【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<デュラム小麦由来の小麦粉の製造>
デュラム小麦(カナダ産、ウェスタン・アンバー・デュラム)を、常法に従って精選、加水・調質(テンパリング)した後、ブレーキング工程、グレーディング工程、ピュリフィケーション工程を経てセモリナ画分を回収した。
製造例1のデュラム小麦由来の小麦粉は、回収したセモリナ画分を、ローターミル(ZM200、株式会社レッチェ製)により粉砕して製造した。
製造例2のデュラム小麦由来の小麦粉は、回収したセモリナ画分を、ハンマーミル(AP−1SH、ホソカワミクロン株式会社製)によりにより粉砕して製造した。
製造例3のデュラム小麦由来の小麦粉は、回収したセモリナ画分を、ピンミル(160Z、槇野産業株式会社製)により65Hzの設定で粉砕して製造した。
製造例4のデュラム小麦由来の小麦粉は、回収したセモリナ画分を、ピンミルにより60Hzの設定で粉砕して製造した。
製造例5のデュラム小麦由来の小麦粉は、回収したセモリナ画分を、ピンミルにより55Hzの設定で粉砕して製造した。
製造例6のデュラム小麦由来の小麦粉は、比較製造例1のデュラム小麦由来の小麦粉を目開き100μmの篩で篩い、篩を通過した画分を回収することにより製造した。
製造例7のデュラム小麦由来の小麦粉は、回収したセモリナ画分を、ロールミル(MLU−202、ビューラー社製)により粉砕して製造した。
比較製造例1のデュラム小麦由来の小麦粉は、回収したセモリナ画分を、ピンミルにより30Hzの設定で粉砕して製造した。
なお、市販のデュラム小麦由来の小麦粉として、「シルクロード」(昭和産業株式会社製)を用いた。
【0034】
<デュラム小麦由来の小麦粉の特性測定>
製造例1〜7、比較製造例1及び市販のデュラム小麦由来の小麦粉について、平均粒径を、レーザー回析式粒子径分布測定装置HELOS&RODOS(株式会社日本レーザー製)を用いて測定した。灰分は、AACC08−02に従って測定した。
また、損傷でん粉含有量は、市販のキット(MegaZyme製,Starch Damage Assay Kit)を用いて測定した。具体的には、各小麦粉試料100mgに、予め40℃で10分間プレインキュベートしたα−アミラーゼ溶液(Aspergillus oryae由来,50unit/ml)を1ml添加して、撹拌した後、40℃で10分間処理した。次いで、クエン酸−燐酸水溶液(pH2.5)を5ml添加して反応を停止させ、遠心分離(1,000g,5分)して上清を得た。この上清0.1mlにアミログルコシダーゼ溶液(Aspergillus niger由来,2unit/0.1ml)を添加して40℃で20分間処理した後、510nmで吸光度を測定し、得られた吸光度から生成したグルコース量を算出し、試料中に含まれる損傷でん粉含有量を算出した。
測定結果を表1に示す。
【0035】
<試験例1:生パスタ>
試験例1では、生パスタを製造して、デュラム小麦由来の小麦粉の平均粒径、灰分及び損傷でん粉含有量の好適範囲を検討した。下記表1に示すデュラム小麦由来の小麦粉を用いて、以下の手順により実施例1〜7、比較例1及び対照例1の生パスタを製造した。
【0036】
まず、横型ピンミキサーを用いて、各デュラム小麦由来の小麦粉100質量部と、食塩1%を溶解した水30質量部を、15分間ミキシングし、生地を作成した。これらの生地を、押し出し製麺機により、真空条件下で押し出すことで生パスタを製造した。ダイスは、厚み1.7mm、幅3.5mmを使用した。
【0037】
実施例1〜7、比較例1及び対照例1の生パスタを、約100℃の熱湯中で3分間茹で、得られた茹で立てのパスタを10人の専門パネラーが以下の評価基準に従って食感の評価を行い、その平均値を算出して、小数点第2位を四捨五入した値を評価点とした。
1:対照例1より粘弾性がかなり劣る食感
2:対照例1より粘弾性がやや劣る食感
3:対照例1と同等の粘弾性のある食感
4:対照例1より粘弾性があり、生パスタとして良好な食感
5:対照例1より粘弾性が強く、生パスタとしてかなり良好な食感
試験例1の結果を下記表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
