(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物Bと、式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物Cとを少なくとも含む重縮合性混合物であり、且つ、該アルコキシケイ素化合物Bと、該アルコキシケイ素化合物Cとのモル比が、99.9:0.1〜90:10の範囲であり、(ジアリールケイ酸化合物A)/(アルコキシケイ素化合物B+アルコキシケイ素化合物C)のモル比が0.9以上1.1未満の範囲である重縮合性混合物を、酸又は塩基の存在下重縮合して得られる反応性シリコーン化合物100質量部、及び
(b)式[4]で表されるフルオレン化合物D、式[5]で表されるビスフェノール化合物E、及び多官能(メタ)アクリレート化合物Fからなる群から選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリレート化合物
であって、且つ、
前記式[4]で表されるフルオレン化合物Dを必須の成分として含む(メタ)アクリレート化合物1〜200質量部
を含み、そして
該多官能(メタ)アクリレート化合物Fが、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、2,2’−(オキシビスメチレン)ビス(2−メチルプロパン−1,3−ジオール)、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリトリトールからなる群から選ばれるポリオールの、(メタ)アクリレート又はアルコキシ化(メタ)アクリレートであ
り、かつ、
前記(b)(メタ)アクリレート化合物中の前記フルオレン化合物Dの含有割合が、前記(b)(メタ)アクリレート化合物の全質量に基いて50〜100質量%である、
重合性組成物。
【化1】
(式中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換
されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基を表す。)
【化2】
(式中、Ar
3は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、又は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基を表し、R
1はメチル基又はエチル基を表し、R
2はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、aは2又は3を表す。)
【化3】
(式中、Rfは炭素原子数1乃至12のフルオロアルキル基、又はフルオロフェニル基を表し、R
3はメチル基又はエチル基を表し、R
4はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、bは2又は3を表す。)
【化4】
(式中、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、L
3及びL
4はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、m及びnはm+nが0乃至40となる0又は正の整数を表す。)
【化5】
(式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、L
5及びL
6はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、p及びqはp+qが0乃至40となる0又は正の整数を表す。)
前記(b)(メタ)アクリレート化合物として、前記フルオレン化合物D及び前記多官能(メタ)アクリレート化合物Fの二種を少なくとも含む、請求項1に記載の重合性組成物。
前記(b)(メタ)アクリレート化合物として、前記フルオレン化合物D、前記ビスフェノール化合物E及び前記多官能(メタ)アクリレート化合物Fの三種を少なくとも含む、請求項1に記載の重合性組成物。
さらに(d)チオール化合物I、及びジスルフィド化合物Jからなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄化合物0.01〜5質量部を含む、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の重合性組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のキャスティングレンズ成形における硬化後の冷却工程において、硬化物の熱膨張係数(以下、CTE)に起因する大きな収縮が起こると、硬化物にクラックが発生し、レンズウェハーを得ることが出来ない。さらに、冷却時に硬化物のガラス転移温度(以下、Tg)を経た場合、転移時の応力が硬化物内に蓄積され、何れクラックやレンズの位置ずれを引き起こしてしまう虞がある。
また、特許文献2に記載の組成物から得られた硬化物は、加熱処理前後の光学特性の変化量は少ないといえるものの、そもそも得られた硬化物の屈折率が小さく、またアッベ数が大きい値の硬化物しか得られていない。このように特許文献2に提案された手法では、高屈折率かつ低アッベ数といった光学特性は満足できず、高解像度のレンズ作製に完全に適する材料とはいい難い。
【0010】
このように、高解像度カメラモジュール用レンズとして使用し得る光学特性(高屈折率、低アッベ数)と、はんだリフロー等の実装プロセスに適合する耐熱黄変性を満足し、かつキャスティングレンズ成形に適した、高いTgを有する又はTgレスであり、また低CTEを有し、さらにはモールドからの離型性という種々の特性を全て満足する硬化性樹脂材料は未だなく、その開発が望まれていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、硬化物が高い屈折率と低いアッベ数を維持し、さらに高温熱履歴によって生じる変色(熱黄変)を抑制することができ、かつTgレスで低CTEを示し離型性のよい成形物を作るのに好適な重合性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、特定の反応性含フッ素シリコーン化合物に加えて、特定の(メタ)アクリレート化合物を添加することにより、得られるその硬化物(成形物)が高い屈折率と低アッベ数を維持し、さらに高温熱履歴によって生じる寸法変化を抑制することができ、しかも離型性に優れる成形物が得られることを見出し、完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、第1観点として、(a)式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物Bと、式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物Cとを少なくとも含む重縮合性
混合物を、酸又は塩基の存在下重縮合して得られる反応性シリコーン化合物100質量部、及び(b)(メタ)アクリレート化合物1〜200質量部を含む重合性組成物に関する。
【化1】
(式中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基を表す。)
【化2】
(式中、Ar
3は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、又は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基を表し、R
1はメチル基又はエチル基を表し、R
2はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、aは2又は3を表す。)
【化3】
(式中、Rfは炭素原子数1乃至12のフルオロアルキル基、又はフルオロフェニル基を表し、R
3はメチル基又はエチル基を表し、R
4はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、bは2又は3を表す。)
