(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
混合物全体における式I1a〜I1hまたはPUQU−n−Fの化合物の割合が、全混合物を基礎として2〜30重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【背景技術】
【0002】
液晶は、印加された電圧によって、そのような物質の光学的特性を改変できるため、主にディスプレイ装置の中の誘電体として使用されている。液晶に基づく電気光学的装置は当業者に極めて既知であり、種々の効果に基づくことができる。そのような装置の例は、ツイストネマチック構造を有するTNセル、STN(「スーパーツイストネマチック:supertwisted nematic」)セル、ECB(「電気的制御複屈折:electrically controlled birefringence」)セルおよびIPS(「面内スイッチング:in−plane switching」)セルである。
【0003】
最も一般的なディスプレイ装置はSchadt−Helfrich効果に基づき、例えば、TNおよびSTNセルなどにおいて、ツイストネマチック構造を有する。それらは、マルチプレックスとして、または、アクティブマトリクスディスプレイ(AMD−TN、AMD=アクティブマトリクス駆動:active matrix driven)として動作できる。
【0004】
TNディスプレイの場合、セルにおいて次の利点が可能となる液晶媒体が望まれる:広げられたネマチック相範囲(特に、低い温度まで)、極めて低温におけるスイッチ能力(屋外使用、自動車、航空機)およびUV照射に対する増大された耐性(より長い寿命)。しかしながら、先行技術より入手可能な媒体では、他のパラメータを同時に保持しながら、これらの利点を達成することは不可能である。
【0005】
より高度にツイストしたSTNディスプレイの場合、より大きなマルチプレックス性および/またはより低い閾電圧および/またはより広いネマチック相範囲(特に、低温において)が可能となる液晶媒体が望まれる。この目的のために、利用可能なパラメータの自由度(透明点、スメクチック−ネマチック転移または融点、粘度、誘電パラメータ、弾性パラメータ)を一層広げることが、至急望まれている。
【0006】
再配向用の電界が液晶層に対して本質的に垂直に生成される既知の液晶ディスプレイ(TN、STN、ECBおよびIPS)に加え、液晶層に平行な有意な成分を電界が有するような様式により電気信号が生成されるディスプレイも存在する。IPS(「面内スイッチング:in−plane switching」)ディスプレイとして既知のこのタイプのディスプレイは、例えば、国際特許出願公開第91/10936号パンフレット(特許文献1)に開示されている。
【0007】
既知の液晶媒体を含有するTNディスプレイは不適切に長い応答時間によって、および、しばしば、過度に高い動作電圧によって特徴付けられる。よって、これらの不都合を有していないか低減された程度にのみ有するTNディスプレイ用の液晶媒体に対する要求がある。このためには、適切な相範囲、低温における結晶化に対する低い傾向、低い複屈折率および適切な電気抵抗に加え、特に、低い閾電圧(V
10)および短い応答時間を有する液晶材料に対して特に要求がある。
【0008】
TNディスプレイは、例えば、マトリクスディスプレイとして動作させることができる。
【0009】
マトリクス液晶ディスプレイは既知である。個々のピクセルを個々にスイッチングするために使用できる非線形素子は、例えば、アクティブ素子(即ち、トランジスタ)である。なお、用語「アクティブマトリクス」は、2つのタイプに区別でき使用される:
1.基板としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体:metal oxide semiconductor)または他のダイオード、
2.基板としてのガラスプレート上の薄膜トランジスター(TFT:thin−film transistor)。
【0010】
基板材料として単結晶シリコンを使用すると、色々な部品ディスプレイのモジュール組み立て品であっても接続部で問題が生じる結果となるため、ディスプレイの大きさが制限される。
【0011】
好適であってより有望なタイプ2の場合には、使用される電気光学的効果は、TN効果である。2つの技術に区別される:例えば、CdSeなどの化合物半導体を含むTFT、または、多結晶またはアモルファスシリコンに基づくTFTである。後者の技術について、世界的に集中した仕事がなされている。
【0012】
TFTマトリクスは、ディスプレイの一方のガラスプレートの内側に塗工され、一方、他方のガラスプレートは、その内側に透明な対向電極を備える。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。この技術はフルカラー対応のディスプレイにも拡張でき、そこでは、フィルター素子がスイッチング可能なピクセルの各々に対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置される。
【0013】
TFTディスプレイは、通常、透過に対して直交した偏光子を備えるTNセル(TN−TFT)として動作し、バックライトで照らされる。
【0014】
本明細書において用語MLCディスプレイは、集積非線形素子を有する任意のマトリクスディスプレイ、即ち、アクティブマトリクスに加えて、バリスターまたはダイオード(MIM、即ち、metal−insulator−metal)などのパッシブ素子を備えるディスプレイも網羅する。
【0015】
個々のピクセルをスイッチするための集積非線形素子を有するマトリクス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)用には、例えば、大きな正の誘電異方性、広いネマチック相、比較的低い複屈折率、非常に高い比抵抗、良好なUVおよび温度安定性および低い蒸気圧を有する媒体が望ましい。
【0016】
このタイプのMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えば、ポケットテレビ)またはコンピュータ用途(ラップトップ)および自動車および航空機内における高度情報ディスプレイに適している。コントラストの角度依存性および応答時間に関する問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の比抵抗が十分に高くないことに起因する問題も生じる[TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月、第A210〜288号、Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings、第141ff頁、パリ(非特許文献1);STROMER,M.、Proc.Eurodisplay 84、1984年9月、Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays、第145ff頁、パリ(非特許文献2)]。抵抗の低下に伴い、MLCディスプレイのコントラストが劣化し、また、残像消去の問題も生じ得る。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命に渡って低下するので、許容される耐用年数を得るためには、高い(初期)抵抗が非常に重要である。特に、低電圧用混合物の場合には、非常に高い抵抗値を達成することは従来不可能であった。更に、温度の上昇および加熱および/またはUV曝露後に、比抵抗が可能な限り小さい上昇を有することも重要である。また、先行技術からの混合物の低温特性も特に不利である。たとえ低温であっても、結晶化および/またはスメクチック相が生じないこと、および、粘度の温度依存性も可能な限り低いことが要求される。既知のMLCディスプレイは、これらの要求を満たさない。
【0017】
よって、非常に高い比抵抗と同時に、広い動作温度範囲において、低温においても短い応答時間、および低い閾電圧を有しており、既述の不都合を有さないか、または、低減された程度にのみ有するMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。
【0018】
バックライトを使用する、即ち、透過的および所望により半透過的に動作する液晶ディスプレイに加え、反射型液晶ディスプレイにも特に興味がもたれている。これらの反射型液晶ディスプレイは、情報表示のために周囲光を使用する。それらは、よって、対応する大きさおよび解像度のバックライト液晶ディスプレイよりも、著しく低いエネルギーを消費する。TN効果は非常に良好なコントラストで特徴付けられるため、このタイプの反射型ディスプレイは、明るい周囲状況下においてでさえ良好に読むことができる。これは、例えば、腕時計およびポケット計算機において使用されている通りの、単純な反射型TNディスプレイとして既に知られている。しかしながら、また、当該原理は、例えば、TFTディスプレイなどの高品質で、より高解像度のアクティブマトリックスでアドレスされるディスプレイにも適用できる。ここで、一般的には従来の透過型TFT−TNディスプレイにおいて既にそうである通り、低い複屈折率(Δn)の液晶を使用することが、低い光学的リターデーション(d・Δn)を達成するために必要である。この低い光学的リターデーションによって、通常は許容できる低いコントラストの視野角依存性との結果となる(ドイツ国特許第30 22 818号明細書(特許文献2)参照)。反射型ディスプレイにおいて光が通過する有効な層厚は、同じ層厚の透過型ディスプレイにおいて、ほぼ2倍の大きさとなるため、反射型ディスプレイにおいては、低複屈折率の液晶を使用することが透過型ディスプレイよりも更に重要である。
