(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1(A)を参照すると、半導体ウェーハ(以下、単にウェーハと略称することがある)11の表面側斜視図が示されている。
図1(B)は半導体ウェーハ11の断面図である。
【0014】
ウェーハ11の表面11aには、格子状に形成された複数の分割予定ライン13が形成されており、交差する分割予定ラインで区画された各領域にLSI等のデバイス15が形成されている。
図1(B)に示したように、ウェーハ11の裏面11bには銅(Cu)又はアルミニウム(Al)等から形成された金属膜21が形成されている。
【0015】
本発明実施形態のウェーハの加工方法を実施する前に、ウェーハ11は外周部が環状フレームFに貼着されたダイシングテープTに貼着されてなるウェーハユニット17の形態で加工が実施される。
【0016】
本発明実施形態のウェーハの加工方法では、まず、ウェーハの表面から切削ブレードで分割予定ラインに沿って切削し、金属膜に至らない切削溝を形成する切削ステップを実施する。
【0017】
この切削ステップでは、
図3(A)に示したように、ウェーハ11の裏面側を切削装置のチャックテーブル1でダイシングテープTを介して吸引保持し、クランプ7で環状フレームFをクランプして固定する。
【0018】
切削ステップを実施する前に、切削装置に備わっている撮像ユニットでチャックテーブル1に保持されたウェーハ11の表面11a側を撮像し、スピンドル3の先端部に装着されている切削ブレード5と切削すべき分割予定ライン13とを位置合わせする従来公知のアライメントを実施する。
【0019】
アライメント実施後、ウェーハ11の表面11aから高速回転する切削ブレード5で分割予定ライン13に沿ってウェーハを切削し、ウェーハ11の裏面11bに形成された金属膜21に至らない切削溝23を形成する切削ステップを実施する。
【0020】
この切削ステップを、分割予定ライン13のウェーハ11をピッチずつ割り出し送りしながら、第1の方向に伸長する分割予定ライン13に沿って次々と実施する。次いで、チャックテーブル1を90°回転してから、第1の方向に直交する第2の方向に伸長する分割予定ライン13に沿っても同様な切削ステップを実施する。切削ステップ実施後のウェーハ11の拡大断面図が
図3(B)に示されている。
【0021】
切削ステップ実施後の切削溝23底部の切り残し部の厚みは特に限定はないが、後のステップでのハンドリング性を考慮して30〜50μm程度の切り残し部を残存させるのが好ましい。
【0022】
切削ステップを実施した後、ウェーハの表面側に水溶性の樹脂を供給し、ウェーハの表面と切削溝を水溶性の樹脂からなる保護膜で被覆する保護膜形成ステップを実施する。保護膜形成ステップの一例として、
図4に示されたレーザ加工装置2に備わっている保護膜形成装置を使用するのが好ましい。勿論、独立した保護膜形成装置を使用するようにしてもよい。
【0023】
図4を参照すると、保護膜形成装置を具備し、本発明実施形態のレーザ加工ステップを実施するのに適したレーザ加工装置2の斜視図が示されている。レーザ加工装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像ユニットによって撮像された画像が表示されるCRT等の表示モニタ6が設けられている。
【0024】
カセット8中に
図2に示したウェーハユニット17が複数枚収容され、カセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。カセットエレベータ9上に載置されたカセット8の後方には、カセット8からレーザ加工前のウェーハユニット17を搬出すると共に、加工後のウェーハユニット17をカセット8に搬入する搬出入手段10が配設されている。
【0025】
カセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウェーハユニット17が一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12にはウェーハユニット17を一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0026】
30は保護膜形成装置であり、この保護膜形成装置30は加工後のウェーハを洗浄する洗浄装置を兼用する。仮置き領域12の近傍には、ウェーハユニット17のフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されている。
【0027】
仮置き領域12に搬出されたウェーハユニット17は、搬送手段16により吸着されて保護膜形成装置30に搬送される。保護膜形成装置30は、後で詳細に説明するようにウェーハ11の加工面に水溶性の液状樹脂を塗布して保護膜を被覆する。
【0028】
加工面に保護膜が被覆されたウェーハ11は、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、チャックテーブル18に吸引されるとともに、複数の固定手段(クランプ)19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0029】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウェーハ11のレーザ加工すべきストリートを検出するアライメントユニット20が配設されている。
