(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成は、円形の半導体ウェハをめっき処理するためのものであるが、現在、種々の寸法、形状、厚みの基板をめっき処理することが要請されてきている。特に、特許文献1の基板ホルダで大型薄膜の基板を保持する場合、押えリングの回転によって基板に撓みを生じる可能性がある。
特許文献2に記載の基板保持用治具では、把持部材30の一対のブロック31、32の間に基板の端部を挟み込んだ状態で両ブロックをねじ止めして基板を把持部材30で固定するが、この構成は、基板保持用治具による保持を自動化するのに適していない。
特許文献3に記載の構成では、ガラス基板の被処理面を上向きにしたまま、装置内を搬送し処理することによって、複雑な姿勢転換機構を設けることなく装置を小型化することが記載されている。しかし、ガラス基板よりも薄膜で反りがあるような基板を処理する場合、被処理面を上向きにしたまま搬送すると、基板表面に傷を生じたり、基板が破損するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題の少なくとも一部を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 本発明の一形態に係る基板ホルダは、基板を挟持して固定する第1及び第2保持部材を備え、 前記第1保持部材は、第1保持部材本体と、前記第1保持部材本体に設けられ、前記第1保持部材本体の面に平行な軸の周りを回転可能な又は前記第1保持部材本体の面に交差する方向に往復移動可能なクランプと、を有し、 前記第2保持部材は、第2保持部材本体を有し、 前記クランプは、前記第1保持部材本体及び前記第2保持部材本体が互いに当接した状態で前記第2保持部材に係合し、前記第2保持部材を前記第1保持部材に固定可能に構成されている。
【0009】
この基板ホルダによれば、第1保持部材本体の面に平行な軸の周りを回転可能な又は第1保持部材本体の面に交差する方向に往復移動可能なクランプによって、基板を挟持する第1保持部材と第2保持部材とを互いに固定するため、基板に回転方向の力が加わることを抑制ないし防止できる。特に基板が大型薄膜である場合は、基板に回転方向の力が加わると基板に撓みを生じるおそれがあるが、この基板ホルダによれば、大型で薄い基板を保持する場合にも撓みの発生を抑制ないし防止できる。
【0010】
[2] [1]に記載の基板ホルダにおいて、 前記クランプは、第1付勢部材によって閉じる方向に付勢されており、 前記クランプが開いた状態で前記第2保持部材本体を前記第1保持部材本体に当接させ、その後、前記クランプを閉じた状態で、前記第2保持部材を前記第1保持部材に固定可能に構成されている。
この構成では、クランプがノーマルクローズ型であるため、第2保持部材本体を第1保持部材本体に当接する際にクランプを開けば、クランプした状態ではアクチュエータ等によって外部から力を加える必要がなく、エネルギー消費を抑制できる。
【0011】
[3] [1]又は[2]に記載の基板ホルダにおいて、 前記第1保持部材は、複数のクランプを有し、これらの複数のクランプを連結する連結部材を更に有し、 前記連結部材は、前記複数のクランプを同期して動作させるように構成されている。
この構成では、第2保持部材を複数の箇所でクランプによって挟持することが可能であり、また、連結部材によって各クランプの動作が同期されるので、クランプ動作を効率よく行うことができる。また、複数のクランプを連結部材で連動させることで、外部から力を加えるアクチュエータの構成を簡易にすることができる。
【0012】
[4] [3]に記載の基板ホルダにおいて、 前記連結部材は、前記第1保持部材本体に回転可能に取り付けられた回転軸である。
この場合、連結部材を回転軸によって構成することにより構成が簡易であり、各クランプを確実に同期させることができる。
【0013】
[5] [3]又は[4]に記載の基板ホルダにおいて、 前記連結部材に設けられた第1力受部を有し、 前記第1力受部は、前記連結部材は、前記第1力受部に力が与えられることにより動作するように構成される。
この場合、例えばアクチュエータで第1力受部に力を加えることで、連動部材を介して各クランプを動作させることができるので、クランプによる保持を自動化することが容易である。
【0014】
[6] [1]乃至[5]の何れかに記載の基板ホルダにおいて、 前記クランプは、先端に係合部を有し、 前記第2保持部材は、前記クランプの前記係合部を受け入れる形状の係合受部を有する。
この場合、第2保持部材にクランプの係合部を受け入れる形状の係合受部を設けることによって、クランプによる係合を向上し得る。
