(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738050
(24)【登録日】2020年7月21日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】レジストパターン被覆用水溶液及びそれを用いたパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20200730BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20200730BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
G03F7/40 511
H01L21/30 570
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-509091(P2018-509091)
(86)(22)【出願日】2017年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2017011230
(87)【国際公開番号】WO2017169981
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-69086(P2016-69086)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 登喜雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】
倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−060006(JP,A)
【文献】
特開2014−219577(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/025665(WO,A1)
【文献】
特開2003−107752(JP,A)
【文献】
特開2012−141564(JP,A)
【文献】
特開昭60−006947(JP,A)
【文献】
特開2010−078981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分:主鎖にエチレンオキシド単位及び炭素原子数3のアルキレンオキシド単位、並びに末端にヒドロキシ基を有する共重合体、
B成分:水溶性ポリマー(但し、前記A成分の共重合体を除く)、水溶性モノマー又は水溶性オリゴマー、及び
C成分:水を主成分とする溶剤
を含むレジストパターン被覆用水溶液であって、
前記A成分の共重合体は下記式(1)で表されるブロックコポリマーであ
り、
前記A成分の含有割合はレジストパターン被覆用水溶液全体100質量%に対して0.1質量%から10質量%である、レジストパターン被覆用水溶液。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立にエチレン基、プロピレン基又はトリメチレン基を表し、x、y及びzはそれぞれ独立に5乃至100の整数を表す。)
【請求項2】
前記A成分の共重合体は1000乃至20,000の数平均分子量を有する、請求項1に記載のレジストパターン被覆用水溶液。
【請求項3】
前記B成分の水溶性ポリマーは、1000乃至400,000の数平均分子量を有しかつポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリアミノ酸、ポリエチレンイミン又はポリエチレングリコールであり、前記B
成分の水溶性モノマー又は水溶性オリゴマーは、シクロデキストリン又はクラウンエーテルである、請求項1又は請求項2に記載のレジストパターン被覆用水溶液。
【請求項4】
前記C成分の溶剤は、アルコール類、エステル類、エーテル類及びケトン類からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレジストパターン被覆用水溶液。
【請求項5】
A成分:主鎖にエチレンオキシド単位及び炭素原子数3のアルキレンオキシド単位、並びに末端にヒドロキシ基を有する共重合体、
B成分:水溶性ポリマー(但し、前記A成分の共重合体を除く)、水溶性モノマー又は水溶性オリゴマー、及び
C成分:水を主成分とする溶剤、
D成分:下記式(2)で表される有機スルホン酸
を含むレジストパターン被覆用水溶液
であって、
前記A成分の共重合体は下記式(1)で表されるブロックコポリマーである、レジストパターン被覆用水溶液。
【化2】
(式中、R
4は炭素原子数1乃至16の直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有するアルキル基もしくはフッ化アルキル基、又は該アルキル基もしくは該フッ化アルキル基を置換基として少なくとも1つ有する芳香族基を表し、該環状構造を有するアルキル基は主鎖にカルボニル基を有してもよく、該芳香族基はヒドロキシ基又はカルボキシル基を置換基としてさらに有してもよい。)
【化3】
(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立にエチレン基、プロピレン基又はトリメチレン基を表し、x、y及びzはそれぞれ独立に5乃至100の整数を表す。)
【請求項6】
前記式(2)においてR4は炭素原子数10乃至16の直鎖状アルキル基を置換基として1つ有するフェニル基又はナフチル基である、請求項5に記載のレジストパターン被覆用水溶液。
【請求項7】
前記D成分の有機スルホン酸の含有割合は、前記A成分及び前記B成分の和100質量%に対して0.01質量%乃至70質量%である、請求項5又は請求項6に記載のレジストパターン被覆用水溶液。
【請求項8】
基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、現像液で現像処理、及びリンス液でリンス処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、
前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンを被覆するように請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、及び
前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程
を含むパターン形成方法。
【請求項9】
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜をエッチングガスでエッチングすることによって該被覆膜を除去する工程を含む、請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、及び
