(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2電極層を形成する工程では、前記アライメントマークとは異なる光反射率を有する材料で前記第2電極層を形成する、請求項1に記載の有機デバイスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態の有機デバイスの製造方法によって製造される有機EL素子1は、支持基板3と、陽極層(第1電極層)5と、有機機能層7と、陰極層(第2電極層)9と、封止部材11と、を備えている。陽極層5、有機機能層7及び陰極層9は、有機EL部(有機デバイス部)13を構成している。
【0019】
[支持基板]
支持基板3は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する樹脂から構成されている。支持基板3は、フィルム状の基板(フレキシブル基板、可撓性を有する基板)である。支持基板3の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下である。支持基板3が樹脂の場合は、ロールツーロール方式の連続時の基板ヨレ、シワ、及び伸びの観点からは45μm以上、可撓性の観点からは125μm以下が好ましい。
【0020】
支持基板3は、例えば、プラスチックフィルムである。支持基板3の材料は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂等を含む。
【0021】
支持基板3の材料は、上記樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が低く、かつ、製造コストが低いことから、ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンレテフタレート、又はポリエチレンナフタレートがより好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
支持基板3の一方の主面3a上には、ガスバリア層、或いは、水分バリア層(バリア層)が配置されていてもよい。支持基板3の他方の主面3bは、発光面である。なお、支持基板3は、薄膜ガラスであってもよい。支持基板3が薄膜ガラスの場合、その厚さは、強度の観点からは30μm以上、可撓性の観点からは100μm以下が好ましい。
【0023】
[陽極層]
陽極層5は、支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。陽極層5には、光透過性を示す電極層が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、銅等からなる薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。
【0024】
陽極層5として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。また、陽極層5として、上記で挙げられた金属又は金属合金等をメッシュ状にパターニングした電極、或いは、銀を含むナノワイヤーがネットワーク状に形成されている電極を用いてもよい。
【0025】
陽極層5の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定することができる。陽極層5の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜200nmである。
【0026】
陽極層5の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライ成膜法や、インクジェット法、スリットコーター法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレーコーター法等の塗布法等を挙げることができる。また、陽極層5は、さらにフォトリソ法、ドライエッチング法、レーザートリミング法等を用いてパターンを形成することができる。塗布法を用いて支持基板3上に直接塗布することで、フォトリソ法、ドライエッチング法、レーザートリミング法等を用いることなくパターンを形成することもできる。
【0027】
[有機機能層]
有機機能層7は、陽極層5の主面(支持基板3に接する面の反対側)上及び支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。有機機能層7は、発光層を含んでいる。有機機能層7は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料、或いは該発光材料とこれを補助する発光層用ドーパント材料を含む。発光層用ドーパント材料は、例えば発光効率を向上させたり、発光波長を変化させたりするために加えられる。なお、蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。有機機能層7を構成する有機物としては、例えば下記の色素材料、金属錯体材料、高分子材料等の蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料や、下記の発光層用ドーパント材料等を挙げることができる。
【0028】
(色素材料)
色素材料としては、例えばシクロペンダミン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体、トリフェニルアミン及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、ピラゾロキノリン及びその誘導体、ジスチリルベンゼン及びその誘導体、ジスチリルアリーレン及びその誘導体、ピロール及びその誘導体、チオフェン化合物、ピリジン化合物、ペリノン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0029】
(金属錯体材料)
金属錯体材料としては、例えばTb、Eu、Dy等の希土類金属、又はAl、Zn、Be、Pt、Ir等を中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を配位子に有する金属錯体等を挙げることができる。金属錯体としては、例えばイリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体等を挙げることができる。
【0030】
(高分子材料)
高分子材料としては、例えばポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、上記色素材料、又は金属錯体材料を高分子化した材料等を挙げることができる。
【0031】
(発光層用ドーパント材料)
発光層用ドーパント材料としては、例えばペリレン及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ルブレン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、スクアリウム及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体、スチリル色素、テトラセン及びその誘導体、ピラゾロン及びその誘導体、デカシクレン及びその誘導体、フェノキサゾン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0032】
