特許第6739306号(P6739306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6739306
(24)【登録日】2020年7月27日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/16 20060101AFI20200730BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20200730BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   B23K26/16
   B23K26/364
   H01L21/78 B
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-189433(P2016-189433)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-51581(P2018-51581A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智章
(72)【発明者】
【氏名】吉井 俊悟
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−200842(JP,A)
【文献】 特開2016−016438(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3143457(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/16
B23K 26/364
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工装置であって、
レーザ加工溝が形成される加工予定ラインが設定され少なくとも該加工予定ライン上に金属部が形成された被加工物を保持するチャックテーブルと、
レーザビーム発振手段と、該レーザビーム発振手段で発振されたレーザビームを集光する集光レンズを有する加工ヘッドとを具備し、該チャックテーブルで保持された被加工物にアブレーション加工を施すレーザビーム照射手段と、
該チャックテーブルと該レーザビーム照射手段とを加工送り方向に相対移動させる移動手段と、
該集光レンズで集光されたレーザビームが被加工物に照射されることで発生するデブリを集塵する集塵手段と、を備え、
該集塵手段は、
該集光レンズで集光されたレーザビームの通過を許容する開口が形成された天井と、該天井から垂下した側壁と、を有し、該側壁には該加工送り方向に該開口を挟んで互いに対面するエア流入口と吸引源に接続された吸引口とを備える広域吸引部と、
該広域吸引部内に配設され、吸引源に接続されるとともに該金属部の破片を吸引する局所吸引パイプと、を含むレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物にレーザ加工を施すレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが加工予定ラインによって区画され表面に形成された半導体ウエーハ等の被加工物は、被加工物にレーザビームを照射可能なレーザ加工装置によってアブレーション加工されて個々のデバイスに分割され、各種電子機器等に利用されている。
【0003】
加工予定ライン上にTEG(Test Element Group:評価用素子)と称される金属部が形成されている被加工物をアブレーション加工すると、被加工物が溶融してデブリが発生するとともに、TEGを構成する金属部の破片が発生する。そして、この金属部の破片によって被加工物に照射されているレーザビームが散乱して被加工物の表面に焼けを生じさせ、被加工物を損傷させてしまうおそれがある。そして、被加工物に形成されているデバイスがCMOS等の撮像素子である場合にこの問題は顕著に発生する。
【0004】
上記問題を解決するために、レーザ加工時に発生するデブリ等を集塵して被加工物上から除去できる集塵ユニットを備えるレーザ加工装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−205159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属部の破片は、アブレーション加工で発生するデブリに比べて大きく重いため、被加工物にレーザビームが照射される領域である加工領域周りの空間を全体的に横から吸引している上記特許文献1に記載の集塵ユニットでは、加工領域の周囲から金属部の破片を十分に排出できないという問題がある。
【0007】
