(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記(B)成分が、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する炭素数3以上のエポキシ化合物、及び脂環式エポキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
  以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[潤滑油組成物]
  本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、基油と、(A)一般式(I)
 
【0015】
〔一般式(I)中、R
1は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上9以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を示し、R
2は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上16以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を示す。〕
で表されるベンゾトリアゾール誘導体と、(B)エポキシ化合物と、(C)無灰系摩擦調整剤とを含有し、(C)無灰系摩擦調整剤を潤滑油組成物全量基準で0.20質量%以上含有する、潤滑油組成物である。
 
【0016】
  本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、摩擦調整剤として(C)無灰系摩擦調整剤を潤滑油組成物全量基準で0.20質量%以上含有することから、優れた摩擦低減効果を有している。そして、(C)無灰系摩擦調整剤を多く含有していながら、(A)一般式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体と(B)エポキシ化合物とを含有することによって、優れた銅及び鉛の腐食抑制効果を両立したものである。
  そして、当該効果は、ベンゾトリアゾール誘導体とエポキシ化合物とを個別に用いた場合に予測される効果の単なる組み合わせで得られる効果ではない。
  以下、本発明の一態様である潤滑油組成物を構成する各成分について説明する。
 
【0017】
<基油>
  前記潤滑油組成物で用いられる基油としては、特に制限はなく、従来、潤滑油の基油として使用されている鉱油及び合成油の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
  鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した鉱油やワックスやGTL  WAX(ガストゥリキッド  ワックス)を異性化することによって製造される基油等が挙げられる。
  合成油としては、例えば、ポリブテン、α−オレフィン単独重合体や共重合体(例えばエチレン−α−オレフィン共重合体)等のポリα−オレフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等の各種のエステル;ポリフェニルエーテル等の各種のエーテル;ポリグリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン等が挙げられる。これらの合成油のうち、ポリα−オレフィン、ポリオールエステルが好ましい。
 
【0018】
  本発明の一実施形態としては、前記基油として、前記鉱油を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記合成油を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。更には、前記鉱油1種以上と前記合成油1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
  また、前記基油の含有量は、前記潤滑油組成物全量に対して、通常、65質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
 
【0019】
  前記基油の粘度は、特に制限はないが、100℃における動粘度が、好ましくは2mm
2/s以上30mm
2/s以下、より好ましくは3mm
2/s以上15mm
2/s以下、更に好ましくは3mm
2/s以上10mm
2/s以下の範囲である。
  100℃における動粘度が2mm
2/s以上であると蒸発損失が少なく、また、30mm
2/s以下であると、粘性抵抗による動力損失が抑制され、燃費改善効果が得られる。なお、当該100℃における動粘度の値は、後述する実施例に記載された方法により測定されるものである。
  また、前記基油の粘度指数は、好ましくは70以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは120以上である。当該粘度指数が70以上の基油は、温度の変化による粘度変化が小さい。
  前記基油の粘度指数が当該範囲であることで、潤滑油組成物の粘度特性を良好にしやすくなる。なお、この粘度指数は、後述する実施例に記載された方法により測定される指数である。
 
【0020】
  また、前記基油としては、環分析による芳香族分(%C
A)が3.0以下で硫黄分の含有量が50質量ppm以下のものが好ましく用いられる。ここで、環分析による%C
Aとは、環分析n−d−M法にて算出した芳香族分の割合(百分率)を示す。また、硫黄分はJIS  K  2541に準拠して測定した値である。
  当該%C
Aが3.0以下で、硫黄分が50質量ppm以下の基油は、良好な酸化安定性を有し、酸価の上昇やスラッジの生成を抑制し得ると共に、金属に対する腐食性の少ない潤滑油組成物を提供することができる。
  より好ましい%C
Aは1.0以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.1以下である。また、硫黄分は、より好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは5質量ppm以下、より更に好ましくは2質量ppm以下である。
  また、前記基油は、環分析によるパラフィン分(%C
P)が好ましくは65以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは75以上である。当該パラフィン分を65以上とすることで、前記基油の酸化安定性が良好になる。ここで、環分析による%C
Pとは、環分析n−d−M法にて算出したパラフィン分の割合(百分率)を示す。
  また、前記基油のNOACK蒸発量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは14.0質量%以下、更に好ましくは13.0質量%以下である。
  なお、%C
Aの値、%C
pの値、硫黄分、及びNOACK蒸発量は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
 
【0021】
<(A)一般式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体>
  前記潤滑油組成物は、(A)一般式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体(以下、単に「(A)成分」ともいう。)を含有する。(A)成分を含有することで、無灰系摩擦調整剤を用いる潤滑油組成物であって、銅の腐食抑制効果に優れる潤滑油組成物を提供することができる。
  前記潤滑油組成物で用いられる(A)成分は、下記一般式(I)で示されるものである。
 
【0023】
  一般式(I)中、R
1は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上9以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を示し、R
2は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上16以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を示す。
  R
1は、銅の腐食抑制効果に優れる潤滑油組成物を得る観点から、好ましくは酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上5以下のヒドロカルビル基又は水素原子、より好ましくは酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上3以下のヒドロカルビル基又は水素原子、更に好ましくはメチル基又は水素原子を示す。
  R
2は、後述する(B)成分と併用した場合に、優れた銅及び鉛の腐食抑制効果を両立する潤滑油組成物を得る観点から、好ましくは酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上8以下のヒドロカルビル基又は水素原子、より好ましくは酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上5以下のヒドロカルビル基、又は水素原子、更に好ましくはメチル基又は水素原子、より更に好ましくは水素原子を示す。
 
【0024】
  (A)成分の含有量は、銅の腐食抑制効果を向上する観点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、より更に好ましくは0.05質量%以上である。また、溶解性の観点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下、更に好ましくは0.07質量%以下である。
  なお、(A)成分としては、前記一般式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体を単独で用いてもよく、前記一般式(I)で表され、かつ構造が異なるベンゾトリアゾール誘導体を2種以上組み合わせて用いてもよい。(A)成分を2種以上組み合わせた場合の合計含有量の好適範囲も、前述した(A)成分を1種単独で用いる場合の好適範囲と同様である。
  なお、(A)成分を、後述する(B)成分と併用することによって、単に、銅の溶出を抑制するだけでなく、相乗効果によって、(B)成分を単独で使用した場合の鉛溶出抑制効果よりも、更に優れた鉛溶出抑制効果を得ることもできる。
 
