特許第6738049号(P6738049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6738049シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738049
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】シリコン含有平坦化性パターン反転用被覆剤
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20200730BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20200730BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20200730BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200730BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   H01L21/30 578
   C09D183/04
   H01L21/30 570
   G03F7/40 511
   B05D7/24 302Y
   C08G77/38
【請求項の数】27
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-539117(P2017-539117)
(86)(22)【出願日】2016年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2016075066
(87)【国際公開番号】WO2017043344
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-177306(P2015-177306)
(32)【優先日】2015年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】志垣 修平
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−020109(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/122293(WO,A1)
【文献】 特開2006−336010(JP,A)
【文献】 特開2006−299251(JP,A)
【文献】 特開2009−301007(JP,A)
【文献】 特開2014−106298(JP,A)
【文献】 特開2011−118373(JP,A)
【文献】 特表2010−519398(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155365(WO,A1)
【文献】 特開2018−012806(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/145808(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/145809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00
G03F 7/06−7/07
G03F 7/12−7/14
G03F 7/20−9/02
H01L 21/027
H01L 21/30
H01L 21/46
B05D 7/24
C08G 77/20,77/38
C09D 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが有するシラノール基の一部がキャッピングされている変性ポリシロキサンと、溶媒とを含み、該変性ポリシロキサン中の全Si原子に対するシラノール基の割合が40モル%以下である、レジストパターンに塗布される組成物。
【請求項2】
上記全Si原子に対するシラノール基の割合が5乃至40モル%である変性ポリシロキサンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記全Si原子に対するシラノール基の割合が10乃至25モル%である変性ポリシロキサンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
上記ポリシロキサンが有するシラノール基がアルコールとの反応により、シラノール基の割合が所望の割合となるように調整されている変性ポリシロキサンを含む請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
上記アルコールが、1価アルコールである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
上記アルコールが、4−メチル−2−ペンタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、又は2−プロパノールである請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
ポリシロキサンとアルコール及び酸との脱水反応物からなる変性ポリシロキサンを含む請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記変性ポリシロキサンは、加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンをアルコール及び酸と反応させ、脱水により生じた水を反応系外に除去することにより、製造されてなる、請求項7に記載の組成物の製造方法
【請求項9】
酸が、4乃至5の酸解離定数を有する酸である請求項に記載の組成物。
【請求項10】
酸が、4乃至5の酸解離定数を有する酸である請求項8に記載の組成物の製造方法
【請求項11】
酸が、70乃至160℃の沸点を有する酸である請求項に記載の組成物。
【請求項12】
酸が、70乃至160℃の沸点を有する酸である請求項8に記載の組成物の製造方法
【請求項13】
ポリシロキサンが式(1):
【化1】

(式(1)中、Rはアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは0乃至3の整数を示す。)で表される少なくとも1種の加水分解性シランの加水分解縮合物である請求項1乃至請求項7、請求項9又は請求項11のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
ポリシロキサンが式(1):
【化2】

(式(1)中、Rはアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは0乃至3の整数を示す。)で表される少なくとも1種の加水分解性シランの加水分解縮合物である請求項8、請求項10又は請求項12のうちのいずれか1項に記載の組成物の製造方法
【請求項15】
ポリシロキサンが、式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は式(1)(式中、aが0である。)で表される加水分解性シラン(i)と式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解性シラン(ii)との共加水分解縮合物である請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
ポリシロキサンが、式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は式(1)(式中、aが0である。)で表される加水分解性シラン(i)と式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解性シラン(ii)との共加水分解縮合物である請求項14に記載の組成物の製造方法
【請求項17】
ポリシロキサンは、加水分解性シラン(i):加水分解性シラン(ii)がモル比として0:100乃至50:50の割合を有する請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
ポリシロキサンは、加水分解性シラン(i):加水分解性シラン(ii)がモル比として0:100乃至50:50の割合を有する請求項16に記載の組成物の製造方法。
【請求項19】
