(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カメラの撮像素子に対して垂直方向または水平方向から所定角度傾いた境界が直線となる白黒パターンを撮像して、前記カメラの空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、
フォーカス位置を動かして前記カメラが前記白黒パターンを撮像した複数のフレームにおいて、エッジを含む所定領域で、明部と暗部との間の明度となる画素数をエッジ広がり量として測定するエッジ広がり量測定手段と、
前記複数のフレームにおいて、前記エッジ広がり量測定手段で測定されたエッジ広がり量が最小のフレームを選択するフレーム選択手段と、
このフレーム選択手段で選択されたフレームにおいて、前記所定領域のMTFを算出するMTF算出手段と、
を備えることを特徴とするMTF測定装置。
カメラの撮像素子に対して垂直方向または水平方向から所定角度傾いた境界が直線となる白黒パターンを撮像して、前記カメラの空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、
フォーカス位置を動かして前記カメラが前記白黒パターンを撮像した複数のフレームにおいて、エッジを含む所定領域で、明部と暗部との間の明度となる画素数をエッジ広がり量として測定するエッジ広がり量測定手段と、
前記複数のフレームにおいて、前記エッジ広がり量測定手段で測定されたエッジ広がり量が最小のフレームを撮像したフォーカス位置を選択するフォーカス位置選択手段と、
前記カメラのフォーカス位置を前記フォーカス位置選択手段で選択されたフォーカス位置に固定して撮像したフレームを入力し、当該フレームにおいて、前記所定領域のMTFを算出するMTF算出手段と、
を備えることを特徴とするMTF測定装置。
前記エッジ広がり量測定手段は、隣接画素間の明度差が予め定めた明度差を超える画素の明度を、前記明部と前記暗部との間の明度と判定して、前記エッジ広がり量を測定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のMTF測定装置。
前記エッジ広がり量測定手段は、前記所定領域において、前記明部と前記暗部との間の予め定めた範囲の明度を持つ画素の総数を前記エッジ広がり量として測定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のMTF測定装置。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラの解像度特性を定量的に測定する方法としてインメガサイクルチャートを用いた手法や、Slanted−Edge法(傾斜エッジ法)といった空間周波数特性を測定する方法がある。
インメガサイクルチャートを用いた手法は、テストチャートとして、一般社団法人映像情報メディア学会(ITE:The Institute of Image Information and Television Engineers)が提供しているテストチャート(ITE高精細度インメガサイクルチャート:
図10参照)を用いて、当該チャートをカメラで撮像した画像から、CTF(Contrast Transfer Function)を空間周波数特性として測定する手法である。
図10に示すように、インメガサイクルチャートは、映像周波数1MHzから36MHzまでに相当する白黒の縦縞を並べ、チャート中心と4つのコーナー部分に800TVL/ph(27.7MHz)の縦縞を並べた矩形波のパターンを有している。
【0003】
Slanted−Edge法は、撮像素子に対して垂直(または水平)方向から数度傾いた境界が直線となる白黒パターンをカメラで撮像し、撮像画像中の所定領域(ROI:Region Of Interest〔関心領域〕)の画像(ROI画像)を用いて、水平方向の周波数特性または垂直方向の周波数特性(MTF)を測定する手法である(特許文献1〜3、非特許文献1参照)。
図11(a)に、垂直方向から数度傾いた境界が直線となる白黒パターンのROI画像(垂直エッジ画像)を示し、
図11(b)に、水平方向から数度傾いた境界が直線となる白黒パターンのROI画像(水平エッジ画像)を示している。
【0004】
例えば、
図11(a)のROI画像(垂直エッジ画像)から、MTFとして水平方向の周波数特性を求める場合、まず、Slanted−edge法は、
図12(a)に示すように、エッジeの傾きθeと同じ角度で水平軸(x軸)にエッジ画像の画素を投影する。
そして、Slanted−edge法は、
図12(b)に示すように、水平軸(x軸)に投影された画素の画素値をサブピクセル単位ごとに平均化することで、エッジの特性を示すエッジプロファイルを生成する。