【0025】
<(B)エポキシ化合物>
  前記潤滑油組成物は、(B)エポキシ化合物(以下、単に「(B)成分」ともいう。)を含有する。(B)成分を含有することで、前記(A)成分を含有した場合であっても、鉛の腐食抑制効果に優れる潤滑油組成物を提供することができる。
  (B)成分は、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であって、好ましくは分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
  (B)成分としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する炭素数3以上のエポキシ化合物(1,2−エポキシアルカン)、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物が挙げられる。(B)成分の溶解性と鉛の腐食抑制効果のバランスを取る観点から、好ましくは炭素数3以上26以下の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有するエポキシ化合物(1,2−エポキシアルカン)並びに脂環式エポキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは脂環式エポキシ化合物である。
 
【0026】
  炭素数3以上26以下の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有するエポキシ化合物(エポキシアルカン)のアルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上である。そして、当該炭素数は、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
  炭素数3以上26以下の直鎖状アルキル基を有するエポキシアルカンとしては、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサン、1,2−エポキシヘンイコサン、1,2−エポキシドコサン、1,2−エポキシトリコサン、1,2−エポキシテトラコサン、1,2−エポキシペンタコサン、1,2−エポキシヘキサコサンが挙げられる。
  炭素数3以上26以下の分岐状アルキル基を有するエポキシアルカンとしては、前述した直鎖状アルキル基を有する炭素数のアルキル鎖部分に当該炭素数を満たす範囲の炭素数を有するアルキル基が結合したものが挙げられる。
 
【0027】
  グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、好ましくは、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルが挙げられ、例えば、グリシジルベンゾエート、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが挙げられる。
 
【0028】
  脂環式エポキシ化合物としては、好ましくは炭素数3以上18以下、より好ましくは炭素数5以上16以下の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
  脂環式エポキシ化合物としては、例えば、1,2−エポキシシクロプロパン、1,2−エポキシシクロブタン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロドデカン、1,2−エポキシノルボルナンが挙げられる。また、脂環部分の炭素原子にアルキル基又はアルケニル基が1個以上結合したアルキル化又はアルケニル化エポキシシクロアルカン、例えば、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが挙げられる。
 
【0029】
  また、その他の脂環式エポキシ化合物としては、好ましくは、脂環部分の炭素原子に脂肪族若しくは芳香族のアルコキシ基が1個以上結合したエーテル化合物、脂環部分の炭素原子にイミド基が1個以上結合したイミド化合物及びビスイミド化合物、脂環部分の炭素原子にアミド基が1個以上結合したアミド化合物が挙げられ、より好ましくは脂環部分の炭素原子にカルボキシル基が1個以上結合したエステル化合物が挙げられる。
  そして、更に好ましくは、エポキシ化シクロアルカンを2個有するものが好ましい。当該エポキシ化シクロアルカンを2個有するエポキシ化合物としては、好ましくは3,4−エポキシシクロアルキル−3,4−エポキシシクロアルキルカルボキシレート(各アルキル基の炭素数が炭素数3以上12以下)が挙げられ、より好ましくは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
 
【0030】
  (B)成分の含有量は、鉛の腐食抑制効果を向上する観点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上、より更に好ましくは0.30質量%以上である。また、銅の腐食を抑制する観点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下である。
  また、銅及び鉛の腐食をバランスよく抑制する観点から、(B)成分の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、そして、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下である。
  また、銅及び鉛の腐食をバランスよく抑制する観点から、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比〔(A)/(B)〕は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上であり、そして、好ましくは3.00以下、より好ましくは1.00以下、更に好ましくは0.60以下である。
  なお、(B)成分としては、前述した各エポキシ化合物を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。(B)成分を2種以上組み合わせた場合の合計含有量の好適範囲も、前述した(B)成分を1種単独で用いる場合の好適範囲と同様である。
 
【0031】
<(C)無灰系摩擦調整剤>
  前記潤滑油組成物は、(C)無灰系摩擦調整剤(以下、単に「(C)成分」ともいう。)を、前記潤滑油組成物全量基準で0.20質量%以上含有する。
  (C)成分の含有量が前記潤滑油組成物全量基準で0.20質量%未満の場合、摩擦低減効果に優れた潤滑油組成物を得ることが困難となる。摩擦低減効果に優れた潤滑油組成物を得る観点から、(C)成分の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上である。
  また、銅及び鉛の腐食を抑制する観点から、(C)成分の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.60質量%以下である。
  また、摩擦低減効果に優れ、かつ銅及び鉛の腐食を抑制する観点から、(C)成分の含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上であり、そして、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.70質量%以下である。
 
【0032】
  (C)成分としては、好ましくは窒素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を分子内に含有する無灰系摩擦調整剤が挙げられ、例えば、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等の無灰系摩擦調整剤等が挙げられる。これらの中では、より好ましくは炭素数6以上30以下のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪族エーテル等の無灰系摩擦低減剤が挙げられる。
  そして、更に好ましくは、(C)成分の分子内に水酸基を2つ以上有する無灰系摩擦調整剤が挙げられ、例えば、(C)成分の分子内に水酸基を2つ以上有するエステル化合物(以下、「エステル系摩擦調整剤」ともいう。)、(C)成分の分子内に水酸基を2つ以上有するアミン化合物(以下、「アミン系摩擦調整剤」ともいう。)、(C)成分の分子内に水酸基を2つ以上有するアミド化合物(以下、「アミド系摩擦調整剤」ともいう。)及び(C)成分の分子内に水酸基を2つ以上有するエーテル化合物(以下、「エーテル系摩擦調整剤」ともいう。)よりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中では、(A)成分及び(B)成分による腐食抑制効果が得られやすい点で、(C)成分の分子内に水酸基を2つ以上有するエステル化合物が好ましい。
  また、(C)成分の分子内の水酸基の数は、摩擦低減効果及び基油への溶解性の観点から、2以上6以下が好ましい。
 