レジストパターン上に被覆するための請求項1乃至請求項7、請求項9、請求項11、請求項13、請求項15又は請求項17のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
レジストパターン上に被覆するための請求項8、請求項10、請求項12、請求項14、請求項16又は請求項18のうちのいずれか1項に記載の組成物の製造方法
【請求項21】
ラインアンドスペースのレジストパターン上に被覆するための請求項1乃至請求項7、請求項9、請求項11、請求項13、請求項15、請求項17又は請求項19のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
ラインアンドスペースのレジストパターン上に被覆するための請求項8、請求項10、請求項12、請求項14、請求項16、請求項18又は請求項20のうちのいずれか1項に記載の組成物の製造方法
【請求項23】
レジストパターンが、ナノインプリントで形成されたパターンである請求項1乃至請求項7、請求項9、請求項11、請求項13、請求項15、請求項17、請求項19又は請求項21のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
レジストパターンが、ナノインプリントで形成されたパターンである請求項8、請求項10、請求項12、請求項14、請求項16、請求項18、請求項20又は請求項22のうちのいずれか1項に記載の組成物の製造方法
【請求項25】
基板上にレジスト膜を形成する工程(1)、レジスト膜を露光し続いて現像し、レジストパターンを形成する工程(2)、現像中又は現像後のレジストパターン上に請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の組成物を塗布する工程(3)、レジストパターンをエッチングにより除去してパターンを反転させる工程(4)を含む半導体装置の製造方法。
【請求項26】
工程(1)の前に、基板上にレジスト下層膜を形成する工程(1−1)を含む請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
工程(3)の後に上記組成物の硬化物からなる塗膜の表面をエッチバックしてレジストパターンの表面を露出する工程(3−1)を含む請求項25又は請求項26に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィープロセスにおいて、レジストの現像中に形成される過程のレジストパターン又は現像後のレジストパターンに、ポリシロキサンを含む塗布液を塗布し、該塗布液をパターンに充填した後にレジストをドライエッチング等でエッチング除去することによる、パターンを反転する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に微細なパターンを形成し、このパターンに従ってエッチングを行い基板を加工する技術は半導体製造の分野で広く用いられている。
リソグラフィー技術の進展に伴い微細パターン化が進み、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーが用いられ、更に電子線やEUV(極端紫外線)を用いた露光技術が検討されている。
【0003】
パターン形成技術の一つとして、パターン反転法がある。すなわち、まず半導体基板上にレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをシリコン系塗布液で被覆する。これによりレジストパターン間にシリコン系塗布液が充填され、その後それを焼成して、塗膜を形成する。その後シリコン含有塗膜の上部をフッ素系ガスでエッチングすることによりエッチバックしてレジストパターン上部を露出させ、続いてガスを変えてレジストパターンを酸素系エッチングガスで除去すると、消失したレジストパターンに代わりシリコン系塗膜に由来するシリコン系のパターンが残り、パターンの反転が行われる。
この反転パターンが形成されたシリコン系膜をエッチングマスクとして、その下層や基板のエッチングを行うと反転パターンが転写され、基板上にパターンが形成される。
【0004】
その様な反転パターンを利用したパターンの形成方法として、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニル基、又はアリール基を有するシランと、テトラエトキシシランとの共加水分解によるポリシロキサンとエーテル系溶剤を用いた材料を利用する発明がある(特許文献1参照)。
また、ハイドロゲンシロキサンを用いた材料を利用する発明がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−118373
【特許文献2】特開2010−151923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようにパターン反転法では、レジストパターンにシリコン系塗布液を被覆し、レジストパターンの間にシリコン系塗布液を充填し、乾燥し、焼成してシリコン系材料を充填した塗膜を形成した後に、被覆したシリコン系材料をフッ素系のガスでエッチバックして、レジストパターンの表面を露出する。その後にガス種を酸素系ガスに変えてレジストパターンの消失を行うが、このエッチバック時にシリコン系材料塗布面がある一定水準で平坦化されていることが必要である。この平坦化がなされていないと、レジストパターンの表面を露出するまでエッチバックした時に、レジストパターンのライン部上部と埋め込まれたスペース部が水平にならないため、パターンを反転した後も一定の水平な反転パターンが得られない。これは後に行われる下層のエッチングで、不均一な下層の加工となり、好ましくない。
【0007】
本発明はレジストパターンに被覆した時にレジストパターンの間に十分に充填が可能であり、しかもライン部とスペース部で被覆が一定となり平坦な塗布面が得られるレジストパターンへの被覆剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は第1観点として、加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが有するシラノール基の一部がキャッピングされている変性ポリシロキサンと、溶媒とを含み、該変性ポリシロキサン中の全Si原子に対するシラノール基の割合が40モル%以下である、レジストパターンに塗布される組成物、
第2観点として、上記全Si原子に対するシラノール基の割合が5乃至40モル%である変性ポリシロキサンを含む第1観点に記載の組成物、
第3観点として、上記全Si原子に対するシラノール基の割合が10乃至25モル%である変性ポリシロキサンを含む第1観点に記載の組成物、
第4観点として、上記ポリシロキサンが有するシラノール基がアルコールとの反応により、シラノール基の割合が所望の割合となるように調整されている変性ポリシロキサンを含
む第1観点乃至第3観点のいずれか1つに記載の組成物、
第5観点として、上記アルコールが、1価アルコールである第4観点に記載の組成物、
第6観点として、上記アルコールが、4−メチル−2−ペンタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、又は2−プロパノールである第4観点に記載の組成物、
第7観点として、ポリシロキサンとアルコール及び酸との脱水反応物からなる変性ポリシロキサンを含む第1観点乃至第6観点のいずれか1つに記載の組成物、
第8観点として、上記変性ポリシロキサンは、加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンをアルコール及び酸と反応させ、脱水により生じた水を反応系外に除去することにより、製造されてなる、第7観点に記載の組成物の製造方法
第9観点として、酸が、4乃至5の酸解離定数を有する酸である第観点に記載の組成物、
第10観点として、酸が、4乃至5の酸解離定数を有する酸である第8観点に記載の組成物の製造方法
第11観点として、酸が、70乃至160℃の沸点を有する酸である第観点に記載の組成物、
第12観点として、酸が、70乃至160℃の沸点を有する酸である第8観点に記載の組成物の製造方法
第13観点として、ポリシロキサンが式(1):
【化1】
(式(1)中、Rはアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは0乃至3の整数を示す。)で表される少なくとも1種の加水分解性シランの加水分解縮合物である第1観点乃至第7観点、第9観点、第11観点のうちのいずれか1つに記載の組成物、