【0015】
[7] [6]に記載の基板ホルダにおいて、 前記係合受部は、前記第2保持部材本
体と別体であり、前記第2保持部材本体に取り付けられている。
この場合、別体の係合受部を第2保持部材本体に取り付ける構成とすることで、係合受部の寸法、形状、個数等を適宜選択することが容易になる。
【0016】
[8] [1]乃至[7]に記載の基板ホルダにおいて、前記基板を保持するためのクリップを更に有することが可能である。基板をクリップで保持した後、第1及び第2保持部材で基板を挟持するので、基板の保持を正確かつ確実に行うことができる。
[9] [8]に記載の基板ホルダにおいて、前記クリップは、前記第2保持部材本体の基板と当接する側の面に設けられ、前記基板を保持するためのクリップを更に有し、 前記クリップは、前記第2保持部材本体の面に平行な軸の周りを回転可能又は前記第2保持部材本体の面に交差する方向に往復移動可能である。
この基板ホルダによれば、第2保持部材本体の面に平行な軸の周りを回転可能な又は第2保持部材本体の面に交差する方向に往復移動可能なクリップによって、基板を第2保持部材に固定するため、基板に回転方向等の基板面に平行な方向の力が加わることを抑制ないし防止できる。特に基板が大型薄膜である場合は、基板に回転方向等の基板面に平行な方向の力が加わると基板に撓みを生じるおそれがあるが、この基板ホルダによれば、大型薄膜の基板を保持する場合にも撓みの発生を抑制ないし防止できる。また、クリップによる基板固定後の第2保持部材の移動、姿勢の変更等が容易である。
【0017】
[10] [9]に記載の基板ホルダにおいて、 前記クリップは、第2付勢部材によって閉じる方向に付勢されている。
この構成では、クリップがノーマルクローズ型であるため、基板を第2保持部材本体に当接する際にクリップを開けば、クリップした状態ではアクチュエータ等によって外部から力を加える必要がなく、エネルギー消費を抑制できる。
【0018】
[11] [10]に記載の基板ホルダにおいて、 前記第2保持部材は、前記第2保持部材本体に設けられた第2力受部を有し、 前記第2力受部は、前記基板と当接する側の面とは反対の面から力を受けて、前記クリップに当接するように変位可能に構成されており、 前記クリップは、前記第2力受部に押圧されることによって前記第2付勢部材に抗して開くように構成されている。
この場合、例えばアクチュエータで第2力受部に力を加えることで、クリップを動作させることができるので、クリップによる固定を自動化することが容易である。基板と当接する側の面とは反対の面から力を受ける第2力受部を設けるため、アクチュエータを基板当接面とは反対側に配置することができ、基板固定後の第2保持部材の移動、姿勢の変更等が容易である。
【0019】
[12] [1]乃至[11]の何れかに記載の基板ホルダにおいて、 前記第1保持部材は、前記基板と当接する面において、前記第1弾性突出部を保持する第1ホルダと、前記第1ホルダとは別の第2ホルダであって前記第2弾性突出部を保持する前記第2ホルダと、を更に備える。
この場合、第1弾性突出部及び第2弾性突出部を保持するホルダを別々に設けるので、各弾性突出部の交換を別々に行うことができる。
【0020】
[13] [1]乃至[12]の何れかに記載の基板ホルダにおいて、前記基板ホルダは、一端側にアーム部を備えている。
この場合、アーム部で基板ホルダを垂直に懸架した状態で搬送することが可能となり、基板表面の破損のおそれを抑制または防止できる。
【0021】
[14] [1]乃至[13]の何れかに記載の基板ホルダにおいて、前記基板ホルダは、矩形形状の基板を保持するように構成されている。
大型薄膜の矩形形状基板を、撓みを生じずに保持することができる。
【0022】
[15] 本発明の一形態に係るめっき装置は、基板を保持する基板ホルダと、基板ホルダを受け入れて前記基板にめっき処理するめっき槽と、を備える。基板ホルダは、前記基板ホルダは、基板を挟持して固定する第1及び第2保持部材を備える。前記第1保持部材は、第1保持部材本体と、前記第1保持部材本体に設けられ、前記第1保持部材本体の面に平行な軸の周りを回転可能な又は前記第1保持部材本体の面に交差する方向に往復移動可能なクランプと、を有する。前記第2保持部材は、第2保持部材本体を有する。前記クランプは、前記第1保持部材本体及び前記第2保持部材本体が互いに当接した状態で、前記第2保持部材を前記第1保持部材側に押圧するように前記第2保持部材に係合するように構成されている。
このめっき装置によれば、[1]で前述したと同様の採用効果を奏する。また、大型薄膜の基板を適切に基板ホルダに保持できるため、めっき品質を確保、向上できる。
【0023】
