【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項の特徴に従って達成される。
【0012】
本発明による反射光学素子は、基板と当該基板上に配置された多層系とを備え、
多層系は、第1材料の第1層及び第2材料の少なくとも1つの第2層をそれぞれが備え
た複数の部分スタックを有し、第1材料及び第2材料は、反射光学素子(50)の作動波
長における屈折率の実部の値が相互に異なり、上記部分スタックのそれぞれが、部分スタ
ック厚及び層厚比を有し、層厚比は、各第1層(54)の厚さと部分スタック厚との商と
して定義され、
多層系の第1部分では、部分スタック厚及び層厚比の2つの変数の少なくとも一方に関
して、各平均値からの平均二乗偏差が多層系の第2部分よりも少なくとも10%小さく、
反射光学素子は、反射率Rを有し、0.5nmの波長間隔でのその波長依存性は、0.
25未満のPV値を有し、PV値は、PV=(R
max_rel−R
min_rel)/
R
max_absとして定義され、R
max_relは、上記波長間隔Δλにおける最大
反射率値を示し、R
min_relは、上記波長間隔Δλにおける最小反射率値を示し、
R
max_absは、絶対最大反射率値を示す。
【0013】
本発明は、特に、多層系の適切な構成によって、第1に波長及び/又は入射角に応じた
反射率の広帯域化と同時に、例えばX線回折法又はCu−K
α回折法の際に十分な数の明
瞭なピークを得る結果として、横方向層厚プロファイルの効果的な制御及び最適化を実施
できるという概念に基づく。
【0014】
本発明はさらに、多層系の構造において、(部分スタック厚及び/層厚比に関する周期
性からの)偏差が比較的大きな第1部分又は第1部分スタック群を周期性からの偏差が比
較的小さな第2部分又は第2部分スタック群と組み合わせる結果として、さらに詳細に説
明するような関連するCu−K
α回折図中の(第2部分によって得られた)反射光学素子
の十分な広帯域性と共に、(第1部分によって得られた)離散的なピークがなおも見てと
れるという概念に基づく。
【0015】
一実施形態によれば、多層系の第1部分では、部分スタック厚及び層厚比の2つの変数
の少なくとも一方に関して、各平均値からの平均二乗偏差が、多層系の第2部分よりも少
なくとも20%、特に少なくとも30%、より詳細には少なくとも50%小さい。
【0016】
一実施形態によれば、波長間隔Δλ=0.5nmにおける反射率Rの波長依存性は、0
.20未満、特に0.18未満、より詳細には0.15未満のPV値を有する。
【0017】
一実施形態によれば、第2部分は、第1部分よりも基板の近くに配置される。
【0018】
したがって、本発明の実施形態において、層構造の上側部分(すなわち、基板から遠い
部分)は、十分に正確に評価可能なCU−K
α回折図を得るのに必要な「周期性」をなお
も含むが、層構造の下側部分(すなわち、基板に近い部分)は、反射率曲線の十分な広帯
域性をなおも達成するのに必要な非周期性を備える。換言すれば、層構造の上側部分によ
り、明白に識別可能な構造又はピークがCu−K
α回折図に存在する。
【0019】
しかしながら、本発明は、基板から遠い側に層構造の比較的周期的な部分を位置決めす
ることに制限されない。正確には、原理上、層構造の比較的周期的な部分を基板の近くに
設け、その代わりに、反射率曲線の十分な広帯域性に必要な層構造の比較的非周期的な部
分を基板から遠くに設けることも可能である。この場合、Cu−K
α回折図において得ら
れた構造又はピークがあまり顕著ではなくても、これらは依然としてはっきりと識別可能
であり、したがって一方では完全に非周期的な層構造と比べてCu−K
α回折図中の層厚
プロファイルの評価可能性の向上につながり、他方では完全に周期的な層構造と比べて回
折図中の反射率曲線の広帯域性の向上につながる。
【0020】
一実施形態によれば、第1部分及び第2部分は、合わせて多層系全体を形成する。しか
しながら、本発明はこれに制限されず、第1部分及び/又は第2部分と比べて周期性から
多かれ少なかれ偏差を有し得る多層系の少なくとも1つのさらなる部分がある構成も、本
発明によって包含されることが意図される。
【0021】
一実施形態によれば、Δλ=0.5nmの波長範囲での反射光学素子(50)の反射率
Rの波長依存性は、反射率に関して大きな方の値に対して0.1%以上相互に異なる少な
くとも2つの極値を有する。
【0022】
この構成は、波長又は入射角に対する反射率の依存として本発明による多層系に関して
求められる反射曲線が、「完全な横ばい」ではなく重畳した弱い振動のように複数の極値
(極大又は極小)を有する場合、上記反射曲線を層配列の個々のパラメータの最適化に有
利に用いることができるというさらなる見識に基づく。
【0023】
一実施形態によれば、上記極値は、反射率に関して大きな方の値に対して5%以下相互
に異なる。
【0024】
これはさらに、光学系(例えば、マイクロリソグラフィ投影露光装置)を特定のスペク
トル分布で、したがって種々の波長で通常は作動させ、波長毎に得られる強度の特定の平
均化も行われる状況を利用する。換言すれば、多層系の特性化又は最適化に適した反射曲
線中の極値(極大及び極小)が光学系の動作中に上記平均化効果により再度補償されるこ
とで、結果として結像結果の不所望な悪化が起こらない。
【0025】
反射率曲線に含まれる極値に関する上記構成は、周期性からの偏差の程度が異なる少な
くとも2つの部分を備えた多層系の上記構成とは無関係に有利でもある。
【0026】
したがって、さらに別の態様によれば、本発明は、基板と当該基板上に配置された多層
系とを備えた反射光学素子であって、
多層系は、第1材料の第1層及び第2材料の少なくとも1つの第2層をそれぞれが備え
た複数の部分スタックを有し、第1材料及び第2材料は、反射光学素子の作動波長におけ
る屈折率の実部の値が相互に異なり、
反射光学素子は、反射率Rを有し、0.5nmの波長間隔でのその波長依存性は、0.
