特許第6742910号(P6742910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6742910
(24)【登録日】2020年7月31日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】難燃の熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20200806BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20200806BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20200806BHJP
   C08K 5/5317 20060101ALI20200806BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20200806BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20200806BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20200806BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08K5/3477
   C08K3/32
   C08K5/5317
   C08K5/5313
   C08G18/44
   C08G18/48
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-554505(P2016-554505)
(86)(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公表番号】特表2017-506697(P2017-506697A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】EP2015053192
(87)【国際公開番号】WO2015128213
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】14156750.3
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツェ,オリファー シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】ミューレン,オリファー
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】メラー,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,アレクザントラ
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−099084(JP,A)
【文献】 特開2011−100708(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124589(WO,A1)
【文献】 特開2012−212790(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00−75/16
C08G 18/00−18/87
C08K 5/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌール酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物であって、
前記含リン難燃剤(F2)がホスフィン酸塩であり、前記含リン難燃剤(F1)がリン酸エステルであり、
前記組成物中の前記シアヌール酸メラミンの割合が、前記組成物の全体に基づいて20質量%〜40質量%の範囲であり、及び
前記難燃剤(F2)の割合は、全体組成物に基づいて3質量%〜15質量%の範囲であり、
前記難燃剤(F1)の割合は、全体組成物に基づいて2質量%〜15質量%の範囲である、こと特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ホスフィン酸塩が、ホスフィン酸アルミニウム及びホスフィン酸亜鉛からなる群から選択され、及び
前記難燃剤(F1)が、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)、及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シアヌール酸メラミンが0.1μm〜100μmの範囲の粒径を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリウレタンが50000〜500000Daの範囲の平均分子量(M)を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタンがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリウレタンがDIN 53505に従って測定された80A〜100Aの範囲のショア硬度を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が、前記組成物の全体に基づいて30質量%〜75質量%の範囲である、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の組成物をケーブルシースの製造に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物に関する。さらに、本発明は、このような組成物をケーブルシースの製造に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PVCから製造されたケーブルは、燃焼で有毒ガスを放出するという欠点を有する。従って、低い排煙(smoke gas)毒性を有し、優れた機械的特性、耐摩耗性及び柔軟性を有する熱可塑性ポリウレタン系の製品が開発されている。可燃性性能が不十分である理由で、様々な難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンをベースとする組成物が開発されている。
