特許第6741297号(P6741297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6741297
(24)【登録日】2020年7月29日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】ファルネセン重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 36/22 20060101AFI20200806BHJP
【FI】
   C08F36/22
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-526292(P2017-526292)
(86)(22)【出願日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2016068257
(87)【国際公開番号】WO2017002651
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2018年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-131236(P2015-131236)
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(73)【特許権者】
【識別番号】510079008
【氏名又は名称】アミリス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】久保 敬次
(72)【発明者】
【氏名】稲富 敦
(72)【発明者】
【氏名】社地 賢治
(72)【発明者】
【氏名】香田 大輔
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−204229(JP,A)
【文献】 特表2012−502135(JP,A)
【文献】 特表2012−502136(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047347(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/047348(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/115010(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/115011(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/128977(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/132905(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/151067(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/151068(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/151069(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/157624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 36/00 − 36/22
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファルネセンを含有する単量体(X)を重合率90%以上となるように乳化重合して、ファルネセン由来の単量体単位(a)を含有するファルネセン重合体を製造する、ファルネセン重合体の製造方法であって、
前記ファルネセン重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱法によって得られる、テトラヒドロフランの希薄溶液中の慣性半径(<r1/2)と絶対分子量(M)とが下記式(1)を満たし、
前記乳化重合の重合温度が50〜90℃である、ファルネセン重合体の製造方法。
log{<r1/2}=αlog(M)+β (1)
(式(1)中、αが0.5未満の正の定数を表し、βは定数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファルネセン重合体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、高分子量でありながら、流動性及び成形加工性に優れたファルネセン重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファルネセン重合体は、架橋することでゴム弾性を示すため、ファルネセン重合体を含有するゴム組成物を架橋してタイヤとして用いることが知られている(特許文献1)。
一般に架橋することでゴム弾性を示す重合体において、架橋物の力学物性(機械強度、ゴム弾性等)を向上させるために分子量を大きくする(高分子量化する)ことが知られている。しかしながら重合体を高分子量化すると、流動性及び成形加工性が低下するという問題がある。
【0003】
かかる問題を解決するため、低粘度エチレン系共重合体と、高粘度エチレン系共重合体と、架橋剤を含有するゴム組成物が知られている(特許文献2)。
しかしながら、該ゴム組成物を架橋して得られる架橋物の力学物性は未だ不十分であり、優れた流動性及び成形加工性を保持しつつ、高分子量化することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/047348号
【特許文献2】特開2012−207087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の現状を鑑みてなされたものであり、高分子量でありながら、高い流動性を有し、成形加工性に優れるファルネセン重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ファルネセン重合体が、サイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱法によって得られる、該重合体の希薄溶液中の慣性半径(<r1/2)と絶対分子量(M)が特定の関係式を満たすようにすることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は下記[1]及び[2]に関する。