そして、Slanted−edge法は、エッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求め、そのLSFをフーリエ変換することでMTFを求める。
【0005】
なお、
図11(b)のROI画像(水平エッジ画像)から、MTFとして垂直方向の周波数特性を求める場合、Slanted−edge法は、エッジ画像の画素を投影する軸を垂直軸とすることで、
図11(a)のROI画像(垂直エッジ画像)と同様の手法でMTFを求めている。
あるいは、Slanted−edge法においては、
図11(b)のROI画像(水平エッジ画像)を90°回転させて、
図11(a)のROI画像(垂直エッジ画像)と同様に、エッジ画像の画素を水平軸(x軸)に投影してMTFを求めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したインメガサイクルチャートを用いた手法は、当該チャートが14種類の周波数にしか対応していないため、測定可能な周波数が限定されている。また、この手法は、特性を測定する対象のカメラが高精細化すればするほど、カメラの撮像素子のサンプリング周波数によっては、折り返し歪みの影響を受けやすいという問題がある。
【0009】
一方、Slanted−edge法は、エッジプロファイルを生成する際に、画素値をサブピクセル単位ごとに平均化するオーバーサンプリングの効果により、撮像素子のナイキスト周波数内では折り返し歪みの影響を受けにくい。
そのため、より正確にカメラの空間周波数特性を測定するためには、Slanted−edge法を用いることが好ましいといえる。
【0010】
しかし、空間周波数特性は、わずかなフォーカスのずれでその特性が大きく変化する。そこで、実際に、空間周波数特性を測定する場合、少しずつカメラのフォーカス位置を動かして、その都度測定を行う処理を繰り返し、最良の周波数特性となるフォーカス位置での測定結果を求める必要がある。
特に、Slanted−edge法は、MTFの測定に際し、エッジの傾きを求める等の演算コストを伴う処理が発生するため、正確な周波数特性を求めるためには時間を要してしまうとうい問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、Slanted−edge法でMTFを測定する場合に、1回の演算で正確なMTFを測定することが可能なMTF測定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係るMTF測定装置は、カメラの撮像素子に対して垂直方向または水平方向から所定角度(数度)傾いた境界が直線となる白黒パターンを撮像して、カメラの空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、エッジ広がり量測定手段と、フレーム選択手段と、MTF算出手段と、を備える構成とした。
【0013】
かかる構成において、MTF測定装置は、エッジ広がり量測定手段によって、フォーカス位置を動かしてカメラが白黒パターンを撮像した複数のフレームにおいて、エッジを含む所定領域(ROI)で、明部と暗部との間の明度となる画素数をエッジ広がり量として測定する。すなわち、エッジ広がり量測定手段は、白と黒との明度の間のグレーで撮像されている画素数をエッジ広がり量として測定する。このエッジ広がり量は、フォーカスが合っていない場合、フォーカスのぼけによってシャープなエッジが撮像されず、グレーの画素数が多くなるため、フォーカスが合っているか否かの基準として用いることができる。
【0014】
そして、MTF測定装置は、フレーム選択手段によって、複数のフレームにおいて、エッジ広がり量測定手段で測定されたエッジ広がり量が最小のフレームを選択する。これによって、フォーカスが合った状態で撮像されたフレームが選択される。
そして、MTF測定装置は、MTF算出手段によって、フレーム選択手段で選択されたフレームにおいて、Slanted−edge法を用いて、所定領域(ROI)のMTFを算出する。
これによって、MTF測定装置は、フォーカスの合った画像から、一度のMTFの計算で、正確にMTFを測定することができる。
【0015】
また、前記課題を解決するため、本発明に係るMTF測定装置は、カメラの撮像素子に対して垂直方向または水平方向から所定角度(数度)傾いた境界が直線となる白黒パターンを撮像して、カメラの空間周波数特性を表すMTFを測定するMTF測定装置であって、エッジ広がり量測定手段と、フォーカス位置選択手段と、MTF算出手段と、を備える構成としてもよい。
【0016】
