特許第6741102号(P6741102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741102
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20200806BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20200806BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20200806BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20200806BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20200806BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20200806BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20200806BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20200806BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200806BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20200806BHJP
【FI】
   H01L33/60ZNM
   H01L33/54
   H01L33/50
   H01L33/58
   G02B5/26
   G02B5/20
   H01L23/28 D
   F21V9/30
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】23
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-40626(P2019-40626)
(22)【出願日】2019年3月6日
(62)【分割の表示】特願2016-194077(P2016-194077)の分割
【原出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2019-135767(P2019-135767A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2019年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 崇之
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−072414(JP,A)
【文献】 特開2015−225942(JP,A)
【文献】 特開2012−151436(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096171(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/135006(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/099145(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0089453(US,A1)
【文献】 特開2015−26698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を覆い、前記発光素子からの光を波長変換する蛍光体および前記蛍光体を含有する透光性材料を有する封止部材と、
前記発光素子と前記封止部材とを収容する凹部を有するパッケージと、を備え、
前記パッケージの底部は、前記発光素子が載置され、前記発光素子の周縁を囲む露出領域と、前記露出領域の周縁を囲む被覆部材と、を有し、
前記封止部材の上面に、前記発光素子からの光の一部を透過し、かつ、前記発光素子からの光の一部を反射する第1膜が設けられ、
前記第1膜は、前記封止部材の上面の面積よりも小さく、前記発光素子の上方および前記露出領域の上方にあり、1nm以上100nm以下のナノ粒子が50%以上の体積を占め、かつ、膜厚が50nm以上1μm以下である発光装置。
【請求項2】
前記第1膜は、前記発光素子の直上にある請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1膜の全周が前記封止部材の外周縁と離れている請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、酸化チタンである請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記パッケージは、前記底部の周囲に一体に設けられて内側から外側の方向へ傾斜した側面部を備え、前記側面部と前記底部とに前記被覆部材を有し、
前記被覆部材は、前記側面部の下縁と前記底部の外周縁との間をまたぎ、前記被覆部材の内側面が凹状に湾曲するように一体に形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記被覆部材は、反射部材が含有された樹脂である請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記反射部材は、Ti,Zr,Nb,Al,Siから選択される少なくとも1つの元素の酸化物、またはAlN,MgF2,BNから選択される少なくとも1つである請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子は、400nm以上550nm以下に発光ピークを有する請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記凹部の底部が凹凸を有する請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1膜は、上面視で円形形状または楕円形状である請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1膜の面積は、前記発光素子の上面の面積の100%以上である請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記発光素子の個数が複数であり、前記発光素子の個数よりも前記第1膜の数が少ない請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記発光素子の個数が複数であり、前記複数の発光素子の上面積の和よりも、前記第1膜の面積が大きい請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
発光素子と、
前記発光素子を覆い、前記発光素子からの光を波長変換する蛍光体および前記蛍光体を含有する透光性材料を有する封止部材と、
前記発光素子と前記封止部材とを収容する凹部を有するパッケージと、を備え、
前記凹部を有するパッケージの底部に前記発光素子が載置された発光装置の製造方法であって、
前記パッケージの底部に、前記発光素子の周縁を残して被覆部材を設けることにより、前記発光素子の周縁を囲む露出領域を形成する工程と、
前記封止部材で前記発光素子と前記露出領域とを覆う工程と、
前記封止部材の上面に、前記発光素子からの光の一部を透過し、かつ、前記発光素子からの光の一部を反射する第1膜を形成する工程と、を有し、
