(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6743487
(24)【登録日】2020年8月3日
(45)【発行日】2020年8月19日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20200806BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20200806BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/60
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-103995(P2016-103995)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-212314(P2017-212314A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森川 武
(72)【発明者】
【氏名】清原 裕貴
【審査官】
小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−092419(JP,A)
【文献】
特開2007−080990(JP,A)
【文献】
特開2011−100905(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/099384(WO,A1)
【文献】
特開2009−055006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材と、
電極を有する発光素子と、
前記導電部材と、前記電極とを接続し、金及び銀を含むワイヤと、
を備える発光装置であって、
前記ワイヤは、銀を含む第1表面と、金を含む第2表面と、を有し、
前記ワイヤは、前記第1表面を構成するコア部と、前記コア部の表面の一部を被覆する被覆部と、を備え、
前記銀を含む第1表面は前記発光素子と対向する発光装置。
【請求項2】
導電部材と、
電極を有する発光素子と、
前記導電部材と、前記電極とを接続し、金及び銀を含むワイヤと、
を備える発光装置であって、
前記ワイヤは、銀を含む第1表面と、金を含む第2表面と、を有し、
前記ワイヤは、コア部と、前記コア部の表面の一部を被覆し前記第1表面を構成する被覆部と、を備え、
前記銀を含む第1表面は前記発光素子と対向する発光装置。
【請求項3】
導電部材と、
電極を有する発光素子と、
前記導電部材と、前記電極とを接続し、金及び銀を含むワイヤと、
を備える発光装置であって、
前記ワイヤは、銀を含む第1表面と、金を含む第2表面と、を有し、
前記ワイヤは、コア部と、前記コア部の表面の一部を被覆する2つの被覆部を備え、前記被覆部の一方が前記第1表面を構成し、前記被覆部の他方が前記第2表面を構成し、
前記銀を含む第1表面は前記発光素子と対向する発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は複数であり、前記ワイヤは、前記発光素子の電極同士を接続すると共に、前記第1表面は、複数の前記発光素子のうちの少なくとも1つの前記発光素子に対向する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電部材を備えたパッケージに、半導体発光素子(以下「発光素子」とも称する)が搭載されたLED(Light Emitting Diode)などの発光装置が知られている。発光素子は、例えばワイヤを介してパッケージの導電部材と電気的に接合されている。ワイヤの材料としては、優れた延性を備えた金(Au)ワイヤが多く用いられている。更なる高出力化のため、金ワイヤに、反射率が高い銀(Ag)をコーティングしたワイヤを用いることが検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−80990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、銀は硫化などにより変質して着色する場合がある。これにより、発光素子からの光が吸収されて、発光装置の光取り出し効率が低下する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、以下の構成を含む。
導電部材と、電極を有する発光素子と、導電部材と電極とを接続し、金及び銀を含むワイヤと、を備える発光装置であって、ワイヤは、銀を含む第1表面と、金を含む第2表面と、を有し、銀を含む第1表面は発光素子と対向する発光装置。
【発明の効果】
【0006】
以上により、発光装置の光取り出し効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図1は、実施形態2に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体装置の検査方法を例示するものであって、本発明は、半導体装置の検査方法を以下に限定するものではない。
