、AgTPFBは、例えば、水溶性銀塩及びテトラアリールボラート塩により行われるメタセシス反応により得ることができる。例えば、この反応は、
+M→M(不溶性)+M(可溶性)
により表すことができる。
【0062】
の沈殿は、少なくともある場合について、反応を右側に進行させて、比較的高収量を得るのを容易にすることができる。Mは、金属、例えば、銀等であることができる。Mは、金属、例えば、リチウム等であることができる。Xは、水溶性を提供することができ、例えば、ナイトラート等である。Xは、非配位アニオン、例えば、テトラアリールボラートであることができる。Mは、水に不溶性であることができる。Mは、水に可溶性であることができる。
【0063】
例えば、AgTPFBは、アセトニトリルに溶解させ、続けて、水に沈殿させることによる、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(LiTPFB)と硝酸銀とのメタセシスにより調製することができる。このような方法は、例えば、米国特許第8,674,047号に記載されている。同文献の全体は、参照により組み入れられる。
【0064】
本明細書で開示されたように、正孔輸送材料、例えば、共役ポリマーは、ドーパントによりドープすることができる。ドーパントは、例えば、共役ポリマーと1つ以上の電子輸送反応を起こすことにより、ドープされた正孔輸送材料、典型的には、ドープされた共役ポリマーを生成する材料であることができる。ドーパントは、適切な電荷均衡カウンターアニオンを提供するように選択することができる。反応は、共役ポリマーと当技術分野において公知のドーパントとを混合することに基づいて生じることができる。例えば、ドーパントは、ポリマーからカチオン−アニオンドーパント(例えば金属塩)への自発的電子輸送を起こし、会合アニオンを含むその酸化型における共役ポリマーと遊離金属とを残すことができる。例えば、Lebedev et al., Chem. Mater., 1998, 10, 156-163を参照のこと。本明細書で開示されたように、共役ポリマー及びドーパントは、反応してドープされた共役ポリマーを形成する成分を意味する場合がある。ドーピング反応は、電荷キャリアが生成される電荷輸送反応であることができる。この反応は、可逆性又は不可逆性であることができる。ある実施態様では、銀イオンは、金属銀及び共役ポリマーへの、又はそれらからの電子輸送を起こしうる。
【0065】
最終的な配合において、本組成物は、元の成分の組み合わせとは明らかに異なることができる(すなわち、共役ポリマー及び/又はドーパントが、混合前と同じ形態で最終的な組成物に存在してもよいし、又は、存在しなくてもよい)。
【0066】
ある実施態様は、ドーピングプロセスからの反応副生物の除去を可能にする。例えば、銀などの金属は、ろ過により除去することができる。
【0067】
材料は、例えば、ハロゲン及び金属を除去するのに精製することができる。ハロゲンは、例えば、塩化物、臭化物、及びヨウ化物を含む。金属は、例えば、ドーパントのカチオンを含む。同ドーパントのカチオンは、還元型のドーパントのカチオン又は触媒もしくは開始剤残留物から残った金属を含む。金属は、例えば、銀、ニッケル、及びマグネシウムを含む。その量は、例えば、100ppm未満、又は10ppm未満、又は1ppm未満であることができる。
【0068】
銀含量を含む金属含量は、特に50ppm超の濃度について、ICP−MSにより測定することができる。
【0069】
未反応のカチオンを含む未反応のドーパントは、存在してもよいし、又は、除去することもできる。同未反応のカチオンは、未反応の銀イオンを含む。
【0070】
一実施態様において、少なくとも1つの正孔輸送材料、典型的には、共役ポリマーが、ドーパントによりドープされる際、共役ポリマー及びドーパントは混合されて、ドープされた共役ポリマー組成物を形成する。混合は、当業者に公知の任意の方法を使用して達成することができる。例えば、共役ポリマーを含む溶液を、ドーパントを含む別の溶液と混合することができる。共役ポリマー及びドーパントを溶解するのに使用される1つ以上の溶媒は、本明細書に記載の1つ以上の溶媒であることができる。反応は、共役ポリマーと当技術分野において公知のドーパントとを混合することに基づいて生じることができる。得られたドープされた共役ポリマー組成物は、この組成物に基づいて、約40重量%〜75重量% 共役ポリマーと、約25重量%〜55重量% ドーパントとを含む。別の実施態様では、ドープされた共役ポリマー組成物は、この組成物に基づいて、約50%〜65% 共役ポリマーと、約35%〜50% ドーパントとを含む。典型的には、共役ポリマーの重量は、ドーパントの重量より多い。共役ポリマーは、上記された任意の共役ポリマーであることができる。典型的には、繰返し単位は、(3−置換ポリチオフェンにおいてそうであるような)3−置換チオフェン又は(3,4−二置換ポリチオフェンにおいてそうであるような)3,4−二置換チオフェンである。典型的には、ドーパントは、約0.25〜0.5m/ru(同単位中、mは、銀塩のモル量であり、ruは、共役ポリマーの繰返し単位のモル量である)の量における、銀塩、例えば、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであることができる。
【0071】
ドープされた共役ポリマーは、乾燥又は実質的に乾燥した材料、例えば、粉末を得るために、当業者に公知の方法に従って、例えば、溶媒のロータリーエバポレーション等により単離される。残留溶媒量は、例えば、乾燥又は実質的に乾燥した材料に基づいて、10wt%以下、又は5wt%以下、又は1wt%以下であることができる。乾燥又は実質的に乾燥した粉末は、1つ以上の新たな溶媒中に再分散させ、又は、再溶解させることができる。
【0072】
本明細書で使用する場合、「ポリ(アリールエーテルスルホン)」又は「PAES」という用語は、任意のポリマーであって、その少なくとも5wt%、典型的には、少なくとも50wt%、より典型的には、少なくとも80wt%の繰返し単位が、少なくとも1つのアリーレン基、少なくとも1つのエーテル基(−O−)又はチオエーテル基(−S−)、及び少なくとも1つのスルホン基[−S(=O)−]を含む単位である、任意のポリマーを意味することを意図している。
【0073】