したがって、加工予定ライン上にTEG等の金属部が形成された被加工物に対してレーザ加工装置によってアブレーション加工を施す場合おいては、加工中に発生したデブリと共に金属部の破片も加工領域周りから十分に除去することで、被加工物を損傷させるおそれを低減させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、レーザ加工装置であって、レーザ加工溝が形成される加工予定ラインが設定され少なくとも該加工予定ライン上に金属部が形成された被加工物を保持するチャックテーブルと、レーザビーム発振手段と、該レーザビーム発振手段で発振されたレーザビームを集光する集光レンズを有する加工ヘッドとを具備し、該チャックテーブルで保持された被加工物にアブレーション加工を施すレーザビーム照射手段と、該チャックテーブルと該レーザビーム照射手段とを加工送り方向に相対移動させる移動手段と、該集光レンズで集光されたレーザビームが被加工物に照射されることで発生するデブリを集塵する集塵手段と、を備え、該集塵手段は、該集光レンズで集光されたレーザビームの通過を許容する開口が形成された天井と、該天井から垂下した側壁と、を有し、該側壁には該加工送り方向に該開口を挟んで互いに対面するエア流入口と吸引源に接続された吸引口とを備える広域吸引部と、該広域吸引部内に配設され、吸引源に接続されるとともに該金属部の破片を吸引する局所吸引パイプと、を含むレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置は、集光レンズで集光されたレーザビームが被加工物に照射されることで発生するデブリを集塵する集塵手段、を備え、集塵手段は、集光レンズで集光されたレーザビームの通過を許容する開口が形成された天井と、天井から垂下した側壁とを有し、該側壁には加工送り方向に開口を挟み互いに対面するエア流入口と吸引源に接続された吸引口とを備える広域吸引部と、広域吸引部内に配設され、吸引源に接続されるとともに金属部の破片を吸引する局所吸引パイプと、を含むため、アブレーション加工等により発生したデブリを広域吸引部で吸引するとともに、発生した金属部の破片は局所吸引パイプで効率的に吸引除去することが可能となり、金属部の破片も加工領域周りから十分に除去し、被加工物を損傷させるおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】レーザ加工装置の一例を示す斜視図である。
図2】集塵手段の一例を示す分解斜視図である。
図3】集塵手段の一例を示す斜視図である。
図4】被加工物上にレーザビーム照射手段及び集塵手段が位置付けられた状態を示す断面図である。
図5】被加工物にレーザビーム照射手段からレーザビームを照射してレーザ加工溝を形成すると共に、被加工物から発生したシリコンデブリ及び金属部の破片を集塵手段で吸引している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すレーザ加工装置1は、チャックテーブル30で保持された被加工物Wに、レーザビーム照射手段6によってアブレーション加工を施す装置である。被加工物Wは、例えば、シリコン基板からなる円形状の半導体ウエーハであり、被加工物Wの表面Waには、加工予定ラインSによって区画された格子状の領域に多数のCMOS等のデバイスDが形成されている。そして加工予定ラインS上には、銅等からなりデバイスDの機能をテストするための薄膜状の金属部(TEG)が部分的に複数配設されている。被加工物Wの裏面Wbは、被加工物Wよりも大径の保護テープTが貼着されており、保護テープTにより保護されている。保護テープTの粘着面の外周領域には円形の開口を備える環状フレームFが貼着されており、被加工物Wは、保護テープTを介して環状フレームFによって支持され、環状フレームFを介したハンドリングが可能な状態になっている。
【0012】
レーザ加工装置1の基台10の前方(−Y方向側)には、加工送り方向であるX軸方向にチャックテーブル30を往復移動させる移動手段21が備えられている。移動手段21は、X軸方向の軸心を有するボールネジ210と、ボールネジ210と平行に配設された一対のガイドレール211と、ボールネジ210を回動させるモータ212と、内部のナットがボールネジ210に螺合し底部がガイドレール211に摺接する可動板213とから構成される。そして、モータ212がボールネジ210を回動させると、これに伴い可動板213がガイドレール211にガイドされてX軸方向に移動し、可動板213上に配設されたチャックテーブル30が可動板213の移動に伴いX軸方向に移動することで、チャックテーブル30がレーザビーム照射手段6に対してX軸方向において相対的に移動する。なお、モータ212は、例えば、図示しない制御手段から供給されるパルス信号によりボールネジ210を回動させるパルスモータである。
【0013】
被加工物Wを保持するチャックテーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等から構成され被加工物Wを吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は図示しない吸引源に連通し、吸着部300の露出面である保持面300a上で被加工物Wを吸引保持する。チャックテーブル30は、カバー31によって周囲から囲まれ、チャックテーブル30の底面側に配設された回転手段32により駆動されて鉛直方向(Z軸方向)の軸心周りに回転可能となっている。また、チャックテーブル30の周囲には、被加工物Wを支持する環状フレームFを固定する固定クランプ33が、周方向に均等に4つ配設されている。
