【実施例】
【0101】
以下、実施例により、複素環含有アミノ酸化合物又はその塩、及びその製造方法について具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0102】
以下の略語を使用することがある。
Ac:アセチル基
Et:エチル基
Bu:ブチル基
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
TLC:薄層クロマトグラフィー
Boc:tert−ブトキシカルボニル基
TBS:tert−ブチルジメチルシリル基
M:モル濃度(mol/L)
【0103】
また、有機反応により得られた反応生成物について、Bruker社製NMR装置「AV500」(型式名)を用いて、
1H NMR測定を行った。化学シフトは、重水を内部標準として決定した。分裂パターンは、以下のとおりである。
s:一重線、d: 二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線、b:幅広線
【0104】
実施例1
一般式(1)におけるR
1及びR
2がエチル基であり、R
3が水酸基であり、nが1である化合物(1''a)、並びに、一般式(1)におけるR
1及びR
2が水素原子であり、R
3が水酸基であり、nが1である化合物の塩である化合物(1''a−2)(以下、「誘導体(X)」ともいう)の製造例を示す。
【化12】
【0105】
(1)工程1
Boc−L−アリルグリシン(5a)2.6g(9.58mmol)のメタノール溶液を−78℃に冷却し、溶液が青くなるまでオゾンガスをバブリングした。その後、青色が消失するまで窒素ガスをバブリングし、この溶液にL−プロリン(6a)2.21mg(19.2mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH(OAc)
3)4.07g(19.2mmol)を加え、室温(25℃)で6時間撹拌し、反応させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。次いで、得られた残渣を1Mの水酸化ナトリウム水溶液に溶かし、ジエチルエーテルで洗浄した。回収した水層にクロロホルム/メタノール混合溶媒(CHCl
3:MeOH=9:1)を加え、0℃に冷却した。そして、1Mの硫酸水素カリウム水溶液を加え、この混合液にクロロホルム/メタノール混合溶媒(CHCl
3:MeOH=9:1)を加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮し、無色オイル状の化合物(4a)3.47gを得た。
【0106】
(2)工程2
化合物(4a)3.47g(9.34mmol)に、冷やした無水HCl/EtOH(塩化アセチル8mLとエタノール40mLとから調製したHCl/EtOH)を加え、50℃で16時間撹拌し、カルボキシル基を保護しつつ、アミノ基の保護基を脱保護させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。次いで、得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、回収した水層に0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えた。この混合液にジクロロメタンを加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮し、無色オイル状の化合物(3a)1.85gを得た。
【0107】
(3)工程3
化合物(3a)464.4mg(1.7mmol)のメタノール溶液17mLに、アルデヒド化合物(2a)386mg(2.05mmol)を加え、0℃に冷やした。この混合液に酢酸4.9mL(85.6mmol)とNaBH
3CN1.18mg(1.88mmol)とを加え、0℃で2時間撹拌し、化合物(3a)とアルデヒド化合物(2a)とを反応させた。次いで、反応の終了をTLCで確認し、この反応溶液に、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。この混合液にジクロロメタンを加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することで、無色オイル状の化合物(1'a)382mg(0.86mmol、51%)を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーの展開溶媒は、n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1→1:1である。
【0108】
化合物(1'a)
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) :δ 4.16 (q, J=7.0 Hz, 2H), 4.15 (q, J=7.0 Hz, 2H), 3.69 (t, J=5.7 Hz, 2H), 3.31-3.30 (m, 1H), 3.20-3.08 (m, 2H), 2.77 (ddd, J=15.4, 11.6, 9.1 Hz, 1H), 2.64 (dt, J=11.3, 7.0 Hz, 1H), 2.54 (dt, J=11.3, 7.0 Hz, 1H), 2.45 (ddd, J=12.3, 8.3, 4.8 Hz, 1H), 2.35 (qd, J=8.3, 2.3 Hz, 1H), 2.11 (m, 1H), 1.91-1.73 (m, 5H), 1.69 (quintet, J=6.8 Hz, 2H), 1.26 (t, J=7.0 Hz, 3H), 1.25 (t, J=7.0 Hz, 3H), 0.89 (s, 9H), 0.05 (s, 6H).
