(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
サンプルに含まれる成分量を分析する分析装置として、光源からの光を、サンプルと試薬とが混合した反応液に照射して得られる単一又は複数の波長の透過光量または散乱光量を測定して、光量と濃度の関係から成分量を算出する自動分析装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の自動分析装置においては、回転と停止を繰り返す反応ディスクに、光学的に透明な反応セルが円周状に並べられ、反応ディスク回転中に、予め配置された透過光測定部により、約10分間、一定の時間間隔で反応による光量の経時変化(反応過程データ)が測定される。反応終了後、反応容器は洗浄機構により洗浄されて、再び分析に使用される。
【0004】
反応液の反応には、基質と酵素との呈色反応を用いる比色分析と、抗原と抗体との結合による凝集反応を用いるホモジニアス免疫分析の、大きく2種類の分析分野が存在し、後者のホモジニアス免疫分析では、免疫比濁法やラテックス凝集法などの測定方法が知られている。
【0005】
免疫比濁法では、抗体を含有した試薬を用い、サンプルに含まれる測定対象物(抗原)との免疫複合体を生成させ、これらを光学的に検出し、成分量を定量する。ラテックス凝集法では、表面に抗体を感作(結合)させたラテックス粒子を含有した試薬を用い、試料中に含まれる抗原との抗原抗体反応によりラテックス粒子を凝集させ、これらを光学的に検出し、成分量を定量する。さらに、化学発光や電気化学発光による検出技術とB/F分離技術によって、より高感度な免疫分析を行うヘテロジニアス免疫分析装置も知られている。
【0006】
また、特許文献2に記載された血液の凝固能を測定する自動分析装置も存在する。血液は血管内部では流動性を保持して流れているが、一旦出血すると、血漿や血小板中に存在する凝固因子が連鎖的に活性化され、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに変換され析出することで止血に至る。
【0007】
このような、血液凝固能には血管外に漏れ出した血液が凝固する外因性のものと、血管内で血液が凝固する内因性のものが存在する。血液凝固能(血液凝固時間)に関する測定項目としては、外因系血液凝固反応検査のプロトロンビン時間(PT)、内因系血液凝固反応検査の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)と、フィブリノーゲン量(Fbg)等が存在する。
【0008】
これらの項目は、いずれも凝固を開始させる試薬を添加することにより析出するフィブリンを、光学的、物理的、電気的手法で検出することによっている。光学的手段を用いる方法としては、反応液に光を照射し、反応液中に析出してくるフィブリンを散乱光や透過光の経時的な強度変化をとらえることで、フィブリンが析出し始める時間を算出する方法が知られている。特許文献2に代表される血液凝固自動分析装置において、血液凝固反応(特にFbg項目)の凝固時間は数秒と短いため0.1秒間隔程度の短い間隔での測光が必要なことと、反応液が凝固してしまうと洗浄による反応容器の再利用は不可能なため、反応は独立した測光ポートで行われ、反応容器は使い捨てである。血液凝固・線溶検査分野には、血液凝固時間測定のほか、凝固因子測定、凝固・線溶マーカ測定も含まれる。凝固因子測定は主に血液凝固時間測定部にて測定されるが、凝固・線溶マーカは発色性合成基質を用いる合成基質法や、先述したラテックス凝集法による分析が行われる。血液凝固時間項目は従来からのPT、APTT、Fbgでほぼ固定されているのに対し、凝固・線溶マーカ項目は、Dダイマーやフィブリン/フィブリノゲン分解産物(FDP)に加え、可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC)やプラスミン−α2プラスミンインヒビター(PIC)など、播種性血管内凝固症候群(DIC)等の早期診断・治療の要求から今後も増加が見込まれ、自動分析装置の処理能力向上が必要となってきている。しかしながら、特許文献2においては、凝固・線溶マーカは、透過光測定可能な測光ポートにて測定されており、従来の血液凝固分析装置では、凝固時間も凝固・線溶マーカも固定の測光ポートで分析することが通常であった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態のベースとなるターンテーブル方式の自動分析装置の全体構成を示すシステムブロック図である。
【
図2】本発明の一実施の形態であるターンテーブル方式の生化学分析部と、血液凝固時間測定部とを備えた自動分析装置の概略図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における、1試薬系の血液凝固時間測定シーケンスの一例である。
【