かかる構成において、MTF測定装置は、エッジ広がり量測定手段によって、フォーカス位置を動かしてカメラが白黒パターンを撮像した複数のフレームにおいて、エッジを含む所定領域(ROI)で、明部と暗部との間の明度となる画素数をエッジ広がり量として測定する。
【0017】
そして、MTF測定装置は、フォーカス位置選択手段によって、フォーカス位置を動かして撮像された複数のフレームにおいて、エッジ広がり量測定手段で測定されたエッジ広がり量が最小のフレームを撮像したフォーカス位置を選択する。これによって、最もフォーカスが合ったときのフォーカス位置が選択されることになる。
そして、MTF測定装置は、カメラのフォーカス位置をフォーカス位置選択手段で選択されたフォーカス位置に固定して撮像したフレームを入力し、MTF算出手段によって、当該フレームにおいて、Slanted−edge法を用いて、所定領域(ROI)のMTFを算出する。
これによって、MTF測定装置は、フォーカス位置の移動に伴う動きぼけがなく、フォーカス位置が完全に固定された状態で撮像された画像から、一度のMTFの計算で、正確にMTFを測定することができる。
【0018】
なお、MTF測定装置は、コンピュータを、前記したエッジ広がり量測定手段、フレーム選択手段、MTF算出手段、として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。また、MTF測定装置は、コンピュータを、前記したエッジ広がり量測定手段、フォーカス位置選択手段、MTF算出手段、として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、エッジ広がり量の測定によって、MTFの計算に最適なフォーカスの合った画像またはフォーカス位置を決定した後、MTFを計算することができる。
そのため、本発明は、従来のSlanted−edge法のように、フォーカス位置の調整とMTFの演算とを繰り返してMTFを測定する手法に比べて、フォーカス調整に要する時間を大きく削減することができ、高速かつ正確にMTFを測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
≪第1実施形態≫
[MTF測定装置の構成]
最初に、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るMTF測定装置1の構成について説明する。
【0022】
MTF測定装置1は、カメラ2の空間周波数特性を表すMTFを測定するものである。ここでは、MTF測定装置1は、被測定対象のカメラ2を接続している。
【0023】
カメラ2は、MTFの測定対象である一般的なカメラ(撮像系)である。このカメラ2は、少なくともフォーカス調整機能(ここでは、フォーカスレンズ20とその駆動部21)を備えたビデオカメラである。駆動部21は、フォーカスリング(不図示)等の操作によって、フォーカスレンズ20の位置(フォーカス位置)を駆動制御するものである。ここでは、操作者がフォーカスリング(不図示)等を操作し、フォーカス位置を手前から奥、または、奥から手前に動かすことで、カメラ2は、そのフォーカス位置でテストチャートCを撮像した映像(動画像)を、MTF測定装置1に出力する。
【0024】
テストチャート(MTF測定用チャート)Cは、カメラ2の撮像素子(不図示)に対して垂直方向または水平方向から所定角度傾いた境界が直線となる白黒パターンを有するSlanted−edge法で用いるチャートである。カメラ2は、テストチャートCの白黒の境界線が、所定角度(1〜5度程度)傾いた状態で撮像する。ここで、水平方向の周波数特性を測定する場合、カメラ2は、
図2(a)のように、境界線を斜め垂直方向にした状態でテストチャートCを撮像する。そして、操作者は、
図2(a)のように、テストチャートCを撮像した映像からROIを指定する。この場合、ROIによって、水平方向で明度(基準白レベル、基準黒レベル)が異なる垂直エッジ画像が特定される。
また、垂直方向の周波数特性を測定する場合、カメラ2は、
図2(b)のように、境界線を斜め水平方向にした状態でテストチャートCを撮像する。そして、操作者は、
図2(b)のように、テストチャートCを撮像した映像からROIを指定する。この場合、ROIによって、垂直方向で明度(基準白レベル、基準黒レベル)が異なる水平エッジ画像が特定される。
【0025】
以下、カメラ2で撮像された映像によって、カメラ2のMTFを測定するMTF測定装置1の構成について詳細に説明する。
MTF測定装置1は、映像入力手段10と、ROI特定手段11と、ROI切り出し手段12と、エッジ広がり量測定手段13と、フレーム選択手段14と、MTF算出手段15と、を備える。
【0026】
映像入力手段10は、カメラ2から、テストチャートCを撮像した映像を入力するものである。この映像入力手段10は、入力した映像をフレーム単位でROI切り出し手段12に出力する。