【0019】
透過型ディスプレイに勝る反射型ディスプレイの利点は、より電力消費が低いこと(バックライトが不必要なため)に加え、空間を節約でき、結果として非常に小さい物理的な奥行きとなること、および、バックライトによる加熱の程度が異なることによって起きる温度勾配に起因する問題の低減とである。
【0020】
一般に、上記ディスプレイのタイプのための液晶材料は、良好な化学的および熱的安定性および電界および電磁線放射に対して良好な安定性を有していなければならない。更に、液晶材料は低い粘度を有していなければならず、セル中で、短いアドレス時間、低い閾電圧および高いコントラストを与えなければならない。
【0021】
更に、液晶材料は、通常の動作温度において、即ち、室温より上および下の出来る限り広い範囲において、適切な中間相、例えば、上記のセル用のネマチックまたはコレステリック中間相を有していなければならない。液晶は一般に複数成分の混合物の形態において使用されるため、成分が互いに容易に混和することが重要である。導電性、誘電異方性および光学異方性などの他の特性は、セルのタイプおよび用途分野に応じて、種々の要求を満足しなければならない。例えば、ツイストネマチック構造を有するセル用の材料は、正の誘電異方性および低い導電率を有していなければならない。
【0022】
TN(Schadt−Helfrich)セルにおいては、セルにおいて次の利点が可能となる媒体が望ましい:
−広げられたネマチック相範囲(特に、低い温度まで)
−極めて低温におけるスイッチ能力(屋外使用、自動車、航空機)
−UV照射に対する増大された耐性(より長い寿命)
−低い閾(駆動)電圧
−速い応答時間
−十分に高い複屈折率
−十分に高い電圧保持率(HR:Voltage Holding Ratio)を提供するのに十分高い抵抗率
−特に、配向における欠陥を避けるために、セルおよびディスプレイにおける十分高いプレチルト。
【0023】
先行技術より入手可能な媒体では、同時に他のパラメータを保持しながら、これらの利点を達成できない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
少量の1種類以上の「反応性メソゲン」(RM:reactive mesogen)として既知の重合性化合物を、TNモードLC媒体用のLC混合物に添加することにより、RMの一切ないLC混合物と比較して改良された特性を示すLC媒体が得られる。
【0029】
本発明による混合物を含有するディスプレイはプレチルト角の設定が可能であり、好ましくは同時に、非常に高い比抵抗値、低い閾電圧および短い応答時間を有する。
【0030】
本発明は、
−1種類以上の重合性化合物を含有する重合性成分(A)と、および
−一般式(I)の1種類以上の化合物を含有する液晶成分(B)とを含有することを特徴とする液晶媒体に関する。
【0031】
【化1】
式中、
R
0は、1〜15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、該基は無置換であるか、CNまたはCF
3で一置換されているか、またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、
【0032】
【化2】
−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
【0033】
【化3】
Y
1およびY
2は、それぞれ互いに独立に、HまたはFであり、
Z
1は、−CF
2O−、−OCF
2−または−COO−、好ましくは、−CF
2O−であり、
Z
2は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−S−CO−、−CO−S−、−OCH
2−、−CH
2O−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−または単結合、好ましくは、単結合であり、
X
0は、F、Cl、6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、、ハロゲン化アルコキシまたはハロゲン化アルケニルオキシ、好ましくは、FまたはOCF
3であり、および
rは、0、1、2または3である。
【0034】
本発明は、更に、電気光学的目的のために本発明による媒体を使用することに関する。
【0035】
本発明は、更に、本発明による液晶媒体を含有する電気光学的液晶ディスプレイに関する。
【0036】
また、本発明は、更に、本発明による液晶媒体を含有し、TN、STNまたはTN−TFTディスプレイであることを特徴とする電気光学的液晶ディスプレイにも関する。
【0037】
成分(A)の「反応性メソゲン(RM:reactive mesogen)」とも呼ばれる適切な重合性化合物は、先行技術より既知である。これらの化合物の多くは、商業的に入手可能である。
【0038】
好ましい重合性化合物(モノマー)は、例えば、式I
*1〜I
*20より選択される。
【0041】
【化6】
式中、
R
1は式IにおいてR
0に示される意味の1つを有し、
P
1およびP
2はPに示される意味の1つを有し、好ましくは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、
Pは重合性基を表し、
Sp
1およびSp
2はSpに示される意味の1つを有するか、または、単結合を表し、
Spはスペーサー基を表し、
Z
2およびZ
3は、それぞれ互いに独立に、−COO−または−OCO−を表し、
Lは、P−Sp−、F、Cl、Br、I、−CN、−NO
2、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R
x)
2、−C(=O)Y
1、−C(=O)R
x、−N(R
x)
2、置換されていてもよいシリル、置換されていてもよく6〜20個のC原子を有するアリール、または、直鎖状または分岐状で1〜25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ表し、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、
L’およびL”は、それぞれ互いに独立に、H、FまたはClを表し、
rは、0、1、2、3または4を表し、
sは、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、
xは、0または1を表し、および
R
xは、HまたはCH
3を表す。
【0042】
好ましいスペーサー基Spは、基「P−Sp−」が式「P−Sp’−X’−」に一致するように式Sp’−X’より選択され、ただし、
Sp’は、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレンを表し、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし加えて、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、1個以上の隣接していないCH
2基は、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR
0−、−SiR
0R
00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR
0−CO−O−、−O−CO−NR
0−、−NR
0−CO−NR
0−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR
0−、−NR
0−CO−、−NR
0−CO−NR
0−、−OCH
2−、−CH
2O−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR
0−、−CY
2=CY
3−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合を表し、
R
0およびR
00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、および
Y
2およびY
3は、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表す。
【0043】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR
0−、−NR
0−CO−、−NR
0−CO−NR
0−または単結合である。
【0044】
典型的なスペーサー基Sp’は、例えば、−(CH
2)
p1−、−(CH
2CH
2O)
q1−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−S−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−NH−CH
2CH
2−または−(SiR
0R
00−O)
p1−であり、式中、p1は1〜12の整数、q1は1〜3の整数、および、R
0およびR
00は上述の意味を有する。
【0045】
特に好ましい基−X’−Sp’−は、−(CH
2)
p1−、−O−(CH
2)
p1−、−OCO−(CH
2)
p1−、−OCOO−(CH
2)
p1−である。
【0046】
特に好ましい基Sp’は、例えば、それぞれの場合で直鎖状のエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0047】
