特許第6740081号(P6740081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000002
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000003
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000004
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000005
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000006
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000007
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000008
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000009
  • 特許6740081-ウエーハの加工方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6740081
(24)【登録日】2020年7月28日
(45)【発行日】2020年8月12日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20200730BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20200730BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20200730BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20200730BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 P
   H01L21/78 B
   H01L21/78 F
   H01L21/304 631
   B23K26/38 Z
   H01L21/68 N
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-205760(P2016-205760)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-67645(P2018-67645A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】小幡 翼
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄輝
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−082162(JP,A)
【文献】 特開2016−171261(JP,A)
【文献】 特開2008−159985(JP,A)
【文献】 特開2004−214359(JP,A)
【文献】 特開2016−139739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/38
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、
該保護部材側をチャックテーブルに保持し該ウエーハの裏面を研削して薄化する裏面研削工程と、
該ウエーハの裏面から分割予定ラインに対応して切削ブレードを位置付けて表面に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程と、
該ウエーハの裏面から該切削溝に沿ってレーザー光線を照射して該分割予定ラインを完全に切断する切断工程と、
該ウエーハの裏面に第1の粘着テープを貼着すると共に該ウエーハを収容する開口部を有する第1のフレームで該第1の粘着テープの外周を貼着して該第1の粘着テープを介し該第1のフレームで該ウエーハを支持し、該ウエーハの表面から該保護部材を剥離するフレーム支持工程と、
該ウエーハから個々のデバイスをピックアップするピックアップ工程と、から少なくとも構成され、
該ピックアップ工程を実施する前に、
該ウエーハの表面に第2の粘着テープを貼着すると共に該ウエーハを収容する開口部を有する第2のフレームで該第2の粘着テープの外周を貼着して該第2の粘着テープを介して該第2のフレームで支持し、該ウエーハの裏面から該第1の粘着テープを剥離して該ウエーハの裏面を露出させる反転工程を実施するウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分割予定ラインによって複数のデバイスに区画されたウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを備えたダイシング装置によって個々のデバイスに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
近年、デバイスの高速化を図るためにシリコンウエーハ等の半導体基板の表面に低誘電率絶縁膜、所謂Low−k膜を複数形成し、IC、LSIとなる機能層を形成することが知られている。ここで、Low−k膜はウエーハの表面側全体に形成されることから、分割予定ライン上にも積層され、これを切削ブレードで切断するとLow−k膜が雲母のように剥離し、デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0004】