有機機能層7の厚さは、通常約2nm〜200nmである。有機機能層7は、例えば、上記のような発光材料を含む塗布液(例えばインク)を用いる塗布法により形成される。発光材料を含む塗布液の溶媒としては、発光材料を溶解するものであれば、限定されない。また、上記のような発光材料は、真空蒸着によって形成されてもよい。
【0033】
[陰極層]
陰極層9は、有機機能層7の主面(陽極層5又は支持基板3に接する面の反対側)上及び支持基板3の一方の主面3a上に配置されている。陰極層9は、引出電極9aに電気的に接続されている。引出電極9aは、支持基板3の一方の主面3aに配置されている。引出電極9aは、陽極層5と所定の間隔をあけて配置されている。引出電極9aの厚さは、陽極層5の厚さと同等である。引出電極9aの材料及び形成方法は、陽極層5の材料及び形成方法と同様である。引出電極9aは、陽極層5と同様の方法を用いてパターンを形成することができる。また、引出電極9aと陽極層5とは同時に形成されてもよい。なお、引出電極9aにリード線又はコネクタを電気的に接続し、外部電源から電流を供給する。
【0034】
陰極層9の材料としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表第13族金属等を用いることができる。陰極層9の材料としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0035】
また、陰極層9としては、例えば、導電性金属酸化物や、導電性有機物等からなる透明導電性電極を用いることができる。導電性金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZO等を挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等を挙げることができる。なお、陰極層9は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお、後述の電子注入層が陰極層9として用いられる場合もある。
【0036】
陰極層9の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極層9の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0037】
陰極層9の形成方法としては、例えば、インクジェット法、スリットコーター法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレーコーター法等の塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を圧着するラミネート法等を挙げることができる。
【0038】
[封止部材]
封止部材11は、有機EL素子1において最上部に配置されている。封止部材11は、封止基材15と、粘接着部17と、を有している。封止基材15は、金属箔、透明なプラスチックフィルムの表面若しくは裏面又はその両面にバリア機能層を形成したバリアフィルム、或いはフレキブル性を有する薄膜ガラス、プラスチックフィルム上にバリア性を有する金属積層させたフィルム等からなり、ガスバリア機能、特に水分バリア機能を有する。金属箔としては、バリア性の観点から、銅、アルミニウム、又はステンレスが好ましい。金属箔の厚さは、ピンホール抑制の観点から厚い程好ましいが、フレキシブル性の観点も考慮すると10μm〜50μmが好ましい。
【0039】
粘接着部17は、封止基材15を陽極層5、有機機能層7及び陰極層9(有機EL部13)に接着させるために用いられるものである。粘接着部17は、有機EL部13を覆うように配置されている。
【0040】
粘接着部17は、具体的には、光硬化性又は熱硬化性のアクリレート樹脂、或いは、光硬化性又は熱硬化性のエポキシ樹脂、或いは、光硬化性又は熱硬化性のポリイミド樹脂から構成される。その他一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリブタジエン(PB)フィルム等の熱融着性フィルムを使用することもできる。また、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、アクリル系、ポリエチレン系、エポキシ系、セルロース系、シクロヘキサン環含有飽和炭化水素樹脂、スチレン−イソブチレン変性樹脂等の熱可塑性樹脂も使用することができる。また、粘着性により簡易取り付けが可能な感圧性接着剤(PSA)も使用することができる。
【0041】
粘接着部17に用いられる接着材としては、有機EL部13と粘接着部17との接着性が高く、また、著しい接着材熱収縮、有機EL部13へのストレスによる有機EL部13の剥離、粘接着部17からの有機EL部13へ悪影響を及ぼす成分の発生、及びバリア性が高くダークスポットの発生、成長を抑制する効果が高い接着材が好ましい。また、粘接着部17に用いられる接着材中に、吸湿性の微粒子(接着材厚みよりも小さい)が含まれていてもよい。吸湿性の微粒子としては、例えば、水分と常温で化学反応を起こす金属酸化物、水分を物理吸着するゼオライトが挙げられる。
【0042】
粘接着部17の厚さは、好ましくは1μm〜100μm、より好ましくは5μm〜60μm、さらに好ましくは10μm〜30μmである。粘接着部17がこのような厚さである場合、有機EL部13表面の凹凸又は混入した塵埃を十分埋め込むことができ、それらが有機EL材料に機械的なストレスを与えダークスポットの原因となることを抑制できる。また、粘接着部17の端面からの水分の侵入による影響を受け難い。粘接着部17の含有水分量は、300ppm以下(重量基準)であることが好ましい。
【0043】
粘接着部17を形成する方法としては、例えば、ホットメルトラミネーション法が挙げられる。ホットメルトラミネーション法とは、ホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であり、接着層の厚さを一般に1μm〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。ホットメルトラミネーション法で一般に使用される接着剤のベースレジンとしては、EVA、エチレンエチルアクリレートコポリマー(EEA)、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用される。さらに、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0044】
