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特許6738851ネットワークシステム、ネットワークシステムの経路切換方法、および、通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6738851
(24)【登録日】2020年7月22日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】ネットワークシステム、ネットワークシステムの経路切換方法、および、通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/725 20130101AFI20200730BHJP
   H04L 12/733 20130101ALI20200730BHJP
【FI】
   H04L12/725
   H04L12/733
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-70134(P2018-70134)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-180076(P2019-180076A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【弁理士】
【氏名又は名称】江村 美彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 篤
(72)【発明者】
【氏名】辻 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】三浦 昌之
【審査官】 中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−515473(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208707(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/008890(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/208045(WO,A1)
【文献】 Ad Hoc On−Demand Distance Vector(AODV) Routing,IETF RFC3561,2003年 7月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/725
H04L 12/733
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置を有するネットワークシステムにおいて、
各通信装置は、
経路が正常か否かを監視する監視手段と、
経路を探索するための経路探索パケットを受信した場合には、対応する現行の経路に関する経路情報を特定する特定手段と、
前記経路探索パケットと、前記特定手段によって特定された経路情報とに基づいて、経路を切り換える処理を実行する切換手段と、を有し、
前記監視手段によって経路が正常と判定された場合、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定手段によって特定された現行の経路のホップ数以上の場合には、前記切換手段は経路の切換を実施しない、
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
前記監視手段によって経路が異常と判定された場合には、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合には、前記切換手段は経路を切り換えることを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記監視手段によって経路が異常と判定された場合において、最初に届く前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合には、前記切換手段は経路を切り換え、その後に届く前記経路探索パケットについては、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定手段によって特定された現行の経路のホップ数未満の場合には、前記切換手段は経路を切り換えることを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
複数の通信装置を有するネットワークシステムの経路切換方法において、
各通信装置は、
経路が正常か否かを監視する監視ステップと、
経路を探索するための経路探索パケットを受信した場合には、対応する現行の経路に関する経路情報を特定する特定ステップと、
前記経路探索パケットと、前記特定ステップによって特定された経路情報とに基づいて、経路を切り換える処理を実行する切換ステップと、を有し、
前記監視ステップによって経路が正常と判定された場合、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定ステップによって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定ステップによって特定された現行の経路のホップ数以上の場合には、前記切換ステップは経路の切換を実施しない、