【0109】
(4)工程4
化合物(1'a)382mg(0.86mmol)に、酢酸2.4mL、THF0.8mL及び水0.8mLを加え、室温(25℃)で16時間撹拌し、脱保護反応させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。次いで、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。そして、この混合液にジクロロメタンを加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することで、無色オイル状の化合物(1''a)147.1mg(0.45mmol、52%)を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーの展開溶媒は、酢酸エチル:メタノール=100:1→0:100である。
【0110】
化合物(1''a)
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) :δ 4.17 (q, J=7.3 Hz, 2H), 4.16 (q, J=7.3 Hz, 2H), 3.34 (m, 1H), 3.21-3.09 (m, 2H), 2.80 (m, 1H), 2.68 (dt, J=11.6, 7.0 Hz, 1H), 2.56 (dt, J=11.3, 6.8 Hz, 1H), 2.45 (ddd, J=13.3, 8.8, 4.8 Hz, 1H), 2.34 (qd, J=8.3, 2.5 Hz, 1H), 2.10 (m, 1H), 1.92-1.74 (m, 5H), 1.70 (quintet, J=6.5 Hz, 2H), 1.26 (t, J=7.3 Hz, 3H), 1.25 (t, J=7.3 Hz, 3H).
【0111】
(5)工程5
化合物(1''a)147.1mg(0.45mmol)を水に溶解した後、その水溶液4.4mLを0℃に冷却した。次いで、この水溶液に1Mの水酸化ナトリウム水溶液0.97mLを加え、室温(25℃)に昇温し17時間撹拌し、脱保護反応させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。得られた残渣に1Mの塩化水素水溶液4.4mLを加え、室温(25℃)で2時間撹拌し、酸加水分解反応させた。その後、この反応液を減圧下で濃縮することで、黄色アモルファスの化合物(1''a−2)202.8mgを塩化ナトリウムとの混合物として得た。
【0112】
化合物(1''a−2)
1H NMR (500 MHz, D
2O) :δ 4.32 (dd, J=9.8, 7.0 Hz, 1H), 4.06 (dd, J=7.0, 4.7 Hz, 1H), 3.86 (ddd, J=11.4, 7.9, 3.8 Hz, 1H), 3.73 (t, J=6.0 Hz, 2H), 3.64 (ddd, J=13.0, 9.8, 6.6 Hz, 1H), 3.45 (ddd, J=13.0, 9.8, 5.7 Hz, 1H), 3.26 (m, 1H), 3.25 (t, J=7.6 Hz, 2H), 2.57 (m, 1H), 3.46-2.33 (m, 2H), 2.28-2.18 (m, 2H), 2.04 (m, 1H), 1.97 (quintet, J=6.3 Hz, 2H).
【0113】
実施例2
一般式(1)におけるR
1及びR
2がエチル基であり、R
3が水酸基であり、nが1である化合物(1''b)、並びに、一般式(1)におけるR
1及びR
2が水素原子であり、R
3が水酸基であり、nが1である化合物の塩である化合物(1''b−2)(以下、「誘導体(X’)」ともいう)の製造例を示す。
【化13】
【0114】
(1)工程1
Boc−D−アリルグリシン(5b)401.2mg(1.87mmol)のメタノール溶液を−78℃に冷却し、溶液が青くなるまでオゾンガスをバブリングした。その後、青色が消失するまで窒素ガスをバブリングし、この反応液にL−プロリン(6a)430mg(3.73mmol)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
3CN)235mg(3.74mmol)を加え、室温(25℃)で2時間撹拌し、反応させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。次いで、得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、白色オイル状の化合物(4b)689.3mgを得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーの展開溶媒は、酢酸エチル:メタノール=1:1→0:1である。
【0115】
(2)工程2
化合物(4b)689.3mgに、冷やした無水HCl/EtOH(塩化アセチル1.8mLとエタノール9mLとから調製したHCl/EtOH)を加え、50℃で17時間撹拌し、カルボキシル基を保護しつつ、アミノ基の保護基を脱保護させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。次いで、得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、回収した水層に0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えた。この混合液にジクロロメタンを加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮し、無色オイル状の化合物(3b)525.3mgを得た。