第2観点として、前記(b)(メタ)アクリレート化合物が、式[4]で表されるフルオレン化合物D、式[5]で表されるビスフェノール化合物E、及び多官能(メタ)アクリレート化合物Fからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、前記多官能(メタ)アクリレート化合物Fが、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、2,2’−(オキシビスメチレン)ビス(2−メチルプロパン−1,3−ジオール)、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリトリトールからなる群から選ばれるポリオールの、(メタ)アクリレート又はアルコキシ化(メタ)アクリレートである、第1観点に記載の重合性組成物に関する。
【化4】
(式中、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、L
3及びL
4はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、m及びnはm+nが0乃至40となる0又は正の整数を表す。)
【化5】
(式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、L
5及びL
6はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、p及びqはp+qが0乃至40となる0又は正の整数を表す。)
第3観点として、前記(b)(メタ)アクリレート化合物として、前記フルオレン化合物D及び前記多官能(メタ)アクリレート化合物Fの二種を少なくとも含む、第2観点に記載の重合性組成物に関する。
第4観点として、前記(b)(メタ)アクリレート化合物として、前記フルオレン化合物D、前記ビスフェノール化合物E及び前記多官能(メタ)アクリレート化合物Fの三種を少なくとも含む、第2観点に記載の重合性組成物に関する。
第5観点として、さらに(c)式[6]で表される基を有する化合物である光安定剤G、及び式[7]で表される基を有する化合物である酸化防止剤Hからなる群から選ばれる少なくとも一種の安定化剤0.01〜5質量部を含む、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物に関する。
【化6】
(式中、R
11は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数1乃至12のアルコキシ基を表し、黒点は結合手を表す。)
【化7】
(式中、R
12は炭素原子数1乃至10のアルキル基を表し、R
13乃至R
15はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1乃至10のアルキル基を表し、黒点は結合手を
表す。)
第6観点として、さらに(d)チオール化合物I、及びジスルフィド化合物Jからなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄化合物0.01〜5質量部を含む、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物に関する。
第7観点として、前記Rfが式[8]で表される基である、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物に関する。
【化8】
(式中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、rは0乃至2の整数を表し、sは1乃至6の整数を表し、黒点はケイ素原子への結合手を表す。)
第8観点として、前記ジアリールケイ酸化合物Aがジフェニルシランジオールであり、前記アルコキシケイ素化合物Bが式[2a]で表される化合物であり、前記アルコキシケイ素化合物Cが式[3a]で表される化合物である、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物に関する。
【化9】
(式中、R
1は前記と同じ意味を表す。)
【化10】
(式中、Rf及びR
3は前記と同じ意味を表す。)
第9観点として、前記アルコキシケイ素化合物Bと、前記アルコキシケイ素化合物Cとの重縮合モル比が、99.9:0.1〜90:10の範囲である、第1観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物に関する。
第10観点として、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物を重合して得られる、硬化物に関する。
第11観点として、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物を重合して得られる、光学レンズに関する。
第12観点として、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の重合性組成物からなる高屈折率樹脂レンズ用材料に関する。
第13観点として、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物Bと、式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物Cとを少なくとも含む重縮合性
混合物を、(ジアリールケイ酸化合物A)/(アルコキシケイ素化合物B+アルコキシケイ素化合物C)のモル比が0.9以上1.1未満の範囲で酸又は塩基の存在下重縮合して得られる反応性シリコーン化合物に関する。
【化11】
(式中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基を表す。)
【化12】
(式中、Ar
3は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、又は重
合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基を表し、R
1はメチル基又はエチル基を表し、R
2はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、aは2又は3を表す。)
【化13】
(式中、Rfは炭素原子数1乃至12のフルオロアルキル基を表し、R
3はメチル基又はエチル基を表し、R
4はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、bは2又は3を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の、特定のジアリールケイ酸化合物と特定のアルコキシケイ素化合物とを含む重縮合性
混合物を重縮合することにより得られる反応性シリコーン化合物と特定の(メタ)アクリレート化合物から構成される重合性組成物は、その硬化物が、光学デバイス、例えば高解像度カメラモジュール用レンズとして望ましい光学特性(高屈折率及び低アッベ数)を有するだけでなく、カメラモジュールの実装プロセスに必要とされる変色や寸法安定性等に関する高い耐熱性を有し、しかも離型性に優れる。
従って、上記重合性組成物からなる本発明の高屈折率樹脂レンズ用材料は、高解像度カメラモジュール用レンズとして好適に使用することができる。
さらに本発明の重合性組成物は、無溶剤の形態で十分に取り扱い可能な粘度を有しているため、金型等の鋳型の押し付け加工(インプリント技術)を適用して好適に硬化物に成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<重合性組成物>>
本発明は、(a)上記式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、上記式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物Bと、上記式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物Cとを少なくとも含む重縮合性
混合物を、酸又は塩基の存在下重縮合して得られる反応性シリコーン化合物100質量部、及び(b)(メタ)アクリレート化合物1〜200質量部を含む重合性組成物に関する。
【0016】
<(a)反応性シリコーン化合物>
本発明に用いられる(a)反応性シリコーン化合物は、特定構造のジアリールケイ酸化合物Aと、特定構造のアルコキシケイ素化合物Bと、特定構造のアルコキシケイ素化合物Cとを少なくとも含む重縮合性
混合物を、酸又は塩基の存在下重縮合して得られる化合物である。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0017】