[1] ファルネセン由来の単量体単位(a)を含有するファルネセン重合体であって、
サイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱法(以下、単に「SEC−MALS法」とも称する)によって得られる、テトラヒドロフラン(以下、単に「THF」とも称する)の希薄溶液中の慣性半径(<r1/2)と絶対分子量(M)とが下記式(1)を満たす、ファルネセン重合体。
log{<r1/2}=αlog(M)+β (1)
(式(1)中、αが0.5未満の正の定数を表し、βは定数を表す。)
[2] ファルネセンを含有する単量体(X)を重合率60%以上となるように乳化重合する、上記[1]に記載のファルネセン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高分子量でありながら、高い流動性を有し、成形加工性に優れるファルネセン重合体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ファルネセン重合体>
本発明のファルネセン重合体は、ファルネセン由来の単量体単位(a)を含有するファルネセン重合体であって、SEC−MALS法によって得られる、THFの希薄溶液中の慣性半径(<r1/2)と絶対分子量(M)とが下記式(1)を満たす重合体である。
log{<r1/2}=αlog(M)+β (1)
(式(1)中、αが0.5未満の正の定数を表し、βは定数を表す。)
本明細書において、「希薄溶液」とは、ファルネセン重合体をTHF中に溶解させて得られる濃度1g/dl以下の溶液をいう。
【0010】
本発明のファルネセン重合体は、分子量分布を有し、異なる絶対分子量(M)の重合体を含む混合物である。
そのため、前記式(1)においてMで示される絶対分子量は、異なる絶対分子量の重合体について分子量分別をすることなく測定する観点、及び高分子量の重合体の絶対分子量を測定する観点から、SEC−MALS法によって測定される。
【0011】
また、一般に高分子化合物を構成する高分子鎖は、溶液中で種々の形態で広がっており、かかる高分子鎖の広がり状態の平均を慣性半径<r1/2として表す。
前記式(1)において<r1/2で示される慣性半径は、異なる絶対分子量の重合体について分子量分別することなく直接的に測定する観点から、SEC−MALS法によって測定される。
【0012】
SEC−MALS法より得られる重合体の絶対分子量(M)と慣性半径<r1/2を、横軸に絶対分子量(M)の対数〔log(M)〕、縦軸に慣性半径<r1/2の対数〔log{<r1/2}〕として両対数プロットし、最小二乗法によって直線近似することで、下記一般式(2)で示される直線が得られる。α’は、該直線の傾きから算出される。
log{<r1/2}=α’log(M)+β’ (2)
(一般式(2)中、α’は正の定数を表し、β’は定数を表す。)
【0013】
前記したとおり、慣性半径<r1/2は高分子鎖の広がり状態の平均を表す。したがって、絶対分子量(M)の増加に伴う慣性半径<r1/2の増大の度合いを示すパラメータであるα’は、高分子化合物の絶対分子量と希薄溶液中での高分子鎖の広がり状態との関係を表す。α’は、例えば高分子鎖の広がり状態が直線状であれば慣性半径<r1/2は高分子化合物の絶対分子量(M)に正比例するので1となり、ランダムコイル状であれば約0.6となり、球状に近づくにしたがって小さな値となる。かかる高分子鎖の広がり状態が球状に近づくほど隣接する高分子鎖との絡み合いが抑制され、低粘度となり、良好な流動性が得られる。また、α’は重合体の分岐構造が増えるにしたがって低下する傾向となる。
【0014】
本発明のファルネセン重合体のTHFの希薄溶液におけるα’は、0.5未満の正の定数αであり、すなわち、本発明のファルネセン重合体の絶対分子量(M)と慣性半径(<r1/2)とが下記式(1)を満たす。
log{<r1/2}=αlog(M)+β (1)
(式(1)中、αは0.5未満の正の定数を表し、βは定数を表す。)
本発明において、前記式(1)中のαは、ファルネセン重合体のTHFの希薄溶液を用いて、SEC−MALS法により得られる絶対分子量(M)と慣性半径<r1/2の両対数プロットから得られ、絶対分子量(M)が50万以上、2,000万以下の範囲における該直線の傾きから算出される。
【0015】
前記式(1)中のαは、ファルネセン重合体の流動性の観点から、0.4以下が好ましく、そして、製造容易性の観点から、0.3以上が好ましい。
【0016】
本発明のファルネセン重合体のSEC−MALS法によって得られるクロマトグラムのピークトップの絶対分子量(Mt)は、架橋物の力学物性を高める観点から、100万以上が好ましく、200万以上がより好ましく、250万以上が更に好ましい。そして、ファルネセン重合体の流動性の観点から、2,000万以下が好ましく、1,000万以下がより好ましく、500万以下が更に好ましく、400万以下がより更に好ましい。
なお、クロマトグラムのピークトップの絶対分子量(Mt)は、後述する実施例に記載した方法により求められる。
【0017】
本発明のファルネセン重合体は、ファルネセン由来の単量体単位(a)(以下、単に「単量体単位(a)」と称する)を含有する。
単量体単位(a)は、α−ファルネセン由来の単量体単位であってもよく、また、下記式(I)で表されるβ−ファルネセン由来の単量体単位であってもよく、α−ファルネセン由来の単量体単位とβ−ファルネセン由来の単量体単位とを含むものでもよいが、製造容易性の観点から、β−ファルネセン由来の単量体単位を含有することが好ましい。
β−ファルネセン由来の単量体単位の含有量は、製造容易性の観点から、単量体単位(a)中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、100モル%であること、すなわち単量体単位(a)のすべてがβ−ファルネセン由来の単量体単位であることが更に好ましい。
本発明のファルネセン重合体中の単量体単位(a)の含有量は、50モル%超100モル%以下の範囲が好ましく、60モル%以上100モル%以下の範囲がより好ましく、65モル%以上100モル%以下の範囲が更に好ましく、70モル%以上100モル%以下の範囲がより更に好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