第14観点として、前記式(1):
【化2】
(式(1)中、Rはアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基を示し、且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは0乃至3の整数を示す。)で表される少なくとも1種の加水分解性シランの加水分解縮合物である第8観点、第10観点又は第12観点のうちのいずれか1つに記載の組成物の製造方法
第15観点として、ポリシロキサンが、式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は式(1)(式中、aが0である。)で表される加水分解性シラン(i)と式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解性シラン(ii)との共加水分解縮合物である第13観点に記載の組成物、
第16観点として、ポリシロキサンが、式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は式(1)(式中、aが0である。)で表される加水分解性シラン(i)と式(1)(式中、aが1である。)で表される加水分解
性シラン(ii)との共加水分解縮合物である第14観点に記載の組成物の製造方法
第17観点として、ポリシロキサンは、加水分解性シラン(i):加水分解性シラン(ii)がモル比として0:100乃至50:50の割合を有する第15観点に記載の組成物、
第18観点として、ポリシロキサンは、加水分解性シラン(i):加水分解性シラン(ii)がモル比として0:100乃至50:50の割合を有する第16観点に記載の組成物の製造方法
第19観点として、レジストパターン上に被覆するための第1観点乃至第観点、第9観点、第11観点、第13観点、第15観点、第17観点又は第19観点のうちのいずれか1つに記載の組成物、
第20観点として、レジストパターン上に被覆するための第8観点、第10観点、第12観点、第14観点、第16観点又は第18観点のうちのいずれか1つに記載の組成物の製造方法
第21観点として、ラインアンドスペースのレジストパターン上に被覆するための第1観点乃至第7観点、第9観点、第11観点、第13観点、第15観点、第17観点又は第19観点のうちのいずれか1つに記載の組成物、
第22観点として、ラインアンドスペースのレジストパターン上に被覆するための第1観点乃至第8観点、第10観点、第12観点、第14観点、第16観点、第18観点又は第20観点のうちのいずれか1つに記載の組成物の製造方法
第23観点として、レジストパターンが、ナノインプリントで形成されたパターンである第1観点乃至第7観点、第9観点、第11観点、第13観点、第15観点、第17観点、第19観点又は第21観点のうちのいずれか1つに記載の組成物、
第24観点として、レジストパターンが、ナノインプリントで形成されたパターンである第8観点、第10観点、第12観点、第14観点、第16観点、第18観点、第20観点又は第22観点のうちのいずれか1つに記載の組成物の製造方法
第25観点として、基板上にレジスト膜を形成する工程(1)、レジスト膜を露光し続いて現像し、レジストパターンを形成する工程(2)、現像中又は現像後のレジストパターン上に第1観点乃至第観点のいずれか1つに記載の組成物を塗布する工程(3)、レジストパターンをエッチングにより除去してパターンを反転させる工程(4)を含む半導体装置の製造方法、
第26観点として、工程(1)の前に、基板上にレジスト下層膜を形成する工程(1−1)を含む第25観点に記載の製造方法、
第27観点として、工程(3)の後に上記組成物の硬化物からなる塗膜の表面をエッチバックしてレジストパターンの表面を露出する工程(3−1)を含む第25観点又は第26観点に記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物はポリシロキサン中のシラノール基の割合を特定範囲に設定することにより、半導体基板上に形成されたレジストパターンをそれで被覆する時に平坦な被覆面が得られるため良好なパターンの反転が行われる。
すなわち、いわゆるパターン反転法において、半導体基板上にレジストパターンを形成しそのレジストパターンを本発明の組成物からなるシリコン系塗布液で被覆するとき、レジストパターン間に該シリコン系塗布液が十分に充填され、その後それを焼成し、塗膜を形成すると、十分平坦な被覆面が得られる。このため、レジストパターンの表面を露出するまでエッチバックした時に、レジストパターンのライン部上部と該シリコン系塗布液が埋め込まれたスペース部が十分水平になり、パターンを反転した後も一定の水平な反転パターンが得られ、後に行われる下層のエッチングで、均一な下層の加工ができ、良好なパターンの反転が得られる。
また、本発明は段差基板の平坦化用組成物として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、溝の深さ220nm、幅800nmの段差基板上に実施例1の塗布組成物により形成した膜の断面図(倍率は150000倍)を示す。
図2図2は、溝の深さ220nm、幅800nmの段差基板上に実施例2の塗布組成物により形成した膜の断面図(倍率は150000倍)を示す。
図3図3は、溝の深さ220nm、幅800nmの段差基板上に実施例3の塗布組成物により形成した膜の断面図(倍率は150000倍)を示す。
図4図4は、溝の深さ220nm、幅800nmの段差基板上に実施例4の塗布組成物により形成した膜の断面図(倍率は150000倍)を示す。
図5図5は、溝の深さ220nm、幅800nmの段差基板上に比較例1の塗布組成物により形成した膜の断面図(倍率は150000倍)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は加水分解性シランの加水分解とその縮合の結果、得られたポリシロキサンの全Si原子に対するシラノール基の割合が40モル%以下、又は5乃至40モル%、又は10乃至25モル%の割合まで、ポリシロキサン中に存在するシラノール基をアルコールと反応させてキャッピングすることによりシラノール基量を調整して、得られる変性ポリシロキサンを含む組成物であって、該組成物を基板上に形成されたレジストパターンに被覆することにより平坦化された塗布面を得ることができる。
【0012】
ここで平坦化とは、レジストパターンに塗布した場合、レジストのパターンが存在する部分(ライン部)と、パターンが存在しない部分(スペース部)において、その上部に存在する塗布された被覆物の膜厚差が少ないことを意味する。本発明ではこの膜厚差が5乃至30nm、又は10乃至30nmの範囲にある。
【0013】
具体的には本発明は、加水分解性シランの加水分解縮合物からなるポリシロキサンが有するシラノール基の一部がキャッピングされている変性ポリシロキサンと、溶媒とを含み、該変性ポリシロキサン中の全Si原子に対するシラノール基の割合が40モル%以下である、レジストパターンに塗布される組成物である。
【0014】
上記全Si原子に対するシラノール基の割合が5乃至40モル%、又は10乃至25モル%とすることができる。
該組成物は溶媒に上記加水分解性シラン、その加水分解物、又はその加水分解縮合物(ポリシロキサン)が溶解しているものであり、固形分は0.5乃至20.0質量%、又は1.0乃至10.0質量%である。固形分とは該組成物から溶媒を取り除いた残りの割合である。
固形分中に占める上記加水分解性シラン、その加水分解物、及びその加水分解縮合物(ポリシロキサン)の割合は、50乃至100質量%、又は80乃至100質量%である。
該組成物中の上記加水分解性シラン、その加水分解物、及びその加水分解縮合物(ポリシロキサン)の濃度は、0.5乃至20.0質量%である。
本発明はレジストの露光後に用いられる塗布用組成物であるため、マスクを通じてレジストを露光し、その現像中又は現像後に上記組成物が充填される。
【0015】
上記加水分解性シラン、その加水分解物、及びその加水分解縮合物はレジストとは異なる樹脂成分を有するものである。
これにより後のドライエッチング工程で、ガス種の選定により、レジストを選択的にドライエッチング除去して充填した加水分解縮合物(ポリシロキサン)による新たなパターンが形成される。
【0016】