また、粘接着部17を形成する方法としては、例えば、エクストルージョンラミネート法が挙げられる。エクストルージョンラミネート法とは、高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、接着層の厚さを10μm〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。エクストルージョンラミネート法に使用される樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、EVA、PP等が挙げられる。その他にも、粘接着部17を形成する方法としては、粘接着部17を構成する材料を有機溶媒などに溶解したワニスを調製し、支持体上(金属、プラスチックフィルム等のシート)に、ワニスを塗布、乾燥(熱風吹き付け法、IR法等)する方法も挙げられる。
【0045】
なお、封止基材15に粘接着部17を形成する場合、粘接着部17は液状でもよいし、シート状でもよい。ロール貼合で支持基板3と封止部材11とを貼合する場合は、粘接着部17はシート状が好ましい。粘接着部17が液状である場合、支持基板3と封止基材15を貼り合せ後、光照射、或いは、加熱を行い粘接着部17を硬化させる。また、シート状の粘接着部17は常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する感圧性接着剤を用いてもよいし、熱硬化性、又は、光硬化性のシートを用いてもよい。なお、感圧性接着剤は加熱すると軟化する熱可塑性を有していてもよい。
【0046】
[有機EL素子の製造方法]
続いて、上記構成を有する有機EL素子1の製造方法について説明する。
【0047】
支持基板3が可撓性を有し、長手方向(一方向)に延在する基板である形態では、
図2に概念的に示されるように、ロールツーロール方式が採用され得る。ロールツーロール方式で有機EL素子1を製造する場合、巻出しロール30Aと巻取りロール30Bとの間に張り渡された長尺の可撓性の支持基板3を連続的に搬送ローラ31で搬送しながら、各層を支持基板3側から順に形成する。
【0048】
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態に係る有機EL素子1の製造方法について説明する。有機EL素子1を製造する場合、最初に、支持基板3を加熱し、乾燥させる(基板乾燥工程S01)。次に、
図3に示されるように、乾燥された支持基板3(一方の主面3a)上に、陽極層5及び引出電極9aを形成する(陽極層形成工程(第1電極層形成工程)S02)。陽極層5(引出電極9a)は、陽極層5の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。陽極層5と引出電極9aとは、支持基板3の幅方向(X方向)において、所定の間隔をあけて形成する。支持基板3上には、陽極層5と引出電極9aとの組(パターン)が、支持基板3の長手方向(Y方向)において所定の間隔をあけて複数形成されると共に、支持基板3の幅方向において所定の間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)形成される。
【0049】
また、
図3に示されるように、支持基板3上に、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を形成する(アライメントマーク形成工程S03)。第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、陽極層5と同じ材料で形成される。詳細には、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、陰極層9とは異なる光反射率を有する材料で形成される。第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、陽極層5及び引出電極9aと同じタイミングで(陽極層5及び引出電極9aと同時に)形成する。
【0050】
第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、支持基板3の幅方向の両端部に形成される。第1アライメントマークM1は、十字状を呈している。第1アライメントマークM1は、一辺が支持基板3の長手方向に沿うと共に、当該一辺に直交する他辺が支持基板3の幅方向に沿うように形成される。第2アライメントマークM2は、直線状を呈している。第2アライメントマークM2は、その長手方向が支持基板3の長手方向に沿うように形成される。本実施形態では、支持基板3上に、当該支持基板3の長手方向において、第1アライメントマークM1、第1アライメントマークM1、第2アライメントマークM2、第1アライメントマークM1、第1アライメントマークM1、…の順番で配置される。
【0051】
続いて、
図4に示されるように、マスキングテープTを貼り付ける(マスキングテープ貼付工程S04)。マスキングテープTは、所定の幅を有し、一方向に延在する。マスキングテープTの幅及び厚さは、適宜選択されればよい。マスキングテープTの厚さは、例えば、有機機能層7全体の厚さよりも大きいものが選択される。マスキングテープTは、粘接着性を有すると共に、剥離可能とされている。マスキングテープTの粘接着力は、マスキングテープTを剥離したときに、陽極層5が支持基板3から剥離しない程度に設定されている。マスキングテープTを構成する基材の材料としては、陰極層形成工程S06(後述)の際の温度により剥離又はシワ等が発生しないように、支持基板3の線膨張係数に対して±10ppm/℃を有する材料を選択することができる。ここで、線膨張係数は、例えば、JIS K7197で規定されている方法により測定することができる。具体的には、マスキングテープTの基材の材料としては、例えば、PEN、PET等が挙げられる。
【0052】
マスキングテープTは、陽極層5の一部を覆うように(陽極層5の一部上に)貼り付けられる。具体的には、マスキングテープTは、陽極層5の一端部(引出電極9aと対向する端部の反対側の端部)を覆うように貼り付けられる。マスキングテープTは、複数の陽極層5に跨って、支持基板3の長手方向に沿って貼り付けられる。また、マスキングテープTは、引出電極9aの一部を覆うように(引出電極9aの一部上に)貼り付けられる。具体的には、マスキングテープTは、引出電極9aの一端部(陽極層5と対向する端部の反対側の端部)を覆うように貼り付けられる。マスキングテープTは、複数の引出電極9aに跨って、支持基板3の長手方向に沿って貼り付けられる。
【0053】
続いて、
図5に示されるように、陽極層5上に、有機機能層7を形成する(有機機能層形成工程S05)。有機機能層7は、有機機能層7の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。
【0054】
続いて、
図6に示されるように、有機機能層7上に、陰極層9を形成する(陰極層形成工程(第2電極層形成工程)S06)。陰極層9は、陰極層9の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。本実施形態では、陰極層9は、例えば、真空蒸着法により、支持基板3の全面に亘って(支持基板3の長手方向(一方向)に沿って)形成する。すなわち、陰極層9は、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2上にも形成される。陰極層9は、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2とは異なる光反射率を有する材料で形成される。以上の陽極層形成工程S02、有機機能層形成工程S05、及び、陰極層形成工程S06により、支持基板3上に有機EL部13が形成される(有機デバイス部形成工程)。
