特許第6738608号(P6738608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738608
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】クロマトグラフ媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20200730BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20200730BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   G01N33/543 501K
   G01N33/53 V
   G01N33/72 A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-10795(P2016-10795)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-129533(P2017-129533A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−216694(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0092093(US,A1)
【文献】 特開2013−195403(JP,A)
【文献】 特表2015−509526(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0268257(US,A1)
【文献】 特表2002−509254(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0031773(US,A1)
【文献】 特開2005−061910(JP,A)
【文献】 特開昭62−244441(JP,A)
【文献】 JANICE J. Li,Optical Scanner for Immunoassays With Up-Converting Phosphorescent Labels,IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING,IEEE,2008年 5月,VOL.55, NO.5,1560-1571,II. Materials and Methods B.Immunoassay 3) Microfluidic Lateral-low Immunoassay
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/53
G01N 33/72
G01N 33/558
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の被検出物質を検出するイムノクロマトグラフィー法に用いられ、タンパク質からなる検出物質が保持された検出部を有するクロマトグラフ媒体であって、前記検出部に三糖または四糖の多糖類と塩基性アミノ酸を含み、
前記多糖類が、ラフィノース及びマルトテトラオースからなる群より選ばれる少なくとも1の多糖類であり、
前記塩基性アミノ酸が、アルギニン及びリジンからなる群より選ばれる少なくとも1の塩基性アミノ酸である
クロマトグラフ媒体。
【請求項2】
検出部に前記多糖類を5〜50nmol含む請求項1に記載のクロマトグラフ媒体。
【請求項3】
検出部に前記塩基性アミノ酸を5〜50nmol含む請求項1または2に記載のクロマトグラフ媒体。
【請求項4】
検出部に含まれる前記多糖類と前記塩基性アミノ酸のモル比が、1:10〜10:1である請求項に記載のクロマトグラフ媒体。
【請求項5】
検出部にリジンを含む請求項1〜のいずれか1項に記載のクロマトグラフ媒体。
【請求項6】
被検出物質が糖蛋白質である請求項1〜のいずれか1項に記載のクロマトグラフ媒体。
【請求項7】
前記糖蛋白質がHbA1cである請求項に記載のクロマトグラフ媒体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のクロマトグラフ媒体を含むイムノクロマトグラフ装置。
【請求項9】
請求項に記載のイムノクロマトグラフ装置及び検体希釈液を含むイムノクロマトグラフキット。
【請求項10】
請求項に記載のイムノクロマトグラフキットを用い、下記工程(1)〜(4)を順次実施するイムノクロマト分析方法。
(1)検体を検体希釈液とともに試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている標識物質により前記検体に含まれる被検出物質を認識させる工程
(3)前記検体および標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体に展開させる工程