本発明ではポリシロキサンが有するシラノール基とアルコールとを反応させてシラノール基の割合が所望の割合となるように調整されている変性ポリシロキサンを用いることができる。すなわち、本発明の変性ポリシロキサンはそのシラノール基の一部をアルコールでキャッピングしたものであり、上記アルコールは1価アルコールを用いることができる。これらは炭素原子数3乃至10のアルコールであり、直鎖アルコールよりも分岐状アルコールを好ましく用いることができる。
例えば、4−メチル−2−ペンタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−プロパノール等を用いることができる。
【0017】
ポリシロキサンはキャッピング剤となるアルコールと接触し、温度110乃至160℃、例えば150℃に、0.1乃至48時間、例えば24時間反応させることでシラノール基をキャッピングした変性ポリシロキサンが得られる。この時、キャッピング剤のアルコールはレジストパターンに塗布される組成物において溶媒として使用することができる。
【0018】
そして上述のポリシロキサン(加水分解縮合物)は、加水分解性シラン、又はその加水分解物を混合物として用いることもできる。したがって、加水分解縮合物を得る際に加水分解が完全に完了しない部分加水分解物やシラン化合物が加水分解縮合物に混合している場合、その混合物を用いることもできる。この縮合物はポリシロキサン構造を有するポリマーである。
【0019】
変性ポリシロキサンはまた、加水分解性シランを加水分解し縮合したポリシロキサンとアルコール及び酸との脱水反応物であってもよい。
この場合、変性ポリシロキサンは加水分解性シランを加水分解し縮合したポリシロキサンをアルコール及び酸と反応させ、脱水により生じた生成水を、反応系外に除去することにより製造されていてよい。そしてこのような機構を備えた装置で合成したものを用いることができる。
上記の酸は、酸解離定数(pka)が−1乃至5、好ましくは4乃至5である有機酸を用いることができる。例えば、酸は、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、安息香酸、イソ酪酸、酢酸等、中でも安息香酸、イソ酪酸、酢酸等を例示することができる。
また、酸は、70乃至160℃の沸点を有する酸が好ましい。例えば、トリフルオロ酢酸、イソ酪酸、酢酸等が挙げられる。
上記の酸は、酸解離定数(pka)が4乃至5であるか、又は沸点が70乃至160℃であるか、いずれかの物性を有するものが好ましい。即ち、酸性度が弱いものか、又は酸性度は強くても沸点が低いものを用いることができる。
そして、酸としては酸解離定数、沸点の性質からいずれの性質を利用することも可能であるが、両方の性質を持つ酢酸は好ましく用いることができる。
【0020】
本発明に用いられる原料であって、変性前のポリシロキサンは式(1)で表される少なくとも1種の加水分解性シランを加水分解し縮合した加水分解縮合物を用いることができる。
【0021】
式(1)中、Rはアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは0乃至3の整数を示す。
【0022】
ポリシロキサンは、式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)の加水分解縮合物、又は式(1)中のaが0である加水分解性シラン(i)と式(1)中のaが1である加水分解性シラン(ii)との共加水分解縮合物を用いることができる。
ポリシロキサンは、加水分解性シラン(i):加水分解性シラン(ii)がモル比として0:100乃至50:50、又は10:90乃至50:50の割合の範囲で用いることができる。
【0023】
上記式(1)中で、アルキル基は直鎖又は分枝を有する炭素原子数1乃至10のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基及び1−エチル−2−メチル−n−プロピル基等が挙げられる。
【0024】
また環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数1乃至10の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−i−プロピル−シクロプロピル基、2−i−プロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
またハロゲン化アルキル基として、上記の基をフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等のハロゲン原子で置換した有機基が挙げられる。
【0025】
アリ−ル基としては炭素原子数6乃至20のアリール基が挙げられ、また、ハロゲン原子で置換したハロゲン化アリール基であってもよく、例えばフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−メルカプトフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アミノフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基及び9−フェナントリル基が挙げられる。
また、アルコキシアリール基としては、上記アリール基が下に挙げるようなアルコキシ基を置換基として有する有機基が挙げられる。
【0026】
アルケニル基としては炭素原子数2乃至10のアルケニル基が挙げられ、例えばエテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチル−1−エテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−n−プロピルエテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、2−エチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、1−i−プロピルエテニル基、1,2−ジメチル−1−プロペニル基、1,2−ジメチル−2−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−メチル−1−ペンテニル基、1−メチル−2−ペンテニル基、1−メチル−3−ペンテニル基、1−メチル−4−ペンテニル基、1−n−ブチルエテニル基、2−メチル−1−ペンテニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、2−メチル−3−ペンテニル基、2−メチル−4−ペンテニル基、2−n−プロピル−2−プロペニル基、3−メチル−1−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−3−ペンテニル基、3−メチル−4−ペンテニル基、3−エチル−3−ブテニル基、4−メチル−1−ペンテニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4−メチル−4−ペンテニル基、1,1−ジメチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基、1,2−ジメチル−1−ブテニル基、1,2−ジメチル−2−ブテニル基、1,2−ジメチル−3−ブテニル基、1−メチル−2−エチル−2−プロペニル基、1−s−ブチルエテニル基、1,3−ジメチル−1−ブテニル基、1,3−ジメチル−2−ブテニル基、1,3−ジメチル−3−ブテニル基、1−i−ブチルエテニル基、2,2−ジメチル−3−ブテニル基、2,3−ジメチル−1−ブテニル基、2,3−ジメチル−2−ブテニル基、2,3−ジメチル−3−ブテニル基、2−i−プロピル−2−プロペニル基、3,3−ジメチル−1−ブテニル基、1−エチル−1−ブテニル基、1−エチル−2−ブテニル基、1−エチル−3−ブテニル基、1−n−プロピル−1−プロペニル基、1−n−プロピル−2−プロペニル基、2−エチル−1−ブテニル基、2−エチル−2−ブテニル基、2−エチル−3−ブテニル基、1,1,2−トリメチル−2−プロペニル基、1−t−ブチルエテニル基、1−メチル−1−エチル−2−プロペニル基、1−エチル−2−メチル−1−プロペニル基、1−エチル−2−メチル−2−プロペニル基、1−i−プロピル−1−プロペニル基、1−i−プロピル−2−プロペニル基、1−メチル−2−シクロペンテニル基、1−メチル−3−シクロペンテニル基、2−メチル−1−シクロペンテニル基、2−メチル−2−シクロペンテニル基、2−メチル−3−シクロペンテニル基、2−メチル−4−シクロペンテニル基、2−メチル−5−シクロペンテニル基、2−メチレン−シクロペンチル基、3−メチル−1−シクロペンテニル基、3−メチル−2−シクロペンテニル基、3−メチル−3−シクロペンテニル基、3−メチル−4−シクロペンテニル基、3−メチル−5−シクロペンテニル基、3−メチレン−シクロペンチル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基及び3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
またこれらのフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等のハロゲン原子が置換した有機基が挙げられる。
【0027】
エポキシ基を有する有機基としては、グリシドキシメチル、グリシドキシエチル、グリシドキシプロピル、グリシドキシブチル、エポキシシクロヘキシル等が挙げられる。
アクリロイル基を有する有機基としては、アクリロイルメチル、アクリロイルエチル、アクリロイルプロピル等が挙げられる。
メタクリロイル基を有する有機基としては、メタクリロイルメチル、メタクリロイルエチル、メタクリロイルプロピル等が挙げられる。
メルカプト基を有する有機基としては、エチルメルカプト、ブチルメルカプト、ヘキシルメルカプト、オクチルメルカプト等が挙げられる。
シアノ基を有する有機基としては、シアノエチル、シアノプロピル等が挙げられる。
【0028】
式(1)のRにおけるアルコキシ基としては、炭素原子数1乃至20の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、1−メチル−n−ブトキシ基、2−メチル−n−ブトキシ基、3−メチル−n−ブトキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、1,2−ジメチル−n−プロポキシ基、2,2−ジメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−n−プロポキシ基、n−ヘキシロキシ基、1−メチル−n−ペンチロキシ基、2−メチル−n−ペンチロキシ基、3−メチル−n−ペンチロキシ基、4−メチル−n−ペンチロキシ基、1,1−ジメチル−n−ブトキシ基、1,2−ジメチル−n−ブトキシ基、1,3−ジメチル−n−ブトキシ基、2,2−ジメチル−n−ブトキシ基、2,3−ジメチル−n−ブトキシ基、3,3−ジメチル−n−ブトキシ基、1−エチル−n−ブトキシ基、2−エチル−n−ブトキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ基及び1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が、また環状のアルコキシ基としてはシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1−メチル−シクロプロポキシ基、2−メチル−シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1−メチル−シクロブトキシ基、2−メチル−シクロブトキシ基、3−メチル−シクロブトキシ基、1,2−ジメチル−シクロプロポキシ基、2,3−ジメチル−シクロプロポキシ基、1−エチル−シクロプロポキシ基、2−エチル−シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1−メチル−シクロペンチロキシ基、2−メチル−シクロペンチロキシ基、3−メチル−シクロペンチロキシ基、1−エチル−シクロブトキシ基、2−エチル−シクロブトキシ基、3−エチル−シクロブトキシ基、1,2−ジメチル−シクロブトキシ基、1,3−ジメチル−シクロブトキシ基、2,2−ジメチル−シクロブトキシ基、2,3−ジメチル−シクロブトキシ基、2,4−ジメチル−シクロブトキシ基、3,3−ジメチル−シクロブトキシ基、1−n−プロピル−シクロプロポキシ基、2−n−プロピル−シクロプロポキシ基、1−i−プロピル−シクロプロポキシ基、2−i−プロピル−シクロプロポキシ基、1,2,2−トリメチル−シクロプロポキシ基、1,2,3−トリメチル−シクロプロポキシ基、2,2,3−トリメチル−シクロプロポキシ基、1−エチル−2−メチル−シクロプロポキシ基、2−エチル−1−メチル−シクロプロポキシ基、2−エチル−2−メチル−シクロプロポキシ基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロポキシ基等が挙げられる。
【0029】
式(1)のRにおけるアシルオキシ基としては炭素原子数1乃至20のアシルオキシ基が挙げられ、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、i−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、i−ブチルカルボニルオキシ基、s−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、1−メチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2−メチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、3−メチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,1−ジメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1,2−ジメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、2,2−ジメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、1−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、2−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、3−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、4−メチル−n−ペンチルカルボニルオキシ基、1,1−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,2−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,3−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2,2−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2,3−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、3,3−ジメチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1−エチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、2−エチル−n−ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、1−エチル−2−メチル−n−プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
式(1)のRにおけるハロゲン基としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられるポリシロキサンの原料となる式(1)の加水分解性シランは、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
式(1)の加水分解性シランの加水分解縮合物(ポリシロキサン)は、重量平均分子量1000乃至1000000、又は1000乃至100000の縮合物を得ることができる。これらの分子量はGPC分析によるポリスチレン換算得られる分子量である。
GPCの測定条件は、例えばGPC装置(商品名HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)、GPCカラム(商品名ShodexKF803L、KF802、KF801、昭和電工製)、カラム温度は40℃、溶離液(溶出溶媒)はテトラヒドロフラン、流量(流速)は1.0ml/min、標準試料はポリスチレン(昭和電工株式会社製)を用いて行うことができる。