【0003】
難燃の熱可塑性ポリウレタンは、特に、ケーブルシースなどのケーブル製造に使用される。ここで、一般的な要求は、関連の燃焼試験(例えば、VW1)に合格し、且つ、十分な機械的特性を備える薄いケーブルシースを有する薄いケーブルである。
【0004】
これらの場合、ハロゲン化難燃剤及び無ハロゲン難燃剤の両方とも熱可塑性ポリウレタン(TPUs)に添加することが可能である。一般的には、無ハロゲン難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンは、燃焼される場合に、より少ない毒性及びより少ない腐食性の排煙を放出するという利点を有する。無ハロゲンの難燃性TPUsは、例えばEP 0 617 079 A2、WO 2006/121549 A1又はWO 03/066723 A2に記載されている。また、US 2013/0059955 A1には、リン酸塩系の難燃剤を含む無ハロゲンのTPU組成物が開示すされている。
【0005】
また、無ハロゲンの形態で難燃の熱可塑性ポリウレタンを提供するために、金属水酸化物を単独で又は含リン難燃剤及び/又は層状ケイ酸塩(sheet silicates)と組み合わせて使用することが可能である。
【0006】
US 2013/0081853 A1は、TPUポリマー、ポリオレフィン、リンをベースとする難燃剤及び他の添加剤を含む組成物、好ましくは無ハロゲンの難燃性組成物に関する。US 2013/0081853 A1によれば、該組成物は良好な機械的特性を有する。
【0007】
また、シアヌル酸メラミンは、工業用プラスチックの難燃剤として従来から知られていた。特にポリアミドだけでなく、ポリエステル及びスチレンをベースとするポリマーなどの他のプラスチックに広く使用されている。例えば、WO 97/00916 Aには、脂肪族ポリアミド用の難燃剤としてのタングステン酸/タングステン酸塩と組み合わせたシアヌル酸メラミンが開示されている。EP 0 019 768 A1には、シアヌル酸メラミンと赤リンとの混合物を有する防炎ポリアミドが開示されている。
【0008】
WO 03/066723により、難燃剤としてのシアヌル酸メラミンのみを含む材料は、壁の厚さが薄い場合に、優れた限界酸素指数(LOI)も、例えばUL 94テストで測定された優れた難燃性もない。また、WO 2006/121549 A1には、難燃剤としての、ポリリン酸メラミンと、ホスフィン酸塩と、ホウ酸塩との組み合わせを含む材料が開示されている。この材料は、薄い壁厚さで高いLOI値を確実に達成するが、同時にUL 94テストで良い結果を達成しない。
【0009】
また、リン化合物と共に、難燃剤としてのシアヌル酸メラミンの組み合わせを含む様々な既知の熱可塑性ポリウレタンを有する。EP 0 617 079 A2及びDE 102 24 340 A1には、UL 94テストで(特にUL 94Vテストで)優れた特性を示すが、同時に低いLOI値を有する材料が開示されている。
【0010】
例えば、難燃剤としての、シアヌル酸メラミンとホスホン酸エステルとの組み合わせ及びホスホン酸エステルを含む材料は、UL 94Vテストでの良い結果を有するが、非常に低いLOI値(例えば、<25%)も有する。このようなシアヌル酸メラミンとホスホン酸エステルとの組み合わせ及びホスホン酸エステルは、特に薄いケーブルのシースの場合に、難燃剤として不十分である。難燃性の様々な利用において、高いLOI値は標準(例えば、DIN EN 45545)に対して必要である。
【0011】
対照して、シアヌル酸メラミンとホスフィン酸塩との組み合わせにより、非常に高いLOI値(>30%)を達成し得るが、UL 94Vテストでの良い結果を達成しない。対応する材料は、例えばUS 6,207,736 B1、US 6,255,371、US 6,365,071 B1、US 6,509,401 B1及びUS 6,547,992 B1に記載されている。
【0012】
したがって、先行技術から知られた組成物は、十分な機械的特性を示さなく、又は、不十分な燃焼特性(例えば、難燃性及びUL 94Vテストでの性能)だけを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 2013/0059955 A1
【特許文献2】US 2013/0081853 A1
【特許文献3】WO 97/00916 A
【特許文献4】EP 0 019 768 A1
【特許文献5】WO 03/066723
【特許文献6】WO 2006/121549 A1
【特許文献7】EP 0 617 079 A2
【特許文献8】DE 102 24 340 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、先行技術から続き、本発明は、優れた機械的特性を有し、優れた難燃性を示し、且つ、同時に優れた機械的及び化学的安定性を有する難燃の熱可塑性ポリウレタンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、この目的は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、シアヌル酸メラミン、及び2種の含リン難燃剤(F1)と(F2)との組み合わせを含む。
【0017】
驚いたことには、本発明の組成物は、先行技術から知られた組成物より改善された特性、例えば向上された難燃性を有することが見出された。
【0018】
本発明の組成物はシアヌル酸メラミンを含む。驚いたことには、特にケーブルシースとしての使用において、本発明の組成物は、本発明の成分の組み合わせの結果として特性の最適化プロフィルを有することが見出された。
【0019】
この明細書において、シアヌル酸メラミンは、特に全ての標準品質の市販且つ購入できる固体の、好ましくは粒子の製品を意味すると理解される。これらの例としては、Melapur MC 25 (BASF SE)及びBudit 315 (Budenheim)を含む。
【0020】
本発明により、好ましくは、シアヌル酸メラミンは、メラミンの塩とシアヌル酸との比が1:1である形態で使用される。ここで、メラミンの超過分は、例えば、0.2%未満、好ましくは0.15%未満、さらに好ましくは0.1%未満である。本発明により、シアヌル酸の超過分は、例えば、0.25%未満、好ましくは0.2%未満、さらに好ましくは0.15%未満である。