上および下において、以下の意味を適用する。
【0048】
用語「メソゲン基」は当業者には既知であり文献に記載されており、引力および斥力的相互作用の異方性により、低分子量または高分子物質中で液晶(LC)相の発生に本質的に寄与する基を表す。メソゲン基を含有する化合物(メソゲン化合物)は、それ自身では必ずしもLC相を有する必要はない。他の化合物と混合後および/または重合後のみに、メソゲン化合物がLC相挙動を示すことも可能である。典型的なメソゲン基は、例えば、剛直な棒状または円盤状の形状の単位である。メソゲンまたはLC化合物に関して使用される用語および定義の概説が、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁に与えられている。
【0049】
用語「スペーサー基」は、上および下で「Sp」とも呼ばれ、当業者には既知であり文献に記載されており、例えば、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照。他に示されない限り、用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、上および下において、重合性メソゲン化合物(「RM」)中でメソゲン基と重合性基(1個または複数個)とを互いに連結している柔軟性の基を表す。
【0050】
用語「反応性メソゲン」または「RM」は、メソゲン基と、重合に適する1個以上の官能基(重合性基または基Pとしても既知)とを含有する化合物を表す。
【0051】
用語「低分子量化合物」および「非重合性化合物」は、当業者に既知の通常の条件下、特に、RMの重合に使用される条件下において重合に適する官能基を一切含有しない、通常、モノマー性の化合物を表す。
【0052】
用語「有機基」は、炭素または炭化水素基を表す。
【0053】
用語「炭素基」は、少なくとも1個の炭素原子を含有する一価または多価の有機基を表し、該基は更なる原子を含有しない(例えば、−C≡C−など)か、または、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの更なる1種類以上の原子を含有することもある(例えば、カルボニルなど)かのいずれかである。用語「炭化水素基」は、追加的に1個以上のH原子と、任意成分として、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1種類以上のヘテロ原子とを含有する炭素基を表す。
【0054】
「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを表す。
【0055】
炭素基または炭化水素基は、飽和または不飽和基のいずれでも構わない。不飽和基は、例えば、アリール、アルケニルまたはアルキニル基である。3個より多いC原子を有する炭素または炭化水素基は直鎖状、分岐状および/または環状のいずれでも構わず、また、スピロ結合または縮合環を有していても構わない。
【0056】
また、用語「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」などは、多価の基、例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンなども包含する。
【0057】
用語「アリール」は、芳香族炭素基またはそれより誘導される基を表す。用語「ヘテロアリール」は、1個以上のヘテロ原子を含有し上の定義による「アリール」を表す。
【0058】
好ましい炭素および炭化水素基は、置換されていてもよく、1〜40個、好ましくは1〜25個、特に好ましくは1〜18個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ、または、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、アルキルアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシである。
【0059】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、C
1〜C
40アルキル、C
2〜C
40アルケニル、C
2〜C
40アルキニル、C
3〜C
40アリル、C
4〜C
40アルキルジエニル、C
4〜C
40ポリエニル、C
6〜C
40アリール、C
6〜C
40アルキルアリール、C
6〜C
40アリールアルキル、C
6〜C
40アルキルアリールオキシ、C
6〜C
40アリールアルキルオキシ、C
2〜C
40ヘテロアリール、C
4〜C
40シクロアルキル、C
4〜C
40シクロアルケニルなどである。C
1〜C
22アルキル、C
2〜C
22アルケニル、C
2〜C
22アルキニル、C
3〜C
22アリル、C
4〜C
22アルキルジエニル、C
6〜C
12アリール、C
6〜C
20アリールアルキルおよびC
2〜C
20ヘテロアリールが特に好ましい。
【0060】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキル基であり、該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH
2基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−C(R
x)=C(R
x)−、−C≡C−、−N(R
x)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよい。
【0061】
R
xは、好ましくは、H、ハロゲン、1〜25個のC原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキル鎖(ただし加えて、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子はフッ素により置き換えられていてもよい。)、6〜40個のC原子を有する置換されていてもよいアリールまたはアリールオキシ基、または、5〜40個のC原子を有する置換されていてもよいヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表す。
【0062】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロヘキシルなどである。
【0063】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルなどである。
【0064】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルなどである。
【0065】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、n−ドデシルオキシなどである。
【0066】
好ましいアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなどである。
【0067】
アリールおよびヘテロアリール基は単環または多環のいずれでも構わず、即ち、それらは、1個の環(例えば、フェニルなど)または2個以上の環を有することができ、また、該基は縮合されていてもよく(例えば、ナフチルなど)、または、共有結合によって連結されていてもよく(例えば、ビフェニルなど)、または、縮合および連結環の組み合わせを含有していてもよい。ヘテロアリール基は1個以上のヘテロ原子を含有し、好ましくはO、N、SおよびSeより選択される。
【0068】
6〜25個のC原子を有する単環、二環または三環アリール基および2〜25個のC原子を有する単環、二環または三環ヘテロアリール基が特に好ましく、該基は縮合された環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員または7員のアリールおよびヘテロアリール基が好ましく、ただし加えて、1個以上のCH基は、O原子および/またはS原子が互いに直接結合されないようにして、N、SまたはOで置き換えられていてもよい。
【0069】
好ましいアリール基は、例えば、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、[1,1’:3’,1”]−ターフェニル−2’−イル、ナフチル、アントラセン、ビナフチル、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどである。
【0070】
好ましいヘテロアリール基は、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどの5員環;ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジンなどの6員環;または、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフタイミダゾール、フェナントライミダゾール、ピリダイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェンなどの縮合基;またはこれらの基の組み合わせである。また、ヘテロアリール基は、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、フッ素、フルオロアルキルまたは更なるアリールまたはヘテロアリール基で置換されてもよい。