前記第1膜を形成する工程は、1nm以上100nm以下のナノ粒子である光反射材を含有するスラリーを前記封止部材の上面の面積よりも小さくなるように前記露出領域の上方に塗布し、前記ナノ粒子が50%以上の体積を占め、かつ、膜厚が50nm以上1μm以下となるように前記スラリーを乾燥させる発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1膜は、前記発光素子の直上に形成される請求項14に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記封止部材で前記発光素子を覆う工程において、前記封止部材の上面が凹状に湾曲しており、
前記封止部材の上面は、中央の平坦部と、前記平坦部の周囲に湾曲して形成された湾曲周縁部とを有し、
前記第1膜を形成する工程において、前記スラリーを前記平坦部に塗布する請求項14又は請求項15に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子は、酸化チタンである請求項14乃至請求項16のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記第1膜は、上面視で円形形状または楕円形状である請求項14乃至請求項17のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1膜の面積は、前記発光素子の上面の面積の100%以上である請求項14乃至請求項18のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項20】
前記被覆部材は、反射部材が含有された樹脂である請求項14乃至請求項19のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項21】
前記反射部材は、Ti,Zr,Nb,Al,Siから選択される少なくとも1つの元素の酸化物、またはAlN,MgF2,BNから選択される少なくとも1つである請求項20に記載の発光装置の製造方法。
【請求項22】
前記発光素子は、400nm以上550nm以下に発光ピークを有する請求項14乃至請求項21のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項23】
前記第1膜を形成する工程は、前記スラリーの塗布と乾燥とを繰り返す請求項14乃至請求項22のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光ダイオード素子と、発光ダイオード素子を封止し、かつ、表面に粘着性を有するシリコーン樹脂と、シリコーン樹脂のほぼ全面に付着した微粒子と、を有する発光ダイオード装置が開示されている。微粒子は顔料粒子、染料によって着色された粒子、蛍光体粒子のいずれかであり、SiO、Al、AlN、TiO等が用いられている。この微粒子をシリコーン樹脂のほぼ全面に付着させることでゴミ等の付着による発光ダイオード装置の光度低下を低減できるという効果を有する。
【0003】
特許文献2には、発光素子の周りに発光素子から発する励起光を効率良く前方に出射するように設けられた側面反射部材と、側面反射部材上に形成された第一の波長変換層と、基板上に発光素子を覆うように形成された第二の波長変換層と、この第二の波長変換層の一部を覆う対向反射部材と、側面反射部材よりも内方に発光素子を取り囲むように発光素子の周囲に設けられた内周反射部材と、を備える発光装置が開示されている。この発光装置において、発光素子から発光した光は内周反射部材により上方に反射され、さらに対向反射部材により下方に反射され、側面反射部材により外部に出射する光の経路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141051号公報
【特許文献2】特開2007−221044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成では、ゴミの付着を低減するため、シリコーン樹脂の全面に微粒子を付着させる必要があるため、光度が低下するおそれがある。
【0006】
また、特許文献2の構成では、発光素子から発光した光の全ては内周反射部材若しくは対向反射部材に照射され、直接、外部に放出されることはない。つまり、発光素子からの光は全て対向反射部材により遮られるため、発光装置からの光度が低下するとともに、色調を改善する余地がある。
本開示に係る実施形態は、光量の低下を抑制しながら、色調補正が可能な発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る発光装置は、発光素子と、発光素子からの光を波長変換する蛍光体および蛍光体を含有する透光性材料を有し、発光素子を覆い、上面が凹状となるように湾曲している封止部材と、封止部材の上面に配置され、発光素子からの光の一部を透過し、かつ、発光素子からの光の一部を反射する第1膜と、を備え、第1膜の外周縁と、封止部材の外周縁とは、少なくとも一部が離間している。
【発明の効果】
【0008】
実施形態に係る発光装置によれば、光量の低下を抑制しながら、色調補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る発光装置を示す概略平面図である。
図2】第1実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
図3】第1実施形態に係る発光装置の一部を拡大した概略断面図である。
図4】第1実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
図5】第2実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
図6】第3実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
図7】第4実施形態に係る発光装置を示す概略平面図である。
図8】第4実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
図9】参考例に係る発光装置を示す概略断面図である。
図10】実施例に係る発光装置の特性を示すグラフである。
図11】実施例に係る発光装置の特性を示すグラフである。
図12】実施例に係る発光装置の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1実施形態の発光装置について図面を用いて説明する。
ただし、以下に示す形態は、第1実施形態の技術思想を具現化するための発光装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。そして、図面に示す部材は、説明を明確にするために、大きさや位置関係等を誇張していることがあり、形状を単純化していることがある。また、以下の説明では、同一の名称および符号については原則として同一または同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略することとする。
【0011】
また、第1実施形態に係る発光装置において、「上」、「下」、「左」および「右」などは、状況に応じて入れ替わるものである。本明細書において「上」、「下」などは、説明のために参照する図面において構成要素間の相対的な位置を示すものであって、特に断らない限り絶対的な位置を示すことを意図したものではない。
【0012】
[発光装置の構成]
第1実施形態に係る発光装置10について、図1図4を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る発光装置10を示す概略平面図である。図2は、第1実施形態に係る発光装置10を示す概略断面図であり、図1のII−II線に沿った位置での断面図である。図3は、第1実施形態に係る発光装置10の一部を拡大した概略断面図である。図4は、第1実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
発光装置10は、発光素子1と、包囲体としてのパッケージ2と、発光素子1を覆う封止部材5と、封止部材5の上面に配置される第1膜7と、を備えている。封止部材5の上面は凹状となるように湾曲している。第1膜7の外周縁と封止部材5の外周縁とは少なくとも一部が離間している。ただし、ここでは、第1膜7の外周縁と封止部材5の外周縁とは全部が離間している状態を説明する。
