(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サーバー部は、収集した前記処理剤の残量情報を解析し、前記処理剤貯留部に補充すべき処理剤の時期および量を、在庫管理者や処理剤納入業者などの関係者に通知する機能を有する、請求項1に記載の排ガスを処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
前記処理剤の残量情報は、前記処理剤貯留部に設けた処理剤の残量測定計からの情報、前記処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報、前記処理剤供給部と前記排ガス処理部との間に設けられた処理剤の供給量測定計からの情報、および前記処理剤供給部の稼働信号からの情報のうちの少なくとも1つの情報である、請求項1または2に記載の排ガスを処理するために用いる処理剤の在庫管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
<処理剤の在庫管理システム>
図1は、本実施形態に係る処理剤の在庫管理システムの構築例の概略フロー図を示したものである。なお、
図1において、各ブロックを繋ぐ線のうち、実線は物の流れ、一点鎖線は情報の流れを表している。
【0020】
本実施形態に係る処理剤の在庫管理システム1は、排ガス処理部11と処理剤貯留部12と処理剤添加管理部13と処理剤供給部14とサーバー部15とで主として構成されている。
【0021】
このような在庫管理システム1は、処理剤貯留部12に貯留されている処理剤の残量情報を収集して管理するサーバー部15を有することにより、自動的に処理剤の残量を正確に予測して、在庫管理の煩雑さを解消するとともに、在庫切れを抑制することができる。そして、このような在庫管理システム1は、例えば、長期的かつ連続的に排ガスを処理する必要がある焼却設備において、日々の在庫管理が大幅に削減され、効率的な運用が可能となる。また、処理剤のメーカーにおいても、緊急発注の回数が削減され、処理剤の製造や納入を効率的に行うことができる。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0022】
〔排ガス処理部〕
排ガス処理部11は、排ガスに対し処理を施すものである。上述したとおり、排ガスは、塩化水素や硫黄酸化物を含む酸性ガスであるため、大気への排出に先立って、酸性ガスを中和して環境への有害ガスの排出を抑制する必要がある。そこで、排ガス処理部11では、排ガスに対し処理剤を添加して中和する。
【0023】
詳細は後述するが、処理剤としては、アルカリ剤を用いる。このような処理剤は、排ガスと接触させることで、接触した排ガス中に含まれる酸性ガスを中和することができる。
【0024】
排ガス処理部11としては、排ガスと固体である処理剤を接触させて反応させることができるものであれば特に限定されず、例えば煙道(ガスの流路)の一部などを排ガス処理部とすることができる。このうち、煙道としては、具体的に、ガスを後段のバグフィルターなどの集塵機へ移送するための移送管などの一部を用いてもよい(以下、特に排ガス処理部11としての煙道を「反応管」ということもある)。さらに、排ガス処理部11は、煙道(ガスの流路)に、追加的に設けた閉鎖的な容器、各種反応容器などで構成することもできる。
【0025】
なお、排ガスに含まれる酸性ガスは、必ずしもその場(排ガス処理部11)で全量を化学的に中和する必要はなく、処理剤が排ガスとともに移送されるにしたがって、その後段(例えば、排ガス処理部11から集塵部16までの煙道)で中和してもよい。例えば、処理剤として消石灰を用いた場合、消石灰は酸性ガスとの反応が遅いので、このようなことが起り得る。
【0026】
また、排ガスとしては、その発生源や含有成分について特に限定されるものではなく、各種の廃棄物の焼却により生成した排ガスを用いることができる。
【0027】
排ガスの処理は連続式で行うことができる。また、例えば閉鎖的な容器や気相反応用の各種反応容器を用いるなどして、バッチ式で行ってもよい。いずれの場合においても、排ガスの処理量は特に限定されず、廃棄物の焼却により発生する排ガス量等を考慮して適宜設計することができる。
【0028】