【0071】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、飽和環、即ち、排他的に単結合を含有するものと、また、部分的に不飽和な環、即ち、多重結合も含有してよいものとの両者を包含する。ヘテロ環式環は1個以上のヘテロ原子を含有しており、好ましくは、Si、O、N、SおよびSeより選択される。
【0072】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、単環式、即ち、1個のみの環を含有する(例えば、シクロヘキサンなど)か、または、多環式、即ち、複数の環を含有する(例えば、デカヒドロナフタレンまたはビシクロオクタンなど)かのいずれでも構わない。飽和基が、特に好ましい。更に、3〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式基が好ましく、該基は縮合環を含有してもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員、7員または8員炭素環式基が好ましく、ただし加えて、1個以上のC原子はSiで置き換えられていてもよく、および/または1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよく、および/または1個以上の隣接していないCH
2基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよい。
【0073】
好ましい脂環式およびヘテロ環式基は、例えば、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジンなどの5員基、シクロヘキサン、シリナン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジンなどの6員基、シクロヘプタンなどの7員基、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイルなどの縮合基である。
【0074】
アリール、ヘテロアリール、炭素および炭化水素基は、1個以上の置換基(好ましくは、シリル、スルホ、スルホニル、ホルミル、アミン、イミン、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ハロゲン、C
1〜12アルキル、C
6〜12アリール、C
1〜12アルコキシ、水酸基、またはこれらの基の組み合わせからなる群より選択される。)を有していてもよい。
【0075】
好ましい置換基は、例えば、アルキルまたはアルコキシなどの溶解性促進基、フッ素、ニトロまたはニトリルなどの電子吸引基、または、ポリマーにおいてガラス転移温度(Tg)を上昇させための基、特に例えば、t−ブチルまたは置換されていてもよいアリール基などの嵩高い基である。
【0076】
下で「L」とも呼ばれる好ましい置換基は、例えば、F、Cl、Br、I、−CN、−NO
2、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R
x)
2、−C(=O)Y
1、−C(=O)R
x、−N(R
x)
2であり、式中、R
xは上述の意味を有し、Y
1は、ハロゲン、6〜40個、好ましくは6〜20個のC原子を有する置換されていてもよいシリルまたはアリール、および、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよい。
【0077】
「置換されたシリルまたはアリール」は、好ましくは、ハロゲン、−CN、−R
0、−OR
0、−CO−R
0、−CO−O−R
0、−O−CO−R
0または−O−CO−O−R
0によって置換されたことを意味し、ただし、R
0は上述の意味を有する。
【0078】
特に好ましい置換基Lは、例えば、F、Cl、CN、NO
2、CH
3、C
2H
5、OCH
3、OC
2H
5、COCH
3、COC
2H
5、COOCH
3、COOC
2H
5、CF
3、OCF
3、OCHF
2、OC
2F
5、更にフェニルである。
【0080】
【化8】
であり、式中、Lは上述の意味の1つを有する。
【0081】
重合性基Pは、例えば、フリーラジカルまたはイオン連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応、または、高分子類似反応、例えば、主鎖上への付加または縮合に適切な基である。連鎖重合のための基、特に、C=C二重結合またはC≡C三重結合を含有するもの、および、例えば、オキセタンまたはエポキシド基などの開環重合に適切な基が特に好ましい。
【0082】
好ましい基Pは、CH
2=CW
1−COO−、CH
2=CW
1−CO−、
【0083】
【化9】
CH
2=CW
2−(O)
k3−、CW
1=CH−CO−(O)
k3−、CW
1=CH−CO−NH−、CH
2=CW
1−CO−NH−、CH
3−CH=CH−O−、(CH
2=CH)
2CH−OCO−、(CH
2=CH−CH
2)
2CH−OCO−、(CH
2=CH)
2CH−O−、(CH
2=CH−CH
2)
2N−、(CH
2=CH−CH
2)
2N−CO−、HO−CW
2W
3−、HS−CW
2W
3−、HW
2N−、HO−CW
2W
3−NH−、CH
2=CW
1−CO−NH−、CH
2=CH−(COO)
k1−Phe−(O)
k2−、CH
2=CH−(CO)
k1−Phe−(O)
k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびW
4W
5W
6Si−より選択され、式中、W
1は、H、F、Cl、CN、CF
3、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、F、ClまたはCH
3を表し、W
2およびW
3は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルを表し、W
4、W
5およびW
6は、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを表し、W
7およびW
8は、それぞれ互いに独立に、H、Cl、1〜5個のC原子を有するアルキルを表し、Pheは、上に定義される通りの1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、k
1、k
2およびk
3は、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、k
3は、好ましくは、1を表す。
【0084】
特に好ましい基Pは、CH
2=CH−COO−、CH
2=C(CH
3)−COO−、CH
2=CH−、CH
2=CH−O−、(CH
2=CH)
2CH−OCO−、(CH
2=CH)
2CH−O−、
【0085】
【化10】
特には、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシドである。
【0086】
特に好ましい重合性化合物を以下に与える。
【0088】
【化12】
最も好ましくは、式RM−2、RM−3、RM−4またはRM−11の重合性化合物を含有するLC混合物が好ましい。
【0089】
重合性化合物は、当業者に既知で、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載されている方法に類似して調製される。式Iの重合性アクリレートおよびメタクリレートの合成は、米国特許第5,723,066号明細書に記載される方法に類似して行うことができる。更に、特に好ましい方法が実施例で与えられる。
【0090】
最も単純な場合、例えば、1−(3−ヒドロキシフェニル)フェニル−3−オールなどの一般式HO−A
1−Z
1−(A
2−Z
2)
m1−A
3−OH(式中、A
1〜3、Z
1、2およびm1は、上述の意味を有する)の商業的に入手可能なジオールを、例えば、塩化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸などの基Pを含有する対応する酸、酸誘導体、ハロゲン化化合物を使用して、例えば、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの脱水剤存在下でエステル化またはエーテル化することで合成を行うことができる。
【0091】
重合性化合物は、電圧を印加してLCディスプレイの基板間のLC媒体中において、その場での重合により重合または架橋(化合物が2個以上の重合性基を含有する場合)される。適切で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合で、好ましくは光重合であり、特にはUV光重合である。必要に応じて、ここに1種類以上の開始剤を加えることもできる。重合の適切な条件および開始剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、商業的に入手可能な光重合開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba社)がフリーラジカル重合に適する。
【0092】
開始剤を使用する場合、LC混合物全体における開始剤の比率は、好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%である。しかしながら、開始剤を添加することなく、重合を行うこともできる。更なる好ましい実施形態において、LC媒体は重合開始剤を含まない。
【0093】