【0055】
続いて、
図7に示されるように、マスキングテープTを剥離する(マスキングテープ剥離工程S07)。剥離されたマスキングテープTは、例えば、ロールに巻き取られる。マスキングテープTを剥離する際には、陰極層9を支持基板3に対して下方に位置させ、マスキングテープTを剥離することが好ましい。
【0056】
続いて、
図8に示されるように、封止部材11を貼り付ける(封止部材貼付工程S08)。封止部材11は、所定の幅を有し、支持基板3の長手方向に延在する。具体的には、封止部材11は、
図8に示されるように、陽極層5及び引出電極9a(陰極層9)のそれぞれの一部が露出するように幅が設定され、帯状を呈している。封止部材11は、可撓性を有している。封止部材11は、封止基材15の一面に粘接着部17が設けられている。封止部材11は、封止基材15の一面に粘接着部17が形成された後に帯状に切断されてもよいし、封止基材15を帯状に切断した後に封止基材15の一面に粘接着部17を形成してもよい。塗布工程の生産性の観点から、封止基材15の一面に粘接着部17が形成された後に帯状に切断することが好ましい。
【0057】
封止部材11は、陽極層5の一部及び引出電極9aの一部が露出するように、有機EL部13上に貼付される。具体的には、封止部材11は、複数の有機EL部13に跨って一方向に沿って貼付される。ロールツーロール方式では、支持基板3を搬送しながら、支持基板3上に形成された有機EL部13と封止部材11とを貼り合わせる。より詳細には、封止部材11を有機EL部13上に貼付するときには、
図9(a)に示されるように、支持基板3の他の主面3b側から照明装置40により第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に光を照射し、その照射による反射光をカメラ42(例えば、CCDカメラ)により撮像する。そして、カメラ42により撮像された画像に基づき、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に適合する光反射率の部分を取得し、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の位置を検出する。
【0058】
また、
図9(b)に示されるように、封止部材11に設けられた第1アライメントマーク(封止アライメントマーク)M3及び第2アライメントマーク(封止アライメントマーク)M4を、カメラ44により撮像する。第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4は、封止部材11に予め形成されている。第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4は、封止基材15とは光反射率が異なる材料で形成されている。カメラ44により撮像された画像に基づき、第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4の位置を検出する。
【0059】
そして、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2、並びに、第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4の検出による位置情報に基づいて、支持基板3及び封止部材11の少なくとも一方を支持基板3又は封止部材11の幅方向に移動させることにより、支持基板3に対する封止部材11の位置合わせを行う。支持基板3に対する封止部材11の位置合わせは、例えば、支持基板3の端と封止部材11の端との間隔が所定の距離となるように行われる。封止部材11は、例えば、少なくとも、支持基板3上に形成された有機EL部13の発光エリアを全て覆うような部材の幅に予め揃えられており、発光エリアを全て覆うように支持基板3と封止部材11の位置合わせを行い、貼り合せる。
【0060】
図10に示されるように、支持基板3と封止部材11とは、加熱ローラ32a及び32bの間を通過する。これにより、支持基板3及び封止部材11は、加熱ローラ32a及び32bによって、加熱されつつ圧力が付与される。これにより、粘接着部17が軟化し、粘接着部17と有機EL部13とが密着する。有機EL部13と封止部材11とを貼り合わせるときは、水分濃度の低い環境で行うことが好ましく、ドライエア中、或いは、窒素雰囲気下で行われることがより好ましい。
【0061】
続いて、
図11に示されるように、支持基板3を分断して有機EL素子1を個片化する(分断工程S09)。具体的には、
図11において破線で示す分断線Lに沿って切断する。これにより、有機EL素子1が個片化される。X方向の分断線Lに沿って切断するときには、支持基板3と封止部材11とを同時に切断する。この場合、個片化された有機EL素子1は、露出する陽極層5と引出電極9aとの対向方向(
図11中のX方向)に沿う支持基板3の端面と封止部材11の端面とが面一となる。以上により、
図1に示される有機EL素子1が製造される。
【0062】
以上説明したように、第1実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を含むように、陰極層9を支持基板3の全面に亘って形成する。このため、陰極層9の形成を効率的に行えるため、生産性が向上する。また、支持基板3の陰極層9が形成された一方の主面3aとは反対側の他方の主面3b側から、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を検出する。これにより、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2上に陰極層9が形成されている場合であっても、透光性を有する支持基板3を介して第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を確実に検出できる。したがって、有機EL素子1の製造方法では、位置合わせ精度が向上する。
【0063】
第1実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、陰極層形成工程S06では、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2とは異なる光反射率を有する材料で陰極層9を形成する。これにより、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2と陰極層9とをより確実に区別できる。したがって、有機EL素子1の製造方法では、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2をより確実に検出できる。
【0064】