【0014】
チャックテーブル30は、加工送り手段21によりX軸方向に往復移動が可能であるとともに、回転手段32を介してチャックテーブル30の下方に配設されたY軸方向移動手段22により、Y軸方向にも移動が可能となっている。Y軸方向移動手段22は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ220と、ボールネジ220と平行に配設された一対のガイドレール221と、ボールネジ220を回動させるモータ222と、内部のナットがボールネジ220に螺合し底部がガイドレール221に摺接する可動板223とから構成される。そして、モータ222がボールネジ220を回動させると、これに伴い可動板223がガイドレール221にガイドされてY軸方向に移動し、可動板223上に配設されたチャックテーブル30が可動板223の移動に伴いY軸方向に移動する。なお、モータ222は、例えば、図示しない制御手段から供給されるパルス信号によりボールネジ220を回動させるパルスモータである。
【0015】
基台10の後方(+Y方向側)には、コラム11が立設されており、コラム11の−Y方向側の側面にはレーザビーム照射手段6が配設されている。レーザビーム照射手段6は、例えば、基台10に対して水平に配置された直方体状のハウジング60を備えており、ハウジング60内にはレーザビーム発振手段61が配設されている。レーザビーム発振手段61は、例えばYAGレーザ発振器或いはYVO4レーザ発振器等から構成されており、被加工物Wに対して吸収性を有する所定波長のレーザビームを発振させることができる。ハウジング60の先端部の下面側には、レーザビーム発振手段61から発振されたレーザビームを集光するための集光レンズ62aを有する加工ヘッド62が固定されている。加工ヘッド62は、レーザビーム発振手段61から−Y軸方向に向かって発振されたレーザビームを、加工ヘッド62の内部に備えた図示しないミラーにおいて反射させ、集光レンズ62aに入光させることで、レーザビームを被加工物Wに照射することができる。
【0016】
ハウジング60の先端部の下面の加工ヘッド62の近傍には、被加工物Wの加工予定ラインSを撮像するアライメント用カメラ13が配設されており、アライメント用カメラ13は、撮像した画像についての情報を図示しない制御手段に送ることができる。制御手段は、送られてきた画像情報に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって被加工物Wの加工予定ラインSを検出することができる。
【0017】
図1に示すようにレーザ加工装置1は、集光レンズ62aで集光されたレーザビームが被加工物Wに照射されることで発生するデブリを集塵する集塵手段7を備えている。この集塵手段7について以下に図2、3を用いて説明する。
【0018】
図2,3に示す集塵手段7は、図1に示す集光レンズ62aで集光されたレーザビームの通過を許容する開口700aが形成された天井700を有する広域吸引部70を備えている。例えば、外形が矩形状の天井700の中央には、円形状の開口700aが厚み方向に貫通形成されており、天井700のY軸方向の両辺からは矩形状の側壁701がそれぞれ垂下している。
【0019】
広域吸引部70の+X方向側端には、天井700と各側壁701とで断面がU字を逆さまにした形状となるエア流入口702が形成されている。エア流入口702のサイズは、例えば、縦1cm〜2cm×横5cm〜10cmに形成されている。また、図2に示すように、広域吸引部70の−X方向側端には、天井700と各側壁701とで断面がU字を逆さまにした形状となる吸引口703が形成されており、エア流入口702と吸引口703とは開口700aを挟み加工送り方向(X軸方向)に対面している。そして、広域吸引部70は下側が開放された状態で2つの側壁701が加工送り方向に沿うようにして、図1に示す加工ヘッド62の直下に配設される。また、広域吸引部70が図2に示す吸引ダクト73に連結されることで、吸引口703はコンプレッサ及び真空発生装置等から構成される吸引源79に接続される。
【0020】
図2に示すように、天井700の上面の−X方向側の一端には、天井700の厚み分の段差を上側に設けて矩形の連結部700bが−X方向側に向かって水平に突出するように一体的に形成されており、この連結部700bには2個のボルト挿通穴700cが厚み方向に向かって貫通形成されている。
【0021】
集塵手段7は、例えば、吸引口703に一端73aが接続される吸引ダクト73を具備している。吸引ダクト73は、断面が矩形状の通路731を備えており、一端73aの上面には、連結部700bに設けられた2個のボルト挿通穴700cに対応する位置に2個の雌ネジ穴732が設けられている。吸引ダクト73の他端73bは、吸引源79に連通している。
【0022】