<重縮合性化合物>
[ジアリールケイ酸化合物A]
前記ジアリールケイ酸化合物Aは、下記式[1]で表される化合物である。
【化14】
上記式[1]中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基を表す。
【0018】
Ar
1及びAr
2が表す炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基等が挙げられる。
Ar
1及びAr
2が表す炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基としては、例えば、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、6−メチルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。
【0019】
上記式[1]で表される化合物の具体例としては、ジフェニルシランジオール、ジ−p−トリルシランジオール、ビス(4−エチルフェニル)シランジオール、ビス(4−イソプロピルフェニル)シランジオール、ジナフチルシランジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
[アルコキシケイ素化合物B]
前記アルコキシケイ素化合物Bは、下記式[2]で表される化合物である。
【化15】
上記式[2]中、Ar
3は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、又は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基を表し、R
1はメチル基又はエチル基を表し、R
2はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、aは2又は3を表す。
【0021】
Ar
3が表す重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基としては、例えば、2−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、4−ビニルフェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−アリルフェニル基、4−アリルオキシフェニル基、4−イソプロペニルフェニル基等が挙げられる。
Ar
3が表す重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基としては、例えば、4−ビニルナフタレン−1−イル基、5−ビニルナフタレン−1−イル基、4−アリルナフタレン−1−イル基、6−ビニルナフタレン−2−イル基、6−アリルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。
【0022】
上記式[2]で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(4−イソプロペニルフェニル)シラン、ジメトキシ(メチル)(4−ビニルフェニル)シラン、ジメトキシビス(4−ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(4−ビニル−1−ナフチル)シラン、トリメトキシ(5−ビニル−1−ナフチル)シラン、トリメトキシ(6−ビニル−2−ナフチル)シラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
[アルコキシケイ素化合物C]
前記アルコキシケイ素化合物Cは、下記式[3]で表される化合物である。
【化16】
上記式[3]中、Rfは炭素原子数1乃至12のフルオロアルキル基、又はフルオロフェニル基を表し、R
3はメチル基又はエチル基を表し、R
4はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、bは2又は3を表す。
中でも、Rfが式[8]で表される基であることが好ましい。
【化17】
上記式[8]中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、rは0乃至2の整数を表し、sは1乃至6の整数を表し、黒点はケイ素原子への結合手を表す。
【0024】
Rfが表す炭素原子数1乃至12のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル基、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル基、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル基、1H,1H,4H−ヘキサフルオロブチル基、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル基、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル基、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル基、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基等が挙げられる。
【0025】
Rfが表すフルオロフェニル基としては、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0026】
上記式[3]で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシ(トリフルオロメチル)シラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、ジメトキシ(メチル)(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、ジメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)(4−ビニルフェニル)シラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
[その他の重縮合性化合物]
本発明で使用する(a)反応性シリコーン化合物は、前述のジアリールケイ酸化合物A、アルコキシケイ素化合物B及びアルコキシケイ素化合物C以外の、その他の重縮合性化合物が含まれていてもよい。
その他の重縮合性化合物としては、上記化合物A〜化合物C以外の加水分解性シラン化合物など、これら化合物と重縮合可能な化合物であれば特に限定されない。
その他の重縮合性化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリメトキシ(ビニル)シラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(トリメトキシ)シラン、トリメトキシ(フェニル)シラン、トリメトキシ(1−ナフチル)シラン、ジメトキシ(ジメチル)シラン、ジメトキシ(ジフェニル)シラン、ジメトキシ(メチル)(ビニル)シラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(ジメトキシ)(メチル)シラン、ジメトキシ(メチル)(フェニル)シラン等が挙げられる。
【0028】
[反応性シリコーン化合物の好適例]
上記(a)反応性シリコーン化合物としては、ジアリールケイ酸化合物Aとしてジフェニルシランジオールと、アルコキシケイ素化合物Bとして下記式[2a]で表される化合物と、アルコキシケイ素化合物Cとして下記式[3a]で表される化合物とを、酸又は塩基の存在下重縮合して得られる反応性シリコーン化合物が好ましい。
【化18】
上記式[2a]中、R
1は前記と同じ意味を表す。
【化19】
上記式[3a]中、Rf及びR
3は前記と同じ意味を表す。
【0029】
[ジアリールケイ酸化合物Aとアルコキシケイ素化合物B及びCの配合割合]
上述の反応性シリコーン化合物に用いる式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物B及び式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物Cの重縮合反応にかかる配合モル比は特に限定されないが、ブロックコポリマー化を防ぐ目的から、通常、ジアリールケイ酸化合物A:アルコキシケイ素化合物B及びC=2:1〜1:2の範囲が好ましい。より好ましくは1.1:0.9〜0.9:1.1の間で配合される範囲である。
