特許第6746312号(P6746312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6746312ポリエン系偏光フィルムの製造方法、ポリエン系偏光フィルム製造用コーティング液及びポリエン系偏光フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746312
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】ポリエン系偏光フィルムの製造方法、ポリエン系偏光フィルム製造用コーティング液及びポリエン系偏光フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20200817BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20200817BHJP
   C08J 7/12 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B29C55/06
   C08J7/12 ACEX
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-257245(P2015-257245)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120335(P2017-120335A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】小堀 重人
(72)【発明者】
【氏名】高木 孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
【審査官】 後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−132796(JP,A)
【文献】 特開平09−178944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸触媒、酸触媒を中和するための塩基成分及びポリビニルアルコールを含むコーティング液を作製する第1の工程と、
前記コーティング液を基材フィルム上に塗工することで、前記基材フィルム上に塗工層を形成する第2の工程と、
前記基材フィルム及び前記塗工層をドライ延伸する第3の工程と、
前記塗工層中の前記ポリビニルアルコールに脱水反応を起こさせる第4の工程と、を含むことを特徴とする、ポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、
前記酸触媒及びポリビニルアルコールを含む酸触媒含有水溶液を作製する工程と、
前記酸触媒含有水溶液に塩基成分を溶解する工程と、を含むことを特徴とする、請求項1記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記塩基成分の沸点は180℃以下であることを特徴とする、請求項2記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記塩基成分は、エタノールアミン、エチレンジアミン、及びアンモニアからなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項3記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程では、前記塗工層を130℃以上の温度で加熱することを特徴とする、請求項3または4に記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記コーティング液のpHは3.0〜9.0であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記基材フィルムはアクリル樹脂フィルムであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記アクリル樹脂フィルムのガラス転移点は80〜150℃であることを特徴とする、請求項7記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
【請求項9】
酸触媒、酸触媒を中和するための塩基成分及びポリビニルアルコールを含み、前記塩基成分は、エタノールアミン、エチレンジアミン、及びアンモニアからなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、ポリエン系偏光フィルム製造用コーティング液。
【請求項10】
透過率(ウェット透過率)xと偏光度yとが以下の数式(1)を満たすことを特徴とする、ポリエン系偏光フィルムを製造するための、請求項1から8のいずれか一項記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法
y≧f(x) (1)
ここで、y=f(x)は、S値=0.920となる際の透過率と偏光度との対応関係を示す関数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエン系偏光フィルムの製造方法、ポリエン系偏光フィルム製造用コーティング液及びポリエン系偏光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(有機発光ダイオード)を使用した有機発光表示装置の普及に伴い、偏光フィルムの透過率を高くすることが求められている。一方、各種表示装置に使用される偏光フィルムとして、ヨウ素(iodine)系偏光フィルムが知られている。ヨウ素系偏光フィルムは、広く普及している。
【0003】