[16] 本発明の一形態に係る基板を保持する方法では、 前記基板を第1及び第2保持部材の間に挟持し、 前記第1保持部材の面に平行な軸の周りを回転可能な又は前記第1保持部材本体の面に交差する方向に往復移動可能なクランプによって、前記第2保持部材を前記第1保持部材側に押圧するように固定する。
この方法によれば、[1]で前述したと同様の作用効果を奏する。
【0024】
[17] [16]に記載の基板を保持する方法において、 前記基板を第1及び第2保持部材の間に挟持する際に、 前記基板を前記第2保持部材の上に置いて、前記基板をクリップで保持し、 前記第1保持部材と前記第2保持部材とを互いに近づけて、前記基板を前記第1及び第2保持部材の間に挟持するようにしてもよい。
この場合、基板を第2保持部材にクリップで保持した後、第1及び第2保持部材で基板を挟持するので、クリップによる基板保持後の第2保持部材の移動、姿勢の変更等が可能となるとともに、基板の保持を正確かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。また、本明細書において「前面」、「背面」、「フロント」、「バック」、「上」、「下」、「左」、「右」等の表現を用いるが、これらは、説明の都合上、例示の図面の紙面上における位置、方向を示すものであり、装置使用時等の実際の配置では異なる場合がある。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板ホルダが使用されるめっき装置の全体配置図である。
図1に示すように、このめっき装置100は、基板ホルダ1に基板(被処理物の一例に相当する)をロードし、又は基板ホルダ1から基板をアンロードするロード/アンロード部110と、基板を処理する処理部120と、洗浄部50aとに大きく分けられる。処理部120は、さらに、基板の前処理及び後処理を行う前処理・後処理部120Aと、基板にめっき処理を行うめっき処理部120Bとを含む。なお、このめっき装置100で処理する基板は、角形基板、円形基板を含む。また、角形基板は、矩形等の多角形のガラス基板、液晶基板、プリント基板、その他の多角形のめっき対象物を含む。円形基板は、半導体ウェハ、ガラス基板、その他の円形のめっき対象物を含む。
【0028】
ロード/アンロード部110は、2台のカセットテーブル25と、基板脱着機構29とを有する。カセットテーブル25は、半導体ウェハ、ガラス基板、液晶基板、プリント基板等の基板を収納したカセット25aを搭載する。基板脱着機構29は、基板を基板ホルダ1(
図2A以降で後述)に着脱するように構成される。また、基板脱着機構29の近傍(例えば下方)には基板ホルダ1を収容するためのストッカ30が設けられる。これらのユニット25,29,30の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置27が配置されている。基板搬送装置27は、走行機構28により走行可能に構成される。
【0029】
洗浄部50aは、めっき処理後の基板を洗浄して乾燥させる洗浄装置50を有する。基板搬送装置27は、めっき処理後の基板を洗浄装置50に搬送し、洗浄された基板を洗浄装置50から取り出すように構成される。
【0030】
前処理・後処理部120Aは、プリウェット槽32と、プリソーク槽33と、プリリンス槽34と、ブロー槽35と、リンス槽36と、を有する。プリウェット槽32では、基板が純水に浸漬される。プリソーク槽33では、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。プリリンス槽34では、プリソーク後の基板が基板ホルダと共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブロー槽35では、洗浄後の基板の液切りが行われる。リンス槽36では、めっき後の基板が基板ホルダと共に洗浄液で洗浄される。プリウェット槽32、プリソーク槽33、プリリンス槽34、ブロー槽35、リ
ンス槽36は、この順に配置されている。なお、このめっき装置100の前処理・後処理部120Aの構成は一例であり、めっき装置100の前処理・後処理部120Aの構成は限定されず、他の構成を採用することが可能である。
【0031】
めっき処理部120Bは、オーバーフロー槽38を備えた複数のめっき槽39を有する。各めっき槽39は、内部に一つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを行う。ここで、めっき液の種類は、特に限られることはなく、用途に応じて様々なめっき液が用いられる。
【0032】