【0013】
発光素子1は正負のパッド電極であるn側電極およびp側電極を有しており、n側電極、p側電極はワイヤを用いてそれぞれ対応するリード電極と電気的に接続されている。
封止部材5は、発光素子1からの光を波長変換する蛍光体6および蛍光体6を含有する透光性材料8を有する。第1膜7は、発光素子1からの光の大部分を透過し、かつ、発光素子1からの光の一部を反射する。また、第1膜7は蛍光体6からの光の大部分を透過する。第1膜7を透過する発光素子1からの光の大部分とは90%以上であればよく、95%以上が好ましく、97%以上が特に好ましい。この第1膜7によって反射された光が蛍光体6に照射され、発光素子1からの光と異なる波長の光を放出する。これによって、発光装置10の光量を維持しつつ、発光色を微調整することができる。
パッケージ2の凹部2aの底部2bが平坦であると、発光素子1から出射された光や第1膜7によって反射された光の一部は、パッケージ2の凹部2aの底部2bで反射され、外部に放出される。パッケージ2の凹部2aの底部2bを鏡面とすることにより、反射効率を向上させることができる。
一方、パッケージ2の凹部2aの底部2bと、封止部材5の上面と、がほぼ平行となる場合は、発光素子1から出射された光や第1膜7によって反射された光の一部は、パッケージ2の凹部2aの底部2bと封止部材5の上面との間で反射が繰り返されることがある。そのため、凹部2aの底部2bを荒らしたり、凹凸をつけたりして反射の繰り返しを低減することもできる。
【0014】
以下、発光装置10の各構成について説明する。
[パッケージ]
パッケージ2は略直方体を成し、上面視におけるパッケージ2の外形形状が略長方形状を成している。パッケージ2は、発光素子1および封止部材5を収容する凹部2aを有し、底部2bと、側面部2cとにより、上面を開口させた形状に形成されている。パッケージ2は、底部2bの略中央部に発光素子1が設けられるように、リード電極が設置されている。
この底部2bの周囲には、凹部開口における上面縁2dに連続して、内側から外側の方向へ傾斜した側面部2cが一体に設けられている。
パッケージ2は凹部2aを備えていない板状の基板でもよい。例えば、板状の基板に枠体を形成し封止部材及び第1膜を形成後、枠体を除去することにより、板状の基板に封止部材と第1膜を備える発光装置を提供することができる。
パッケージ2の外形形状や凹部の内面形状は上面視で正方形に限られず、長方形や三角形、六角形などの多角形形状でもよく、円形、楕円形若しくは長円形なども適用できる。
またパッケージ2に用いられる樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂の場合、例えば、ポリフタルアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、不飽和ポリエステルなどを用いることができる。熱硬化性樹脂の場合、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂などを用いることができる。例えば、パッケージ2は酸化チタン等の反射材を含有するポリフタルアミド樹脂等び熱可塑性樹脂を用いて射出成形を行うことにより成形することができる。また、異なる形態として、パッケージ2は酸化チタン等の反射材を含有するエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてトランスファーモールドを行い成形することができる。
そして、パッケージ2の底部2bおよび側面部2cは、パッケージ2の上方に向けて反射させるように反射部材を含有していることが好ましい。反射部材としては、Ti,Zr,Nb,Al,Siの酸化物や、AlN,MgF,BN等を適用することができ、酸化チタン(TiO)が好ましい。また反射部材の他に強度を持たせるための強化材やフィラー、光拡散材などを入れてもよい。
また、パッケージ2は樹脂に限られず、アルミナ、窒化アルミニウムのようなセラミックスを用いることもできる。
【0015】
[発光素子]
発光素子1は、発光ダイオード(Light-emitting diode:LED)素子や半導体レーザ(Laser diode:LD)素子などの半導体発光素子を用いることができる。発光素子1の上面視形状は四角形のものを用いて説明する。四角形としては、正方形または矩形であることが好ましい。一般に市販されている安価な材料を使用することができるからである。ただし、発光素子1の上面視形状は四角形に限られず、例えば五角形、六角形、七角形、若しくは八角形などその他の形状にすることもできる。発光素子1の中心から外形までの最短距離、最長距離の差が小さくなるように、正五角形、正六角形、正七角形、若しくは正八角形にすることが好ましい。つまり正方形の発光素子1と同面積の正八角形の発光素子1とを比べた場合、発光素子1の中心から外形までの最短距離、最長距離の差が、正方形よりも正八角形の方が小さくなるため、第1膜7の上面視形状が円形である場合、第1膜7の大きさをより小さくすることができる。これにより発光素子1に形状に合わせた第1膜7とすることができ、光取り出し効率を向上することができる。
さらに、発光素子1の外側面1bは、上面1aに対してほぼ垂直であってもよいし、内側または外側に傾斜していてもよい。
【0016】
発光素子1の厚さ方向寸法は、例えば0.02mm以上1mm以下であり、発光素子1の強度などの観点において、0.05mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
例えば、この第1実施形態では、発光素子1として、平面形状が一辺650μmの正方形、厚さ方向寸法が200μm、発光ピーク波長が420nmの窒化ガリウム系半導体を用いている。発光素子1は、種々の半導体で構成される素子構造と、正負一対の電極と、が設けられているものであればよい。例えば、特に蛍光体6を効率よく励起可能な窒化物半導体(InAlGal−x−y、N,0≦x、0≦y、x+y≦1)の発光素子1が好ましい。
【0017】
発光素子1の直上を第1膜7で覆っていればよく、1つの発光装置10に実装される発光素子1の個数は1つでも複数でもよい。ただし、複数の発光素子1に対して、複数の第1膜7としてもよいが、発光素子1の個数よりも少ない数の第1膜7とすることもできる。例えば、2つの発光素子1に対して、2つの発光素子1の直上を覆う1つの第1膜7を設けても良い。この場合、2つの発光素子1の上面積の和よりも、第1膜7の面積が大きくなるが、1つの第1膜7とすることで2以上の第1膜を設けるよりも配向を制御しやすくできる。
また、発光素子1の大きさは、特に限定されず、一辺が300μm、500μm、1mmなどの正方形のものや、300μm×500μmや500μm×650μmなどの長方形のものも使用することができる。
さらに、発光素子1の発光波長は、蛍光体6を励起するために使用される波長域のものを使用することが好ましい。発光素子1は400nm〜550nmに発光ピークを持つものが好ましい。ただし、蛍光体6を励起しない、若しくは、励起がほとんど行われない波長域の光を発する発光素子1を使用してもよい。発光素子1からの光を第1膜7で一部反射するため、発光素子1から直接外部に放出される光の量を減らし、蛍光体6等に照射して蛍光体6からの光量を増やすことで、色調補正することができるからである。
または、発光素子1を封止部材5のみで覆った場合、発光素子1からの光は封止部材5と空気との界面において数%の反射が生じる。この界面での反射により、発光素子1からの光が再び蛍光体6に照射される。それに対し、封止部材5の上面に第1膜7を形成することで、数%であった反射がさらに低減され、発光素子1からの光を第1膜7で透過し易くし、発光素子1から直接外部に放出される光の量を増やし、かつ、封止部材5の界面で反射していた戻り光を低減することで、蛍光体6に照射される光量を減らし、蛍光体6からの光量を減らすことで色調補正することができる。