ヨウ素系偏光フィルムでは、偏光に寄与する構成(すなわち可視光を吸収する構成)はヨウ素である。したがって、透過率を高めるためには偏光フィルム中のヨウ素の量を低減する必要がある。しかし、高温高湿時にはヨウ素が昇華するので、偏光フィルム中のヨウ素の量を低減した場合、偏光フィルム中のヨウ素が不足し、結果として、偏光度が大幅に低下する可能性がある。このため、高透過率(例えば透過率が44%以上)のヨウ素系偏光フィルムは、偏光フィルムの高温高湿での長期信頼性が低下する。
【0004】
このような問題を解決することが期待される偏光フィルムとして、染料系偏光フィルム及び特許文献1、2に開示されるポリエン系偏光フィルムが知られている。染料系偏光フィルムは、透過率が高い場合であっても、優れた耐熱性を示す。しかし、染料系偏光フィルムには、透過率が高い場合に偏光度が低下しやすいという問題がある。
【0005】
一方、ポリエン系偏光フィルムは、ヨウ素系偏光フィルムよりも偏光度が若干劣るものの、透過率が高い場合であっても高温高湿での信頼性が高いという利点がある。この理由として、ポリエン系偏光フィルムでは、偏光に寄与する構成(すなわち可視光を吸収する構成)がポリエンとなることが挙げられる。ここで、ポリエンとは、多数の共役炭素二重結合を有する有機物の総称である。炭素二重結合は、温度や湿度に影響を受けにくい。したがって、ポリエン系偏光フィルムは根本的に高温高湿への耐久性が大きい。このため、ポリエン系偏光フィルムは、表示装置用の偏光フィルムとして非常に注目されている。
【0006】
ポリエン系偏光フィルムの製造方法としては、ポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」とも称する)をポリエン化して延伸する方法が上げられるが、この方法ではポリエン系偏光フィルムの薄膜化に十分に対応できない。具体的には、この方法で薄膜のポリエン系偏光フィルムを作製するためには、薄膜のPVAフィルムを延伸する必要がある。しかし、この場合、PVAフィルムが破断しやすくなってしまう。なお、PVAのポリエン化とは、PVAに脱水反応(PVA中の水酸基を隣接する水素原子とともに除去する反応)を起こさせることを意味する。PVAのポリエン化によって、PVA中に多数のポリエンブロック(polyene block)が形成される。ポリエンブロックは、多数の共役炭素二重結合を有する。
【0007】
そこで、近年では、特許文献2に開示されるように、基材フィルム上に塗工層を形成して一体延伸する方法が提案されている。この方法では、例えば、PVAを含むコーティング液を基材フィルムに塗工することで基材フィルム上に塗工層を形成する。基材フィルム上にPVAフィルムを貼り付けることで基材フィルム上に塗工層を形成する場合もある。ついで、基材フィルム及び塗工層を一体延伸する。ついで、塗工層に酸触媒を含浸させる。ついで、塗工層中のPVAをポリエン化する。この方法によれば、基材フィルム上に薄膜の塗工層を形成することで、ポリエン系偏光フィルムを薄膜化することができる。また、基材フィルム及び塗工層を一体延伸するので、延伸時に塗工層が破断しにくくなる。したがって、ポリエン系偏光フィルムを薄膜化することができる。
【0008】
ここで、塗工層に酸触媒を含浸させる方法としては、酸触媒雰囲気(濃塩酸等の蒸気等)中に塗工層を暴露する方法、コーティング液に予め酸触媒を含めておく方法(特許文献2に開示された方法)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−99076号公報
【特許文献2】特開2014−130226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性(例えば偏光度)を高めるためには、ポリエン系偏光フィルムのポリエン濃度を十分に高くする必要がある。しかしながら、十分なポリエン濃度を得るためには、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸(PTSA)や塩酸などの強酸を用いる必要がある。この場合、例えば上述したコーティング液のpH値は2程度となる。したがって、PVAをポリエン化するための設備として耐蝕性の高い設備を用意する必要があった。
【0011】
例えば、酸触媒雰囲気中に塗工層を暴露する設備では、少なくとも酸触媒の蒸気を封入する容器、当該容器に酸触媒の蒸気を導入する配管、ポンプ(pump)、液体の酸触媒を気化する装置、液体の酸触媒を貯留するタンク(tank)等を全て耐蝕性の高い材料(例えば合金)で構成する必要があった。また、この方法では、安全性の観点から、酸触媒の蒸気を封入する容器から酸触媒が漏出しないように当該容器の密封性を高める必要があった。
【0012】
また、塗工層のコーティング液に予め酸触媒を含めておく方法では、基材フィルム上にコーティング液を塗工するためのコータ(coater)(例えばスリットダイ(slit die)等)、コータに酸触媒を導入するための配管、ポンプ、酸触媒を貯留するタンク等を全て耐蝕性の高い材料(例えば合金)で構成する必要があった。
【0013】
このため、特許文献1、2に開示された技術では、設備コスト(cost)が非常に高くなるという問題があった。
【0014】
さらに、特許文献2に開示された技術では、以下の問題もあった。すなわち、耐蝕性の高い合金でスリットダイを作製する場合、研磨精度が低下し、ひいては、塗工面の品質が低下するという問題があった。さらに、コーティング液に酸触媒が含まれているため、ポリエン化のタイミングを制御することが難しいという問題があった。特許文献2に開示された技術では、まず、塗工層及び基材フィルムを一体延伸(いわゆるドライ延伸)した後に、PVAのポリエン化を行う。すなわち、PVAの配向をドライ延伸によって揃えてからPVAのポリエン化を行う。ポリエン鎖をなるべく揃えるためである。しかし、特許文献2に開示された技術では、コーティング液に酸触媒が含まれているため、ドライ延伸前に(あるいは、ドライ延伸開始直後から)塗工層内でPVAのポリエン化が始まってしまうという問題があった。すなわち、PVA鎖の配向を揃えている間にPVAの一部がポリエン化してしまうという問題があった。このため、ポリエン鎖の配向を十分に揃えられず、結果として、偏光フィルムの偏光特性が低下してしまう可能性があった。