前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンをリンス液でリンス処理する工程を含む、請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、現像液で現像処理、及びリンス液でリンス処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、
前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンを被覆するように請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、
前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程、
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、
前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンのパターン間を充填するように、ポリシロキサンと水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む充填用塗布液を塗布する工程、
前記充填用塗布液に含まれるポリシロキサン以外の成分及び前記現像液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、
前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの上面を露出させる工程、及び
上面が露出した前記レジストパターンを除去する工程
を含む反転パターン形成方法。
【請求項12】
基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、及び現像液で現像処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、
前記レジストパターンを被覆するように請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、
前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程、
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、
前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンをリンス液でリンス処理する工程、
前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンの
パターン間を充填するように、ポリシロキサンと水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む充填用塗布液を塗布する工程、
前記充填用塗布液に含まれるポリシロキサン以外の成分及び前記リンス液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、
前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの上面を露出させる工程、及び
上面が露出した前記レジストパターンを除去する工程
を含む反転パターン形成方法。
【請求項13】
基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、現像液で現像処理、及びリンス液でリンス処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、
前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンを被覆するように請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、及び
前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程
を含むパターン形成方法。
【請求項14】
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜をエッチングガスでエッチングすることによって該被覆膜を除去する工程を含む、請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、及び
前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンをリンス液でリンス処理する工程を含む、請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、現像液で現像処理、及びリンス液でリンス処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、
前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンを被覆するように請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、
前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程、
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、
前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンのパターン間を充填するように、ポリシロキサンと水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む充填用塗布液を塗布する工程、
前記充填用塗布液に含まれるポリシロキサン以外の成分及び前記現像液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、
前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの上面を露出させる工程、及び
上面が露出した前記レジストパターンを除去する工程
を含む反転パターン形成方法。
【請求項17】
基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、及び現像液で現像処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、
前記レジストパターンを被覆するように請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、
前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程、
前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、