本発明のファルネセン重合体は、さらにファルネセン以外の他の単量体に由来する単量体単位(b)(以下、単に「単量体単位(b)」と称する)を含有してもよい。
かかる単量体単位(b)を形成できる他の単量体としては、ファルネセンとラジカル共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば芳香族ビニル化合物、共役ジエン、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体、並びにアクリロニトリル等が挙げられる。
【0020】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、及びα−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、N,N−ジエチル−4−アミノエチルスチレン、4−メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のスチレン誘導体;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピリジン等が挙げられる。
上記共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニルブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン、クロロプレン等のファルネセン以外の共役ジエンが挙げられる。
【0021】
上記アクリル酸の誘導体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸トリプロピレングリコール、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0022】
上記メタクリル酸の誘導体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
上記アクリルアミドの誘導体としては、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0024】
上記メタクリルアミドの誘導体としては、ジメチルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、イソプロピルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、芳香族ビニル化合物が好ましく、スチレン及びその誘導体がより好ましく、スチレン及びα−メチルスチレンから選ばれる1種以上が更に好ましい。
これら他の単量体は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のファルネセン重合体中のファルネセン以外の他の単量体由来の単量体単位(b)の含有量は、0モル%以上50モル%未満の範囲が好ましく、1モル%以上50モル%未満の範囲がより好ましく、5モル%以上40モル%以下の範囲が更に好ましく、8モル%以上35モル%以下の範囲がより更に好ましく、10モル%以上30モル%以下の範囲がより更に好ましい。
【0027】
<ファルネセン重合体の製造方法>
本発明のファルネセン重合体は、ファルネセンを含有する単量体(X)を重合することで得られる。
上記単量体(X)の重合方法は、特に限定はないが、工業的生産性の観点からラジカル重合法が好ましく、得られる重合体の分子量を高める観点から乳化重合法がより好ましい。
【0028】
本発明のファルネセン重合体の製造方法では、ファルネセンを含有する単量体(X)を重合率60%以上となるように乳化重合する。
本発明の製造方法において、重合率が高いほどファルネセン重合体が有する不飽和残基へのラジカルの連鎖移動に基づく分岐構造が増加するので、αの数値を小さくすることができる。かかる観点から重合率は60%以上であり、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
なお、重合率は、後述する実施例に記載した方法により求められる。
【0029】
本発明の製造方法に用いる単量体(X)に含まれるファルネセンは、α−ファルネセンであってもよく、また、前記式(I)で表されるβ−ファルネセンであってもよく、α−ファルネセンとβ−ファルネセンとを混合して用いてもよい。本発明の製造方法に用いるファルネセンは、製造容易性の観点から、β−ファルネセンを含有することが好ましく、該ファルネセン全量中のβ−ファルネセンの含有量は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
本発明の製造方法に用いる単量体(X)中のファルネセンの含有量は、50モル%超100モル%以下の範囲が好ましく、60モル%以上100モル%以下の範囲がより好ましく、65モル%以上100モル%以下の範囲が更に好ましく、70モル%以上100モル%以下の範囲がより更に好ましい。
単量体(X)は、さらにファルネセン以外の他の単量体を含有してもよい。
かかる他の単量体としては、前述した単量体単位(b)を形成できる単量体が例示される。
本発明の製造方法に用いる単量体(X)中の他の単量体の含有量は、0モル%以上50モル%未満の範囲が好ましく、1モル%以上50モル%未満の範囲がより好ましく、5モル%以上40モル%以下の範囲が更に好ましく、8モル%以上35モル%以下の範囲がより更に好ましく、10モル%以上30モル%以下の範囲がより更に好ましい。
【0030】
本発明の製造方法に係る乳化重合は、上記単量体(X)を水中に分散させたラテックス中で行う。水100質量部に対する単量体(X)の使用量は、生産性の観点で20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が更に好ましい。一方、単量体(X)の使用量が多くなるとラテックスが高粘度となるため、単量体(X)の使用量は200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下が更に好ましい。
【0031】