【0033】
  エステル系摩擦調整剤としては、脂肪酸と脂肪族多価アルコールとの反応により得られる部分エステル化合物等の部分エステル化合物が挙げられる。
  当該脂肪酸は、摩擦低減効果が得られやすい観点から、好ましくは炭素数6以上32以下の直鎖状又は分岐状炭化水素基を有する脂肪酸であり、該炭化水素基の炭素数はより好ましくは8以上24以下、更に好ましくは16以上20以下である。
  炭素数6以上32以下の直鎖状又は分岐状炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ペンタイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基及びトリアコンチル基等のアルキル基;ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基及びトリアコンテニル基等のアルケニル基;二重結合を2つ以上有する炭化水素基;等を挙げることができる。
  脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、及びリグノセリン酸等の飽和脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、及びリノレン酸等の不飽和脂肪酸;が挙げられ、摩擦低減効果の観点から不飽和脂肪酸が好ましい。
  また、上記脂肪族多価アルコールは2価以上6価以下のアルコールであり、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられ、摩擦低減効果の観点からグリセリンが好ましい。
 
【0034】
  グリセリンと前記不飽和脂肪酸との反応で得られる脂肪酸部分エステル化合物(以下、「グリセリンエステル化合物」ともいう。)としては、グリセリンモノミリストレート、グリセリンモノパルミトレアート、グリセリンモノオレアート等のモノエステルや、グリセリンジミリストレート、グリセリンジパルミトレアート、グリセリンジオレアート等のジエステルが挙げられ、モノエステルが好ましい。また、部分エステル化合物はケイ素化合物又はホウ素化合物との反応生成物も挙げられる。
 
【0035】
  グリセリンエステル化合物のモノエステルとしては、より好ましくは下記一般式(II)で表されるエステル化合物が挙げられる。
 
【0037】
  一般式(II)中、R
21は炭素数1以上32以下の炭化水素基を示し、R
22〜R
26は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上18以下の炭化水素基を示す。
 
【0038】
  R
21の炭化水素基の炭素数は、好ましくは8以上32以下、より好ましくは12以上24以下、更に好ましくは16以上20以下である。
  R
21の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、その中でもアルケニル基が好ましい。
  R
21におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
  また、R
21におけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、及びテトラコセニル基が挙げられるが、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、二重結合の位置も任意である。
 
【0039】
  R
22〜R
26は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子及び炭素数1以上18以下の炭化水素基からなる群より選ばれる1種であり、より好ましくは水素原子である。また、R
22〜R
26は全てが水素原子であることが好ましい。
  R
22〜R
26が炭化水素基の場合、該炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。R
22〜R
26が炭化水素基の場合、当該炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1以上18以下、より好ましくは炭素数1以上12以下、更に好ましくは炭素数1以上4以下、より更に好ましくは炭素数2である。
 
【0040】
  一般式(II)で表されるエステル化合物としては、例えば、グリセリン1−ラウラート、グリセリン1−ステアラート、グリセリン1−ミリスタート、グリセリン1−オレアート等のグリセリン脂肪酸モノエステルが挙げられる。これらの中でもグリセリン1−オレアートが好ましい。
  前記エステル系摩擦調整剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、一般式(II)で表されるエステル化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 
【0041】
  アミン系摩擦調整剤としては、好ましくは下記一般式(III)で表されるアミン化合物が挙げられる。
 
【0043】
  一般式(III)中、R
31は炭素数1以上32以下の炭化水素基を示し、R
32〜R
39は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上18以下の炭化水素基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含有する酸素含有炭化水素基を示す。a及びbは、それぞれ独立に、1以上20以下の整数を示す。
  aが2以上の場合、R
32〜R
35は、それぞれ複数存在するが、複数のR
32は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
33は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
34は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
35は互いに同一であっても異なっていてもよい。
  bが2以上の場合、R
36〜R
39は、それぞれ複数存在するが、複数のR
36は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
37は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
38は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
39は互いに同一であっても異なっていてもよい。
 
【0044】
  R
31が示す炭化水素基の炭素数は、好ましくは8以上32以下、より好ましくは10以上24以下、更に好ましくは12以上20以下である。
  R
31の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。
  R
31におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基及びテトラコシル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
  また、R
31におけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基,トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基が挙げられるが、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、二重結合の位置も任意である。
 
【0045】
  R
32〜R
39の炭化水素基としては、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、例えば、アルキル基若しくはアルケニル基(二重結合の位置も任意)等の脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基が挙げられる。当該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ブテニル基、ヘキシル基、ヘキセニル基、オクチル基、オクテニル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、デセニル基、ドデシル基、ドデセニル基、トリデシル基、テトラデシル基、テトラデセニル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基、リノール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
  R
32〜R
39が炭化水素基の場合、当該炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1以上18以下、より好ましくは炭素数1以上12以下、更に好ましくは炭素数1以上4以下、より更に好ましくは炭素数2である。
 
【0046】
  エーテル結合又はエステル結合を含有する酸素含有炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上18以下のものが挙げられ、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、オクチルオキシメチル基、2−エチルヘキシルオキシメチル基、デシルオキシメチル基、ドデシルオキシメチル基、2−ブチルオクチルオキシメチル基、テトラデシルオキシメチル基、ヘキサデシルオキシメチル基、2−ヘキシルドデシルオキシメチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、1,1−ビスメトキシプロピル基、1,2−ビスメトキシプロピル基、エトキシプロピル基、(2−メトキシエトキシ)プロピル基、(1−メチル−2−メトキシ)プロピル基、アセチルオキシメチル基、プロパノイルオキシメチル基、ブタノイルオキシメチル基、ヘキサノイルオキシメチル基、オクタノイルオキシメチル基、2−エチルヘキサノイルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基、ドデカノイルオキシメチル基、2−ブチルオクタノイルオキシメチル基、テトラデカノイルオキシメチル基、ヘキサデカノイルオキシメチル基、2−ヘキシルドデカノイルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基が挙げられる。
 
【0047】
  R
32〜R
39は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子及び炭素数1以上18以下の炭化水素基からなる群より選ばれる1種であり、より好ましくは水素原子である。また、摩擦低減効果が得られやすい観点から、R
32〜R
39は全てが水素原子であることが好ましい。
 