ことを特徴とするネットワークシステムの経路切換方法。
【請求項5】
複数台が接続されてネットワークシステムを構成する通信装置において、
経路が正常か否かを監視する監視手段と、
経路を探索するための経路探索パケットを受信した場合には、対応する現行の経路に関する経路情報を特定する特定手段と、
前記経路探索パケットと、前記特定手段によって特定された経路情報とに基づいて、経路を切り換える処理を実行する切換手段と、を有し、
前記監視手段によって経路が正常と判定された場合、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定手段によって特定された現行の経路のホップ数以上の場合には、前記切換手段は経路の切換を実施しない、
ことを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステム、ネットワークシステムの経路切換方法、および、通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に規定されている技術は、反応型のルーティングプロトコルであり、要求があった場合に、経路を確立する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IETF RFC3561 Ad Hoc On Demand Distance Vector(AODV) Routing
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非特許文献1に開示される技術では、ホップ数が同じ複数の経路が存在する場合、不必要に経路が切り換えられる場合がある。そのような場合、通信中のパケットが失われる場合があるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、不要な経路の切換を抑制することが可能なネットワークシステム、ネットワークシステムの経路切換方法、および、通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の通信装置を有するネットワークシステムにおいて、各通信装置は、経路が正常か否かを監視する監視手段と、経路を探索するための経路探索パケットを受信した場合には、対応する現行の経路に関する経路情報を特定する特定手段と、前記経路探索パケットと、前記特定手段によって特定された経路情報とに基づいて、経路を切り換える処理を実行する切換手段と、を有し、前記監視手段によって経路が正常と判定された場合、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定手段によって特定された現行の経路のホップ数以上の場合には、前記切換手段は経路の切換を実施しない、ことを特徴とする。
このような構成によれば、不要な経路の切換を抑制することが可能となる。
【0007】
また、本発明は、前記監視手段によって経路が異常と判定された場合には、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合には、前記切換手段は経路を切り換えることを特徴とする。
このような構成によれば、異常が発生した場合には、経路を迅速に切り換えることが可能になる。
【0008】
また、本発明は、前記監視手段によって経路が異常と判定された場合において、最初に届く前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合には、前記切換手段は経路を切り換え、その後に届く前記経路探索パケットについては、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定手段によって特定された現行の経路のホップ数未満の場合には、前記切換手段は経路を切り換えることを特徴とする。
このような構成によれば、異常が発生した後に、有効な経路が見つかった場合には、当該経路への切り換えを行うことができる。
【0009】
また、本発明は、複数の通信装置を有するネットワークシステムの経路切換方法において、各通信装置は、経路が正常か否かを監視する監視ステップと、経路を探索するための経路探索パケットを受信した場合には、対応する現行の経路に関する経路情報を特定する特定ステップと、前記経路探索パケットと、前記特定ステップによって特定された経路情報とに基づいて、経路を切り換える処理を実行する切換ステップと、を有し、前記監視ステップによって経路が正常と判定された場合、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定ステップによって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定ステップによって特定された現行の経路のホップ数以上の場合には、前記切換ステップは経路の切換を実施しない、ことを特徴とする。
このような方法によれば、不要な経路の切換を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、複数台が接続されてネットワークシステムを構成する通信装置において、経路が正常か否かを監視する監視手段と、経路を探索するための経路探索パケットを受信した場合には、対応する現行の経路に関する経路情報を特定する特定手段と、前記経路探索パケットと、前記特定手段によって特定された経路情報とに基づいて、経路を切り換える処理を実行する切換手段と、を有し、前記監視手段によって経路が正常と判定された場合、前記経路探索パケットが有するシーケンス番号が、前記特定手段によって特定された現行の経路のシーケンス番号よりも新しい場合であって、前記経路探索パケットが有するホップ数が、前記特定手段によって特定された現行の経路のホップ数以上の場合には、前記切換手段は経路の切換を実施しない、ことを特徴とする。