【0021】
この明細書において、同様に、使用されるシアヌル酸メラミンが、例えば有機化合物で処理されたことが可能である。原則として、対応する材料は先行技術から知られている。
【0022】
好ましくは、本発明に好適であるシアヌル酸メラミンは、0.1μm〜100μm、好ましくは0.5μm〜60μm、より好ましくは1μm〜10μmの平均粒子直径を典型的に有する粒子からなる。この明細書において、粒径分布は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)であってもよい。
【0023】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、シアヌル酸メラミンが0.1μm〜100μmの平均粒子直径を有する。
【0024】
シアヌル酸メラミンは、本発明の組成物中で好適な量で存在する。例えば、組成物中のシアヌル酸メラミンの割合は、組成物の全体に基づいて20質量%〜40質量%の範囲、好ましくは組成物の全体に基づいて25質量%〜35質量%の範囲、特に組成物の全体に基づいて約30質量%である。
【0025】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記組成物中のシアヌル酸メラミンの割合が前記組成物の全体に基づいて20質量%〜40質量%の範囲である。
【0026】
いずれの場合にも、組成物の成分の合計は100質量%である。
【0027】
さらに、本発明の組成物は少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。原則として、熱可塑性ポリウレタンは公知である。典型的には、任意に少なくとも1種の(d)触媒及び/又は(e)通例の補助剤及び/又は添加剤の存在下で、成分(a)イソシアネートと、(b)イソシアネート反応性化合物と、任意に(c)鎖延長剤と反応させることにより製造される。成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネート反応性化合物、及び任意に(c)鎖延長剤は、個別に又は共に、構成成分とも称される。
【0028】
この明細書において、原則として、通常に使用されるイソシアネート及びイソシアネート反応性化合物が好適である。
【0029】
好ましくは、使用された有機イソシアネート(a)は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネートであり、より好ましくはトリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートである。特に好ましくは、4,4’−MDIの使用である。
【0030】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、熱可塑性ポリウレタンがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする。
【0031】
原則として、使用されたイソシアネート反応性(b)化合物は当業者に公知の任意の好適な化合物であってもよい。本発明により、イソシアネート反応性(b)化合物として少なくとも1種のジオールを使用する。
【0032】
ここで、この明細書において、任意の好適なジオール、例えばポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、それらの2種以上の混合物を使用することが可能である。
【0033】
原則として、本発明により、任意の好適なポリエステルジオールを使用することが可能であり、この明細書において「ポリエステルジオール」という用語はポリカーボネートジオールも含む。
【0034】
本発明の一実施態様において、ポリカーボネートジオール又はポリテトラヒドロフランポリオールを使用する。好適なポリテトラヒドロフランポリオールは、例えば500〜5000g/mol、好ましくは500〜2000g/mol、より好ましくは800〜1200g/molの範囲の分子量を有する。
【0035】
好適なポリカーボネートジオールは、例えばアルカンジオールをベースとするポリカーボネートジオールである。好適なポリカーボネートジオールは、完全に二官能価OH−官能性のポリカーボネートジオール、好ましくは完全に二官能価OH−官能性の脂肪族ポリカーボネートジオールである。好適なポリカーボネートジオールは、例えば、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール又はヘキサン−1,6−ジオール、特にブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール又はそれらの混合物、より好ましくはブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール又はそれらの混合物をベースとする。この明細書において、好ましくは、ブタン−1,4−ジオール及びヘキサン−1,6−ジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタン−1,5−ジオール及びヘキサン−1,6−ジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサン−1,6−ジオールをベースとするポリカーボネートジオール、並びに、これらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物を使用することである。
【0036】
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。したがって、本発明の組成物に存在するポリウレタンは、少なくとも1種のポリカーボネートジオール又はポリテトラヒドロフランポリオールを成分(b)として使用して製造される。
【0037】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される。
【0038】
また、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンである。好ましくは、使用されたポリカーボネートジオールは、GPCにより測定された500〜4000g/molの範囲、好ましくはGPCにより測定された650〜3500g/molの範囲、より好ましくはGPCにより測定された800〜3000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0039】