平均粒径が25〜57μmであり、灰分が0.72〜0.80質量%であるデュラム小麦由来の小麦粉を用いた実施例1〜7の生パスタは、対照例1よりも粘弾性があって生パスタとして良好な食感であった。特に、損傷でん粉含有量が15質量%以下である実施例1〜3、5、6は、いずれも評価点が4.0点以上であり、生パスタとしてより好ましい食感であった。また、比較例1及び対照例1の結果から、平均粒径が同程度の場合、損傷でん粉含有量が低いほど食感が向上する傾向にあることが確認された。更に、実施例3、6及び対照例1の結果から、損傷でん粉含有量が同程度の場合、平均粒径が小さいほど食感が向上する傾向にあることが確認された。
【0040】
<試験例2:乾麺のうどん>
試験例2では、下記表2に示す小麦粉を用いて、以下の手順により実施例8〜13、比較例2及び対照例2の乾麺のうどんを製造した。市販品の普通小麦粉Aとして、「星空(商品名)」(昭和産業株式会社製)を用いた。
【0041】
まず、横型ピンミキサーを用いて、各デュラム小麦由来の小麦粉または市販の普通小麦粉A100質量部と、食塩4%を溶解した水35質量部を、15分間ミキシングし、生地を作成した。これらの生地を、ロール式製麺法にて、切り刃角♯12番を用いて、麺線の厚みが1.50mmになるように製麺した後、常法にて乾燥し、乾麺を製造した。
【0042】
実施例8〜13、比較例2及び対照例2の乾麺のうどんを、約100℃の熱湯中で8分間茹でた後、10℃の冷水で冷却し、10人の専門パネラーが以下の評価基準に従って食感の評価を行い、その平均値を算出して、小数点第2位を四捨五入した値を評価点とした。
1:対照例2より粘弾性がかなり劣る食感
2:対照例2より粘弾性がやや劣る食感
3:対照例2と同等の粘弾性のある食感
4:対照例2より粘弾性があり、うどんとして良好な食感
5:対照例2より粘弾性が強く、うどんとしてかなり良好な食感
試験例2の結果を下記表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例8〜12は対照例2と比較して粘弾性があり、食感が良好であった。また、実施例13は対照例2とほぼ同等の食感であった。これらの結果から、乾麺であっても粘弾性があって良好な食感が得られることが確認された。
【0045】
<試験例3:調理済チルドパスタ>
試験例3では、下記表3に示す小麦粉又は加工でん粉を用いて、以下の手順により実施例14〜16、比較例3、4及び対照例3の調理済チルドパスタを製造した。市販品の普通小麦粉Bとして、「金蘭(商品名)」(昭和産業株式会社製)を、加工でん粉として、「SF−2800」(敷島スターチ株式会社製)を用いた。
【0046】
まず、横型ピンミキサーを用いて、表3に示す紛体原料(各デュラム小麦由来の小麦粉、市販の普通小麦粉、加工でん粉)100質量部と、食塩1%を溶解した水30質量部を、15分間ミキシングし、生地を作成した。これらの生地を、押し出し製麺機により、真空条件下で押し出すことで、生パスタを製造した。ダイスは、厚み1.7mm、幅3.5mmを使用した。得られた生パスタを、約100℃の熱湯中で3分間茹でた後、5℃の冷却水で冷却し、水を切った後、茹でた麺100質量部に対して2質量部のサラダ油をまぶし、4℃で24時間冷蔵保存して、実施例14〜16、比較例3、4及び対照例3の調理済みチルドパスタを製造した。電子レンジ(1500W)により1分間加熱した調理済チルドパスタを10人の専門パネラーが以下の評価基準に従って食感及び風味の評価を行い、その平均値を算出して、小数点第2位を四捨五入した値を評価点とした。
(食感)
1:対照例3より粘弾性がかなり劣る食感
2:対照例3より粘弾性がやや劣る食感
3:対照例3と同等の粘弾性のある食感
4:対照例3より粘弾性があり、パスタとして良好な食感
5:対照例3より粘弾性が強く、パスタとしてかなり良好な食感
(風味)
3:対照例3と同程度の風味である
4:対照例より、デュラム小麦の風味がやや強く、パスタとして良好な風味である。
5:対照例より、デュラム小麦の風味が強く、パスタとして非常に良好な風味である。
試験例3の結果を下記表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
実施例14、15は対照例3と比較して食感が良好であった。また、実施例16は対照例3とほぼ同等の食感であった。風味については、実施例14〜16のいずれも評価点が4.0以上で良好であった。これらの結果から、調理済チルドパスタであっても、粘弾性があり食感が良好で、デュラム小麦の風味が強く風味も良好な麺が得られることが確認された。
【0049】
<試験例4:冷やし中華>