ある実施態様では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰返し単位(ArSOAr)[式中、Arが、アリーレンであり、zがそれぞれ、1〜3又はこの範囲内の分数であることができる]を含む。繰返し単位(ArSOAr)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)における他の部分に、エーテル結合及び/又はチオエーテル結合により連結している。アリーレン基は、二価の芳香族基である。同芳香族基は、フェニレン;ビフェニレン;ターフェニレン;縮合ベンゼン環、例えば、ナフチレン、例えば、2,6−ナフチレン、アントリレン、例えば、2,6−アントリレン、及びフェナントリレン、例えば、2,7―フェナントリレン、ナフタセニレン、及びピレニレン等;5〜24個の原子(同原子の内の少なくとも1つはヘテロ原子であり、同へテロ原子は、N、O、Si、P、又はS、典型的には、N、O、又はSである)を含む芳香族炭素環系、例えば、ピリジン、ベンズイミダゾール、キノリン等を含むが、これらに限定されない。アリーレンは、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホナート、アルキルスルホナート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホナート、アルキルホスホナート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群より選択される、少なくとも1つの置換基で場合により置換されていてもよい。
【0074】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰返し単位(PhSOPh)[式中、Phは、本明細書で定義されたフェニレン、典型的には、パラ−フェニレンである]を含む。
【0075】
ある実施態様では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰返し単位(Ar)[式中、Arは、アリーレンであり、kはそれぞれ、1〜3であるか、又は、この範囲内の分数であることができる]を更に含むことができる。繰返し単位(Ar)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)における他の部分に、単一の化学結合又はSO以外の二価基により連結している。SO以外の二価基は、カルボニル基(−C(O)−)、エーテル基(−O−)、及びチオエーテル基(−S−)を含むが、これらに限定されない。一実施態様において、繰返し単位(Ar)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)における他の部分に、エーテル基及び/又はチオエーテル基により連結している。一実施態様において、繰返し単位(Ar)は、(Ph)[式中、Phは、本明細書で定義されたフェニレン、典型的には、パラ−フェニレンである]である。
【0076】
「分数」という用語により、「z」又は「k」の種々の値を有する単位を含有する所定のポリマー鎖についての平均値に言及される。
【0077】
ある実施態様では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰返し単位(ArSOAr)及び(Ar)の両者を含み、(ArSOAr)単位と(Ar)単位は、エーテル結合及び/又はチオエーテル結合により互いに連結している。
【0078】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰返し単位(PhSOPh)及び(Ph)の両者を含み、(PhSOPh)単位と(Ph)単位は、エーテル結合及び/又はチオエーテル結合により互いに連結している。繰返し単位(PhSOPh)及び(Ph)の相対比は、(PhSOPh):(Ph)で、典型的には、1:99〜99:1、より典型的には、10:90〜90:10の範囲で存在する。一実施態様において、この比は、(PhSOPh):(Ph)で、75:25〜50:50の範囲にある。
【0079】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、存在する各ポリマー鎖中に、相互に直接連続した(PhSOPh)を少なくとも2単位含む。
【0080】
本明細書に記載のエーテル及び/又はチオエーテル結合により互いに連結している(PhSOPh)及び(Ph)の繰返し単位は、繰返し単位を形成することができる。ポリ(アリールエーテルスルホン)は、このような繰返し単位を含むことができる。
【0081】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、
式(1)
【化14】

で表される繰返し単位、もしくは、
式(2)
【化15】

で表される繰返し単位、
又はそれらの組合せ[式中、Xは、それぞれ独立して、O、S、又は−C(O)−であり、単位間で異なってもよく、k及びzは、本明細書で定義された通りであり、aは、0又は1である]を含む。
【0082】
一実施態様において、Xは、それぞれ独立して、O又はSである。
【0083】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、式(1a)〜(1e)、式(2a)〜(2c)、及びそれらの組み合わせ
【化16】

からなる群より選択される繰返し単位を含む。
【0084】
本発明における使用に適したポリ(アリールエーテルスルホン)は、他の繰返し単位を更に含むことができる。このような繰返し単位は、例えば、式(3)
【化17】

[式中、Aは、直接結合、酸素、硫黄、−C(O)−、又は二価の炭化水素基である]
で表される繰返し単位であることができる。
【0085】
ポリマーが求核合成の生成物である場合、式(3)で表される繰返し単位は、1つ以上のジオール、例えば、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン(2,6及び他の異性体);4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシビフェニルチオエーテル;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又はビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等に由来のものでありうる。ビスチオール、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニルチオエーテル等は、ビスハロゲン化アリール化合物、例えば、ビスハロゲン化フェニル化合物を、アルカリスルフィドもしくはポリスルフィド又はチオスルファートと反応させることにより形成することができる。
【0086】
一実施態様において、式(3)で表される繰返し単位は、式(3a)
【化18】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して、H又は(C〜C)アルキルである]
で表される繰返し単位であることができる。
【0087】
一実施態様において、式(3a)で表される繰返し単位は、式(3b)
【化19】

で表される繰返し単位であることができる。
【0088】
一実施態様において、式(3)で表される繰返し単位は、式(3c)
【化20】

[式中、Q及びQ’は、同じでも又は異なってもよく、CO又はSOであり、Arは、本明細書で定義されたアリーレンであり、yは、0、1、2、又は3であり、ただし、QがSOであるとき、yはゼロでない]
で表される繰返し単位であることができる。一実施態様において、Ar部は、フェニレン、ビフェニレン、又はターフェニレンである。
【0089】
一実施態様において、式(3c)で表される繰返し単位は、式(3d)