第1実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、有機EL部13上に封止部材11を貼付する封止部材貼付工程S08を含む。封止部材貼付工程S08では、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を検出すると共に、封止部材11に設けられた第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4を検出することで位置情報を取得し、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の検出結果、及び、第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4の検出結果に基づいて、支持基板3及び封止部材11の少なくとも一方を支持基板3又は封止部材11の幅方向に移動させることにより、支持基板3に対する封止部材11の位置合わせを行う。これにより、封止部材11を、有機EL部13が形成された支持基板3に迅速且つ精度良く貼付することができる。
【0065】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る有機EL素子1の製造方法について説明する。第2実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、基板乾燥工程S01から有機機能層形成工程S05までの工程、マスキングテープ剥離工程S07、及び、分断工程S09は、第1実施形態と同様である。そのため、以下では、第1実施形態と異なる点について詳細に説明する。
【0066】
有機機能層7上に、陰極層9を形成する(陰極層形成工程S06)。陰極層9は、陰極層9の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。本実施形態では、陰極層9を形成する場合、
図12に示されるように、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2と蒸着源(電極層形成源)50との間に金属板等の遮蔽板(遮蔽部材)46を設ける。遮蔽板46は、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2のそれぞれと所定の間隔をあけて設けられている。そして、蒸着源50を用いた真空蒸着法により、陰極層9を支持基板3の延在方向に連続的に形成する。これにより、
図13に示されるように、陰極層9は、遮蔽板46に遮蔽された第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2以外の領域に形成される。言い換えれば、陰極層9は、少なくとも、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2上には形成されない。
【0067】
図14に示されるように、陰極層9を形成した後、マスキングテープTを剥離し、封止部材11を貼り付ける(封止部材貼付工程S08)。封止部材11を有機EL部13上に貼付するときには、支持基板3の一方の主面3a側から第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2をカメラ44(
図9(a)参照)により撮像する。そして、カメラ44により撮像された画像に基づき、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の位置を検出する。なお、支持基板3の他方の主面3b側から照明装置40(
図9(a)参照)により第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に光を照射し、その照射による反射光をカメラ42により撮像し、カメラ42により撮像された画像に基づき、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に適合する光反射率の部分を取得し、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の位置を検出してもよい。或いは、カメラ42及びカメラ44のそれぞれで撮像された画像に基づいて、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の位置を検出してもよい。
【0068】
また、封止部材11に設けられた第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4を、カメラ44により撮像する。そして、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2、並びに、第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4の検出による位置情報に基づいて、支持基板3及び封止部材11の少なくとも一方を支持基板3又は封止部材11の幅方向に移動させることにより、支持基板3に対する封止部材11の位置合わせを行う。その後、支持基板3及び封止部材11を加熱ローラ32a及び32bによって加熱し、粘接着部17と有機EL部13とを密着させる。そして、支持基板3を分断して有機EL素子1を個片化することにより、
図1に示される有機EL素子1が製造される。
【0069】
以上説明したように、第2実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、陰極層9を支持基板3の長手方向に沿って連続的に形成する。このため、陰極層9の形成を効率的に行えるため、生産性が向上する。また、支持基板3上に設けられた第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2と陰極層9を形成する蒸着源50との間に遮蔽板46を配置して陰極層9を形成する。これにより、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2上には陰極層9が形成されないため、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2とその周辺部とのコントラストが低下することを抑制できる。したがって、支持基板3の陰極層9が形成された一方の主面3a側及び/又は他方の主面3b側から第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を検出することにより、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を確実に検出できる。その結果、有機EL素子1の製造方法では、位置合わせ精度が向上する。
【0070】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る有機EL素子1の製造方法について説明する。第3実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、基板乾燥工程S01から有機機能層形成工程S05までの工程、マスキングテープ剥離工程S07、及び、分断工程S09は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。そのため、以下では、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について詳細に説明する。