このとき、映像入力手段10は、フレームを、当該フレームを特定する番号(フレーム番号)と対応付けてROI切り出し手段12に出力する。なお、カメラ2から、タイムコードが記録された映像信号を入力される場合、フレームを特定する番号としてタイムコードを用いてもよい。
ここでは、映像入力手段10は、操作者の指示によって、映像の入力と終了が指示され、フォーカスを動かしている間の映像を入力する。
【0027】
ROI特定手段11は、ROIを特定する情報(ROI特定情報)を入力するものである。このROI特定情報は、例えば、ROIの対角点の座標等である。このROI特定手段11は、入力されたROI特定情報をROI切り出し手段12に出力する。
【0028】
ROI切り出し手段12は、映像入力手段10で入力された映像から、ROI特定手段11から入力されたROI特定情報で特定されるROIの領域をフレーム単位で切り出すものである。このROI切り出し手段12において、フレーム番号とフレーム(画像)とが対応付けられてROIの領域が切り出される。
【0029】
エッジ広がり量測定手段13は、ROI切り出し手段12で切り出されるROIの領域において、エッジの広がりの度合いを示すエッジ広がり量を、フレームごとに測定するものである。このエッジ広がり量測定手段13は、測定したエッジ広がり量を、測定したフレームのフレーム番号に対応付けて、フレーム選択手段14に出力する。
なお、エッジ広がり量測定手段13は、ROI切り出し手段12にフレームが入力されるたびにエッジ広がり量を測定することとしてもよいし、ROI切り出し手段12にフォーカスを動かしている状態のROI切り出し映像をすべて記憶手段(不図示)に記憶した後にそれぞれのフレームにおいてエッジ広がり量を測定することとしてもよい。
【0030】
ここでエッジの広がりとは、ROIを構成する基準白(明部)と基準黒(暗部)の画素の間に、基準白と基準黒との間の明度の画素が存在する範囲をいう。フォーカスが合った状態で撮像されたROIは、エッジ部分で基準白と基準黒との明度の画素数が少なくなる。しかし、フォーカスが合っていない状態では、エッジ部分で基準白と基準黒との間の明度の画素数が多くなる。
すなわち、エッジの広がりは、フォーカスが合っているか否かを判定する基準となる。
そこで、エッジ広がり量測定手段13は、ROI切り出し手段12で切り出されたROIの領域において、フレームごとに、フォーカスが合っているか否かを判定する基準として、エッジの広がりの度合いを示すエッジ広がり量を測定する。
【0031】
ここで、
図3を参照(適宜
図1参照)して、エッジ広がり量測定手段13で行うエッジ広がり量の計測について具体的に説明する。
ここでは、ROIで特定される画像として垂直エッジ画像を用いて、水平方向のエッジ広がり量を計測する例を説明する。
【0032】
図3に示すように、エッジ広がり量測定手段13は、ROI上の水平方向の行(ラインL)に沿って、ROIの左端から隣接画素の信号レベル(明度)が予め定めた明度差を超過する水平位置までを一方の基準(ここでは、基準白W:明部)の信号レベルと判定し、当該水平位置をエッジの広がりの左端とする。また、エッジ広がり量測定手段13は、エッジの広がりの左端を特定後、さらに、ROI上の水平方向の行(ラインL)に沿って、隣接画素の信号レベルが予め定めた明度差に収まる水平位置をエッジの広がりの右端とする。このエッジの広がりの右端より右に連続する画素の信号レベルが他方の基準(ここでは、基準黒B:暗部)の信号レベルとなる。
ここでは、左の基準の信号レベルがW、右の基準の信号レベルがBとなる例で示したが、左の基準の信号レベルがB、右の基準の信号レベルがWとなるエッジ画像を用いても同様の手法で測定できる。
【0033】
このエッジ広がり量測定手段13は、エッジの広がりの右端については、ROI上の水平方向の行(ラインL)に沿って、ROIの右端から信号レベル(明度)が予め定めた明度差を超過する水平位置までを基準(ここでは、基準黒B)の信号レベルと判定し、当該水平位置をエッジの広がりの右端と判定することとしてもよい。
これによって、エッジ広がり量測定手段13は、基準白Wと基準黒Bとの間で、異なる明度の範囲をエッジの広がり(画素数)として特定することができる。
ここでは、エッジ広がり量測定手段13は、ROI(垂直エッジ画像)のすべてのラインでエッジの広がりを特定しその総和または平均を求めることでエッジ広がり量としてもよい。なお、エッジ広がり量は、少なくとも1ラインで測定したエッジの広がりとしてもよいが、ノイズ等の影響を考慮して、統計量(エッジ広がりの総和、平均)を用いることが好ましい。
【0034】