【0048】
  また、a及びbは、それぞれ独立に、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下、更に好ましくは1以上2以下、より更に好ましくは1である。
  また、a及びbが示す整数の合計は、摩擦低減効果が得られやすい観点から、好ましくは2以上20以下、より好ましくは2以上10以下、更に好ましくは2以上4以下、より更に好ましくは2である。
  前記アミン系摩擦調整剤は、一般式(III)で表されるアミン化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 
【0049】
  一般式(III)で表されるアミン化合物としては、例えば、オクチルジエタノールアミン、デシルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、ヘキサデシルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ヤシ油ジエタノールアミン、パーム油ジエタノールアミン、ナタネ油ジエタノールアミン、牛脂ジエタノールアミン等で例示される2−ヒドロキシアルキル基を2つ有するアミン化合物;ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン、ポリオキシエチレンヤシ油アミン、ポリオキシエチレンパーム油アミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、エチレンオキシドプロピレンオキシドステアリルアミン等のポリアルキレンオキサイド構造を2つ有するアミン化合物が挙げられる。これらの中でもオレイルジエタノールアミンが好ましい。
 
【0050】
  アミド系摩擦調整剤としては、好ましくは下記一般式(IV)で表されるアミド化合物が挙げられる。
 
【0052】
  一般式(IV)中、R
41は、上記一般式(III)のR
31と同様のものが挙げられ、その好適な態様も同様である。一般式(IV)中、R
42〜R
49は、それぞれ独立に、上記一般式(III)のR
32〜R
39と同様のものが挙げられ、その好適な態様も同様である。一般式(IV)中、c及びdは、それぞれ独立に、1以上20以下の整数を示す。
  c及びdは、それぞれ独立に、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下、更に好ましくは1以上2以下、より更に好ましくは1である。
  また、c及びdが示す整数の合計は、好ましくは2以上20以下、より好ましくは2以上10以下、更に好ましくは2以上4以下、より更に好ましくは2である。
  cが2以上の場合、R
42〜R
45は、それぞれ複数存在するが、複数のR
42は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
43は、互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
44は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
45は互いに同一であっても異なっていてもよい。
  dが2以上の場合、R
46〜R
49は、それぞれ複数存在するが、複数のR
46は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
47は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
48は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR
49は互いに同一であっても異なっていてもよい。
 
【0053】
  一般式(IV)で表されるアミド化合物としては、例えば、N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタンアミド、N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)デカンアミド、N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド、N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)テトラデカンアミド、N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサデカンアミド、N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデカンアミド〔「N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド」と同じ。〕、N,N-ビス(2−ヒドロキシエチル)オレインアミド〔「オレイン酸ジエタノールアミド」と同じ。〕、ヤシ油ジエタノールアミド、パーム油ジエタノールアミド、ナタネ油ジエタノールアミド、牛脂ジエタノールアミド等で例示される2−ヒドロキシアルキル基を2つ有するアミド化合物;ポリオキシエチレンオクチルアミド、ポリオキシエチレンデシルアミド、ポリオキシエチレンドデシルアミド、ポリオキシエチレンテトラデシルアミド、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミド、ポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリオキシエチレンオレイルアミド、ポリオキシエチレン牛脂アミド、ポリオキシエチレンヤシ油アミド、ポリオキシエチレンパーム油アミド、ポリオキシエチレンラウリルアミド、エチレンオキシドプロピレンオキシドステアリルアミド等のポリアルキレンオキサイド構造を2つ有するアミド化合物が挙げられる。これらの中でもオレイン酸ジエタノールアミドが好ましい。
  前記アミド系摩擦調整剤は、一般式(IV)で表されるアミド化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 
【0054】
  エーテル系摩擦調整剤としては、好ましくは(ポリ)グリセリンエーテル化合物が挙げられ、より好ましくは下記一般式(V)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物が挙げられる。なお、本明細書中、(ポリ)グリセリンエーテル化合物とは、グリセリンエーテル又はポリグリセリンエーテルの両方を指す。
 
【0056】
  一般式(V)中、R
51は炭化水素基を示し、eは1以上10以下の整数を示す。
  R
51が示す炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上30以下のアルキル基、炭素数3以上30以下のアルケニル基、炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数7以上30以下のアラルキル基が挙げられる。
 
【0057】
  R
51が示す炭素数1以上30以下のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2−オクチルドデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−テトラデシルオクタデシル、16−メチルヘプタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル等の基が挙げられる。
 
【0058】
  R
51が示す炭素数3以上30以下のアルケニル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、二重結合の位置も任意である。当該アルケニル基としては、具体的には、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基等が挙げられる。
 
【0059】
  R
51が示す炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
  R
51が示す炭素数7以上30以下のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基等が挙げられる。
  R
51としては、一般式(V)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物の性能及び入手の容易さなどの観点から、炭素数8以上20以下のアルキル基及びアルケニル基が好ましい。
 
【0060】
  また、eは、一般式(V)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物の原料である(ポリ)グリセリンの重合度を示し、1以上10以下の整数を示すが、高い摩擦低減効果を得る観点から、好ましくは1以上3以下の整数である。
 
【0061】
  一般式(V)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物としては、例えば、グリセリンモノドデシルエーテル、グリセリンモノテトラデシルエーテル、グリセリンモノヘキサデシルエーテル(「キミルアルコール」と同じ。)、グリセリンモノオクタデシルエーテル(「バチルアルコール」と同じ。)、グリセリンモノオレイルエーテル(「セラキルアルコール」と同じ。)、ジグリセリンモノドデシルエーテル、ジグリセリンモノテトラデシルエーテル、ジグリセリンモノヘキサデシルエーテル、ジグリセリンモノオクタデシルエーテル、ジグリセリンモノオレイルエーテル、トリグリセリンモノドデシルエーテル、トリグリセリンモノテトラデシルエーテル、トリグリセリンモノヘキサデシルエーテル、トリグリセリンモノオクタデシルエーテル、トリグリセリンモノオレイルエーテルが挙げられる。
  前記エーテル系摩擦調整剤は、一般式(V)で表される(ポリ)グリセリンエーテル化合物を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 
【0062】
  (C)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、一般式(II)〜(V)で表される各化合物からなる群より選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。(C)成分を2種以上組み合わせた場合の合計含有量の好適範囲も、前述した(C)成分を1種単独で用いる場合の好適範囲と同様である。
 