めっき装置100は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダを基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ搬送装置37を有する。この基板ホルダ搬送装置37は、基板脱着機構29、プリウェット槽32、プリソーク槽33、プリリンス槽34、ブロー槽35、リンス槽36、及びめっき槽39との間で基板ホルダを搬送するように構成される。
【0033】
以上のように構成されるめっき装置100を複数含むめっき処理システムは、上述した各部を制御するように構成されたコントローラ175を有する。コントローラ175は、所定のプログラムを格納したメモリ175Bと、メモリ175Bのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)175Aと、CPU175Aがプログラムを実行することで実現される制御部175Cとを有する。制御部175Cは、例えば、基板搬送装置27の搬送制御、基板脱着機構29における基板の基板ホルダへの着脱制御、基板ホルダ搬送装置37の搬送制御、各めっき槽39におけるめっき電流及びめっき時間の制御、並びに、各めっき槽39に配置されるアノードマスク(図示せず)の開口径及びレギュレーションプレート(図示せず)の開口径の制御等を行うことができる。また、コントローラ175は、めっき装置100及びその他の関連装置を統括制御する図示しない上位コントローラと通信可能に構成され、上位コントローラが有するデータベースとの間でデータのやり取りをすることができる。ここで、メモリ175Bを構成する記憶媒体は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体としては、コンピュータで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0034】
[基板ホルダ]
図2Aは、一実施形態に係る基板ホルダの概略正面図である。
図2Bは、基板ホルダの概略側面図である。
図2Cは、基板ホルダの概略背面図である。
図3Aは、基板ホルダの前方斜視図である。
図3Bは、基板ホルダの後方斜視図である。
図4Aは、基板ホルダの前面図である。
図4Bは、基板ホルダの背面図である。
【0035】
基板ホルダ1は、フロントプレート300とバックプレート400とを備えている。これらのフロントプレート300とバックプレート400との間に基板Sが保持される。本実施例では、基板ホルダ1は、基板Sの片面を露出した状態で基板Sを保持する。基板Sは、半導体ウェハ、ガラス基板、液晶基板、プリント基板、その他の被めっき物であり得る。基板Sは、円形、角形等の何れの形状である。なお、以下の説明では、角形の基板を例に挙げて説明するが、基板ホルダ1の開口部の形状を変更すれば、円形その他の形状の基板を保持することが可能である。
【0036】
フロントプレート300は、フロントプレート本体310と、アーム部330とを備えている。アーム部330は、基板ホルダ搬送装置37に把持される把持部分であり、めっき槽39に配置される際に支持される部分である。基板ホルダ1は、めっき装置の設置面に対して、垂直に立てた状態で搬送され、垂直に立てた状態でめっき槽39内に配置され
る。
【0037】
フロントプレート本体310は、概ね矩形状であり、前面301と背面302とを有する。フロントプレート本体310は、取付部320によって2箇所でアーム部330に取り付けられている。フロントプレート本体310には、開口部303が設けられており、開口部303から基板Sの被めっき面が露出される。本実施形態では、開口部303は、矩形状の基板Sに対応して矩形状に形成されている。なお、基板Sが円形の半導体ウェハ等である場合には、開口部303の形状も円形に形成される。
【0038】
フロントプレート本体310のアーム部330に近い側には、配線バッファ部311が設けられている。配線バッファ部311は、アーム部330を介してフロントプレート本体310まで到達するケーブルの分配を行う領域であり、また、予備の長さのケーブルを収容する領域である。配線バッファ部311は、フロントプレート本体310の他の部分よりも若干厚みを持って形成されている(
図2B参照)。アーム部330の一端側には、外部の配線と電気的に接続するためのコネクタ331が設けられている(
図3A等参照)。バックプレート400は、フロントプレート本体310の背面302にクランプ340によって固定される(
図2C、
図3B、
図4B)。
【0039】
(バックプレートのフロントプレートへの取付構造)
図5Aは、バックプレートの正面図である。
図5Bは、バックプレートの背面図である。