集塵手段7は、被加工物Wにレーザビーム照射手段6によりアブレーション加工を施した際に発生する金属部の破片を吸引する局所吸引パイプ75を備えている。例えば、吸引ダクト73の上面には、局所吸引パイプ75の管径よりも僅かに大きな直径を備え局所吸引パイプ75が嵌挿される嵌挿孔73cが貫通形成されている。図3に示すように、嵌挿孔73cに嵌挿され通路731の内部に挿し込まれた局所吸引パイプ75は、通路731の内部を+X方向側に向かって延び、その先端75aが広域吸引部70内に到達する。局所吸引パイプ75の管径は、吸引ダクト73の口径よりも小さく、例えば2mm〜5mmとなっている。局所吸引パイプ75の後端75b側は、ソレノイドバルブ76を介して、吸引源79に接続されている。ソレノイドバルブ76は、局所吸引パイプ75が吸引源79に連通する状態と大気に開放された状態とを切り替える機能を有している。なお、局所吸引パイプ75に接続されている吸引源は、吸引源79とは別の吸引源であってもよい。
【0023】
図2に示す局所吸引パイプ75が通路731の内部に挿し込まれた状態の吸引ダクト73の一端73aを広域吸引部70の吸引口703と接合し、連結部700bの下面を吸引ダクト73の一端73aの上面に接触させ、ボルト挿通穴700cと雌ネジ穴732とを重ね合わせて、ボルト732aをボルト挿通穴700cに通して雌ネジ穴732に螺合させることにより、図3に示すように吸引ダクト73に広域吸引部70を接続し、広域吸引部70の内部に局所吸引パイプ75を配設することができる。なお、集塵手段7は、Z軸方向における高さ位置が調整可能となっている。
【0024】
以下に、図1に示すレーザ加工装置1を用いて被加工物Wにアブレーション加工を施してレーザ加工溝を形成する場合の、レーザ加工装置1の動作について説明する。
【0025】
まず、図1に示すレーザ加工装置1のチャックテーブル30の保持面300aの中心と被加工物Wの中心とが略合致するように位置合わせを行い、被加工物Wを表面Wa側を上側にしてチャックテーブル30上に載置する。そして、チャックテーブル30に接続された図示しない吸引源が作動し被加工物Wをチャックテーブル30上に吸引保持する。また、各固定クランプ33によって環状フレームFが固定される。
【0026】
次いで、移動手段21により、チャックテーブル30に保持された被加工物Wが−X方向(往方向)に送られるとともに、アライメント用カメラ13により加工予定ラインSが検出される。アライメント用カメラ13によって撮像された加工予定ラインSの画像についての情報は図示しない制御手段に送信され、制御手段がパターンマッチング等の画像処理を実行し、加工予定ラインSの位置を検出する。そして、加工予定ラインSの位置を検出した制御手段が、Y軸方向移動手段22のモータ222に対して所定量のパルス信号を供給することで、レーザビーム照射手段6がY軸方向に駆動され、図1に示すレーザビームを照射する加工予定ラインSと加工ヘッド62とのY軸方向における位置合わせがなされる。この位置合わせは、例えば、集光レンズ61aの中心の直下に加工予定ラインSの中心線が位置するように行われる。
【0027】
さらにチャックテーブル30を−X方向に向かって加工送りするとともに、被加工物W上に位置付けられた加工ヘッド62から照射されるレーザビームの集光点を、加工予定ラインSに対応する被加工物Wの上面付近に位置付ける。加工ヘッド62の中心は、加工ヘッド62の下方に位置する広域吸引部70の開口700aの中心と略合致している。また、例えば、図4に示すように、被加工物Wの上方に位置した状態の集塵手段7は、局所吸引パイプ75の側面の下端と被加工物Wの表面WaとのZ軸方向における距離が5mm以下(本実施形態においては、約2mm)となっており、局所吸引パイプ75の先端75aが広域吸引部70の開口700aの中心から僅かに−X方向側にずれた位置に位置付けられた状態となっている。なお、図4、5については、被加工物Wに貼着されている保護テープT及び、被加工物Wを支持する環状フレームFについては、省略して示している。
【0028】
次いで、レーザビーム発振手段61から被加工物Wに対して吸収性を有する波長のレーザビームを発振させ、加工ヘッド62の集光レンズ62aに入光し集光させる。集光レンズ62aで集光されたレーザビームは、広域吸引部70の開口700aを通過して被加工物Wに対して照射される。レーザビームを被加工物Wに照射しつつ、チャックテーブル30を−X方向に向かって所定の加工送り速度で移動させていき、加工予定ラインSに沿ってアブレーション加工を施し図5に示すようにレーザ加工溝Mを形成していく。例えば、一本の加工予定ラインSにレーザビームを照射し終えるX軸方向の所定の位置まで被加工物Wが−X方向に進行すると、レーザビームの照射を停止するとともに被加工物Wの−X方向(往方向)での加工送りを一度停止させ、レーザビーム照射手段6を+Y方向へ移動して、レーザビームが照射された加工予定ラインSの隣に位置しレーザビームがまだ照射されていない加工予定ラインSと加工ヘッド62とのY軸方向における位置合わせを行う。次いで、移動手段21が、被加工物Wを+X方向(復方向)へ加工送りし、往方向でのレーザビームの照射と同様に加工予定ラインSにレーザビームが照射されていく。順次同様のレーザビームの照射を行うことにより、X軸方向に延びる全ての加工予定ラインSに沿ってレーザビームが照射され、加工予定ラインSに沿ってレーザ加工溝Mが形成されていく。さらに、チャックテーブル30を90度回転させてから同様のレーザビームの照射を行うと、縦横全ての加工予定ラインSに沿ってレーザ加工溝Mが形成される。