【0063】
<その他成分>
  前記潤滑油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて他の添加剤、例えば、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、酸化防止剤、上記(C)成分以外の摩擦調整剤(以下、単に「その他の摩擦調整剤」ともいう。)又は耐摩耗剤、極圧剤、防錆剤、界面活性剤又は抗乳化剤、消泡剤等を適宜含有することができる。
 
【0064】
  粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート(PMA)系(例えば、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート等)、オレフィン共重合体(OCP)系(例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPC)、ポリブチレン等)、スチレン系共重合体(例えば、ポリアルキルスチレン、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体等)等が挙げられる。当該PMA系粘度指数向上剤としては、分散型、非分散型が挙げられる。当該分散型のPMA系粘度指数向上剤とは、アルキルメタクリレート又はアルキルアクリレートのホモポリマーであり、非分散型のPMA系粘度指数向上剤とは、アルキルメタクリレート又はアルキルアクリレートと、分散性をもつ極性モノマー(例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート等)との共重合物である。また、PMA系と同様、OCP系粘度指数向上剤にも分散型がある。これらの粘度指数向上剤は、好ましくは、重量平均分子量が5,000以上1,500,000以下であり、PMA系の場合、好ましくは20,000以上、より好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下である。また、OCP系の場合、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、また、好ましくは800,000以下、より好ましくは500,000以下である。また、スチレン系共重合体の場合、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、また、好ましくは800,000以下、より好ましくは650,000以下である。
  粘度指数向上剤は、樹脂分として、例えば、前述のポリマーを含むものであるが、通常はハンドリング性や前述の基油への溶解性を考慮し、ポリマーを含む樹脂分が鉱油等の希釈油により希釈された溶液の状態で市販されていることが多い。当該粘度指数向上剤の樹脂分濃度としては、粘度指数向上剤の全量基準で、通常10質量%以上50質量%以下である。
  これらの粘度指数向上剤は単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。粘度指数向上剤の含有量は、樹脂分換算での含有量として、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上であり、そして、好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下、更に好ましくは1.00質量%以下である。
 
【0065】
  流動点降下剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート系(ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート等)、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート、ポリブテン等が挙げられ、ポリメタクリレート系(例えば、重量平均分子量(Mw)が5,000以上50,000以下のポリメタクリレート)が好ましく用いられる。これらの流動点降下剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。その含有量は、好ましくは前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下の範囲である。
 
【0066】
  清浄分散剤としては、無灰系分散剤及び/又は金属系清浄剤を用いることができる。
  無灰系分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰系分散剤を用いることができる。例えば、一般式(VI−i)で表されるモノタイプのコハク酸イミド化合物、または一般式(VI−ii)で表されるビスタイプのコハク酸イミド化合物;ポリブテニルベンジルアミン;ポリブテニルアミン;及びこれらのホウ酸変性物等の誘導体等が挙げられる。これらの無灰系分散剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有することができる。
 
【0068】
  一般式(VI−i)及び一般式(VI−ii)中、R
61、R
63及びR
64は、それぞれ独立に、数平均分子量(Mn)500以上3,000以下のアルケニル基若しくはアルキル基を示す。R
61、R
63及びR
64の数平均分子量は、それぞれ独立に、好ましくは1,000以上3,000以下である。また、R
62、R
65及びR
66は、それぞれ独立に、炭素数2以上5以下のアルキレン基を示す。
  fは1以上10以下の整数を示し、gは0又は1以上10以下の整数を示す。
  R
61、R
63及びR
64の数平均分子量が500以上であると、基油への溶解性が向上し、3,000以下であると、清浄性の低下を抑制できる。
  R
61、R
63及びR
64が示すアルケニル基としては、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン−プロピレン共重合体等を挙げることができ、アルキル基としてはこれらを水添したものが挙げられる。
  好適なアルケニル基の一例としては、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が挙げられる。ポリブテニル基は、1−ブテンとイソブテンの混合物又は高純度のイソブテンを重合させたものとして得られる。また、好適なアルキル基の一例としては、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基を水添したものが挙げられる。
 
【0069】
  一般式(VI−i)中、fは、好ましくは2以上5以下、より好ましくは3以上4以下の整数である。fが1以上であると、清浄性が向上し、fが10以下であると、基油に対する溶解性の悪化を抑制できる。
  一般式(VI−ii)中、gは好ましくは1以上4以下、より好ましくは2以上3以下の整数である。当該範囲内であれば、清浄性及び基油に対する溶解性の点で好ましい。
 
【0070】
  上記アルケニル又はアルキルコハク酸イミド化合物は、例えば、ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応で得られるアルケニルコハク酸無水物、又はそれを水添して得られるアルキルコハク酸無水物を、ポリアミンと反応させることによって製造することができる。
  上記のモノタイプのコハク酸イミド化合物及びビスタイプのコハク酸イミド化合物は、例えば、アルケニルコハク酸無水物又はアルキルコハク酸無水物と、ポリアミンとの反応比率を変えることによって製造することができる。
  上記ポリオレフィンを形成するオレフィン単量体としては、好ましくは炭素数2以上8以下のα−オレフィンの1種又は2種以上を混合して用いることができるが、より好ましくはイソブテンとブテン−1との混合物を用いることができる。
  上記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン等の単一ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミン;アミノエチルピペラジン等のピペラジン誘導体を挙げることができる。
 
【0071】
  また、上記のアルケニル又はアルキルコハク酸イミド化合物の他に、これらのホウ素誘導体及び/又はこれらを有機酸で変性したものを用いてもよい。アルケニル又はアルキルコハク酸イミド化合物のホウ素誘導体は、常法により製造したものを使用することができる。
  例えば、上記のポリオレフィンを無水マレイン酸と反応させてアルケニルコハク酸無水物とした後、更に上記のポリアミンと酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステル、ホウ素酸のアンモニウム塩等のホウ素化合物を反応させて得られる中間体と反応させてイミド化させることによって得られる。
  アルケニル又はアルキルコハク酸イミド化合物のホウ素誘導体を用いる場合、このホウ素誘導体中のホウ素含有量は、特に制限はないが、ホウ素として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
 