また、例えば、保存または輸送中におけるRMの好ましくない自発的な重合を防止するために、重合性成分(A)および/またはLC媒体(=成分(B))は1種類以上の安定剤を含んでも構わない。安定剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba社)の商業的に入手可能な安定剤、例えば、Irganox(登録商標)1076が特に適切である。安定剤を使用する場合、RMまたは重合性成分(A)の総量を基礎とする安定剤の割合は、好ましくは10〜5000ppm、非常に好ましくは50〜500ppmである。
【0094】
本発明による重合性化合物は開始剤のない重合に特に適しており、例えば、材料費がより低く、開始剤またはそれの劣化生成物の残存し得る量によるLC媒体の不純物が特に少ないなどの特筆すべき利点を伴う。
【0095】
本発明によるLC媒体は、LC成分(B)を基礎として、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは2重量%未満、非常に特に好ましくは1重量%未満、非常に最も好ましくは0.5重量%未満の重合性化合物を含有する。
【0096】
液晶成分(B)は、式Iの少なくとも1種類の化合物を含有する。該化合物は、例えば、英国特許第22 29 438号明細書より既知である。
【0097】
これらの化合物は液晶媒体を主に構成する基礎材料として機能することができるか、または、例えば、このタイプの誘電体の誘電および/または光学異方性を改変するために、および/またはそれの閾電圧および/またはそれの粘度および/またはそれの低温挙動を最適化するために、他の部類の化合物からの液晶基礎材料に、これらの化合物を加えることができるかのいずれかである。
【0098】
式Iの化合物は、特に、本発明による液晶混合物の閾電圧および応答時間を低下させる。式Iの特に好ましい化合物は、基Y
1およびY
2の少なくとも一方がFであるものである。
【0099】
式Iの化合物は、好ましくは、以下のサブ式より選択される。
【0100】
【化13】
式中、X
0、Y
1およびY
2、Z
1、Z
2、R
0およびrは、式Iにおいて定義される通りである。R
0は、好ましくは、それぞれ6個までの炭素原子を有する、n−アルキル、n−アルコキシ、n−オキサアルキル、n−フルオロオアルキル、n−フルオロアルコキシまたはn−アルケニルである。
【0102】
Z
1が−CF
2O−または−OCF
2−、特に好ましくは、−CF
2O−である式I1〜I5の化合物が特に好ましい。
【0103】
Z
2が単結合である式I1〜I5の化合物が更に好ましい。
【0109】
【化18】
式中、R
0は上で定義される通りである。式I1a、I2n、I2w、I3a、I4a、I5a、I5bおよびI5cの化合物が特に好ましく、式I1aの化合物が特に好ましい。
【0110】
式Iの化合物は、それ自身既知で、文献(例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg−Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの標準的な著作)に記載される通りの方法により、既知で前記反応に適切な反応条件に正確に合わされて調製される。また、ここで、それ自身既知であるが、本明細書においては非常に詳細には述べていない変法も使用できる。
【0111】
純粋な状態において式Iの化合物は無色であり、電気光学的使用に好ましい位置にある温度範囲において液晶中間相を形成する。それらは、化学的、熱的および光に対して安定である。
【0112】
液晶成分(B)の好ましい実施形態を以下に与える。
【0113】
−媒体は、一般式III〜VIIIから成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含む。
【0115】
【化20】
式中、r、X
0およびR
0は、式Iにおいて定義される通りであり、および
Z
0は、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CF=CH−、−C
2H
4−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−または−CH
2O−であり、および
Z
3は、−C
2F
4−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CF=CH−、−C
2H
4−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−または−CH
2O−であり、
Y
1〜Y
4は、それぞれ独立に、HまたはFである。
【0116】
−式IIIの化合物は、好ましくは、以下の式より選択される。
【0118】
【化22】
式中、R
0は式Iにおいて定義される通りであり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルまたはn−ペンチルまたはCH
2=CHである。
【0119】
−式IVの化合物は、好ましくは、以下の式より選択される。
【0121】
【化24】
式中、R
0は式Iにおいて定義される通りであり、X
0は、好ましくは、FまたはOCF
3である。
【0122】
−式Vの化合物は、好ましくは、以下の式より選択される。
【0123】
【化25】
式中、R
0は式Iにおいて定義される通りであり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルまたはn−ペンチルである。
【0124】
−媒体は、一般式IX〜XVから成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含む。
【0125】
【化26】
式中、R
0、X
0およびY
1〜Y
4は、式Iにおいて定義される通りであり、X
0は、好ましくは、F、Cl、CF
3、OCF
3またはOCHF
2であり、R
0は、好ましくは、それぞれ6個までの炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキル、フルオロアルコキシまたはアルケニルである。
【0126】
−媒体は、一般式XVI〜XXから成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含む。
【0127】
【化27】
式中、R
0およびX
0は式Iにおいて定義される通りであり、LはHまたはFである。
【0128】
−媒体は、式XXIの1種類以上の二環式化合物を追加的に含む。
【0129】
【化28】
式中、R
5およびR
6は、それぞれ互いに独立に、式IにおいてR
0に定義される通りである。
【0130】
−式XXIの化合物は、好ましくは、以下の式より選択される。
【0131】
【化29】
式中、R
0は式I1において定義される通りであり、R
1aおよびR
2aは、それぞれ互いに独立に、H、CH
3、C
2H
5またはn−C
3H
7である。「alkyl」および「alkyl
*」は、それぞれ独立に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基である。式XXIa、XXIb、XXIdおよびXXIeの化合物が特に好ましい。
【0132】
式XXIdおよびXXIeの特に好ましい化合物は、以下に与えられる。
【0134】
【化31】
式中、「alkyl」および「alkyl
*」は、上で与えられる意味を有する。
【0135】
−媒体は、R
0が、2〜7個の炭素原子を有するアルケニルである式IIIa、好ましくは、式IIIa1より選択される1種類以上のアルケニル化合物を追加的に含む。
【0136】
【化32】
式中、R
1aは、H、CH
3、C
2H
5またはn−C
3H
7である。
【0137】
−媒体は、1種類以上、好ましくは、1種類、2種類または3種類の以下の式より選択される化合物を追加的に含む。
【0138】
【化33】
式中、「alkyl」および「alkyl
*」は、下で定義される通りである。
【0139】
−媒体は、式XXIIIの1種類以上の化合物を追加的に含む。
【0140】
【化34】
式中、R
0’およびR
0”は、それぞれ独立に、直鎖状で1〜6個の炭素原子を有するアルキル残基または2〜6個の炭素原子を有するアルケニル残基である。
【0141】
−媒体は、好ましくは、1種類以上、特に好ましくは、1種類または2種類の以下の式のジオキサン化合物を含む。
【0142】
【化35】
−媒体は、好ましくは、式XXVの1種類以上のデカリン化合物を含む。
【0143】
【化36】
式中、R
6およびR
7は、それぞれ互いに独立に、R
0またはX
0であり、および、X
0、A
1、Z
1およびR
0は、式Iにおいて定義される通りである。
【0144】
−式XXVの化合物は、好ましくは、以下の式より選択される。
【0145】
【化37】
式中、X
0およびR
0は式Iにおいて定義される通りであり、Zは、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF=CF−、−C
2F
4−、−CH=CH−(CH
2)
2−または−(CH
2)
4−、好ましくは、−C
2F
4−、および、(F)はHまたはFであり、
これらの好ましい式においてR
0は、好ましくは、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状のアルキルまたは2〜7個の炭素原子を有する直鎖状のアルケニルであり、
これらの好ましい式におけるX
0は、好ましくは、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−CH=CHF、−(CH
2)
n−CH=CHF、−CH=CF
2、−(CH
2)
n−CH=CF
2、−CF=CF
2、−(CH
2)
n−CF=CF
2、−OCH=CHF、−OCH=CF