【0071】
有機機能層7上に、陰極層9を形成する(陰極層形成工程S06)。陰極層9は、陰極層9の説明の際に例示した形成方法で形成し得る。本実施形態では、陰極層9を形成する場合、
図15に示されるように、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2のそれぞれを覆うように、マスキングテープTAを貼付する。マスキングテープTAは、所定の幅を有し、一方向に延在する。マスキングテープTの幅及び厚さは、適宜選択されればよい。マスキングテープTAの材料は、マスキングテープTの材料と同様である。
【0072】
続いて、
図16に示されるように、陰極層9を形成する。本実施形態では、陰極層9は、例えば、真空蒸着法により、支持基板3の全面にわたって形成する。陰極層9を形成した後、マスキングテープT及びマスキングテープTAを剥離し、封止部材11を貼り付ける。
【0073】
封止部材11を有機EL部13上に貼付するときには、支持基板3の一の主面3b側から第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2をカメラ44(
図9(a)参照)により撮像する。そして、カメラ44により撮像された画像に基づき、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の位置を検出する。なお、支持基板3の他の主面3b側から照明装置40(
図9(a)参照)により第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に光を照射し、その照射による反射光をカメラ42により撮像し、カメラ42により撮像された画像に基づき、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に適合する光反射率の部分を取得し、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の位置を検出してもよい。或いは、カメラ42及びカメラ44のそれぞれで撮像された画像に基づいて、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の位置を検出してもよい。
【0074】
また、封止部材11に設けられた第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4を、カメラ44により撮像する。そして、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2、及び、第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4の検出による位置情報に基づいて、支持基板3及び封止部材11の少なくとも一方を支持基板3又は封止部材11の幅方向に移動させることにより、支持基板3に対する封止部材11の位置合わせを行う。その後、支持基板3及び封止部材11を加熱ローラ32a,32bによって加熱し、粘接着部17と有機EL部13とを密着させる。そして、支持基板3を分断して有機EL素子1を個片化することにより、
図1に示される有機EL素子1が製造される。
【0075】
以上説明したように、第3実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、陰極層9を支持基板3の長手方向に沿って連続的に(支持基板3の全面に亘って)形成する。このため、陰極層9の形成を効率的に行えるため、生産性が向上する。また、支持基板3上に設けられた第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2上にマスキングテープTAを貼付した後に陰極層9を形成する。これにより、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2上には陰極層9が形成されないため、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2とその周辺部とのコントラストが低下することを抑制できる。したがって、支持基板3の陰極層9が形成された一方の主面3a及び/又は他方の主面3bから第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を検出することにより、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を確実に検出できる。その結果、有機EL素子1の製造方法では、位置合わせ精度が向上する。
【0076】
第3実施形態に係る有機EL素子1の製造方法では、一方向に延在するマスキングテープTAを、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に跨って連続的に貼付する形態を一例に説明した。しかし、マスキングテープTAの貼付形態はこれに限定されない。例えば、マスキングテープTAは、個々のアライメントマーク上に断続的に貼付されてもよい。
【0077】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、陽極層5と陰極層9との間に発光層を含む有機機能層7が配置された有機EL素子1を例示した。しかし、有機機能層7の構成はこれに限定されない。有機機能層7は、以下の構成を有していてもよい。
(a)(陽極層)/発光層/(陰極層)
(b)(陽極層)/正孔注入層/発光層/(陰極層)
(c)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(d)(陽極層)/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(e)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/(陰極層)
(f)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/(陰極層)
(g)(陽極層)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
(h)(陽極層)/発光層/電子注入層/(陰極層)
(i)(陽極層)/発光層/電子輸送層/電子注入層/(陰極層)
ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。上記(a)に示す構成は、上記実施形態における有機EL素子1の構成を示している。
【0078】
正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のそれぞれの材料は、公知の材料を用いることができる。正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のそれぞれは、例えば、有機機能層7と同様に塗布法により形成できる。
【0079】