【化21】

[式中、mは、1、2、又は3である]
で表される繰返し単位であることができる。
【0090】
ポリマーが求核合成の生成物である場合、このような単位は、1つ以上のジハライド、例えば、4,4’−ジハロベンゾフェノン;4,4’ビス−(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル;1,4−ビス−(4−ハロベンゾイル)ベンゼン;又は4,4’−ビス−(4−ハロベンゾイル)ビフェニル由来のものでありうる。また、このような単位は、部分的に対応するビスフェノール由来のものでありうる。
【0091】
本明細書に記載の任意の2つ以上の繰返し単位が、1つの繰返し単位を形成していてもよく、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、このような繰返し単位を含んでいてもよい。
【0092】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、式(4a)、式(4b)、又はそれらの組み合わせ
【化22】

で表される繰返し単位を含む。
【0093】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ホモポリマー又はコポリマー、例えば、ランダムもしくはブロックコポリマーであることができる。
【0094】
ポリ(アリールエーテルスルホン)がコポリマーである場合、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、2種類以上の本明細書に記載の繰返し単位を含むことを意図している。
【0095】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、式(1a)〜(1f)、式(2a)〜(2b)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも2つの繰返し単位を含む。
【0096】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、式(1a)〜(1f)、式(2a)〜(2b)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位と、式(3a)〜(3d)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位とを含む。
【0097】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、式(1a)〜(1f)、式(2a)〜(2b)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位と、式(4a)及び(4b)ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの繰返し単位とを含む。
【0098】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ポリフェニルスルホン(PPSU)である。「ポリフェニルスルホン」又は「PPSU」という用語は、50wt%超の繰返し単位が式(1a)で表される繰返し単位である、ポリマーを意味する。ポリフェニルスルホンの、典型的には75wt%超、より典型的には85wt%超、更により典型的には95wt%超、更により典型的には99wt%超の繰返し単位が、式(1a)で表される繰返し単位である。
【0099】
PPSUは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。PPSUは特に、Solvay Specialty Polymers USA, L.L.CからRADEL(登録商標)PPSU又はDURADEX(登録商標)D-3000 PPSUとして、市販されている。
【0100】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ポリエーテルスルホン(PESU)である。「ポリエーテルスルホン」又は「PESU」という用語は、50wt%超の繰返し単位が式(2b)で表される繰返し単位である、ポリマーを意味する。ポリエーテルスルホンの、典型的には75wt%超、より典型的には85wt%超、更により典型的には95wt%超、更により典型的には99wt%超の繰返し単位が、式(2b)で表される繰返し単位である。最も典型的には、PESUの全ての繰返し単位は、式(2b)で表される繰返し単位である。
【0101】
PESUは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。PESUは特に、Solvay Specialty Polymers USA, L.L.CからVERADEL(登録商標)PESU又はBASFからのULTRASON(登録商標)として、市販されている。
【0102】
一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ビスフェノールAポリスルホン(PSU)である。「ビスフェノールAポリスルホン」又は「PSU」という用語は、50wt%超の繰返し単位が式(4a)で表される繰返し単位である、ポリマーを意味する。ビスフェノールAポリスルホンの、典型的には75wt%超、より典型的には85wt%超、更により典型的には95wt%超、更により典型的には99wt%超の繰返し単位が、式(4a)で表される繰返し単位である。最も典型的には、PSUの全ての繰返し単位は、式(4a)で表される繰返し単位である。
【0103】
PSUは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。PSUは特に、Solvay Specialty Polymers USA, L.L.CからUDEL(登録商標)PSUとして、市販されている。
【0104】
ある実施態様では、ポリ(アリールエーテルスルホン)の繰返し単位の相対比は、100×(SO重量)/(繰返し単位の平均重量)として定義された、SO含量の重量%換算で表現することができる。典型的には、SO含量は、少なくとも12%、より典型的には、13%〜32%である。上記比は、上記で言及された単位のみを意味する。
【0105】
上記された繰返し単位に加えて、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、最大50mole%、典型的には、最大25mole%の他の繰返し単位を含有することができる。このような場合には、好ましいSO含量の範囲(使用される場合には)を、ポリマー全体に適用する。
【0106】