【0009】
また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0010】
本実施形態において、発光装置は、導電部材と、発光素子と、金及び銀を含むワイヤと、を備える。ワイヤは銀を含む第1表面と、金を含む第2表面と、を有する。そして、銀を含む第1表面は発光素子と対向している。これにより光取り出し効率のよい発光装置とすることができる。
【0011】
<実施形態1>
実施形態1にかかる発光装置10を
図1に示す。発光装置10は、導電部材11と、発光素子14と、ワイヤ15と、を備える。導電部材11は、正負一対の電極として機能するよう2つ(一対)設けられている。2つの導電部材11は、成型樹脂12によって一体的に保持されている。導電部材11と成型樹脂12とを合わせてパッケージとも称する。パッケージは、
図1に示すように、発光素子14が載置可能な凹部を備えていてもよい。あるいは、凹部を備えないパッケージとしてもよい。例えば、導電部材と略同じ厚みの成型樹脂によって、一対の導電部材が一体的に保持された平板状のパッケージとしてもよい。
【0012】
パッケージには、発光素子14が載置されている。
図1では、2つの導電部材11のうちの一方の導電部材11の上面に、接合部材(図示せず)を介して接合されている。発光素子14は、発光層を含む半導体層を備えた積層構造体14aと、積層構造体14aの上面に備えられた一対の電極14bと、を有する。半導体層としては、窒化物半導体等が挙げられる。また、紫外光、青色〜緑色の可視光などの発光色の発光素子を用いることができる。
【0013】
一対の導電部材11と、一対の電極14bとは、ワイヤ15によって電気的に接続されている。ワイヤ15は、
図2A、
図2B、
図2Cに示すように、銀(Ag)を含む第1表面S1と、金(Au)を含む第2表面と、を備えている。そして、ワイヤ15の第1表面S1は、発光素子14と対向するように配置されている。つまり、ワイヤ15の第1表面S1と第2表面S2とは、ワイヤの中心軸に垂直な断面における外周上に併存するよう配置される。
【0014】
ワイヤ15は、ボール部151と、ボール部151から延伸する延伸部152と、を備えている。ボール部151は、キャピラリの挿通孔に通されたワイヤ15の先端を電気放電等によって溶融させることで形成されたボール(イニシャルボール)を、発光素子14の電極14b上に、あるいは、導電部材11上に圧着接続させることで形成される部分である。
図1では、2本のワイヤ15は、共に発光素子14の電極14bに形成されたボール部151を備える。そして、このボール部151は、上述のようによって溶融されるため、第1表面S1及び第2表面S2の区別がなく、両者が混ざり合った組成で構成される表面を備えている。
【0015】
延伸部152は、ボール部151から延伸される部分であり、このワイヤの延伸部152のうち、発光素子14と対向する側に、Agを含む第1表面S1が配置されるようにしている。発光素子14と対向する側、とは、例えば
図1に示すよう、発光素子14の上方から、発光素子の側方にかけてループを形成するワイヤ15の、下側を指す。
【0016】
このように、発光素子14と対向する側にAgを含む第1表面S1を配置することで、発光素子14からの光を反射し易くすることができる。これにより、発光装置の光取り出し効率を向上させることができる。
【0017】
発光素子14と対向しない側、すなわち、
図1に示すように発光装置10の上面に向いた側には、ワイヤ15延伸部152の第2表面S2が配置される。第2表面S2は、発光素子14からの光が直接照射されにくい。そのため、発光素子14からの光に対する反射率が第1表面S1より低いものを用いることができる。そのため、Agよりも反射率の低いAuを含むことができる。
【0018】
第2表面S2は、第1表面S1に比べて、後述の封止部材13の表面に近い位置に配置されるため、封止部材13の表面から侵入するガスの影響を受けやすい。例えば、硫黄含有ガスなどの腐食性のガスが侵入しやすい。このような腐蝕性のガスによって、Agは変質し易い性質を備えているのに対し、Auは影響を受けにくい。そのため、Agを含む第1表面S1を、Auを含む第2表面S2よりも下側に、すなわち腐蝕性ガスの影響を受けにくい位置に配置することで、Agの変質を低減することができる。
【0019】
以上のように、ワイヤ15の表面を、腐蝕性ガスに対する性質が異なると共に、反射率の異なる2つの表面で構成することで、光取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0020】
第1表面S1はAgを含み、Ag含有率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。また、第1表面S1は発光素子からの光に対する反射率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、第1表面S1は微量であればAuを含んでいても構わない。例えば30%以下程度のAuを含んでいても構わない。