また、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物Bと式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物Cの重縮合反応にかかる配合モル比は特に限定されないが、通常、アルコキシケイ素化合物B:アルコキシケイ素化合物C=99.9:0.1〜90:10の範囲が好ましい。
なお、重縮合性
混合物として上記化合物A〜化合物C以外の、その他の重縮合性化合物を含む場合、その配合割合は特に限定されないが、通常、アルコキシケイ素化合物Bに対して50モル%以下が好ましい。
また本発明は、前記式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物Bと、式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物Cとを少なくとも含む重縮合性
混合物を、(ジアリールケイ酸化合物A)/(アルコキシケイ素化合物B+アルコキシケイ素化合物C)のモル比が0.9以上1.1未満の範囲で酸又は塩基の存在下重縮合して得られる反応性シリコーン化合物も対象とするものである。
【0030】
上述のジアリールケイ酸化合物A、アルコキシケイ素化合物B及びアルコキシケイ素化合物Cは、必要に応じて適宜化合物を選択して用いることができ、また、複数種を併用することもできる。この場合のモル比も、ジアリールケイ酸化合物A、アルコキシケイ素化合物B及びアルコキシケイ素化合物Cそれぞれの総計の比が上記の範囲となる。
【0031】
[酸又は塩基性触媒]
式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物B及び式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物C(及び所望によりその他の重縮合性化合物)との重縮合反応は、酸又は塩基性触媒の存在下で好適に実施される。
重縮合反応に用いる触媒は、後述の溶媒に溶解する、又は均一分散する限りにおいては特にその種類は限定されず、必要に応じて適宜選択して用いることができる。
用いることのできる触媒としては、例えば、酸性化合物として、B(OR)
3、Al(OR)
3、Ti(OR)
4、Zr(OR)
4等;塩基性化合物として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニウム塩、アミン類等;フッ化物塩として、NH
4F、NR
4F等が挙げられる。なお、ここでRは、水素原子、炭素原子数1乃至12の直鎖状アルキル基、炭素原子数3乃至12の分枝状アルキル基、炭素原子数3乃至12の環状アルキル基からなる群から選ばれる一種以上の基である。
【0032】
上記酸性化合物としては、例えば、ホウ酸、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ−n−プロポキシボロン、トリイソプロポキシボロン、トリ−n−ブトキシボロン、トリイソブトキシボロン、トリ−sec−ブトキシボロン、トリ−tert−ブトキシボロン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン(チタンテトライソプロポキシド)、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0033】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0034】
上記フッ化物塩としては、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0035】
これら触媒のうち、好ましく用いられるのは、テトライソプロポキシチタン(チタンテトライソプロポキシド)、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化バリウムからなる群から選ばれる一種以上である。
触媒の使用量は、上記ジアリールケイ酸化合物とアルコキシケイ素化合物との合計質量に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。触媒の使用量を0.01質量%以上とすることで反応がより良好に進行する。また、経済性を考慮すれば、10質量%以下の使用で十分である。
【0036】
[重縮合反応]
本発明にかかる反応性シリコーン化合物は、アルコキシケイ素化合物の構造が一つの特徴となっている。本発明に用いられるアルコキシケイ素化合物に含まれる反応性基(重合性二重結合)は、ラジカル的又はイオン(アニオン、カチオン)的に容易に重合し、重合後(硬化後)は高い耐熱性を示す。
このようなアルコキシケイ素化合物とジアリールケイ酸化合物とを重縮合させ、耐熱性の高いシリコーン化合物とするとき、生成物が液体状態を保つよう、適度な重合度で反応を停止させる必要がある。なお本発明で用いるアルコキシケイ素化合物は積極的に加水分解しないことから、ジアリールケイ酸化合物との重縮合反応が穏やかであり、重合度を制御しやすい特徴がある。
アルコキシケイ素化合物とジアリールケイ酸化合物の脱アルコールによる重縮合反応は、無溶媒下で行うことも可能だが、後述するトルエンなどのアルコキシケイ素化合物に対して不活性な溶媒を反応溶媒として用いることも可能である。無溶媒の場合は、反応副生成物であるアルコールの留去が容易になるという利点がある。一方、反応溶媒を用いる場合は、反応系を均一にしやすく、より安定した重縮合反応を行えるという利点がある。
【0037】
反応性シリコーン化合物の合成反応は、前述のように無溶媒で行ってもよいが、より均一化させるために溶媒を使用しても問題ない。溶媒は、ジアリールケイ酸化合物及びアルコキシケイ素化合物と反応せず、その縮合物を溶解するものであれば特に限定されない。
このような反応溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール等のグリコールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが挙げられる。これら溶媒は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、トルエンが好ましい。
【0038】
本発明で用いる反応性シリコーン化合物は、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物B及び式[3]で表されるアルコキシケイ素化合物C(及び所望によりその他の重縮合性化合物)とを、酸又は塩基性触媒の存在下で、脱アルコール縮合を行うことにより得られる。重縮合反応は積極的に水を添加せず行うことが好ましく、反応は水分の混入を防ぐ目的から、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。反応温度は20〜150℃、より好ましくは30〜120℃である。
反応時間は、重縮合物の分子量増加が終了し、分子量分布が安定するのに必要な時間以上なら、特に制限は受けず、より具体的には数時間から数日間である。
【0039】
重縮合反応の終了後、得られた反応性シリコーン化合物をろ過、溶媒留去等の任意の方法で回収し、必要に応じて適宜精製処理を行うことが好ましい。
【0040】
このような反応によって得られた重縮合物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500〜10,000であり、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.0〜10である。
【0041】
<(b)(メタ)アクリレート化合物>
本発明の重合性組成物に含まれる(b)(メタ)アクリレート化合物は、好ましくは下記式[4]で表されるフルオレン化合物D、下記式[5]で表されるビスフェノール化合物E、及び多官能(メタ)アクリレート化合物Fからなる群から選ばれる少なくとも一種である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を指す。
【0042】