また、ここでは、垂直エッジ画像から、水平方向のエッジ広がり量を計測する例を説明したが、ROIで特定される画像として水平エッジ画像を用いる場合、ラインの変わりに垂直方向の列(カラム)でエッジ広がり量を測定すればよい。
なお、ROIで特定される画像が垂直エッジ画像(
図2(a))であるか水平垂直エッジ画像(
図2(b))であるかは、予め外部から設定されることとしてもよいし、ROIの水平画素数、垂直画素数の大きさによって、エッジ広がり量測定手段13が判別することとしてもよい。
図1に戻って、MTF測定装置1の構成について説明を続ける。
【0035】
フレーム選択手段14は、撮像されたフレームの中で、エッジ広がり量が最も小さいROIに対応するフレームを選択するものである。ここでは、フレーム選択手段14は、エッジ広がり量測定手段13で測定されたフレーム番号に対応付けられているエッジ広がり量が最小のフレーム番号に対応するフレームをMTF測定対象フレームとして選択する。このフレーム選択手段14は、選択したフレーム番号に対応付けられているROIの画像をMTF算出手段15に出力する。
【0036】
例えば、フレーム選択手段14は、
図4に示すように、フレーム番号順に逐次入力されるエッジ広がり量が最小値となったROIのフレーム番号のフレームをMTF測定対象フレームとする。この場合、フレーム選択手段14は、エッジ広がり量が最小となるフレームを特定するために、エッジ広がり量が最小となるフレーム前後の少なくとも数フレーム分のROIで特定される画像を記憶手段(不図示)に保持する。
【0037】
MTF算出手段15は、MTF測定対象フレーム内のROIからMTFを算出するものである。ここでは、MTF算出手段15は、フレーム選択手段14で選択されたフレーム番号で特定されるROIの領域の画像についてMTFを算出する。
このMTF算出手段15は、一般的なSlanted−edge法を用いて、ROI(エッジ画像)から、MTFを算出する。すなわち、MTF算出手段15は、エッジ画像からエッジの特性を示すエッジプロファイルを生成し、エッジプロファイルを微分することで、線広がり関数(LSF)を求め、LSFをフーリエ変換することでMTFを求める。
【0038】
以上説明したようにMTF測定装置1を構成することで、MTF測定装置1は、フォーカスの合った状態で撮像されたMTF測定対象フレームのROIで、MTFを測定することができる。このとき、MTF測定装置1は、フォーカス位置の調整とMTFの計算とを繰り返すことなく、フォーカスの合ったMTF測定対象フレームのROIで、MTFの計算を1回行えばよく、MTF測定を高速に行うことができる。
なお、MTF測定装置1は、図示を省略したコンピュータを、前記した各手段として機能させるプログラム(MTF測定プログラム)で動作させることができる。
【0039】
[MTF測定装置の動作]
次に、
図5を参照(構成については、適宜
図1参照)して、本発明の第1実施形態に係るMTF測定装置1の動作について説明する。
まず、MTF測定装置1は、ROI特定手段11によって、MTF測定領域を特定するROI特定情報を入力する(ステップS1)。ここでは、MTF測定装置1は、カメラ2が撮像したテストチャートCの撮像画像上で指定された矩形領域(ROI)を特定するROI特定情報(例えば、対角点の座標)を入力する。
【0040】
そして、MTF測定装置1は、映像入力手段10によって、操作者がカメラ2のフォーカス位置を動かして撮像した映像を入力する(ステップS2)。
そして、MTF測定装置1は、ROI切り出し手段12によって、入力された映像から、ステップS1で入力されたROI特定情報で特定されるROIの領域をフレーム単位で切り出す(ステップS3)。
これによって、フォーカス位置の異なるフレーム(ROIの領域)が、順次、ROI切り出し手段12で切り出されることになる。
【0041】
そして、MTF測定装置1は、エッジ広がり量測定手段13によって、ROI切り出し手段12で切り出されたROIのエッジ広がり量を測定する(ステップS4)。ここでは、ROIで特定される画像が垂直エッジ画像(
図2(a))であれば、エッジ広がり量測定手段13は、フレーム単位で、ROIの画像領域内のラインごとに、基準黒と基準白との間の明度の画素数を測定し、当該画素数の総ライン数の和または平均をエッジ広がり量とする。また、ROIで特定される画像が水平エッジ画像(
図2(b))であれば、エッジ広がり量測定手段13は、フレーム単位で、ROIの画像領域内のカラムごとに、基準黒と基準白との間の明度の画素数を測定し、当該画素数の総カラム数の和または平均をエッジ広がり量とする。
【0042】