【0116】
(3)工程3
化合物(3b)525.3mg(1.93mmol)のメタノール溶液18mLに、アルデヒド化合物(2a)435mg(2.31mmol)を加え、0℃に冷やした。この混合液に酢酸5.5mL(96.1mmol)とNaBH
3CN135mg(2.15mmol)とを加え、0℃で16時間撹拌し、化合物(3b)と、アルデヒド化合物(2a)とを反応させた。次いで、反応の終了をTLCで確認し、この反応溶液に、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。この反応液をジクロロメタンを加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することで、無色オイル状の化合物(1’b)372.6mg(0.84mmol、44%)を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーの展開溶媒は、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1→0:1である。
【0117】
化合物(1’b)
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) :δ 4.16 (q, J=7.3 Hz, 2H), 4.15 (q, J=7.3 Hz, 2H), 3.69 (t, J=5.7 Hz, 2H), 3.36-3.30 (m, 1H), 3.20-3.10 (m, 2H), 2.81 (dt, J=12.0, 7.8 Hz, 1H), 2.66 (dt, J=11.3, 7.0 Hz, 1H), 2.58 (dt, J=11.3, 7.0 Hz, 1H), 2.46 (ddd, J=13.0, 7.5, 5.5 Hz, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.12 (m, 1H), 1.91-1.78 (m, 5H), 1.70 (quintet, J=6.3 Hz, 2H), 1.26 (t, J=7.3 Hz, 3H), 1.25 (t, J=7.3 Hz, 3H), 0.89 (s, 9H), 0.05 (s, 6H).
【0118】
(4)工程4
化合物(1’b)372.6mg(0.84mmol)に、酢酸2.4mL、THF0.8mL及び水0.8mLを加え、室温(25℃)で17時間撹拌し、その後、混合液を40℃に昇温し、更に2時間撹拌し、脱保護反応させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。次いで、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。そして、この混合液にジクロロメタンを加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することで、無色オイル状の化合物(1''b)111.6mg(0.34mmol、40%)を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーの展開溶媒は、酢酸エチル:メタノール=5:1である。
【0119】
化合物(1''b)
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) :δ 4.18 (q, J=7.0 Hz, 2H), 4.17 (q, J=7.0 Hz, 2H), 3.61 (t, J=6.2 Hz, 2H), 3.34 (t, J=6.3 Hz, 1H), 3.20-3.11 (m, 2H), 2.82 (dt, J=12.0, 7.8 Hz, 1H), 2.68 (dt, J=11.3, 7.0 Hz, 1H), 2.60 (dt, J=11.3, 7.0 Hz, 1H), 2.47 (m, 1H), 2.32 (qd, J=8.3, 2.8 Hz, 1H), 2.11 (m, 1H), 1.89-1.78 (m, 5H), 1.70 (quintet, J=6.8 Hz, 2H), 1.26 (t, J=7.0 Hz, 3H), 1.25 (t, J=7.0 Hz, 3H).
【0120】
(5)工程5
化合物(1''b)を水に溶解した後、その水溶液を0℃に冷却した。次いで、この水溶液に1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温(25℃)に昇温し撹拌し、脱保護反応させた。この反応液を減圧下で濃縮した。得られた残渣に対して1Mの塩化水素水溶液を加え、室温(25℃)で2時間撹拌し、酸加水分解反応させた。その後、この反応溶液を減圧下で濃縮することで、黄色アモルファスの化合物(1''b−2)を得た。
【0121】
化合物(1''b−2)
1H NMR (500 MHz, D
2O) :δ 4.38 (dd, J=9.8, 7.3 Hz, 1H), 4.12 (dd, J=7.9, 5.7 Hz, 1H), 3.86 (ddd, J=11.1, 7.6, 3.8 Hz, 1H), 3.72 (t, J=6.0 Hz, 2H), 3.62 (ddd, J=12.6, 9.5, 6.0 Hz, 1H), 3.61 (m, 1H), 3.28 (m, 1H), 3.25 (t, J=7.6 Hz, 2H), 2.59 (m, 1H), 2.50-2.38 (m, 2H), 2.28-2.18 (m, 2H), 2.07 (m, 1H), 1.97 (quintet, J=6.6 Hz, 2H).