[フルオレン化合物D]
前記フルオレン化合物Dは、下記式[4]で表される化合物である。
【化20】
上記式[4]中、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、L
3及びL
4はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、m及びnはm+nが0乃至40となる0又は正の整数を表す。
【0043】
L
1及びL
2が表す置換基を有していてもよいフェニレン基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、2−メチルベンゼン−1,4−ジイル基、2−クロロベンゼン−1,4−ジイル基、2−ブロモベンゼン−1,4−ジイル基、2−アミノベンゼン−1,4−ジイル基、2−メチルベンゼン−1,5−ジイル基、2−クロロベンゼン−1,5−ジイル基、2−ブロモベンゼン−1,5−ジイル基、2−アミノベンゼン−1,5−ジイル基等が挙げられる。中でも、p−フェニレン基が好ましい。
【0044】
L
3及びL
4が表す炭素原子数1乃至6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、1,2−ジメチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、1−エチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチルペンタメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基、1,1−ジメチルテトラメチレン基、1,2−ジメチルテトラメチレン基、2,2−ジメチルテトラメチレン基、1−エチルテトラメチレン基、1,1,2−トリメチルトリメチレン基、1,2,2−トリメチルトリメチレン基、1−エチル−1−メチルトリメチレン基、1−エチル−2−メチルトリメチレン基等が挙げられる。中でも、エチレン基、メチルエチレン基が好ましい。
【0045】
式[4]で表される化合物において、m及びnは、m+nが0乃至30となる場合が好ましく、m+nが2乃至20となる場合がより好ましい。
【0046】
このようなフルオレン化合物Dの具体例としては、例えば、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)フェニル)−9H−フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)−9H−フルオレン、エトキシ化(エチレンオキシド変性)(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビス(4,1−フェニレン)ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(プロピレンオキシド変性)(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビス(4,1−フェニレン)ジ(メタ)アクリレート、オグソール(登録商標)EA−0200、同EA−F5003、同EA−F5503、同EA−F5510[以上、大阪ガスケミカル(株)製]、NKエステルA−BPEF[新中村化学工業(株)製]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
[ビスフェノール化合物E]
前記ビスフェノール化合物Eは、下記式[5]で表される化合物である。
【化21】
上記式[5]中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、L
5及びL
6はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、p及びqはp+qが0乃至40となる0又は正の整数を表す。
【0048】
L
5及びL
6が表す炭素原子数1乃至6のアルキレン基としては、上述の式[4]中のL
3及びL
4として例示したものと同様の基が挙げられる。中でも、エチレン基、メチルエチレン基が好ましい。
【0049】
式[5]で表される化合物において、p及びqは、p+qが0乃至30となる場合が好ましく、p+qが2乃至20となる場合がより好ましい。
【0050】
このようなビスフェノール化合物Eの具体例としては、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(エチレンオキシド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(エトキシ基2.3mol付加、2.6mol付加、3mol付加、4mol付加、6mol付加、10mol付加、17mol付加、30mol付加など)、プロポキシ化(プロピレンオキシド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基3mol付加など)、エトキシ/プロポキシ化(エチレンオキシド/プロピレンオキシド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(エトキシ基6mol付加、プロポキシ基12mol付加など)、エトキシ化(エチレンオキシド変性)ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート(エトキシ基4mol付加など)、エトキシ化(エチレンオキシド変性)ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、NKエステルA−B1206PE、同ABE−300、同A−BPE−10、同A−BPE−20、同A−BPE−30、同A−BPE−4、同A−BPP−3、同BPE−80N、同BPE−100、同BPE−200、同BPE−500、同BPE−900、同BPE−1300N[以上、新中村化学工業(株)製]、ブレンマー(登録商標)PDBE−200、同PDBE−250、同PDBE−450、同PDBE−1300[以上、日油(株)製]、KAYARAD(登録商標)R−712[日本化薬(株)製]等が挙げられる。中でも、エトキシ化(エチレンオキシド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(プロピレンオキシド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0051】
[多官能(メタ)アクリレート化合物F]
前記多官能(メタ)アクリレート化合物Fは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、2,2’−(オキシビスメチレン)ビス(2−メチルプロパン−1,3−ジオール)、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリトリトールからなる群から選ばれるポリオールの、(メタ)アクリレート又はアルコキシ化(メタ)アクリレートである。
【0052】
このような多官能(メタ)アクリレート化合物Fとしては、例えば、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,2’−(オキシビスメチレン)ビス(2−メチルプロパン−1,3−ジオール)トリ(メタ)アクリレート、2,2’−(オキシビスメチレン)ビス(2−メチルプロパン−1,3−ジオール)テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化2,2’−(オキシビスメチレン)ビス(2−メチルプロパン−1,3−ジオール)トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化2,2’−(オキシビスメチレン)ビス(2−メチルプロパン−1,3−ジオール)テトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0053】
本発明の重合性組成物に含まれる(b)(メタ)アクリレート化合物は、前述のフルオレン化合物D、ビスフェノール化合物E、及び多官能(メタ)アクリレート化合物Fからなる群から選ばれる少なくとも一種を単独で、また二種以上を混合して用いてもよい。
(b)(メタ)アクリレート化合物の配合量は、(a)反応性シリコーン化合物100質量部に対して1〜200質量部が好ましく、より好ましくは20〜100質量部である。