例えば、1つの発光装置10に赤色、緑色、青色発光の発光素子1が実装されていてもよい。複数の発光素子1は、不規則に配置されていてもよいが、行列や同心円状など規則的に、または、周期的に配置されることで、好ましい配光が得られやすい。また、複数の発光素子1は、実装基体の導電部材やワイヤにより直列または並列に接続できる。
【0018】
[封止部材]
パッケージ2の凹部2a内には、蛍光体6を含有する封止樹脂が充填されて封止部材5が形成されている。封止部材5は、発光素子1およびワイヤを覆い、上面が凹状となるように湾曲している上面部5aを有している。上面部5aには、中央に位置する平坦部5bと、平坦部5bの周囲に設けられた湾曲周縁部5cとが設けられている。湾曲周縁部5cは、中央の平坦部5bから、封止部材5の周縁に向かって所定の角度で傾斜あるいは湾曲して形成される。
【0019】
また、封止部材5の上面部5aは、上面視長方形形状となるように形成されている。そして、封止部材5の上面部5aの面積は、発光素子1の上面1aの面積よりも大きくなるように、好ましくは、10倍(1000%)以上となるように形成されている。封止樹脂は、パッケージ2の内側に充填される透光性材料を硬化させて透明な封止部材5を得るため、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。封止部材5は、特にガラス転移温度が室温以下のものであれば、常温で軟質であり第1膜7との親和性が良好である。
透光性材料8は、トリアジン誘導体エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、若しくは軟質または硬質のシリコーン樹脂、硬質シリコーンレジン、エポキシ変性シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂の単独または2種以上の組成物よりなるケイ素含有樹脂などを用いるのが好ましい。但し、封止部材5は、その他のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂でもよい。封止部材5は、蛍光体6を含有している。
【0020】
蛍光体6は、発光素子から照射される1次光の少なくとも一部を吸収して、1次光とは異なる波長の2次光を出射する。蛍光体6は、例えば、ユーロピウム、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体を用いることができる。そして、蛍光体6は、より具体的には、ユーロピウムで賦活されたαまたはβサイアロン型蛍光体、各種アルカリ土類金属窒化シリケート蛍光体、ユーロピウム等のランタノイド系元素、マンガン等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属のハロシリケート蛍光体、アルカリ土類金属シリケート蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属チオガレート、アルカリ土類金属窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩、またはユーロピウム等のランタノイド系元素で主に賦活される有機物および有機錯体等が挙げられる。
また、上記以外でも同様の性能、効果を発揮する蛍光体6を使用することもできる。なお、蛍光体6は、パッケージ2の底部2b側または発光素子1側に偏在していてもよいし、あるいは、封止部材5内において分散されていてもよい。
【0021】
[第1膜]
第1膜7は、外縁の一部が封止部材5の外周縁から少なくとも一部が離間するように封止部材5の上面部5aに設けられている。そして、第1膜7は、発光素子1からの光の一部を透過し、光の他の一部を反射するように形成されている。この第1膜7は、封止部材5の上面部5aのうち中央となる平坦部5bに設置されることで、ここでは、封止部材5の外周縁から離間するように配置されている。第1膜7は、薄膜状を呈していて、封止部材5の上面部5aのうち発光素子1の直上に上面(光取り出し面)1aと対向して配置されている。第1膜7の面積は、封止部材5の上面部5aの面積よりも小さく、発光素子1の上面1aの面積と同等以上に大きく形成されている。封止部材5の上面部5aの面積は、例えば発光素子1の上面1aの面積の1000%以上である場合、第1膜7の面積が発光素子1の上面1aの面積の100%以上800%以下の範囲としている。前記のような範囲とすることで第1膜7によって上面部5aの全面が覆われないようにしている。
【0022】
第1膜7は、密度に応じて反射率を増減させる複数の光反射材20を含むように形成されている。また、光反射材20は、酸化チタンでコートされたナノ粒子によって構成されている。ナノ粒子は、例えば、粒径が1nm以上100nm以下の粒子である、と定義することができる。また、ナノ粒子を光反射材20として含む第1膜7は、粒子状の材料を溶媒に分散させたスラリーをディスペンサータイプの塗布機を用いて塗布して形成することができる。ディスペンサータイプの塗布機は、一回のスラリーの塗布量を一定とすることができる。このため、塗布機から塗布された溶媒は、上面部5aの平坦部5bの表面に倣って拡がり、上面視円形形状または楕円形形状を呈する、均等な膜厚の第1膜7となる。第1膜7に含まれる一定量の光反射材20は、上面部5aに塗布された面内にて均等な密度に拡散される。さらに、第1膜7は、平坦部5bの外側に位置する湾曲周縁部5cの傾斜によって、不必要な広がりが抑制される。
【0023】
なお、第1膜7として乾燥して均一化された後のナノ粒子は、乾燥する前のナノ粒子と比較して、粒径が大きくなることがある。このため、スラリーとして塗布する際に使用するナノ粒子の粒径は、第1膜7内に含有され乾燥された後のナノ粒子と比較して小さなサイズのものを使用することが好ましい。また、ナノ粒子の粒径は、顕微鏡観察やBET法等により測定することができ、大きさは平均値または中央値で定義することができ、小さいほど透明性が高くなって、伝播する光の減衰が抑制される。第1膜7中のナノ粒子の粒径は、80nm以下であり、好ましくは約15nm以上30nm以下とすることができる。ここでの粒径は1次粒子径を意味する。
【0024】
また、第1膜7におけるナノ粒子が光反射材20として体積を占める割合(充填率)は50%以上であることが好ましい。20〜30nmのナノ粒子によって形成される第1膜7は、膜厚が500nmを超えることもあるが含有量が100%に近いほど、反射率等の特性がナノ粒子の材料に近いものになり易い。さらに、第1膜7の膜厚が1μmを超えるとひび割れしやすいことが知られている。このため、第1膜7は、膜厚を50nm以上1μm以下の範囲内となるように形成することが好適である。
【0025】
酸化チタンを用いた第1膜7の屈折率は、2.7であり、シリコーン樹脂を用いた封止部材5の屈折率は、1.53であるため、第1膜7の屈折率は封止部材5の屈折率よりも高くなるように設定されている。このため、開放領域30の直下へ戻る戻り光r1の光量を増大させて、開放領域30から射出される色調が変換された光r2の光量をさらに増やすことができる。
【0026】
第1膜7は、ナノ粒子以外に、例えばバインダとして樹脂、分散剤または空気を、ナノ粒子同士の間隙に介在させて形成されていてもよく、ナノ粒子の充填率が低いほどこれらの物質によって通過率が影響されやすい。また、ナノ粒子を光反射材20として上面部5aに倣わせて薄膜状に均質化して付着させることで、スラリーを厚く塗布することなく、酸化チタンの粒子そのものによる反射膜としての第1膜7を形成し、所望の反射率を得られる。そのため、第1膜7では、分散剤を使用することで、スラリー中のナノ粒子を上面部5aに倣わせて薄膜状に均質化して付着させることとしてもよい。
【0027】