【0030】
アライメントユニット20は、ウェーハ11の表面を撮像する撮像ユニット22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によってレーザ加工すべきストリートを検出することができる。撮像ユニット22によって取得された画像は、表示ユニット6に表示される。
【0031】
アライメントユニット20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウェーハ11に対してレーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット24が配設されている。レーザビーム照射ユニット24はY軸方向に移動可能である。
【0032】
図5を参照すると、保護膜形成装置30の一部断面側面図が示されている。保護膜形成装置30は、スピンナテーブル機構34と、スピンナテーブル機構34を包囲して配設された液体受け機構36を具備している。
【0033】
スピンナテーブル機構34は、スピンナテーブル(保持テーブル)38と、スピンナテーブル38を支持する支持部材40と、支持部材40を介してスピンナテーブル38を回転駆動する電動モータ42とから構成される。電動モータ42を回転駆動すると、スピンナテーブル38は矢印A方向に回転される。
【0034】
スピンナテーブル38は多孔性材料から形成された吸引保持部を有しており、吸引保持部が図示しない負圧吸引手段に連通されている。従って、スピンナテーブル38は、吸引保持部にウェーハを載置し図示しない負圧吸引手段により負圧を作用させることにより、吸引保持部上にウェーハを吸引保持する。
【0035】
スピンナテーブル38には振り子タイプの4個のクランプ44が配設されている。スピンナテーブル38が回転されるとこれらのクランプ44が遠心力で揺動して
図2に示す環状フレームFをクランプする。
【0036】
液体受け機構36は、液体受け容器46と、支持部材40に装着されたカバー部材48とから構成される。液体受け容器46は、円筒状の外側壁46aと、底壁46bと、内側壁46cとから構成される。
【0037】
底壁46bの中央部には、支持部材40が挿入される穴47が設けられており、内側壁46cはこの穴47の周辺から上方に突出するように形成されている。カバー部材48は円板状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部48aを備えている。
【0038】
このように構成されたカバー部材48は、スピンナテーブル38が
図5に示す作業位置に位置付けられると、カバー部48aが液体受け容器46を構成する内側壁46cの外側に隙間を持って重合するように位置付けられる。
【0039】
保護膜形成装置30は、スピンナテーブル38に保持された加工前のウェーハ11に水溶性樹脂からなる液状保護膜剤を吐出する保護膜剤吐出手段50を具備している。保護膜剤吐出手段50は、概略L形状のアーム52と、アーム52の先端に形成され、スピンナテーブル38に保持された加工前のウェーハ11の加工面に向けて液状保護膜剤を吐出する液状保護膜剤供給ノズル54と、アーム52を揺動する正転・逆転可能な電動モータ56とから構成される。保護膜剤供給ノズル54はアーム52を介して保護膜剤供給源58に接続されている。
【0040】
保護膜形成装置30は、レーザ加工後のウェーハ11を洗浄する洗浄装置を兼用する。よって、保護膜形成装置30は、スピンナテーブル38に保持された加工後のウェーハ11を洗浄するための洗浄水供給手段60を具備している。
【0041】
洗浄水供給手段60は、
図9に最もよく示されるように、概略L形状のアーム62と、アーム62の先端に形成され、スピンナテーブル38に保持された加工後のウェーハ11の加工面に向けて洗浄水を供給する洗浄水ノズル64と、アーム62を揺動する正転・逆転可能な電動モータ66とから構成される。洗浄水ノズル64はアーム62を介して洗浄水供給源68に接続されている。
【0042】
切削ステップを実施した後、
図5に示す保護膜形成装置30でウェーハ11の表面11a及び切削溝23中に水溶性樹脂を供給してウェーハの表面11a及び切削溝23を保護膜25で被覆する保護膜形成ステップについて以下に詳細に説明する。
【0043】
ウェーハ搬送手段16の旋回動作によって切削ブレード5により切削溝23を形成したウェーハユニット17が保護膜形成装置30のスピンナテーブル38に搬送され、ウェーハ11がスピンナテーブル38に吸引保持される。この時、洗浄水ノズル64は、
図5に示したように、スピンナテーブル38の上方から隔離した待機位置に位置付けられている。
【0044】
スピンナテーブル38を矢印A方向に低速、例えば30〜50rpmで回転させつつ、液状保護膜剤供給ノズル54を揺動させながら、ウェーハ11上に水溶性樹脂からなる液状保護膜剤を滴下する。
【0045】
スピンナテーブル38が回転されているため、滴下された液状保護膜剤はウェーハ11の加工面に広がり、液状保護膜剤の表面張力を利用してウェーハ11の加工面には保護膜25が形成される。
【0046】
保護膜形成ステップを実施すると、
