(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試料用配管と前記第1連通管部との接続部分に、多孔質又は繊維状の部材から形成される導通用部材が設けられるとともに、前記導通用部材に隣接して開口が形成されており、
前記保液部材の一端が前記導通用部材に接触して設けられている請求項3又は4記載の比較電極システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の比較電極システムでは、試料溶液の比重が内部液よりも大きい場合、試料溶液と内部液とが接触する液絡部の位置が、電極が配置された位置まで下がってしまうおそれがある。この場合、試料溶液が腐食性の液体であると、電極を腐食されてしまうという問題が生じる。
【0006】
また逆に、収容容器の下面を試料溶液が流れる流路に接続すると、試料溶液の比重が内部液よりも小さい場合、液絡部の位置が、電極が配置された位置まで上がってしまうおそれがあり、試料溶液が腐食性の液体であると、電極を腐食されてしまうという同様の問題が生じる。
【0007】
本発明は上述した問題を鑑みて成されたものであって、試料溶液の比重に関わらず、電極が腐食されるという不具合を防いだ比較電極システムを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の比較電極システムは、試料溶液が流れる試料用配管と、内部液を収容し、この内部液と浸漬する内極を具備する比較電極収容部と、前記試料用配管と前記比較電極収容部とを接続する接続配管とを具備し、前記接続配管が、底配管部と、該底配管部の一端から上方に延伸し、前記試料用配管に連通する第1連通管部と、前記底配管部の他端から上方に延伸し、前記比較電極収容部に連通する第2連通管部とを具備したものであるか、または、前記接続配管が、上配管部と、該上配管部の一端から下方に延伸し、前記試料用配管に連通する第1連通管部と、前記上配管部の他端から下方に延伸し、前記比較電極収容部に連通する第2連通管部とを具備したものであることを特徴とする。
【0009】
試料溶液の比重が内部液よりも大きい場合、試料用配管の鉛直方向下側に設けられていると、試料溶液は内部液を押し下げて、試料用配管から接続配管に流入する。しかし、接続配管が、底配管部と、該底配管部の一端から上方に延伸し、前記試料用配管に連通する第1連通管部と、前記底配管部の他端から上方に延伸し、前記比較電極収容部に連通する第2連通管部とを具備するので、この底配管部において試料溶液の流入が停止し、比較電極収容部の内部にまで試料溶液が侵入することを防いで、比較電極収容部に収容された内極が試料溶液によって腐食することを防止することができる。
【0010】
また、試料溶液の比重が内部液よりも小さい場合、接続配管が試料用配管の鉛直方向上側に設けられていると、試料溶液は内部液を押し上げて、試料用配管から接続配管に流入する。しかし、前記接続配管が、上配管部と、該上配管部の一端から下方に延伸し、試料用配管に連通する第1連通管部と、底配管部の他端から下方に延伸し、比較電極収容部に連通する第2連通管部とを具備するので、この上配管部で試料溶液の流入が停止し、比較電極収容部の内部にまで試料溶液が侵入することを防いで、比較電極収容部に収容された内極が試料溶液によって腐食することを防止することができる。
そのため、本発明の比較電極システムでは、試料溶液の比重に関わらず、内極が腐食されることを防ぐことができる。
【0011】
本発明の比較電極システムの具体的な一態用としては、前記比較電極収容部が、前記内極を収容する収容容器と、内部液を収容したタンクと、前記収容容器と前記タンクとを連結し、前記収容容器に内部液を供給する供給配管と、供給配管の開閉を行うバルブとを具備し、前記バルブが、間欠的に開閉するものを挙げることができる。
【0012】
試料溶液が内極に侵入しないようにするには、内部液を収容したタンク及び収容容器に内部液を供給する供給配管を別に具備し、接続配管に内部液を供給し続けて、内部液の圧力によって試料溶液の侵入を防止する構成が考えられるが、内部液は高価なものであるので、流し続けるとコストがかかるという問題が生じる。
しかし、本発明では、接続配管が、上述の構成を具備するので、内部液を供給し続けなくても、試料溶液の侵入を底配管部又は上配管部において防止することができる。そのため、バルブを間欠的に開閉させて、内部液の使用量を減らすことができるので、内部液を収容するタンクの大きさを小型化することができるとともに、タンクに内部液を供給する回数を減らしてユーザの手間を減らすことができる。また、使用する内部液量が減るので、コストを抑えることもできる。