図4a】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4b】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4c】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4d】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4e】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4f】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4g】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4h】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4i】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図4j】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態における、生化学分析項目と血液凝固時間項目の依頼に対する反応セルの使用の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施の形態における、生化学分析部、血液凝固時間測定部、ヘテロジニアス免疫分析部を備えた自動分析装置の概略図である。
【
図7】本発明の一実施の形態における、2試薬系の血液凝固時間測定シーケンスの一例である。
【
図8】本発明の一実施の形態において、試薬または混合液の保持時間に応じて、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構の吸引位置を変化させること示した図である。
【
図9a】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9b】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9c】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9d】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9e】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9f】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9g】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9h】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9i】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9j】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9k】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図9l】本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(2試薬系)の機構動作の概略を示した図である。
【
図10】本発明の一実施の形態における、凝固反応終了時間の予測方法を説明する図である。
【
図11】本発明の一実施の形態における、増幅器と増幅器制御部を明示した自動分析装置の概略図である。
【
図12】本発明の一実施の形態における、増幅器の零レベルのオフセット機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
【0025】
本明細書では、分析に第1試薬のみ使用する項目を1試薬系、第1試薬および第2試薬を使用する項目を2試薬系として記載した。
【0026】
図1は、本発明の一実施例のベースとなるターンテーブル方式の自動分析装置の全体構成を示すシステムブロック図である。
図1に示すように、自動分析装置1は、主に、反応ディスク10、サンプルディスク20、第1試薬ディスク30a、第2試薬ディスク30b、光源40、光度計41、およびコンピュータ50から構成されている。
【0027】
反応ディスク10は、間欠回転可能に設けられており、ディスク上に透光性材料からなる多数の反応セル11が周方向に沿って装着されている。反応セル11は、恒温槽12により所定温度(例えば37℃)に維持されている。恒温槽12内の流体は、恒温維持装置13により温度調整されている。
【0028】
サンプルディスク20上には、血液、尿等の生体サンプルを収容する多数の検体容器21が、図示の例では二重に、周方向に沿って載置されている。また、サンプルディスク20の近傍には、サンプル分注機構22が配置されている。このサンプル分注機構22は、可動アーム23と、これに取り付けられたピペットノズル24とから主に構成されている。この構成により、サンプル分注機構22は、サンプル分注時にはピペットノズル24が可動アーム23により分注位置に適宜移動して、サンプルディスク20の吸入位置に位置する検体容器21から所定量のサンプルを吸入し、そのサンプルを反応ディスク10上の吐出位置にある反応セル11内に吐出する。
【0029】