【0029】
なお、上記レーザ加工溝Mの形成は、例えば以下の加工条件で行われる。
波長 :355nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :4W
集光スポット径 :φ20μm
加工送り速度 :150mm/秒
【0030】
上述したレーザ加工溝Mの形成においては、被加工物Wの表面Waに加工ヘッド62からレーザビームを照射することにより被加工物Wが溶融され、図5に示すように、シリコン基板由来のシリコンデブリG1と金属部の破片G2とが発生する。シリコンのデブリG1の大きさは例えば0.5μm以下と小さいのに対して、金属部の破片G2の大きさは20μm〜50μm程度あり、その厚みも5μm程度とシリコンデブリG1より大きい。また、シリコンデブリG1は、金属部の破片G2よりも多く発生する。
【0031】
上記シリコンデブリG1及び金属部の破片G2を被加工物W上から除去するために、アブレーション加工中においては、集塵手段7を作動させ、集塵手段7によりシリコンデブリG1及び金属部の破片G2を吸引除去する。すなわち、吸引源79が吸引を行うことで、広域吸引部70と吸引ダクト73とから構成される流路に、吸引源79へと向かう方向のエアの流れが発生する。また、ソレノイドバルブ76を連通位置に切り替えることで、局所吸引パイプ75とソレノイドバルブ76とから構成される流路に、吸引源79へと向かう方向のエアの流れが発生する。なお、広域吸引部70には、エア流入口702が設けられているため、エア流入口702から広域吸引部70内部に効率よく外気を取り込むことが可能となっている。
【0032】
金属部の破片G2は、その発生個数がシリコンデブリG1の発生個数よりも少なく、また、シリコンデブリG1よりも大きく重いため、被加工物Wにレーザビームが照射される領域である加工領域周りにおいて発生した後、シリコンデブリG1に比べて広範囲に飛散はしない。そのため、金属部の破片G2は、発生した直後に、レーザビームの照射箇所に近い位置に位置付けられている局所吸引パイプ75の先端75aから、局所吸引パイプ75の内部に随時吸引されていく。また、局所吸引パイプ75の管径は吸引ダクト73の口径よりも小さいため、局所吸引パイプ75の内部のエアの流速は、吸引ダクト73内部のエアの流速よりも速くなる。そのため、大きく重い金属部の破片G2であっても、局所吸引パイプ75によって素早く十分に吸引し、被加工物W上から除去していくことができる。したがって、発生した金属部の破片G2によって被加工物Wに照射されているレーザビームが散乱して被加工物Wの表面Waに焼けを生じさせ、被加工物Wを損傷させてしまうおそれを低減させることができる。
【0033】
シリコンデブリG1の発生個数は金属部の破片G2の発生個数はよりも多く、また、シリコンデブリG1は金属部の破片G2よりも小さく軽いため、被加工物Wにレーザビームが照射される領域である加工領域周りにおいて発生した後、被加工物W上に飛散する場合がある。しかし、飛散したシリコンデブリG1は、随時広域吸引部70から吸引ダクト73の内部に吸引されていく。したがって、被加工物W上からシリコンデブリG1も十分に吸引除去されていく。
【0034】
なお、本発明に係るレーザ加工装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されているレーザ加工装置1の各構成の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:レーザ加工装置 10:基台 11:コラム 13:アライメント用カメラ
21:移動手段
210:ボールネジ 211:ガイドレール 212:モータ 213:可動板
22:Y軸方向移動手段 220:ボールネジ 221:ガイドレール
222:モータ 223:可動板
30:チャックテーブル 300:吸着部 300a:保持面 301:枠体
31:カバー 32:回転手段 33:固定クランプ
6:レーザビーム照射手段 60:ハウジング 61:レーザビーム発振手段
62:加工ヘッド 62a:集光レンズ
7:集塵装置
70:広域吸引部 700:天井 700a:開口 700b:連結部
700c:ボルト挿通穴 701:側壁 702:エア流入口 703:吸引口
73:吸引ダクト 731:通路 73a:吸引ダクトの一端
73b:吸引ダクトの他端 732:雌ネジ穴 732a:ボルト
75:局所吸引パイプ 75a:局所吸引パイプの先端 75b:局所吸引パイプの後端
76:ソレノイドバルブ
79:吸引源
W:被加工物 Wa:被加工物の表面 Wb:被加工物の裏面 S:加工予定ライン
D:デバイス T:保護テープ F:環状フレーム M:レーザ加工溝
G1:シリコンデブリ G2:金属部の破片
図1
図2
図3
図4
図5