なお、排ガスが、焼却炉Fにおいて廃棄物が焼却されて生成したものである場合、例えば以下の経路を経て処理される。焼却炉Fにおいて生成した排ガスは、ボイラーおよび減温塔(いずれも図示せず)を経由することにより冷却され、後述する処理剤添加管理部13の排ガス分析部131に移送される。この排ガス分析部131で、例えば酸性ガス濃度などを分析した後、この排ガス処理部11にて、上述のとおり処理される。次いで、集塵部16(例えばバグフィルター)にて、飛灰が除去(回収)される。その後、排ガス分析部132で、例えば酸性ガス濃度などを分析し、排ガス基準以下であることを確認の上、大気中に排出される。なお、集塵部16で除去された飛灰は、さらに重金属などを固定化し除去して埋め立てなどの処理がなされる。
【0029】
〔処理剤貯留部〕
処理剤貯留部12は、排ガスを処理するための処理剤を貯留するものである。本実施形態における処理剤の在庫管理システム1では、後述するサーバー部15によって、処理剤貯留部12に貯留されている処理剤の残量を管理する。
【0030】
処理剤貯留部12としては、処理剤を貯留することができるものであれば特に限定されないが、例えば、貯留タンクやサイロを用いることができる。
【0031】
処理剤貯留部12の貯留容量や形状としては、特に限定されず、その設置スペースや排ガス処理の稼働計画、排ガスの処理量、排ガスの処理頻度、処理剤の発注頻度等を考慮して適宜設計することができる。
【0032】
〔処理剤添加管理部〕
処理剤添加管理部13は、排ガス処理部11の上流側及び下流側のうち、少なくとも一方の側に位置する排ガス分析部、
図1では、排ガス処理部11の上流側及び下流側の双方にそれぞれ位置する排ガス分析部131及び132を有し、排ガス分析部131及び132によって排ガスを分析し、排ガス処理部131、132において排ガスの処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示するものである。なお、ここにおける「上流側」及び「下流側」とは、排ガスの流れにおける上流、下流をいう。
【0033】
このように、処理剤添加管理部13を利用して排ガスを処理する場合、排ガス分析部131及び132による分析結果に基づいて添加量を決定する。このようにして排ガスを処理する場合、処理剤の添加量は、処理すべき排ガスの性質(例えば、酸性ガスの濃度など)に応じて変動するため一定とならず、処理剤の在庫を管理する必要性が生じる。そこで、本実施形態のような在庫管理システムが必要となる。
【0034】
処理剤の添加管理の具体的手段としては、排ガスを分析し、排ガス処理部11に供給された量の排ガスの処理に必要な処理剤の添加量を算出できる構成を有していればよく、特に限定されないが、排ガス中の酸性ガス濃度を分析して、それらを中和するために必要な処理剤の量を算出する方法(フィードフォワード制御)や、処理後の排ガス中の酸性ガス濃度に基づいて必要な処理剤の量を算出する方法(フィードバック制御)が多く知られている。
【0035】
(排ガス分析部)
排ガス分析部131、132は、処理剤添加管理部13を構成するものであり、それぞれ処理剤添加前後の排ガスの性質を分析するものである。
【0036】
上述したとおり、
図1では、排ガス処理部11の上流側及び下流側の双方に位置する排ガス分析部131及び132を有する例を示しているが、排ガス分析部は、排ガス処理部11の上流側及び下流側のうち、少なくとも一方の側に配置されていればよく、また、両方の側に配置されていてもよい。
【0037】
排ガス処理部11の上流側に配置されたガス分析部131では、排ガス処理部11にて処理すべき排ガスを分析することができる。ガス分析部131における分析対象である排ガスの性質としては、特に限定されない。例えば、酸性ガス濃度を測定することで排ガスの中和に必要な処理剤の量を算出することができる。また、所定の体積の排ガスを採取して、実際にアルカリを添加して排ガスの中和に必要な処理剤の量を算出することもできる。
【0038】
排ガス処理部11の下流側に配置されたガス分析部132では、排ガス処理部11にて処理された後の排ガスを分析することができる。ガス分析部132における分析対象である排ガスの性質としては、特に限定されず、例えば、排ガス処理部11で添加した処理剤と、処理された後の酸性ガス濃度との関係から、排ガスの中和に必要な処理剤の量を算出することができる。
【0039】
また、排ガス処理部11の上流側及び下流側にそれぞれ配置されたガス分析部131及び132から得られる分析結果を相互に照らし合わせることで、排ガスの中和に必要な処理剤の量をより正確に算出することもできる。ガス分析部132を排ガス処理部11の下流側に配置する場合、ガス分析部132は、この集塵部16との位置関係において、上流側であっても、下流側であってもよい。
【0040】