(4)展開された移動相中の被検出物質を検出部で検出する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ媒体、イムノクロマトグラフ装置、イムノクロマトグラフキット、イムノクロマト分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、検体の前処理を行う必要の無い、イムノクロマトグラフィー法によるイムノアッセイは、例えば抗体の持つ特異的反応性を利用して、試料液中の抗原を検出する簡便な体外診断キットもしくは携帯用診断装置として重要性が高まっている。特に、ウィルスや細菌等の病原体検査キットは、一般の病院やクリニックでも汎用されている身近なイムノクロマトグラフ装置である。
【0003】
従来のイムノクロマトグラフ装置の最も簡単な構造としては、試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体(クロマトグラフ媒体部)、および検出部を通過した液体を吸収する吸収部が相互に繋がった構造である。
【0004】
上記の各部位のうち、クロマトグラフ媒体の検出部には、検出対象の被検出物質と結合する抗体等のタンパク質が担持されている。このタンパク質は、温度条件や湿度条件によって変性を起こし、検出対象の検出感度が低下してしまうので、イムノクロマトグラフ装置を安定的に長い時間保存することができないという問題があった。そこで、クロマトグラフ媒体の検出部に含まれるタンパク質の変性を抑制し、保存安定性を高めるための手段について各種検討がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、イムノクロマトグラフ装置の検出部等の固相に、糖または糖誘導体を用いることによって、装置内の湿度を適度に保ち、保存安定性を有するイムノクロマト装置が開示されている。
また、非特許文献1には、クロマトグラフ媒体のメンブレンに、グリシンやリシン等のアミノ酸や、スクロースやトレハロース等の糖をそれぞれ単独で含有させることによって、抗体の保存安定性を高め、検出感度の低下を抑制させたイムノクロマトグラフ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2002/40999号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】METHODS 22,53−60(2000)「Development of Rapid One−Step Immunochromatographic Assay」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来技術では未だその効果は十分とは言えず、改良の余地があった。本発明の目的は、保存安定性を十分に向上させたクロマトグラフ媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、イムノクロマトグラフィー法に用いられるイムノクロマトグラフ装置において、クロマトグラフ媒体の検出部に特定の糖類と塩基性アミノ酸の両方を含有させることによって、検出部に保持された検出対象であるタンパク質の変性を十分に抑制し、保存安定性を十分に高め、検出物質の活性低下を防ぐことができることを見出し、さらに検出物質の活性も向上させることができることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.検体中の被検出物質を検出するイムノクロマトグラフィー法に用いられ、タンパク質からなる検出物質が保持された検出部を有するクロマトグラフ媒体であって、前記検出部に三糖以上の多糖類と塩基性アミノ酸を含むクロマトグラフ媒体。
2.検出部に含まれる多糖類が、ラフィノース、ニゲロトリオース、マルトトリオース、メレジトース、マルトトリウロース、ケストース、ニストース、ニゲロテトラオース、スタキオース及びマルトテトラオースからなる群より選ばれる少なくとも1つの多糖類である前記1に記載のクロマトグラフ媒体。
3.検出部に多糖類を5〜50nmol含む前記1または2に記載のクロマトグラフ媒体。
4.検出部に塩基性アミノ酸を5〜50nmol含む前記1〜3のいずれか1に記載のクロマトグラフ媒体。
5.検出部に含まれる多糖類と塩基性アミノ酸のモル比が、1:10〜10:1である前記4に記載のクロマトグラフ媒体。
6.検出部に、アルギニン、リジン、オルニチン、及びヒスチジンからなる群より選ばれる少なくとも1の塩基性アミノ酸を含む前記1〜5のいずれか1に記載のクロマトグラフ媒体。
7.検出部にリジンを含む前記1〜6のいずれか1に記載のクロマトグラフ媒体。
8.被検出物質が糖蛋白質である前記1〜7のいずれか1に記載のクロマトグラフ媒体。
9.前記糖蛋白質がHbA1cである前記8に記載のクロマトグラフ媒体。
10.前記1〜9のいずれか1に記載のクロマトグラフ媒体を含むイムノクロマトグラフ装置。
11.前記10に記載のイムノクロマトグラフ装置及び検体希釈液を含むイムノクロマトグラフキット。
12.前記11に記載のイムノクロマトグラフキットを用い、下記工程(1)〜(4)を順次実施するイムノクロマト分析方法。
(1)検体を検体希釈液とともに試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている標識物質により前記検体に含まれる被検出物質を認識させる工程
(3)前記検体および標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体に展開させる工程