本発明における使用に適したポリ(アリールエーテルスルホン)は市販されているか、又は当業者に公知の方法に従って調製することができる。例えば、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ハロフェノール及び/又はハロチオフェノールからの求核合成の生成物であることができる。求核合成において、ハロゲン、例えば、塩素又は臭素を、銅触媒の存在により活性化させることができる。ハロゲンが電子吸引基により活性化されている場合、このような活性化は不要なことが多い。典型的には、フッ素は、通常、塩素より活性である。典型的には、ポリ(アリールエーテルスルホン)の求核合成は、化学量論量の約2〜約50mole%過剰量の、1種以上のアルカリ金属炭酸塩の存在下、双極性非プロトン性溶媒の存在下において、150℃〜350℃の範囲の温度で行われる。あるいは、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、縮重合反応により得られ、又は、得ることができる。同反応において、少なくとも1つのジハロジフェニルスルホンは、少なくとも1つのジオールと縮重合される。必要に応じて、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、求電子合成によっても得ることができる。適切なポリ(アリールエーテルスルホン)及びそれらを調製するための方法の更なる実例は、米国特許第4,065,437号;同第4,108,837号;同第4,175,175号;同第4,839,435号;同第5,434,224号;及び同第6,228,970号に記載されている。これらの文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。適切なポリ(アリールエーテルスルホン)の及びそれらを調製するための方法更なる実例は、「Polysulfones」 by Fabrizio Parodi in 「Comprehensive Polymer Science」, vol. 5, pp. 561-591, Pergamon Press, 1989に記載されている。同文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0107】
ポリ(アリールエーテルスルホン)の数平均分子量は、典型的には、約2000〜約60000、より典型的には、約3000〜約35000、更により典型的には、約9000〜約35000である。ポリ(アリールエーテルスルホン)の数平均分子量は、約11000〜約35000、又は約3000〜約11000、又は約3000〜9000であることができる。
【0108】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、典型的には、非晶性であり、通常、ガラス転移点(Tg)を有する。ポリ(アリールエーテルスルホン)は、少なくとも150℃、典型的には、少なくとも160℃、より典型的には、少なくとも175℃のガラス転移点を有する。
【0109】
ある実施態様では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、約175℃超のTgを有する。一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、約200℃〜約225℃のTgを有する。一実施態様において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、約255℃〜約275℃のTgを有する。
【0110】
ポリ(アリールエーテルスルホン)のガラス転移点は、当技術分野において公知の任意の適切な技術により測定することができる。非常に多くの場合、ガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。例えば、DSC熱量計は、ポリ(アリールエーテルスルホン)のガラス転移点を測定するのに使用することができる。典型的には、DSC熱量計は、校正サンプルにより校正される。ついで、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、下記の加熱/冷却サイクルに供される。1回目の加熱(10℃/分の速度で室温から最大で350℃まで)、次いで20℃/分の速度で350℃から室温に冷却、次いで2回目の加熱(10℃/分の速度で室温から最大で350℃まで)。ガラス転移点は、2回目の加熱中に測定される。ガラス転移点は、熱流曲線における構築手法により、有利に決定される。曲線に対する第1の接線(転移領域の上)が構築される。曲線に対する第2の接線(転移領域の下)も構築される。2つの接線間の中線における曲線上の温度、即ち1/2ΔCpが、ガラス転移点である。
【0111】
少なくとも1つの正孔輸送材料と少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む本発明の組成物において、正孔輸送材料とポリ(アリールエーテルスルホン)との重量比(正孔輸送材料:ポリ(アリールエーテルスルホン)比)は、10:1〜1:10、典型的には、2:1〜1:6、より典型的には、1:1〜1:4であることができる。
【0112】
少なくとも1つの正孔輸送材料と少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む組成物は、正孔注入層(HIL)又は正孔輸送層(HTL)に有用であることが公知である、1つ以上の任意のマトリックス材料を更に含むことができる。
【0113】
マトリックス材料は、低分子量又は高分子量の材料であることができ、本明細書に記載の共役ポリマー及び/又はポリ(アリールエーテルスルホン)とは異なる。マトリックス材料は、例えば、共役ポリマー及び/又はポリ(アリールエーテルスルホン)とは異なる合成ポリマーであることができる。例えば、2006年8月10日に公表された米国特許出願公開公報第2006/0175582号を参照のこと。合成ポリマーは、例えば、炭素骨格を含むことができる。ある実施態様では、合成ポリマーは、酸素原子又は窒素原子を含む少なくとも1つのポリマー側鎖基を有する。合成ポリマーは、ルイス塩基であることができる。典型的には、合成ポリマーは、炭素骨格を含み、25℃超のガラス転移点を有する。また、合成ポリマーは、25℃以下のガラス転移点及び25℃超の融点を有する半結晶又は結晶ポリマーであることもできる。合成ポリマーは、酸基を含むことができる。
【0114】
マトリックス材料は、平坦化剤であることができる。マトリックス材料又は平坦化剤は、例えば、有機ポリマー等のポリマー又はオリゴマーを含むことができる。同有機ポリマーは、例えば、ポリ(スチレン)もしくはポリ(スチレン)誘導体;ポリ(ビニルアセタート)もしくはその誘導体;ポリ(エチレングリコール)もしくはその誘導体;ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート);ポリ(ピロリドン)もしくはその誘導体(例えば、ポリ(1−ビニルピロリドン−co−ビニルアセタート));ポリ(ビニルピリジン)もしくはその誘導体;ポリ(メチルメタクリラート)もしくはその誘導体;ポリ(ブチルアクリラート);ポリ(アリールエーテルケトン);ポリ(アリールスルホン);ポリ(エステル)もしくはその誘導体;又はそれらの組み合わせである。
【0115】