本発明の製造方法に係る乳化重合においては、通常乳化剤を用いる。かかる乳化剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級脂肪酸ナトリウム、ロジン系ソープ等のアニオン系界面活性剤;アルキルポリエチレングリコール、ノニルフェノールエトキシレート等のノニオン系界面活性剤;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤;コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン等の両性界面活性剤等を用いることができる。これら乳化剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
かかる乳化剤の使用量は、水100質量部に対して0.5〜40質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。
【0032】
本発明の製造方法に係る乳化重合においては、通常ラジカル重合開始剤(以下、単に「重合開始剤」と称する)を用いる。かかる重合開始剤としては、水溶性無機系開始剤、水溶性アゾ系開始剤、油溶性アゾ系開始剤、有機過酸化物等が挙げられる。
【0033】
水溶性無機系開始剤としては、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
水溶性アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2−2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられる。
【0034】
油溶性アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、ジメチル2,2−アゾビス(イソブチレート)等が挙げられる。
【0035】
有機過酸化物としては、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンジルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド;ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキシド;2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン等のパーオキシケタール;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル;ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、ファルネセン重合体の高分子量化の観点から、水溶性アゾ系開始剤及び有機過酸化物から選ばれる1種以上が好ましい。
水溶性アゾ系開始剤の中では、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、及び2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリドから選ばれる1種以上が好ましく、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]がより好ましい。
有機過酸化物の中では、ヒドロパーオキシドが好ましく、クメンヒドロパーオキシドがより好ましい。
かかる重合開始剤の使用量は、水100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。
【0037】
また、上記重合開始剤とともに還元剤を用いてもよい。かかる還元剤としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等の鉄化合物;硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のナトリウム塩;アスコルビン酸、ロンガリット、亜ジオチン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトース等の有機系還元剤等が挙げられる。このうち、上記した鉄化合物と有機系還元剤を併用することが好ましい。
かかる還元剤の使用量は、水100質量部に対して0.001〜0.2質量部の範囲が好ましく、0.005〜0.1質量部の範囲がより好ましい。
還元剤として鉄化合物と有機系還元剤を併用する場合、かかる鉄化合物の使用量は、水100質量部に対して0.001〜0.05質量部が好ましく、0.001〜0.01質量部がより好ましく、有機系還元剤の使用量は、水100質量部に対して0.005〜0.1質量部が好ましく、0.01〜0.05質量部がより好ましい。
【0038】
還元剤を用いる場合、必要に応じてエチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩、ピロリン酸カリウム等の添加剤を使用することができる。
【0039】
本発明の製造方法において、乳化重合の系内に、必要に応じて連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等のメルカプタン;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸2−エチルヘキシル、メルカプト酢酸メトキシブチル、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸メチル、β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸3−メトキシブチル、メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のチオール類;α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動定数の大きい炭化水素化合物等が使用できる。
かかる連鎖移動剤の使用量は、単量体(X)100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0040】
本発明の製造方法において、乳化重合の系内に、必要に応じて増粘抑制剤を添加してもよい。増粘抑制剤としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の製造方法において、乳化剤と増粘抑制剤とを併用する場合、増粘抑制剤の使用量は、ラテックス中のミセルの安定性の観点から、乳化剤100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
【0041】