(4)展開された移動相中の被検出物質を検出部で検出する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検出部に保持された検出対象であるタンパク質の変性を十分に抑制し、保存安定性が十分に高く、検出物質の活性低下を防ぐことができるクロマト媒体を提供することができる。また、検出物質の活性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、イムノクロマトグラフ装置の構造を説明するための断面図である。
図2図2は、実施例1、2及び比較例1、2において、検出部の発色値の相対活性を示すグラフである。
図3図3は、実施例3〜6及び比較例3〜10において、加湿二日後の検出部の発色値の相対活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明のクロマトグラフ媒体は、タンパク質からなる検出物質が保持された検出部を有しており、当該検出部に三糖以上の多糖類と塩基性アミノ酸を含むことを特徴としている。
【0015】
検出部は、クロマトグラフ媒体上に形成される。すなわち、被検出物質と結合する検出物質であるタンパク質が任意の位置に固定化される。
本発明のイムノクロマト媒体は、検出部が三糖以上の多糖類と塩基性アミノ酸を含むことを特徴としている。
【0016】
本発明のクロマトグラフ媒体は、その検出部に三糖以上の多糖類を含有することによって、検出部中の検出物質であるタンパク質が耐湿性を有し、その結果タンパク質の変性が抑制され、保存安定性が高まり、検出物質の活性低下を防ぐことができる。また、多糖類のなかでも、一分子内に水素結合可能な水酸基を多数有する三糖以上の糖類であることによって、単糖や二糖と比較してより高い効果を得ることができる。
【0017】
本発明のクロマトグラフ媒体がその検出部に三糖以上の多糖類を含有させることによって検出物質の保存安定性を高めることができる作用機序については定かではないが、三糖以上の多糖類が検出物質のタンパク質の水素結合ネットワークを維持することにより、乾燥によって検出物質のタンパク質から結合水が解離する際に、タンパク質の立体構造が壊されることを防ぎ、タンパク質の変性を防ぐことによって保存安定性を高め、活性の低下を防ぐことができるからであると考えられる。
【0018】
多糖類は、三糖以上であれば特に限定されない。例えば、三糖〜四糖が挙げられる。
三糖としては、例えば、ラフィノース、ニゲロトリオース、マルトトリオース、メレジトース、マルトトリウロース、及びケストース等が挙げられる。
四糖としては、例えば、ニストース、ニゲロテトラオース、スタキオース及びマルトテトラオース等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、多糖類の中でも、三糖〜四糖が好ましく、より好ましくは三糖であり、三糖の中でもさらに好ましくはラフィノースである。上記の糖であることによって、被検出物質と検出物質との反応阻害が抑制され、検出物質のタンパク質の水素結合ネットワークを適切に維持し保存安定性を高め活性の低下を防ぐことができるからである。三糖以上の多糖類の多くは、非還元糖であって、加水分解による水素結合性の弱いアルデヒドまたはケトンへの官能基の変換が起こらないことから、強固な水素結合のネットワークが維持できる。
本発明のクロマトグラフ媒体の検出部には、上記糖を1種類含有させてもよいし、2種以上を混合して含有させてもよい。
【0020】
検出部における多糖類の含有量は、イムノクロマト媒体1つにつき、例えば5〜50nmolであり、好ましくは10〜40nmolであり、さらに好ましくは20〜30nmolである。上記範囲にすることによって、保存安定性を高め活性の低下を防ぐことが十分でき、被検出物質と検出物質との反応阻害をより抑制できるためである。
【0021】
また、本発明のクロマトグラフ媒体はその検出部に、上記多糖類とともに塩基性アミノ酸を合わせて含有することによって、検出部中の検出物質であるタンパク質が耐湿性を有し、その結果タンパク質の変性が抑制され、保存安定性を高め、検出物質の活性低下を防ぐことができる。また、塩基性アミノ酸であることによって、その他のアミノ酸と比較してより高い効果を得ることができる。
【0022】
本発明のクロマトグラフ媒体はその検出部に塩基性アミノ酸を含有させることによって検出物質の保存安定性を高めることができる作用機序については定かではないが、塩基性アミノ酸は、検出物質であるタンパク質と弱く相互作用して、タンパク質同士の会合凝集を抑制して、検出物質の活性低下を防ぐことができるからであると考えられる。
【0023】
塩基性アミノ酸の種類は特に限定されないが、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン、及びヒスチジン等が挙げられる。保存安定性を高め、活性の低下をより防ぐ観点から、好ましくは、リジン及びアルギニンが用いられ、最適にはリジンが用いられる。本発明のクロマトグラフ媒体の検出部には、上記の塩基性アミノ酸を1種類含有させてもよいし、2種以上を混合して含有させてもよい。
【0024】
検出部における塩基性アミノ酸の含有量は、イムノクロマト媒体1つにつき例えば5〜50nmolあり、好ましくは10〜40nmolであり、さらに好ましくは15〜30nmolである。上記範囲にすることによって、検出物質の活性低下をより防ぐことができるためである。