第1試薬ディスク30a、第2試薬ディスク30bは、第1試薬保冷庫31a、第2試薬保冷庫31b内部にそれぞれ配置されている。この第1試薬保冷庫31a、第2試薬保冷庫31bには、バーコードのように試薬識別情報を表示したラベルが貼られた複数の第1試薬ボトル32a、第2試薬ボトル32bが、第1試薬ディスク30a、第2試薬ディスク30bの周方向に沿ってそれぞれ載置されている。これらの第1試薬ボトル32a、第2試薬ボトル32bには、自動分析装置1により分析され得る分析項目に対応する試薬液が収容されている。また、第1試薬保冷庫31a、第2試薬保冷庫31bは、第1バーコード読み取り装置33a、第2バーコード読み取り装置33bが付属されており、これらの装置が試薬登録時に第1試薬ボトル32a、第2試薬ボトル32bの外壁に表示されているバーコードを読み取る。読み取られた試薬情報は、第1試薬ディスク30a、第2試薬ディスク30b上のポジションとともにメモリ56に登録される。
【0030】
また、第1試薬ディスク30a、第2試薬ディスク30bの近傍には、サンプル分注機構22と概ね同様の機構をなす第1試薬分注機構34a、第3試薬分注機構34bがそれぞれ配置されている。試薬分注時には、これらが備えるピペットノズルにより、反応ディスク10上の試薬受け入れ位置に位置付けられる検査項目に応じた第1試薬ボトル32a、第2試薬ボトル32bから試薬を吸入し、該当する反応セル11内へ吐出する。
【0031】
反応ディスク10、第1試薬ディスク30a、第2試薬ディスク30bおよび第1試薬分注機構34a、第3試薬分注機構34bに囲まれる位置には、第1攪拌機構35a、第2攪拌機構35bが配置されている。反応セル11内に収容されたサンプルと試薬との混合液は、この第1攪拌機構35a、第2攪拌機構35bにより攪拌されて反応が促進される。
【0032】
ここで、光源40は反応ディスク10の中心部付近に、光度計41は反応ディスク10の外周側に配置されており、攪拌を終えた反応セル11の列は光源40と光度計41とによって挟まれた測光位置を通るように回転移動する。なお、光源40と光度計41は光検出系を構成する。光度計41は、透過光または散乱光を検出する光度計である。
【0033】
各反応セル11内におけるサンプルと試薬との反応液は、反応ディスク10の回転動作中に光度計41の前を横切る度に測光される。サンプル毎に測定された散乱光のアナログ信号は、A/D(アナログ/デジタル)変換器54に入力される。使用済みの反応セル11は、反応ディスク10の近傍に配置された反応セル洗浄機構36により、内部が洗浄されて繰り返しの使用を可能にする。
【0034】
次に、
図1の自動分析装置1における制御系及び信号処理系について簡単に説明する。
コンピュータ50は、インターフェース51を介して、サンプル分注制御部52、試薬分注制御部53、A/D変換器54に接続されている。コンピュータ50は、サンプル分注制御部52に対して指令を送り、サンプルの分注動作を制御する。また、コンピュータ50は、試薬分注制御部53に対して指令を送り、試薬の分注動作を制御する。A/D変換器54によってデジタル信号に変換された測光値は、コンピュータ50に取り込まれる。
【0035】
インターフェース51には、印字するためのプリンタ55、記憶装置であるメモリ56や外部出力メディア57、操作指令等を入力するためのキーボード58、画面表示するためのCRTディスプレイ(表示装置)59が接続されている。表示装置59としては、CRTディスプレイの他に液晶ディスプレイなどを採用できる。メモリ56は、例えばハードディスクメモリまたは外部メモリにより構成される。メモリ56には、各操作者のパスワード、各画面の表示レベル、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、分析結果等の情報が記憶される。
【0036】
次に、
図1の自動分析装置1におけるサンプルの分析動作を説明する。自動分析装置1によって分析可能な項目に関する分析パラメータは、予めキーボード58等の情報入力装置を介して入力されておリ、メモリ56に記憶されている。操作者は、操作機能画面を用いて各サンプルに依頼されている検査項目を選択する。
【0037】
この際に、患者IDなどの情報もキーボード58から入力される。各サンプルに対して指示された検査項目を分析するために、サンプル分注機構22のピペットノズル24は、分析パラメータにしたがって、検体容器21から反応セル11へ所定量のサンプルを分注する。
【0038】
サンプルが分注された反応セル11は、反応ディスク10の回転によって移送され、試薬受け入れ位置に停止する。第1試薬分注機構34a、第3試薬分注機構34bのピペットノズルは、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応セル11に所定量の試薬液を分注する。サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0039】
その後、第1攪拌機構35a、第2攪拌機構35bにより、サンプルと試薬との攪拌が行われ、混合される。この反応セル11が、測光位置を横切る時、光度計41により反応液の透過光または散乱光が測光される。測光された透過光または散乱光は、A/D変換器54により光量に比例した数値に変換され、インターフェース51を経由して、コンピュータ50に取り込まれる。
【0040】
この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ55やCRTディスプレイ59の画面に出力される。
以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析測定に必要な種々のパラメータの設定や試料の登録を、CRTディスプレイ59の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果をCRTディスプレイ59上の操作画面により確認する。