光反射材20としてのナノ粒子を分散させる分散剤は、主に液体である。分散剤の一例として、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、ヘキサン、プロパノール、石油ベンジン、ガソリン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、二硫化炭素、アセトニトリル、ジエチルアミン、ニトロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、フッ素系溶剤などが好ましい。フッ素系溶剤としてハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)が挙げられる。また、分散剤として混合溶剤を使用することもできる。特に、第1膜7のような透光性材料を膨潤させる作用のある液体を用いることで、ナノ粒子を透光性材料の内部に含浸させやすく、親和性を向上させやすい。
【0028】
また、第1膜7を形成するためのスラリーを構成する希釈溶剤は、一例としてトルエンを用いたが、特にこれに限定されずイソプロピルアルコール、エタノールの何れかを用いてもよい。希釈溶剤としては、封止部材5との相性などによりナノ粒子が凝集する等、反射膜が形成できないものでなければ、スラリーおよび封止部材5との相性を考慮して、どのようなものであってもよい。
なお、上記に挙げた分散剤や希釈溶剤は一例であって、同じ材料のものを分散剤として用いても良いし、希釈溶剤として用いることもできる。
【0029】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。
はじめに、所定形状となるように金属板からリードフレームを打ち抜き形成し、金型を用いて凹部2aを有するパッケージ2をリードフレームと一体に形成する。
そして、パッケージ2の凹部2a内の底部2bに分離して露出しているリードフレームの一方に発光素子1をダイボンドする。さらに、ダイボンドした発光素子1にワイヤにより一方と他方のリードフレームに電気的に接続する。
続いて、パッケージ2の凹部2a内に蛍光体6を含有する封止部材5を、例えば、滴下装置等により充填する。封止部材5は、硬化したときに、凹部2aにおいて上面部5aが凹状となるように湾曲するような充填量が凹部2a内に充填される。また、パッケージ2の凹部2aの上面まで封止部材5を滴下し、透光性材料8の縮合反応などにより封止部材5の上面部5aを凹状としてもよい。また、パッケージ2の凹部2aの上面より少し下の位置まで封止部材5を滴下し、封止部材5の凹部2aの側面への這い上がりにより封止部材5の上面部5aを凹状としてもよい。封止部材5の上面部5aにおいて、中央の平坦部5bと、その平坦部5bの周囲の湾曲周縁部5cとを設ける場合には、充填量を調整することで形成することができる。また、平坦部5b及び湾曲周縁部5cは、封止部材5を充填した後に、押圧あるいは切削等の機械的処理により設けられる構成としても構わない。
続いて、パッケージ2の周囲の境界線に沿って切断して個片化されることで第1膜7が形成される前の発光装置が形成される。この発光装置に電流を印加して色調を測定する。
【0030】
そして、所定の色調範囲から外れた領域で発光する場合、封止部材5の上面部5aに第1膜7を形成する。第1膜7は、ディスペンサータイプの塗布機を用いて、上面部5aにスラリーを塗布し、その後乾燥することで形成される。塗布量に応じて第1膜7の厚みや大きさを変更できるため、所望の厚みや大きさにすることができる。なお、自然乾燥させた後、封止部材5の封止樹脂に膨潤しているトルエンを完全に乾燥させるため、例えばオーブンに入れることとしてもよい。また、必要に応じて、塗布と乾燥とを繰り返すことにより、複数の膜を積層した第1膜7を形成することができる。そして、形成された第1膜7は、封止部材5の外周縁から離間した状態で形成されることになる。
これにより、第1膜7が形成された発光装置10を形成することができる。
【0031】
発光装置10において、ディスペンサーを用いて所定の面積比となるように、発光素子1の上面1aにスラリーの分量を調整して塗布することにより、開放領域30が第1膜7の外周縁7aの周囲に沿って形成することができる。
そのため、発光装置10では、第1膜7を生成する際のスラリー濃度、あるいは、塗布回数を変更して、第1膜7の厚さを調節することができ、狙い通りの色調補正を行いつつ、光束量を低下させることなく半田耐熱性を向上させることができる。
また、発光素子1からの光は、外周縁7aと外周縁5dとの間の開放領域30から外部に照射されて光量の低下が抑制される。一方、第1膜7で反射された光は、凹部2a内の蛍光体6によって波長変換される。
波長変換された光は、未膜開放領域30を通過して外部に照射される。発光装置10では、第1膜7によって覆われている部分が上面部5aの中央の一部に限られるため、第1膜7を通過する光の色調および光量への影響は限定的となる。
【0032】
したがって、発光装置10では、分散剤などの熱変色の影響を減少させて所望の光量を確保しながら、所望の色調補正量を確保することができる。このため、第1膜7の位置および面積、スラリー濃度によって色調補正量を狙い通りとなるように調整することにより、他の発光装置10との色調のバラツキを減少させることが可能となる。
【0033】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る発光装置について図5を用いて説明する。
図5は、第2実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。第2実施形態の発光装置110においては、第1実施形態の発光装置10の第1膜7よりも膜厚を増大させた第1膜27を設けている。なお、第1実施形態と同一若しくは均等な部分については、同一符号を付して説明を省略することもある。
第2実施形態における第1膜27は、第1実施形態における第1膜7に相当する複数の膜を積層して厚膜状に形成されている。例えば、この第1膜27は、第1膜7の1.1倍から10倍程度、好ましくは2倍から5倍程度の厚膜を有して形成される。このため、層内の光反射材は均一に保たれて凝集などにより、分布の偏りが発生する虞をさらに減少させることができる。したがって、層内の光反射材の数を増やすことができるため、封止部材5内へ戻る反射光を増大させることができる。また、ディスペンサータイプの塗布機を用いて、上面部5aにスラリーを塗布する場合は、塗布回数によって第1膜7の膜厚を容易に調整できる。また、1層あたりの塗布量を所定範囲に抑えることができるため、第1膜27の濡れ拡がりを抑制することができる。
他の構成および作用効果については、第1実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0034】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る発光装置について図6を用いて説明する。図6は、第3実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。
第3実施形態の発光装置210においては、第1膜37の周囲に第2膜としての透過膜40を形成した状態を模式的に示す。なお、第1実施形態と同一若しくは均等な部分については、同一符号を付して説明を省略することもある。
この透過膜40は、封止部材5の上面部5aであって第1膜37の外周縁37aと封止部材5の外周縁5dとの間に配置されている。
この透過膜40は、ナノ粒子の酸化ケイ素(SiO)で構成されていて、透過膜40の屈折率(1.46)は、封止部材5を構成する透光性材料8の屈折率(1.53)よりも低く設定されている。また、透過膜40の屈折率(1.46)は、第1膜37の屈折率(2.7)とは異なる値にて低くなるように設定されている。このように第1膜37の外周を第2膜で覆うことにより、封止部材5と空気との間で反射されていた光を効率良く外部に取り出すことができる。これにより発光装置210として光取り出し効率を向上させることができる。