【0025】
本発明のイムノクロマト媒体では、検出部が三糖以上の多糖類と塩基性アミノ酸の両方を含むものであり、それぞれを単独で含む場合と比較して、検出物質の保存安定性が顕著に向上するものである。その作用機序は明らかではないが、多糖類が水素結合のネットワークを形成して正しい立体構造を保持し、かつ塩基性アミノ酸が抗体と弱い相互作用で抗体同士の凝集を抑制することで活性が長く保持されると推測される。また、被検出物質の検出物質による検出時において、多糖類による保存安定性の効果を損なわず、塩基性アミノ酸が多糖類と検出物質との会合を適度にほぐすことができるため、被検出物質と検出物質との反応活性低下も抑制できるからであると推測される。
【0026】
検出部に含有させる前記多糖類と塩基性アミノ酸の比率は、質量(モル)比で通常、1:10〜10:1であり、好ましくは、1:4〜4:1であり、より好ましくは4:5〜5:4である。前記範囲であることによって、多糖類と塩基性アミノ酸の両方を含むことによって得られる相乗効果がより効果的になる。
【0027】
本発明のクロマトグラフ媒体の検出部に含有する検出物質であるタンパク質としては、検出対象と特異的に結合するタンパク質であれば特に限定されず、例えば、抗体、抗原、及びホルモン等が挙げられる。
【0028】
抗体としては例えば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体並びにそのフラグメントが挙げられる。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントは、公知であり、入手可能であり、公知の方法により調製することができる。
抗体の含有量は、イムノクロマト媒体1つにつき例えば0.1〜1μgであり、好ましくは0.2〜0.6μgであり、さらに好ましくは0.3〜0.4μgである。
【0029】
本発明のクロマトグラフ媒体は、イムノクロマトグラフ装置の展開部位として使用できる。クロマトグラフ媒体は、毛管現象を示す微細多孔性物質からなる不活性の膜である。イムノクロマトグラフィー法で使用される検出試薬、固定化試薬または被検出物質などと反応性を有しないという観点から、また、本発明の効果が向上するという観点から、例えば、ニトロセルロース製のメンブレン(以下「ニトロセルロースメンブレン」という場合がある)や、酢酸セルロース製のメンブレン(以下「酢酸セルロースメンブレン」という場合がある)が好ましく、ニトロセルロースメンブレンがさらに好ましい。なお、セルロース類メンブレン、ナイロンメンブレン及び多孔質プラスチック布類(ポリエチレン、ポリプロピレン)も使用可能である。
【0030】
ニトロセルロースメンブレンとしては、ニトロセルロースが主体で含まれていればよく、純品またはニトロセルロース混合品などニトロセルロースを主材とするメンブレンを使用することができる。
【0031】
ニトロセルロースメンブレンは、さらに毛細管現象を促進させる物質を含有させることもできる。該物質としては、膜面の表面張力を低下させ、親水性をもたらす物質が好ましい。例えば、各種合成界面活性剤またはアルコール等の両親媒性の作用を有する物質であって、クロマトグラフ媒体上での被検出物質の移動に影響がなく、マーカー物質(例えば金コロイドなど)の発色に影響を及ぼさない物質が好ましい。
【0032】
ニトロセルロースメンブレンは、多孔性であって、毛細管現象を示す。この毛細管現象の指標は、吸水速度(吸水時間:capillary flow time)を測ることで確認できる。吸水速度は、検出感度と検査時間に影響する。
【0033】
上記のようなニトロセルロースメンブレンや酢酸セルロースメンブレンに代表されるクロマトグラフ媒体の形態及び大きさは特に制限されるものではなく、実際の操作の点及び反応結果の観察の点において適切であればよい。
【0034】
また、本発明のクロマトグラフ媒体には、非特異的な吸着により分析の精度が低下することを防止するため、必要に応じて、公知の方法でブロッキング処理を行うことができる。一般にブロッキング処理はウシ血清アルブミン、スキムミルク、カゼインまたはゼラチン等の蛋白質が好適に用いられる。かかるブロッキング処理後に、必要に応じて、例えば、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウラート(例えば、Tween20:和光純薬社製)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(例えば、TritonX−100:和光純薬社製)またはドデシル硫酸ナトリウム(例えば、SDS:和光純薬社製)等の界面活性剤を1つ又は2つ以上組み合わせて洗浄してもよい。
【0035】
また、本発明のクロマトグラフ媒体中の検出部は、クロマトグラフ媒体上に形成される。すなわち、被検出物質と特異的に結合する上記タンパク質が任意の位置に固定化される。
【0036】
被検出物質を含む検体としては、特に制限されないが、例えば、生体試料、即ち、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、鼻腔又は咽頭拭い液、髄液、羊水、乳頭分泌液、涙、汗、皮膚からの浸出液、組織や細胞及び便からの抽出液等の他、牛乳、卵、小麦、豆、牛肉、豚肉、鶏肉などやそれらを含む食品等の抽出液等が挙げられる。