【0122】
実施例3
実施例1で得られた化合物(3a)を原料として用いた、一般式(1)におけるR
1及びR
2がエチル基であり、R
3がtert−ブチル基であり、nが1である化合物(1'''a)、並びに、一般式(1)におけるR
1及びR
2が水素原子であり、R
3がカルボキシル基であり、nが1である化合物の塩である化合物(1'''a−2)(以下、「誘導体(Y)」ともいう)の製造例を示す。
【化14】
【0123】
(1)工程3'
化合物(3a)209.3mg(0.77mmol)のメタノール溶液7.7mLに、アルデヒド化合物(2c)150mg(0.95mmol)を加え、0℃に冷やした。この混合液に酢酸2.2mL(38.4mmol)とNaBH
3CN53mg(0.84mmol)とを加え、0℃で14時間撹拌し、化合物(3a)と、アルデヒド化合物(2c)とを反応させた。次いで、反応の終了をTLCで確認し、この反応溶液に、飽和の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。この混合液に酢酸エチルを加えて抽出し、回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することで、無色オイル状の化合物(1'''a)143.7mg(0.35mmol)を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーの展開溶媒は、n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1→0:1である。
【0124】
化合物(1'''a)
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) :δ 4.17 (q, J=7.3 Hz, 2H), 4.16 (q, J=7.3 Hz, 2H), 3.34-3.32 (m, 1H), 3.14 (m, 1H), 2.79 (ddd, J=12.0, 8.6, 7.3 Hz, 1H), 2.58 (dt, J=11.8, 7.6 Hz, 1H), 2.45 (m, 1H), 2.34 (br q, J=8.3 Hz, 1H), 2.26 (t, J=7.3 Hz, 2H), 2.10 (m, 1H), 1.92-1.66 (m, 7H), 1.49 (s, 9H), 1.26 (t, J=7.0 Hz, 3H), 1.25 (t, J=7.0 Hz, 3H).
【0125】
(2)工程4'
化合物(1'''a)96.1mg(0.23mmol)を水に溶解した後、その水溶液2.3mLを0℃に冷却した。次いで、この水溶液に1Mの水酸化ナトリウム水溶液0.5mLを加え、室温(25℃)に昇温し19時間撹拌し、脱保護反応させた。反応の終了をTLCで確認し、この反応液を減圧下で濃縮した。得られた残渣に1Mの塩化水素水溶液2.3mLを加え、室温(25℃)で2時間撹拌し、酸加水分解反応させた。その後、この反応液を減圧下で濃縮することで、黄色アモルファスの化合物(1'''a−2)133.7mgを塩化ナトリウムとの混合物として得た。
【0126】
化合物(1'''a−2)
1H NMR (500 MHz, D2O) :δ 4.33 (dd, J=9.5, 7.0 Hz, 1H), 4.07 (dd, J=8.5, 4.5 Hz, 1H), 3.86 (ddd, J=11.4, 7.9, 4.1 Hz, 1H), 3.64 (ddd, J=12.9, 9.8, 6.3 Hz, 1H), 3.45 (ddd, J=12.9, 9.8, 5.6 Hz, 1H), 3.29 (m, 1H), 3.20 (t, J=7.8 Hz, 2H), 2.57 (m, 1H), 2.56 (t, J=7.0 Hz, 2H), 2.47-2.34 (m, 2H), 2.27-2.18 (m, 2H), 2.11-1.98 (m, 3H).