前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンをリンス液でリンス処理する工程、
前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンのパターン間を充填するように、ポリシロキサンと水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む充填用塗布液を塗布する工程、
前記充填用塗布液に含まれるポリシロキサン以外の成分及び前記リンス液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、
前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの上面を露出させる工程、及び
上面が露出した前記レジストパターンを除去する工程
を含む反転パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンの倒壊防止及びレジストパターンの微細化が可能な、レジストパターン被覆用水溶液に関する。さらに該水溶液を用いたパターン形成方法及び反転パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工は、シリコンウエハー等の半導体基板上にフォトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上にデバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細な凹凸を形成する加工法である。近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もi線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)からArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化されている。そして現在、さらなる微細加工技術である、EUV(極端紫外線の略称、波長13.5nm)露光を採用したリソグラフィーが検討されている。しかしながら、高出力のEUV光源の開発の遅れ等の理由により、EUV露光を採用したリソグラフィーは未だ実用化(量産化)に至っていない。
【0003】
一方、レジストパターン上に塗布し、該レジストパターンを微細化させる方法、及びそのために使用される塗布材料が知られている(例えば、特許文献1乃至特許文献4)。この方法を採用することによって、既に実用化されているArFエキシマレーザーによる露光を採用したリソグラフィーによって作製したレジストパターンを、更に微細化することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−281886号公報
【特許文献2】特開2010−49247号公報
【特許文献3】特開2011−257499号公報
【特許文献4】特開2013−145290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている水溶性樹脂を含有する水溶液は、有機溶剤と比較して表面張力の高い水を溶剤として使用することから、レジストパターンに対する塗布性に難がある。そのため、界面活性剤を添加するか、又は水溶性のアルコール類を水と混合して使用する必要がある。特許文献2に記載されているレジストパターン微細化組成物は、ポリマーを含まない溶液であることから、微細化対象のレジストパターンの形状に依存して、微細化される割合にバラツキが起こり易い。特許文献3に記載されているパターン微細化処理剤は、酸発生剤成分を含有するものであり、該パターン微細化処理剤を塗布後のベーク処理温度を130℃以上の温度で行うか、又は該パターン微細化処理剤を塗布後に露光する工程が追加されなければならない。特許文献4に記載されている微細パターンの形成方法は、ネガ型現像プロセスにより形成されたレジストパターンを狭小化する、すなわち該レジストパターン上に被覆膜を形成した後、加熱することによりレジストパターン間の間隔であるスペース幅を小さくすることである。したがって、前記微細パターンの形成方法は、レジストパターンの幅又は径を縮小させることを目的としていない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、現像処理及びリンス処理後にレジストパターンを乾燥させることなく該レジストパターン上に塗布することで、良好な塗布性を示し、さらに、レジストパターン間のラプラス力を低減させることでレジストパターンの倒壊を防止することができるレジストパターン被覆用水溶液を提供することを目的とする。また、酸性の添加剤を含有することにより、レジストパターンの幅を縮小させることが可能な、レジストパターン被覆用水溶液を提供することを目的とする。さらに、該水溶液を用いたレジストパターンの形成方法、及び該水溶液を用いた反転パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、従来の微細パターン形成用組成物以上に微細なパターンを形成することができ、また、パターンサイズの縮小幅を容易に制御できると同時に、溶剤として、水、及び任意でイソプロピルアルコールなど特定の水溶性有機溶剤を用いることで、コーター・デベロッパーに具備された一般的な現像カップ内にて使用される他の溶液(例えば、現像液、及び界面活性剤を含むリンス液)との相溶性が優れるため該現像カップで使用可能な、レジストパターン被覆用水溶液を見出した。
【0008】
本発明の第一態様は、A成分:主鎖にエチレンオキシド単位及び炭素原子数3のアルキレンオキシド単位、並びに末端にヒドロキシ基を有する共重合体、B成分:水溶性ポリマー(但し、前記A成分の共重合体を除く)、水溶性モノマー又は水溶性オリゴマー、及びC成分:水を主成分とする溶剤を含むレジストパターン被覆用水溶液である。
【0009】
前記A成分の共重合体は、例えば下記式(1)で表されるブロックコポリマーである。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立にエチレン基、プロピレン基又はトリメチレン基を表し、x、y及びzはそれぞれ独立に5乃至100の整数を表す。)
【0010】
前記A成分の共重合体は、例えば1000乃至20,000の数平均分子量を有する。
【0011】
前記B成分の水溶性ポリマーは、例えば、1000乃至400,000の数平均分子量を有しかつポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリアミノ酸、ポリエチレンイミン又はポリエチレングリコールであり、前記B成分の水溶性モノマー又は水溶性オリゴマーは、例えば、シクロデキストリン又はクラウンエーテルである。
【0012】