【0037】
具体的な被検出物質としては、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、HER2タンパク、前立腺特異抗原(PSA)、CA19−9、α−フェトプロテイン(AFP)、免疫抑制酸性タンパク(IPA)、CA15−3、CA125、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、便潜血、トロポニンI、トロポニンT、CK−MB、CRP、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、梅毒抗体、インフルエンザウイルス、ヒトヘモグロビン、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原、HBs抗体、HBs抗原、ロタウイルス、アデノウイルス、アルブミン、ないし、糖化アルブミン及び糖化ヘモグロビン等の糖蛋白質等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
なかでも、被検出物質としては、糖蛋白質が好ましく糖化ヘモグロビンがより好ましく、HbA1cであることが特に好ましい。HbA1c抗体は、ヘモグロビンにグルコースが結合した状態と結合しない状態のわずかな差を認識する必要があり、その立体構造が厳密に保持されていなければならないため、被検出物質がHbA1cである場合は本発明の効果が特に有効に機能するからである。
【0039】
本発明のクロマトグラフ装置は、図1に示すように、上述したクロマトグラフ媒体および検出部の他に、通常、試料添加部(サンプルパッドともいう)、標識物質保持部(コンジュゲートパッドともいう)、吸収部及びバッキングシートから構成されている。上記各部位が設けられる順番は、試料が展開する順に、試料添加部(1)、標識物質保持部(2)、クロマトグラフ媒体(クロマトグラフ媒体部ともいう)(3)、検出部(4)、吸収部(5)となっている。
【0040】
試料添加部(1)は、免疫クロマト分析装置において、検体(サンプル)を滴下する部位である。サンプルは、通常のクロマトグラフ装置に使用される素材であればどのようなものでもよい。試料添加部(1)は試料を吸収保持するグラスファイバーまたはセルロースの膜が通常使用される。
【0041】
標識物質保持部(2)は、あらかじめ被検出物質と結合する抗体に結合した、後述する標識物質(マーカー物質)が含有されている。標識物質保持部内を被検出物質が移動する際に抗体と結合し、標識化される。標識物質保持部(2)は、例えば、グラスファイバー不織布またはセルロース膜等からなっている。
【0042】
クロマトグラフ媒体(3)及び検出部(4)は、上述した本発明のクロマトグラフ媒体を使用する。
【0043】
吸収部(5)は、クロマトグラフ媒体部(3)の末端に、検出部(4)を通過した検体や展開液等の液体を吸収させるために必要に応じて設置される。本発明の免疫クロマト分析装置において、吸収部(5)は、例えばグラスファイバーからなることができる。吸収部(5)がグラスファイバーからなることによって、試料液の液戻りを大幅に低減することができる。
【0044】
バッキングシート(6)は、基材である。片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けることにより、片面が粘着性を有し、該粘着面上に試料添加部(1)、標識物質保持部(2)、クロマトグラフ媒体部(3)、および吸収部(5)の一部または全部が密着して設けられている。バッキングシート(6)は、粘着剤によって試料液に対して不透過性、非透湿性となるようなものであれば、基材としては、特に限定されない。
【0045】
また、本発明は、検体希釈液と上記イムノクロマトグラフ装置と組み合わせて、イムノクロマトグラフキットとすることができる。
【0046】
検体希釈液は、また展開液としても使用することができるものであるが、通常、溶媒として水を用い、これに緩衝液、塩、および非イオン界面活性剤、さらに、例えば抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するための蛋白質、高分子化合物(PVP等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン、あるいは、抗菌剤、キレート剤等々の1種もしくは2種以上を加えてもよい。
【0047】
展開液として用いる場合には、検体と展開液を予め混合したものを、試料添加部上に供給・滴下して展開させることもできるし、先に検体を試料添加部上に供給・滴下した後、展開液を試料添加部上に供給・滴下して展開させてもよい。
【0048】
本発明のイムノクロマト分析方法は以下の工程(1)〜(4)を順次実施し、含み、上記のイムノクロマトグラフキットを用いて検体に含まれる被検出物質を検出する。
(1)検体を検体希釈液とともに試料添加部に添加する工程
(2)標識物質保持部に保持されている標識物質により前記検体に含まれる被検出物質を認識させる工程
(3)前記検体および標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体に展開させる工程