【0072】
  これらコハク酸イミド化合物の窒素原子換算での含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは200質量ppm以上、より好ましくは300質量ppm以上であり、そして、好ましくは4,000質量ppm以下、より好ましくは3,000質量ppm以下、更に好ましくは2,500質量ppm以下である。200質量ppm以上であると、その効果が発揮され、また4,000質量ppm以下であれば、その添加に見合った効果を得ることができる。
  更にコハク酸イミド化合物は鉛に対して腐食性を有するため、必要以上の量を含有することは好ましくなく、潤滑油の酸化安定性や金属腐食の防止も同時に達成するためには、イミド化合物の適切な選択が必要になる。鉛に対する腐食性を抑えることができる観点から好ましいコハク酸イミド化合物は、数平均分子量900以上のポリブテニル基を含有するビスタイプのポリブテニルコハク酸イミド化合物であり、コハク酸イミド化合物の総窒素量に対して好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する。
  また、コハク酸イミド化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 
【0073】
  金属系清浄剤としては、潤滑油に用いられる任意のアルカリ土類金属系清浄剤が使用可能であり、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ土類金属サリチレートからなる群より選ばれる1種類以上が挙げられる。
  アルカリ土類金属スルホネートとしては、アルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、好ましくはマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が挙げられ、より好ましくはカルシウム塩が挙げられる。
  アルカリ土類金属フェネートとしては、好ましくはアルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物のアルカリ土類金属塩が挙げられ、より好ましくはマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が挙げられ、更に好ましくはカルシウム塩が挙げられる。
  アルカリ土類金属サリチレートとしては、好ましくはアルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩が挙げられ、より好ましくはマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が挙げられ、更に好ましくはカルシウム塩が挙げられる。
 
【0074】
  前記アルカリ土類金属系清浄剤を構成するアルキル基としては、好ましくは炭素数4以上30以下のアルキル基、より好ましくは炭素数6以上18以下のアルキル基であり、これらのアルキル基は直鎖でも分枝でもよい。これらのアルキル基はまた1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよい。
 
【0075】
  また、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリチレートとしては、前記のアルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物、アルキルサリチル酸等を直接、マグネシウム及び/又はカルシウムのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリチレートだけでなく、中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリチレートと過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性アルカリ土類金属スルホネート、塩基性アルカリ土類金属フェネート及び塩基性アルカリ土類金属サリチレートや、炭酸ガスの存在下で中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリチレートをアルカリ土類金属の炭酸塩又はホウ酸塩を反応させることにより得られる過塩基性アルカリ土類金属スルホネート、過塩基性アルカリ土類金属フェネート及び過塩基性アルカリ土類金属サリチレートも含まれる。
  本発明で用いる金属系清浄剤としては、上記の中性塩、塩基性塩、及び過塩基性塩からなる群より選ばれる1種以上を用いることができ、過塩基性サリチレート、過塩基性フェネート及び過塩基性スルホネートからなる群より選ばれる1種以上と中性スルホネートとの混合物が清浄性、耐摩耗性において好ましい。
 
【0076】
  金属系清浄剤は、通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また入手可能であるが、その金属含有量が好ましくは1.0質量%以上20質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上16質量%以下のものが挙げられる。
 
【0077】
  本発明で用いる金属系清浄剤の塩基価は、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは450mgKOH/g以下である。これらの中から選ばれる金属清浄剤を単独で又は2種以上用いることができる。なお、ここでいう塩基価とは、JIS  K  2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定される電位差滴定法(塩基価・過塩素酸法)による塩基価を意味する。
 
【0078】
  これらの金属系清浄剤は単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。その含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
 
【0079】
  酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、モリブデンアミン錯体系酸化防止剤等が挙げられる。
  フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール);2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−アミル−p−クレゾール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド;n−オクチル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート;n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,2’−チオ[ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9側鎖アルキルエステル;等が挙げられる。これらの中では、好ましくはビスフェノール系及びエステル基含有フェノール系のフェノール系酸化防止剤である。
  これらのフェノール系酸化防止剤は単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。その含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
 
【0080】
  アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系;4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系;N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系;及びα−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミン等のアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系;のものが挙げられる。これらの中では、好ましくはジアルキルジフェニルアミン系及びナフチルアミン系のアミン系酸化防止剤である。
  これらのアミン系酸化防止剤は単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。その含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
 
【0081】
  モリブデンアミン錯体系酸化防止剤としては、6価のモリブデン化合物、具体的には三酸化モリブデン及び/又はモリブデン酸とアミン化合物とを反応させてなるもの、例えば、特開2003−252887号公報に記載の製造方法で得られる化合物を用いることができる。
  6価のモリブデン化合物と反応させるアミン化合物としては、特に制限されないが、具体的には、モノアミン、ジアミン、ポリアミン及びアルカノールアミンが挙げられる。より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン等の炭素数1以上30以下のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルキルアミン;エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミン等の炭素数2以上30以下のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルケニルアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン等の炭素数1以上30以下のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルカノールアミン;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等の炭素数1以上30以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;ウンデシルジエチルアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やイミダゾリン等の複素環化合物;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物等が例示できる。また、特公平3−22438号公報及び特開2004−2866公報に記載されているコハク酸イミドの硫黄含有モリブデン錯体等が例示できる。
 
【0082】
  これらの酸化防止剤は単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができ、好ましくはフェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤である。
  これらの酸化防止剤の合計含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
 
【0083】
  その他の摩擦調整剤及び耐摩耗剤としては、具体的には、例えば、硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィド等の硫黄系化合物;リン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物;ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート(MoDTP)、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)等の有機金属系化合物が挙げられる。これらの摩擦調整剤及び耐摩耗剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。
  なお、その他の摩擦調整剤及び耐摩耗剤としては、潤滑油組成物中の金属分や硫黄分をできるだけ低くすることが好ましく、その含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。また、その他の摩擦調整剤及び耐摩耗剤を用いる場合、その含有量は、上記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上である。
  そして、銅に対する腐食性を抑える観点から、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)等の硫黄含有化合物であるその他の摩擦調整剤のモリブデン原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.02質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下であり、含有しないことが更に好ましい。
 
【0084】
  極圧剤としては、例えば、硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィド等の硫黄系化合物、リン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物等が挙げられる。これらの極圧剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。
  極圧剤を用いる場合、極圧剤の含有量は、上記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
 