前記C成分の溶剤は、アルコール類、エステル類、エーテル類及びケトン類からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含有してもよい。
【0013】
本発明の第一態様のレジストパターン被覆用水溶液は、D成分:下記式(2)で表される有機スルホン酸をさらに含有してもよい。
【化2】
(式中、R
4は炭素原子数1乃至16の直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有するアルキル基もしくはフッ化アルキル基、又は該アルキル基もしくは該フッ化アルキル基を置換基として少なくとも1つ有する芳香族基を表し、該環状構造を有するアルキル基は主鎖にカルボニル基を有してもよく、該芳香族基はヒドロキシ基又はカルボキシル基を置換基としてさらに有してもよい。)
【0014】
前記式(2)においてR
4は、例えば、炭素原子数10乃至16の直鎖状アルキル基を置換基として1つ有するフェニル基又はナフチル基である。
【0015】
前記D成分の有機スルホン酸の含有割合は、例えば、前記A成分及び前記B成分の和100質量%に対して0.01質量%乃至70質量%である。
【0016】
上記A成分の共重合体の数平均分子量及び上記B成分の水溶性ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
流量:0.6mL/分
標準試料: 標準ポリスチレン試料(東ソー(株)製)、標準ポリエチレンオキサイド (PEO)試料(昭和電工(株)製)
ディテクター:RIディテクター(東ソー株式会社製、RI−8020)
【0017】
本発明の第二態様は、基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、現像液で現像処理、及びリンス液でリンス処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンを被覆するように本発明の第一態様のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、及び前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程を含むパターン形成方法である。
【0018】
本発明の第二態様のパターン形成方法は、前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜をエッチングガスでエッチングすることによって該被覆膜を除去する工程を含んでもよい。
【0019】
本発明の第二態様のパターン形成方法は、前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、及び前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンをリンス液でリンス処理する工程を含んでもよい。
【0020】
本発明の第三態様は、基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、現像液で現像処理、及びリンス液でリンス処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程、前記リンス処理後、前記レジストパターンを乾燥させることなく、該レジストパターンを被覆するように本発明の第一態様のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程、前記レジストパターン被覆用水溶液が塗布された基板を50℃乃至130℃で加熱して前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程、前記被覆膜の形成後、前記基板を冷却したのち該被覆膜に対し現像液で現像処理する工程、前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンのパターン間を充填するように、ポリシロキサンと水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む充填用塗布液を塗布する工程、前記充填用塗布液に含まれるポリシロキサン以外の成分及び前記現像液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの上面を露出させる工程、及び上面が露出した前記レジストパターンを除去する工程を含む反転パターン形成方法である。
【0021】
上記の反転パターン形成方法は、前記被覆膜に対する現像処理後、前記レジストパターンをリンス液でリンス処理する工程をさらに含み、その後前記レジストパターンを乾燥させることなく、前記充填用塗布液を塗布する工程がおこなわれてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレジストパターン被覆用水溶液は、レジスト膜を露光、現像処理及びリンス処理後、レジストパターンを乾燥させずに塗布することで、基板上に形成されたライン状及び/又はピラー状のレジストパターン上に均一に塗布することができる。さらに現像処理及びリンス処理後、レジストパターンを乾燥させずに本発明のレジストパターン被覆用水溶液を塗布することで、レジストパターン間に働くラプラス力を防ぎ、レジストのパターン倒れを防ぐことができる。さらに、本発明のレジストパターン被覆用水溶液は、溶剤として、水、及び任意でイソプロピルアルコールなど特定の水溶性有機溶剤を用いることで、コーター・デベロッパーに具備された一般的な現像カップ内にて使用される他の溶液(例えば、現像液、及び界面活性剤を含むリンス液)との相溶性が優れるため該現像カップで使用可能である。
【0023】
本発明のレジストパターン被覆用水溶液は、酸性の添加剤を含有することで、ラインパターンの幅とスペースパターンの幅の比率が異なるラインアンドスペースパターンにおいて、ラインパターンの幅を均一に縮小させることができる。さらに、本発明のレジストパターン被覆用水溶液に含まれるポリマーを選択することで、レジストパターンの幅又は径の縮小率を変えることができる。また、今後EUV露光が実用化される際には、EUV露光を用いて作製したレジストパターンをさらに微細化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<A成分>
本発明のレジストパターン被覆用水溶液に含まれるA成分は、主鎖にエチレンオキシド単位及び炭素原子数3のアルキレンオキシド単位、並びに末端にヒドロキシ基を有する共重合体である。このような共重合体として、例えば、アデカ〔登録商標〕プルロニックL−23、同L−31、同L−44、同L−61、同L−62、同L−64,同L−71、同L−72、同L−101、同L−121、同P−84、同P−85、同P−103、同F−68、同F−88、同F−108、同25R−1、同25R−2、同17R−2、同17R−3、同17R−4(以上、(株)ADEKA製)を挙げることができる。
【0025】