【0032】
アルコキシシリル基、アシロキシシリル基、又はハロゲン化シリル基の加水分解には、加水分解性基の1モル当たり、0.5乃至100モル、好ましくは1乃至10モルの水を用いる。
また、加水分解は加水分解触媒を用いることが出来るが、加水分解触媒を用いずに行うこともできる。加水分解触媒を用いる場合は、加水分解性基の1モル当たり0.001乃至10モル、好ましくは0.001乃至1モルの加水分解触媒を用いることができる。
加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常20乃至110℃である。
【0033】
加水分解は完全に加水分解を行うことも、部分加水分解することでも良い。即ち、加水分解縮合物中に加水分解物やモノマーが残存していても良い。
加水分解し縮合させる際に触媒を用いることができる。
加水分解触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。
【0034】
加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン、等のチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、等のジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができる。
【0035】
加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。
加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。
【0036】
加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等を挙げることができる。無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0037】
加水分解に用いられる有機溶媒としては、例えばn−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができる。これらの溶剤は1種又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0038】
加水分解性シランを溶剤中で触媒を用いて加水分解し縮合し、得られた加水分解縮合物(ポリマー)は減圧蒸留等により副生成物のアルコールや用いた加水分解触媒や水を同時に除去することができる。また、加水分解に用いた酸や塩基触媒を中和やイオン交換により取り除くことができる。
【0039】
本発明の組成物には界面活性剤を添加することができ、例えばノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、UV硬化系界面活性剤が挙げられる。
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また二種以上の組み合わせで使用することもできる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、縮合物(ポリオルガノシロキサン)100質量部に対して0.0001乃至5質量部、または0.001乃至5質量部、または0.01乃至5質量部である。
【0040】
本発明のレジストパターンに塗布される組成物に使用される溶剤としては、上記キャッピングに用いるアルコール溶剤を用いることができる。
【0041】
本発明はまた、基板上にレジストを塗布してレジスト膜を形成する工程(1)、レジスト膜を露光し続いて現像し、レジストパターンを形成する工程(2)、現像中又は現像後のレジストパターン上に本発明の組成物を塗布する工程(3)、レジストパターンをエッチングにより除去してパターンを反転させる工程(4)を含む半導体装置の製造方法にも関する。
上記のとおり、本発明の組成物はレジストパターン上被覆するための組成物であり、より詳細にはラインアンドスペースのレジストパターン上に被覆するための組成物である。上記組成物は粗と密なパターンエリア(ライン部)のレイアウトを有するレジストパターン上に被覆される。
また、上記レジストパターンは、ナノインプリントで形成されたパターンを用いることができる。
【0042】
工程(1)に用いられるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、シプレー社製商品名APEX−E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330−334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357−364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365−374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0043】
また、電子線レジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。これらの電子線レジストを用いた場合も照射源を電子線としてフォトレジストを用いた場合と同様にレジストパターンを形成することができる。
【0044】
レジスト溶液は塗布した後に焼成温度70乃至150℃で、焼成時間0.5乃至5分間行い、レジスト膜厚は10乃至1000nmの範囲で得られる。レジスト溶液や現像液や以下に示す塗布材料は、スピンコート、ディップ法、スプレー法等で被覆できるが、特にスピンコート法が好ましい。レジストの露光は所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びEUV光(波長13.5nm)、電子線等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB:PostExposure Bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃乃至150℃、加熱時間0.3乃至10分間から適宜、選択される。
【0045】
工程(1)の前に、基板上にレジスト下層膜を形成する工程(1−1)を含むことができる。レジスト下層膜は反射防止や有機系のハードマスク機能を有するものである。
すなわち、工程(1)のレジストの形成を、半導体基板上にレジスト下層膜が形成され、その上にレジストを形成する工程(1−1)として行うことができる。
【0046】
また、工程(1−1)は、半導体基板上にレジスト下層膜を形成し、その上にケイ素のハードマスクを形成し、その上にレジストを形成させることができる。
上記工程(1−1)で用いられるレジスト下層膜は上層レジストの露光時の乱反射を防止するものであり、また、レジストとの密着性を向上する目的で用いるものであり、例えばアクリル系樹脂やノボラック系樹脂を用いることができる。レジスト下層膜は半導体基板上に膜厚1乃至1000nmの被膜を形成することができる。
【0047】
また上記工程(1−1)に用いられるレジスト下層膜は有機樹脂を用いたハードマスクであり、炭素含有量が高く水素含有量が低い材料が用いられる。例えばポリビニルナフタレン系樹脂、カルバゾールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。これらは半導体基板上に膜厚5乃至1000nmで被膜を形成することができる。
【0048】
また上記工程(1−1)に用いられるケイ素のハードマスクとしては、加水分解性シランを加水分解して得られたポリシロキサンを用いることができる。例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランを加水分解し得られるポリシロキサンを例示することができる。これらは上記レジスト下層膜の上に膜厚5乃至200nmで被膜を形成することができる。
【0049】
工程(2)において、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びEUV(波長13.5nm)等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(postexposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃乃至150℃、加熱時間0.3乃至10分間から適宜、選択された条件で行われる。