【0015】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能な、ポリエン系偏光フィルムの製造方法及びポリエン系偏光フィルム製造用コーティング液と、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、酸触媒の中和化合物及びポリビニルアルコールを含むコーティング液を作製する第1の工程と、コーティング液を基材フィルム上に塗工することで、基材フィルム上に塗工層を形成する第2の工程と、基材フィルム及び塗工層をドライ延伸する第3の工程と、塗工層中のポリビニルアルコールに脱水反応を起こさせる第4の工程と、を含むことを特徴とする、ポリエン系偏光フィルムの製造方法が提供される。
【0017】
本観点によれば、少なくともドライ延伸前には塗工層中に酸触媒はほとんど存在しない。したがって、ドライ延伸前にPVAのポリエン化はほとんど起こらない。さらに、本観点では、ドライ延伸中に塩基成分が塗工層から揮発するので、塗工層中に酸触媒が復活する。すなわち、本観点では、ドライ延伸中に酸触媒が徐々に復活する。このため、ドライ延伸中でPVAのポリエン化が起こりにくくなる。したがって、本観点では、ポリエン化のタイミングを制御することができる。すなわち、PVAのポリエン化を第4の工程で集中的に行うことができる。したがって、本観点では、PVA鎖をより正確に揃えてからPVAのポリエン化を行うことが可能になる。さらに、塗工層には酸触媒が均一に分散されているので、ポリエン化をより均一に行うことができる。このため、ポリエン鎖をより正確に揃えることができ、かつ、ポリエンブロックをより均一に分散させることができる。この結果、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性をさらに向上させることができる。
【0018】
さらに、本観点では、コーティング液を作製する第1の工程は、耐蝕性の高い設備内で行うことになる。酸触媒が設備に接触する可能性があるからである。しかし、それ以降の工程では、酸触媒が設備に接触する可能性は低い。このため、第2の工程以降の工程を行う設備として耐蝕性の高い設備を用意する必要がない。このため、ポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。したがって、本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【0019】
ここで、第1の工程は、酸触媒及びポリビニルアルコールを含む酸触媒含有水溶液を作製する工程と、酸触媒含有水溶液に塩基成分を溶解する工程と、を含んでいてもよい。
【0020】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【0021】
また、塩基成分の沸点は180℃以下であってもよい。
【0022】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【0023】
また、塩基成分は、エタノールアミン、エチレンジアミン、及びアンモニアからなる群から選択されるいずれか1種以上であってもよい。
【0024】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【0025】
また、第3の工程では、塗工層を130℃以上の温度で加熱してもよい。
【0026】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【0027】
また、コーティング液のpHは3.0〜9.0であってもよい。
【0028】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【0029】
また、基材フィルムはアクリル樹脂フィルムであってもよい。
【0030】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。さらに、ポリエン化の際に基材フィルムが収縮しにくくなる。
【0031】
また、アクリル樹脂フィルムのガラス転移点は80〜150℃であってもよい。
【0032】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。さらに、ポリエン化の際に基材フィルムが収縮しにくくなる。
【0033】
本発明の他の観点によれば、酸触媒の中和化合物及びポリビニルアルコールを含むことを特徴とする、ポリエン系偏光フィルム製造用コーティング液が提供される。
【0034】
本観点によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【0035】
本発明の他の観点によれば、透過率(ウェット透過率)xと偏光度yとが以下の数式(1)を満たすことを特徴とする、ポリエン系偏光フィルムが提供される。
y≧f(x) (1)
ここで、y=f(x)は、S値=0.920となる際の透過率と偏光度との対応関係を示す関数である。
【0036】
本観点によるポリエン系偏光フィルムは、偏光特性に優れる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように本発明によれば、偏光特性に優れたポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本実施形態に係る積層フィルムの概略構成を示す側断面図である。
図2】ドライ(dry)透過率とウエット(wet)透過率との対応関係を示すグラフである。
図3】ウエット透過率と偏光度との対応関係を示すグラフである。