さらに、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここで、前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンであり、前記少なくとも1種のポリカーボネートジオールが、ブタン−1,4−ジオール及びヘキサン−1,6−ジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ペンタン−1,5−ジオール及びヘキサン−1,6−ジオールをベースとするポリカーボネートジオール、ヘキサン−1,6−ジオールをベースとするポリカーボネートジオール、並びに、これらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される。さらに好ましくは、ペンタン−1,5−ジオール及びヘキサン−1,6−ジオールなどの、好ましくは約2000g/molの分子量Mnを有するジオールをベースとするコポリカーボネートジオールである。
【0040】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記ポリカーボネートジオールが、GPCにより測定された500〜4000g/molの範囲、好ましくはGPCにより測定された1000〜3500g/molの範囲、より好ましくはGPCにより測定された1500〜3000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0041】
好ましくは、使用された鎖延長剤(c)は、0.05kg/mol〜0.499kg/molの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物、好ましくは二官能価化合物(例えば、アルキレンラジカルに2個〜10個の炭素原子を有するジアミン及び/又はアルカンジオール)、3個〜8個の炭素原子を有するジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又はデカアルキレングリコール、特に1,2−エチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、好ましくは対応するオリゴ−及び/又はポリプロピレングリコールであってもよく、ここでは、鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。好ましくは、化合物(c)は第1級ヒドロキシル基しか有しなく、最も好ましくはブタン−1,4−ジオールである。
【0042】
好ましい実施態様において、ジイソシアネート(a)のNCO基と、イソシアネート反応性を有する化合物(b)のヒドロキシル基と、鎖延長剤(c)との反応を特に促進する触媒(d)は、3級アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。もう1つの好ましい実施態様において、これらは、有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネート、スズ化合物、好ましくはスズ二酢酸、スズジオクトエート、スズジラウレート又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、好ましくは二酢酸ジブチルスズ、ジブチルスズジラウレート、又は好ましくは2又は3、特に3の酸化状態で存在しているビスマス塩である。好ましくはカルボン酸である。好ましくは、使用されるカルボン酸は、6個〜14個の炭素原子、より好ましくは8個〜12個の炭素原子を有するカルボン酸である。好適なビスマス塩の例は、ネオデカン酸ビスマス(III)、2−エチルヘキサン酸ビスマス及びオクタン酸ビスマスである。
【0043】
好ましくは、触媒(d)は、イソシアネート反応性化合物(b)の100質量部に対して、0.0001質量部〜0.1質量部の量で使用される。好ましくは、スズ触媒、特にスズジオクトエートである。
【0044】
また、触媒(d)だけでなく、通例の補助剤(e)も構成成分(a)〜(c)に添加することが可能である。例としては、表面活性物質、充填剤、難燃剤、核形成剤、酸化安定剤、潤滑剤及び離型剤、染料及び顔料、及び加水分解、光、熱又は変色などに対しての任意の安定剤、有機及び/又は無機の充填剤、強化剤、並びに、可塑剤を含む。好適な補助剤及び添加剤は、例えば、Kunststoffhandbuch[プラスチック添加剤ハンドブック],第7章,Vieweg and Hochtlen出版,Carl Hanser Verlag,Munich,1966(103〜113頁)に見出される。
【0045】
熱可塑性ポリウレタンの好適な製造方法は、例えば、EP 0922552 A1、DE 10103424 A1又はWO 2006/072461 A1に記載されている。典型的には、この製造は、ベルトシステム又は反応押出機で行われるが、実験室規模、例えば手動キャスティング法でも行われる。成分の物理的特性により、それらは互いに直接に混合され、又は、個々成分は予混合され又は予反応されてプレポリマーを提供し、ただその後に重付加を受ける。他の実施態様において、まず、熱可塑性ポリウレタンは、任意に触媒と共に、補助剤も任意に組み込まれる構成成分から製造される。その場合、少なくとも1種の難燃剤は、この材料に導入され、均一に分散される。好ましくは、該均一的分散系は、押出機で、好ましくは二軸式押出機(twin-shaft extruder)で行われる。TPUsの硬度を調整するために、典型的に鎖延長剤(c)の含有量の増大に伴って硬度を増大することで、構成成分(b)及び(c)の使用量を、相対的に広いモル比の範囲内で変化し得る。
【0046】