ここで、電子注入層は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化物を含有していてもよい。電子注入層の成膜法としては、塗布法、真空蒸着法等を挙げることができる。酸化物及びフッ化物の場合は、電子注入層の厚さは0.5nm〜20nmが好ましい。電子注入層は、特に絶縁性が強い場合は、有機EL素子1の駆動電圧上昇を抑制する観点からは、薄膜であることが好ましく、その厚さは、例えば、0.5nm〜10nmであることが好ましく、また、電子注入性の観点からは、2nm〜7nmであることが好ましい。また、電子注入層は、例えば、引出電極9aと陰極層9の間に形成されていてもよい。
【0080】
有機EL素子1は、単層の有機機能層7を有していてもよいし、2層以上の有機機能層7を有していてもよい。上記(a)〜(i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極層5と陰極層9との間に配置された積層構造を「構造単位A」とすると、2層の有機機能層7を有する有機EL素子の構成として、例えば、下記(j)に示す層構成を挙げることができる。2個ある(構造単位A)の層構成は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
(j)陽極層/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極層
【0081】
ここで電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデン等からなる薄膜を挙げることができる。
【0082】
また、「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の有機機能層7を有する有機EL素子の構成として、例えば、以下の(k)に示す層構成を挙げることができる。
(k)陽極層/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極層
【0083】
記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、(構造単位B)がx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0084】
電荷発生層を設けずに、複数の有機機能層7を直接的に積層させて有機EL素子を構成してもよい。
【0085】
第1実施形態では、陰極層9を支持基板3の全面に亘って形成し、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の全部を覆うように陰極層9を形成する形態を一例に説明した。しかし、陰極層9は、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の少なくとも一部上に形成されればよい。つまり、陰極層9は、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の一部又は全部を覆うように形成されればよい。
【0086】
上記実施形態では、支持基板3上に第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を形成する形態を一例に説明した。しかし、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、支持基板3に予め形成されていてもよい。また、上記実施形態では、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を陽極層5(引出電極9a)と同じタイミングで形成する形態を一例に説明した。しかし、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、陰極層9を形成するまでに形成されればよく、アライメントマーク形成工程は、陽極層形成工程S02の前又は後で行ってもよい。
【0087】
上記実施形態では、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を、支持基板3の幅方向の両端部に形成する形態を一例に説明した。しかし、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、支持基板3の幅方向の両端部以外に形成してもよく、陽極層5及び引出電極9aが形成されていないエリアに、支持基板3の長手方向に沿うように形成することもできる。
【0088】
上記実施形態に加えて、マスキングテープT(マスキングテープTA)が形成された支持基板3の脱ガス(水)処理を行ってもよい。脱(水)ガス処理としては、真空中、不活性雰囲気中、又は、ドライエア中において、IRヒーター、IRランプ、セラミックヒーター等の熱源を用いて、輻射、伝熱、対流等で、マスキングテープTが形成された支持基板3を加熱する方法が用いられる。また、不活性雰囲気中、又は、ドライエア中においては、それらの気体を用いた熱風をマスキングテープMが形成された支持基板3に接触させることもできる。
【0089】
上記実施形態では、第1アライメントマークM1(第1アライメントマークM3)が十字状を呈し、第2アライメントマークM2(第2アライメントマークM4)が直線状を呈する形態を一例に説明した。しかし、第1アライメントマークM1(第1アライメントマークM3)及び第2アライメントマークM2(第2アライメントマークM4)の形状は、これに限定されない。また、上記実施形態では、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2の2種類のマークを使用する形態を一例に説明したが、アライメントマークは少なくとも1種類設けられればよい。
【0090】
上記実施形態では、マスキングテープTを貼付することにより、端子電極となる陽極層5及び引出電極9aを形成する形態を一例に説明した。しかし、マスキングテープTを用いなくても端子電極を作製できる。例えば、陽極層5及び引出電極9a上に形成された連続した陰極層を、フォトリソ法、ドライエッチング法、レーザートリミング法等によるパターニングによって形成されてもよい。また、陽極層5及び引出電極9a上に陰極層9が成膜(陽極層5と陰極層9との間には有機機能層7が配置されていてもよい)された後、レーザー等により陰極層9のトリミングを行い、陽極側と陰極側とを分断してもよい。
【0091】
上記実施形態では、引出電極9aの一部を覆うようにマスキングテープTを貼付し、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2のそれぞれを覆うように、マスキングテープTAを貼付する形態を一例に説明した。しかし、引出電極9aの一部と第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を覆うことができる幅のマスキングテープTA又はマスキングテープTを用いて、引出電極9aの一部と第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を覆ってもよい。
【0092】
上記実施形態では、マスキングテープTを、陽極層5の一端部(引出電極9aと対向する端部の反対側の端部)及び引出電極9aの一端部(陽極層5と対向する端部の反対側の端部)を覆うように貼り付ける形態を一例に説明した。しかし、マスキングテープTは、引出電極9aの一端部に貼り付けなくてもよい。