さらに、処理剤の使用量の算出精度をより高めるために、酸性ガスの質量を求めることを目的として、排ガス流量計19より求められる排ガス流量を用いてもよい。ガス分析部131及び132から得られるそれぞれの酸性ガス濃度の差分に対して、排ガス流量を積算することで、処理が求められる酸性ガスの質量をより精度よく算出することができる。なお、
図1においては、排ガス流量計19をガス分析部132の後段に配置しているが、排ガス流量計19の位置はこの例に限定されない。
【0041】
〔処理剤供給部〕
処理剤供給部14は、処理剤添加管理部13により指示された添加量の処理剤を、処理剤貯留部12から排ガス処理部11に供給するものである。
【0042】
処理剤供給部14は、処理剤を処理剤貯留部12から排ガス処理部11に所定量供給できる構成であればよく、特に限定はされないが、例えば、定量フィーダーや、ポンプ、粉体供給機で構成することができる。
【0043】
(処理剤)
処理剤は、排ガス中の酸性ガスを中和する機能を有する。処理剤としては、特に限定されず、液体状であっても、あるいは粉末状(固体状)であってもよいが、排ガスを分析することでその添加量が算出可能である成分を有することが必要である。
【0044】
処理剤として、粉末状のものを用いる場合、その平均粒子径としては、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。処理剤の平均粒子径が1μm以上であることにより、後段の集塵部16における差圧上昇の防止や、集塵効率の低下による排ガス中の煤塵濃度の上昇を防ぐことができる。また、処理剤の平均粒子径としては、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。処理剤の平均粒子径が50μm以下であることにより、排ガスが接触するのに十分な大きな処理剤の比表面積を確保することができる。
【0045】
処理剤としては、特に限定されるものでなく、例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム−水酸化マグネシウム、酸化カルシウム−酸化マグネシウム、炭酸カルシウム−炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを用いることができる。処理剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
なお、処理剤添加管理部13から送信される処理剤の添加量に関する指示は、例えば排ガス処理部11の上流側に設けた定量フィーダーなどの処理剤供給部14に伝達され、その指示に基づき処理剤供給部14を作動させて、排ガス処理部11に所定量の処理剤を添加することができる。
【0047】
〔サーバー部〕
サーバー部15は、処理剤貯留部12に貯留されている処理剤の残量情報を、直接または間接的に収集して管理する。そして、このような残量情報は、サーバー部15を通じて、例えば在庫管理者や処理剤納入業者などの関係者が取得することができるため、それらの関係者は、処理剤貯留部12内の処理剤を直接確認することなく、処理剤の残量を容易に把握することができる。また、サーバー部15は、排ガス処理部11における排ガスの処理を、一定量(例えば、一定流量、一定時間、または一つのバッチ)の排ガスあたり、一定の添加量の処理剤で処理した場合における、処理剤貯留部内の処理剤の残量が、排ガスの処理回数や処理時間で、一定量ずつ減少するときの数値などを予め記憶させたデータベースや、データベースに記憶させた情報(例えば数値)を用いて、種々の情報(例えば数値)を算出する演算回路を有することが好ましい。
【0048】
残量情報としては、例えば、処理剤貯留部12に設けた処理剤の残量測定計17からの情報、処理剤添加管理部13で算出した処理剤添加量の情報、処理剤供給部14と排ガス処理部11との間に設けられた処理剤の供給量測定計18(
図1参照)からの情報などを用いることができる。また、処理の対象が、特に廃棄物を処理した焼却炉Fから生成される排ガスである場合には、その焼却炉Fにおける廃棄物の予定処理量から生成される排ガスの予測生成量の情報を用いることもできる。残量情報としては、これらの情報のうちの少なくとも1つの情報を用いればよく、特に処理剤添加管理部13で算出した処理剤添加量の情報を用いることが好ましい。処理剤添加管理部13で算出した処理剤添加量の情報は、処理剤の添加量が変動する場合であっても、処理剤貯留部12内に貯留されている処理剤の残量の消費速度(割合)を正確に予測することができ、また、処理剤が粉体である場合に生じる、内部でのブリッジングなどの不具合発生に伴う残量測定計17の誤作動によって処理剤の残量情報が不正確になるのを修正することができ、さらに、残量情報を連続的に測定できることも利点である。また、処理剤添加管理部13は、処理剤と直接接触させることも、処理剤と同じ系内に配置することもないため、表面に析出物が付着することによる誤作動も生じない。なお、処理剤貯留部12内に貯留されている処理剤の残量をより正確に予測する観点から、残量情報として、2つ以上の情報を併用することがより好適である。