そして、MTF測定装置1は、フレーム選択手段14によって、ステップS4で測定されるエッジ広がり量が最小のROIに対応するフレームをMTF測定対象フレームとして選択する(ステップS5)。ここでは、フレーム選択手段14は、エッジ広がり量が最小のフレームのフレーム番号を選択し、選択したフレーム番号のROIで特定される画像をMTF算出手段15に出力する。
【0043】
その後、MTF測定装置1は、MTF算出手段15によって、ステップS5で選択されたフレーム番号に対応するROIでMTFを算出する(ステップS6)。
すなわち、MTF算出手段15は、フレーム選択手段14から出力される、ステップS5で選択したフレーム番号のROIで特定される画像からMTFを算出する。
【0044】
以上の動作によって、MTF測定装置1は、フォーカスの合ったMTF測定対象フレームのROIで1回のMTFの計算を行うだけで、最良の周波数特性となるMTFを測定することができる。
【0045】
≪第2実施形態≫
[MTF測定装置の構成]
次に、
図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るMTF測定装置1Bの構成について説明する。
MTF測定装置1Bは、カメラ2Bの空間周波数特性を表すMTFを測定するものである。MTF測定装置1Bは、MTF測定装置1(
図1参照)と同様に、エッジ画像のエッジ広がり量によって、フォーカス位置を特定して、そのフォーカス位置で撮像されたROIでMTFを測定する。ただし、MTF測定装置1Bは、カメラ2Bのフォーカス位置を指定する機能を有する。
ここでは、MTF測定装置1Bは、被測定対象のカメラ2Bを接続している。
【0046】
カメラ2Bは、MTFの被測定対象の撮像系である。このカメラ2Bは、カメラ2(
図1参照)と同様に、少なくともフォーカス調整機能(ここでは、フォーカスレンズ20とその駆動部21)を備えたビデオカメラであって、さらに、フォーカス位置を外部に出力するとともに、指定されたフォーカス位置にフォーカスを合わせる機能を有する。
テストチャートCは、
図1で説明したものと同一であるため、説明を省略する。
【0047】
以下、MTF測定装置1Bの構成について詳細に説明する。
MTF測定装置1Bは、映像入力手段10Bと、ROI特定手段11と、ROI切り出し手段12と、エッジ広がり量測定手段13Bと、MTF算出手段15Bと、フォーカス位置選択手段16と、フォーカス位置指定手段17と、を備える。
ROI特定手段11およびROI切り出し手段12は、
図1で説明したMTF測定装置1の構成と同じものであるため、説明を省略する。以下、映像入力手段10B、エッジ広がり量測定手段13B、フォーカス位置選択手段16、フォーカス位置指定手段17、MTF算出手段15Bの順に説明する。
【0048】
映像入力手段10Bは、カメラ2Bから、テストチャートCを撮像した映像およびフォーカス位置を入力するものである。この映像入力手段10Bは、入力した映像をフレーム単位でROI切り出し手段12に出力する。
このとき、映像入力手段10Bは、フレームを、フォーカス位置と対応付けてROI切り出し手段12に出力する。
【0049】
エッジ広がり量測定手段13Bは、ROI切り出し手段12で切り出されるROIの領域において、エッジの広がりの度合いを示すエッジ広がり量を、フレームごとに測定するものであって、エッジ広がり量測定手段13(
図1参照)と同じ機能を有する。このエッジ広がり量測定手段13Bは、フレームごとに測定したエッジ広がり量と、当該フレームに対応付けられているフォーカス位置とを、フォーカス位置選択手段16に出力する。
【0050】
フォーカス位置選択手段16は、エッジ広がり量が最も小さいフレームのフォーカス位置を選択するものである。ここでは、フォーカス位置選択手段16は、エッジ広がり量測定手段13Bから入力されるフレームごとのエッジ広がり量およびフォーカス位置において、エッジ広がり量が最小となるフォーカス位置を、MTF測定フォーカス位置として選択する。このフォーカス位置選択手段16は、選択したフォーカス位置(MTF測定フォーカス位置)をフォーカス位置指定手段17に出力する。
なお、フォーカス位置選択手段16は、操作者によるフォーカス位置の移動が完了した後に動作することとする。例えば、フォーカス位置選択手段16は、操作者によるフォーカス位置の移動後、外部から操作者によって指示されることで動作する。
【0051】
フォーカス位置指定手段17は、フォーカス位置選択手段16で選択されたフォーカス位置となるように、カメラ2Bにフォーカス位置を指示するものである。これによって、映像入力手段10Bには、フォーカス調整後のフォーカスの合った状態で映像が入力され、フォーカスの合ったフレームがROI切出し手段12に入力されることになる。
【0052】