【0093】
上記実施形態では、マスキングテープTを支持基板3に貼り付けた後、有機機能層7を形成する形態を一例に説明した。しかし、有機機能層7を形成してから、マスキングテープTを支持基板3に貼り付けてもよい。また、マスキングテープTを、有機機能層7の一部を覆うように(有機機能層7の一部上に)貼り付けてもよい。すなわち、有機機能層形成工程S05の後に、マスキングテープ貼付工程S04を行ってもよい。
【0094】
上記実施形態では、封止部材貼付工程S08において帯状の封止部材11を貼付する形態を一例に説明した。しかし、封止部材11は、有機EL部13に対して個々に貼付されてもよい。
【0095】
上記実施形態では、封止部材11に設けられた第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4の位置をカメラ44により撮像された画像から検出して、第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2、及び、第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4の検出による位置情報に基づいて、支持基板3及び封止部材11の少なくとも一方を支持基板3又は封止部材11の幅方向に移動させることにより、支持基板3に対する封止部材11の位置合わせを行う形態を一例に説明した。しかし、支持基板3に対する封止部材11の位置合わせ方法はこれに限定されない。
【0096】
例えば、支持基板3に対する封止部材11の位置合わせは、支持基板3上に設けられた第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を検出すると共に封止部材11の幅方向の端を検出し、それらの検出結果に基づいて行ってもよい。封止部材11の幅方向の端は、カメラにて撮像された画像に基づいて検出されてもよいし、例えば、センサーにより検出してもよい。センサーとしては、例えば、光学反射式、光学透過式、超音波透過式、キャパシタンス式等を用いることができる。
【0097】
また、支持基板3の幅方向の端を検出し、支持基板3の幅方向の端に基づいて支持基板3の位置の調整を行った後に、支持基板3上に設けられた第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を検出してもよい。同様に、封止部材11の幅方向の端を検出し、封止部材11の幅方向の端に基づいて封止部材11の位置の調整を行った後に、封止部材11に設けられた第1アライメントマークM3及び第2アライメントマークM4を検出してもよい。
【0098】
また、封止部材11をガイドで固定する場合には、支持基板3上に設けられた第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2を検出すればよい。
【0099】
上記実施形態では、封止部材11が封止基材15と粘接着部17とを有する形態を一例に説明した。しかし、封止部材は、封止基材のみであってもよい。この場合、有機EL部13上に粘接着部を形成した後に、封止基材を貼付する。
【0100】
上記実施形態では、支持基板3の第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2に基づいて、封止部材貼付工程S08を実施する形態を一例に説明した。しかし、支持基板3の第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、他の工程において用いられてもよい。例えば、支持基板3の第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、分断工程に用いられてもよいし、レーザーによる電極のパターニング工程に用いられてもよい。
【0101】
上記実施形態では、基板乾燥工程S01から分断工程S09まで連続して実施する形態を一例に説明した。しかし、有機デバイスの製造方法では、封止部材11を貼り付けた後に支持基板3を巻き取ってもよい。なお、支持基板3の巻き取りは、任意のタイミング(各処理の途中)で行うことができる。また、巻き取られた支持基板3は、一旦、工程から離れ保管することもできる。また、巻き取られた支持基板3は、任意のタイミングで、次の工程へ巻出しを行うことができる。
【0102】
上記実施形態では、基板乾燥工程S01を実施する形態を一例に説明したが、基板乾燥工程S01は実施されなくてもよい。また、上記実施形態では、陽極層形成工程S02において、陽極層5と引出電極9aとの組を、支持基板3の幅方向に所定の間隔をあけて複数形成する形態を一例に説明した。しかし、陽極層形成工程S02では、陽極層5と引出電極9aとの組は、支持基板3の幅方向(X方向)において1組であってもよい。
【0103】
上記実施形態では、封止基材15に粘接着部17が設けられた封止部材11を、有機EL部13に加熱ローラ32a及び32bにて加圧して貼付する形態を一例に説明した。しかし、封止部材11の貼付方法はこれに限定されない。例えば、キャリアシートに封止部材11を貼合し、封止部材11を有機EL部13上に貼付した後に、キャリアシートを剥離してもよい。
【0104】
上記実施形態に加えて、封止部材貼付工程S08において封止部材11を有機EL部13上に貼付した後に、支持基板3の他方の主面3bに光取り出しフィルムを貼付してもよいし、封止部材11上に保護フィルムを貼付してもよい。また、保護フィルムは、封止部材11に予め設けられていてもよい。なお、光取り出しフィルム及び保護フィルムは、分断工程S06の後に貼付されてもよい。この場合、支持基板3の第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、光取り出しフィルムを貼付する工程に用いられてもよい。
【0105】
上記実施形態では、封止部材11が封止基材15と粘接着部17とを有する形態を一例に説明した。しかし、封止部材11は、更に吸湿部(ゲッター材)を有していてもよい。また、有機EL部13において吸湿部を形成した後に、封止部材11が貼付されてもよい。すなわち、有機EL素子1は、吸湿部を備えていてもよい。この場合、支持基板3の第1アライメントマークM1及び第2アライメントマークM2は、吸湿部を形成する工程に用いられてもよい。
【0106】
上記実施形態では、封止部材貼付工程S08を、水分濃度の低い窒素雰囲気で行う形態を一例に説明した。しかし、封止部材貼付工程S05は、真空、不活性雰囲気中、又は、ドライエア中で行ってもよい。
【0107】
上記実施形態では、引出電極9aを備える形態を一例に説明したが、引出電極9aは備えられなくてもよい。この場合、有機EL素子1では、陰極層9が引出電極として機能する。
【0108】
上記実施形態では、
図1に示されるように、陽極層5の一部が露出している形態を一例に説明したが、陽極層5が有機機能層7に覆われていてもよい。この場合、陽極層5と電気的に接続される引出電極が形成されていればよい。
【0109】
上記実施形態では、有機デバイスとして、有機EL素子を一例に説明した。有機デバイスは、有機薄膜トランジスタ、有機フォトディテクタ、有機薄膜太陽電池等であってもよい。