2または−OCF=CF
2である。
【0146】
上および下において式中の基R
0の1個がアルキル基および/またはアルコキシ基の場合、これは直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、2個、3個、4個、5個、6個または7個の炭素原子を有しており、従って、特に好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシまたはヘプチルオキシ、更に、メチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、メトキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシまたはテトラデシルオキシである。
【0147】
オキサアルキルは、好ましくは、直鎖状の2−オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2−(即ち、エトキシメチル)または3−オキサブチル(即ち、2−メトキシエチル)、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニル、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0148】
基R
0の1個がアルキル基であり、その中で1個のCH
2基が−CH=CH−で置き換えられている場合、これは直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、2〜10個の炭素原子を有している。従って、それは、特に好ましくは、ビニル、プロパ−1−または−2−エニル、ブタ−1−、−2−または−3−エニル、ペンタ−1−、−2−、−3−または−4−エニル、ヘキサ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−エニル、ヘプタ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−エニル、オクタ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−または−7−エニル、ノナ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−エニル、またはデカ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−、−8−または−9−エニルである。
【0149】
基R
0の1個がアルキル基であり、その中で1個のCH
2基が−O−で置き換えられており、1個が−CO−で置き換えられている場合、これらは好ましくは隣接している。よって、これらは、アシルオキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−COを含有する。これらは、好ましくは直鎖状であり、2〜6個の炭素原子を有する。従って、それらは、特に好ましくは、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセトキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセトキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセトキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピルまたは4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0150】
基R
0の1個がアルキル基であり、その中で2個以上のCH
2基が−O−および/または−CO−O−で置き換えられている場合、これは、直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、分枝状で、3〜12個の炭素原子を有する。従って、それは、特に好ましくは、ビスカルボキシメチル、2,2−ビスカルボキシエチル、3,3−ビスカルボキシプロピル、4,4−ビスカルボキシブチル、5,5−ビスカルボキシペンチル、6,6−ビスカルボキシヘキシル、7,7−ビスカルボキシヘプチル、8,8−ビスカルボキシオクチル、9,9−ビスカルボキシノニル、10,10−ビスカルボキシデシル、ビス(メトキシカルボニル)メチル、2,2−ビス(メトキシカルボニル)エチル、3,3−ビス(メトキシカルボニル)プロピル、4,4−ビス(メトキシカルボニル)ブチル、5,5−ビス(メトキシカルボニル)ペンチル、6,6−ビス(メトキシカルボニル)ヘキシル、7,7−ビス(メトキシカルボニル)ヘプチル、8,8−ビス(メトキシカルボニル)オクチル、ビス(エトキシカルボニル)メチル、2,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)プロピル、4,4−ビス(エトキシカルボニル)ブチルまたは5,5−ビス(エトキシカルボニル)ペンチルである。
【0151】
基R
0の1個がアルキル基であり、その中で1個のCH
2基が無置換または置換された−CH=CH−で置き換えられており、隣接するCH
2基がCO、CO−OまたはO−COで置き換えられている場合、これは、直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、4〜13個の炭素原子を有する。従って、それは、特にこのましくは、アクリロイルオキシメチル、2−アクリロイルオキシエチル、3−アクリロイルオキシプロピル、4−アクリロイルオキシブチル、5−アクリロイルオキシペンチル、6−アクリロイルオキシヘキシル、7−アクリロイルオキシヘプチル、8−アクリロイルオキシオクチル、9−アクリロイルオキシノニル、10−アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2−メタクリロイルオキシエチル、3−メタクリロイルオキシプロピル、4−メタクリロイルオキシブチル、5−メタクリロイルオキシペンチル、6−メタクリロイルオキシヘキシル、7−メタクリロイルオキシヘプチル、8−メタクリロイルオキシオクチルまたは9−メタクリロイルオキシノニルである。
【0152】
基R
0の1個がCNまたはCF
3で一置換されているアルキルまたはアルケニル基の場合、この基は、好ましくは直鎖状である。CNまたはCF
3による置換は、任意の所望の位置において可能である。
【0153】
基R
0の1個がハロゲンで少なくとも一置換されているアルキルまたはアルケニル基の場合、この基は好ましくは直鎖状であり、ハロゲンは好ましくはFまたはClである。多置換の場合、ハロゲンは好ましくはFである。また、結果として生じる基は、ペルフルオロ化された基も含む。単置換の場合、フッ素または塩素置換基は任意の所望の位置で構わないが、好ましくはω位である。
【0154】
分岐状で羽状の基R
0を含有する化合物は、従来の液晶ベース材料中におけるより良好な溶解性のため重要なことがあるが、それらが光学活性の場合、キラルドーパントとして特に重要なことがある。このタイプのスメクチック化合物は、強誘電体材料の成分として適切である。
【0155】
このタイプの分岐状の基は、好ましくは、1個以下の鎖分岐を含有する。好ましい分岐状の基R
0は、イソプロピル、2−ブチル(即ち、1−メチルプロピル)、イソブチル(即ち、2−メチルプロピル)、2−メチルブチル、イソペンチル(即ち、3−メチルブチル)、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、イソプロポキシ、2−メチルプロポキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキシルオキシ、1−メチルヘキシルオキシおよび1−メチルヘプチルオキシである。
【0156】
また、本発明は、電気光学的目的のための本発明による液晶媒体の使用と、外枠と共にセルを形成する2枚の平坦で平行な外板、個々のピクセルをスイッチングするための外板上の集積非線形素子、および、本発明による液晶媒体を含有し、セル中に配置され、高い比抵抗のネマチック液晶混合物を有する電気光学的ディスプレイ、特に、STNおよびMLCディスプレイとにも関する。
【0157】
本発明による液晶媒体により、利用できるパラメータの範囲を著しく広げることができる。特に、透明点、低温における粘度、熱的およびUV安定性および光学異方性および閾電圧の達成可能な組み合わせは、先行技術からの以前の材料より極めて優れる。
【0158】
本発明による液晶媒体は、好ましくは−20℃まで、特に好ましくは−30℃まで、特には−40℃までネマチック相と、70℃より高い、好ましくは75℃より高い、特には80℃より高い透明点とを有する。それらのネマチック相範囲は、好ましくは少なくとも90℃、特に好ましくは少なくとも100℃に及ぶ。この範囲は、好ましくは、−30℃から+80℃まで広がる。
【0159】
本発明による液晶媒体の誘電異方性Δεは、好ましくは5以上、特に好ましくは8以上、特には10以上である。
【0160】
TNおよびSTNディスプレイ用の本発明による液晶媒体は、好ましくは0.07より大きく、特に好ましくは0.08以上であり、好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.16以下、特には0.085および0.15の間のΔnの複屈折率値を有する。反射型および半透過型ディスプレイ用の本発明による液晶媒体は、好ましくは0.08以下、特に好ましくは0.07以下、特には0.065以下の複屈折率値を有する。