そこで、ウエーハの表面側からレーザー光線を照射して分割予定ラインに沿ってLow−k膜を除去し、その除去した領域に切削ブレードを位置付けてダイシングすることにより個々のデバイスに分割する方法が提案され実用に供されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−064231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に記載の加工方法によれば、Low−k膜を直接ダイシングによって除去する場合に生じる問題は解消されるものの、切削ブレードがLow−k膜に触れないように切削ブレードの幅を超えてLow−k膜をストリート上から除去するために、少なくとも2条のレーザー加工溝を分割予定ラインに形成する必要があり、生産性が悪いという問題がある。
【0007】
さらに、上記した特許文献1に記載された加工方法が実施される中で、例えば、以下のような問題があることが判明した。
(1)レーザー光線をウエーハの表面側に照射してLow−k膜を除去するレーザーグルービングを実施しても、Low−k膜の除去が不十分であると、その後実施されるダイシング時の切削ブレードのずれやたおれが発生することがあり、該切削ブレードが偏摩耗することがある。
(2)ウエーハの表面側からレーザーグルービングを行うと、所謂デブリが飛散してデバイスの品質を低下させることから、それを防止すべく別途保護膜を塗布する必要が生じ、生産性を低下させる。
(3)レーザー光線を複数照射することで、ウエーハに熱歪が残留し、デバイスの抗折強度の低下を招く虞がある。
(4)切削ブレードの幅を超えるように、幅広にレーザー加工溝を形成するため、幅の広いストリートが必要になり、デバイスを形成するための領域が圧迫され、デバイスの取り個数が減少する。
(5)Low−k膜の上面に、外界の水分や金属イオンから内部を保護するためのパシベーション(SiN、SiO)膜があり、ウエーハの表面側からレーザー光線を照射すると、該パシベーション膜を透過してLow−k膜が加工されることになり、Low−k膜において発生した熱の逃げ場がなく、Low−k膜が剥離する等、横方向に加工が広がって(「アンダーカット」とも呼ばれる。)しまい、デバイスの品質を低下させる要因となる。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの表面に絶縁膜が複数積層されて機能層が形成されると共に、複数の分割予定ラインによって複数のデバイスに区画されたウエーハを、デバイスの品質を低下させることなく個々のデバイスに効率よく分割することができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、該保護部材側をチャックテーブルに保持し該ウエーハの裏面を研削して薄化する裏面研削工程と、該ウエーハの裏面から分割予定ラインに対応して切削ブレードを位置付けて表面に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程と、該ウエーハの裏面から該切削溝に沿ってレーザー光線を照射して該分割予定ラインを完全に切断する切断工程と、該ウエーハの裏面に第1の粘着テープを貼着すると共に該ウエーハを収容する開口部を有する第1のフレームで該第1の粘着テープの外周を貼着して該第1の粘着テープを介し該第1のフレームで該ウエーハを支持し、該ウエーハの表面から該保護部材を剥離するフレーム支持工程と、該ウエーハから個々のデバイスをピックアップするピックアップ工程と、から少なくとも構成され、該ピックアップ工程を実施する前に、該ウエーハの表面に第2の粘着テープを貼着すると共に該ウエーハを収容する開口部を有する第2のフレームで該第2の粘着テープの外周を貼着して該第2の粘着テープを介して該第2のフレームで支持し、該ウエーハの裏面から該第1の粘着テープを剥離して該ウエーハの裏面を露出させる反転工程を実施するウエーハの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、該保護部材側をチャックテーブルに保持し該ウエーハの裏面を研削して薄化する裏面研削工程と、該ウエーハの裏面から分割予定ラインに対応して切削ブレードを位置付けて表面に至らない切削溝を形成する切削溝形成工程と、該ウエーハの裏面から該切削溝に沿ってレーザー光線を照射して該分割予定ラインを完全に切断する切断工程と、該ウエーハの裏面に第1の粘着テープを貼着すると共に該ウエーハを収容する開口部を有する第1のフレームで該第1の粘着テープの外周を貼着して該第1の粘着テープを介し該第1のフレームで該ウエーハを支持し、該ウエーハの表面から該保護部材を剥離するフレーム支持工程と、該ウエーハから個々のデバイスをピックアップするピックアップ工程と、から少なくとも構成され、該ピックアップ工程を実施する前に、該ウエーハの表面に第2の粘着テープを貼着すると共に該ウエーハを収容する開口部を有する第2のフレームで該第2の粘着テープの外周を貼着して該第2の粘着テープを介して該第2のフレームで支持し、該ウエーハの裏面から該第1の粘着テープを剥離して該ウエーハの裏面を露出させる反転工程を実施するように構成されていることにより、ウエーハの表面に複数のレーザー加工溝を形成する必要がなく、生産性が向上すると共に、上述したような問題点が解決される。さらに、デバイスの裏面側からピックアップ用のコレットを作用させて粘着テープから分割後の個々のデバイスをピックアップした後、そのままデバイスの表面側を配線基板にボンディングすることが可能であり、さらに生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に基づき実施される保護部材配設工程を説明するための説明図である。