試験例4では、下記表4に示す小麦粉又は加工でん粉を用いて、以下の手順により実施例17〜22、比較例5及び対照例4、5の冷やし中華を製造した。市販品の普通小麦粉Cとして、「めんのちから(商品名)」(昭和産業株式会社製)を用いた。加工でん粉は、試験例3と同じものを用いた。
【0050】
まず、横型ピンミキサーを用いて、表4に示す紛体原料(各デュラム小麦由来の小麦粉、市販の普通小麦粉、加工でん粉)100質量部と、食塩1%及びかんすい1.2%を溶解した水36質量部(実施例17〜22及び比較例5)又は40質量部(対照例4及び5)を、15分間ミキシングし、生地を作成した。これらの生地を、ロール式製麺法にて、切り刃角♯20番を用いて、麺線厚みが1.5mmになるように製麺した。得られた中華麺を、約100℃の熱湯中で1分30秒間茹でた後、5℃の冷却水で冷却し、水を切った後、茹でた麺100質量部に対して4質量のほぐし剤をまぶし、4℃で24時間冷蔵保存して、実施例17〜22、比較例5及び対照例4、5の冷やし中華を製造した。得られた冷やし中華を10人の専門パネラーが以下の評価基準に従って食感及びほぐれの評価を行い、その平均値を算出して、小数点第2位を四捨五入した値を評価点とした。
(食感)
1:対照例4より粘弾性がかなり劣る食感
2:対照例4より粘弾性がやや劣る食感
3:対照例4と同等の粘弾性のある食感
4:対照例4より粘弾性があり、冷やし中華として良好な食感
5:対照例4より粘弾性が強く、冷やし中華としてかなり良好な食感
(ほぐれ)
1:対照例4よりかなりほぐれにくい
2:対照例4よりややほぐれにくい
3:対照例4と同等のほぐれ
4:対照例4よりほぐれやすい
5:対照例4よりかなりほぐれやすい
試験例4の結果を下記表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例17〜21は対照例4と比較して食感が良好であった。また、実施例22は対照例4とほぼ同等の食感であった。風味については、実施例17〜22のいずれも評価点が3.9以上で良好であった。これらの結果から、茹で上げ後に冷蔵した調理麺は、粘弾性があり食感が良好で、且つほぐれが良好であることが確認された。
【0053】
<試験例5:餃子の皮>
試験例5では、下記表5に示す小麦粉を用いて、以下の手順により実施例23〜28、比較例6、対照例6の餃子の皮を製造した。市販品の普通小麦粉Bは試験例3と同じものを用いた。
【0054】
まず、横型ピンミキサーを用いて、各デュラム小麦由来の小麦粉または市販の普通小麦粉B100質量部と、食塩1%を溶解した水32質量部を、15分間ミキシングし、生地を作成した。これらの生地を、ロール式製麺法にて、麺帯の厚みが0.9mmになるように薄く伸ばした後、直径90mmになるように生地をくり抜き餃子の皮を得た。
【0055】
実施例23〜28、比較例6、対照例6の餃子の皮で餃子の具15gを包んで成形した餃子を、油を引いたフライパンで1分間焼成し、更に水を150mL入れて5分間蒸し焼きにした。得られた餃子を10人の専門パネラーが以下の評価基準に従って食感及び耳の部分の硬さの評価を行い、その平均値を算出して、小数点第2位を四捨五入した値を評価点とした。食感は焼成直後の餃子で評価し、耳部分の硬さは焼成後に時間が経過して冷めた状態の餃子で評価した。
(食感)
1:対照例5よりモチモチ感がかなり劣る食感
2:対照例5よりモチモチ感がやや劣る食感
3:対照例5と同等のモチモチ感のある食感
4:対照例5よりモチモチがあり、良好な食感
5:対照例5よりモチモチ感が強く、かなり良好な食感
(冷めたときの耳の部分の硬さ)
1:対照例5よりかなり硬い
2:対照例5よりやや硬い
3:対照例5と同等の硬さ
4:対照例5よりややソフト感があり良好
5:対照例5よりソフト感がありかなり良好
試験例5の結果を下記表5に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
実施例23〜27は対照例6と比較して食感が良好であった。また、実施例28は対照例6とほぼ同等の食感であった。耳の硬さについては、実施例23〜28のいずれも評価点が3.8以上であり、良好であった。これらの結果から、モチモチ感があり良好な食感の餃子得られることが確認された。また、本発明に係るデュラム小麦由来の小麦粉を含有する皮類は、保水力が高く乾燥しにくいため、冷めた後でも耳の部分が硬くなりにくくソフトで良好な食感を有することが確認された。