本発明のレジストパターン被覆用水溶液に含まれるA成分の含有割合は、該水溶液全体100質量%に対して、例えば0.05質量%から30質量%であり、好ましくは0.1質量%から10質量%である。
【0026】
<B成分>
本発明のレジストパターン被覆用水溶液に含まれるB成分は、前記A成分の共重合体を除く水溶性ポリマー、水溶性モノマー又は水溶性オリゴマーである。これら水溶性ポリマー、水溶性モノマー及び水溶性オリゴマーの具体例として、前述した化合物が挙げられる。
【0027】
本発明のレジストパターン被覆用水溶液に含まれるB成分の含有割合は、該水溶液全体100質量%に対して、例えば0.05質量%乃至30質量%であり、好ましくは0.1質量%乃至10質量%である 。
【0028】
<C成分>
本発明のレジストパターン被覆用水溶液に含まれるC成分は、水を主成分とする溶剤である。水を主成分とする溶剤中の水の濃度は、例えば51質量%乃至100質量%、又は80質量%乃至100質量%である。水の濃度が100質量%とは、前記水を主成分とする溶剤が水から成ることを意味する。該溶剤が水以外の成分を含む場合、該水以外の成分は、アルコール類、エステル類、エーテル類及びケトン類からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤である。
【0029】
前記アルコール類として、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール等のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、及びエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤を挙げることができる。
【0030】
前記エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸ブチル、及び乳酸プロピルを挙げることができる。
【0031】
前記エーテル類として、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフランを挙げることができる。
【0032】
前記ケトン類として、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びアセトフェノンを挙げることができる。
【0033】
<D成分>
本発明のレジストパターン被覆用水溶液は、D成分として前記式(2)で表される有機スルホン酸をさらに含有してもよい。このような有機スルホン酸として、例えば、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(別名:ラウリルベンゼンスルホン酸)、(1,3,5,7−テトラメチルオクチル)ベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、(1R)−(−)−10−カンファースルホン酸、(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及び1−ナフタレンスルホン酸を挙げることができる。これらの有機スルホン酸のうち、本発明のレジストパターン被覆用水溶液に含まれる(D)成分として、ドデシルベンゼンスルホン酸及びノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0034】
本発明のレジストパターン被覆用水溶液がD成分を含む場合、その含有割合は、前記A成分及び前記B成分の和100質量%に対して、例えば0.01質量%乃至70質量%であり、好ましくは0.1質量%乃至50質量%である 。
【0035】
<その他の添加剤>
本発明のレジストパターン被覆用水溶液は、必要に応じて界面活性剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない限りにおいてさらに含んでもよい。界面活性剤は、基板に対する該水溶液の塗布性を向上させるための添加物である。ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤のような公知の界面活性剤を用いることができる。
【0036】
上記界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352〔三菱マテリアル電子化成(株)製〕、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R−30、同R−40、同R−40−LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0037】
本発明のレジストパターン被覆用水溶液が上記界面活性剤を含む場合、その含有割合は、前記A成分及び前記B成分の和100質量%に対して、例えば0.1質量%乃至5質量%であり、好ましくは0.2質量%乃至3質量%である。
【0038】
[パターン形成方法及び反転パターン形成方法]
本発明のレジストパターン被覆用水溶液を用いた、パターン形成方法及び反転パターン形成方法は、基板上のレジスト下層膜の上に形成したレジスト膜に対し、リソグラフィープロセスにしたがって露光、ベーク、現像液で現像処理、及びリンス液でリンス処理を行うことによってレジストパターンを形成する工程を有する。ここで、前記基板として、精密集積回路素子の製造に使用される基板(例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されていてもよいシリコンウエハー等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、無アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、結晶化ガラス基板、ITO膜が形成されたガラス基板)を挙げることができる。そして、前記基板には、レジスト下層膜として、反射防止能を有する有機膜及び/又は無機膜が形成されている。その基板上に形成されたレジスト下層膜上にレジスト膜を形成するために使用するレジスト溶液として、ポジ型レジスト溶液(例えば、住友化学(株)製PAR710、同PAR855、及びJSR(株)製AR2772JN)を用いることができる。前記ポジ型レジスト溶液に替えて、ネガ型レジスト溶液を使用することもできる。
【0039】
前記レジスト膜に対する露光に使用する露光装置の光源として、例えば、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー及びEUVからなる群から選択される放射線を採用することができる。露光後のレジスト膜に対しベーク(PEB:Post Exposure Bake)するときの加熱温度は、例えば80℃乃至140℃である。
【0040】