このような構成によれば、不要な経路の切換を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不要な経路の切換を抑制することが可能なネットワークシステム、ネットワークシステムの経路切換方法、および、通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のネットワークシステムの構成例を示す図である。
図2図1に示す通信装置の詳細な構成例を示す図である。
図3】本発明の実施形態におけるネットワークを監視する動作を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
図5図4の正常時処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図6図4の異常時処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の変形実施形態を説明するための図である。
図8図7に示す通信装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
(A)本発明の実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るネットワークシステムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係るネットワークシステム1は、ネットワークのノードとして機能する通信装置10−1〜10−5を有している。
【0015】
図1に示す通信装置10−1〜10−5は、例えば、MANET(Mobile Ad hoc Network)のAODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector)による、オンデマンド方式のプロトコルに基づく経路構築を行う。
【0016】
図2は、図1に示す通信装置10−1〜10−5の構成例を示す図である。なお、通信装置10−1〜10−5は同様の構成とされているので、以下では、これらを通信装置10として説明する。
【0017】
図2に示すように、通信装置10は、パケット中継処理部11、制御部12、記憶部13、および、受信部14−1〜14−n、送信部15−1〜15−n、および、計時部16を有している。
【0018】
ここで、パケット中継処理部11は、制御部12の制御に応じて、受信部14−1〜14−nによって受信されたパケットを、そのヘッダに格納されている情報に応じて、対応する送信部15−1〜15−nから送出する。制御部12は、記憶部13に記憶されている経路情報13aに応じて、受信したパケットのヘッダを書き換え、パケット中継処理部11を介して送信する。
【0019】
記憶部13は、例えば、半導体メモリによって構成され、パケットを転送するための情報である経路情報13aを記憶するとともに、後述する処理を実行するためのプログラムやデータを格納している。
【0020】
受信部14−1〜14−nは、他の通信装置からパケットを受信する。送信部15−1〜15−nは、他の通信装置に対してパケットを送信する。計時部16は、時刻を計時して、制御部12に供給する。
【0021】
(B)本発明の実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作について説明する。以下では、従来例の動作における問題点を説明した後に、本発明の実施形態の動作について説明する。
【0022】
図1に示すネットワークシステム1において、通信装置10−1が通信装置10−5と通信を行う場合、通信元である通信装置10−1は、経路を探索するために、経路探索パケットを送信する。このような経路探索パケットは、ブロードキャストによって送信されるので、2つの経路探索パケットが、図1に示す第1通信経路と第2通信経路の2つをそれぞれ経由して通信先である通信装置10−5に到着する。なお、このとき、通信装置10−5には、通信装置10−1との間の経路情報は登録されていないとする。
【0023】
経路探索パケットは、シーケンス番号を有している。シーケンス番号は、ノード毎に管理され、送信のたびにその値がカウントアップされる。通信装置10−1〜10−5は、このシーケンス番号を参照することで、既に処理した経路探索パケットを繰り返し処理しないようにしている。また、経路探索パケットは、通信装置10を通過するたびに、その値がカウントアップされるホップ数を有している。
【0024】
図1の例では、第1通信経路を経由する経路探索パケットは、通信装置10−2、通信装置10−4を介して通信装置10−5に到達するので、そのホップ数は3となる。また、第1通信経路を経由する経路探索パケットは、通信装置10−3、通信装置10−4を介して通信装置10−5に到達するので、そのホップ数は3となる。
【0025】