【0085】
  防錆剤としては、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。これら防錆剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。これら防錆剤の含有量は、含有効果の点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上1.00質量%以下であり、より好ましくは0.05以上0.50質量%以下である。
 
【0086】
  界面活性剤又は抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤又は抗乳化剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。
 
【0087】
  消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油、フルオロシリコーン油及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。これら消泡剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。これら消泡剤の含有量は、消泡効果及び経済性のバランス等の観点から、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、そして、好ましくは0.150質量%以下、より好ましくは0.100質量%以下である。
 
【0088】
[内燃機関用潤滑油組成物の製造方法]
  本発明の一実施形態である潤滑油組成物の製造方法は、基油と、(A)一般式(I)
 
【0090】
〔一般式(I)中、R
1は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上9以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を示し、R
2は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1以上16以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を示す。〕
で表されるベンゾトリアゾール誘導体と、(B)エポキシ化合物と、(C)無灰系摩擦調整剤とを配合し、(C)無灰系摩擦調整剤の含有量が潤滑油組成物全量基準で0.20質量%以上となるように配合する、製造方法である。
  また、本発明の一実施形態である内燃機関用潤滑油組成物の製造方法では、(A)〜(C)成分以外のその他成分を更に配合してもよい。
  基油、前記(A)〜(C)成分、及びその他成分のそれぞれは、前記潤滑油組成物について説明したものと同様であるとともに、当該製造方法で得られる潤滑油組成物も前述した通りであり、それらの記載は省略する。
  当該製造方法では、前記(A)〜(C)成分及びその他成分は、いかなる方法で基油に配合されてもよく、その手法は限定されない。
 
【0091】
[潤滑油組成物を用いる潤滑方法]
  本発明の一実施形態である潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、本発明の一実施形態である潤滑油組成物を、例えば、エンジン等の内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。より好適には、銅及び/又は鉛を含有する部材を含む内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
 
【0092】
[潤滑油組成物の用途]
  本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として好適に用いることができる。より好適には、銅及び/又は鉛を含有する部材を含む内燃機関を潤滑するための潤滑油として用いることができる。
  また、本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、摩擦調整剤として無灰系摩擦調整剤を用いていながら、優れた摩擦低減効果を有することから、MoDTC等の金属系摩擦調整剤の低減が要求される用途、例えば、環境規制が厳しいガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、又はジメチルエーテルを燃料とするエンジンやガスエンジンなどの内燃機関用の潤滑油組成物としても好適である。
  例えば、ディーゼルエンジン油の公的規格であるAPI規格やJASO規格には、「カミンズ(Cummins)腐食試験(ASTM  D  6594)」が含まれており、これらの規格取得のためには、銅と鉛の溶出量を一定量以下に抑制する必要がある。
  そして、前記本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、これらの内燃機関に充填して、これら内燃機関に係る各部品を潤滑するために好適に用いることができる。
 