(b)(メタ)アクリレート化合物として上記化合物D乃至Fの二種以上を混合して用いる場合、前述のフルオレン化合物Dを必須の化合物として含むことが好ましく、フルオレン化合物Dと多官能(メタ)アクリレート化合物Fの二種を少なくとも含みて用いることが好ましい。
二種以上を混合して用いる場合、例えばフルオレン化合物Dと多官能(メタ)アクリレート化合物Fとを混合して用いる場合、これらは質量比で、フルオレン化合物D:多官能(メタ)アクリレート化合物F=20:1〜1:1とすることが好ましい。
またフルオレン化合物D、ビスフェノール化合物E、及び多官能(メタ)アクリレート化合物Fの三種を混合して用いる場合、質量比で、フルオレン化合物D:(ビスフェノール化合物E+多官能(メタ)アクリレート化合物F)=10:1〜1:1、ビスフェノール化合物E:多官能(メタ)アクリレート化合物F=10:1〜1:10にて用いることが好ましい。
【0054】
<(c)安定化剤>
本発明の重合性組成物には、前述の(a)反応性シリコーン化合物及び(b)(メタ)アクリレート化合物に加えて、(c)成分として、光安定剤G及び酸化防止剤Hからなる群から選ばれる少なくとも一種の安定化剤を含んでいてもよい。
【0055】
[光安定剤G]
本発明に用いられる(c)成分のうち、光安定剤Gは下記式[6]で表される基を有する化合物である。
【化22】
上記式中、R
11は水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数1乃至12のアルコキシ基を表し、黒点は結合手を表す。
【0056】
R
11が表す炭素原子数1乃至10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert−アミル基、sec−イソアミル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0057】
R
11が表す炭素原子数1乃至12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−アミルオキシ基、sec−イソアミルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、R
11としては、水素原子、メチル基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基が好ましい。
【0059】
このような光安定剤Gとしては、例えば、TINUVIN(登録商標)123、同144、同152、同292、同770[以上、BASFジャパン(株)製]、アデカスタブ(登録商標)LA−52、同LA−57、同LA−63P、同LA−68、同LA−72、同LA−77Y、同LA−77G、同LA−81、同LA−82、同LA−87[以上、(株)ADEKA製]等が挙げられる。
【0060】
[酸化防止剤H]
本発明に用いられる(c)成分のうち、酸化防止剤Hは下記式[7]で表される基を有する化合物である。
【化23】
上記式中、R
12は炭素原子数1乃至10のアルキル基を表し、R
13乃至R
15はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1乃至10のアルキル基を表し、黒点は結合手を表す。
【0061】
R
12及びR
13乃至R
15が表す炭素原子数1乃至10のアルキル基としては、上述の式[6]中のR
11として例示したものと同様の基が挙げられる。中でも、R
12としては、tert−ブチル基が好ましい。
このような式[7]で表される基としては、例えば、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
【0062】
このような酸化防止剤Hとしては、例えば、IRGANOX(登録商標)245、同1010、同1035、同1076、同1135[以上、BASFジャパン(株)製]、スミライザー(登録商標)GA−80、同GP、同MDP−S、同BBM−S、同WX−R[以上、住友化学(株)製]、アデカスタブ(登録商標)AO−20、同AO−30、同AO−40、同AO−50、同AO−60、同AO−80、同AO−330[以上、(株)ADEKA製]等が挙げられる。
【0063】
本発明の重合性組成物において(c)成分が配合される場合、前記(a)成分の100質量部に対して、(c)成分は0.01〜5質量部にて含むことが好ましく、より好ましくは0.05〜1質量部である。
なお本発明において、(c)成分は光安定剤Gを一種単独で又は二種以上を混合して用いてよく、或いは酸化防止剤Hを一種単独で又は二種以上を混合して用いてよく、或いは一種以上の光安定剤Hと一種以上の酸化防止剤Hとを混合して用いてもよい。(c)成分として複数種の化合物を用いる場合、上記配合量は用いた複数種の化合物の合計が上記の範囲となる。
【0064】
<(d)硫黄化合物>
本発明の重合性組成物には、前述の(a)反応性シリコーン化合物及び(b)(メタ)アクリレート化合物に加えて、(d)成分としてチオール化合物I、及びジスルフィド化合物Jからなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄化合物を含んでいてもよい。
【0065】
[チオール化合物I]
本発明に用いられる(d)成分のうち、チオール化合物Iとしては、例えば、メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸=4−メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸=2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、1,4−ビス(3−メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、トリス〔2−(3−メルカプトプロピルオキシ)エチル〕イソシアヌレート、トリス〔2−(3−メルカプトブチリルオキシ)エチル〕イソシアヌレート等のメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、tert−ブチルメルカプタン、n−ドデカンチオール、tert−ドデカンチオール等のメルカプトアルカン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール等のメルカプトアルコール類;チオフェノール、ベンジルチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオール、2−ピリジルチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等の含芳香環メルカプタン類;(γ―メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(γ―メルカプトプロピル)トリエトキシシラン等のシラン含有チオール類などが挙げられる。中でも、メルカプトアルカン類が好ましく、n−ドデカンチオールがより好ましい。
【0066】
[ジスルフィド化合物J]
本発明に用いられる(d)成分のうち、ジスルフィド化合物Jとしては、例えば、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジペンチルジスルフィド、ジイソペンチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ビス(2,2−ジエトキシエチル)ジスルフィド等のアルキルジスルフィド類;ジフェニルジスルフィド、ジトルイルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジベンゾイミダゾリルジスルフィド、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド等の含芳香環ジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類などが挙げられる。中でも、アルキルジスルフィド類が好ましく、ジデシルジスルフィドがより好ましい。
【0067】
本発明の重合性組成物において(d)成分が配合される場合、前記(a)成分の100質量部に対して、(d)成分は0.01〜5質量部にて含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜1質量部である。