前記レジスト膜の形成にポジ型レジスト溶液を使用する場合、前記現像処理に使用する現像液として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を挙げることができる。さらに、該アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩の水溶液、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液である。
【0041】
形成されるレジストパターンの形状として、例えば、ライン状及びピラー状を挙げることができる。ライン状のレジストパターンを形成する場合、孤立ラインパターン及びラインアンドスペースパターンのいずれを形成してもよい。ライン状のレジストパターンの形状は直線に限定されず折れ曲がった形状でもよい。
【0042】
前記リンス処理に使用するリンス液として、例えば、界面活性剤を含む水溶液、純水、及び超純水を挙げることができる。
【0043】
本発明のレジストパターン被覆用水溶液を用いた、パターン形成方法及び反転パターン形成方法は、さらに、前記リンス処理後、前記レジストパターンを被覆するように本発明のレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程を有する。該工程において、前記レジストパターンを乾燥させないことが重要である。なぜなら、前記レジストパターンを乾燥させる際、該レジストパターンが倒れるおそれがあるためである。
【0044】
前記レジストパターンの表面に被覆膜を形成した後、該被覆膜をエッチングガスでエッチング、又は該被覆膜を現像液で現像処理する場合、該エッチングガスとして、例えば、O
2とN
2の混合ガス、O
2ガス、CF
4ガス、Cl
2ガス、HBrガス、SiF
4ガス、HClガス、Heガス及びArガスを挙げることができ、該現像液として前述のアルカリ類の水溶液を適用することができる。また、前記現像処理後のリンス処理に使用するリンス液として、前述の具体例を適用することができる。
【0045】
<充填用塗布液>
本発明のレジスパターン被覆用水溶液を用いた反転パターン形成方法は、レジストパターンのパターン間を充填するように、ポリシロキサンと水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む充填用塗布液を塗布する工程を有する。この充填用塗布液の成分であるポリシロキサンとして、レジストパターンに塗布される塗布液に用いられる公知の材料を採用することができる。また、アルコール類として、前述のC成分が水以外の成分として含有することができるアルコール類の具体例を適用することができる。
【0046】
本発明のレジスパターン被覆用水溶液を用いた反転パターン形成方法は、さらに、前記充填用塗布液に含まれるポリシロキサン以外の成分及び前記現像液又は前記リンス液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程を有する。該工程は、例えば、前記充填用塗布液が塗布された基板を、スピンドライする、又はスピンドライ後加熱することである。ここで、スピンドライとは、基板を回転させながら乾燥させることである。また、前記充填用塗布液に含まれるポリシロキサン以外の成分とは、ポリシロキサン、水及び/又はアルコール類を含有する溶媒、及び必要に応じて添加される添加剤である。
【0047】
本発明のレジスパターン被覆用水溶液を用いた反転パターン形成方法は、さらに、前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの上面を露出させる工程、及び上面が露出した該レジストパターンを除去する工程を有する。前記エッチバックは、例えば、CF
4などのフッ素系ガスを用いるドライエッチング、有機酸もしくは有機塩基の水溶液を用いるウェットエッチング、有機溶剤を用いるウェットエッチング、又はCMP法により行われ、処理条件は適宜調整可能である。上面が露出したレジストパターンの除去は、例えば、O
2とN
2の混合ガス、又はO
2ガスを用いたドライエッチングにより行われる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について合成例及び実施例を挙げて説明するが、本発明は下記記載によって限定されるものではない。
【0049】
<実施例1>
ポリビニルピロリドン K60(約35%水溶液)(東京化成工業(株)製)0.50g、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(160E.O.)(30P.O.)(和光純薬工業(株)製)0.08gを、純水49.42gに加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0050】
<実施例2>
ポリビニルピロリドン K60(約35%水溶液)(東京化成工業(株)製)0.36g、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(160E.O.)(30P.O.)(和光純薬工業(株)製)0.12gを、純水49.52gに加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0051】
<実施例3>
ポリビニルピロリドン K60(約35%水溶液)(東京化成工業(株)製)0.21g、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(160E.O.)(30P.O.)(和光純薬工業(株)製)0.18gを、純水49.61gに加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0052】
<実施例4>
ポリビニルピロリドン K60(約35%水溶液)(東京化成工業(株)製)1.48g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(160E.O.)(30P.O.)(和光純薬工業(株)製)0.058g、及びドデシルベンゼンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)0.17gに純水48.29gを加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0053】
<実施例5>
ポリビニルピロリドン K60(約35%水溶液)(東京化成工業(株)製)1.38g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(160E.O.)(30P.O.)(和光純薬工業(株)製)0.054g、及びドデシルベンゼンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)0.21gを、純水48.35gに加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0054】
<実施例6>