【0049】
(処理剤貯留部に設けた処理剤の残量測定計からの情報)
処理剤貯留部12には、残量を測定すべき処理剤の全量が貯留されている。したがって、ここに貯留されている処理剤を、残量測定計17で測定した情報から、処理剤貯留部12における処理剤の残量を予測することができる。
【0050】
残量測定計17としては、特に限定されず、レベル計や重量計などを用いることができる。これらの残量測定計17は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
レベル計は、レーザー式、超音波式、光学式、フロート式、圧力・差圧式、電圧式等、その測定原理に基づき多数の種類が存在するが、測定の対象である処理剤の特性に合わせて、選択することができる。このレベル計を用いることで、通常、直接的に処理剤などの粉体高さまたは液高さの情報が得られる。したがって、処理剤貯留部12の底部の面積や、処理剤などの密度(処理剤が粉体の場合にはさらに圧密)が既知であれば、残量を直接的に算出することができる。なお、処理剤を新たに納品した際に測定したレベル計の値と、納品量との関係から、処理剤等の密度を見積もることができる。また、新たに処理剤を納品した際にレベル計で測定した値との関係から、残量の減少割合を算出することができる。
【0052】
重量計は、例えば処理剤貯留部12の下流側などに設置して用いる。重量計を用いることで、通常、直接的に処理剤などの重量の情報が得られる。
【0053】
(処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報)
上述したとおり、処理剤添加管理部13は、排ガスの処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示するものであるため、処理剤添加管理部13が、排ガスを処理するにあたって、毎回、処理剤の添加量を算出し、処理剤供給部14に対して指示した添加量を、サーバー部15で記録して積算することで、排ガスの処理により使用した処理剤の合計添加量を求めることができる。なお、この処理剤の合計添加量を、処理剤の初期の貯留量から差し引くことで、残量を求めることもできる。
【0054】
以下、具体的に、処理剤の添加量を算出する方法を説明する。
【0055】
まず、1時間当たりに処理する酸性ガスの質量W
acid[kg/h]は、以下の式(1)で求められる。
W
acid=(C
acid,in−C
acid,out)×V
g/10
6 ・・(1)
ここで、C
acid,in[mg/Nm
3]およびC
acid,out[mg/Nm
3]は、それぞれ排ガス処理剤による処理の前後(例えば、排ガス分析部131および132や、排ガスの入口および出口)における酸性ガスの濃度である。また、V
g[Nm
3/h]は、標準状態(0℃、1気圧)の乾燥ガス換算の排ガスの1時間当たりの処理体積である。V
gは、処理するガスの流量が概ね一定となる場合には、定数としてよく、また、ガスの流量の増減が大きい場合には、流路内(入口または出口を含む)に排ガス流量計19を設けて、実際に測定してもよい。
【0056】
次に、必要な処理剤の量W
alkaline[kg/h]は、以下の式(2)で求められる。
W
alkaline=n
acid×W
acid×M
w,alkaline/(n
alkaline×M
w,acid)・・(2)
ここで、M
w,acid[g/mol]及びM
w,alkaline[g/mol]は、それぞれ酸性ガスを構成する酸性化合物及び処理剤を構成するアルカリの分子量であり、n
acidは酸性ガスの酸の価数であり、n
alkalineは、処理剤を構成するアルカリのアルカリ価数である。
【0057】
ここで、(2)式におけるW
acidに、(1)式を代入して整理すると、以下の式(3)となる。
W
alkaline={n
acid×(C
acid,in−C
acid,out)×M
w,alkaline/(n
alkaline×M
w,acid)}×V
g/10
6 ・・(3)
【0058】
例えば、排ガス処理部11に供給された排ガスの処理を、処理単位(例えば、単位量や単位時間、この説明においては、上記(3)式における1時間当たりのガスの流量V