例えば、95未満、好ましくは95〜80ショアA、より好ましくは約85AのショアA硬度を有する熱可塑性ポリウレタンを製造するために、生成する構成成分(b)及び(c)の混合物が200を超え、特に230〜450のヒドロキシル当量を有するように、基本的に二官能価のポリヒドロキシル化合物(b)、及び、有利に1:1〜1:5、好ましくは1:1.5〜1:4.5のモル比の鎖延長剤を使用することは可能であり、一方で、より硬いTPUs、例えば98を超え、好ましくは55〜75ショアDの硬度を有するものを製造するために、得た(b)及び(c)の混合物が110〜200、好ましくは120〜180のヒドロキシル当量を有するように、(b):(c)のモル比が1:5.5〜1:15、好ましくは1:6〜1:12の範囲である。
【0047】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記熱可塑性ポリウレタンが、DIN 53505に従って測定された80A〜100Aの範囲のショア硬度を有する。
【0048】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを製造するために、好ましくは、構成成分(a)、(b)及び(c)は、触媒(d)及び任意の補助剤及び/又は添加剤(e)の存在下で、ジイソシアネート(a)のNCO基の当量と構成成分(b)及び(c)のヒドロキシル基の総量との比が0.9〜1.1:1、好ましくは0.95〜1.05:1、特に約0.96〜1.0:1であるような量で、反応される。
【0049】
本発明の組成物は、全体組成物に基づいて30質量%〜75質量%の範囲、特に全体組成物に基づいて35質量%〜75質量%の範囲、いずれの場合にも全体組成物に基づいて、好ましくは40質量%〜70質量%の範囲、さらに好ましくは45質量%〜65質量%の範囲、特に好ましくは50質量%〜60質量%の範囲の量の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0050】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が、全体組成物に基づいて30質量%〜75質量%の範囲である。
【0051】
個々の組成物の全ての成分の合計は100質量%である。
【0052】
本発明により、好ましくは、50000〜500000Daの範囲の平均分子量(M)を有する熱可塑性ポリウレタンの製造である。一般的には、熱可塑性ポリウレタンの平均分子量(M)の上限は、加工性及び所望の特性のスペクトルにより測定される。さらに好ましくは、熱可塑性ポリウレタンは、75000〜400000Daの範囲、特に好ましくは100000〜300000Daの範囲の平均分子量(M)を有する。
【0053】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記熱可塑性ポリウレタンが50000〜500000Daの範囲の平均分子量(M)を有する。
【0054】
本発明の組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン及びシアヌル酸メラミンだけでなく、2つの含リン難燃剤(F1)及び(F2)の組み合わせも含む。本発明の組成物は、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む。
【0055】
さらなる好ましい実施態様において、含リン難燃剤(F1)は21℃で液体である。
【0056】
好ましくは、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された難燃剤(F1)は、有機若しくは無機カチオンの塩、又は有機エステルを含む。有機エステルは、リンと直接に結合する酸素原子の少なくとも1つが有機ラジカルによりエステル化された含リン酸の誘導体である。好ましい実施態様において、有機エステルはアルキルエステルであり、もう1つの好ましい実施態様においてアリールエステルである。より好ましくは、相応の含リン酸の全てのヒドロキシル基はエステル化された。
【0057】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記含リン難燃剤(F1)がリン酸エステルである。
【0058】
好ましくは、有機リン酸エステル、特にリン酸のトリエステル、例えばリン酸トリアルキル、及び特にリン酸トリアリールエステル、例えばリン酸トリフェニルである。
【0059】
本発明により、好ましくは、一般式(I)、
【化1】
(式中、Rは、任意に置換されたアルキル、シクロアルキル又はフェニル基を表し、nは1〜15である)
のリン酸エステルを、熱可塑性ポリウレタン用の難燃剤として使用することである。
【0060】
一般式(I)のRがアルキルラジカルである場合、1個〜8個の炭素原子を有するアルキルラジカルが特に有用である。シクロアルキル基の一例はシクロヘキシルラジカルである。好ましくは、一般式(I)(式中、R=フェニル又はアルキル置換のフェニル)のリン酸エステルを使用することである。一般式(I)のnは、特に1であり、又は好ましくは約3〜6の範囲である。一般式(I)のこの好ましいリン酸エステルの例は、フェニレン1,3−ビス(ジフェニル)リン酸、フェニレン1,3−ビス(ジキシレニル)リン酸、及びn=3〜6の平均オリゴマー化レベルを有する相応のオリゴマー生成物を含む。好ましいレゾルシノールは、典型的にオリゴマーに存在するレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)である。
【0061】
さらなる好ましい含リン難燃剤(F1)は、典型的にオリゴマーの形態であるビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)、及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)である。
【0062】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここで、前記含リン難燃剤(F1)が、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)からなる群から選択される。
【0063】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物にも関し、ここで、前記含リン難燃剤(F1)がレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)である。
【0064】