【0013】
本発明の比較電極システムの具体的な一態用としては、前記接続配管が、前記試料用配管の鉛直方向の下側に接続されているものを挙げることができる。
【0014】
このように構成すれば、校正を行う場合に、内部液よりも比重が小さい校正液が試料用配管から接続配管に流入することを防ぎ、校正液によって内極が腐食することを防止できる。
【0015】
本発明の比較電極システムの具体例としては、前記内部液が、KClであり、前記内極が、AgClであるものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、試料溶液の比重に関わらず、電極が腐食されるという不具合を防いだ比較電極システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の比較電極システムの実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態における比較電極システム1は、
図1及び
図2に示すように、試料溶液が流れる試料用配管2と、内部液を収容し、この内部液に浸漬する内極3aを具備する比較電極収容部3と、試料用配管2と比較電極収容部3とを接続する接続配管4とを具備するものである。なお、本実施形態においては、試料用配管2、比較電極収容部3、接続配管4の一部は、透明のブロック体6の内部に収容されている。
【0020】
試料用配管2は、試料溶液が流れる流路であって、ブロック体6の一側面から他側面まで水平に横断するように延伸している。本実施形態では、その両端部に例えば試料溶液が接続されたタンクやガラス電極等に接続するための接続継手7が設けられている。
【0021】
試料溶液は、例えば半導体用の洗浄液等の溶剤が多く含まれた液等であって、その比重が約1.19g/cm
3のものである。なお、試料溶液はこのようなものに限られず、電気化学的測定を行うサンプルであれば何でもよい。
【0022】
比較電極収容部3は、略筒形状をなす収容容器3bと、収容容器3bの内部に屹立して配置される例えばAgCl等からなる内極3aと、収容容器3bに貯留されて、この内極3aを浸漬する内部液と、内部液を収容したタンク3cと、収容容器3bとタンク3cとを連結し、収容容器3bに内部液を供給する供給配管3dと、供給配管3dの開閉を行うバルブ3eとを具備するものである。この収容容器3bは、ブロック体6の上面から下面までを貫くように配置されている。
【0023】
内部液は、例えば3.3モルのKCl溶液等であって、その比重が1.17g/cm
3のものであり、試料溶液よりもその比重が小さいものである。なお、上述の電極3aや内部液はこのようなものに限られず、電気化学的測定を行うサンプルにあわせて適宜変更することができる。
【0024】
接続配管4は、
図2に示すように、試料用配管2と比較電極収容部3とを接続するものであって、本実施形態では、底配管部4aと、上配管部4dと、底配管部4aの一端から上方に延伸し、試料用配管2に連通する第1連通管部4bと、底配管部4aの他端から上方に延伸し、上配管部4dに連通する第2連通管部4c(上配管部4dの一端から下方に延伸し、底配管部4aに連通するものでもある)と、上配管部4dの他端から下方に延伸し、比較電極収容部3に連通する第3連通管4eとを具備する。
【0025】
底配管部4a、第1連通配管部4bの一部、第2連通管部4c、上配管部4d、第3連通管4eは、ブロック体6の外部に配置されるものであって、チューブで構成されている。なお、第1連通配管部4bのその他の部分はブロック体6の内部に収容されている。
【0026】
上述のように構成した比較電極システム1の動作について以下に説明する。
まず、比較電極収容部3に設けられたバルブ3eが開き、収容容器3bに内部液が供給されると、その供給された内部液が収容容器3b内に充満するとともに、接続配管4を通って試料用配管2と接続配管4との接続部分まで達する。そうしたら、バルブ3eを閉めて内部液の供給を停止する。この工程を、以下説明のため、測定開始工程と呼ぶ。
【0027】
そして、試料用配管2に試料溶液を流す。この試料用液の比重は内部液よりも重いものであるので、試料用液は、内部液を押し下げて、試料用配管2から第1連通配管部4b及び底配管部4aに流出するが、底配管部4aの両端は上方に向かって延伸する第1連通管部4b及び第2連通管部4cが連通されているので、底配管部4aで流出が停止する。そして、この停止した位置で、試料溶液と内部液とが接触する液絡部が生じる。この液絡部が生じることにより、内極3aが試料溶液と電気的に接続されて、比較電極システム1は比較電極としての機能を発揮する。この工程を、以下説明のため、測定工程と呼ぶ。