本発明の製造方法に係る乳化重合は、単量体(X)、水、及び必要に応じて上記した乳化剤、還元剤、添加剤、連鎖移動剤、増粘抑制剤を含むラテックス中に、重合開始剤を添加して行うことが好ましい。かかるラテックス中の酸素は重合開始剤を添加する前に、十分に除去しておくことが好ましい。
【0042】
重合開始剤の添加方法に特に制限はなく、一括添加、断続添加、連続添加のいずれであってもよい。重合開始剤を連続添加する場合における添加時間は6時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましい。重合開始剤を断続添加する場合、添加しない時間を含めた添加時間の合計時間は8時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましく、また添加時間の間隔は2時間以下が好ましく、重合速度の確保の観点から、1時間以下がより好ましい。
重合開始剤とともに上記還元剤を用いる場合、開始剤効率を高める観点から、重合開始剤を断続添加又は連続添加することが好ましく、連続添加することがより好ましい。
【0043】
水溶性の重合開始剤を用いる場合は水溶液として添加すればよいが、水に難溶な重合開始剤を用いる場合は、水及び乳化剤を用いて重合開始剤の乳化液をあらかじめ調製し、これを添加してもよい。この場合、使用する乳化剤は乳化重合で用いるものと同じでもよいし、異なっていてもよい。また、2種以上の乳化剤を組み合わせてもよい。
【0044】
乳化重合の重合温度は、通常0〜100℃の範囲が好ましく、重合率を高める観点から、50〜90℃が望ましい。
【0045】
本発明の製造方法において、乳化重合後のラテックスから、塩析、酸析、凍結、溶剤添加等の公知の方法によりファルネセン重合体を回収することができる。またこうして回収したファルネセン重合体をさらに洗浄、再沈殿、スチームストリッピング等の公知の方法によって精製してもよい。
【0046】
本発明の製造方法において、ファルネセン重合体の劣化を抑制する観点から、老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤は、重合反応後のファルネセン重合体の回収処理や精製処理における劣化を抑制する観点から、乳化重合後のラテックスに添加した後に、ファルネセン重合体を回収処理又は精製処理をしてもよい。また、得られたファルネセン重合体の使用中の劣化を抑制する観点から、ファルネセン重合体の回収処理後又は精製処理後に、添加してもよい。老化防止剤を乳化重合後のラテックスに加えた場合において、ファルネセン重合体の回収処理又は精製処理において、添加した老化防止剤が除去されることがあるため、ファルネセン重合体の回収処理後又は精製処理後に再度添加することが望ましい。
【0047】
老化防止剤としては、一般的な材料を使用することができる。具体的には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール、モノ(又はジ、又はトリ)(α−メチルベンジル)フェノール等のフェノール系化合物;2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物;2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール系化合物;6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のアミン−ケトン系化合物;N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の芳香族二級アミン系化合物;1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物等が使用できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例及び比較例において使用した各成分は以下の通りである。
【0049】
(乳化剤)
・アニオン系界面活性剤:ロジン系ソープ〔不均化ロジンソープ、商品名「ロンヂスK−25」(固形分25質量%)、荒川化学工業株式会社製〕
(重合開始剤)
・水溶性アゾ系開始剤:2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]〔商品名:VA−086、和光純薬工業株式会社製〕
・ヒドロパーオキシド:クメンヒドロパーオキシド
(還元剤)
・鉄化合物:硫酸第一鉄(7水和物)
・有機系還元剤:ロンガリット
(添加剤)
・エチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩
・ピロリン酸カリウム
(増粘抑制剤)
・塩化カリウム
(老化防止剤)
・2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール(BHT)〔本州化学工業株式会社製〕
【0050】
実施例1
(ファルネセン重合体の製造)
攪拌機、及び還流管を備えたセパラブルフラスコに186.5gのイオン交換水、18gの乳化剤(ロンヂスK−25)、100gのβ−ファルネセン、0.5gの増粘抑制剤(塩化カリウム)、及び0.25gの水溶性アゾ系開始剤(VA−086)を仕込み、約30分間脱気を行った後に80℃に加熱して重合を開始した。80℃に保持して、6時間重合させた後、40℃まで冷却し、乳化液を得た。
得られた乳化液をアセトンに投入して重合体を沈殿させ回収し、0.1gのBHTを添加し、混練した後、乾燥させた。乾燥させた重合体をTHFに溶解して5質量%の溶液とし、該溶液の約5質量倍のメタノールに滴下して再沈殿した。得られた重合体に0.1gのBHTを添加し、混練した後、200Pa、25℃で48時間乾燥させてファルネセン重合体(以下、「重合体1」とも称する)を得た。得られた重合体1につき、後述する方法により評価した。結果を表1に示す。
【0051】
実施例2
(重合開始剤乳化液の調製)
0.17gの重合開始剤(クメンヒドロパーオキシド)、0.11gの乳化剤(ロンヂスK−25)を5.96gのイオン交換水に加えて乳化させ、重合開始剤乳化液を得た。
(ファルネセン重合体の製造)
攪拌機、及び還流管を備えたセパラブルフラスコに186.5gのイオン交換水、18gの乳化剤(ロンヂスK−25)、100gのβ−ファルネセン、0.5gの増粘抑制剤(塩化カリウム)、0.01gの鉄化合物〔硫酸第一鉄(7水和物)〕、0.03gの有機系還元剤(ロンガリット)、0.02gのエチレンジアミン四酢酸−2ナトリウム塩及び0.21gのピロリン酸カリウムを仕込み、約30分間脱気を行った後に80℃に加熱した。80℃に保持しつつ、フィードポンプを用いて、4時間かけて一定速度で前記重合開始剤乳化液を添加した。添加終了後、80℃で1時間追い込みを行い、合計5時間重合させた後、40℃まで冷却して反応を終了し、乳化液を得た。