図2】本発明に基づき実施される裏面研削工程を説明するための説明図である。
図3】本発明に基づき実施される切削溝形成工程を説明するための説明図である。
図4】本発明に基づき実施される切断工程を説明するための説明図である。
図5】本発明に基づき実施されるフレーム保持工程においてウエーハの裏面に粘着テープを貼着する工程を説明するための説明図である。
図6】本発明に基づき実施されるフレーム保持工程においてウエーハの表面から保護テープを剥離する工程を説明するための説明図である。
図7】本発明に基づき実施される反転工程を説明するための説明図である。
図8図7に示す反転工程によりウエーハが反転された状態を示す図である。
図9】本発明に基づき実施されるピックアップ工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるウエーハの加工方法の実施形態について添付図面を参照して、詳細に説明する。
図1には本発明によるウエーハの加工方法によって加工されるウエーハ10の斜視図が示されている。図1に示すウエーハ10は、例えば厚さが700μmのシリコンの基板からなっており、表面10aに複数の分割予定ライン12が格子状に形成されているとともに、該複数の分割予定ライン12によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス14が形成されている。
【0013】
先ず、本発明に基づくウエーハの加工方法を実施するためには、図1に示すようにウエーハ10の表面10aにデバイス14を保護するための保護部材としての保護テープ16を貼着する(保護部材配設工程)。従って、ウエーハ10の表面10a側が保護テープ16で覆われ、裏面10bが露出する状態となる。なお、保護テープ16は、図示の実施形態においてはポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート状基材の表面にアクリル樹脂系の糊が塗布されているものを使用しているが、これに限定されず、次工程で実施される裏面研削工程時にウエーハ10の表面10aを保護することが可能な周知の部材であればいずれの部材も選択することができる。
【0014】
該保護部材配設工程を実施したならば、次に裏面研削工程を実施する。該裏面研削工程では図2に示すように、保護テープ16が貼着された表面10a側を下方に、被研削面となる裏面10b側を上方に向くようにして研削装置(全体図は省略する。)の研削手段20に備えられた第1のチャックテーブル21上に載置する。第1のチャックテーブル21は、図示しない回転駆動機構により回転可能に構成され、その保持面は多孔性材料からなり、図示しない吸引手段に接続され、後述する研削工程時にウエーハ10が第1のチャックテーブル21上で位置ずれ等しないようにウエーハ10を強固に吸引保持する。
【0015】
研削手段20は、第1のチャックテーブル21上に載置されたウエーハ10を研削して薄化するための構成を備えており、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル22と、該回転スピンドル22の下端に装着されたマウンター23と、該マウンター23の下面に取り付けられた研削ホイール24とを備え、研削ホイール24の下面には複数の研削砥石25が環状に配設されている。
【0016】
ウエーハ10を第1のチャックテーブル21上に吸引保持したならば、第1のチャックテーブル21を図2において矢印21aで示す方向に例えば300rpmで回転させつつ研削ホイール24を図2において矢印22aで示す方向に、例えば6000rpmで回転させる。そして、研削砥石25をウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール24を、例えば1μm/秒の研削送り速度で下方、すなわち、第1のチャックテーブル21に対し垂直な方向に研削送りする。この際、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハの厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハ10の裏面10bが研削されてシリコンウエーハ10を所定の厚さ例えば200μmとして、該裏面研削工程が完了する。
【0017】
該裏面研削工程が完了したならば、次に切削溝形成工程を実施する。裏面研削工程を終えたウエーハ10は、図3(a)に示す切削手段30を備えた切削装置(全体図は省略する。)に搬送される。
【0018】