マトリックス材料又は平坦化剤は、例えば、少なくとも1つの半導体マトリックス成分を含むことができる。半導体マトリックス成分は、本明細書に記載の共役ポリマー及び/又はポリ(アリールエーテルスルホン)とは異なる。半導体マトリックス成分は、典型的には、主鎖及び/又は側鎖に正孔輸送単位を含む繰返し単位を含む、半導体小分子又は半導体ポリマーであることができる。半導体マトリックス成分は、ニュートラル状態にあってもよく、又は、ドープされていてもよく、典型的には、有機溶媒、例えば、トルエン、クロロホルム、アセトニトリル、シクロヘキサノン、アニソール、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、エチルベンゾアート、及びそれらの混合物に可溶性である。
【0116】
任意のマトリックス材料の量を、正孔輸送材料と任意のドーパントを合わせた量に対する重量%として制御し、測定することができる。例えば、その量は、0〜99.5wt%、典型的には、約10wt%〜約98wt%、より典型的には、約20wt%〜約95wt%であることができる。0wt%の実施態様では、本組成物は、マトリックス材料を更に含むものではない。
【0117】
一実施態様において、少なくとも1つの正孔輸送材料と少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む組成物は、少なくとも1つのマトリックス材料を更に含む。
【0118】
また、本発明は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)と、液状担体とを含む、インク組成物に関する。
【0119】
本発明のインク組成物に使用される液状担体は、デバイスにおける他の層、例えば、アノード又は発光層との使用及びその処理に適合した、溶媒又は2つ以上の溶媒を含む溶媒ブレンドを含むことができる。液状担体は、水性又は非水性であることができる。
【0120】
種々の溶媒又は溶媒ブレンドを、液状担体として使用することができる。有機溶媒、例えば、非プロトン性溶媒を使用することができる。非プロトン性非極性溶媒の使用は、少なくとも一部の例において、プロトンに感受性のエミッタ技術を伴うデバイスの延長した寿命という更なる利益を提供することができる。このようなデバイスの例は、PHOLEDを含む。
【0121】
液状担体に使用するのに適した他の溶媒は、脂肪族及び芳香族ケトン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、クロロホルム、アルキル化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジオキサン、エチルアセタート、エチルベンゾアート、メチルベンゾアート、ジメチルカーボナート、エチレンカーボナート、プロピレンカーボナート、3−メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。共役ポリマー及び/又はポリ(アリールエーテルスルホン)は、典型的には、これらの溶媒への溶解性及びそれらの中での加工性が非常に高い。
【0122】
脂肪族及び芳香族ケトンは、アセトン、アセトニルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、メチルイソブテニルケトン、2−ヘキサノン、2−ペンタノン、アセトフェノン、エチルフェニルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンを含むが、これらに限定されない。ある実施態様では、これらの溶媒は避けられる。ある実施態様では、ケトンに対してアルファに位置する炭素にプロトンを有するケトン、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びアセトンは避けられる。
【0123】
他の溶媒で、共役ポリマーを可溶化し、共役ポリマーを膨潤させ、又は共役ポリマーの非溶媒として作用するものまでも考慮することができる。このような他の溶媒は、液状担体中に、インク特性、例えば、湿潤性、粘度、形態制御を改変するために、可変量で含ませることができる。
【0124】
考慮される溶媒は、エーテル、例えば、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、ならびにグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールジエーテル(例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン及び1,2−ジブトキシエタン);ジエチレングリコールジエーテル(例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテル);プロピレングリコールジエーテル(例えば、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールジブチルエーテル);ジプロピレングリコールジエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル及びジプロピレングリコールジブチルエーテル);ならびに、本明細書で言及されたエチレングリコール及びプロピレングリコールエーテルの高次類似体(すなわち、トリ−及びテトラ−類似体)を含むことができる。
【0125】
更に他の溶媒、例えば、エチレングリコールモノエーテルアセタート及びプロピレングリコールモノエーテルアセタートを考慮することができる。そしてここで、エーテルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及びシクロヘキシルから選択することができる。また、上記で列記されたものの高次のグリコールエーテル類似体、例えば、ジ−、トリ−、及びテトラ−も考慮される。例としては、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタートを含むが、これらに限定されない。
【0126】
本明細書で開示されるように、1つ以上の溶媒は、液状媒体中において、例えば、インク特性、例えば、基板湿潤性、溶媒の除去容易性、粘性、表面張力、及び噴射性を改善するために、可変割合で使用することができる。
【0127】
本発明のインク組成物中の固形分量は、約0.1wt%〜約10wt%、典型的には、約0.3wt%〜約10wt%、より典型的には、約0.5wt%〜約5wt%である。
【0128】
本発明のインク組成物中の液状担体量は、約90wt%〜約99wt%、典型的には、約90wt%〜約95wt%である。
【0129】
少なくとも1つの正孔輸送材料(典型的には共役ポリマー)と、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)と、液状担体とを含む、本発明のインク組成物を、場合により、最終的なデバイスの電子特性を改善するのに使用される電極又は更なる層を含有する基板上に、薄膜としてキャストし、アニーリングすることができる。得られた薄膜は、1つ以上の有機溶媒(これは、デバイスの製造中に、後からコートされ又は堆積される層のためのインクにおける液状担体として使用される溶媒でありうる)に対し抵抗性であってよい。薄膜は、例えば、トルエン(これは、デバイスの製造中に、後からコートされ又は堆積される層のためのインクにおける溶媒でありうる)に対し抵抗性であってよい。