次いで、現像液によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
【0050】
現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5乃至50℃、時間10乃至600秒から適宜選択される。
【0051】
また、本発明では現像液として有機溶剤を用いることができる。露光後に現像液(溶剤)によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光されない部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
【0052】
現像液としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等を例として挙げることができる。
【0053】
さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5乃至50℃、時間10乃至600秒から適宜選択される。
【0054】
工程(3)として、現像中又は現像後のレジストに本発明の塗布組成物を塗布する。工程(3)において塗布組成物を加熱して形成することができる。加熱は焼成温度50乃至180℃で、0.5乃至5分間行われる。
【0055】
そして、本発明では工程(3)の後に本発明の組成物の硬化物からなる塗膜の表面をエッチバックしてレジストパターン表面を露出する工程(3−1)を含むことができる。これにより、後の工程(4)において、レジストパターン表面と塗布組成物の表面が一致し、レジストパターンと塗布組成物のガスエッチング速度の違いから、レジスト成分のみを除去し、塗布組成物による成分が残り、結果的にパターンの反転が生じる。エッチバックは塗布組成物が除去できるガス(例えばフッ素系ガス)によってレジストパターンの露出が行われる。
【0056】
工程(4)ではレジストパターンをエッチング除去してパターンを反転させる。工程(4)において、ドライエッチングはテトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素等のガスを用いて行われる。特に酸素系のガスによりドライエッチングが行われることが好ましい。
【0057】
これにより当初のレジストパターンを除去し、塗布組成物中に含まれていたパターン反転形成用ポリマー(本発明の変性ポリシロキサン)によるリバースパターンが形成される。
【0058】
本発明では上述したように半導体基板上にレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを本発明の組成物からなるシリコン系塗布液で被覆する。これによりレジストパターン間にシリコン系塗布液が充填され、その後焼成し、塗膜を形成する。その後シリコン含有塗膜の上部をフッ素系ガスでエッチングによりエッチバックしてレジストパターン上部を露出させ、そしてガスを変えてレジストパターンを酸素系エッチングガスで除去して、レジストパターンが消失しシリコン系塗膜に由来するシリコン系のパターンが残り、パターンの反転が行われる。
【0059】
上記エッチバックの際にシリコン系材料塗布面がある一定水準で平坦化されていない場合は、レジストパターンの表面を露出するまでエッチバックした時に、レジストパターンのライン部上部と埋め込まれたスペース部が水平に成っていないので、パターンを反転した後も一定の水平な反転パターンが得られない。これは後に行われる下層のエッチングで、不均一な下層の加工となり、好ましくない。
しかしながら、本発明の組成物ではポリシロキサン中のシラノール基の割合を特定範囲に設定することで、半導体基板上に形成されたレジストパターンを該組成物で被覆する時に平坦な被覆面が得られるため良好なパターンの反転が行われる。
【実施例】
【0060】
<合成例1>
テトラエトキシシラン53.9g(50mol%)、メチルトリエトキシシラン46.1g(50mol%)およびアセトン100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸32.6gをその混合溶液に滴下した。滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で4時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に4−メチル−2−ペンタノールを100g加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリシロキサン)の4−メチル−2−ペンタノール溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で13質量%となるように調整した。
作成したポリマー溶液15gに対し酢酸を20mg加えた。150℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で24時間反応させた。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で3700であった。得られたポリシロキサンはシラノール基の一部が4−メチル−2−ペンタノールでキャッピングされたポリシロキサンであった。
【0061】
<合成例2>
テトラエトキシシラン22.2g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン44.4g(70mol%)およびアセトン100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸21.2gをその混合溶液に滴下した。滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で4時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に4−メチル−2−ペンタノールを100g加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリシロキサン)の4−メチル−2−ペンタノール溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で13質量%となるように調整した。
作成したポリマー溶液15gに対し酢酸を20mg加えた。150℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で48時間反応させた。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で5300であった。得られたポリシロキサンはシラノール基の一部が4−メチル−2−ペンタノールでキャッピングされたポリシロキサンであった。
【0062】
<合成例3>
テトラエトキシシラン22.2g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン44.4g(70mol%)およびアセトン100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸21.2gをその混合溶液に滴下した。滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で4時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に2−プロパノールを100g加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリシロキサン)の2−プロパノール溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で13質量%となるように調整した。
作成したポリマー溶液15gに対し酢酸を20mg加えた。150℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で12時間反応させた。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で6000であった。得られたポリシロキサンはシラノール基の一部が2−プロパノールでキャッピングされたポリシロキサンであった。
【0063】