図6Aは、バックプレートの取り付け状態を示す、基板ホルダの一部拡大背面図である。
図6Bは、バックプレートの取り付け状態を示す、基板ホルダの一部拡大斜視図である。
図7は、クランプと連結部材の関係を示す斜視図である。
【0040】
バックプレート400は、バックプレート本体410を備え、バックプレート本体410は、概ね矩形状であるが、フロントプレート300のフロントプレート本体310よりも小さい寸法を有する(
図3B、
図4B)。バックプレート本体410は、前面401(
図5A)と背面402(
図5B)とを有する。
【0041】
バックプレート本体410の前面401は、基板Sの載置面であり、フロントプレート本体310の背面302に取り付けられる。バックプレート本体410の前面401には、基板Sを保持(固定)するためのクリップ420が、基板Sの各辺に対応して合計8個設けられている。この例では、クリップ420は、基板Sの上辺及び下辺にそれぞれ1個づつ、左片及び右辺にそれぞれ3個づつ配置されている。なお、クリップ420の数及び配置は、基板Sの寸法、形状に応じて適宜選択されるものであり、図示の数及び配置に限定されない。
【0042】
バックプレート本体410の4隅のうちの3隅には、位置決め片490が設けられている。位置決め片490には、貫通孔490aが形成されている。位置決め片490は、バックプレート本体410と一体に形成してもよいし、バックプレート本体410とは別体で形成し、バックプレート本体410に取り付けるようにしてもよい。フロントプレート本体310の背面302には、位置決め片490の各々に対応する位置に位置決めピン390が設けられている(
図6A,B)。位置決めピン390は、フロントプレート本体310と一体に形成してもよいし、フロントプレート本体310とは別体で形成し、フロントプレート本体310に取り付けるようにしてもよい。バックプレート400をフロントプレート300に取り付ける際に、バックプレート400の位置決め片490の貫通孔490aに位置決めピン390を挿通させ、両者の位置合わせを行う。
【0043】
フロントプレート300の背面302には、
図4Bに示すように、バックプレート400の4辺の各辺に対応して、固定部材350が配置されている。2つの固定部材350が
、バックプレート400の1辺に対して設けられており、バックプレート400の1辺に沿って並んで配置されている。各固定部材350には、
図6A、
図6B、
図7に示すように、2つのクランプ340が取り付けられている。よって、1辺あたり、4つのクランプ340が設けられている。また、各辺の2つの固定部材350の間には、4つのクリップ420を同時に動作させるためのレバー342が取り付けられている。
【0044】
各辺の2つの固定部材350に亘って回転軸341が取り付けられている。回転軸341は、固定部材350に対して回転自在に取り付けられている(
図7)。各クランプ340及びレバー342は、回転軸341にキー結合(キー及びキー溝)によって回転不能に取り付けられている(
図8A,B、
図9A,B)。4つのクランプ340は、同一の位相で回転軸341に取り付けられているが、レバー342は、4つのクランプ340とは異なる位相で回転軸341に取り付けられている。この構成により、レバー342が回転すると、それに伴い、4つのクランプ340が同期して回転する。なお、ここでは、フロントプレート本体310の面301、302に平行な回転軸341の周りにクランプ340が回転するように構成したが、フロントプレート本体310の面301、302に垂直な方向に往復運動してバックプレート400をクランプするように、クランプ340を構成してもよい。
【0045】
クランプ340は、その先端部において鉤状に湾曲した係合部340aを有する。クランプ340の基端側には貫通孔を有し、この貫通孔に回転軸341が挿通され、キー及びキー溝によって回転不能に固定されている。レバー342は、外部からの力を受けていない場合、
図7に示すように、圧縮ばね343によってフロントプレート300の背面302から立ち上がるように付勢されており、これに伴い、各クランプ340は閉じる方向に付勢されている。言い換えれば、クランプ340は、ノーマルクローズ型で構成されている。圧縮ばね343の一端はばね受け部材344に当接又は固定されており、他端はレバー342に当接又は固定されている。また、レバー342は、外部からの押圧力を受けることが可能な力受部として構成されている。レバー342は、例えば、基板着脱機構29に設けられるアクチュエータから押圧力を受けることが可能である。