なお本発明において、(d)成分はチオール化合物Iを一種単独で又は二種以上を混合して用いてよく、或いはジスルフィド化合物Jを一種単独で又は二種以上を混合して用いてよく、或いは一種以上のチオール化合物Iと一種以上のジスルフィド化合物Jとを混合して用いてもよい。(d)成分として複数種の化合物を用いる場合、上記配合量は用いた複数種の化合物の合計が上記の範囲となる。
【0068】
<(e)重合開始剤>
本発明の重合性組成物には、上記(a)成分及び(b)成分、又は上記(a)成分乃至(d)成分に加えて、(e)重合開始剤を含み得る。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤の何れも使用することができる。
【0069】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ類、有機過酸化物類等が挙げられる。
市販されているアゾ系熱重合開始剤としては、例えば、V−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70[以上、和光純薬工業(株)製]等を挙げることができる。
また市販されている有機過酸化物系熱重合開始剤としては、例えば、パーカドックス(登録商標)CH、同BC−FF、同14、同16、トリゴノックス(登録商標)22、同23、同121、カヤエステル(登録商標)P、同O、カヤブチル(登録商標)B[以上、化薬アクゾ(株)製]、パーヘキサ(登録商標)HC、パークミル(登録商標)H、パーオクタ(登録商標)O、パーヘキシル(登録商標)O、同Z、パーブチル(登録商標)O、同Z[以上、日油(株)製]等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート類、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノスルフィド類、チオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されているものが挙げられる。
市販されている光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE(登録商標)184、同369、同651、同500、同819、同907、同784、同2959、同CGI1700、同CGI1750、同CGI1850、同CG24−61、同TPO、Darocur(登録商標)1116、同1173[以上、BASFジャパン(株)製]、ESACURE KIP150、同KIP65LT、同KIP100F、同KT37、同KT55、同KTO46、同KIP75[以上、ランベルティ社製]等を挙げることができる。
【0071】
重合開始剤を添加する場合、重合開始剤は一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。また、その添加量としては、(a)反応性シリコーン化合物100質量部に対して0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.3〜10質量部である。
【0072】
<その他添加剤>
さらに、本発明の重合性組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、反応性希釈剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、密着性向上剤等のその他の成分を適宜添加してもよい。
【0073】
<重合性組成物の調製方法>
本実施の形態の重合性組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、(a)成分、(b)成分及び必要に応じて(c)成分乃至(e)成分を所定の割合で混合し、所望によりその他添加剤をさらに添加して混合し、均一な溶液とする方法、又はこれらの成分に加え更に慣用の溶剤を使用する方法等が挙げられる。
【0074】
溶剤を使用する場合、重合性組成物における固形分の割合は、各成分が溶剤に均一に溶解している限りは特に限定はないが、例えば1〜50質量%であり、又は、1〜30質量%であり、又は1〜25質量%である。ここで固形分とは、重合性組成物の全成分から溶剤成分を除いたものである。
【0075】
また、重合性組成物の溶液は、孔径が0.05〜5μmのフィルタなどを用いてろ過した後、使用することが好ましい。
【0076】
<<硬化物>>
本発明は、また上記重合性組成物を熱又は光重合して得られる硬化物に関する。
熱重合における加熱条件としては、特に限定されないが、通常、50〜300℃、1〜120分間の範囲から適宜選択される。また、加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、ホットプレート、オーブン等が挙げられる。
光重合に用いる活性光線としては、例えば、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV−LED等が使用できる。また、光重合後、必要に応じてポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブン等を用いて、通常、50〜300℃で1〜120分間加熱することにより重合を完結させることができる。
【0077】
本発明の硬化物は、波長589nmにおける屈折率が1.55以上と高いものであり、また、加熱による黄変及びクラックの発生が抑制され、寸法安定性を有するものであるから、硬化レリーフパターン材料、特に光学レンズ等の高屈折率樹脂レンズ用材料として有用である。
【0078】
<<成形体>>
本発明の樹脂組成物は、例えば、圧縮成形(インプリント等)、注型、射出成形、ブロー成形などの慣用の成形法を使用することによって、硬化物の形成と並行して各種成形体を容易に製造することができる。こうして得られる成形体(例えば光学レンズ)も本発明の対象である。
成形体を製造する方法としては、例えば、下面モールド又は支持体と、上面モールドとの間に前述の本発明の樹脂組成物を充填する工程、当該充填された組成物を加熱して熱重合する工程、熱重合物をモールドから離型する工程、を含む製造方法が好ましい。
上記加熱して熱重合する工程は、前述の<<硬化物>>に示す条件を適用して実施することができる。
このような方法によって製造された成形体は、カメラ用モジュールレンズとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0081】
(1)
1H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECX300
測定溶媒:CDCl
3
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
(2)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:(株)島津製作所製 GPCシステム
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF−804L、GPC KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
(3)撹拌脱泡機
装置:(株)シンキー製 自転・公転ミキサー あわとり練太郎(登録商標)ARE−310
(4)屈折率n
D、アッベ数ν
D
装置:(株)アタゴ製 多波長アッベ屈折計DR−M4
測定温度:20℃
中間液:モノブロモナフタレン
(5)リフロー炉
装置:(株)シンアペックス製 卓上型リフロー炉STR−3100
(6)光線透過率
装置:(株)島津製作所製 紫外可視分光光度計UV−3100
(7)熱膨張係数(CTE)、ガラス転移温度Tg
装置:ブルカー・エイエックスエス社製 熱機械分析装置(TMA) TMA4000SA
モード:引っ張り
試料長:20mm
荷重:10g
掃引温度:25〜250℃
昇温速度:10℃/分
(8)ナノインプリンター
装置:明昌機工(株)製 NM−0801HB
押し付け圧:250N
加熱:150℃、15分間
【0082】
また、略記号は以下の意味を表す。
BPEA:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(エトキシ基4mol付加)[新中村化学工業(株)製 NKエステルA−BPE−4]