通信先の通信装置10−5は、このような2つの経路探索パケットを受信する。通信装置10−5は、受信した経路探索パケットのホップ数を参照し、ホップ数が少ない方の経路探索パケットを選択する。しかしながら、図1の例では、第1通信経路と第2通信経路は、ホップ数がともに3である。このような場合には、通信装置10−5は、先に届いた経路探索パケットを選択する。例えば、第1通信経路を経由した経路探索パケットの方が先に通信装置10−5に届いた場合には、第1通信経路を経由した経路探索パケットが選択される。
【0026】
つぎに、通信装置10−5は、第1通信経路を使用する経路として選択し、この経路に関する情報を経路情報13aとして記憶部13に記憶する。より詳細には、通信元である通信装置10−1に関する情報(例えば、アドレス情報)と、経路探索パケットのシーケンス番号と、ホップ数と、転送先である通信装置10−4に関する情報が登録される。なお、これら以外の情報を登録するようにしてもよい。
【0027】
つづいて、通信装置10−5は、通信装置10−1に対して、第1通信経路を介して経路回答パケットを送信する。このような経路回答パケットは、通信装置10−4および通信装置10−2を介して通信装置10−1に伝送される。なお、経路回答パケットを受信した通信装置10−4、通信装置10−2、および、通信装置10−1には、第1通信経路を示す経路情報が登録される。一方、第2通信経路に関する経路探索パケットは破棄されるので、この経路に関する経路情報は生成されない。
【0028】
第1通信経路が選択された場合において、通信元である通信装置10−1において、通信先である通信装置10−5に対する新たな通信要求が生じ、経路探索が新たに生じたとする。その場合、前述の場合と同様に、通信装置10−1は、通信装置10−5に対して新たなシーケンス番号を付与した経路探索パケットを送信する。このような経路探索パケットは、第1通信経路および第2通信経路を経由して通信先である通信装置10−5に到着する。
【0029】
通信装置10−5は、これらの経路探索パケットを受信する。そして、経路探索パケットのシーケンス番号と、経路情報13aに既に格納されている対応するシーケンス番号とを比較する。いまの例では、新たに到着したシーケンス番号の方が新しい(値が大きい)ので、新たに到着した経路探索パケットが選択される。ところで、第1通信経路と第2通信経路を経由した経路探索パケットに格納されているホップ数はともに3である。このため、通信装置10−5は、先に到着した方の経路探索パケットを選択する。
【0030】
例えば、第2通信経路を経由した経路探索パケットの方が先に到着した場合、通信装置10−5は、第2通信経路を経由した経路探索パケットを選択する。なお、現行の経路は、第1通信経路であるが、第1通信経路のホップ数は3であり、同じである。このような場合には、従来の技術では、シーケンス番号が新しい(値が大きい)方を選択するので、第2通信経路を経由した経路探索パケットが選択される。
【0031】
この結果、通信装置10−1と通信装置10−5の間の通信経路が、第1通信経路から第2通信経路に変更される。この場合において、通信装置10−1と通信装置10−5の間で通信が実行されているとすると、通信の途中で経路が変更されるので、パケットが途中で失われる事態が発生することがある。本発明の実施形態では、このような事態を防止するために、以下のような動作を実行する。
【0032】
すなわち、本発明の実施形態では、まず、経路が正常か否かを監視する。図3は、経路の監視の様子を説明するための図である。図3に示す例では、通信装置10−1〜10―5がこの順に直列に接続されるとともに、通信装置10−1が通信元として、通信装置10−5が通信先として通信が実行されている。このような状態において、例えば、通信装置10−2と通信装置10−3の間の通信経路に不具合(例えば、リンク断)が生じた場合には、通信装置10−2が異常を検出し、経路を使用している通信装置10−1に対して異常を通知する。また、通信装置10−3が異常を検出し、経路を使用している通信装置10−5に通知する。さらに、通信装置10−1〜10−5は、隣接する通信装置同士で、定期的に生存確認信号を送信することで、正常性を確認している。すなわち、隣接する通信装置との間の通信経路が常時監視され、異常があれば即座に経路を使用する通信装置に対して通知され、経路が消去される。したがって、判定時点で経路が存在する場合には、基本的に経路は健全であると判断できる。
【0033】
つぎに、本発明の実施形態では、経路の監視の結果、経路が正常である場合において、経路探索パケットが届いたときは、ホップ数が現行の経路と同じか、現行の経路よりもホップ数が大きい場合には、仮にシーケンス番号が新しい(大きい)としても、当該経路探索パケットについては無視する。例えば、図1の例では、第1通信経路と第2通信経路の双方が健全である場合(経路異常が通知されていない場合)に、第1通信経路および第2通信経路を介して、シーケンス番号が現行の経路よりも新しい経路探索パケットが届いた場合、当該経路探索パケットのホップ数が3以上である場合(記憶部13に記憶されている現行の経路のホップ数と同じ場合)には、これらのパケットは無視する。これにより、前述した経路の切換が発生することを抑制できる。なお、シーケンス番号が新しく、ホップ数が現行よりも小さい経路探索パケットが届いた場合には、経路を切り換えるメリットが存在するので、経路切換処理を実行する。
【0034】