gを用いる)当たり、一定の必要添加単位(例えば6単位(例えば1単位当たりの処理剤の添加量80kgとする。))の添加量(例えば480kg)の処理剤で処理した場合における、処理剤貯留部12内の処理剤の残量(例えば初期の残量が15000kg)が、処理単位当たり(例えば1日当たり8回添加)で、一定量(例えば、毎回480kg))ずつ減少するときの数値を、サーバー部15のデータベースに予め記憶させておく。そして、データベースに記憶させている一定の添加量で排ガスを処理したごとに変化する処理剤の残量が、初期の残量(例えば15000kg)から起算して、発注点の残量(例えば10000kg)に達するまでの発注前期間(例えば1〜2日間)を基準として、変動した添加量の処理剤で排ガスを処理した際に、処理剤の変動した添加量分を加味することで、処理剤の発注前期間が、どれだけ短縮または延長されるかを正確に予測することができる。具体的に、一定量の処理剤を加えたときの添加量に対する変動した添加量の増減分をΔw
v(kg)とするとき、Δw
vは、以下の式(4)で求められる。
Δw
v=Σ{(x
i[g/Nm
3]−x
0[g/Nm
3])×n
i[h]}×V
g[Nm
3/h]/10
3 ・・(4)
なお、上記の式(1)において、x
iは、排ガスを分析して算出した、排ガス1Nm
3あたりの処理剤の必要添加量であって、変数であり、上記(3)式を用いる場合、必要な中和量{(C
acid,in−C
acid,out)×M
w,alkaline/(n
alkaline×M
w,acid)}に、排ガスの酸濃度の変動を吸収するための量などを考慮して算出することできる。また、x
0は、排ガス1Nm
3あたり一定の添加量の処理剤を加えたときの、その添加量であって、定数であり、サーバー部15のデータベースに記憶されている。n
iは必要添加割合x
iの出現時間であって、変数である。また、「Σ」は、x
iがそれぞれの値のときの{(x
i[%]−x
0[%])×n
i[h]}を合計したものを意味する。
【0059】
なお、「発注点」は、上述の例では、処理剤の在庫量に対するものと設定したが、この例に限られず、例えば処理剤の使用量に対するものと設定することもできる。このような場合、例えば使用量が一定量を超えた場合に処理剤を発注する。
【0060】
(処理剤供給部と排ガス処理部との間に設けられた処理剤の供給量測定計からの情報)
処理剤供給部14と排ガス処理部11との間に、処理剤の供給量を測定する供給量測定計18を設け、その供給量測定計18によって測定された供給量を記録して積算することで、使用した処理剤の合計添加量を求めることができる。なお、処理剤の供給量を、処理剤の初期の貯留量から差し引くことで、残量を求めることもできる。
【0061】
供給量測定計18としては、特に限定されないが、処理剤が液状(溶液、懸濁液など)の場合には、例えば流量計や重量計を用いることができる。また、処理剤が粉体状の場合には、例えば重量計を用いることができる。
【0062】
(処理剤供給部の稼働信号からの情報)
また、供給量測定計18を設けなくとも、処理剤供給部14の稼働に伴う出力信号(電圧、電流)を記録して積算することで、使用した処理剤の合計添加量を求めることができる。なお、処理剤の供給量を、処理剤の初期の貯留量から差し引くことで、残量を求めることもできる。
【0063】
(焼却炉における廃棄物の予定処理量から生成される排ガスの予測生成量の情報)
処理の対象が、廃棄物を処理した焼却炉Fから生成される排ガスである場合には、その焼却炉Fにおける廃棄物の予定処理量から生成される排ガスの予測生成量の情報を用いることもできる。
【0064】
例えば、焼却炉などを有する業者では、その焼却炉稼動に関する年間計画、月間計画、週間計画などの稼働計画を有していることがある。このような稼働計画を有している場合には、上述した処理剤貯留部に設けた処理剤の残量測定計からの情報、処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報、処理剤供給部と排ガス処理部との間に設けられた処理剤の供給量測定計からの情報の少なくともいずれかと組み合わせて、将来の処理剤の使用量を予測することができる。特に、処理剤の添加量に大きな変動がない場合や、例えばバッチごとには処理剤の添加量に変動があるが、所定期間の平均的な使用量に大きな変動がない場合には、将来の処理剤の使用量を正確に予測し、それを処理剤の発注に反映させることができる。
【0065】