【実施例】
【0093】
  本発明を、実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0094】
  本明細書において、各実施例及び各比較例で用いた各原料の各物性の測定は、以下に示す要領に従って求めたものである。
(1)動粘度
  JIS  K2283に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した値である。
(2)粘度指数
  JIS  K2283に準拠して測定した値である。
(3)NOACK蒸発量
  ASTM  D5800(250℃、1時間)に規定の方法に従って測定した値である。
(4)環分析(%C
A及び%C
P)
  環分析n−d−M法にて算出した芳香族(アロマティック)分の割合(百分率)を%C
A、パラフィン分の割合(百分率)を%C
Pとして示し、ASTM  D3238に従って測定されたものである。
(5)硫黄含有量
  JIS  K2541−6に準拠して測定した値である。
(6)亜鉛原子、カルシウム原子、ホウ素原子、及びリン原子の含有量
  JPI−5S−38−2003に準拠して測定した値である。
(7)窒素原子の含有量
  JIS  K2609に準拠して測定した値である。
(8)塩基価
  JIS  K2501:2003に準拠して、電位差滴定法(塩基価・過塩素酸法)により測定したものである。
(9)スチレン−イソブチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)
  重量平均分子量(Mw)は、以下の条件で測定され、ポリスチレンを検量線として得られる値であり、詳細には以下の条件で測定されるものである。
装置:「GPC−900」(製品名、日本分光社製)
カラム:「TSK  gel  GMH6」(製品名、東ソー社製)×2本
溶媒:THF
温度:40℃
サンプル濃度:0.5質量%
検量線:ポリスチレン
検出器:示差屈折検出器
【0095】
  各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の評価方法は、以下の通りである。
【0096】
[摩擦低減効果]
  「高速往復動摩擦試験機TE77」(Phoenix  Tribology社製)を使用し、試験プレート(材質:SUJ−2、形状:長さ58mm×幅37mm×厚さ4mm)、及び試験シリンダーピン(材質:SUJ−2、形状:直径15mm×長さ22mm)を用いて、振幅8mm、周波数10Hz、油温80℃、荷重範囲50Nの条件で10分間慣らし運転を行った。
  その後、振幅8mm、周波数10Hz、油温80℃、荷重100N、運転時間30分間の条件で摩擦係数を測定することによって摩擦低減効果を評価した。
【0097】
[腐食試験]
  ガラス製試験管(径40mm×長さ300mm)に潤滑油組成物100mLを取り、銅板(25mm×25mm×1mm)及び鉛板(25mm×25mm×1mm)を研磨し、試験油に浸漬させ、腐食試験を行った。試験は、油温135℃で空気を5L/hの流量で吹き込みながら、168時間行った。その結果を、銅の溶出量及び鉛の溶出量で評価した。銅及び鉛の溶出量は、いずれも、JPI−5S−38−2003に準拠して測定した。
【0098】
[実施例1〜9、及び比較例1〜11]
  下記の表2及び3に示す組成で、基油に下記表2及び表3に示す各成分を配合して、基油及びこれら各成分を含有する各実施例及び各比較例の潤滑油組成物を調製した。また、上記評価方法に従って、各実施例及び各比較例の潤滑油組成物を評価した。得られた結果を下記表2及び表3に示す。
【0099】
  なお、下記表1〜3に示す各成分は、以下を表す。
<基油>
・基油:水素化精製基油、40℃動粘度21mm
2/s、100℃動粘度4.5mm
2/s、粘度指数135、硫黄含有量1質量ppm、NOACK蒸発量12.6質量%、n−d−M環分析;%C
A0.0、%C
P78.7
<(A)成分:一般式(I)で表されるベンゾトリアゾール誘導体>
・銅不活性化剤1:(4又は5)−メチルベンゾトリアゾール〔一般式(I)中、R
1がメチル基であり、R
2が水素原子であるベンゾトリアゾール誘導体〕
・銅不活性化剤2:1,2,3−ベンゾトリアゾール〔一般式(I)中、R
1及びR
2が水素原子であるベンゾトリアゾール誘導体〕
<(B)成分:エポキシ化合物>
・鉛不活性化剤1:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート
・鉛不活性化剤2:1,2−エポキシヘキサデカン
<(C)成分:無灰系摩擦調整剤>
・エステル系摩擦調整剤:グリセリンモノオレアート(「グリセリン1−オレアート」と同じ。)
・アミン系摩擦調整剤:オレイルジエタノールアミン
・アミド系摩擦調整剤:オレイン酸ジエタノールアミド
・エーテル系摩擦調整剤:「キクルーブFM−618C」(株式会社ADEKA製、オレイルポリグリセリルエーテル)
<その他成分>
・銅不活性化剤3:「IRGAMET(登録商標)  39」(BASF社製、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、一般式(I)中、R
1がメチル基、R
2が窒素原子を含有する炭素数17のヒドロカルビル基であるベンゾトリアゾール誘導体〕
<その他添加剤>
・粘度指数向上剤:スチレン−イソブチレン共重合体、重量平均分子量(Mw)580,000、樹脂量10質量%
・流動点降下剤:ポリメタクリレート
・金属系清浄剤1:カルシウムスルホネート、塩基価(過塩素酸法)17mgKOH/g、カルシウム含有量2.4質量%
・金属系清浄剤2:カルシウムサリチレート、塩基価(過塩素酸法)225mgKOH/g、カルシウム含有量7.8質量%
・金属系清浄剤3:カルシウムサリチレート、塩基価(過塩素酸法)350mgKOH/g、カルシウム含有量12.5質量%
・耐摩耗剤:ジアルキルジチオリン酸亜鉛、亜鉛含有量9.0質量%、リン含有量8.2質量%、硫黄含有量17.1質量%
・フェノール系酸化防止剤:オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
・アミン系酸化防止剤:ジアルキルジフェニルアミン、窒素含有量4.6質量%
・無灰系分散剤1:ポリブテニルコハク酸イミド、窒素含有量1.0質量%
・無灰系分散剤2:ポリブテニルコハク酸イミドのホウ素誘導体、窒素含有量1.2質量%、ホウ素含有量1.3質量%
・消泡剤:ジメチルポリシロキサン
  なお、前記その他添加剤の各配合量を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
  上記表2及び表3の結果から明らかなように、実施例1〜9の潤滑油組成物は、摩擦低減効果に優れ、かつ銅及び鉛含有部材の腐食抑制効果に優れることが確認できた。
  一方で、比較例1〜11の潤滑油組成物では、良好な銅及び鉛含有部材の腐食抑制効果が得られないことが確認された。
  具体的には、以下のことが確認できた。なお、以下の説明に示す各添加剤の含有量の値は、それぞれ、潤滑油組成物全量基準での含有量である。
【0104】
  始めに、比較例11の潤滑油組成物は、(A)〜(C)成分を含まず、基油及びその他添加剤のみを含有するものであるが、この場合、特に十分な摩擦低減効果が得られないため、潤滑油組成物として好ましくないことがわかる。
  次に、比較例10の潤滑油組成物は、基油及びその他添加剤に加えて(C)成分を0.10質量%含有するものであるが、(C)成分の含有量が0.10質量%と少量であるため、十分な摩擦低減効果が得られていない。更に、(C)成分を含有することによって、(C)成分が低含有量であるにもかかわらず、比較例11の潤滑油組成物と比較して、銅及び鉛の腐食が更に進行する結果となった。
  そして、比較例6〜9の潤滑油組成物は、基油及びその他添加剤に加えて、それぞれで異なる(C)成分を0.30質量%含有するものであり、更に銅不活性化剤3を0.05質量%含有するものである。比較例6〜9では、(C)成分の含有量が0.30質量%と多いため、摩擦低減効果が発現しているが、(A)成分及び(B)成分が含まれないため、鉛の腐食が進行する結果となった。
  そして、比較例5の潤滑油組成物は、比較例6の潤滑油組成物における銅不活性化剤3に代えて、(B)成分である鉛不活性化剤1を0.30質量%含有するものであるが、この場合、鉛の腐食は抑制されたものの、銅の腐食が進行する結果となった。
  更に、比較例1の潤滑油組成物は、銅及び鉛の腐食抑制効果を両立させるため、銅不活性化剤3を0.05質量%、及び(B)成分である鉛不活性化剤1を0.30質量%含有したものである。しかしながら、驚くべきことに、比較例1の潤滑油組成物では、著しく銅の腐食が進行する結果となった。
  同様に、比較例1で用いた(C)成分の種類を変更した比較例2〜4の潤滑油組成物についても、比較例1と同様に、銅の腐食を十分に抑制できない結果となった。
【0105】
  それに対して、本願実施例1〜9の潤滑油組成物では、(C)成分である無灰系摩擦調整剤を多く含有しているため、優れた摩擦低減効果が得られている。そして、(C)成分の含有量が多いにもかかわらず、(A)成分及び(B)成分を含有することによって、銅及び鉛含有部材の腐食抑制効果にも優れていることが確認できた。
  更に、驚くべきことに、(A)〜(C)成分を含有していない比較例11の潤滑油組成物と比較した場合でも、本願実施例1〜9の潤滑油組成物の銅及び鉛の腐食抑制効果が優れていることが確認された。すなわち、前述したような銅不活性化剤と鉛不活性化剤とを併用する際に発生するデメリットを解決しただけでなく、(A)成分及び(B)成分の組み合わせによる相乗効果により、無灰系摩擦調整剤を用いる潤滑油組成物であっても、摩擦低減効果に優れ、かつ銅及び鉛含有部材の腐食抑制効果に優れた潤滑油組成物が得られることが確認された。