【0130】
また、本発明は、少なくとも1つの正孔輸送材料と、少なくとも1つのポリ(アリールエーテルスルホン)とを含む、デバイスに関する。本明細書に記載のデバイスは、例えば溶液法を初めとする、当技術分野において公知の方法により製造することができる。インクは、塗工することができ、溶媒は、標準的な方法により除去することができる。
【0131】
方法は当技術分野において公知であり、例えばOLED及びOPVデバイスを初めとする、有機電子デバイスを製造するのに使用することができる。当技術分野において公知の方法が、輝度、効率、及び寿命を測定するのに使用することができる。有機発光ダイオード(OLED)は、例えば、米国特許第4,356,429号及び同第4,539,507号(Kodak)に記載されている。光を発する導電性ポリマーは、例えば、米国特許第5,247,190号及び同第5,401,827号(Cambridge Display Technologies)に記載されている。デバイスアーキテクチャ、物理原理、溶液処理、多層化、ブレンド、ならびに材料の合成及び配合は、Kraft et al., 「Electroluminescent Conjugated Polymers-Seeing Polymers in a New Light,」 Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 402-428に記載されている。同文献は、その全体が参照により組み入れられる。
【0132】
当技術分野において公知であり、市販されている発光素子を使用することができ、これには、Sumation、Merck Yellow、Merck Blue、American Dye Sources(ADS)、Kodak(例えば、A1Q3等)及びAldrichからさえ入手できる材料のような、種々の導電性ポリマーならびに有機分子、例えばBEHP-PPVが含まれる。このような有機エレクトロルミネッセント材料の例は、
(i)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びフェニレン部分における種々の位置で置換されているその誘導体;
(ii)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びビニレン部分における種々の位置で置換されているその誘導体;
(iii)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びフェニレン部分における種々の位置で置換されており、ビニレン部分における種々の位置でも置換されているその誘導体;
(iv)ポリ(アリーレンビニレン)であって、アリーレンが、例えば、ナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾール等の部分であることができるポリ(アリーレンビニレン);
(v)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体であって、アリーレンが、上記(iv)にある通りであることができ、アリーレンにおける種々の位置に置換基を更に有するポリ(アリーレンビニレン)の誘導体;
(vi)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体であって、アリーレンが、上記(iv)にある通りであることができ、ビニレンにおける種々の位置に置換基を更に有するポリ(アリーレンビニレン)の誘導体;
(vii)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体であって、アリーレンが、上記(iv)にある通りであることができ、アリーレンにおける種々の位置に置換基及びビニレンにおける種々の位置に置換基を更に有するポリ(アリーレンビニレン)の誘導体;
(viii)アリーレンビニレンオリゴマー、例えば、(iv)、(v)、(vi)、及び(vii)におけるものと、非共役オリゴマーとのコポリマー;ならびに
(ix)ポリ(p−フェニレン)及びフェニレン部分における種々の位置で置換されているその誘導体(ラダーポリマー誘導体、例えば、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)等を含む);
(x)ポリ(アリーレン)であって、アリーレンが、ナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾール等の部分であることができるポリ(アリーレン)及びアリーレン部分における種々の位置で置換されているその誘導体;
(xi)オリゴアリーレン、例えば、(x)におけるものと、非共役オリゴマーとのコポリマー;
(xii)ポリキノリン及びその誘導体;
(xiii)ポリキノリンと、例えば、溶解性を提供するためのアルキル又はアルコキシ基でフェニレンが置換されているp−フェニレンとのコポリマー;ならびに
(xiv)剛直棒状ポリマー、例えば、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスチアゾール)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンズイミダゾール)、及びそれらの誘導体;
(xv)ポリフルオレンポリマー及びポリフルオレン単位とのコポリマー
を含む。
【0133】
好ましい有機発光ポリマーは、緑、赤、青もしくは白色の光を発するSUMATION Light Emitting Polymers(「LEP」)又はそのファミリー、コポリマー、誘導体、又はそれらの混合物を含む。SUMATION LEPは、SUMATION KKから入手できる。他のポリマーは、Covion Organic Semiconductors GmbH, Frankfurt, Germany(現在は、Merck(登録商標)により買収済み)から入手できるポリスピロフルオレン様ポリマーを含む。
【0134】
あるいは、ポリマー以外では、蛍光又はリン光を発する有機小分子は、有機エレクトロルミネッセント層として機能することができる。小分子の有機エレクトロルミネッセント材料の例は、(i)トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq);(ii)1,3−ビス(N,N−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキシダゾール(OXD−8);(iii)−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリナト)アルミニウム;(iv)ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム;(v)ビス(ヒドロキシベンゾキノリナト)ベリリウム(BeQ.sub.2);(vi)ビス(ジフェニルビニル)ビフェニレン(DPVBI);及び(vii)アリールアミン−置換されているジスチリルアリーレン(DSAアミン)を含む。