図4】コーティング液のpHとS値との対応関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0040】
<1.ポリエン系偏光フィルムの製造方法>
(1−0.概要)
まず、本実施形態の概要を説明する。本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムの製造方法は、第1〜第4の工程を含む。第1の工程では、酸触媒の中和化合物及びポリビニルアルコールを含むコーティング液を作製する。第2の工程では、コーティング液を基材フィルム上に塗工することで、基材フィルム上に塗工層を形成する。第3の工程では、塗工層をドライ延伸する。この工程によって、塗工層から中和化合物の塩基成分が揮発する。したがって、塗工層内に酸触媒が復活する。さらに、PVA鎖の配向をドライ延伸方向に揃える。第4の工程では、塗工層中のPVAに脱水反応を行わせる。すなわち、塗工層中のPVAをポリエン化する。
【0041】
したがって、本実施形態では、少なくともドライ延伸前には塗工層中に酸触媒はほとんど存在しない。したがって、ドライ延伸前にPVAのポリエン化はほとんど起こらない。さらに、本実施形態では、ドライ延伸中に塩基成分が塗工層から揮発するので、塗工層中に酸触媒が復活する。すなわち、本実施形態では、ドライ延伸中に酸触媒が徐々に復活する。このため、ドライ延伸中でPVAのポリエン化が起こりにくくなる。したがって、本実施形態では、ポリエン化のタイミングを制御することができる。すなわち、PVAのポリエン化を第4の工程で集中的に行うことができる。したがって、本実施形態では、PVA鎖をより正確に揃えてからPVAのポリエン化を行うことが可能になる。さらに、塗工層には酸触媒が均一に分散されているので、ポリエン化をより均一に行うことができる。このため、ポリエン鎖をより正確に揃えることができ、かつ、ポリエンブロックをより均一に分散させることができる。この結果、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性をさらに向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、コーティング液を作製する第1の工程は、耐蝕性の高い設備内で行うことになる。酸触媒が設備に接触する可能性があるからである。しかし、それ以降の工程では、酸触媒が設備に接触する可能性は低い。このため、第2の工程以降の工程を行う設備として耐蝕性の高い設備を用意する必要がない。このため、ポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。以下、各工程を詳細に説明する。
【0043】
(1−1.第1の工程)
第1の工程では、酸触媒の中和化合物及びポリビニルアルコールを含むコーティング液を作製する。具体的には、まず、PVAを適当な溶媒(例えば水)に投入し、PVAが溶媒に完全に溶解するまで撹拌する。撹拌中に溶媒及びPVAを加熱してもよい。これにより、PVA水溶液を作製する。次いで、ポリビニルアルコール水溶液に、酸触媒を投入し、攪拌することで、酸触媒含有水溶液を作製する。
【0044】
酸触媒の種類は特に問われないが、低揮発性の酸触媒であることが好ましい。酸触媒が低揮発性である場合、ポリエン生成時に酸触媒の揮発が抑制されるので、酸触媒水溶液中の酸濃度をより均一にすることができる。
【0045】
より具体的には、酸触媒は、100℃での質量減少率が3質量%未満であることが好ましい。100℃での質量減少率が3質量%未満となる場合、ポリエン生成時にポリビニルアルコール中の酸濃度をより均一にすることができる。
【0046】
上記の要件を満たす酸触媒としては、例えば有機酸が挙げられる。有機酸は、例えば、カルボキシル基及びスルホ基からなる群から選択されるいずれか1つの官能基を有していてもよい。有機酸の具体的な構成は、R−Xで示される。Rは、炭素・水素・弗素からなる化合物であれば特に限定されない。Rは、たとえばアルキル基、パーフルオロアルキル基、芳香族官能基、及びフッ素置換型芳香族官能基等から選択されるいずれか1つである。Xは、カルボキシル基及びスルホ基からなる群から選択されるいずれか1つの官能基である。有機酸の具体例としては、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。
【0047】
例えば、パラトルエンスルホン酸の100℃で10分間加熱した際の質量減少率は、分析機器の検出限界(10ppm以下)である。なお、分析機器に関しては、イオンクロマトグラフィー等が挙げられる。分析方法は、サンプルをヒートプレート上で熱して発生したガスを捕集する。続いてそのガスを水中でバブリングを行い置換させる。置換したイオンクロマトグラフィーにて定量分析を行う。
【0048】
なお、パラトルエンスルホン酸の飽和水溶液濃度は塩酸よりも高いので、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸を使用した場合、より多くの酸触媒を酸触媒水溶液に溶解させることができる。また、ポリエン系偏光フィルムに残留した酸触媒は、ポリエン系偏光フィルムの耐久性を低下させる可能性があるが、パラトルエンスルホン酸は、塩酸よりもポリエン系偏光フィルムから容易に除去される。なお、酸触媒水溶液のpHは特に制限されず、例えば1.5〜2.5程度であってもよい。また、酸触媒の含有比は、特に制限されないが、例えばPVAの質量に対して2〜10質量%程度であっても良い。
【0049】
ついで、酸触媒水溶液に塩基成分を溶解する。これにより、酸触媒水溶液中の酸触媒が塩基成分によって中和される。すなわち、酸触媒の中和化合物が生成される。ここで、塩基成分は、後述するドライ延伸時に揮発する成分である必要がある。塩基成分がドライ延伸時に揮発しないと、塩基成分が塗工層内で酸触媒と中和化合物を形成したままとなる。すなわち、酸触媒が塗工層中で復活しない。