MTF算出手段15Bは、MTF測定対象フレーム内のROIからMTFを算出するものである。ここでは、MTF算出手段15Bは、ROI切り出し手段12で切り出された、ROI特定手段11で特定されるROIの領域の画像について、MTFを算出する。
なお、MTF算出手段15BにおけるMTFの算出手法は、MTF算出手段15(
図1参照)と同様に、一般的なSlanted−edge法を用いればよい。
ここで、フォーカス位置指定手段17によって指定されたフォーカス位置にフォーカス調整後、フォーカスを動かしていない状態でエッジ広がり量に変化がないため、MTF算出手段15Bは、フォーカス調整後のいずれかのフレームをMTF測定対象フレームとする。
【0053】
以上説明したようにMTF測定装置1Bを構成することで、MTF測定装置1Bは、フォーカスの合った状態で撮像されたMTF測定対象フレームのROIを用いて、MTFを測定することができる。このとき、MTF測定装置1Bは、フォーカス位置の調整とMTFの計算とを繰り返すことなく、フォーカスの合ったMTF測定対象フレームのROIで、MTFの計算を1回行えばよく、MTF測定を高速に行うことができる。
さらに、MTF測定装置1Bは、フォーカスの合った状態でフォーカス位置を固定してMTFを測定するため、動画像のフレームレートに依存する1フレーム期間内での、フォーカスリングの移動に伴う動きぼけがなく、精度よくMTFを測定することができる。
なお、MTF測定装置1Bは、図示を省略したコンピュータを、前記した各手段として機能させるプログラム(MTF測定プログラム)で動作させることができる。
【0054】
[MTF測定装置の動作]
次に、
図7を参照(構成については、適宜
図6参照)して、本発明の第2実施形態に係るMTF測定装置1Bの動作について説明する。
まず、MTF測定装置1Bは、ROI特定手段11によって、MTF測定領域を特定するROI特定情報を入力する(ステップS10)。
【0055】
そして、MTF測定装置1Bは、映像入力手段10Bによって、操作者がカメラ2のフォーカス位置を動かして撮像した映像をフォーカス位置とともに入力する(ステップS11)。
そして、MTF測定装置1Bは、ROI切り出し手段12によって、入力された映像から、ステップS10で入力されたROI特定情報で特定されるROIの領域をフレーム単位で切り出す(ステップS12)。
これによって、フォーカス位置の異なるフレーム(ROIの領域)が、順次、ROI切り出し手段12で切り出されることになる。
【0056】
そして、MTF測定装置1Bは、エッジ広がり量測定手段13Bによって、ROI切り出し手段12で切り出されたROIのエッジ広がり量を測定する(ステップS13)。
【0057】
そして、MTF測定装置1Bは、フォーカス位置選択手段16によって、ステップS12で測定されるエッジ広がり量が最小のフォーカス位置をMTF測定フォーカス位置として選択する(ステップS14)。
【0058】
その後、MTF測定装置1Bは、フォーカス位置指定手段17によって、ステップS14で選択されたMTF測定フォーカス位置を指定することで、カメラ2Bの駆動部21を駆動させて、フォーカスレンズ20のフォーカス位置を指定された位置に移動させる(ステップS15)。
【0059】
さらに、MTF測定装置1Bは、映像入力手段10Bによって、MTF測定フォーカス位置でフォーカスが固定された画像を入力する(ステップS16)。
そして、MTF測定装置1Bは、ROI切り出し手段12によって、入力された映像から、ステップS10で入力されたROI特定情報で特定されるROIの領域をフレーム単位で切り出す(ステップS17)。
【0060】
そして、MTF測定装置1Bは、MTF算出手段15Bによって、ステップS17でROI切り出し手段12により切り出されたMTF測定フォーカス位置で撮像された画像内のROIでMTFを算出する(ステップS18)。
【0061】
以上の動作によって、MTF測定装置1Bは、フォーカスの合ったMTF測定対象フレームのROIで1回のMTFの計算を行うだけで、最良の周波数特性となるMTFを測定することができる。
以上、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1,1Bの構成および動作について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0062】
≪変形例1≫
ここでは、MTF測定装置1,1Bは、フォーカスを動かしてカメラ2,2Bが撮像したテストチャートCの映像(動画像)を入力した。しかし、フォーカス位置を動かす対象をテストチャートCとしてもよい。例えば、テストチャートCを印刷あるいは貼付した金属板、ガラス板等を垂直に固定し、カメラ2,2Bの光軸方向に移動させるXステージを用いてもよい。この場合、カメラ2Bはフォーカス位置を出力する機能や、フォーカス位置にフォーカスを合わせる機能を有する必要はなく、Xステージがその機能を有することになる。これによって、カメラ2,2Bのフォーカスリングよりもフォーカス位置を微細に調整することができる。