(4)展開された移動相中の被検出物質を検出部で検出する工程
各工程について以下に説明する。
【0049】
(1)検体を検体希釈液とともに試料添加部に添加する工程
工程(1)では、第1に、検体を、測定精度を低下させることなく、クロマトグラフ媒体中をスムーズに移動する程度の濃度に検体希釈液で調整または希釈して検体含有液とするのが好ましい。第2に、該検体含有液を試料添加部(1)上に、所定量(通常、0.1〜2ml)滴下する。検体含有液が滴下されると、検体含有液は試料添加部(1)中で移動を開始する。
【0050】
(2)標識物質保持部に保持されている標識物質により検体に含まれる被検出物質を認識させる工程
工程(2)は、工程(1)において試料添加部に添加された検体含有液を、標識物質保持部(2)へと移動させ、標識物質保持部に保持されている標識物質により検体中の被検出物質を認識させる工程である。
【0051】
標識物質は抗体を標識化する。免疫クロマトグラフ法における検出試薬の標識には、一般に酵素等も使用されるが、被検出物質の存在を目視で判定するのに適していることから、標識物質としては不溶性担体を用いることが好ましい。抗体を不溶性担体に感作することにより標識化した検出試薬を調製することができる。なお、抗体を不溶性担体に感作する手段は、公知の方法に従えばよい。
【0052】
標識物質としての不溶性担体には、金、銀もしくは白金のようなコロイド状金属粒子、酸化鉄のようなコロイド状金属酸化物粒子、硫黄などのコロイド状非金属粒子及び合成高分子よりなるラテックス粒子、またはその他を用いることができる。特に金コロイドが、検出が簡便で好ましい。金コロイドの粒子の平均粒径は、例えば10nm〜250nm、好ましくは35nm〜120nmである。平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子(株)製、JEM−2010)により、撮影した投影写真を用いて無造作に100個の粒子を粒子の投影面積円相当径を計測し、その平均値から算出することができる。
【0053】
不溶性担体は、被検出物質の存在を視覚的に判定するのに適した標識物質であり、目視による判定を容易にするためには有色であることが好ましい。コロイド状金属粒子及びコロイド状金属酸化物粒子は、それ自体が粒径に応じた特定の自然色を呈するものであり、その色彩を標識として利用することができる。
【0054】
(3)検体および標識物質を移動相としてクロマトグラフ媒体に展開させる工程
工程(3)は、工程(2)において被検出物質が標識物質保持部において標識物質に認識された後、検体および標識物質を、クロマトグラフ媒体上を移動相として通過させる工程である。
【0055】
(4)展開された移動相中の被検出物質を検出部で検出する工程
工程(4)は、クロマトグラフ媒体上を移動相として通過した検体中の被検出物質が、検出物質であるタンパク質との特異的結合反応により、検出部に保持、即ち、担持固定されているタンパク質と標識試薬とによってサンドイッチ状に挟まれるように特異的に反応結合して、検出部が着色する工程である。
【0056】
被検出物質が存在しない場合には、試料の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフ媒体上の検出部を通過しても特異的結合反応が起こらないので、検出部が着色しない。
本発明では、検出部に三糖以上の多糖類と塩基性アミノ酸を含むため、検出部に保持された検出対象であるタンパク質の変性を十分に抑制し、保存安定性が十分に高く、検出物質の活性低下を防ぐことができる。
【0057】
最後に、検体含有液の水分は、吸収部(5)へと移動する。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0059】
[実施例1]
1.イムノクロマトグラフキットの作製
(1)クロマトグラフ媒体および検出部の作製
メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF75、300mm×25mm)を用いた。
次に、5質量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるように抗HbA1cモノクローナル抗体(第一抗体)を希釈した溶液150μLを、乾燥されたメンブレン上の検出部(検出ライン)に1mmの幅で300mm塗布した。なお該溶液は、8mmol/mL(イムノクロマト媒体1つにつき20nmol)のリジン及び10mmol/mL(イムノクロマト媒体1つにつき25nmolとなる濃度)のラフィノース濃度を有する溶液を準備した。
また、金ナノ粒子標識試薬の展開の有無や展開速度を確認するために、検出部の下流に、金ナノ粒子標識物質や被検出物質である動物肉タンパク質などと広く親和性を有するヤギ由来抗血清をリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈した液をコントロール部位(コントロールライン)に塗布した。その後、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体および検出部を作製した。
【0060】
(2)試料添加部の作製
試料添加部としてグラスファイバーからなる不織布(ミリポア社製:300mm×30mm)を用いた。