【0050】
塩基成分の揮発性を評価する指標としては、沸点が挙げられる。沸点が高過ぎると、ドライ延伸時に塩基成分が揮発しないからである。塩基成分の沸点は、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは、130℃以下である。この場合、ドライ延伸時により確実に塩基成分を揮発させることができる。このような要件を満たす塩基成分は、例えばエタノールアミン(沸点170℃)、エチレンジアミン(沸点117℃)、アンモニア(沸点−33℃)である。最も好ましい例はアンモニアである。塩基成分としてアンモニアを使用することで、ドライ延伸中に容易に塩基成分を揮発させることができる。
【0051】
なお、酸触媒水溶液に塩基成分を溶解させる方法は特に制限されない。例えば、塩基成分としてアンモニアを使用する場合、アンモニアを酸触媒水溶液にバブリングすることで、アンモニアを酸触媒水溶液に溶解させれば良い。
【0052】
酸触媒水溶液に塩基成分を溶解させることで、コーティング液が作製される。ここで、コーティング液のpHは特に制限されないが、3.0〜9.0であることが好ましく、3.5〜8.7であることがより好ましい。後述する実施例に示されるとおり、pHがこの範囲内の値となる場合に、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性が向上するからである。
【0053】
なお、コーティング液には、レベリング(leveling)剤等の添加剤を添加してもよい。ここで、レベリング剤は、塗工層を平滑化するためにコーティング液に添加される。レベリング剤の具体例としては、例えばパーフルオロアルキルエチレンオキシド(perfluoroalkyl ethylene oxide)付加物等が挙げられる。
【0054】
(1−2.第2の工程)
第2の工程では、コーティング液を基材フィルム上に塗工することで、塗工層を基材フィルム上に形成する。コーティング液を基材フィルム上に塗工する方法は特に制限されない。コーティング液を基材フィルム上に塗工する方法としては、例えばグラビア(gravure)コータ法、バー(bar)コータ法、ダイ(die)コータ法等が挙げられる。塗工層の厚さは特に制限されないが、好ましくは3μm〜20μmである。
【0055】
ここで、基材フィルムの種類は特に制限されない。基材フィルム例としては、例えば、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム等が挙げられる。また、基材フィルムは延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよいが、無延伸フィルムであることが好ましい。
【0056】
なお、基材フィルムが柔らかいフィルム、例えば上述したポリプロピレンフィルムとなる場合、延伸し易いというメリットが有る。その一方で、ポリプロピレンフィルムは、塗工層中のPVAをポリエン化する際に幅方向に収縮しやすいというデメリットがある。ポリプロピレンフィルムが幅方向に収縮すると、延伸方向にシワが入る場合がある。そして、ポリプロピレンフィルムにシワが入ると、このシワが塗工層にも転写される。そして、塗工層にシワが形成されると、第4の工程時に脱水ムラが発生する可能性がある。脱水ムラが発生すると、ポリエン系偏光フィルム中のポリエン濃度にバラ付きが生じる。この結果、例えば色ムラが発生する。したがって、ポリエン系偏光フィルムにシワが形成され、かつ色ムラも発生することになる。すなわち、ポリエン系偏光フィルムの外観が不良となる。
【0057】
このため、基材フィルムは、塗工層中のPVAをポリエン化する際に収縮しにくいフィルムであることが好ましい。具体的には、基材フィルムは、アクリル樹脂フィルムであることが好ましい。アクリル樹脂フィルムは、ポリプロピレンフィルム等に比べて硬いフィルムであるので、塗工層中のPVAをポリエン化する際に収縮しにくいからである。
【0058】
ここで、アクリル樹脂フィルムはアクリル樹脂を主成分として含む(例えば、全固体成分の50質量%以上がアクリル樹脂となる)フィルムを意味する。アクリル樹脂の種類は特に制限されないが、ポリメタクリレート(PMMA)であることが好ましい。
【0059】
また、アクリル樹脂フィルムのガラス転移点は、80〜150℃程度であることが好ましい。ガラス転移点が150℃より大きいと、アクリル樹脂フィルムが硬すぎて延伸に適さない可能性がある。一方、ガラス転移点が80℃未満となる場合、アクリル樹脂フィルムが柔らかすぎて、ポリエン化の際にアクリル樹脂フィルムが収縮する可能性がある。アクリル樹脂フィルムのガラス転移点は、アクリル樹脂フィルムにゴム成分(例えば、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)など)を添加することで調整可能である。
【0060】
また、アクリル樹脂フィルムの吸水率は、0.1〜5.0%であることが好ましい。ここで、吸水率は、24℃、相対湿度55%の環境下に24h保管したフィルムの総質量と110℃、DRYの環境下に5h保管したフィルムの総質量との差を前者の総質量で除算した値である。アクリル樹脂フィルムの吸水率は、ほぼこの範囲内の値となりうる。吸水率が高すぎる場合、後述するウエット延伸時に基材フィルムが過剰に膨張する可能性がある。基材フィルムが過剰に膨張すると、後述するウエット延伸時にポリエン系偏光フィルムが基材フィルムから剥離する可能性がある。一方、吸水率が0.1%未満となる場合、ウエット延伸時に基材フィルムの破断が発生しやすくなる。
【0061】
また、基材フィルムの厚さは特に制限されないが、20〜200μmであることが好ましい。基材フィルムが200μmよりも厚い場合、基材フィルムが延伸しにくくなる可能性がある。基材フィルムが20μmよりも薄い場合、延伸時に基材フィルムが破断する可能性がある。