【0035】
このように構成された発光装置210では、封止部材5の上面部5aのうち、第1膜37の外周縁37aと封止部材5の外周縁5dとの間が酸化シリコーンで構成される透過膜40によって覆われている。
透過膜40には、粒子状のシリカが含有されているため、発光装置210の表面にゴミが付着しにくく、光量の低下を抑制することができる。
【0036】
一般に封止部材5の屈折率(1.53)よりも高屈折の材料は、空気との屈折率差が大きくなり、戻り光量が多くなってイエローシフトする。
また、封止部材5の屈折率(1.53)よりも低屈折の材料は、空気との屈折率差が小さくなり、戻り光量が少なくブルーシフトする。
このため、第1膜37の厚さを調整することと併せて、もしくは単独で第1膜37の面積に対する透過膜40の面積比を調整することにより、更に容易に色調補正を行うことができる。
他の構成および作用効果については、第1,第2実施形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0037】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る発光装置について図7図8を用いて説明する。図7は、第4実施形態に係る発光装置を示す概略断面図である。図8は、第4実施形態に係る発光装置を示す図7中VIII―VIII線に沿った位置での概略断面図である。なお、第1実施形態と同一若しくは均等な部分については、同一符号を付して説明を省略することもある。
【0038】
この発光装置310では、パッケージ2の凹部2aのうち、底部2bまたは側面部2cの少なくとも一部が白樹脂50によって覆われている。白樹脂50は、白色の反射材が含有された樹脂を示す。反射材としては、Ti,Zr,Nb,Al,Siの酸化物やAlN,MgF,BN等を適用することができ、酸化チタン(TiO)が好ましい。
すなわち、白樹脂50は、凹部2aのうち、側面部2cの下縁から底部2bの外周縁との間を跨ぎ、内側面が凹状に湾曲するように一体に形成されて、白樹脂50で覆われた部分の上面には、底部2bから所定の角度αで傾斜する反射面52が形成される。反射面52の所定の角度αが約1度以上70度以下程度、好ましくは約3度〜60度となるように設定されている。更に、反射面52は、上面を凹とするように湾曲して形成されている。
ここでの角度αは、上面が湾曲となっている反射面52の場合、断面視において反射面52の接線と凹部2aの底部2bとの角度のことを指す。
【0039】
また、底部2bの上面は、中央に位置する発光素子1の周縁を略方形状に残して、白樹脂50によって覆われている。そして、白樹脂50で覆われていない露出領域51の直上が円形の第1膜7によって覆われている。露出領域51の面積は、発光素子1の上面1aの面積よりも大きいため、露出領域51の上方を覆うようにスラリーを塗布することにより、発光素子1の直上が円形の第1膜7によって確実に覆われるように形成されている。
【0040】
この際、第1膜7の面積を発光素子1の直上を覆う最小限に設定することにより、第1膜7に覆われていない外周縁を広く設けることができる。これにより第1膜7で覆われていない外周縁からの光取り出し効率を向上することができる。また、発光素子1を囲むように白樹脂50を形成することで、発光素子1の上方かつ、第1膜7に光が集まりやすくなる。このため、第1膜7の面積を拡げることなく色調調整を行うことができる。また、第1膜7の面積を小さくすることができるため、発光装置310からの光量を低減するのを抑制することができる。
正方形又は矩形の発光素子1を用いる場合、発光素子1の対角線の長さが、略円形の第1膜7の直径以上であることが好ましい。これにより発光素子1の上面を第1膜7で覆うことができる。
【0041】
また、発光装置310は、第1膜7を直上に有する白樹脂50で覆われていない平坦な露出領域51の面積を減少させて、発光素子1からの照射光が第1膜7と凹部2aの底面との間で反射される繰り返しの回数を減少させることにより、反射による光束低下を低減することができる。
【0042】
そして、白樹脂50の開放領域30側の上面には、底部2bに対して所定の角度αを有する反射面52が形成されている。このため、発光装置310から照射された光は、さらに良好な効率で開放領域30から外部に照射されて、少ない回数の反射で外部に照射される光量を増加させることができる。
【0043】
このように第4実施形態の発光装置310では、第1膜7を通過する光の色調および光量への影響は限定的となり、変色の影響を受けにくくなるため、半田耐熱性が改善する。また、白樹脂50に形成された反射面52によって開放領域30から外部に照射される光量をさらに増加させることができる。
したがって、第4実施形態の発光装置310では、第1膜7の面積を小さくしても、効率良く色調補正を行うことができる。
【0044】
また、発光装置310は、パッケージ2の凹部2aのうち、底部2bおよび側面部2cが白樹脂50によって覆われているため、少ない回数の反射で外部への照射光量を増加させることができ、参考例に比して第1膜7の変色が抑制され、第1膜7のスラリー濃度を高く設定しても半田耐熱性を良好なものとすることができる。
他の構成および作用効果については、第1〜第3実施形態と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0045】
なお、本発明は前記した構成の第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。また、第1〜第4実施形態の構成の一部を他の第1〜第4実施形態の構成に置き換えることが可能であり、例えば以下のようなものである。
【0046】
また、例えば、この第1実施形態の発光素子1の第1膜7の面積は、封止部材5の上面部5aの面積の約14%に設定されている。しかしながら、特にこれに限らず、封止部材5の上面部5aの面積の10%以上50%以下の範囲が特に好ましく、第1膜7の周囲に第1膜7が存在しない開放領域30を形成できる比率であればよい。
また、封止部材5の上面部5aの面積は、発光素子1の上面1aの面積よりも大きく、開放領域30を形成できればよい。また、上面部5aの面積は、さらに好ましくは、発光素子1の上面1aの面積の1000%以上であれば、第1膜7の面積を100%以上800%以下とすることができるため、さらによい。
【0047】
さらに、この第1〜4実施形態では、第1膜7の外周縁に沿って全周に開放領域30が設けられているがこれに限らず、部分的に外周縁7aが封止部材5の外周縁5dと接触していてもよく、少なくとも一部が離間されていればよい。
【0048】
このほか、発光素子1は、緑色〜赤色発光のガリウムヒ素系、ガリウム燐系半導体の発光素子であってもよい。また、白色系発光の発光装置10とする場合には、蛍光体6から出射される波長変換光との混色関係を考慮すると、発光素子1の発光波長は400nm以上530nm以下であることが好ましく、420nm以上490nm以下であることがより好ましい。
【0049】
発光素子1は、素子構造を構成する半導体の結晶を成長可能な結晶成長基板としてもよいし、あるいは結晶成長用基板から分離した素子構造に接合させる接合用基板であってもよい。
結晶成長基板の透光性部材としては、サファイヤ、スピネル、窒素ガリウム、窒素アルミニウム、シリコーン、炭化ケイ素、ガリウムヒ素、ガリウム燐、インジウム燐、硫化亜鉛、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、ダイヤモンドなどが挙げられる。但し、基板は省略することもできる。
また、正負一対の電極が同一面側に設けられている発光素子1の場合、その構造は、各電極がワイヤで導電部材と接続されるフェイスアップ実装でもよいし、あるいは、各電極が導電性接着剤で実装基体の導電部材と接続されるフェイスダウン(フリップチップ)実装であってもよい。
【0050】