【0161】
本発明による液晶媒体のTN閾値は、一般に1.7V、好ましくは1.5V未満である。
【0162】
本発明による液晶媒体の20℃における回転粘度γ
1は、好ましくは150mPas未満、特に好ましくは100mPas未満である。
【0163】
言うまでもなく、本発明による混合物の成分の適切な選択を通して、他の有利な特性を保持しながら、より低い誘電異方性値において、よって、より高い閾電圧に対して、より高い透明点(例えば、110℃より高い)を達成できるか、または、より高い誘電異方性値(例えば、12より高い)において、よって、より低い閾電圧(例えば、1.5V未満)に対して、より低い透明点を達成することも可能である。粘度の対応する上昇を僅かにして、より大きいΔεと、よって、より低い閾値を有する混合物を得ることも同様に可能である。
【0164】
容量保持率としても既知の電圧保持率(VHR:voltage holding ratio)の測定[S.Matsumotoら、Liquid Crystals 5巻、1320頁(1989年);K.Niwaら、Proc.SID Conference、サンフランシスコ、1984年6月、304頁(1984年);T.JacobおよびU.Finkenzeller、「Merck Liquid Crystals−Physical Properties of Liquid Crystals」内、1997年]によって、式Iの化合物およびUV安定剤、特に式IIのものを含む、本発明による液晶媒体は、MLCディスプレイにとって適当なVHRを有することが示された。
【0166】
【化38】
のシアノフェニルシクロヘキサン類、または、式
【0167】
【化39】
のエステル類などのシアノ基または4−シアノフェニル基を含有する化合物を、式Iの化合物の代わりに含む類似媒体よりも、式Iの化合物を含む本発明による液晶媒体の方が、温度上昇に伴うVHRの低下が著しく小さい挙動を示す。
【0168】
また、本発明による液晶媒体のUV安定性も大幅に向上しており、それらはUVに曝露した際のVHRの低下が著しく小さい挙動を示す。
【0169】
100℃/5分での加熱後における本発明による液晶媒体の電圧保持率VHRは、好ましくは90%より高く、特に好ましくは94%より高く、非常に特に好ましくは96%より高く、特には98%より高い。
【0170】
他に明言しない限り、VHR値は、「Merck Liquid Crystals−Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年におけるT.JacobおよびU.Finkenzellerの測定方法に関する。
【0171】
本発明による液晶媒体は、好ましくは25重量%未満、特に好ましくは15重量%未満、特には5重量%未満の、1個以上のシアノ基を含有する化合物、特に、このタイプのメソゲンまたは液晶化合物を含む。1個以上のシアノ基を含有する化合物を含まない液晶媒体が非常に特に好ましい。
【0172】
本発明による透過型MLCディスプレイは、好ましくは、グーチおよびタリーの第1次透過極小で動作し[C.H.GoochおよびH.A.Tarry、Electron.Lett.、第10巻、第2〜4頁、1974年;C.H.GoochおよびH.A.Tarry、Appl.Phys.、第8巻、第1575〜1584頁、1975年]、この場合、例えば、特性線の高い急峻性およびコントラストの低視野角依存性(ドイツ国特許第30 22 818号明細書)などの特に好ましい電気光学的特性に加え、第2次極小において類似するディスプレイと同じ閾電圧においては、より低い誘電異方性で十分である。このため、第1次極小で本発明による混合物を使用することにより、例えば、シアノ化合物を含む混合物の場合よりも、極めて高い比抵抗値を達成することが可能となる。
【0173】
本発明による反射型または半透過型MLCディスプレイは、コントラスト比および光学的分散に関して最適化され、積d・Δnの値、液晶のツイスト角Φ、基板ラビング方向に関するリターデーションフィルムの速軸および偏光板透過方向からなるパラメータの自由度において動作する。反射型MLCディスプレイの要求は、例えば、Digest of Technical Papers, SID Symposium 1998において示された。当業者は単純な通常の方法を使用し、個々の成分およびそれらの重量割合の適切な選択を通して、MLCディスプレイの予め特定された層厚に必要な複屈折率を設定できる。
【0175】
−媒体は、1〜4種類、特には1種類、2種類または3種類の式Iの化合物を含む。
【0176】
−媒体は、式I1aの1種類以上の化合物を含む。
【0177】
−混合物全体における式Iの化合物の割合は、好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜25重量%、特には4〜20重量%の範囲内である。
【0180】
−R
0は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状のアルキルまたは2〜7個の炭素原子を有するアルケニルである。
【0181】
−媒体は、式III、IV、V、VI、VIIおよび/またはVIIIの化合物を含む。
【0182】
−媒体は、式I〜VIIIおよびXXI〜XXIIIの化合物から本質的に成る。
【0183】
−混合物全体における式I〜VIIIの化合物の合計の割合は、少なくとも50重量%である。
【0184】
−媒体は、一般式I〜XXVから成る群より選択される化合物から本質的に成る。
【0185】
式I〜XXVの化合物は無色および安定であり、互いにおよび他の液晶材料と容易に混和できる。
【0186】
本発明による媒体において使用できる式I〜XXVおよびそれらのサブ式の個々の化合物は既知であるか、または、既知の化合物に類似して調製することができるかのいずれかである。
【0187】
用語「アルキル」または「アルキル
*」は、1〜7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルキル基、好ましくは、直鎖状の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを網羅する。しかしながら、2〜5個の炭素原子を有する基が、特に好ましい。
【0188】
用語「アルケニル」または「アルケニル
*」は、2〜7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルケニル基、好ましくは、直鎖状の基を網羅する。特に好ましいアルケニル基は、C
2〜C
7−1E−アルケニル、C
4〜C
7−3E−アルケニル、C
5〜C
7−4−アルケニル、C
6〜C
7−5−アルケニルおよびC
7−6−アルケニル、特に、C
2〜C
7−1E−アルケニル、C
4〜C
7−3E−アルケニルおよびC
5〜C
7−4−アルケニルである。好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニルおよび6−ヘプテニルである。しかしながら、5個までの炭素原子を有する基が、特に好ましい。
【0189】
用語「フルオロアルキル」は、好ましくは、末端フッ素を有する直鎖状の基、即ち、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルを網羅する。しかしながら、フッ素の他の位置を除外するものではない。
【0190】
用語「オキサアルキル」は、好ましくは、式C
nH
2n+1−O−(CH
2)
mの直鎖状の基を網羅し、ただし、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6である。好ましくは、nが1で、mが1〜6である。
【0191】
上および下で述べられる構造式の1つにおける基「(F)」は、FまたはHである。
【0194】
【化42】
を表し、
式中、
X
0は式Iで与えられる意味の1つを有し、X
0は、好ましくは、FまたはOCF
3である。
【0195】
R
0およびX
0の意味の適切な選択を通して、アドレス時間、閾電圧、透過特性曲線の急峻性などを所望の様式に修正することができる。例えば、1E−アルケニル基、3E−アルケニル基および2E−アルケニルオキシ基は、アルキルまたはアルコキシ基と比較して、一般に、より短いアドレス時間、改善されたネマチック化傾向および弾性定数k
33(ベンド)およびk
11(スプレイ)のより高い比を結果として与える。4−アルケニル基および3−アルケニル基は、アルキルおよびアルコキシ基と比較して、一般に、より低い閾電圧およびより小さい値のk
33/k
11を与える。
【0196】
−CH
2CH
2−基は、単共有結合と比較して、一般に、より高い値のk
33/k
11を結果として与える。より高い値のk
33/k
11によって、例えば、90°ツイストのTNセル(中間階調を達成するため)における透過特性曲線がより平坦となり、STN、SBEおよびCMIセル(より大きいマルチプレックス性)における透過特性曲線がより急峻となり、逆もまた同様である。
【0197】
式I〜XXVの化合物の最適な混合比は、所望の特性、これらの式の個々の化合物の選択、および、存在する場合もある任意の他の成分の選択に実質的に依存する。上で与えられる範囲内での適切な混合比は、場合ごとに容易に決定できる。
【0198】
本発明による混合物における式I〜XXVの化合物の総量は、決定的なものではない。従って、混合物は、様々な特性の最適化の目的のために、1種類以上の更なる成分を含むことができる。しかしながら、式I〜XXVの化合物の総濃度が高くなるほど、アドレス時間および閾電圧に関して観測される効果は一般に大きくなる。