図10Bにおいて、アクチュエータAR1を模式的に示している。アクチュエータAR1は、例えば、エアシリンダ、モータ等の駆動部DRVと、駆動部DRVによって駆動される棒状部材RDとを備える。レバー342は、アクチュエータAR1から押圧力を受けると、フロントプレート300の背面302に向かって倒れる方向に回転し、これに伴い、クランプ340は開く方向に回転する。この例では、アクチュエータAR1は、各辺のレバー342に対応して4つ設けられる。好ましくは、4つのアクチュエータAR1は、同時に駆動されてレバー342を押す。但し、4つのアクチュエータAR1は、別々に駆動してもよく、同時に駆動することに限定されない。
【0046】
バックプレート400の背面402には、クランプ340に対応する位置に係合受部430が設けられている。係合受部430は、本実施形態で示すように、バックプレート400のバックプレート本体410とは別部材で形成され、バックプレート本体410に取り付けても良いし、バックプレート本体410と一体に形成したものであってもよい。係合受部430には、クランプ340の鉤状の係合部340aが引っ掛かり、係合することが可能な形状を有する突出部430aが形成されている。突出部430aは、クランプ340の係合部340aの係合を確実に受けるために、係合部340aよりも長い寸法を有する。
【0047】
以下、図面を参照しつつ、バックプレート400のフロントプレート300への取り付け構造を説明する。
図8Aは、クランプ状態のクランプの斜視図である。
図8Bは、クランプ状態のクランプの側面図である。
図9Aは、クランプ状態のクランプの断面斜視図である。
図9Bは、
クランプ状態のクランプの断面図である。
図10Aは、アンクランプ状態のクランプの構成を示す斜視図である。
図10Bは、アンクランプ状態のクランプの側面図である。
図11Aは、アンクランプ状態のクランプの断面斜視図である。
図11Bは、アンクランプ状態のクランプの構成を示す断面図である。
【0048】
前述したように、クランプ340は、ノーマルクローズ型であり、レバー342に押圧力を受けていない状態では、
図8A,B及び
図9A,Bに示すように、閉じた状態にある。フロントプレート300にバックプレート400を取り付ける場合には、先ず、アクチュエータAR1(
図10B)によってフロントプレート300のレバー342に押圧力を加え、
図10A,B及び
図11A,Bに示すように、圧縮ばね343の付勢力に抗してクランプ340を開く方向に回転させる。クランプ340を開放させた状態で、フロントプレート300の背面302の所定の位置にバックプレート400を配置する。このとき、フロントプレート300の位置合わせピン390が、バックプレート400の位置合わせ片490の貫通孔490aに係合して、バックプレート400がフロントプレート300の所定の位置に位置合わせされる。
【0049】
次に、フロントプレート300のレバー342からアクチュエータAR1の押圧力を取り除く。これにより、レバー342が圧縮ばね343の付勢力によってレバー342が元の位置に向かって回転し、各クランプ340が閉じる方向に回転する。この結果、クランプ340の係合部340aが、バックプレート400の係合受部430に係合し、バックプレート400がフロントプレート300に固定される(
図8A,B及び
図9A,B)。
【0050】
バックプレート400を取り外す場合には、前述したように、アクチュエータ(図示せず)によってフロントプレート300のレバー342に押圧力を加え、圧縮ばね343の付勢力に抗してクランプ340を開く方向に回転させる(
図10A,B及び
図11A,B)。この結果、クランプ340が係合受部430から解放され、バックプレート400をフロントプレート300から取り外し可能となる。
【0051】
(基板のバックプレートへの取付構造)
図12Aは、バックプレートのクリップを示す一部切欠き側面図である。
図12Bは、バックプレートのクリップを示す一部拡大斜視図である。
図13Aは、閉鎖時のクリップの状態を示す一部切欠き斜視図である。
図13Bは、閉鎖時のクリップの状態を示す一部切欠き断面図である。
図14Aは、開放時のクリップの状態を示す一部切欠き斜視図である。
図14Bは、開放時のクリップの状態を示す一部切欠き断面図である。
【0052】
バックプレート400の前面401には、基板Sの各辺に対応して合計8個のクリップ420が設けられている(
図5A参照)。また、バックプレート400の背面402には、クリップ420の各々に対応する位置に、ボタン470が設けられている(
図5B参照)。ボタン470に力が加わっていない場合、ボタン470の前面401側の面は、2つのクリップ421の基端部と所定の間隔を持って配置されている(