処理剤添加管理部で算出した処理剤添加量の情報を組み合わせる場合、例えば、上述したように、排ガス流量と酸性ガス濃度から排ガスに含まれる酸性ガスの質量を算出して求めた処理剤の必要量と、廃棄物の種類や量などの対応関係を蓄積する。廃棄物の種類や量などと発生する排ガス流量に相関性が見られる場合には、その焼却炉Fにおける廃棄物の種類や処理量などから間接的に現在の排ガス流量を予測し、処理剤の必要量の計算に反映させることができる。
【0066】
サーバー部15は、以上のようにして収集した処理剤の残量情報を基に、処理剤貯留部12に補充すべき処理剤の時期および量を求める機能を備えることができる。
【0067】
例えば、サーバー部15は、以上のようにして収集した処理剤の残量情報を経時的に記録し、これまでの経時との関係における在庫情報の規則性や平均値などから、将来の特定の時点の残量を予測する。このようにして予測された将来の残量から補充すべき処理剤の時期および量を求めることができる。なお、補充すべき処理剤の時期および量の予測は、調達期間(発注から納入までの期間)の需要量や安全在庫量を考慮して行なうこともできる。なお、「安全在庫量」とは、発注から納入までの期間の需要の変動を吸収するための在庫量である。狭義には、安全在庫=安全係数×使用量の標準偏差×(発注リードタイム+発注間隔)
1/2の式で表されるが、本発明では、発注から納入までの期間の需要の変動を吸収するために意図する在庫量全てを包含する概念である。
【0068】
また、簡易的には、以上のようにして収集した処理剤の残量情報が、発注点以下となった場合に、処理剤の発注を行うこともできる。なお、「発注点」とは、一般的には、調達期間中の平均使用量と安全在庫量の和のことを言うが、本発明における「発注点」は、これに限られず、例えば最大在庫量に対する所定の割合に設定することもできる。
【0069】
サーバー部15は、処理剤貯留部12に補充すべき処理剤の時期および量に関する情報を、在庫管理者や処理剤納入業者などの関係者に通知する機能を備えることができる。例えば、在庫管理者がこのような通知を受信する場合、在庫管理者は、この通知を契機として処理剤納入業者に発注することができる。また、処理剤納入業者がこのような通知を受信する場合、処理剤納入業者主導の納品、すなわち、いわゆるVMI(Vendor Managed Inventory)による納品が可能となる。
【0070】
〔集塵部〕
必須の態様ではないが、処理剤の在庫管理システムは、排ガス処理部11の少なくとも下流側に、バグフィルターのような集塵部16を有していてもよい。集塵部16は、排ガスに含まれる固形成分である飛灰を除去する。なお、ここで除去される飛灰には、排ガス処理部11に添加された処理剤の一部が、排ガス処理の(中和)反応に使用されないで未反応のまま残った場合には、この未反応な処理剤も含まれている。
【0071】
〔供給量測定計〕
必須の態様ではないが、処理剤の在庫管理システムは、処理剤供給部14の下流側、かつ排ガス処理部11の上流側に、供給量測定計18を有していてもよい。上述したとおり、供給量測定計18は、処理剤供給部14から排ガス処理部11に供給される処理剤の量を測定するものである。なお、ここにおける「上流側」、「下流側」とは、処理剤の流れにおける上流、下流をいうものとする。
【0072】
<処理剤の在庫管理方法>
本実施形態に係る処理剤の在庫管理方法は、例えば上述した処理剤の在庫管理システムを用いて行うことができるものである。具体的には、処理剤添加管理部13により、排ガス処理部11において処理する排ガスを分析し、排ガス処理部11において排ガスの処理に必要な処理剤の添加量を算出し、算出した添加量の処理剤の供給を指示する工程と、処理剤添加管理部13で指示した添加量の処理剤を、処理剤貯留部12から排ガス処理部11に供給する工程と、処理剤貯留部12に貯留されている処理剤の残量情報を、サーバー部15によって、直接または間接的に収集して管理する工程とを含むものである。
【0073】
図1に示す例では、焼却炉Fにて廃棄物を焼却することにより生成した排ガスは、焼却炉Fの下流側に設置された酸性ガス濃度計131において、酸性ガス濃度を測定された後、排ガス処理部である反応管11に移送されて、排ガス処理剤を添加され、排ガス中に含まれる酸性ガスが中和除去される。次いで排ガスは、集塵部であるバグフィルター16により排ガス中に含まれる固体成分である飛灰が集塵され、除去される。その後、排ガスは、排ガス分析部132に移送され、ここで例えば酸性ガス濃度などが測定される。
【0074】
一方で、処理剤貯留部である処理剤貯留サイロ12に貯留された処理剤は、処理剤供給部である定量フィーダー14を経由して、反応管11に添加される。
【0075】