【0199】
たとえ比較的少ない割合であっても式IおよびIIの化合物を、従来の液晶材料、しかしながら特に式III、IV、V、VI、VIIおよび/またはVIIIの1種類以上の化合物と混合することにより、結果として閾電圧が著しく低くなり、低い複屈折率の値となり、同時に低いスメクチック−ネマチック転移温度の広いネマチック相が観察され、貯蔵安定性が改良されることが見出された。
【0200】
特に好ましい実施形態において、本発明による媒体は、X
0が、F、OCF
3、OCHF
2、OCH=CF
2、OCF=CF
2またはOCF
2−CF
2Hである式II〜XVIIIの化合物を含む。式Iの化合物との好ましい相乗効果により、特に有利な特性が結果として得られる。
【0201】
偏光板、電極ベースプレートおよび表面処理された電極からの本発明によるSTNおよびMLCディスプレイの構成は、このタイプのディスプレイの通常の構成に対応する。本明細書において、通常の構成との用語は広い意味で使用され、MLCディスプレイの全ての派生および改変も網羅し、特に、多結晶シリコンTFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子、非常に特には、半透過型および反射型ディスプレイが挙げられる。
【0202】
しかしながら、本発明によるディスプレイと、ツイストネマチックセルに基づくこれまでの従来ディスプレイとの間の大きな相違点は、液晶層の液晶パラメータの選択にある。
【0203】
本発明によって使用できる液晶混合物は、それ自体従来の様式で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中で、好ましくは昇温して溶解する。また、有機溶媒中、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール中で成分の溶液を混合し、完全に混合後、例えば蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。更に、他の従来の様式、例えば、ホモログ混合物などのプレミックスを使用するか、または、例えば、所謂「マルチボトル」系を使用することにより、混合物を調製することが可能である。
【0204】
重合性化合物を液晶媒体へ個別に加えることもできるが、2種類以上の重合性化合物を含む混合物を使用することも可能である。重合性化合物は、電圧を印加してLCディスプレイの基板間でLC媒体中におけるその場重合により、重合または架橋(化合物が2個以上の重合性基を含有する場合)される。適切で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合、好ましくは、光重合、特には、UV光重合である。本明細書においては、必要に応じて、1種類以上の開始剤を加えることもできる。重合に関する適切な条件および開始剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。
【0205】
例えば、商業的に入手可能な光重合開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba社)がフリーラジカル重合に適する。開始剤を使用するのであれば、混合物全体における開始剤の割合は、好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%である。しかしながら、開始剤を添加することなく、重合を行うこともできる。更なる好ましい実施形態において、LC媒体は重合開始剤を含まない。
【0206】
また、例えば、保存または輸送中におけるRMの好ましくない自発的な重合を防止するために、LC媒体における重合性成分(即ち、RMの総量)は1種類以上の安定剤を含むこともできる。安定剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba社)の商業的に入手可能な安定剤が特に適切である。安定剤を使用する場合、RMまたは重合性成分Aの総量に基づく安定剤の割合は、好ましくは10〜5000ppm、特に好ましくは50〜500ppmである。
【0207】
また、誘電体は、当業者に既知で文献に記載される更なる添加剤を含むこともできる。例えば、0〜15%、好ましくは0〜10%の多色性色素および/またはキラルドーパント、または、UV安定剤、例えば、表Dに列記されているものを加えることができる。チバ社のUV安定剤Tinuvin770が特に好ましい。添加される個々の化合物は、0.01〜6%、好ましくは0.1〜3%の濃度において使用される。しかしながら、液晶混合物、即ち、液晶またはメソゲン化合物の他の構成成分の濃度データは、これらの添加剤の濃度を考慮せずに与えられる。
【0208】
よって、本発明は、2枚の基板(ただし、少なくとも一方の基板は光に対して透明であり、少なくとも一方の基板は電極層を有する。)と、基板の間に位置する重合された成分および低分子量成分(ただし、重合された成分は、電圧を印加してLC媒体中においてLCセルの基板間で1種類以上の重合性化合物の重合により得られ、少なくとも1種類の重合性化合物を特徴とする。)を含むLC媒体の層とから成るLCセルを含有するPS(ポリマー安定化:polymer stabilised)またはPSA(ポリマー維持配向:polymer sustained alignment)型の液晶(LC:liquid−crystal)ディスプレイに関する。
【0209】
本出願および下の例において、液晶化合物の構造は頭字語で示されており、化学式への変換は下の表AおよびBに従って行われる。全ての基C
nH
2n+1およびC
mH
2m+1は、nおよびm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖状のアルキル基である。nおよびmは、それぞれ互いに独立に、整数、好ましくは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。表Bにおけるコードは、それ自体で明らかである。表Aにおいては、親構造に関する頭字語のみが示されている。個々の場合において、親構造に関する頭字語の後に、ダッシュにより分離されて、置換基R
1、R
2、L
1およびL
2に関するコードが続く。
【0210】
【表1】
成分(B)の好ましい混合物は、式Iの1種類以上の化合物と、表AおよびBにおいて列記される化合物群より選択される1種類以上の化合物とを含有する。
【0220】
【表11】
式Iの化合物に加え、少なくとも1種類、2種類、3種類または4種類以上の化合物を含む液晶混合物が特に好ましい。
【0221】
表Cは、本発明による混合物に一般的に添加することが可能なドーパントを示す。混合物は、好ましくは0〜10重量%、特には0.01〜5重量%、特に好ましくは0.01〜3重量%のドーパントを含む。
【0223】
【表13】
例えば、本発明による混合物に0〜10重量%の量で添加できる安定剤を下に述べる。
【実施例】
【0229】
以下の例は、本発明を限定することなく説明することを意図する。
【0230】
上および下において、パーセンテージは重量パーセントである。全ての温度は摂氏度で示されている。m.p.は融点を表し、cl.p.は透明点である。更に、Cは結晶状態、Sはスメクチック相、Nはネマチック相、Chはコレステリック相、Iは等方相である。これらの記号の間のデータは、転移温度を表す。更に、以下の略称を使用する。
【0231】
Δn 589nmおよび20℃における光学異方性
n
e 589nmおよび20℃における異常光屈折率
Δε 20℃における誘電異方性
ε
‖ 分子長軸に平行な誘電率
γ
1 他に明言しない限り20℃における回転粘度[mPa・s]
V
10 閾電圧[V]、即ち、10%の相対コントラストにおける特性電圧
V
90 90%の相対コントラストにおける特性電圧[V]
VHR 電圧保持率[%]
SR 室温においてUVにX時間曝露後の比抵抗[Ω・cm]
cl.p. 透明点
SRは、G.Weberら、Liquid Crystals 5巻、1381頁(1989年)において記載される通り測定する。
【0232】
VHRは、「Merck Liquid Crystals − Physical Properties of Liquid Crystals」1997年においてT.JacobおよびU.Finkenzellerにより記載される通り測定する。
【0233】
<使用例>
<例M1>
【0234】
【表19】
上に与えられる混合物に、0.2重量%の以下の構造のポリマーを加える。
【0235】
【化43】
<比較例CE1>
E1:例M1:0.2%RM(加工済)を有する混合物
E2:例M1:RMを有さない混合物
【0236】
【表20】
【0237】
<例M2>
【0238】
【表21】
上に与えられる混合物に、0.4重量%の以下の構造のポリマーを加える。
【0239】
【化44】
このLC混合物の電気光学的特性および応答時間は、例M1について与えられるのと同様である。
【0240】
<例M3>
【0241】
【表22】
上に与えられる混合物に、
−0.4重量%の以下の構造の重合性化合物
【0242】
【化45】
および
−0.002%の開始剤、例えば、光開始剤Irgacure651
を加える。
【0243】
このLC混合物の電気光学的特性および応答時間は、例M1について与えられるのと同様である。
【0244】
<例M4>
【0245】
【表23】
上に与えられる混合物に、0.2重量%の以下の構造のポリマーを加える:
【0246】
【化46】
このLC混合物の電気光学的特性および応答時間は、例M1について与えられるのと同様である。