【0041】
図2は、本発明の一実施の形態であるターンテーブル方式の生化学分析部と、血液凝固時間測定部とを備えた自動分析装置の概略図である。サンプル分注機構22を生化学分析部と血液凝固時間測定部で共用する構成となっており、
図1のターンテーブル方式の生化学自動分析装置に対して、測定に使用されるディスポーザブル反応容器62が複数個ストックされている反応容器供給部63と、凝固時間検出部61を複数個備えた反応容器温調ブロック60と、ディスポーザブル反応容器62を移送する反応容器移送機構65と、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66と、凝固時間サンプル分注ポジション64と、反応容器廃棄部67が追加されている。
【0042】
図3に、本発明の一実施の形態における、1試薬系の血液凝固時間測定シーケンスの一例を示す。ディスポーザブル反応容器62に吐出されたサンプルの昇温は血液凝固分析部の反応容器温調ブロック60に備わる凝固時間検出部61にて行い(b〜d)、試薬のプリヒート(37℃)は生化学分析部の反応ディスク10上の反応セル11にて行う(i〜j)。37℃にプリヒートされた試薬は、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66にてさらに昇温(例えば40℃)され、既に37℃に昇温されたサンプルが入ったディスポーザブル反応容器62に吐出され、血液凝固反応が開始する(e)。反応終了後(f)、凝固時間が算出され(g)、ディスポーザブル反応容器62は反応容器廃棄部67に廃棄される(h)。また、プリヒートされた試薬吸引後の反応セル11には、第1試薬分注機構34aまたは第3試薬分注機構34bにより洗浄水または洗剤が吐出され(k)、その後、反応セル洗浄機構36にて洗浄される(l)。
【0043】
図4a〜
図4jを用いて、本発明の一実施の形態における、血液凝固時間測定(1試薬系)の機構動作の概略を説明する。
図4aでは、反応容器移送機構65により、反応容器供給部63からディスポーザブル反応容器62が凝固時間サンプル分注ポジション64に移送済みで、この状態から血液凝固時間測定は開始される。サンプル分注機構22に分取されたサンプルは、生化学分析部のサンプル分注ポジションを通過して、凝固時間サンプル分注ポジション64のディスポーザブル反応容器62に分注される(
図4a、
図4b)。このとき、反応ディスク10には、分析に使用されない空の反応セル11が発生する(
図4b)。反応容器移送機構65によりサンプルが分注されたディスポーザブル反応容器62は、反応容器温調ブロック60に備わる凝固時間検出部61へと移送され、サンプルは37℃まで昇温される(
図4c、
図4d)。一方、空の反応セル11には、第1試薬分注機構34aにより血液凝固時間測定用の試薬が分注され、複数サイクルかけて37℃にプリヒートされる(
図4c、
図4d)。プリヒートのためのサイクル数は、反応容器温調ブロック60でのサンプルの昇温に必要な時間にあわせて予め設定されている。プリヒートが完了した試薬は、血液凝固試薬吸引ポジションに位置付けられ、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66により吸引される(
図4e、
図4f)。血液凝固時間測定用の試薬は、吐出直後に37℃となるように予め設定された必要温度(例えば40℃)まで試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66により昇温された後、サンプルが入ったディスポーザブル反応容器62へ吐出される(
図4g)。このとき、試薬吐出勢いによりサンプルと試薬の攪拌も実施され、血液凝固時間測定が開始する(
図4h)。血液凝固時間測定が完了したディスポーザブル反応容器62は、反応容器移送機構65により、反応容器廃棄部67に廃棄される(
図4i、
図4j)。
【0044】
このように、血液凝固時間測定部にサンプルを分注するタイミングで、反応セルにサンプルを分注することなく、反応ディスクを回転させることで空きの反応セルを生じさせ、当該空きの反応セルに第1試薬分注機構34aを用いて血液凝固時間測定用の試薬を吐出し、前記血液凝固時間測定用の試薬をプリヒートする制御を行うことで、血液凝固時間測定で必然的に生じる空きの反応セルを、血液凝固時間測定用の試薬をプリヒートさせるために用いることができ、効率的に反応セルを用いることができる。従い、処理能力の高い自動分析装置を提供することができる。また、試薬は試薬ディスクに搭載され、試薬ディスクから血液凝固時間測定部までの試薬の移送は反応ディスクを経由していることが分かる。従い、血液凝固時間測定試薬用の試薬保冷庫を新たに設置すること無く、長距離移動の試薬分注機構を組み込むこと無く装置を構成することが可能となり、装置価格の上昇を抑制できる。
【0045】
一方、プリヒートされた血液凝固時間測定用試薬が吸引された後の反応セル11には、数サイクル後に第1試薬分注機構34aまたは第3試薬分注機構34bにより洗浄水または洗剤が分注され、さらに数サイクル後に反応セル洗浄機構36により洗浄される(
図4g)。