このような排ガス処理にあたって、定量フィーダー14から供給される処理剤の量は、処理剤添加管理部である処理剤添加管理装置13によって制御される。上述した例では、排ガス処理部11の上流側に存在する酸性ガス濃度計131と、下流側に存在する酸性ガス濃度計132の2点において得られた、酸性ガス濃度などの排ガスに関する情報が、これら酸性ガス濃度計131,132と通信可能な状態で接続された処理剤添加管理装置13に送信され、そこで添加すべき処理剤の量が演算されて、定量フィーダー14に指示される。このようにして指示を受けた定量フィーダー14では、指示に基づく添加量だけ処理剤を切り出して、反応管11に添加する。そして、処理剤添加管理装置13は、定量フィーダー14に添加の指示をした処理剤の添加量(以下、「処理剤添加管理装置情報」という。)を記録する。
【0076】
このようにして処理剤が使用されると、処理剤貯留サイロ12内に貯留されている処理剤の量が減少する。処理剤貯留サイロ12の内部または近傍には、残量測定計であるレベル計17が設けられ、この残量(以下、「レベル計情報」という。)を測定する。
【0077】
また、定量フィーダー14と、反応管との間には、供給量測定計である重量計18を設置する。この重量計は、定量フィーダー14から排出されて反応管11に供給される処理剤の重量(以下、「重量計情報」という。)を測定する。
【0078】
処理剤添加管理装置13、レベル計17および重量計18は、サーバー部であるWEBサーバー15とそれぞれ通信可能な状態で接続されており、処理剤添加管理装置情報、レベル計情報および重量計情報をそれぞれWEBサーバー15に送信する。
【0079】
WEBサーバー15は、このようにして収集した情報を記憶(保持)し、処理剤貯留サイロ12中の処理剤の残量を管理する。そして、WEBサーバー15は、処理剤貯留部に補充すべき処理剤の時期および量を算出し、または予測して、ユーザーU(焼却炉運用業者)および関係者に通知する。なお、ここでいう「関係者」とは、ユーザーU、処理剤納入業者V、協力会社(処理剤保管倉庫業者W、運送業者D)など、処理剤の在庫管理を行うに際し、処理剤貯留部に補充すべき処理剤の時期および量を通知すべき者をいう。
【0080】
処理剤納入業者Vは、処理剤の納入時期や納入量を、ユーザーU、処理剤保管倉庫業者Wおよび運送業者Dとそれぞれ共有しながら、ユーザーUに処理剤を納入する。
【0081】
従来は、ユーザーUが、処理剤貯留サイロ12に貯留されている処理剤の残量を、レベル計17などを介して、随時、監視するなどして管理していたが、この管理方法は、管理が煩雑になるとともに、処理剤添加の管理に伴う使用量の変動を、リアルタイムで正確に予測することは難しかった。
【0082】
これに対し、本実施形態の在庫管理システムおよび在庫管理方法を導入することで、処理剤貯留サイロ12に貯留されている処理剤の残量(在庫量)を、リアルタイムに正確に把握することが可能になるとともに、発注点に至った時点も正確に把握することができる。そして、処理剤の正確な残量情報を、ユーザーUと処理剤納入業者Vが共有することで、処理剤の不足にともなう緊急納入や、さらには処理剤枯渇による焼却炉の運転停止などの不具合が生じるのを防止することが可能となる。
【0083】
さらには、ユーザーUと、協力者である処理剤保管倉庫業者Wや運送業者Dとが、処理剤の残量に関する情報の共有化することで、納入用配車の手配や、納入に割く人員(例えばドライバー等)の調整を効率的に行うことが可能となる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
【0085】
(実施例1)
廃棄物処理業者Aは、焼却炉を用いて廃棄物を焼却処理する業者である。この業者では、毎日午前8時から午後5時までの間、排ガスの処理を行っている。具体的には、焼却により発生した排ガスを冷却した後、煙道及び集塵機近傍にかけて排ガス処理剤を添加し、集塵機で固体成分である飛灰及び余剰の排ガス処理剤を除去し、酸性ガスが除去されたことを確認した上で大気に排出される。
【0086】
廃棄物処理業者Aは、以前、WEBサーバー15を導入していなかった。
図2は、WEBサーバー導入前の従来の処理剤添加システムの概略フロー図である。この処理剤添加システム100は、
図1に示す本実施形態の処理剤の在庫管理システムの構成から、WEBサーバー15と供給量測定計(流量計)18を除いた構成を有している。そこで、WEBサーバー15の導入前は、排ガスの体積当たり一定量の処理剤(3.45g/Nm
3,150kg/h)を加えていた。計算上4.17日に1回発注することが通常の運用となっていた。
【0087】