図6に示したように、ウェーハ11の表面11a及び切削溝23中に水溶性樹脂からなる保護膜25が形成される。保護膜形成ステップを実施した後、スピンナテーブル38の吸引保持を解除し、ウェーハ搬送手段16によってウェーハユニット17をチャックテーブル18に搬送し、
図7に示したように、チャックテーブル18により切削溝23の形成されたウェーハ11を吸引保持し、レーザ加工ステップを実施する。
【0047】
レーザ加工ステップを実施する前に、チャックテーブル18に吸引保持されたウェーハ11の加工領域を撮像ユニット22の直下に移動し、撮像ユニット22でウェーハ11の加工領域を撮像する。
【0048】
そして、レーザビームを照射するレーザビーム照射ユニット24の集光器28と第1の方向に伸長する分割予定ライン11との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザビーム照射位置のアライメントを実施する。
【0049】
第1の方向に伸長する分割予定ライン11のアライメントが終了すると、チャックテーブル18を90°回転してから、第1の方向に伸長する分割予定ライン13と直交する方向に伸長する分割予定ライン13についても同様なアライメントを実施する。
【0050】
アライメント実施後、チャックテーブル18を移動して第1の方向に伸長する所定の分割予定ライン13の加工開始位置を集光器28の直下に位置付け、レーザビーム照射ユニット24の集光器28で保護膜25を介してウェーハ11の表面11aに形成された切削溝23の底部に集光する。
【0051】
このように集光器28でパルスレーザビームLBを保護膜25を介して切削溝23の底部に集光しながら、チャックテーブル18を所定の送り速度(例えば100mm/s)で加工送りし、第1の方向に伸長する分割予定ライン13に沿ってアブレーション加工によりウェーハ11を分断すると共に、金属膜21を分断するレーザ加工ステップを実施する。
【0052】
チャックテーブル18を分割予定ライン13のピッチずつ割り出し送りしながら、レーザ加工ステップを実施してウェーハ11の切り残し部及び金属膜21を分断する。第1の方向に伸長する分割予定ラインに沿ってのレーザ加工ステップを終了した後、チャックテーブル18を90°回転してから、第2の方向に伸長する分割予定ライン13についても同様なアブレーション加工により、ウェーハ11の切り残し部及び金属膜21を分断して、ウェーハ11を個々のデバイスチップに分割する。
【0053】
尚、本実施形態のレーザ加工ステップのレーザ加工条件は、例えば以下の通りに設定されている。
【0054】
光源 :YAGパルスレーザ
波長 :355nm(YAGレーザの第3高調波)
平均出力 :3.0W
繰り返し周波数 :20kHz
送り速度 :100mm/s
【0055】
レーザ加工ステップ終了後のウェーハ11の拡大断面図が
図8に示されている。レーザ加工ステップを実施することにより、分割予定ライン13に沿って切削ブレードで形成された切削溝23に続いてレーザ加工による分断溝23が形成され、ウェーハ11は分割予定ライン13に沿って分断される。
【0056】
レーザ加工ステップを実施した後、ウェーハ11を洗浄して保護膜23を除去する保護膜除去ステップを実施する。レーザ加工ステップが終了したウェーハユニット17は、搬送手段32によって保護膜形成装置30のスピンナテーブル38に搬送され、スピンナテーブル38で吸引保持される。この時、液状保護膜剤供給ノズル54は、
図9に示すように、スピンナテーブル38の上方から隔離した待機位置に位置付けられている。
【0057】
保護膜除去ステップでは、洗浄水供給源68に接続された洗浄水ノズル64からスピンナテーブル38に保持されたウェーハ11の保護膜25に洗浄水を供給しながら、ウェーハ11を矢印A方向に低速回転(例えば800rpm)させることにより、ウェーハ11上及び切削溝23内の保護膜25を水に溶かして除去する。洗浄水としては、例えば純水が使用される。
【0058】
代替実施形態として、保護膜除去ステップでは、保護膜形成装置30のスピンナテーブル38で保護膜25が形成されたウェーハ11を吸引保持し、洗浄水ノズル64を洗浄水供給源60と図示しないエア源に接続して、洗浄水ノズル64から純水とエアとからなる2流体洗浄水を噴射しながらウェーハ11をスピン洗浄して、保護膜25を除去するようにしてもよい。保護膜除去ステップ実施後のウェーハ11の拡大断面図が
図10に示されている。
【0059】
上述した実施形態のウェーハの加工方法によると、まずウェーハ11の表面11aから分割予定ライン13に沿って金属膜21に至らない切削溝23を形成し、次いで、ウェーハ11に対して吸収性を有する波長を有するレーザビームを切削溝23の底部に照射してウェーハ11と共に金属膜21を分断する。ウェーハ11の表面11a側から切削ステップとレーザ加工ステップを実施するため、分割予定ライン13の検出が容易で効率よくウェーハを個々のチップに分割できる。
【0060】
切削溝23を形成した後、ウェーハ11の表面と切削溝23の底部及び側部に保護膜25を形成するため、レーザ加工ステップでデブリが生じても発生したデブリは保護膜25に付着し、後の保護膜除去ステップでデブリが除去される。よって、チップ側面に金属を付着させることなく、裏面に金属膜21が形成されたウェーハ11を容易に効率よく分割することができる。