研削手段20から搬送されたウエーハ10は、図3(a)に示す切削手段30に搬送され、第2のチャックテーブル31の保持面上に保護テープ16が貼着された表面10a側を下方にして載置される。該切削手段30は、回転スピンドル32の先端部に固定された切削ブレード33を保持するスピンドルハウジング34を備えている。切削溝を形成する加工を実施するに際し、赤外線を照射することにより裏面からウエーハを透過して表面側を撮像できる図示しない撮像手段を用いて第2のチャックテーブル31に吸引保持されたウエーハ10の分割予定ライン12と切削ブレード33との位置合わせを行うアライメントを実施する。該アライメントを実施したならば、該アライメントにより得られた位置情報に基づき高速回転させられた切削ブレード33を下降させて、切削手段30の第2のチャックテーブル31に吸引保持されたウエーハ10の分割予定ライン12に沿って切り込ませ、該第2のチャックテーブル31と切削ブレード33とを加工送り方向(矢印Xで示す方向。)に相対移動させる。これにより、切削部分の拡大断面図として示す図3(b)に示すような分割予定ライン12に沿った切削溝100を該ウエーハ10の裏面10b側から表面10aに至らない深さ、及び所定の溝幅(例えば30μm)で形成する。なお、表面10a側には、図に示すようにLow−k膜10cが形成されており、該切削溝100は、表面10aに至らない、即ちLow−k膜10cに至らない深さで切削される。該第2のチャックテーブル31は、回転自在に構成されており、第2のチャックテーブル31を回転させることで切削ブレード33に対するウエーハ10の方向を自在に変更することができる。これによりウエーハ10の全ての分割予定ライン12に対応して裏面10b側から上記切削溝100を形成することができ、切削溝形成工程が完了する。なお、図3(b)は、説明の都合上切削溝100を強調して記載したものであり、実際の寸法に従ったものではない。
【0019】
該切削溝形成工程が完了したならば、分割予定ライン12を完全に切断する切断工程を実施する。該切削溝形成工程が実施されたウエーハ10は、図4(a)に示すレーザー加工手段40を備えたレーザー加工装置(全体図は省略する。)に搬送され、レーザー加工手段40の第3のチャックテーブル41の保持面上に、保護テープ16が貼着された表面側10aを下方にして載置される。第3のチャックテーブル41に載置されたウエーハ10に対しレーザー加工を実施するに際し、図示しない撮像手段を用いて第3のチャックテーブル41に吸引保持されたウエーハ10の分割予定ライン12とレーザー光線照射手段42との位置合わせを行うアライメントを実施する。該アライメントを実施したならば、該アライメントにより得られた位置情報に基づき、第3のチャックテーブル41上に吸引保持されたウエーハ10の裏面10b側から分割予定ライン12に沿ってレーザー光線を照射すると共に、該第3のチャックテーブル41と該レーザー光線照射手段42とを加工送り方向(矢印Xで示す方向。)に相対移動させる。これにより、図4(b)に拡大断面図として示すように、切削溝100の底部、すなわち、Low−k膜10cが形成されたウエーハ10の表面10a側に、分割予定ライン12に沿ってLow−k膜10cと共にウエーハ10を完全に切断する切断部102が形成される。第3のチャックテーブル41は図示しない位置変更手段によりレーザー光線照射手段42に対する相対的な位置を自在に変更可能に構成されており、該位置変更手段を作動させることによりウエーハ10の全ての分割予定ライン12に沿って切断部102を形成することで、該切断工程が完了する。
【0020】
なお、本実施形態の切断工程において実施されるレーザー加工条件は例えば以下のように設定されている。
【0021】
光源 :YAGパルスレーザー
波長 :355nm(YAGレーザーの第3高調波)
出力 :3.0W
繰り返し周波数 :20kHz
送り速度 :100mm/秒
【0022】
該切断工程を実施したならば、図5に示すように、切断工程が施されたウエーハ10の裏面10b側を、外周が第1のフレームF1で支持された第1の粘着テープT1の中央に貼着する。この際、ウエーハ10は、完全に個々のデバイスに切断されているものの、保護テープ16は切断されていないため、保護テープ16により個々のデバイスが脱離することなく全体が保持されている。そして、ウエーハ10を該第1の粘着テープを介して第1のフレームF1に保持したならば、図6に示すように、保護テープ16をウエーハ10から剥離する。以上でフレーム支持工程が完了する。
【0023】
該フレーム支持工程が完了したならば、後述するピックアップ工程を実施する前に、ウエーハ10をピックアップ工程に適した状態とすべく、ウエーハ10を反転させる反転工程を実施する。該反転工程は、図7に示すように、先ずウエーハ10の表面10aに第2の粘着テープT2を貼着すると共に、ウエーハ10を収容する開口部を有する第2のフレームF2に第2の粘着テープT2の外周を貼着し、第2の粘着テープT2を介して第2のフレームF2でウエーハ10を支持する。これによりウエーハ10は、その裏面10b側が第1の粘着テープT1で、表面10a側が第2の粘着テープT2で支持されていることになる。このようにしてウエーハ10が、第1の粘着テープT1、第2の粘着テープT2により挟まれ支持された状態となったならば、第1の粘着テープT1の外側から図示しない紫外線照射手段を照射することにより第1の粘着テープT1を硬化させることによりウエーハ10との粘着力を消失させる。ウエーハ10と第1の粘着テープT1との粘着力が消失したならば、ウエーハ10の裏面10bから第1の粘着テープT1を剥離して、図8に示すように、ウエーハ10の裏面10b側が露出し、第2の粘着テープT2を介して第2のフレームF2により支持された状態として、反転工程が完了する。
【0024】
該反転工程が完了したならば、ピックアップ工程を実施する。該ピックアップ工程は、図9にその一部を示すピックアップ手段50にて実施されるものであり、該ピックアップ手段50は、フレーム保持部材51と、その上面部に環状の第2のフレームF2を載置して上記環状の第2のフレームF2を保持するクランプ52と、該クランプ52により保持された第2のフレームF2に装着されたウエーハ10を拡張するための少なくとも上方が開口した円筒形状からなる拡張ドラム53とを備えている。フレーム保持部材51は、拡張ドラム53を囲むように設置された複数のエアシリンダ54aと、エアシリンダ54aから延びるピストンロッド54bとから構成される支持手段54により昇降可能に支持されている。