血液凝固時間測定用の試薬を分注する第1試薬分注機構34aは、生化学分析部において、第1試薬を分注する試薬分注機構であることが望ましい。第1試薬はサンプルを分注するタイミングに近いサイクルで反応容器に吐出され、第1試薬分注機構34aは、これを実現する位置に配置されている。このため、血液凝固時間測定用の試薬の分注のために、ターンテーブル方式の従来の駆動方法を変更する必要がない。また、試薬分注機構を生化学分析部と共用することができ、より小型化が実現できる。
また、血液凝固時間測定用試薬が吸引された後の反応セル11に洗浄水または洗剤を分注する第3試薬分注機構34bは、第1試薬分注機構34aと同じであっても構わない。
しかし、生化学分析部において、第2試薬を分注する試薬分注機構であることが望ましい。第2試薬は、第1試薬を反応セルに吐出した後に、反応セルに吐出され、第3試薬分注機構34bは、これを実現する位置に配置されている。このため、血液凝固時間測定用の試薬を格納した反応セルの洗浄のために、ターンテーブル方式の従来の駆動方法を変更する必要がない。また、試薬分注機構を生化学分析部と共用することができ、より小型化が実現できる。
【0046】
なお、反応ディスクは所定の回転角分回転して、停止することを繰り返している。従い、特定の反応セルに着目した場合、第1試薬分注機構34aの分注位置、第2試薬分注機構66の分注位置、第3試薬分注機構の分注位置の順番に特定の反応セルが立ち寄るよう、第2試薬分注機構66の分注位置を考慮して第2試薬分注機構66が配置されていることが望ましい。反応セル洗浄機構36における洗浄が、血液凝固時間測定用の試薬の分注と第1試薬の分注とを基準にして、同じサイクル数で、実現でき、高処理能力化が図れるためである。
【0047】
図5は、本発明の一実施例の、生化学項目と血液凝固時間項目の分析依頼に対する反応ディスク10上の反応セル11使用パターンの一例である。生化学分析部の分析動作サイクルにおける1サイクル時間に対し、血液凝固時間測定部の分析動作サイクルにおける1サイクル時間は2倍として記載した。血液凝固時間測定部では、
図4で説明したように、ディスポーザブル反応容器の搬送などを1サイクル時間内に行う必要がある。従い、血液凝固時間測定部の分析動作の1サイクル時間は、生化学分析部の分析動作の1サイクル時間よりも長い方が好ましい場合がある。但し、単に長くすればよいのではなく、血液凝固時間測定部の分析動作タイミングが、常に生化学分析の分析動作タイミングの開始になるように調整できるよう、自然数倍が望ましい。
【0048】
1試薬系の凝固時間項目の場合、
図5上段のように、測定依頼が発生したとする。凝固1と凝固2とが連続して測定依頼が発生している。しかし、上記のように血液凝固時間測定部の分析動作の1サイクル時間は2倍であるため、測定依頼の順番に反応セルを使用した場合、1サイクル時間が2倍である血液凝固時間測定部で処理することができない。例えば、4秒と8秒とで考えると、4秒で反応ディスクは回転停止を繰り返すものの、測定に使用されるディスポーザブル反応容器62が複数個ストックされている反応容器供給部63、ディスポーザブル反応容器62を移送する反応容器移送機構65、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66は8秒周期で駆動するよう制御されているためである。従い、この例の場合には、凝固1と凝固2との間に、生化1が入り、凝固1の血液凝固時間測定が8秒周期で行えるよう、反応セル使用順を入れ替えるように制御する。このように、凝固時間項目が連続で依頼されたとしても、試薬のプリヒートに使用される反応セル11は、1個置きとなる。仮に、n倍である場合、かつ凝固が連続する場合は、n−1個分の生化分析が入るように反応セル使用順を入れ替えるように制御する。
【0049】
また、2試薬系の凝固時間項目の場合、
図5下段のように、測定依頼が発生したとする。2試薬系の凝固1が測定依頼に含まれている。凝固1aと凝固1bの2つの試薬を独立してプリヒートして、ディスポーザブル反応容器に移送する必要があるものの、1サイクル時間が2倍であるため、凝固1aと凝固1bとを連続して反応セルを使用した場合、血液凝固時間測定部で処理することができない。従い、1つのサンプルに対して、これらの2つの試薬のために、空の反応セルを1つ余分に設ける他、空の反応容器を連続して設けるのではなく、凝固1の直後の生化1を繰り上げ、凝固1aと凝固1bとが1個置きとなるように、空の反応セルを1つ余分に設け、かつ、反応セル使用順を入れ替えるよう制御する。具体的には、生化2が分注可能なタイミングであるものの、凝固1b用の反応セルには生化2用のサンプルを分注せずに、1サイクル分待機させる。このようにすることで、1試薬系と2試薬系の試薬が混在したとしても、効率的な処理が可能となる。n倍の場合には、凝固1aと1bとの間に、n−1個分の生化分析が入るように反応セル使用順を入れ替えるように制御する。
【0050】
なお、上段、下段の事象が組み合わさった場合でも、1サイクル時間がn倍の場合には、凝固の試薬が入る反応セルがn−1個分の生化分析が入るように反応セル使用順を入れ替えるように制御する。但し、生化分析の測定依頼自体がない場合には、n−1サイクル分待機させれば良いことは言うまでもない。
図5で説明した制御は、例えば
図1のコンピュータ50に含まれる制御部によって行われる。
【0051】