また、発光素子1の実装面側には、銀やアルミニウムなどの金属層や誘電体反射膜が設けられる構成としてもよい。
さらに、封止部材5は、発光素子1に接触する位置に設けられている。しかしながら、特にこれに限らず封止部材5は、発光素子1の直上を覆うものであれば、発光素子1に対して離間して設けられていてもよい。
【実施例】
【0051】
次に、本実施形態に係る発光装置の実施例について図1乃至4を用いて説明する。図9は、参考例2〜4の発光装置を示す概略断面図である。
【0052】
[実施例1、参考例1〜4]
実施例1に係る発光装置は、第1実施形態で説明した発光装置と同様の構成を有する。同様の構成を有する部分については説明を省略することもある。
実施例1に係る発光装置は、上面視において略正方形形状の発光素子1と、発光素子1が載置されるパッケージ2と、発光素子1を覆い、上面が凹状となるように湾曲している封止部材5と、封止部材5の上面の一部に配置され、発光素子1からの光の一部を透過し、かつ、発光素子1からの光の一部を反射する第1膜7と、を備える。パッケージ2は日亜化学工業株式会社製NFSW757Dを使用する。第1膜7は上面視においてパッケージ2の凹部2aの略中央に設けられている。第1膜7の上面視形状は略円形であり、発光素子1の直上を覆っている。第1膜7の直径は発光素子1の対角線の約1.5倍である。封止部材5は、発光素子1からの光を波長変換する蛍光体6および蛍光体6を含有する透光性材料8を有している。蛍光体6はYAG蛍光体である。第1膜7の外周縁と、封止部材5の外周縁とは、離間している。
【0053】
実施例1の発光装置は、封止部材5の上面部5aに第1膜7を、ディスペンサータイプの塗布機を用いて、上面部5aにスラリーを塗布することで形成した。スラリー原液は、酸化チタンの濃度が15wt%(重量部)として、実施例1では0.3wt%になるまで希釈溶剤で希釈した。酸化チタンは約15〜20nmのナノ粒子を用いる。希釈溶剤としてのトルエン(85%)に、分散剤としてのエタノール(15%)を加えたものを用いる。スラリーの塗布量は、ここでは塗布機の円形開口部から吐出されたスラリーが上面部5aの中央の平坦部5bに、0.03mg/shotとして吹付けることで塗布し、その後、希釈溶剤を揮発させて自然乾燥させ第1膜7を形成した。
【0054】
一方、参考例1の発光装置は、第1膜を設けていない。実施例1の発光装置と参考例1の発光装置とは、第1膜の有無以外、同じ構成をしている。参考例2〜4の発光装置は、封止部材5の全面に第1膜17を配置している。実施例1の発光装置と参考例2〜4の発光装置は、第1膜の構成以外、同じ構成をしている。参考例2発光装置の第1膜17は0.05wt%に、参考例3の発光装置の第1膜17は0.1wt%に、参考例4の発光装置の第1膜17は0.2wt%に、なるまで希釈溶剤で希釈した。
【0055】
[色調シフト量と光束量]
図10は、実施例1、参考例1〜4に係る発光装置の特性を示すグラフである。図10では、参考例1の発光装置の第1膜なしの状態を基準として、この基準値からの乖離量を比較している。この乖離量として、光束の減衰率(0%)と、色調シフト量(Δx=0)とを測定している。なお、図10において、Δxの値は、CIE(国際照明委員会)で規定されるXYZ表色系に基づいて算出される色度値である。
【0056】
この試験では、積分球が用いられて、実施例1、参考例1〜4の各発光装置の光束量(lm)と色度(x,y)とを測定する。実施例1及び参考例2〜4の各発光装置は、参考例1の発光装置との差分から、光束の減衰率(絶対値比%)、色調シフト量(Δx,Δy)を求めた。光束量は折れ線であり、グラフの右側に絶対値比%を表している。色調シフト量(Δx)はグラフの左側に数値を表している。
【0057】
試験結果から、参考例2から参考例4へ第1膜17のスラリー濃度が高くなるに従って、光束は低下している。これは第1膜17の酸化チタンの量が多くなっているため、発光素子1からの出射された光の一部が封止部材5の全面を覆う第1膜17で反射され、パッケージ2の凹部内に戻され、光の減衰が起きたためである。
また、参考例2から参考例4へ第1膜17のスラリー濃度が高くなるに従って、色調シフト量(Δx)を大きくすることができる。これは第1膜17の酸化チタンの量が多くなっているため、発光素子1からの出射された光の一部が封止部材5の全面を覆う第1膜17で反射され、パッケージ2の凹部内に戻され、パッケージ2の凹部内の蛍光体6に照射され、蛍光体6の光量が多くなっているためである。
よって、所望の色調を得るため、高い濃度のスラリーを塗布して、色調シフト量を大幅に変化させると光束が低下してしまうということが試験結果から判断できる。
【0058】
それに対し、実施例1の発光装置では、参考例1と同程度の光束を維持することができ、かつ、色調シフト量を大きくすることができる。これは、実施例1の発光装置では、光量が多い発光素子1の直上のみに第1膜7を設けており、第1膜7の外周縁には第1膜を設けない開放領域30が形成されているため、発光素子1から出射された光の一部が第1膜7で反射されるが、発光素子1から出射された光の一部は開放領域30から外部に放出されるため、光束量の低下が少ない。また、第1膜は発光素子1からの光の大部分を透過することができる膜であるため発光素子1からの光量の低下を抑えることができる。
また、発光素子1から出射された光の一部が発光素子1の直上の第1膜7で反射され、パッケージ2の凹部内に戻され、パッケージ2の凹部内の蛍光体6に照射され、蛍光体6の光量が多くなっているため色調シフト量を大きくすることができる。
【0059】
[実施例2、参考例5、6]
実施例2に係る発光装置は、封止部材5の上面の一部を覆う第1膜を有している。参考例5に係る発光装置は、第1膜を有していない。参考例6に係る発光装置は、封止部材5の全面を覆う第1膜を有している。
実施例2に係る発光装置は、実施例1に係る発光装置と同様の構成を有する。
参考例5に係る発光装置は、参考例1に係る発光装置と同様の構成を有する。参考例6に係る発光装置は、実施例1に係る発光装置の第1膜の大きさが異なる以外は同様の構成を有する。つまり、参考例6の発光装置の第1膜と実施例1の発光装置の第1膜とは同様のスラリー濃度を有している。
【0060】
実施例2、参考例5、6に係る発光装置について、半田耐熱試験を行った。
半田耐熱試験は、高温状態に晒されても変色が少なく、通過する光束の強さが変化しにくいものを半田耐熱性が高いとする。また、変色により通過する光束の強さが変化するものを半田耐熱性が低いとする。
発光装置では、実装基板への装着を半田によって行うため、半田の熱により色調および光量が変化しにくいことが必要とされる。このため、発光装置は、色調および光量に影響を与える半田耐熱性を向上させて変色が少なくなるように改善する余地がある。
表1に、実施例2、参考例5及び6の発光装置の半田耐熱試験の結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
ここでは、半田付けが行われた状態と同様の状態となるように、実施例2、参考例5及び6の各発光装置について、温度が約260℃のリフロー炉を用いた加熱工程を1〜3回行なっている。そして、各回の加熱工程が終了した状態における光束量を発光装置ごとに測定した結果が示されている。
【0063】
半田耐熱性の測定は、第1膜の変色による光束量の低下を計測して判定するため、参考例5の発光装置について計測を行い、この計測値を実施例2、参考例6の発光装置の各計測値との比較に用いる基準計測値としている。
そして、各発光装置で加熱が行われていない状態、つまり、加熱工程が0回、を100.0%として、加熱後に測定された各測定値との差分を求めて比較した。この差分の絶対値の小さい方を半田耐熱性が良好であると判定している。
【0064】
測定の結果、例えば、3回加熱工程を行った半田耐熱性について比較すると、参考例6の発光装置の光束の維持率は96.6%であり、参考例5の発光装置の光束の維持率97.7%であり、差分値が−1.1ポイントとなり、光束維持率が低下している。