【0062】
なお、基材フィルムが上述した要件を満たす場合、基材フィルムは、例えば150℃の温度下で延伸方向に5倍以上延伸することが可能になる。
【0063】
なお、基材フィルムをアクリル樹脂フィルムとした場合、以下の効果も期待できる。すなわち、本実施形態では、ドライ延伸後にPVAのポリエン化を行う。すなわち、ドライ延伸とPVAのポリエン化とを分離して行う。そして、ドライ延伸によってPVAの配向が揃うのみならず、アクリル樹脂フィルムの結晶化が促進される。すなわち、アクリル樹脂フィルムの幅方向への収縮がより起こりにくくなった状態で、PVAのポリエン化を行うことができる。したがって、PVAのポリエン化による外観不良がより起こりにくくなる。
【0064】
また、基材フィルムに直接コーティング液を塗工してもよいが、剥離層を介してコーティング液を塗工してもよい。すなわち、基材フィルム上に剥離層を形成し、その上にコーティング液を塗工してもよい。ここで、剥離層を構成する樹脂は基材フィルムを構成する樹脂と同様の樹脂であっても良い。
【0065】
(1−3.第3の工程)
第3の工程では、基材フィルム及び塗工層をドライ延伸する。ドライ延伸は、乾燥した気体中(例えば乾燥した大気中)で基材フィルム及び塗工層を加熱しながら延伸する処理である。この工程により、PVAの配向をドライ延伸方向に揃えることができる。さらに、塗工層から塩基成分が揮発し、酸触媒が復活する。
【0066】
基材フィルム及び塗工層の加熱温度は、各基材フィルムのガラス転移点に応じて適当な値とすればよい。例えば、加熱温度は、100〜150℃程度であってもよい。ただし、塩基成分をより確実に揮発させるという観点からは、加熱温度は130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましい。したがって、本実施形態では、ドライ延伸中に酸触媒が徐々に復活する。このため、ドライ延伸中でPVAのポリエン化が起こりにくくなる。したがって、本実施形態では、PVA鎖をより正確に揃えてからPVAのポリエン化を行うことが可能になる。なお、ドライ延伸の加熱温度は150℃を超えないことが好ましい。ドライ延伸の加熱温度が150℃を超えると、ドライ延伸時に脱水反応を起こす酸触媒が増える可能性があるからである。また、ドライ延伸の倍率は特に制限されず、例えば3〜7倍程度であっても良い。
【0067】
(1−4.第4の工程)
第4の工程では、塗工層中のPVAに脱水反応を起こさせる。すなわち、PVAをポリエン化する。具体的には、塗工層を所定時間加熱する。これにより、塗工層中のPVAがポリエン化する。ここで、PVAのポリエン化は、PVA中のいずれかの部分でスタートし、そこから連鎖的に進行すると考えられている。PVAのポリエン化によって、PVA中に多数のポリエンブロックが形成される。PVAの加熱温度及び加熱時間によってポリエン系偏光フィルムのポリエン濃度が変動するので、PVAの加熱温度及び加熱時間は、所望のポリエン濃度が得られるように調整されればよい。一例として、PVAの加熱温度は110〜180℃、好ましくは140〜165℃であってもよく、さらに好ましくは150超〜165℃であってもよい。加熱時間は2〜7分であってもよい。
【0068】
ここで、本実施形態では、コーティング液の調整の段階で酸触媒がコーティング液に投入されるので、塗工層中に均一に分散液される。このため、PVAのポリエン化をより均一に行うことができる。すなわち、ポリエンブロックを塗工層中により均一に分散させることができる。さらに、本実施形態では、PVAを配向させた後にPVAのポリエン化を行うことができるので、ポリエン鎖をより正確に揃えることができる。
【0069】
このように、本実施形態では、ポリエン鎖をより正確に揃えることができ、かつ、ポリエンブロックを塗工層中により均一に分散させることができる。この結果、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性をさらに向上させることができる。以上の工程により、塗工層がポリエン系偏光フィルムとなる。すなわち、ポリエン系偏光フィルムが作製される。
【0070】
(1−5.第5の工程)
ポリエン系偏光フィルムの品質を向上するために、さらに以下の第5の工程を行ってもよい。第5の工程では、基材フィルム及びポリエン系偏光フィルムをウエット(wet)延伸する。具体的には、基材フィルム及びポリエン系偏光フィルムをホウ酸(boric acid)水溶液に浸漬し、ホウ酸水溶液中で延伸する。ここで、延伸方向はドライ延伸の方向と同じとする。このようなウエット延伸を行うことで、互いに分離したPVA同士がホウ酸分子によって架橋される。したがって、ポリエン系偏光フィルムの強度および耐水性が向上する。ウエット延伸後、ポリエン系偏光フィルムを乾燥することで、第5の工程が終了する。
【0071】
ここで、ホウ酸水溶液のpH及び温度は、ポリエン系偏光フィルムの強度及び偏光特性に影響を与えるので、所望の強度及び偏光特性に応じた値とすればよい。一例として、ホウ酸水溶液のpH及び温度は、pH2.5〜4.5、50〜95℃であってもよい。
【0072】
また、ウエット延伸の延伸倍率もポリエン系偏光フィルムの強度及び偏光特性に影響を与えるので、所望の強度及び偏光特性に応じた値とすればよい。一例として、延伸倍率は、1.0〜1.5倍であってもよい。
【0073】
(1−6.第5の工程の第1変形例)