図6は、本発明の一実施例である生化学分析部、血液凝固時間測定部、ヘテロジニアス免疫分析部を備えた自動分析装置の概略図である。反応容器移送機構65の稼動範囲内に、ヘテロジニアス免疫項目測定用のヘテロジニアス免疫検出部68、B/F分離機構69が配置され、ディスポーザブル反応容器62、反応容器温調ブロック60、反応容器移送機構65、反応容器供給部63、反応容器廃棄部67は、血液凝固時間測定部と共用する構成となっている。従い、最小限の機構追加でさらに多機能、高機能な自動分析装置を構成することが可能となる。なお、
図6では、ヘテロジニアス免疫用試薬ディスク70が、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66の稼動範囲内に追加されている。本実施例のような構成とすることにより、装置の大型化、装置価格の上昇、ライフサイクルコストの上昇を抑制しつつ、生化学分析部、血液凝固分析部、ヘテロジニアス免疫分析部を集約したTATが短く処理能力の高い自動分析装置を提供できる。
【0052】
図5では、1試薬系と2試薬系の分析項目共に、サンプルをディスポ−ザブル反応容器にサンプル分注機構を用いて分注し、第1試薬又は、第1試薬と第2試薬を反応セルでプリヒートする形態について説明した。以下、別の形態として、1試薬系の分析項目のサンプルをディスポ−ザブル反応容器にサンプル分注機構を用いて分注し、2試薬系の分析項目のサンプルを反応セルに同分注機構を用いて分注する例について説明する。1試薬系の分析項目例としては、プロトロンビン時間(PT)、2試薬系の分析項目例としては、活性化部分トロンボプラスチン時間(ATPP)が挙げられる。また、フィブリノーゲン量(Fbg)は、第1試薬は希釈液であるが、このように第1試薬が希釈液であっても2試薬系として扱う。1試薬系については、
図3、
図4a〜
図4i、
図5の上段で示しているため、
図7以降では、2試薬系の測定シーケンスについて説明する。
図7に、本発明の一実施の形態における、2試薬系の血液凝固時間測定シーケンスの一例を示す。この例では、サンプル分注機構は、血液凝固時間測定部で測定される分析項目に応じて、反応セル又はディスポ−ザブル反応容器にサンプルを分注し、分析項目が1試薬系の項目の場合にディスポ−ザブル反応容器に分注し、2試薬系の項目の場合に反応セルに分注するよう、サンプル分注制御部52により制御される。
【0053】
サンプルは反応セル11に分注され、当該反応セル11に第1試薬分注機構34aにより第1試薬または希釈液が吐出され、サンプルと第1試薬または希釈液の混合液のプリヒートが開始される(h〜i)。さらに、既定のサイクルを空けて別の反応セル11に第1試薬分注機構34aにより第2試薬が吐出され、プリヒートが開始される(j)。
【0054】
ディスポーザブル反応容器62が血液凝固分析部の反応容器温調ブロック60に備わる凝固時間検出部61に移送され(b)、生化学分析部の反応ディスク10上の反応セル11にて37℃にプリヒートされた前記混合液と前記第2試薬が、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66にてそれぞれ吸引され(k〜l)、さらに昇温(例えば40℃)された後、前記ディスポーザブル反応容器62に吐出され(c〜d)、血液凝固反応が開始する。
反応終了後(e)、凝固時間が算出され(f)、ディスポーザブル反応容器62は反応容器廃棄部67に廃棄される(g)。
従い、
図7における2試薬系の測定シーケンスにおいては、サンプル分注機構22はサンプルを反応セルに、第1試薬分注機構34aは第1試薬または希釈液を当該反応セルに分注し、当該反応セルでこれらの混合液を既定時間保持した後、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66は当該混合液をディスポーザブル反応容器に分注する。また、ディスポーザブル反応容器に分注された混合液に吐出する血液凝固反応開始のための試薬(第2試薬)を収容する第2の反応セルを、混合液を収容する反応セルとは別に設け、サンプル分注制御部52は、当該第2の反応セルにサンプルを分注することなく、反応ディスクを回転させることで、当該第2の反応セルを空きの反応セルとなるよう、サンプル分注機構を制御し、血液凝固開始のための試薬(第2試薬)は、当該空きの反応セルである第2の反応セルに吐出される。これにより、第2試薬のみならず、混合液に対してもプリヒートを行うことができる。
【0055】
また、プリヒートされた混合液または第2試薬が吸引された後の反応セル11には、第1試薬分注機構34aまたは第3試薬分注機構34bにより洗浄水または洗剤が吐出され(m〜n)、その後、反応セル洗浄機構36にて洗浄される(o)。
このとき、第2試薬の分注タイミングは、分析項目ごとに動作サイクルの分解能で任意に設定できる。これにより、APTTなどの項目に代表されるような第1試薬による活性化や前処理のための時間が必要な項目において、ターンテーブル方式の従来の駆動方法を変更することなく、保持時間を効率よく確保することができる。つまり、分析項目に応じて、第2試薬を収容する空きセルを設けるタイミングを変えることで、混合液の混合が行われてから血液凝固開始のための試薬(第2試薬)が混合液に吐出されるまでの時間を、分析項目に応じて変えることが望ましい。装置の制御を複雑化させないためには、第1試薬分注機構による第2試薬吐出から第2試薬分注機構による第2試薬吐出するまでの時間を決めることが望ましく、このような場合に、サンプルの反応セルへの吐出から第2試薬用の空きセルを設けるタイミングを項目によらず一律に決めることもできる。しかし、一方では、項目に応じて、サンプルと第1試薬とを混合してから第2試薬を添加するのに理想的な時間が決まっている場合がある。このため、サンプル分注してから第2試薬が収容させる空きセルを設けるタイミングを項目に応じて変えることで、項目に応じて第2試薬の添加時間を調整することが望ましい。