その後、廃棄物処理業者Aは、WEBサーバー15を導入した。
図1に示す構成(ただし、流量計18のみ有しない構成である)を備える在庫管理システムを導入した。なお、残量情報は、処理剤添加管理装置情報、レベル計情報、流量計情報、焼却炉情報のうち、処理剤添加管理装置情報およびレベル計情報の2つを用いた。また、上述したとおり、流量計情報については用いなかった。
【0088】
ここで、廃棄物処理業者Aが排出する排ガスの流量は概ね一定であり、上記の処理においては排ガス流量を29,000[Nm
3/h]で一定と仮定し、上記(3)式および(4)式を用いて在庫管理システムの運用を行った。また、処理剤としては、微粉重曹を用いた。
【0089】
下記表1に、ある一日において、同一の処理剤添加量ごとに区分した添加期間、その添加期間の総時間(以下、「添加時間」という。)、排ガス1Nm
3当たりの処理剤添加量、各添加期間における総添加量、添加期間終了時の処理剤残量、入口排ガスHCl濃度、出口排ガスHCl濃度および処理剤必要添加量(理論量)を示す。なお、この日の在庫管理システムの運用前、処理剤の在庫(残量)は16,000,000gであった。
【0090】
【表1】
【0091】
なお、入口排ガスのHCl濃度と出口排ガスのHCl濃度の濃度差と排ガス量29,000Nm
3/hから求められる理論上の必要添加濃度に対して、WEBサーバー15の導入前に、仮に排ガス1Nm
3当たりの一定量(3.45g/Nm
3)の処理剤で排ガスを処理したとすれば12:00〜19:00の間で、理論上の必要添加濃度に対して不足しており、出口排ガスのHCl濃度は目標値50ppmに対して上回ったため、適正処理の為には十分に処理に必要な処理剤が添加されるよう手動制御にて添加量を増やして、調整した。
【0092】
一方、入口排ガスのHCl濃度と出口排ガスのHCl濃度に応じた制御を行った場合、出口排ガスの濃度は概ね目標値50ppmに近い値を示すが、適正な必要量に見合うように処理剤の添加濃度も大きく変動する。
【0093】
WEBサーバー15の導入前に、仮に排ガス1Nm
3当たりの一定量(3.45g/Nm
3)の処理剤で排ガスを処理したとすれば、この日の処理剤の添加量は3.45g/Nm
3×9h×29,000Nm
3/h=900,000gである。これに対し、WEBサーバー15の導入後においては、この日の処理剤の添加量は、それぞれの添加期間ごとに処理剤の添加量が変動しており、この日の処理剤の実際の添加量は、(4.17g/Nm
3×1h+5.90g/Nm
3×1h+4.66g/Nm
3×1h+5.07g/Nm
3×1h+4.97g/Nm
3×1h+4.24g/Nm
3×1h+3.69g/Nm
3×1h+3.21g/Nm
3×1h)×29,000Nm
3/h=1,133,000gであった。このことから分かるように、WEBサーバー15の導入に伴い、WEBサーバー15の導入前に比べて、多く処理剤が消費したことが分かる。そして、この分だけ処理剤の残量が少なくなる時期が早くなり、発注点に達するまでの期間が短くなる。ここで、WEBサーバー15を導入することで、いち早くこのような差異に基づく在庫量の変動を正確に予測することができる。
【0094】
また、発注点6000kgを基準にして、変動した添加量の増減分を加味したときの発注点を算出することで、一定量の処理剤を加えたときの(上記の例でいえばWEBサーバー15の導入前)発注点に比べて、どれだけ期間の短縮または延長できるかを予測することもできる。具体的に、上記の例では、上述した式(4)を用いて、一定量の処理剤を加えたときの添加量に対する変動した添加量の増減分Δw
vを算出すると、
Δw
v={(4.17g/Nm
3−3.45g/Nm
3)×1h+(5.90g/Nm
3−3.45g/Nm
3)×1h+(4.66g/Nm
3−3.45g/Nm
3)×1h+(5.07g/Nm
3−3.45g/Nm
3)×1h)+(4.97g/Nm
3−3.45g/Nm
3)×1h)+(4.24g/Nm
3−3.45g/Nm
3)×1h)+(3.69g/Nm
3−3.45g/Nm
3)×1h)+(3.21g/Nm
3−3.45kg/Nm
3)×1h)}×29,000Nm
3/h}=233,000g(233kg)となり、処理剤の合計添加量が9時間当たり233kgだけ増加しており、時間当たりの添加量はWEBサーバー導入前の100kg/hに対して125.9kg/hとなる。よって10,000kg消費した場合に納入を行うとした場合、3.31日/回に納入が必要となり、本処理状況が持続したと想定すると、従来通り4日/回の納入では在庫が不足することを予測することができる。