第5の工程では、ウエット延伸を行う前に、水和処理を行ってもよい。水和処理では、ポリエン系偏光フィルムを水和用水溶液に浸漬する。水和用水溶液は、例えばpHが3.0〜4.0、温度が85〜100℃の水溶液である。浸漬時間は0.5〜60minであればよい。このような水和処理を行うことで、共役炭素二重結合の一部が水和される。すなわち、ポリエン系偏光フィルム内の共役炭素二重結合が少なくなる。したがって、ポリエン系偏光フィルムの単体透過率が上昇し、偏光度が低下することが予測される。しかし、本発明者が実験したところ、ある程度の含浸時間までは偏光度がほとんど変動せず、単体透過率だけが上昇することが判明した。このため、ポリエン鎖の配向方向からずれた方向に伸びる炭素二重結合から優先的に水和すると考えられる。浸漬時間の上限値は、60minとなる。一方、浸漬時間が短すぎると水和がほとんど進行せず、水和の効果がほとんど得られない。浸漬時間の下限値は0.5minとなる。すなわち、浸漬時間は0.5〜60minとなる。
【0074】
また、水和用水溶液のpHは、例えば3.0〜4.0となる。水和用水溶液の温度は、例えば85〜100℃となる。水和用水溶液のpH及び温度がこれらの範囲内の値となる場合に、単体透過率及び偏光度がより向上する。このように、水和処理に使用される水和用水溶液の温度はウエット延伸で使用される酸性水溶液よりも高温となる。水和用水溶液の種類は特に問われないが、例えばホウ酸水溶液となる。また、水和処理は、水和用水溶液をポリエン系偏光フィルムに噴霧することで行われてもよい。
【0075】
(1−7.第5の工程の第2変形例)
第5の工程では、ウエット延伸を行う前に、染料浴浸漬処理を行っても良い。染料浴浸漬処理では、ポリエン系偏光フィルムを染料浴に浸漬する。染料浴は、染料を含む水溶液である。したがって、染料浴浸漬処理を行うことで、ポリエン系偏光フィルムに染料が導入される。ここで、染料は、その種類によって異なる波長帯域の可視光を吸収するものである。したがって、ポリエン系偏光フィルムによる吸収が不十分な波長帯域が存在する場合、その波長帯域の可視光を吸収可能な染料を用いて染料浴浸漬処理を行ってもよい。これにより、ポリエン系偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域(吸収波長帯域)が補完される。染料浴浸漬処理は、ポリエン系偏光フィルムによる吸収が不十分な波長帯域が存在しない(すなわち、色相に問題がない)か、あるいは補完が不要な場合には、省略してもよい。
【0076】
ここで、染料浴のpH及び温度は、ポリエン系偏光フィルムの強度及び偏光特性に影響を与えるので、所望の強度及び偏光特性に応じた値とすればよい。一例として、染料浴のpH及び温度は、pH4〜7、60〜95℃であってもよい。染料浴は、例えば染料を含むホウ酸水溶液である。染料の濃度は、ポリエン系偏光フィルムに求められる偏光特性に応じて調整されればよい。
【0077】
(1−8.第5の工程の第3変形例)
第5の工程では、ウエット延伸後に中和処理を行っても良い。すなわち、ウエット延伸後のポリエン系偏光フィルムには、プロトンが残留している可能性がある。特に、上述した水和処理を行った場合、ポリエン系偏光フィルム中のプロトン(proton)濃度が高くなる可能性がある。このようなプロトンは、特に高温高湿中でポリエン系偏光フィルムの共役炭素二重結合を攻撃し、共役炭素二重結合を消失させてしまう可能性がある。この結果、ポリエン系偏光フィルムの単体透過率は、高温高湿下で時間の経過とともに上昇し、偏光度は高温高湿下で時間の経過とともに低下する。すなわち、ポリエン系偏光フィルムの信頼性が悪化する。
【0078】
そこで、第3変形例では、ウエット延伸後に中和処理を行う。中和処理では、ポリエン系偏光フィルムを中和用水溶液に浸漬する。これにより、ポリエン系偏光フィルム中のプロトンが中和される。
【0079】
ここで、中和用水溶液のpHは、例えば4.5〜8.5である。中和用水溶液の温度は特に制限されないが、例えば65℃〜85℃程度であればよい。中和用水溶液は、例えばホウ酸水溶液に水酸化ナトリウム(sodium hydrate)(または水酸化カリウム(potassium hydrate))を添加することで作製される。もちろん、中和水溶液は、上述したpHを有するものであれば、特にその成分は問われない。
【0080】
ポリエン系偏光フィルムの浸漬時間は特に問われないが、浸漬時間が長いほど多くのプロトンを除去できるので好ましい。なお、ポリエン系偏光フィルムを中和用水溶液に浸漬する際には、ポリエン系偏光フィルムが縮まない程度の力(Tension)をポリエン系偏光フィルムに掛けることが好ましい。また、中和処理は、中和用水溶液をポリエン系偏光フィルムに噴霧することで行われてもよい。
【0081】
なお、上述した第1〜第3変形例は全て行われてもよく、いずれか1種以上を選択的に行っても良い。
【0082】
(2.ポリエン系偏光フィルムの構成)
上記の工程により作製されたポリエン系偏光フィルムは、高い透過率(単体透過率)及び偏光度を有する。詳細は実施例で説明するが、ポリエン系偏光フィルムは、以下の数式(1)を満たす。
y≧f(x) (1)
ここで、yは偏光度、xは透過率、y=f(x)は、S値=0.920となる際の透過率と偏光度との対応関係を示す関数である。
【0083】
(3.積層偏光フィルムの構成)
本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムを用いて積層偏光フィルムを作製してもよい。積層偏光フィルムの一例を図1に示す。図1に示す積層偏光フィルム10は、ポリエン系偏光フィルム11と、UV接着層12、14と、保護フィルム(例えばトリアセチルセルロール系フィルム(TACフィルム))13と、位相差フィルム(1/4λフィルム)15と、感圧接着層16とを備える。
【0084】