【0025】
該拡張ドラム53は、第2のフレームF2の内径よりも小さく、第2のフレームF2に装着された第2の粘着テープT2に貼着されるウエーハ10の外径よりも大きく設定されている。ここで、図9に示すように、ピックアップ装置50は、フレーム保持部材51と、拡張ドラム53の上面部が略同一の高さになる位置(点線で示す)と、支持手段54の作用によりフレーム保持部材51が下降させられ、拡張ドラム53の上端部が、フレーム保持部材51の上端部よりも高くなる位置(実線で示す)とすることができる。
【0026】
上記フレーム保持部材51を下降させて、拡張ドラム53の上端を、点線で示す位置から、実線で示すフレーム保持部材51よりも高い位置となるように相対的に変化させると、第2のフレームF2に装着された第2の粘着テープT2は拡張ドラム53の上端縁に押されて拡張させられる。この結果、第2の粘着テープT2に貼着されているウエーハ10には放射状に引張力が作用するため、上述した切断工程において分割予定ライン12に沿って形成された切断部102に沿って個々のデバイス14が離反する。そして、個々のデバイス14同士の間隔が広げられた状態で、ピックアップコレット55を作動させて間隔が広げられた状態のデバイス14を裏面側から吸着し、第2の粘着テープT2から剥離してピックアップし、デバイス14の表面側を配線基板にボンディングするボンディング工程に搬送する。以上により、ピックアップ工程が終了し、本発明によるウエーハの加工方法が完了する。
【0027】
本発明は、上述した実施形態からも理解されるように、種々の作用効果を奏することができる。例えば、ウエーハの裏面側から切削溝を形成すると共に、裏面側からレーザー光線を照射して分割予定ラインを完全に切断するようにしているので、切削溝を形成する際にはレーザーによる加工溝がないため、切削ブレードのずれや倒れが回避され、切削ブレードが偏摩耗することを防止することができる。
【0028】
また、ウエーハの裏面側から前工程で形成された切削溝に沿ってレーザー光線を照射することにより分割予定ラインを完全に切断するようにしているので、デブリがデバイスの表面側に付着することがなく、保護膜等を形成する必要がない。また、該保護膜が不要になることで、レーザー光線を複数照射することによって熱歪が残留しデバイスの抗折強度が低下する等の問題が発生することを回避することができる。
【0029】
さらに、ウエーハの裏面側から切削ブレードにより切削溝を形成した後、該切削溝に沿ってレーザー光線を照射して完全に切断する切断工程を実施するため、分割予定ラインの幅を大きくする必要がなく、幅の広い分割予定ラインによって取得できるデバイスの個数が減る等の問題がない。特に、レーザー光線の照射は裏面側から実施され、切削溝が形成された際の残余の部分をレーザー加工により切断されるのみであるため、表面側からレーザー光線を照射してウエーハを切断する場合のように、パシベーション膜を透過してレーザー加工されることによって熱の逃げ場が失われ、アンダーカットが生じる等の問題も回避される。
【0030】
そして、上述した反転工程を実施することにより、ウエーハが完全に個々のデバイスに切断され粘着テープを介してフレーム保持された状態でピックアップ工程が実施可能になるため、デバイスを粘着テープからピックアップした後、そのままデバイスの表面を配線基板にボンディングすることが容易に実現される。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、種々の変形例が想定される。例えば、上述した実施形態では、裏面研削工程、切削溝形成工程、切断工程を実施する際に、ウエーハ10を、各工程が実施される研削手段20、切削手段30、レーザー加工手段40の各手段における第1のチャックテーブル21、第2のチャックテーブル31、第3のチャックテーブル41に搬送して保持し各加工を実施したが、上記各手段を集約して加工装置を構成し、一つのチャックテーブルにウエーハ10を保持し、該チャックテーブルを各手段に移動させることで加工を実施するようにしてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態の反転工程においては、ウエーハ10から第1の粘着テープT1を剥離する際に、紫外線を照射することにより粘着力を消失させて剥離させたが、これに限定されず、例えば加熱することにより粘着力を消失する粘着テープを使用して加熱することにより粘着テープを剥離するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10:ウエーハ
12:分割予定ライン
14:デバイス
20:研削装置
21:第1のチャックテーブル
22:回転スピンドル
23:マウンター
24:研削ホイール
25:研削砥石
30:切削手段
31:第2のチャックテーブル
32:回転スピンドル
33:切削ブレード
40:レーザー加工手段
41:第3のチャックテーブル
42:レーザー光線照射手段
50:ピックアップ手段
100:切削溝
102:切断部
T1:第1の粘着テープ
T2:第2の粘着テープ
F1:第1のフレーム
F2:第2のフレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9