【0061】
(3)標識物質保持部の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:LC40nm)0.5mlに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.05mg/mlの濃度になるように希釈した抗HbA1cモノクローナル抗体(第二抗体)を0.1ml加え、室温で10分間静置した。
次いで、1質量%の牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、更に室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1質量%のBSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加えた。以上の手順で標識物質溶液を作製した。
上記作製した標識物質溶液300μLに300μLの10質量%トレハロース水溶液と1.8mLの蒸留水を加えたものを15mm×300mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識物質保持部を作製した。
【0062】
(4)イムノクロマトグラフ装置の作製
次に、上記作製したクロマトグラフ媒体および検出部、試料添加部、標識物質保持部を用いて図1に示すようなイムノグラフト装置を作製した。バッキングシートからなる基材に、試料添加部、標識物質保持部、検出部が担持されたクロマトグラフ媒体、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収部としてグラスファイバー製の不織布を順次貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフ装置とした。なお、標識物質保持部およびインキュベーション部の試料展開方向の長さをそれぞれ8mmとした。
【0063】
(5)検体希釈液
1質量%の非イオン界面活性剤(日油株式会社製、商品名:MN811とナカライテスク社製、商品名NP−40の1:1混合物)、80mMの塩化カリウム、20mMのグアニジン塩酸塩、0.4重量%のポリビニルピロリドン(平均分子量36万)を含む50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)を調製し、検体を希釈処理するための試薬とした。
【0064】
2.測定
上記作製したイムノクロマトグラフ装置を加湿器に入れ、湿度を95%、温度を37℃の状態で表1に記載する時間放置した。その後、健康成人男性および糖尿病男性患者それぞれの指先を穿刺することにより、血液を採取し、ラテックス凝集法によりHbA0及びHbA1cの濃度を測定した夫々の血液試料を、HbA1cの濃度が、6.5%となるように混合し作製したHbA1c検体を上記検体希釈液で100倍に希釈し作製した検体試料150μLを免疫クロマト分析装置の試料添加部上に載せて展開させ、検出部の着色の度合い(発色値)をデンシトメーター(浜松ホトニクス社製、以下同じ)により測定した。結果を表1及び図2に示す。表中、相対活性とは、加湿器に入れないもの(経過時間0)で測定した発色値を100%としたときの発色値の割合を示したものである。なお、各実施例・比較例に対応する、HbA1cの濃度が0%でありHbA0のみからなる検体(陰性検体)を用いて、発色値を測定したが、すべて5mAbs未満の測定値を示し、偽陽性は確認されなかった。
【0065】
[実施例2]
第一抗体および第二抗体の「抗HbA1cモノクローナル抗体」の代わりに、「抗インフルエンザ抗体」を使用し、検体試料をインフルエンザ抗原に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。検出部の着色の度合い(発色値)をデンシトメーターにより測定した。結果を表1及び図2に示す。
【0066】
[比較例1]
検出部において、「リジン及びラフィノース」の代わりに、「スクロース」を使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。なお、検出部の作製においては、10mmol/mL(イムノクロマト媒体1つにつき20nmolとなる濃度)のスクロース濃度を有する溶液を使用し、検出部の着色の度合い(発色値)をデンシトメーターにより測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0067】
[比較例2]
検出部において、「リジン及びラフィノース」の代わりに、「スクロース」を使用したこと以外は、実施例2を繰り返した。なお、検出部の作製においては、10mmol/mL(イムノクロマト媒体1つにつき20nmolとなる濃度)のスクロース濃度を有する溶液を使用し、検出部の着色の度合い(発色値)をデンシトメーターにより測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1及び図2において、実施例1及び2は、検出部に塩基性アミノ酸のリジン及び三糖のラフィノースを含有しているため、湿度95%、温度37℃という環境で一定時間放置した際に検出物質の活性低下が抑制された。また、被検出物質としてHbA1cを使用した実施例1では、検出物質の活性が向上した結果が得られた。