また、
図8に第2試薬分注機構の変形例を示す。これまでの第2試薬分注機構では反応ディスク上の1箇所から液体を吸引する構成を説明したが、
図8では、反応ディスク上の異なる位置にある反応セルから液体を分注可能な例を示す。
図8に示すように、試薬温調機能付き第2試薬分注機構66を反応ディスク10の複数のポジション(1)〜(3)に位置づけられるようにすることで、吸引位置により第1試薬による活性化や前処理のための時間を確保する方法も考えられる。さらに、プリヒートする液体の量の増加に伴いプリヒートに必要な時間が長くなるため、混合液や試薬の量に応じて保持時間を制御するために前述の方法を用いることも考えられる。このため、第2試薬分注機構を異なる位置にある反応セルから分注可能とし、液体の種類または分注量に応じて分注位置を変化させることが望ましい。なお、図では、3箇所を例示したが、2箇所や4箇所以上であってもよい。
【0056】
図9a〜
図9lを用いて、本発明の一実施の形態における、2試薬系の血液凝固時間測定の機構動作の概略を説明する。
図9aは、全凝固時間検出部61が測定中となっているが、その中の1つの凝固時間検出部61での測定終了時間が決定した状態を示している。
次の分析項目が2試薬系の項目であった場合、この時点でサンプル分注機構22はサンプルの吸引を行い、吸引したサンプルを反応セル11に分注する(
図9b)。このように、測定終了時間が決定した時点で2試薬系のサンプル分注を開始することで、待ち時間を短縮し効率のよい分析が可能となり、処理能力の高い自動分析装置提供することができる。
サンプルの反応セルへの分注からサンプルのディスポーザブル反応容器への分注には一定時間かかるため、全凝固時間検出部61がすべて埋まっていたとしても、予め反応セルへのサンプル分注を行うことができる。また、最大測定時間に基づき、2試薬系のサンプル分注を開始することも、待ち時間を短縮する方法として有効である。例えば、最大測定時間を300秒と設定しておき、測定時間が300秒を経過したディスポーザブル反応容器は測定終了時間の決定の有無に関わらず廃棄するよう設定しておき、反応セルへのサンプルの吐出からディスポーザブル反応容器への混合液の吐出まで(
図7の(h)〜(k)および(c))の時間を60秒とすると、300秒から60秒を差し引いた、240秒を基準としてサンプル分注を行うことも、待ち時間を短縮する方法としては有効である。
【0057】
前者の測定終了時間決定方法としては、反応過程の微分結果のピークを基に反応終了時間を予測し決定する方法が考えられる。
図10にこの方法について説明する。
図10は、横軸時間、縦軸光強度であり、凝固時間検出部から得られる測定結果の反応過程データ曲線(実線)と、この反応曲線の微分結果(破線)を示している。また、上図は1次微分結果を示し、下図は2次微分結果を示している。いずれの微分結果のピークからでも大凡の反応終了時間が予測できるため、この微分結果のピーク時間に基づき、反応終了時間を予測し、反応終了時間をこの時間が経過する前に決定することができる。このため、この微分結果のピーク時間をサンプル分注開始の基準とすることができる。
【0058】
このように、血液凝固時間測定部は、ディスポーザブル反応容器を載置する複数の凝固時間検出部61を備え、すべての凝固時間検出部61がディスポーザブル反応容器で埋まっている場合、予め定められた反応終了判定基準により測定終了時間が決定された時点、又は、予め決められた最大測定時間のいずれかに基づき、反応セルにサンプルを分注する項目をスケジューリングし、凝固時間検出部61が埋まった状態で、スケジューリングされた項目に対応するサンプルを反応セルに分注することが望ましい。また、この反応終了判定基準は、凝固時間検出部から得られる測定結果の反応過程データ曲線の微分結果のピーク時間に基づき、決めることができる。
【0059】
図9の動作概略に戻ると、サンプルが分注された、当該反応セル11に、第1試薬分注機構34aにより第1試薬または希釈液が吐出される(
図9c)。サンプルと第1試薬または希釈液は、試薬の吐出勢いにより攪拌してもよいし、図示していない第1攪拌機構35aにより攪拌してもよい。第1攪拌機構35aによる攪拌を実施することで、反応の促進と安定が期待できる。サンプルと第1試薬または希釈液の混合液は、反応ディスク10上で、37℃にプリヒートされる。このとき、光度計41により、透過光または散乱光を測定し、サンプル中の干渉物質の量に関する参考値を算出することができる。つまり、混合液を反応セルに保持している間に、サンプル中に含まれる干渉物質の量に関する参考値を算出することができる。
【0060】
例えば、サンプルと第1試薬または希釈液の混合液の吸光度を光度計41によって測定する場合、混濁、溶血、黄色の程度を、480nm、505nm、570nm、600nm、660nm、700nmの吸光度を用いて、下記の式によって算出する。
【0061】
混濁(L)=(1/C)×(660nmと700nmの吸光度差)
溶血(H)=(1/A)×(570nmと600nmの吸光度差
−B×660nmと700nmの吸光度差)
黄色(I)=(1/D)×(480nmと505nmの吸光度差