得られた乳化液をアセトンに投入して重合体を回収し、0.1gのBHTを添加し、混練した後、乾燥させた。乾燥させた重合体をTHFに溶解して5質量%の溶液とし、該溶液の約5質量倍のメタノールに滴下して再沈殿した。得られた重合体に0.1gのBHTを添加し、混練した後、200Pa、25℃で48時間乾燥させてファルネセン重合体(以下、「重合体2」とも称する)を得た。得られた重合体2につき、後述する方法により評価した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例3
(ファルネセン重合体の製造)
実施例2において、100gのβ−ファルネセンの代わりに、82gのβ−ファルネセンと18gのスチレンの混合物を用いた以外は実施例2と同様の方法でファルネセン重合体(以下、「重合体3」とも称する)を得た。得られた重合体3につき、後述する方法により評価した。結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
(ファルネセン重合体の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン1490g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)1.24gを仕込み、50℃に昇温した後、予め調製した300gのブタジエンと1200gのβ−ファルネセンとの混合物を10ml/分で加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール0.65gを添加して重合を停止した後、水1500gを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、ファルネセン重合体(以下、「重合体4」とも称する)を得た。
得られた重合体4につき、後述する方法により評価した。結果を表1に示す。
【0054】
比較例2
(ファルネセン重合体の製造)
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン1790g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.9gを仕込み、50℃に昇温した後、THF3gを添加し、予め調製した276gのスチレンと924gのβ−ファルネセンとの混合物を10ml/分で加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール0.47gを添加して重合を停止した後、水1800gを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間乾燥することにより、ファルネセン重合体(以下、「重合体5」とも称する)を得た。
得られた重合体5につき、後述する方法により評価した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例3
(ファルネセン重合体の製造)
実施例3において、5℃で重合を行った以外は実施例3と同様の方法でファルネセン重合体(以下、「重合体6」とも称する)を得た。得られた重合体6につき、後述する方法により評価した。結果を表1に示す。
【0056】
実施例及び比較例で得られた重合体1〜6を用いて、以下に示す方法に従って評価を行った。
【0057】
(重合率)
重合率は、仕込みモノマー量(W1)に対する回収されたポリマー量(W2)から算出した。
重合率(%)=W2/W1×100
【0058】
(絶対分子量(M)、慣性半径<r1/2、絶対分子量(Mt))
得られたファルネセン重合体10mgをTHF1mlに溶解させ、40℃の湯浴中で2時間振盪し、濃度1g/dlのファルネセン重合体の希薄溶液を得た。該希薄溶液をポアサイズ0.45μmのフィルターでろ過したものを測定試料とし、SEC−MALS(サイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱)装置[HPLCシステム(Waters社製、「Allians Separation Module 2695」)、多角度光散乱検出器(Wyatt Technology社製、「DAWN E」)、カラム(昭和電工株式会社製、「LKF−806L」(2本接続))]を用いて下記の条件で分析を行った。
ベースライン補正及びピーク範囲を決定した後、絶対分子量(M)及び慣性半径<r1/2を求めた。また上記分析より得られるクロマトグラムのピークトップの絶対分子量(Mt)を求めた。
[測定条件]
検出器:多角度光散乱検出器
溶離液:THF
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
注入量:100μL
【0059】
(式(1)中の傾きα)
上記SEC−MALS装置を用いて得られるファルネセン重合体の絶対分子量(M)と慣性半径<r1/2を、横軸に絶対分子量(M)の対数〔log(M)〕、縦軸に慣性半径<r1/2の対数〔log{<r1/2}〕として両対数プロットし、最小二乗法によって直線近似することで、前記一般式(1)で示される直線を得た。αは、絶対分子量(M)が50万以上、2,000万以下の範囲における該直線の傾きから算出した。
【0060】
(ムーニー粘度)
ゴム組成物の成形加工性の指標として、JIS K6300に準拠し、得られたファルネセン重合体の100℃におけるムーニー粘度(予備加熱1分後、回転開始4分後)を測定した。数値が小さいほど成形加工性が良好である。
【0061】
【表1】
【0062】
表1から、実施例1〜3は、αの値がいずれも0.5未満であるのに対し、比較例1〜3は、αの値が0.5以上であることが示されている。
また、実施例1〜3は、比較例1〜3と比べて、高分子量であるにもかかわらず、ムーニー粘度が低く、高い流動性を有している。よって、本発明によれば、分子量と粘度のバランスに優れるため、良好な成形加工性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の重合体は、高分子量でありながら、高い流動性を有し、成形加工性に優れているため、タイヤ等のゴム組成物に好適に用いることができる。