図13B)。ボタン470は、力受部471と、力受部471をバックプレート本体410に対して変位可能に支持する弾性部分472と、弾性部分472の外周にある取付部473とを有する。ボタン470は、取付部473において押え部材474、及び締結部材475によって固定されている。締結部材475は、例えば、スタッド、ボルト等である。
【0053】
各クリップ420は、
図12A,Bに示すように、バックプレート本体410の前面401に固定された固定部423と、固定部423に回転不能に固定された固定軸424と、固定軸424に対して並進しつつ回転可能に支持された2つのクリップ421と、クリップ421の各々に設けられクリップ421を閉鎖方向に付勢する巻ばね422と、を備えている。
【0054】
クリップ421は、その先端部に爪部421aを有し、その基端側には長穴421b及び2つの丸穴421cが形成されている。クリップ421は、固定軸424を長穴421bに挿通させて取り付けられている。
図13Bに示すように巻ばね422は、巻回部422cと、巻回部422cから延びる脚部422a、422bを有している。巻ばね422は、針金等を複数回円形に巻いて巻回部422cを設け、所定の長さの脚部422a、422bを残したものである。脚部422aは、略直角に折れ曲がる折曲部を先端に有し、この折曲部が、クリップ421の2つ丸穴421cのうち基端側の丸穴421cに挿入及び嵌合されている。他方の脚部422bは、クリップ421には取り付けられておらず、略直角に折れ曲がる折曲部を先端に有し、この折曲部が、固定部423に設けられた規制面423aに当接した状態で支持されている。また、脚部422aは、固定部423に設けられた案内面423bによって案内される(
図13B、
図14B)。
【0055】
この構成により、クリップ421は、バックプレート本体410から離れる方向に移動しつつ、バックプレート本体410の外側に向かって回転することが可能である(
図13Bから
図14B)。この結果、クリップ421は、開放状態となる(
図14A,B)。また、逆に、クリップ421は、バックプレート本体410に接近する方向に移動しつつ、バックプレート本体410の内側に向かって回転することが可能である(
図14Bから
図13B)。この結果、クリップ421は、閉鎖状態となる(
図13A,B)。なお、本実施形態では、クリップ421は、外部から力を受けない状態では、巻ばね422によって閉鎖方向に付勢されており、ノーマルクローズ型である(
図13A,B)。
【0056】
基板Sをバックプレート400に載置する場合、バックプレート400の8個のボタン470(力受部471)に、外部からアクチュエータAR2によって押圧力を加える(
図14B)。これにより、
図14A,Bに示すように、力受部471が前面401側に変位し、2つのクリップ421の基端部に当接する。力受部471から受ける力によって、クリップ421は、
図14Bに示すように、バックプレート本体410から離れる方向に移動しつつ、バックプレート本体410の外側に回転し、開放状態となる(
図14B)。
図14Bに模式的に示したように、アクチュエータAR2は、例えば、エアシリンダ、モータ等の駆動部DRVと、駆動部DRVによって駆動される棒状部材RDとを備える。アクチュエータAR2は、8個のボタン470に対応して8台設けられている。好ましくは、8台のアクチュエータAR2は、同時に駆動されてボタン470を押す。但し、8台のアクチュエータAR2は、別々に駆動してもよく、同時に駆動することに限定されない。
【0057】
クリップ421が開放した状態で、バックプレート400の前面401の所定の位置に基板Sを載置し、その後、ボタン470からアクチュエータAR2による押圧力を解放する。この結果、クリップ421は、巻ばね422の付勢力によって、バックプレート本体410に接近する方向に移動しつつ、バックプレート本体410の内側に回転し、閉鎖状態となる(
図14Bから
図13B)。このとき、クリップ421の先端の爪部421aが基板Sの周縁部に係合し、基板Sをバックプレート400の前面401に固定することができる。
【0058】
このように基板Sを取り付けたバックプレート400を、
図5から
図13で説明したように、フロントプレート300に取り付ければ、基板ホルダ1への基板Sの取り付けが完了する。基板Sをバックプレート400から取り外す場合、前述したように、バックプレート400の8個のボタン470(力受部471)に、外部からアクチュエータAR2によって押圧力を加える(
図14A、B)。
【0059】
なお、ここでは、バックプレート本体410の面401、402に平行な固定軸424の周りにクリップ421が回転するように構成したが、バックプレート本体410の面4