ポリビニルピロリドン K60(約35%水溶液)(東京化成工業(株)製)1.71g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(160E.O.)(30P.O.)(和光純薬工業(株)製)0.067g、及びドデシルベンゼンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)0.33gを、純水49.47gに加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0055】
<比較例1>
ポリビニルピロリドン K60(約35%水溶液)(東京化成工業(株)製)0.2gを、純水49.0gに加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0056】
<比較例2>
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(160E.O.)(30P.O.)(和光純薬工業(株)製)0.5gを、純水45.0gに加え溶解させた。その後孔径0.20μmのミクロフィルター(GEヘルスケア・ジャパン(株)(旧ワットマン社)製)を用いてろ過して、レジストパターン被覆用水溶液を調製した。
【0057】
〔シリコンウエハー上への塗布性試験〕
実施例1乃至実施例3、比較例1及び比較例2で調製したレジストパターン被覆用水溶液に純水をさらに加えて、スピンコーター(1500rpm、60秒間)にて10nmの膜厚になるようにシリコンウエハー上に塗布し、そのシリコンウエハーを100℃で60秒間ベークした。その後、前記シリコンウエハー上の塗膜を確認することで、各レジストパターン被覆用水溶液の該シリコンウエハー上への塗布性を評価した。その結果を下記表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
〔フォトレジストパターンの形成〕
ARC〔登録商標〕29A(日産化学工業(株)製)をスピナーによりシリコンウエハー上に塗布した。そのシリコンウエハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間加熱し、膜厚80nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(住友化学(株)製、商品名:PAR855)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で105℃にて60秒間加熱してフォトレジスト膜(膜厚0.10μm)を形成した。
【0060】
次いで、スキャナー((株)ニコン製、NSR−S307E(波長193nm、NA:0.85、σ:0.65/0.93))を用い、前記フォトレジスト膜に対し、フォトマスクを通して露光を行った。フォトマスクは形成すべきレジストパターンに応じて選ばれる。露光後、ホットプレート上、105℃で60秒間露光後加熱(PEB)を行い、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として0.26規定のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像した。その後、現像液を除去するため純水を塗布しリンスした後、スピンドライにより乾燥させた。以上の工程を経て、目的とするレジストパターンを形成した。形成されたラインアンドスペースパターンについて、ラインパターンの幅の測定及びパターン倒れの有無の確認を行った。
【0061】
CD−SEM S−9380II((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、上記工程により得られたレジストパターンを上面から観察した画像を取得し、該レジストパターンを測長した。ラインアンドスペース1:1のパターン(露光量37mJ/cm
2)をリファレンス1とし、一方、倒れたレジストパターン(露光量64mJ/cm
2)をリファレンス2とした。レジストパターンの倒れ防止効果を確認するため、露光、現像、及びリンス処理後、前記シリコンウエハー上に形成されたレジストパターンを乾燥させる前に、該レジストパターンを被覆するように、スピンコーター(1500rpm、60秒間)にて実施例2で調製したレジストパターン被覆用水溶液を塗布する工程を経た後、100℃で60秒間ベークし、被覆膜を形成した。該被覆膜が形成されたラインアンドスペースパターンについて、ラインパターンの幅及びラフネス(LWR)の測定及びパターン倒れの有無の確認を行った。前記LWRとは、“Line Width Roughness”の略称である。その結果を、下記表2に示す。リファレンス1と、実施例2のレジストパターン被覆用水溶液を用いて被覆膜を形成したレジストパターンとの比較において、該被覆膜を形成した後はレジストパターンの幅が2nm太くなり、レジストパターンの表面に被覆膜が形成されていることが確認できた。また、リファレンス2と、実施例2のレジストパターン被覆用水溶液を用いて被覆膜を形成したレジストパターンとの比較において、該被覆膜を形成することによって、レジストパターンの倒れが抑制されることが確認できた。
【0062】
【表2】
【0063】
〔レジストパターンの微細化試験〕
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いて120℃で60秒間処理をしたシリコンウエハー上に、EUVレジストを30nmの膜厚になるように塗布し、ベークした。その後、(株)エリオニクス製の電子線描画機を用いて、ラインアンドスペースパターンが描画されたレジスト膜を有するシリコンウエハーを作製した。さらに作製したシリコンウエハーをチップ状にカットし、現像液として0.26規定のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像した。その後、現像液を除去するため純水を塗布し、リンスした後、ホットプレートにて100℃で30秒間乾燥させ、リファレンスとなるラインアンドスペース1:1のパターンを得た。さらに上記作製手順にしたがって作製した、チップ状にカットしたシリコンウエハーを、上記現像液を用いて現像した。その後、現像液を除去するため純水でリンスした後、実施例4乃至実施例6で調製したレジストパターン被覆用水溶液をそれぞれ、現像及びリンス処理を経た乾燥させる前のレジストパターン上に塗布し、80℃で60秒間ベークし被覆膜を形成した。さらに前記被覆膜を現像液で現像し、前記被覆膜を現像液で現像した後のレジストパターンを、リンス液でリンス処理し、100℃で30秒間乾燥させた後それぞれ、トリミングされたラインパターンの幅を測長した。その結果を、下記表3に示す。表3の結果から、実施例4乃至実施例6のレジストパターン被覆用水溶液を用いて被覆膜を形成後、現像、リンス処理及び乾燥させて得られたパターンは、リファレンスのパターンと比較して、ラインパターン幅が5nm以上縮小したことが確認できた。
【0064】
【表3】