【0063】
≪変形例2≫
また、ここでは、テストチャートCとして、垂直または水平方向の周波数特性を測定する単方向のエッジを有するチャートを用いた。しかし、テストチャートCは、例えば、特開2010−237177号公報に記載のような複数の方向にエッジ(直線)を有する多方向MTF測定用チャートを用いてもよい。
その場合、ROI特定手段11は、多方向MTF測定用チャートを撮像した画像から複数のROIを特定することとする。そして、エッジ広がり量測定手段13,13Bは、複数のROIごとにエッジ広がり量を測定する。なお、エッジの方向によって、ROIを斜めに傾けて設定する場合、エッジ広がり量測定手段13,13Bは、そのROIの画像をその傾きに応じて回転させてから、エッジ広がり量を測定すればよい。
【0064】
このとき、MTF測定装置1(
図1参照)であれば、フレーム選択手段14によって、ROIごとにエッジ広がり量が最小となるフレームを選択し、MTF算出手段15によって、ROIごとに個別にエッジ広がり量が最小となるフレームを読み出して、ROIのMTFを算出する。
【0065】
また、MTF測定装置1B(
図6参照)であれば、フォーカス位置選択手段16によって、ROIごとにエッジ広がり量が最小となるフォーカス位置を選択し、フォーカス位置指定手段17によって、ROIごとにフォーカス位置を切り替える。そして、MTF測定装置1Bは、映像入力手段10Bによって、順次、ROIごとに最適なフォーカス位置で撮像した画像をROI切り出し手段12に出力し、MTF算出手段15Bによって、ROIごとにフレームを読み出してMTFを算出する。
これによって、撮像する多方向MTF測定用チャートがカメラ2,2Bの光軸に対してあおりが発生している場合でも、個々のROIで最適なフォーカス位置のフレームを用いて、精度よくMTFを算出することができる。
【0066】
≪変形例3≫
また、ここでは、ROI切り出し手段12で逐次ROIを切り出すこととしたが、ROIを含んだ連続するフレームをそのまま記憶して、フレーム内のROIの領域でMTFを測定することとしてもよい。
【0067】
例えば、
図8に示すように、
図1のROI切り出し手段12の代わりに、フレームを記憶するフレーム記憶手段18を備えるMTF測定装置1Cとして構成してもよい。この場合、ROI特定手段11は、エッジ広がり量測定手段13およびMTF算出手段15にROI特定情報を出力する。そして、エッジ広がり量測定手段13が、フレーム内のROI特定情報で特定されるROIでエッジ広がり量を測定し、MTF算出手段15が、フレーム内のROI特定情報で特定されるROIでMTFを算出すればよい。
【0068】
また、例えば、
図9に示すように、
図6のROI切り出し手段12の代わりに、フレームを記憶するフレーム記憶手段18を備えるMTF測定装置1Dとして構成してもよい。この場合、ROI特定手段11は、エッジ広がり量測定手段13BおよびMTF算出手段15BにROI特定情報を出力する。そして、エッジ広がり量測定手段13Bが、フレーム内のROI特定情報で特定されるROIでエッジ広がり量を測定し、MTF算出手段15Bが、フレーム内のROI特定情報で特定されるROIでMTFを算出すればよい。
【0069】
≪変形例4≫
また、ここでは、測定したMTFをそのまま外部に出力することとした。しかし、MTF測定装置1,1Bは、MTF算出手段15,15Bの後段にグラフ生成手段を備える構成としてもよい。
このグラフ生成手段は、例えば、横軸に周波数、縦軸にMTFをとった座標上にMTF算出手段15,15Bで算出した空間周波数ごとのMTFをプロットすることで、視覚化可能なグラフを生成する。このグラフ生成手段が、生成したグラフを表示装置に出力することで、操作者がカメラ2,2BのMTFの解析結果を視認することができる。
【0070】
≪変形例5≫
また、ここでは、エッジ広がり量測定手段13,13Bで、隣接画素間の明度差が予め定めた明度差を超える画素の明度を、明部と暗部との間の明度と判定して、エッジ広がり量を測定することとした。
しかし、ROIに含まれる画素の中で、明度の信号レベルWと暗部の信号レベルBとの間の予め定めた範囲の明度を持つ画素数を数えることで、エッジの広がり量を測定してもよい。この場合、明部の信号レベルWや暗部の信号レベルBは、隣接画素間の明度差が予め定めた明度差を超えない画素の信号レベルの平均値から求めてもよいし、予め映像信号レベルから測定して手動で設定しておいてもよい。