25未満のPV値を有し、PV値は、PV=(R
max_rel−R
min_rel)/
R
max_absとして定義され、R
max_relは、上記波長間隔Δλにおける最大
反射率値を示し、R
min_relは、上記波長間隔Δλにおける最小反射率値を示し、
R
max_absは、絶対最大反射率値を示し、
Δλ=0.5nmの波長範囲での反射光学素子の反射率Rの波長依存性は、反射率に関
していずれの場合も大きな方の値に対して0.1%以上及び5%以下相互に異なる少なく
とも2つの極値を有する
反射光学素子にも関する。
【0027】
一実施形態によれば、上記2つの極値は、反射率に関して大きな方の値に対して0.5
%以上相互に異なる。
【0028】
一実施形態によれば、上記極値は、反射率に関していずれの場合も大きな方の値に対し
て2.5%以下、より詳細には1%以下相互に異なる。
【0029】
一実施形態によれば、第1材料は、モリブデン、ルテニウム、及びロジウムを含む群か
ら選択される。第2材料は、特にケイ素であり得る。これらの材料の組み合わせの1つに
基づく多層系を備えた反射光学素子が、12.5nm〜15nmの波長での使用に特に適
している。
【0030】
一実施形態によれば、反射光学素子は、30nm未満、特に15nm未満の作動波長用
に設計される。
【0031】
本発明はさらに、上述の特徴を有する反射光学素子を備えたマイクロリソグラフィ投影
露光装置の光学系と、マイクロリソグラフィ投影露光装置とに関する。
【0032】
さらに別の手法によれば、本開示は、基板上の多層系を備えた極紫外線波長領域用の反
射光学素子であって、多層系は、EUV波長領域の波長で屈折率の異なる実部が異なる少
なくとも2つの異なる材料を含む層を有し、屈折率の実部が大きな層及び屈折率の実部が
小さな層が交互に配置され、特定の材料の層が、この層と基板から離れて最も近くに位置
する同じ材料の1つ又は複数の層との間に配置された層と共にスタックを形成し、多層系
は、N個のスタックを有し、i=1〜Nとした各スタックS
iが、スタックiの層の総厚
D
i及び層厚比Γ
iを有し、当該反射光学素子において、総厚D
i及び層厚比Γ
iの値は
、確率的に分配され、多層系は、少なくとも2つの部分を有し、2つの連続したスタック
S
i及びS
i+1の厚さD
i、D
i+1又は層厚比Γ
i、Γ
i+1が相互に10%未満ず
れる確率は、1つの部分の方が他の部分よりも高い反射光学素子に関する。
【0033】
この場合、本開示は、任意の確率的多層系を備えた反射光学素子が、場合によってはご
くわずかな不鮮明なピークを有し得るのでCu−K
α回折法に適し難いという見識に基づ
く。提案されるのは、X線回折法を用いた横方向層厚最適化を可能にするのに十分なほど
多く鋭いピークを有する確率的多層系の一種を有する反射光学素子である。周期性からの
スタックの偏差が大き過ぎない少なくとも1つの部分を多層系に設けることは、例えば銅
Kα線を用いた回折法用の反射光学素子で一定数の十分に鋭いピークが利用可能となり、
反射光学素子の製造時に横方向層厚プロファイルを良好に制御できることを意味する。ピ
ーク形成を促進する周期性は、その場合、少なくとも1つの部分において、個々のスタッ
クの総厚が相互にあまり大きくずれないか又は層厚比が相互にわずかしかずれないことに
よって近似され得る。
【0034】
好適には、上記1つの部分における2つの連続したスタックS
i、S
i+1の厚さD
i
、D
i+1又は層厚比Γ
i、Γ
i+1は、相互に1%未満ずれる確率が考慮され得るよう
選択される。この場合、全スタックに関する偏差が1%未満である部分を周期的とみなす
ことができる。好適な実施形態では、スタック内のスタック厚又は厚さ比に関して周期性
からの偏差が多層系のさらに他の部分(単数又は複数)よりも小さくなる確率が高い部分
は、確率が低い部分(単数又は複数)よりも基板から遠くに配置される。したがって、生
じるピークが特に鋭いことが確実となり得る。好適には、多層系に確率の異なる2つの部
分を設けることで、多層系の設計及び反射光学素子の製造の複雑性を低減する。好適な実
施形態では、周期性からの偏差が小さい可能性が高い部分において、厚さDi及び層厚比
Γ
iは、上記部分の全スタックS
iに関して|(D
i−D
i+1)/D
i|≦0.1が成立
し、且つΓ
iが基板からの距離の増加に伴って増加するのではなく減少するよう選択され
る。スタック厚が実質的に一定であり、スタック内の層厚比が基板からの距離の増加に伴
って減少する傾向があるという、この部分に関する付加的な境界条件に従うことによって
提供可能な光学素子は、第1に広い局所入射角帯域幅の場合及び多少広い波長領域でさえ
も均一に反射し、第2にX線回折法による層厚の横方向プロファイルの特性化に十分な数
で且つ十分に明瞭なピークを有する。
【0035】
本発明のさらに他の構成は、説明及び従属請求項から得ることができる。
【0036】
添付図面に示す例示的な実施形態に基づき、本発明を以下でより詳細に説明する。