【0028】
次に、比較電極システム1の校正を行う。
試料溶液の流入を停止した状態で、バルブ3eを開けて比較電極収容部3から接続配管4を介して試料用配管2に内部液を流して、接続配管4や試料用配管2に残留した試料溶液を押し流す。この工程を、以下説明のため、校正準備工程と呼ぶ。この校正準備工程において、接続配管4に残留した試料溶液を除去することができ、測定精度の悪化を防止することができる。
そして、所定時間が経過すると、バルブ3eを閉めて内部液の供給を停止させた状態で、校正液を試料用配管2に流す。この工程を、以下説明のため、校正工程と呼ぶ。このとき、接続配管4が試料用配管2の鉛直方向の下側に接続されているので、内部液よりも比重の軽い校正液が、接続配管4に流入することがなく、校正液によって内極3aが腐食することを防止できる。
【0029】
最後に、校正液の流入を止めた後に、バルブ3eを開いて内部液を流し、測定開始工程に戻る。上述の一連の動作において、バルブ3eは、測定開始工程及び校正準備工程において開いた状態となっている。
【0030】
以上のように構成した第1実施形態の比較電極システム1によれば、以下のような効果を有する。
【0031】
つまり、試料溶液の比重が内部液よりも大きいので、試料溶液は内部液を押し下げて、試料用配管2の鉛直方向下側に接続された接続配管4内に流入する。しかし、接続配管4が、底配管部4aと、該底配管部4aの両端から上方に延伸する第1連通管部4b及び第2連通管部4cとを具備するので、この底配管部4aにおいて試料溶液の流入が停止する。そのため、比較電極収容部3の内部にまで試料溶液が侵入することを防いで、比較電極収容部3に収容された内極3aが試料溶液によって腐食することを防止することができる。
【0032】
また、試料溶液が比較電極収容部3に侵入しないようにするには、内部液を流し続けて内部液の圧力で試料溶液の侵入を防止することが考えられるが、接続配管4を上述のように構成するので、内部液を流し続けなくても、試料溶液の比較電極収容部3への侵入を防ぐことができる。そのため、バルブ3eを間欠動作させることができ、内部液の使用量を減らすことができるので、内部液を収容するタンクの大きさを小型化することができるとともに、タンクに内部液を供給する回数を減らしてユーザの手間を減らすことができる。また、使用する内部液量が減るので、コストを抑えることもできる。
【0033】
さらに、比較電極システム1を、ブロック体6と、チューブとで構成しているので、ブロック体6の内部に全ての構成を設ける場合と比べて、製造を簡便にすることができ、製造コストを抑える事ができる。また、ブロック体6の内部に全ての構成を設ける場合と比べて、ブロック体6を小型化することができるので、試料用配管、比較電極収容部、接続配管等も小型化して、試料溶液及び内部液の使用量を減らした状態であっても測定をすることができる。
【0034】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0035】
第2実施形態の比較電極システム10は、
図3に示すように、接続配管14の構造が第1実施形態と異なっており、第2実施形態の接続配管14は、底配管部14aと、上配管部14dと、該底配管部14aの一端から上方に延伸し、試料用配管2に連通する第1連通管部14bと、底配管部14aの他端から上方に延伸し、上配管部14dに連通する第2連通管部14c(上配管部14dの一端から下方に延伸し、底配管部14aに連通するものでもある)と、上配管部14dの他端から下方に延伸し、比較電極収容部3に連通する第3連通管部14eとを具備する。
【0036】
底配管部14a、第1連通管部14b及び第2連通管部14cは、下方に向かって突出する略U字形状をなすものであり、上配管部14d、第2連通管部14c及び第3連通管部14eは、上方に向かって突出する略U字形状をなすものである。これら、底配管部14a、第1連通管部14b、第2連通管部14c、上配管部14d、第3連通管部14eは全てチューブで構成されている。
【0037】
内部液の比重が試料溶液よりも小さい場合、試料溶液は内部液を押し下げて、試料用配管2の鉛直方向下側に接続された接続配管4内に流入する。しかし、底配管部14aの両端にそれぞれ連通された第1連通管部14b及び第2連通管部14cが上方に延伸するので、底配管部14aで試料溶液の侵入が停止する。そして、この位置で試料溶液と内部液とが接触する液絡部が形成される。