【0127】
[評価]
上記で得られた誘導体(X)、(X’)及び(Y)について、以下の評価を行った。
【0128】
(1)酸性水溶液中での安定性試験
この安定性試験では、誘導体(X)、(X’)及び(Y)並びに2’−デオキシムギネ酸(DMA)及び下記構造を有する化合物(以下、「PDMA」という)を用いて調製した各酸性水溶液が時間経過とともに安定かどうか、すなわち誘導体が分解し難いかどうかを評価した。
【化15】
【0129】
試験例1〜3及び参考例1〜2
誘導体(X)、(X’)及び(Y)を用いて、下記試験液(a)、(b)及び(c)を用意した。また、DMA及びPDMAを用いて、下記試験液(d)及び(e)を用意した。試験液(a)については、物質3μmolを重水0.5mLに溶解させ、調製した。また、その他の試験液については、物質0.03mmolを重水0.5mLに溶解させ、調製した。試験液のpHは2であった。
試験例1用の試験液(a):誘導体(X)の酸性水溶液
試験例2用の試験液(b):誘導体(X’)の酸性水溶液
試験例3用の試験液(c):誘導体(Y)の酸性水溶液
参考例1用の試験液(d):DMAの酸性水溶液
参考例2用の試験液(e):PDMAの酸性水溶液
【0130】
試験液(a)〜(e)のそれぞれをNMR測定管(関東化学社製、 φ5mm×7inch)に充填し、
1H NMR測定を行った。尚、
1H NMRは、試験液を作製した直後(0日)、10日後、20日後及び27日後に測定した。試験液は、これをNMR測定管に入れた密閉状態で、室温(25℃)で、遮光して保管した。
1H NMRスペクトルにおける、DMA 4.4 ppm(1H, q)、PDMA 4.4 ppm(1H, q)、誘導体(X) 4.3 ppm(1H, dd)、誘導体(X’) 4.3 ppm(1H, dd)、誘導体(Y) 4.3 ppm(1H, dd)に着眼した。試験液(a)、(b)及び(c)の場合、保管期間を27日としても、
1H NMRスペクトルに変化が見られなかった。一方、試験液(d)及び(e)の場合、保管時間の経過とともにDMA及びPDMAの分解物に由来するピークが検出された。このピークの化学シフトは、DMAでは4.5 ppm(t, 1H)、PDMAでは4.5 ppm(1H, t)であったため、その積分値から、10日後、20日後及び27日後のDMA又はPDMAの残存率を下記の計算式にて算出した(表1及び
図1参照)。
(測定化合物の積分値)/{(測定化合物の積分値)+(分解物の積分値)}×100
【0131】
【表1】
【0132】
表1及び
図1に示すように、誘導体(X)、誘導体(X’)及び誘導体(Y)に係る試験例1〜3では、試験液の調製当初より27日経過後において、分解物に由来するピークが検出されず、残存率が常時100%に維持されており、安定性が極めて高いことが分かった。一方、参考例1〜2では、10日目までにDMA及びPDMAの残存率が大きく低下し、その後も低下が続いており、本発明に係る誘導体(X)、誘導体(X’)及び誘導体(Y)に比べて、酸性水溶液における安定性に劣ることが分かった。
【0133】
(2)栽培試験
試験例4〜6及び参考例3〜4
水道水に、水稲の品種「日本晴」を播種し、根と芽が出たところで、苗を水耕液(園試処方)に浸した。草丈が約5cmになったところで、苗をpH9の貝化石土壌に移植した。そして、試験例4〜6用に、下記肥料(f)〜(h)を用意し、参考例3用に、下記肥料(i)を用意した。
次いで、肥料(f)〜(i)を、それぞれ別々の苗に、1回のみ投与し(誘導体の投与量:90μmol)、その後、週に3回、土壌が飽和容水量になるまで潅水した。各肥料を投与後11日目にイネの葉色(SPAD値)を測定した。尚、参考例4は、肥料を与えずに、潅水のみで栽培した例であり、試験例4等と同様に11日目にSPAD値を測定した。その結果を
図2に示す。
試験例4用の肥料(f):誘導体(X)及び硫酸鉄の1:1混合物
試験例5用の肥料(g):誘導体(X’)及び硫酸鉄の1:1混合物
試験例6用の肥料(h):誘導体(Y)及び硫酸鉄の1:1混合物
参考例3用の肥料(i):Fe−EDDHA
参考例4:肥料なし
【0134】
図2に示すように、本発明に係る誘導体(X)、(X’)又は(Y)を含む肥料を用いた試験例4〜6においては、いずれも11日目のSPAD値が33〜38であり、高い生育効果を有することが分かった。一方、一般的な合成キレート鉄錯体であるFe−EDDHA(鉄−エチレンジアミン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸))からなる肥料を用いた参考例3では、SPAD値が28〜29であり、肥料なしの参考例4ではSPAD値が19〜26であった。このように、本願発明に係る肥料を用いると、肥料を与えないときばかりでなく、一般的な合成キレート鉄錯体を用いた場合と比較してもイネの葉色が濃く良好に生育したことが分かった。
【0135】
以上より、本発明の複素環含有アミノ酸化合物又はその塩は、優れた鉄キレート剤としての作用と、酸性水溶液中における、時間経過に伴う分解し難い安定性とを両立することが分かった。