一方、経路が異常である場合、例えば、通信において使用中の第1通信経路に異常が発生した場合に、第2通信経路を経由した経路探索パケットが到着したとする。この場合、シーケンス番号が現行の経路よりも新しい場合には、例えば、ホップ数によらず、第1通信経路から第2通信経路に切り換える処理を実行することができる。これにより、異常が発生している第1通信経路から、正常な第2通信経路に経路が切り換えられる。
【0035】
以上に説明したように、本発明の実施形態では、経路が正常である場合において、経路探索パケットを受信したときは、シーケンス番号が新しい場合でも、ホップ数が現行の経路と同じかそれよりも大きい場合には、当該経路探索パケットを無視するようにしたので、不要な経路の切り換えが発生することを抑制できる。
【0036】
また、経路に異常が発生している場合において、経路探索パケットを受信したときは、シーケンス番号が新しい場合にはホップ数によらず、当該経路探索パケットに応じて経路を切り換えるようにしたので、正常な経路に切り換えることができる。
【0037】
つぎに、図4図6を参照して、図2に示す通信装置10において実行される処理について説明する。
【0038】
図4は、図2に示す通信装置10において実行されるメインの処理の一例を説明するための図である。図4に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0039】
ステップS10では、制御部12は、パケット中継処理部11からパケットを取得し、経路探索パケットを受信したか否かを判定し、経路探索パケットを受信したと判定した場合(ステップS10:Y)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10:N)には同様の処理を繰り返す。
【0040】
ステップS11では、制御部12は、経路が正常か否かを判定する。この結果、経路が正常と判定した場合(ステップS11:Y)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11:N)にはステップS13に進む。
【0041】
ステップS12では、制御部12は、図5を参照して後述する正常時処理を実行する。
【0042】
ステップS13では、制御部12は、図6を参照して後述する異常時処理を実行する。
【0043】
ステップS14では、制御部12は、処理を継続するか否かを判定し、処理を継続すると判定した場合(ステップS14:Y)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS14:N)には処理を終了する。
【0044】
つぎに、図5を参照して、図4のステップS12に示す「正常時処理」の詳細について説明する。図4に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0045】
ステップS30では、制御部12は、図4のステップS10で受信した経路探索パケットのシーケンス番号Spを取得する。
【0046】
ステップS31では、制御部12は、図4のステップS10で受信した経路探索パケットのホップ数Hpを取得する。
【0047】
ステップS32では、制御部12は、記憶部13の経路情報13aから、現行の経路に関するシーケンス番号Scを取得する。
【0048】
ステップS33では、制御部12は、記憶部13の経路情報13aから、現行の経路に関するホップ数Hcを取得する。
【0049】
ステップS34では、制御部12は、ステップS30で取得した経路探索パケットのシーケンス番号Spと、ステップS32で取得した現行の経路のシーケンス番号Scを比較し、Sp>Scを満たすか否か(経路探索パケットのシーケンス番号の方が現行の経路のシーケンス番号よりも新しいか否か)を判定し、Sp>Scを満たすと判定した場合(ステップS34:Y)にはステップS35に進み、それ以外の場合(ステップS34:N)には元の処理に復帰(リターン)する。
【0050】
ステップS35では、制御部12は、ステップS31で取得した経路探索パケットのホップ数Hpと、ステップS33で取得した現行の経路のホップ数Hcを比較し、Hp<Hcを満たすか否か(経路探索パケットのホップ数の方が現行の経路のホップ数よりも小さいか否か)を判定し、Hp<Hcを満たすと判定した場合(ステップS35:Y)にはステップS36に進み、それ以外の場合(ステップS35:N)には元の処理に復帰する。
【0051】
ステップS36では、制御部12は、経路探索パケットによって指定される経路に切り換える処理を実行する。より詳細には、制御部12は、経路回答パケットを生成し、パケット中継処理部11を介して、新たな経路に対して送出する。また、経路探索パケットに関する情報を、経路情報13aとして記憶部13に記憶する。この結果、経路の切り換えが実行される。
【0052】
つぎに、図6を参照して、図4のステップS13に示す「異常時処理」の詳細について説明する。
【0053】
ステップS50では、制御部12は、図4のステップS10で受信した経路探索パケットのシーケンス番号Spを取得する。
【0054】
ステップS51では、制御部12は、記憶部13の経路情報13aから、現行の経路に関するシーケンス番号Scを取得する。
【0055】