【0038】
このように設けられた第2実施形態の比較電極システム10においても、底配管部14aと、底配管部14aの両端から上方に延伸する第1連通管部14b及び第2連通管部14cとを具備するので、試料溶液の流入が底配管部14aで止まり、比較電極収容部3の内部にまで試料溶液が侵入することを防いで、比較電極収容部3に収容された内極が試料溶液に腐食されることを防ぐことができる。
【0039】
<第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態について説明するが、第1実施形態及び第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
第3実施形態の比較電極システム20は、
図4に示すように、第1実施形態及び第2実施形態と接続配管24の構成、及び接続配管24の試料用配管2との接続部分が異なっている。
つまり、この接続配管24は、上配管部24aと、底配管部24dと、該上配管部24aの一端から下方に延伸し、試料用配管2に連通する第1連通管部24bと、上配管部24aの他端から下方に延伸し、底配管部24dに連通する第2連通管部24c(底配管部24dの一端から上方に延伸し、上配管部24aに連通するものでもある)と、底配管部24dの他端から上方に延伸し、比較電極収容部3に連通する第3連通管部24eとを具備する。
【0041】
上配管部24a、第1連通管部24b及び第2連通管部24cは、上方に向かって突出する略U字形状をなすものであり、底配管部24d、第2連通管部24c及び第3連通管部24eは、下方に向かって突出する略U字形状をなすものである。
【0042】
そして、この接続配管24は、試料用配管2の鉛直方向上側に接続されたものである。
【0043】
内部液の比重が試料溶液よりも大きい場合、試料溶液は内部液を押し上げて、試料用配管2の鉛直方向上側に接続された接続配管4内に流入する。しかし、上配管部24aの両端にそれぞれ連通された第1連通管部24b及び第2連通管部24cが下方に延伸するので、上配管部24aにおいて試料溶液の流入が停止する。そして、この位置で試料溶液と内部液とが接触する液絡部が形成される。
【0044】
このように設けられた第3実施形態の比較電極システム20においても、上配管部24aと上配管部24aの両端から下方に延伸する第1連通管部24b及び第2連通管部24cとを具備するので、上配管部24aにおいて試料溶液の流入が止まり、比較電極収容部3の内部にまで試料溶液が侵入することを防いで、比較電極収容部3に収容された内極3aが試料溶液に腐食されることを防ぐことができる。
【0045】
なおかつ、接続配管4が試料用配管2の鉛直方向上側に設けられていると、校正を行う場合に、内部液よりも比重が小さい校正液が試料用配管2から接続配管4に流入してしまうが、上述の構成によって上配管部24aにおいて校正液の流入が停止するので、校正液が内極3aを腐食することも防ぐこともできる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限られない。
例えば、第2実施形態及び第3実施形態においても、試料用流路、比較電極収容部、接続配管等がブロック体の内部に設けられたものであってもよい。
【0047】
また、前記各実施形態において、
図5に示すように、試料用配管2と前記第1連通管部4bとの接続部分45に、多孔質又は繊維状の部材から形成される導通用部材41を設けるとともに、導通用部材41に隣接して開口を形成しても良い。
【0048】
さらに、接続配管4の内部に保液部材8を設けても良い。具体的には
図6に示すように、保液部材8が、その一端8aが、前記第1連通管部4bの内部又は前記試料用配管2と前記第1連通管部4bとの接続部分45に設けられ、他端8bが内部液室3bに設けられている。この保液部材8としては、試料溶液に対して耐性(耐薬品性)を有する素材であって、試料溶液又は内部液を含侵可能な素材(例えば中空糸)であれば良い。なお、
図6では、前記保液部材8の一端を導通用部材に接触して設けている。ここで、保液部材8の一端8aは、前記導通用部材41zの下端部の外周に巻回された構造であっても良いし、前記導通用部材41に形成された貫通孔に差し通されて結ばれた構造であっても良い。
【0049】
本発明は、その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。