有機ホスホン酸塩は、有機若しくは無機カチオンの塩又はホスホン酸エステルを有する塩である。好ましいホスホン酸エステルは、アルキル−又はフェニルホスホン酸のジエステルである。本発明において難燃剤として使用されるホスホン酸エステルの例は、一般式(II)、
【化2】
(式中、Rは、任意に置換アルキル、シクロアルキル又はフェニル基を表し、ここでは、2つのRラジカルは互いに結合して環状になってもよく、
は、任意に置換アルキル、シクロアルキル又はフェニル基である)
のホスホン酸塩を含む。
【0065】
特に好適であるのは、環状ホスホン酸塩であり、例えば、
【化3】
式中、Rは、CH及びCであり、ペンタエリスリトールに由来し、又は、
【化4】
式中、Rは、CH及びCであり、ネオペンチルグリコールに由来し、又は、
【化5】
式中、Rは、CH及びCであり、カテコールに由来し、又は、
【化6】
式中、Rは、非置換又は置換フェニルラジカルでる。
【0066】
本発明の組成物において、難燃剤(F1)の割合は、例えば、全体組成物に基づいて2質量%〜15質量%の範囲、好ましくは全体組成物に基づいて3質量%〜10質量%の範囲、特に全体組成物に基づいて5質量%〜8質量%の範囲である。
【0067】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記含リン難燃剤(F1)の割合が全体組成物に基づいて2質量%〜15質量%の範囲である。
【0068】
好ましくは、ホスフィン酸の誘導体から選択された難燃剤(F2)は、有機若しくは無機カチオンの塩又はホスホン酸エステルを含む。有機エステルは、リンと直接に結合する酸素原子の少なくとも1つが有機ラジカルによりエステル化されたリン酸の誘導体である。好ましい実施態様において、有機エステルはアルキルエステルであり、もう1つの好ましい実施態様においてアリールエステルである。より好ましくは、リン酸の全てのヒドロキシル基はエステル化された。
【0069】
ホスフィン酸エステルは、一般式R(P=O)ORを有し、式中、有機基R、R及びRが同一でも又は異なっていてもよい。R、R及びRラジカルは、脂肪族又は芳香族のものであり、1個〜20個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜3個の炭素原子を有する。好ましくは少なくとも1つの前記ラジカルが脂肪族のものであり、好ましくは全ての前記ラジカルが脂肪族のものであり、最も好ましくはR及びRがエチルラジカルである。また、さらに好ましくは、Rがエチルラジカル又はメチルラジカルである。さらなる好ましい実施態様において、R、R及びRは、同時にエチルラジカル又はメチルラジカルである。
【0070】
好ましくは、ホスフィン酸塩、すなわち、ホスフィン酸の塩である。R及びRラジカルは、脂肪族又は芳香族のものであり、1個〜20個、好ましくは1個〜10個、より好ましくは1個〜3個の炭素原子を有する。好ましくは、好ましくは少なくとも1つの前記ラジカルが脂肪族のものであり、好ましくは全ての前記ラジカルが脂肪族のものであり、最も好ましくはR及びRがエチルラジカルである。好ましいホスフィン酸の塩は、アルミニウム塩、カルシウム塩又は亜鉛塩であり、より好ましくはアルミニウム塩又は亜鉛塩である。好ましい実施態様はジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
【0071】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記含リン難燃剤(F2)がホスフィン酸塩である。
【0072】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記ホスフィン酸塩がホスフィン酸アルミニウム及びホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される。
【0073】
本発明の組成物において、難燃剤(F2)の割合は、例えば、全体組成物に基づいて3質量%〜15質量%の範囲、特に全体組成物に基づいて5質量%〜15質量%の範囲、好ましくは全体組成物に基づいて7質量%〜13質量%の範囲、特に全体組成物に基づいて9質量%〜11質量%の範囲である。
【0074】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は上記の組成物に関し、ここで、前記組成物中の前記含リン難燃剤(F2)の割合が全体組成物に基づいて3質量%〜15質量%の範囲である。
【0075】
一実施態様において、本発明の組成物を製造するために、熱可塑性ポリウレタン、シアヌル酸メラミン、及び難燃剤(F1)及び(F2)は1つの工程で加工される。他の好ましい実施態様において、本発明の組成物を製造するために、まず、反応押出機、ベルトシステム又は他の好適な装置は使用され、その後にシアヌル酸メラミン及び難燃剤(F1)及び(F2)が少なくとも1つのさらなる工程又は2つ以上の工程で導入される熱可塑性ポリウレタン(好ましくはペレットの形態で)を製造する。
【0076】
好ましくは密閉式混練機(internal kneader)又は押出機、好ましくは二軸式押出機である混合ユニットで、熱可塑性ポリウレタンを他の成分と混合する。好ましい実施態様において、少なくとも1つのさらなる工程で混合ユニットに導入された難燃剤は、液体形態、換言すれば、21℃の温度で液体形態である。押出機の使用方法のもう1つの好ましい実施態様において、押出機の材料注入の流れ方向での投入点(intake point)の後ろに存在する温度で、導入された難燃剤の少なくとも一部が液体である。
【0077】
本発明により、組成物は、例えば含リン難燃剤を含む他の難燃剤を含んでもよい。しかし、好ましくは、本発明の組成物は、シアヌル酸メラミン及び含リン難燃剤(F1)及び(F2)以外、任意のさらなる難燃剤を含まない。
【0078】
本発明により、様々な難燃剤の組み合わせは機械的特性及び難燃性を最適化する。
【0079】
本発明により、この場合、組成物中の含リン難燃剤(F1)及び(F2)の合計と組成物中の、シアヌル酸メラミンとの質量比は、1:3〜1:1の範囲、例えば1:2である。
【0080】
したがって、さらなる実施態様において、本発明は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物にも関し、ここで、いずれの場合にも全体組成物に基づいて、