【0021】
第2表面S2はAuを含み、Au含有率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。第1表面S1は微量であればAgを含んでいても構わない。例えば10%以下程度のAgを含んでいても構わない。
【0022】
また、第1表面S1、第2表面S2は、Au、Agとは異なる材料を含んでいても構わない。例えば、5%程度以下のPdを含んでいてもよい。さらに微量成分としてCa、Sr、Y、La、Ce、Eu、Be、Ge、In、Sn、Pt、Cu、Ru、Os、Ir等を含んでいてもよい。その他、不可避不純物を含んでいてもよい。
【0023】
ワイヤ15は、その断面が
図2A等に示すような円形である。ただし、断面が四角形、楕円形などであってもよい。
【0024】
図2A〜
図2Cは、ワイヤ15の例を示す断面図である。表面を構成する材料を異ならせるために、コア部15aと、その表面の一部を覆う被覆部15b(15c)と、を備えたワイヤ構造が挙げられる。
図2Aに示すワイヤは、被覆部15bが第1表面S1を構成し、コア部15aが第2表面S2を構成する。
図2Bに示すワイヤは、コア部15aが第1表面S1を構成し、被覆部15bが第2表面を構成する。
図2Cに示すワイヤは、コア部15aは表面を構成せず、2つの被覆部15b、15cが表面を構成する。そして、一方の被覆部15bが第1表面S1を構成し、他方の被覆部15cが第2表面を構成する。このように2種の被覆部を備える場合は、それらが互いに重ならないようにしてもよく、あるいは、一部が重なってもよい。また、一方の被覆部がコア部の全周を被覆し、その一部を覆うように他方の被覆部を設けてもよい。
【0025】
コア部は、例えば、直径が10μm〜30μm程度とすることができる。また、被覆部の厚みは、0.1μm〜10μm程度とすることができる。
【0026】
このように、ワイヤ15は種々の構成とすることができるが、これらのうち、
図2Aに示すように、コア部15aを第2表面S2とする構成が好ましい。例えば、展性に優れたAuを主成分とするコア部15aの表面に、Agを主成分とする被覆部15bを設けることで、光取り出し効率に優れ、かつ、断線しにくいワイヤとすることができる。
【0027】
第1表面S1と第2表面S2の割合、すなわち、ワイヤの断面において、ワイヤの外周における割合は、2:1〜1:2程度である。好ましくは1:1程度である。このようにワイヤの表面を、その断面において2種類の表面を構成するようにするには、例えば、ワイヤの半分をメッキ液につけるなどにより形成することができる。あるいは、ワイヤの半分をマスクしてスパッタ膜、蒸着膜を形成する方法などが挙げられる。
【0028】
上述の発光素子14、ワイヤ15は、
図1に示すように封止部材13によって被覆することが好ましい。封止部材13は、シリコーン樹脂等の樹脂材料を用いることができる。更に、樹脂材料に、発光素子からの光を変換する蛍光体などを含有させた封止部材13を用いることができる。
【0029】
<実施形態2>
実施形態2にかかる発光装置20を
図3に示す。発光装置20は、発光素子14を複数備える。ここでは、発光素子14が2つの場合について例示している。実施形態2では、2つの発光素子の電極14b同士を接続するワイヤ25を備える点が実施形態1と異なる。そして、発光素子の電極14b同士を接続するワイヤ25の第1表面S1は、複数の発光素子のうちの少なくとも1つの発光素子と対向している。詳細には、ワイヤ25の延伸部252の第1表面S1が、少なくとも1つの発光素子と対向している。
図2では、2つの発光素子14の両方と、ワイヤ25の第1表面S1が対向している。このように、導電部材11に接続されるワイヤ15だけでなく、発光素子の電極14b同士を接続するワイヤ25も、Agを含む第1表面S1によって効率よく光を反射することができるため、光の取り出し効率を向上させることができる。また、Auを含む第2表面S2を上側に配置することで、腐蝕性ガスの影響を受けにくくすることができる。
【0030】
発光素子の電極同士を接続するワイヤ25も、
図2A〜
図2Cに示す構造のワイヤを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る発光装置は、ワイヤを用いた発光装置において、光取り出し効率のよい発光装置とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
10、20…発光装置
11…導電部材
12…成型樹脂
13…封止部材
14…発光素子
14a…積層構造体
14b…電極
15、25…ワイヤ
15a、…コア部
15b、15c…被覆部
S1…第1表面(Ag含)
S2…第2表面(Au含)
151…ボール部
152、252…延伸部