DTMP4A:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート[新中村化学工業(株)製 NKエステルAD−TMP]
FDA:ビスアリールフルオレンジアクリレート[大阪ガスケミカル(株)製 オグソール(登録商標)EA−F5503]
TMP3A:トリメチロールプロパントリアクリレート[新中村化学工業(株)製 NKエステルA−TMPT]
GA80:3,9−ビス(2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン[住友化学(株)製 SUMILIZER(登録商標)GA−80]
T292:デカン二酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)[BASFジャパン(株)製 TINUVIN(登録商標)292]
DDT:n−ドデカンチオール[東京化成工業(株)製]
DS2:ジデシルジスルフィド[東京化成工業(株)製]
POO:2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル=ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート[日本油脂(株)製 パーオクタ(登録商標)O]
【0083】
[実施例1]反応性含フッ素シリコーン化合物(F−SC)の製造
凝縮器を備えた200mLのナス型フラスコに、ジフェニルシランジオール[東京化成工業(株)製]43.3g(0.200mol)、トリメトキシ(4−ビニルフェニル)シラン[信越化学工業(株)製]44.0g(0.196mol)、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン[信越化学工業(株)製]0.873g(0.004mol)、及びトルエン35gを仕込み、窒素バルーンを用いてフラスコ中の空気を窒素で置換した。この反応混合物を50℃に加熱後、水酸化バリウム一水和物[アルドリッチ社製]38mg(0.2mmol)を添加した。そのまま50℃で1時間撹拌した後、さらに85℃で5時間撹拌して脱アルコール縮合を行った。反応混合物を室温(およそ25℃)まで冷却し、孔径0.2μmのメンブレンフィルタを用いて不溶物を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて、この反応混合物からトルエン及び副生成物のメタノールを50℃で減圧留去することで、無色透明油状物の反応性含フッ素シリコーン化合物74.9gを得た。
得られた反応性含フッ素シリコーン化合物の
1H NMRスペクトルを
図1に示す。また、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,400、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.3であった。
【0084】
[製造例1]反応性シリコーン化合物(SC)の製造
凝縮器を備えた1Lのナス型フラスコに、ジフェニルシランジオール[東京化成工業(株)製]177g(0.80mol)、トリメトキシ(4−ビニルフェニル)シラン[信越化学工業(株)製]179g(0.80mol)、及びトルエン141gを仕込み、窒素バルーンを用いてフラスコ中の空気を窒素で置換した。この反応混合物を50℃に加熱後、水酸化バリウム一水和物[アルドリッチ社製]0.303g(1.6mmol)を添加し、さらに50℃で2日間撹拌して脱アルコール縮合を行った。反応混合物を室温(およそ25℃)まで冷却し、孔径0.2μmのメンブレンフィルタを用いて不溶物を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて、この反応混合物からトルエン及び副生成物のメタノールを50℃で減圧留去することで、無色透明油状物の反応性シリコーン化合物305gを得た。
得られた反応性シリコーン化合物の
1H NMRスペクトルを
図2に示す。また、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,500、分散度Mw/Mnは1.3であった。
【0085】
[実施例2]重合性組成物の調製
反応性シリコーン化合物として実施例1で製造したF−SC 60質量部、(メタ)アクリレート化合物としてFDA 30質量部、BPEA 5質量部及びTMP3A 5質量部、並びに重合開始剤としてPOO 3質量部を混合し、均一になるまでおよそ30分間2,000rpmで撹拌脱泡することで重合性組成物1を調製した。
【0086】
[実施例3乃至10、比較例1,2]
各組成を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様に操作し、重合性組成物2乃至11を調製した。
【0087】
[実施例11乃至20、比較例3,4]硬化物の作製及び評価
[光学特性評価]
各重合性組成物を、800μm厚のシリコーンゴム製スペーサーとともに、離型処理したガラス基板2枚で挟み込んだ。この挟み込んだ重合性組成物を、表2に記載の硬化条件でオーブンにて加熱し、室温(およそ25℃)まで冷却後、硬化物をガラス基板から剥離することで、直径30mm、厚さ800μmの試験片を作製した。
得られた試験片のD線(波長589nm)における屈折率n
D、及びアッベ数ν
Dを測定した。
また、得られた試験片について、リフロー炉を用いた加熱試験前後の波長400nmの光線透過率をそれぞれ測定し、加熱による透過率の低下を評価した。なお、加熱試験は、1)260℃まで3分間で昇温、2)260℃で20秒間保持、3)50℃まで放冷、の3ステップを3回繰り返した。
結果を表2に併せて示す。
【0088】
[物性評価]
各重合性組成物を、離型処理したガラス基板上に置いた中央部を30mm×4mmの矩形に切り抜いた200μm厚のシリコーン製型枠中に流し込み、別の離型処理したガラス基板を上方から被せた。この二枚のガラス基板で挟み込んだ型枠中の重合性組成物を、表2に記載の硬化条件でオーブンにて加熱し、室温(およそ25℃)まで冷却後、硬化物をガラス基板から剥離することで、長さ30mm、幅4mm、厚さ200μmの試験片を作製した。
得られた試験片のTMAにより、125〜150℃での熱膨張係数(CTE)、及びガラス転移温度Tgを評価した。なお、Tgについては、TMAの膨張量を時間で微分し、その微分曲線の極小値が0以下である場合はその極小となる温度をTgとし、該極小値が正の場合は、Tgを「なし」とした。結果を表2に併せて示す。
【0089】
[離型性評価]
各重合性組成物を、
図3に示すニッケルモールド[株式会社ティ・ディ・シー製 レンズサイズ:2mmφ×高さ0.5mm、鏡面仕上げ]を用い、厚さ0.7mmのガラス基板上にナノインプリンターを用いて、凸レンズに成形した。成形したレンズのモールドからの離型性を、以下の基準に従い目視で評価した。
【0090】
<離型性評価基準>
A:モールド内面に硬化物の残渣が全くない
B:モールド内面の3割未満の面積に硬化物の残渣が確認できる
C:モールド内面の3割以上の面積に硬化物の残渣が確認できる
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示すように、本発明の重合性組成物から得られた硬化物(実施例11〜20)は、何れも、測定温度範囲(25〜250℃)において明確なTgを持たず、かつ120〜140ppm/Kという低いCTEを示すことから、本発明の重合性組成物はその硬化物の加熱時(260℃のはんだリフロー工程等)において非常に有利な寸法安定性を有していることが確認された。さらに、本発明の重合性組成物から得られた硬化物は、何れも、モールド成形後の離型性が良好とする結果が得られた。また、(b)成分として特定の多官能(メタ)アクリレート化合物Fを添加した重合性組成物から得られた硬化物(実施例11〜18、20)は、未添加のもの(実施例19)に比べより低いアッベ数を示すという結果が得られた。
一方、反応性含フッ素シリコーン化合物を添加しない硬化物(比較例3)にあっては、106℃に明確なTgが観測され加熱時の寸法安定性に欠けること、及びモールドの離型性が不十分なことが確認された。また、フッ素基を有さない反応性シリコーン化合物を添加した硬化物(比較例4)にあっては、モールドの離型性が不十分なことが確認された。