これに対して、実施例2の発光装置の光束の維持率は97.5%であり、参考例5の発光装置の光束の維持率97.7%であり、差分値が−0.2ポイントとなり、差分の絶対値が参考例6のときよりも小さいため、半田耐熱性が良好であると判定できる。
【0065】
また、参考例6の発光装置の差分値は、加熱工程の回数の増大に応じて大きくなる傾向があるのに対し、実施例2の発光装置の差分値は、加熱工程の回数が増大しても−0.2ポイントのままで、差分値が大きく変化していない。
【0066】
この結果から参考例6の発光装置よりも、実施例1の発光装置の方が熱による変色の影響を少なくでき、半田耐熱性を向上させることができる。
【0067】
[実施例3〜8、参考例7〜9]
実施例3〜8に係る発光装置は、封止部材5の上面の一部を覆う第1膜を有している。参考例7に係る発光装置は、第1膜を有していない。参考例8及び9に係る発光装置は、封止部材5の全面を覆う第1膜を有している。
実施例3〜8に係る発光装置は、実施例1に係る発光装置の第1膜の大きさ、スラリー濃度が異なる以外は同様の構成を有する。
【0068】
実施例3〜8のスラリー濃度は、酸化チタンの濃度が0.3wt%である。酸化チタンは約15〜20nmのナノ粒子を用いる。有機溶剤としてのトルエンを用いる。
実施例3〜8、参考例7〜9の各発光装置において、封止部材5の上面部5aに対する第1膜7の占める比率(以下、面積比ともいう)を用いて、第1膜7がどの程度の範囲を覆う状態であれば光量を落とすことなく色調をシフトできるかについて試験を行い、結果を後述する表2および図11図12にまとめた。
例えば、実施例3は、発光素子1の上面1aが覆われて、かつ、開放領域30が形成される。封止部材5の上面部5aの面積に対する第1膜7の面積比は7%である。また、発光素子1の上面1aの面積に対する第1膜7の面積比は110%とされている。
そして、実施例4〜8は、さらに第1膜7の塗布量を実施例2の発光装置と比べて増大させつつ、第1膜7の周囲に開放領域30が形成されている。
【0069】
ここで、参考例7は、第1膜なしの状態である。参考例7の発光装置は、第1膜がないため、封止部材5の上面部5aの面積に対する第1膜7の面積比が0%であり、かつ、発光素子1の上面1aの面積に対する第1膜7の面積比が0%である。
また、参考例8及び9は、上面部5aの全面が覆われる(面積比で100%)ように作成された。ここで、上面部5aの面積に対する第1膜7の面積比が100%であることは、発光素子1の上面1aの面積に対する第1膜7の面積比が約1600%であることと同じである。
なお、カッコ内は、発光素子1の上面1aの面積に対する第1膜7の面積の比率を示している。ここで、実施例4、5または参考例8,9は、同じ第1膜の大きさを有しているが、測定されたシフト量および光束量が相違しているのは、個体差によるものである。
【0070】
封止部材5を構成する封止樹脂として、波長589nmにおける屈折率が1.52である軟質のシリコーン樹脂の母材を用いて、その中にYAG:Ceの蛍光体6を含有させている。これらの蛍光体6は、封止部材5の母材中において、発光素子1の上方および周囲に分散させた。
【0071】
第1膜7には、波長589nmにおける屈折率が2.62、中心粒径36nmの酸化チタンのナノ粒子を分散して配置することにより、膜厚50nm〜1μmの均一な被膜を形成した。
【0072】
以上の条件に基づき、上面部5aに異なる分量のスラリーが塗布されて、温度が約260℃のリフロー炉にて3パスさせることにより、面積比の異なる第1膜7を有する実施例3〜8、参考例8、9を得た。
【0073】
[色調シフト量、半田耐熱性]
実施例3〜8、参考例7〜9の発光装置の色調シフト量及び半田耐熱性について説明する。図11は実施例に係る発光装置の特性を示すグラフである。図11は、第1膜7の面積比を横軸に、測定された色度から得られるシフト量Δxを縦軸として、実施例3〜8、参考例7〜9の発光装置の色調シフト量(Δx)をプロットしている。図12は実施例に係る発光装置の特性を示すグラフである。図12は、第1膜7の面積比を横軸に、半田耐熱性を示す光束低下比(%)を縦軸として、実施例3〜8、参考例7〜9の発光装置の半田耐熱性の光束低下比をプロットしている。
表2は、実施例3〜8、参考例7〜9の各発光装置の色調シフト量、光束低下比を測定した結果を示す。
【0074】
【表2】
【0075】
この結果から、第1膜7の面積の増大に応じて、参考例7、実施例3〜8、参考例8、9のシフト量Δxは増大する傾向にある。そして、実施例3〜6の発光装置において、封止部材5の上面5aの面積に対する第1膜7の面積比が約7%から50%までの間では、シフト量ΔxがΔx=0.0020以上、得られている。さらに、実施例7、8の発光装置において、第1膜7の面積比が50%を超えると増大する傾向にあったシフト量Δxは、Δx=0.0060付近で頭打ちとなっていることがわかる。
このため、封止部材5の上面5aの面積に対する第1膜7の面積比が約10%以上50%以下となる実施例3〜6の発光装置が最もシフト量Δxの調整に適していると言える。
【0076】
また、封止部材5の上面5aの面積に対する第1膜7の面積比の増大に応じて、参考例7、実施例3〜8、参考例8、9の光束量が低下する傾向を示している。
実施例3〜6の発光装置において、第1膜7の面積比が約7%以上50%以下の範囲内では、光束低下比(%)は高い水準で維持されていて、半田耐熱性が良好であることが分かる。しかしながら、実施例7、8のように第1膜7の面積比が50%を過ぎると徐々に光束低下比(%)は増大して、参考例8、9のように第1膜7の面積比が100%になると、光束低下率は0.8%、1.0%を示す。
【0077】
これらの実施例3〜8、参考例7〜9の測定の結果から、封止部材5の上面5aの面積に対する第1膜7の面積比が10%以上50%以下の範囲、若しくは、発光素子1の上面1aの面積に対する第1膜7の面積比では、好ましくは、約100%以上800%以下の範囲に相当、となるように、第1膜7を生成して上面1aに設けることにより、光量を減少させずに色調シフトすることができると推察される。
【0078】
すなわち、上面部5aの面積が発光素子1の上面1aの面積の約1600%である場合、第1膜7の面積比を上面部5aに対して10%以上50%以下、発光素子1に対して100%以上800%以下として上面部5aを第1膜7によって覆うことが好ましい。また、実施例4,5、及び、参考例8、9は、第1膜7の多く箇所が多少異なるような個体差が存在しても測定の結果に対する影響が小さいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示の各実施形態に係る発光装置は、発光ダイオード等の半導体発光素子をはじめとした各種発光素子を光源として搭載した発光装置として利用することができる。例えば、液晶ディスプレイのバックライト光源、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内などの各種表示装置、更には、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナなどにおける画像読取装置、プロジェクタ装置など、種々の光源に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 発光素子
1a 上面
1b 外側面
2 パッケージ
2a 凹部
2b 底部
2c 側面部
2d 上面縁
5 封止部材
5a 上面部
5b 平坦部
5c 湾曲周縁部
5d 外周縁
6 蛍光体
7,17,27,37 第1膜
7a,37a 外周縁
8 透光性材料
10,110,210 発光装置
10a〜10d 第1〜第4発光装置
30 開放領域
40 透過膜(第2膜)
50 白樹脂(被覆部材)
51 露出領域
52 反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12