【0135】
このようなポリマー及び小分子材料は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,047,687号に記載されている。
【0136】
本デバイスは、多くの場合において、例えば、溶液又は真空処理、ならびに、印刷及びパターン化処理により調製することができる多層構造を使用して製造することができる。特に、本組成物が正孔注入層として使用するために配合されている、正孔注入層(HIL)について本明細書に記載の実施態様の使用を、効果的に行うことができる。
【0137】
デバイスにおけるHILの例は、
1)PLED及びSMOLEDを含めたOLEDにおける正孔注入(例えば、PLEDにおけるHILについて、コンジュゲーションが炭素又はケイ素原子を含む全ての分類の共役ポリマーエミッタを使用することができる。SMOLEDにおけるHILについて、下記のものが例となる。蛍光エミッタを含有するSMOLED、リン光エミッタを含有するSMOLED、HIL層に加えて1つ以上の有機層を含むSMOLED、及び小分子層が溶液もしくはエアロゾル噴霧又は任意の他の処理法から処理されるSMOLED。加えて、他の例は、OLEDに基づくデンドリマー又はオリゴマー有機半導体におけるHIL、HILが電荷注入を改変するのに又は電極として使用される二極性発光FETにおけるHILを含む);
2)OPVにおける正孔抽出層;
3)トランジスタにおけるチャネル材料;
4)トランジスタ、例えば、論理ゲートの組み合わせを含む回路におけるチャネル材料;
5)トランジスタにおける電極材料;
6)キャパシタにおけるゲート層;
7)ドーピングレベルの改変が知覚される種の導電性ポリマーとの会合により達成される化学センサ;
8)バッテリーにおける電極又は電解質材料;
を含む。
【0138】
各種の光活性層を、OPVデバイスに使用することができる。光電池デバイスは、例えば、米国特許第5,454,880号;同第6,812,399号;及び同第6,933,436号に記載された導電性ポリマー等と混合させたフラーレン誘導体を含む光活性層により作製することができる。光活性層は、導電性ポリマーのブレンド、導電性ポリマーと半導体ナノ粒子とのブレンド、小分子、例えば、フタロシアニン、フラーレン、及びポルフィリンの二重層を含むことができる。
【0139】
一般的な電極材料及び基板ならびに封止材料を使用することができる。
【0140】
一実施態様において、カソードは、Au、Ca、Al、Ag、又はそれらの組み合わせを含む。一実施態様において、アノードは、酸化インジウムスズを含む。一実施態様において、発光層は、少なくとも1つの有機化合物を含む。
【0141】
界面変性層(例えば中間層)及び光学スペーサ層等を使用することができる。
【0142】
電子輸送層を使用することができる。
【0143】
また、本発明は、本明細書に記載のデバイスを製造する方法に関する。
【0144】
一実施態様において、デバイスを製造する方法は、基板を提供することと、透明導電体、例えば、酸化インジウムスズ等をこの基板上に積層することと、本明細書に記載のインク組成物を提供することと、このインク組成物を透明導電体上に積層して、正孔注入層又は正孔輸送層を形成することと、活性層を正孔注入層又は正孔輸送層(HTL)上に積層することと、カソードを活性層上に積層することとを含む。
【0145】
基板は、可撓性又は強直であることができ、有機又は無機であることができる。適切な基板材料は、例えば、ガラス、セラミック、金属、及びプラスチックフィルムを含む。
【0146】
別の実施態様では、デバイスを製造する方法は、本明細書に記載のインク組成物を、OLED、光電池デバイス、ESD、SMOLED、PLED、センサ、スーパーキャパシタ、カチオントランスデューサ、薬剤放出デバイス、エレクトロクロミックデバイス、トランジスタ、電界効果トランジスタ、電極改質剤、有機電界トランジスタ用の電極改質剤、アクチュエータ、又は透明電極におけるHIL又はHTL層の一部として塗工することを含む。
【0147】
インク組成物を積層してHIL又はHTL層を形成することは、当技術分野において公知の方法により行うことができる。同方法は、例えば、スピンキャスト、スピンコート、ディップキャスト、ディップコート、スロットダイコート、インクジェット印刷、グラビアコート、ドクターブレード、及び、例えば、有機電子デバイスの製造について当技術分野において公知の任意の他の方法を含む。
【0148】
一実施態様において、HIL層は熱アニーリングされる。一実施態様において、HIL層は、約25℃〜約250℃、典型的には、150℃〜約200℃の温度で熱アニーリングされる。一実施態様において、HIL層は、約25℃〜約250℃、典型的には、150℃〜約200℃の温度で、約5〜約40分間、典型的には、約15〜約30分間熱アニーリングされる。一実施態様において、HIL層は、液状担体を除去するのに加熱される。
【0149】
光の透過性は重要である。より大きい膜厚での良好な透過性が、特に重要である。例えば、約400〜800nmの波長を有する光の少なくとも約85%、典型的には、少なくとも約90%の透過率(典型的には、基板を含む)を示すことができる、HIL又はHTLを調製することができる。一実施態様において、透過率は、少なくとも約90%である。
【0150】
一実施態様において、HIL層は、約5nm〜約500nm、典型的には、約5nm〜約150nm、より典型的には、約50nm〜120nmの厚みを有する。
【0151】
一実施態様において、HIL層は、少なくとも約90%の透過率を示し、約5nm〜約500nm、典型的には、約5nm〜約150nm、より典型的には、約50nm〜120nmの厚みを有する。一実施態様において、HIL層は、少なくとも約90%の透過率(%T)を示し、約50nm〜120nmの厚みを有する。
【実施例】
【0152】
本発明は、下記の非限定的な実施例により更に例示される。
【0153】
実施例1.ドープされた共役ポリマーの調製
ドープされた共役ポリマーを、以下の一般的手順に従って調製した。ドープされた共役ポリマーの調製を、不活性雰囲気のグローブボックス中において行った。共役ポリマー溶液を、一定量の所望の共役ポリマーを1つ以上の溶媒中に溶解させることにより調製した。次に、ドーパント溶液を、一定量の銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートドーパントを、共役ポリマーを溶解させるのに使用した1つ以上の溶媒と同じでも又は異なってもよい別の1つ以上の溶媒に加え、溶解するまで攪拌することにより調製した。いくらかの量の銀粉末(Aldrich Cat. #327093)を、攪拌しながら、ドーパント溶液に加えた。ついで、共役ポリマー溶液を、ドーパント溶液に加えた。攪拌を、約2〜約66時間継続した。ついで、この溶液を、0.45ミクロンPTFEフィルタによりろ過した。ついで、溶媒を除去してドープされた導電性ポリマーを単離した。
【0154】