− 前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が30質量%〜75質量%の範囲であり、
− 前記組成物中の前記シアヌル酸メラミンの割合が20質量%〜40質量%の範囲であり、
− 前記組成物中の前記難燃剤(F2)の割合が3質量%〜15質量%の範囲であり、
− 前記組成物中の前記難燃剤(F1)の割合が2質量%〜15質量%の範囲であり、
前記組成物の前記成分の合計は100質量%である。
【0081】
本発明により、組成物は、さらなる成分、例えば熱可塑性ポリウレタンに対して標準の補助剤及び添加剤を含んでもよい。好ましくは、組成物は、シアヌル酸メラミン、少なくとも1種の含リン難燃剤(F1)及び少なくとも1種の含リン難燃剤(F2)から生成し、任意のさらなる難燃剤を含まない。より好ましくは、本発明の組成物は、シアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択されるただ1種の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるただ1種の含リン難燃剤(F2)を含む。
【0082】
また、本発明は、コーティング、減衰要素(damping elements)、ベローズ(bellows)、フィルム又は繊維、成形部品、建物及び輸送の床、不織物、好ましくはシール、ローラー、靴底、ホース、ケーブル、ケーブルコネクタ、ケーブルシース、クッション、ラミネート、プロファイル、ベルト、サドル、フォーム、プラグコネクタ、垂下ケーブル(trailing cables)、太陽電池モジュール、自動車のトリムの製造に、上記の難燃の熱可塑性ポリウレタンの少なくとも1種を含む本発明の組成物を使用する方法に関する。好ましくは、ケーブルシースの製造に使用することである。好ましくは、該製造は、ペレットから、本発明の組成物の射出成形、カレンダー、粉末焼結又は押出により、及び/又は本発明の組成物のさらなる発泡により行われる。
【0083】
したがって、本発明は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物をケーブルシースの製造に使用する方法に関する。
【0084】
本発明の他の実施態様は、特許請求の範囲及び実施例から見出され得る。本発明の上述した又は以下に説明する主題/方法の特徴又は本発明の使用方法の特徴は、各場合において述べた組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない限り他の組み合わせでも使用することができることは言うまでもない。したがって、例えば、好ましい特徴と特に好ましい特徴との組み合わせや、別に特徴化されていない特徴と特に好ましい特徴との組み合わせなどは、この組み合わせが明示的に記載されていない場合であっても、黙示的に含まれる。
【0085】
本発明の例示的な実施態様が以下に記載されているが、これらは本発明に制限されない。より特に、本発明は、従属参照及びしたがって下記に特定される組み合わせから生じる実施態様も含む。
【0086】
1.少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物。
【0087】
2.前記含リン難燃剤(F2)がホスフィン酸塩である、実施態様1に記載の組成物。
【0088】
3.前記ホスフィン酸塩がホスフィン酸アルミニウム及びホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される、実施態様2に記載の組成物。
【0089】
4.前記含リン難燃剤(F1)がリン酸エステルである、実施態様1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【0090】
5.前記難燃剤(F1)が、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)、及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)からなる群から選択される、実施態様1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【0091】
6.前記シアヌル酸メラミンが0.1μm〜100μmの範囲の粒径を有する、実施態様1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【0092】
7.前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のポリカーボネートジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタン、並びに、少なくとも1種のジイソシアネート及びポリテトラヒドロフランポリオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、実施態様1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【0093】
8.前記熱可塑性ポリウレタンが50000〜500000Daの範囲の平均分子量(M)を有する、実施態様1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【0094】
9.前記熱可塑性ポリウレタンがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする、実施態様1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【0095】
10.前記熱可塑性ポリウレタンがDIN 53505に従って測定された80A〜100Aの範囲のショア硬度を有する、実施態様1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【0096】
11.前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が、前記組成物の全体に基づいて30質量%〜75質量%の範囲である、実施態様1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【0097】