ステップS52では、制御部12は、ステップS50で取得した経路探索パケットのシーケンス番号Spと、ステップS51で取得した現行の経路のシーケンス番号Scを比較し、Sp>Scを満たすか否か(経路探索パケットのシーケンス番号の方が現行の経路のシーケンス番号よりも新しいか否か)を判定し、Sp>Scを満たすと判定した場合(ステップS52:Y)にはステップS53に進み、それ以外の場合(ステップS52:N)には元の処理に復帰する。
【0056】
ステップS53では、制御部12は、経路探索パケットによって指定される経路に切り換える処理を実行する。より詳細には、制御部12は、経路回答パケットを生成し、パケット中継処理部11を介して、新たな経路に対して送出する。また、経路探索パケットに関する情報を、経路情報13aとして記憶部13に記憶する。この結果、経路の切り換えが実行される。
【0057】
以上の処理によれば、前述した動作を実現することができる。
【0058】
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、図2に示すように、通信装置10同士は、電気信号によって情報を授受する場合を例に挙げて説明したが、光信号によって情報を授受するようにしてもよい。
【0059】
図7は、光信号によって情報を伝送するネットワークシステム1を示している。図7の例では、通信装置20−1〜20−5は環状に接続され、通信装置20−1が通信元とされ、通信装置20−5が通信先とされている。また、図7の例では、通信装置20−4に異常が発生していることを示している。
【0060】
図8は、図7に示す通信装置20−1〜20−5の構成例を示す図である。なお、通信装置20−1〜20−5は同様の構成とされているので、以下では、これらを通信装置20として説明する。
【0061】
図8に示すように、通信装置20は、通信処理部21および光スイッチ22を有している。通信処理部21は、光スイッチ22を介して供給される光信号を電気信号に変換し、ルーティング処理等を実行した後、再度光信号に変換し、光スイッチ22を介して出力する。
【0062】
光スイッチ22は、通信処理部21が故障した場合や電源が供給されていない場合には、通信が途切れることを防止するために、光信号を、通信処理部21をバイパスさせる動作を実行する。
【0063】
より詳細には、図8(A)は、正常時における通信装置20の動作を示す図である。正常時には、第1光ポートおよび第2光ポートは、光スイッチ22を介して通信処理部21に接続されている。一方、図8(B)は異常時における通信装置20の動作を示す図である。異常時(例えば、通信処理部21が故障した場合や電源が供給されていない場合)には、光スイッチ22は第1光ポートと第2光ポートを直接接続し、通信処理部21をバイパスさせる。この結果、光信号は光スイッチ22によって通信処理部21をバイパスして送受信される。
【0064】
図7に示すように、通信装置20−4が故障した場合には、図8(B)に示すように、光スイッチ22によって通信処理部21がバイパスされる。この結果、通信装置20−4を経由する経路探索パケットは、通信処理部21をバイパスされるので、ホップ数が増加しない。このため、図7に示す第1通信経路と第2通信経路は、ともにホップ数が2で同じとなる。
【0065】
このような場合、図1に示す実施形態と同様の理由によって、経路の切換が発生するだてでなく、バイパスしている通信装置20−4の状況を監視するために、定期的に経路監視パケットが送信される場合があることから、経路の切換が発生する場合がある。
【0066】
図7に示す実施形態においても、本発明を適用することで、不要な経路の切換が発生することを抑制することができる。
【0067】
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、電気信号を使用して通信する場合だけでなく、光信号を使用して通信する場合であっても、不要な経路の切換を抑制することが可能となる。
【0068】
なお、図1の例では、2つの通信経路のうち、1つに異常が発生した場合を例に挙げて説明したが、例えば、3つ以上の通信経路のうち、1つに異常が発生した場合には、2つ以上の通信経路のうち、最もホップ数が少ない経路を選択するようにすればよい。すなわち、図6に示すフローチャートでは、ホップ数を参照しないで経路を切り換えるようにしたが、前述した場合を考慮して、ホップ数が少ない経路を選択するようにしてもよい。また、異常によって経路が存在しなくなった場合には、例えば、モバイル通信のように経路を新設可能な場合には経路を新たに設けるようにしてもよい。また、経路を新設できない場合には、上位の装置等に対して警告を発するようにしてもよい。
【0069】
また、経路に異常を検出した後に最初に届く経路探索パケットについては、経路の切換に必須なパケットであることから、図6に示すように、現行の経路よりもシーケンス番号が新しければ、経路を切り換える処理を実行する。そして、それ以降に受信する経路探索パケットについては、シーケンス番号が新しいとともに、ホップ数が少ない場合(Hp<Hc)の場合に経路を切り換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 ネットワークシステム
10,10−1〜10−5 通信装置
11 パケット中継処理部
12 制御部
13 記憶部
13a 経路情報
14−1〜14−n 受信部
15−1〜15−n 送信部
16 計時部
20,20−1〜20−5 通信装置
21 通信処理部
22 光スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8