−E×570nmと600nmの吸光度差
−F×660nmと700nmの吸光度差)
C、A、D:吸光度を血清情報として出力するための係数
B、E、F:吸収スペクトルの重なりを補正するための係数
さらに、干渉物質の量に関する参考値をもとに、ディスポーザブル反応容器での測定結果を補正することもできる。例えば、この参考値と、凝固時間測定における光量との相関関係を求め、凝固時間測定結果を補正することができる。
また、この参考値を用いた増幅器のオフセット制御を行うこともできる。
図11にこの増幅器と増幅器制御部を示す。凝固時間検出部61は、ディスポーザブル反応容器を介する透過光または散乱光を検出する検出器と、この検出器からの信号を増幅する増幅器71と、この増幅器を制御する増幅器制御部72を有している。増幅器制御部72は干渉物質の量に関する参考値を取得し、この参考値に基づき、増幅器制御部72は、検出器で光を検出する前に、増幅器の零レベルをオフセットすることができる。また、
図12に、光度計41の測定結果(上段)と凝固時間検出部61の測定結果(下段)を示す。例えば、光度計41による透過光または散乱光の測定結果(干渉物質の量に関する参考値)と予め設定された基準レベルとの差分に基づき、凝固時間検出部61の信号を増幅する増幅器71の零レベルをオフセットするように制御する増幅器制御部72を備えることで、測定不能となるレンジオーバーを抑制した、適切な増幅率での測定が可能となる(
図11、12)。これにより、測定不能となる頻度が低減し、サンプルや試薬の無駄の少ない分析が可能となる。
【0062】
また、これらの補正や前記の零レベルのオフセットは、同一サンプルを用いたその他の分析項目にも適用可能である。同一サンプルであれば1回の参考値の測定で、他の分析項目に対してもフィードバック可能であるためである。特に、1試薬系の分析項目では、反応ディスク側の光度計41を経由しないため、この光度計41で直接干渉物質の量を測定することはできない。このため、同一サンプルを用いた他の分析項目のサンプルのうち1試薬系の分析項目に対するサンプルの測定データに補正をかけたり、測定前に前記の零レベルのオフセットをすることが望ましい。
【0063】
図9の動作概略に戻ると、測定が終了したディスポーザブル反応容器62は、反応容器移送機構65により、反応容器廃棄部67に廃棄される(
図9d、
図9e)。また、前記混合液が入った反応セル11とは別の反応セル11に、既定のタイミングで第2試薬が第1試薬分注機構34aにより吐出され、反応ディスク10上で、37℃にプリヒートされる(
図9d)。反応容器移送機構65により、反応容器供給部63上のディスポーザブル反応容器62が把持され(
図9f)、凝固時間検出部61に移送される(
図9g)。プリヒートが完了した混合液は、血液凝固試薬吸引ポジションに位置付けられ、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66により吸引される(
図9g、
図9h)。混合液は、吐出直後に37℃となるように予め設定された必要温度(例えば40℃)まで試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66により昇温された後、ディスポーザブル反応容器62へ吐出される(
図9i)。その後、プリヒートが完了した第2試薬が、血液凝固試薬吸引ポジションに位置付けられ、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66により吸引される(
図9j、
図9k)。第2試薬も混合液と同様に、吐出直後に37℃となるように予め設定された必要温度(例えば40℃)まで試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66により昇温された後、ディスポーザブル反応容器62へ吐出される(
図9l)。このとき、試薬吐出勢いにより混合液と第2試薬の攪拌も実施され、血液凝固時間測定が開始する。血液凝固時間測定が完了したディスポーザブル反応容器62は、反応容器移送機構65により、反応容器廃棄部67に廃棄される。
【0064】
凝固時間項目において、例えばFbg項目のトロンビン試薬のように、キャリーオーバーにより後続の凝固時間測定に影響を及ぼす場合が知られている。試薬のキャリーオーバー対策のために試薬分注機構を複数設置することも考えられるが、それでは機構が複雑になり装置コストも上昇してしまう。そこで、第1試薬分注機構34aが試薬を反応セル11に吐出した次のサイクルで、洗剤を吸引し反応セル11に吐出し、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66がプリヒート完了した試薬を吸引吐出した次のサイクルで、反応セル内の洗剤を吸引吐出することで、第1試薬分注機構34aと試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66を効率よく洗浄することができる。また、第1試薬分注機構34aを洗浄した洗剤を試薬昇温機能付き第2試薬分注機構66の洗浄に使用するので、洗剤の消費量も抑制することができる。つまり、項目によっては、第1の試薬分注機構は、試薬を吐出した後に、洗剤を吸引し、吸引した洗剤を反応セルに吐出し、第2の試薬分注機構は、当該洗剤が吐出された反応セルから当該洗剤を吸引し、当該吸引した洗剤を洗浄槽(図示せず)に吐出することが洗剤消費量抑制の観点から望ましい。