12.前記組成物中の前記シアヌル酸メラミンの割合が、前記組成物の全体に基づいて20質量%〜40質量%の範囲である、実施態様1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【0098】
13.前記組成物中の前記難燃剤(F2)の割合が、前記組成物の全体に基づいて3質量%〜15質量%の範囲である、実施態様1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【0099】
14.前記難燃剤(F1)の割合が、前記組成物の全体に基づいて2質量%〜15質量%の範囲である、実施態様1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【0100】
15.実施態様1から14のいずれか一項に記載の組成物をケーブルシースの製造に使用する方法。
【0101】
16.少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物であって、
前記ホスフィン酸塩がホスフィン酸アルミニウム及びホスフィン酸亜鉛からなる群から選択され、
前記難燃剤(F1)が、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BDP)、及びリン酸ジフェニルクレシル(DPK)からなる群から選択されることを特徴とする組成物。
【0102】
17.少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物であって、
前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が、前記組成物の全体に基づいて30質量%〜75質量%の範囲であり、
前記組成物中の前記シアヌル酸メラミンの割合が、前記組成物の全体に基づいて20質量%〜40質量%の範囲であり、
前記組成物中の前記難燃剤(F2)の割合が、前記組成物の全体に基づいて3質量%〜15質量%の範囲であり、
前記組成物中の前記難燃剤(F1)の割合が、前記組成物の全体に基づいて2質量%〜15質量%の範囲であり、
前記組成物の前記成分の合計が100質量%であることを特徴とする組成物。
【0103】
18.前記難燃剤(F1)の割合が、前記組成物の全体に基づいて2質量%〜15質量%の範囲である、実施態様1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【0104】
以下の実施例は、本発明の説明になるが、本発明の対象に対して全く制限しない。
【実施例】
【0105】
実施例は、本発明の組成物の向上した難燃性、優れた機械的特性及び低い排煙濃度を示す。
【0106】
1.原料
Elastollan 1185A10:1000の分子量を有するポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、ブタン−1,4−ジオール及びMDIをベースとし、BASFポリウレタンGmbH,Elastogranstrasse 60, 49448 Lemfordeから入手したショア硬度85AのTPU。
【0107】
Melapur MC 15 ED:CAS #が37640−57−6であり、BASF SE、67056 Ludwigshafen、ドイツから入手し、粒径D99%が50μm以下であり、D50%が4.5μm以下であり、含水量が0.1質量%未満であるシアヌル酸メラミン(1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンを有する化合物(1:1))。
【0108】
Fyrolflex RDP:CAS #が125997−21−9であり、Supresta Netherlands B.V.,Office Park De Hoef,Hoefseweg 1,3821 AE Amersfoort、オランダから入手し、25℃での粘度が700mPas、酸価が0.1 mg KOH/g未満であり、含水量が0.1質量%未満であるレゾルシノールビス(ジフェニルホスファート)。
【0109】
Disflamoll DPK:CAS #が026444−49−5であり、LANXESS Deutschland GmbH,51369 Leverkusen,ドイツから入手し、酸価が0.1 mg KOH/g未満であり、含水量が0.1質量%未満であるリン酸クレジルジフェニル。
【0110】
Exolit OP 1230:CAS #が225789−38−8であり、Clariant Produkte (Deutschland) GmbH,Chemiepark knapsack,50351 Hurthから入手し、含水量が0.2質量%未満であり、平均粒径(D50)が20〜40μm、ジエチルホスフィン酸アルミニウム。
【0111】
2.混合物の製造
下記の表2は、各成分を質量部で記載する組成物のリストである。混合物はそれぞれに、10個のバレル部に分け、35Dの軸長(screw length)を有する2軸押出機Berstoff ZE 40 Aを用いて製造する。
【0112】
【表1】
【0113】
3.機械的特性
混合部を有するスリーゾーンスクリュー(three-zone screw)(スクリュー比1:3)を備えるArenz一軸式押出機を用いて混合物を押出し、厚さ1.6mmのフィルムを得た。測定したパラメーターは、対応する試験試料の、使用したペレットのMFR、密度、ショア硬度、引張強度、引き裂き伝播抵抗及び破断点伸びであった。
【0114】
4.難燃性
難燃性を評価するため、厚さ1.6mmの試験試料をUL 94V(装置及び電器部品のプラスチック材料の可燃性試験のUL安全基準)に従ってテストする。
【0115】
難燃性を評価するため、ケーブル絶縁及びケーブルシースの従来の押出ライン(45mm直径の平滑管押出機)で、ケーブルを製造した。2.5:1の圧縮比を有する従来のスリーゾーンスクリューを使用した。
【0116】
まず、管状法で、0.1mmの個々の混合物を有する個々の混合物で、コア(8本の単線からなる撚線)を絶縁した。絶縁コアの直径は1.0mmであった。これらのコアの3つをより糸状にして、シェル(シェルの厚さが1mmである)を管状法で押出により適用した。ケーブル全体の外径は5mmであった。
【0117】
その後、VW1テスト(UL標準1581、§1080−VW−1(垂直試料)燃焼試験)をケーブルに対して行った。いずれの場合にも、試験を3つのケーブルに対して行った。