01、402に垂直な方向に往復運動して基板Sをクランプするようにクリップ421を構成してもよい。
【0060】
(シール部の構成)
図15は、フロントプレートのインナーシール部を示す断面図である。
図16は、フロントプレートのインナーシール部及びアウターシール部を示す断面図である。
【0061】
フロントプレート300の背面302には、開口部303に隣接してインナーシール361が設けられている。インナーシール361は、シールホルダ363によってフロントプレート300の背面302に取り付けられている。インナーシール361は、基板Sとフロントプレート300との間をシールし、めっき液が基板Sの端部に侵入することを防止する。シールホルダ363には、基板Sに電位を供給するためのコンタクト370も取り付けられている。
【0062】
また、
図16に示すように、フロントプレート300の背面302には、インナーシール361よりも外側において、アウターシール362がシールホルダ364によって取り付けられている。アウターシール362は、バックプレート400に当接し、フロントプレート300とバックプレート400との間をシールする。
【0063】
本実施形態では、インナーシール361及びアウターシール362を取り付けるシールホルダ363、364が別部材で構成されているので、インナーシール361及びアウターシール362を別々に交換することができる。
【0064】
本実施形態に係る基板ホルダ1によれば、フロントプレート本体310の面に平行な軸の周りを回転可能な又はフロントプレート本体310の面に交差する方向に往復移動可能なクランプ340によって、基板を挟持するフロントプレート300とバックプレート400とを互いに固定するため、基板に回転方向の力が加わることを抑制ないし防止できる。基板が大型で薄い場合は、基板に回転方向の力が加わると基板に撓みを生じるおそれがあるが、この基板ホルダ1によれば、大型で薄い基板を保持する場合にも撓みの発生を抑制ないし防止できる。
【0065】
また、クランプ340がノーマルクローズ型であるため、バックプレート本体410をフロントプレート本体310に当接する際にクランプを開けば、クランプした状態ではアクチュエータ等によって外部から力を加える必要がなく、エネルギー消費を抑制できる。
【0066】
また、バックプレート400を複数の箇所でクランプ340によって挟持することが可能であり、また、連結部材(回転軸341)によって各クランプ340の動作が同期されるので、クランプ動作を効率よく行うことができる。また、外部から力を加えるアクチュエータAR1の構成を簡易にすることができる。レバー342が外部の第1アクチュエータAR1から力を受けて回転軸341を介して各クランプ340を動作させることができるので、クランプ340による固定を自動化することが容易である。
【0067】
また、バックプレート400に、クランプ340の係合部340aを受け入れる形状の係合受部430を設けることによって、クランプによる係合を向上し得る。別体の係合受部340をバックプレート本体410に取り付ける構成とすることで、係合受部340の寸法、形状、個数等を適宜選択することが容易になる。
【0068】
また、バックプレート本体410の面に平行な軸424の周りを回転可能な又はバックプレート本体410の面に交差する方向に往復移動可能なクリップ421によって、基板をバックプレート400に固定するため、基板に回転方向の力が加わることを抑制ないし
防止できる。基板が大型で薄い場合は、基板に回転方向の力が加わると基板に撓みを生じるおそれがあるが、この基板ホルダによれば、大型で薄い基板を保持する場合にも撓みの発生を抑制ないし防止できる。
【0069】
クリップ421がノーマルクローズ型であるため、基板をバックプレート本体410に当接する際にクリップ421を開けば、クリップした状態ではアクチュエータ等によって外部から力を加える必要がなく、エネルギー消費を抑制できる。
【0070】
基板と当接する側の面とは反対の面から力を受けるボタン470を設けるため、アクチュエータAR2を基板当接面とは反対側に配置することができ、基板固定後のバックプレート400の移動、姿勢の変更等が容易である。
【0071】
ボタン370が外部の第2アクチュエータAR2から力を受けてクリップ421を動作させることができるので、クリップ421による固定を自動化することが容易である。
【0072】
インナーシール361及びアウターシール362を保持するシールホルダ363、364を別々に設けるので、各シールの交換を別々に行うことができる。
【0073】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。