<合成例4>
テトラエトキシシラン22.2g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン44.4g(70mol%)およびアセトン100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸21.2gをその混合溶液に滴下した。滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で4時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に1−メトキシ−2−プロパノールを100g加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリシロキサン)の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で13質量%となるように調整した。
作成したポリマー溶液15gに対し酢酸を20mg加えた。150℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で12時間反応させた。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で4000であった。得られたポリシロキサンはシラノール基の一部が1−メトキシ−2−プロパノールでキャッピングされたポリシロキサンであった。
【0064】
<比較合成例1>
テトラエトキシシラン53.9g(50mol%)、メチルトリエトキシシラン46.1g(50mol%)およびアセトン100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸32.6gをその混合溶液に滴下した。滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で4時間反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液に4−メチル−2−ペンタノールを100g加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリシロキサン)の4−メチル−2−ペンタノール溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で13質量%となるように調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で1400であった。得られたポリシロキサンはシラノール基の一部が4−メチル−2−ペンタノールでキャッピングされたポリシロキサンであった。
【0065】
(キャッピング比率の測定)
ポリマー中のシラノール基比率、および4−メチル−2−ペンタノール、1−メトキシ−2−プロパノールおよび2−プロパノールのキャッピング比率はHNMRにて算出した。測定はJNM−ECA500(JEOL製)を用いて行った。まずトリエトキシメチルシランのメチルプロトンの化学シフト値(0.0−0.3ppm)の積分比を取り基準とした。4−メチル−2−ペンタノール、1−メトキシ−2−プロパノールおよび2−プロパノールのメチンプロトンの化学シフト値は3.8ppm付近に検出されるが、シラノール基との脱水縮合反応によりケイ素原子と結合を形成した場合、すなわちシラノール基に対してキャッピング反応が起こった場合、メチンプロトンの化学シフト値が4.2ppm付近に移動する。4.2ppm付近に移動したメチンプロトンの積分比を測定し、先に測定したトリエトキシメチルシランのメチルプロトンの積分比を比較することで、ポリマー中のケイ素原子1個に対する4−メチル−2−ペンタノール、1−メトキシ−2−プロパノールおよび2−プロパノールのキャッピング比率を算出した。
【0066】
〔塗布液の調製〕
上記合成例1乃至合成例4及び比較合成例1で得られたポリマー溶液を1−メトキシ−2−プロパノール、2−プロパノールまたは1−メトキシ−2−プロパノールにて希釈し、塗布液を得た。表1に示すポリマーの含有割合は、ポリマー溶液ではなく、ポリマー溶液から溶剤を除いた固形分の含有割合を示す。各成分の含有割合は質量部で表す。表1中では、4−メチル−2−ペンタノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールをそれぞれMIBC、IPA、PGMEと略記する。
【0067】
【表1】





【0068】
以下に本発明の塗布液(塗布組成物)を用いた評価結果を示す。
〔塗布液の平坦化性〕
(Si基板上での平坦化性評価)
実施例1乃至4、比較例1における各被覆用ポリシロキサン組成物について、下記のように平坦化性評価を行った。その評価結果を表1に示す。
溝の深さ220nm、幅800nmの段差基板上に、スピンコーターを用いて、回転数1500rpm、60秒間の条件にて、実施例1乃至4、比較例1の各被覆用ポリシロキサン組成物(塗布組成物)を塗布し、その後110℃のホットプレート上で1分間乾燥することにより、被覆用ポリシロキサン組成物による膜を形成した。被覆用ポリシロキサン組成物による膜の膜厚は120nmとした。次いで、得られた被覆用ポリシロキサン組成物の膜について、断面SEMにより断面の形状を観察し平坦化性を評価した。深さ220nm、幅800nmの溝パターンを観察し、溝底部を基準として最も膜厚の低い箇所と最も膜厚が高い箇所の膜厚を測定し、膜厚差を算出し、膜厚差が少ないものほど平坦化性が良好と評価した。また評価に使用したSEM写真を図1乃至5に記載する。
【0069】
【表2】





【0070】
〔ナノインプリント基板上での平坦化性評価〕
次に、ナノインプリントによりパターニングされた基板上での平坦化性を評価した。
(ナノインプリント用光硬化レジストの準備)
ナノインプリント用レジストは一般的なアクリル系光ナノインプリント用レジストを用いた。石英基板上にスピンコートし、100℃のホットプレートで1分間仮焼成を行い、光ナノインプリント用被膜を得た。
【0071】
(光ナノインプリント)
ナノインプリント装置は、NM−0801HB(明昌機構株式会社製)を使用した。
用いたモールドはシリコン製であり、パターン寸法は500nmとした。モールドは事前にオプツール(登録商標)HD(ダイキン工業株式会社製)に浸漬し、温度が90℃、湿度が90RH%の高温高湿装置を用いて2時間処理し、純水でリンス後、エアーで乾燥させたものを使用した。
前述の光ナノインプリント用被覆膜にシリコンモールドを接着させた状態で、光ナノインプリント装置に設置した。光ナノインプリントは、常時23℃の条件で、a)10秒間かけて1000Nまで加圧、b)高圧水銀ランプを用いて500mJ/cmの露光、c)10秒間かけて除圧、d)モールドと基板を分離して離型、というシーケンスで行った。
【0072】
(ナノインプリント基板上での平坦化性評価)
実施例1乃至4、比較例1における各被覆用ポリシロキサン組成物について、下記のように平坦化性評価を行った。その評価結果を表3に示す。
前述のナノインプリント基板上に、スピンコーターを用いて、回転数1500rpm、60秒間の条件にて、実施例1乃至4、比較例1の各被覆用ポリシロキサン組成物(塗布組成物)を塗布し、その後110℃のホットプレート上で1分間乾燥することにより、被覆用ポリシロキサン組成物(塗布組成物)による膜を形成した。被覆用ポリシロキサン組成物による膜の膜厚は120nmとした。次いで、得られた被覆用ポリシロキサン組成物膜について、断面SEMにより断面の形状を観察し平坦化性を評価した。最も膜厚の低い箇所と最も膜厚が高い箇所の膜厚を測定し、膜厚差を算出し、膜厚差が少ないものほど平坦化性が良好と評価した。
【0073】
【表3】





【0074】
実施例1乃至4では膜厚差が30nm以下、たとえば5乃至30nm程度の平坦な膜が形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
ポリシロキサンのシラノール基をキャッピングして全Si原子に対するシラノール基の割合が40モル%以下である変性ポリシロキサンは、レジストパターンに塗布される組成物として、段差基板上に塗布した時に、最も膜厚の低い箇所と最も膜厚が高い箇所の膜厚差を小さくし平坦化することが可能である。したがって、本発明の組成物は段差基板の平坦化用組成物として利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5