一方、表2及び図2において、二糖であるスクロースのみを含有する比較例1及び2においては、検出物質の活性が低下した。
【0071】
[実施例3]
実施例1において使用したイムノクロマト装置を、温度:24−26℃、湿度:40−70%の加湿環境下で二日間放置した。検体は、実施例1と同じHbA1cを用い、放置前のイムノクロマト装置における検出部の着色の度合い(発色値)と、二日間放置後のイムノクロマト装置における検出部の着色の度合い(発色値)をそれぞれデンシトメーターにより測定した。その結果を表3及び図3に示す。表3中、相対活性とは、放置前のイムノクロマトグラフ装置において測定した発色値を100%としたときの、二日間放置後のイムノクロマトグラフ装置において測定した発色値の割合を示したものである。
【0072】
[実施例4]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に塗布するリジンとラフィノースの量を、表3に示すように変更したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0073】
[実施例5]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のアルギニンとラフィノースを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0074】
[実施例6]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のリジンとマルトテトラオースを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0075】
[比較例3]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のグリシンを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0076】
[比較例4]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のアルギニンを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0077】
[比較例5]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のリジンを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0078】
[比較例6]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のマンニトールを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0079】
[比較例7]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のスクロースを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0080】
[比較例8]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のラフィノースを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0081】
[比較例9]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のマルトテトラオースを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0082】
[比較例10]
実施例3において、イムノクロマト装置の検出部に対し、表3に示す量のグリシンとラフィノースを塗布したことを除いては、実施例3を繰り返した。その結果を表3及び図3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
表3及び図3において、実施例3〜6は、検出部に塩基性アミノ酸のリジンやアルギニン、及び三糖以上の多糖類(ラフィノース、マルトテトラオース)を含有しているため、二日間放置した際に検出物質の活性低下が抑制された。特に、リジン及びラフィノースの両方を検出部に含有する実施例3及び4においては、検出物質の活性低下が大幅に抑制された。
一方、中性アミノ酸であるグリシンのみを含有する比較例3、塩基性アミノ酸のみを含有する比較例4及び5、単糖であるマンニトールや二糖であるスクロースのみを含有する比較例6及び7、三糖のラフィノースや四糖のマルトテトラオースのみを含有する比較例8及び9においては、検出物質の活性が顕著に低下した。また、中性アミノ酸のグリシンと三糖のラフィノースを含有する比較例10においても、検出物質の活性が顕著に低下した。
以上の結果より、検出部に塩基性アミノ酸及び三糖以上の多糖類を両方含有させることによって、検出物質の活性低下が大幅に抑制されることがわかった。
【符号の説明】
【0085】
1 試料添加部(サンプルパッド)
2 標識物質保持部
3 クロマトグラフ媒体
4 検出部
5 吸収部
6 バッキングシート
図1
図2
図3