ドープされた共役ポリマーの全体的な調製の実例は、ドープされたポリ[3,4−ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン](ポリ[3,4−ジBEET]の調製である。共役ポリマー溶液を、ポリ[3,4−ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン] 2.64gを無水ジクロロメタン 349g中に溶解させることにより調製した。次に、ドーパント溶液を、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートドーパント 1.71gを無水ジクロロメタン 226gに加え、溶解するまで攪拌することにより調製した。この時点で、銀粉末 10.5gを、攪拌しながら、ドーパント溶液に加えた。ついで、共役ポリマー溶液を、ドーパント溶液に加えた。攪拌を、66時間継続した。ついで、溶液を、0.45ミクロンPTFEフィルタによりろ過した。ついで、ジクロロメタンを、ロータリーエバポレーションにより除去して、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートでドープしたポリ[3,4−ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン] 3.93gを単離した。
【0155】
ドープされた共役ポリマーの更なる例を、本明細書に記載の一般的手順を使用して調製した。ドープされた共役ポリマーを調製するのに使用した材料及び量を、表1にまとめる。
【0156】
【表1】
【0157】
実施例2.インク組成物
HILインク組成物を、特に断りない限り、不活性雰囲気下に、下記の一般的手順に従って調製した。一定量の実施例1において調製されたドープされた共役ポリマーを、1つ以上の無水溶媒に溶解させた。第2の溶液を、一定量のポリ(アリールエーテルスルホン)を1つ以上の溶媒に溶解させることにより調製した。ついで、ポリ(アリールエーテルスルホン)溶液を、攪拌しながら、ドープされた共役ポリマー溶液に加えて、インク組成物を形成した。
【0158】
例えば、実施例1.3のドープされた共役ポリマー 240mgを、不活性雰囲気中において、無水NMP 9.36gに溶解させた。第2の溶液を、VERADEL(登録商標)3600ポリエーテルスルホン 160mgを無水NMP 6.24gに溶解させることにより調製した。ポリエーテルスルホン溶液を、攪拌しながら、ドープされた共役ポリマー溶液に加えた。
【0159】
一般的手順に従った本発明のHILインク組成物の例を、使用された材料及び量を含めて、実施例2.1〜2.15として、表2にまとめる。比較例2.16及び2.17を、表2に含める。
【0160】
表2において使用しているように、AN/PCNは、アニソール/3−メトキシプロピオニトリルブレンド(重量比2:1)を意味する。NMPは、N−メチルピロリジノンを意味する。MB/PCNは、メチルベンゾアート/3−メトキシプロピオニトリルブレンド(重量比2:1)を意味する。DMFは、ジメチルホルムアミドを意味する。DMAcは、ジメチルアセトアミドを意味する。
【0161】
【表2】


【0162】
実施例3.単極性デバイス製造
本明細書に記載の単極性の単電荷キャリアデバイスを、ガラス基板上に堆積させた酸化インジウムスズ(ITO)表面上に作製した。ITO表面を、予めパターン化して、ピクセル面積0.05cm2を画定した。HILインク組成物を基板上に堆積させる前に、基板の事前調整を行った。まず、デバイス基板を、種々の溶液又は溶媒中での超音波処理により洗浄した。デバイス基板を、希釈石鹸液、続けて、蒸留水、ついで、アセトン、及びついで、イソプロパノール中で、それぞれ約20分間超音波処理した。この基板を、窒素気流下で乾燥させた。ついでその後、デバイス基板を、120℃に設定した真空オーブンに移し、使用できるようになるまで、(窒素パージによる)部分的真空下に維持した。このデバイス基板を、使用直前に、300Wで動作するUV−オゾンチャンバ中において、20分間処理した。
【0163】
HILインク組成物をITO表面上に堆積させる前に、インク組成物を、PTFE0.45μmフィルタでろ過する。
【0164】
HILを、デバイス基板上にスピンコートにより形成した。一般的には、ITOパターン化基板上でのスピンコート後のHILの厚みは、複数のパラメータ、例えば、スピン速度、スピン時間、基板サイズ、基板表面の質、及びスピンコーターの設計により決定される。特定の層厚を得るための一般的な規則は、当業者に公知である。スピンコート後、HIL層を、ホットプレート上で、典型的には、150℃〜200℃の温度において、15〜30分間乾燥させた。
【0165】
コーティング及び乾燥プロセスにおける全ての工程を、不活性雰囲気下で行う。
【0166】
コーティング厚を、粗面計(Veeco Instruments, Model Dektak 8000)により測定し、3回の読取値の平均として報告した。%透過率として与えられる薄膜の透明性を、UV−可視−NIR分光計(Cary 5000)により、100%に割り当てるコートされていない基板に対して測定した。
【0167】
実施例2の本発明のHILインク組成物から形成された、幾つかの本発明のHIL層の薄膜特性を、表3にまとめる。比較例3.4及び3.5を含める。
【0168】
【表3】
【0169】
ついで、本発明のHIL層を含む基板を、真空チャンバに移した。同真空チャンバにおいて、デバイススタックの残りの層を、例えば、物理的蒸着により堆積させた。
【0170】
N,N’−ビス(1−ナフタレニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(NPB)を、正孔輸送層として、HILの上面上に堆積させ、続けて、金(Au)又はアルミニウム(Al)カソードを堆積させた。これはHILの、HTLへの正孔のみの注入効率を研究する単極性デバイスである。
【0171】
実施例4.単極性デバイスの試験
単極性デバイスは、ガラス基板上にピクセルを含み、ガラス基板の電極は、このデバイスの封止領域の外側に伸びており、この封止領域は、ピクセルの発光部分を含む。各ピクセルの典型的な面積は、0.05cm2である。電極を、電流ソースメータ、例えばKeithley 2400ソースメータと接触させた。ITO電極にはバイアスを印加し、一方、金又はアルミニウム電極を接地した。これにより、正に帯電したキャリア(正孔)のみがこのデバイス内に注入される結果となる(正孔オンリーデバイス)。この実施例では、HILは、正孔輸送層への電荷キャリアの注入を支援する。これにより、デバイスの低い動作電圧(ピクセルを介して所定の電流密度を流すのに必要とされる電圧として定義される)がもたらされる。
【0172】
単極性デバイス用の典型的なデバイススタックは、ターゲット薄膜厚を含めて、ITO(220nm)/HIL(100nm)/NPB(150nm)/Al(100nm)である。本発明のHILを含む単極性デバイスの特性を、表4にまとめる。比較例4.3及び4.4を含める。
【0173】
【表4】