したがって、積層偏光フィルム10は円偏光フィルムとなっている。なお、本実施形態に係る積層偏光フィルム10は、ポリエン系偏光フィルム11以外は公知の材料で構成されればよい。感圧接着層16は、例えば表示装置のディスプレイ面に結着される。本実施形態では、ポリエン系偏光フィルム11が薄膜化されるので、に係る積層偏光フィルム10全体も薄膜化される。例えば、本実施形態では、積層偏光フィルム10全体の膜厚を100μm以下とすることができる。もちろん、本実施形態に係る積層偏光フィルムは、他の構造を有していてもよい。積層偏光フィルムは円偏光フィルムでなくてもよい。また、上記保護フィルム13及び位相差フィルム15の代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリル(acrylic)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム等の光学フィルムを用いて積層偏光フィルム10を作製してもよい。
【0085】
以上により、本実施形態では、コーティング液に酸触媒の中和化合物を溶解させる。このため、本実施形態では、少なくともドライ延伸前には塗工層中に酸触媒はほとんど存在しない。したがって、ドライ延伸前にPVAのポリエン化はほとんど起こらない。さらに、本実施形態では、ドライ延伸中に塩基成分が塗工層から揮発するので、塗工層中に酸触媒が復活する。すなわち、本実施形態では、ドライ延伸中に酸触媒が徐々に復活する。このため、ドライ延伸中でPVAのポリエン化が起こりにくくなる。したがって、本実施形態では、ポリエン化のタイミングを制御することができる。すなわち、PVAのポリエン化を第4の工程で集中的に行うことができる。したがって、本実施形態では、PVA鎖をより正確に揃えてからPVAのポリエン化を行うことが可能になる。
【0086】
さらに、本実施形態では、コーティング液の調整の段階で酸触媒がコーティング液に投入されるので、塗工層中に均一に分散液される。このため、ポリエン化をより均一に行うことができる。このため、ポリエン鎖をより正確に揃えることができ、かつ、ポリエンブロックをより均一に分散させることができる。この結果、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性をさらに向上させることができる。
【0087】
さらに、本実施形態では、コーティング液を作製する第1の工程は、耐蝕性の高い設備内で行うことになる。酸触媒が設備に接触する可能性があるからである。しかし、それ以降の工程では、酸触媒が設備に接触する可能性は低い。このため、第2の工程以降の工程を行う設備として耐蝕性の高い設備を用意する必要がない。このため、ポリエン系偏光フィルムをより低コストかつ安全に作製することが可能となる。
【実施例】
【0088】
<1.実施例1>
まず、実施例1について説明する。実施例1では、以下の工程によりポリエン系偏光フィルム1を作製した。
【0089】
(1−1.第1の工程)
まず、溶媒である水にPVA(日本酢ビ・ポバール社製 JC−25)を投入した。ついで、水及びPVAの混合液を撹拌しながら加熱することで、PVAを水に十分溶解させた。次いで、PVA水溶液に、パラトルエンスルホン酸及びレベリング剤(DIC株式会社のメガファック)を投入し、攪拌することで、酸触媒含有水溶液を作製した。ここで、酸触媒含有水溶液中の水、PVA、及びパラトルエンスルホン酸の含浸比(質量比)は89.5質量%:10質量%:0.5質量%であった。また、レベリング剤の質量比は外数であり、具体的には、水、PVA、及びパラトルエンスルホン酸の総質量に対して0.002質量%であった。また、酸触媒含有水溶液のpHは2.0であった。
【0090】
ついで、酸触媒含有水溶液にアンモニアをバブリングすることで、酸触媒水溶液にアンモニアを溶解させた。これにより、酸触媒が中和された。なお、バブリング中に酸触媒水溶液のpHを計測し、pHが3.6となるまでバブリングを行った。以上の工程により、コーティング液を作製した。
【0091】
(1−2.第2の工程)
ガラス転移点100〜110℃程度、吸水率2.0〜2.5%程度、厚さ100μm、幅50mmであるアクリル樹脂フィルムを準備した。ついで、このアクリル樹脂フィルム上にコーティング液を塗工し、熱風循環オーブンで乾燥した。以上の工程により、基材フィルム上に塗工層を形成した。塗工層の厚さは17μmとした。第2の工程までの結果を表1にまとめて示す。
【0092】
(1−3.第3の工程)
第3の工程では、基材フィルム及び塗工層をドライ延伸した。具体的には、基材フィルム及び塗工層を設定温度150℃の乾燥炉に投入し、1軸ドライ延伸を行った。ドライ延伸開始時の乾燥炉内部温度(いわゆる延伸開始温度)は143℃であった。また、ドライ延伸の倍率は5倍とし、ドライ延伸時間は8分とした。ドライ延伸時間中に乾燥炉内部温度が150℃に到達し、その後は150℃で維持された。また、「Neck−in」は20mmであった。ここで、「Neck−in」は、延伸後の基材フィルム幅である。
【0093】
以上の工程により、PVA鎖がドライ延伸方向に配向し、かつ、塗工層からアンモニアが揮発した。すなわち、塗工層に酸触媒が復活した。なお、塗工層からアンモニアが揮発したことは、第4の工程で脱水反応が進行したことから確認できる。もしアンモニアが塗工層に残留した場合、塗工層内で酸触媒が復活しないので、脱水反応がほとんど進行しない。また、ドライ延伸の温度は後述する脱水反応の温度(165℃)よりも低い。このように、実施例1では、ドライ延伸中に酸触媒が徐々に復活するので、ドライ延伸中にPVAの脱水反応は起こりにくい。第3の工程の結果を表2にまとめて示す。
【0094】
(1−4.第4の工程)
第4の工程では、塗工層中のPVAに脱水反応を起こさせた。具体的には、塗工層及び基材フィルムを165℃の乾燥炉中で3分間保持した。以上の工程により、ポリエン系偏光フィルムを作製した。
【0095】
(1−5.第5の工程)
第5の工程では、ポリエン系偏光フィルム及び基材フィルムを濃度7質量%、温度90℃のホウ酸水溶液(水和用水溶液)に2分間浸漬した。これにより、水和処理を行った。ついで、ポリエン系偏光フィルム及び基材フィルムを濃度4.5質量%、温度60℃のホウ酸水溶液に浸漬し、ウエット延伸した。ウエット延伸の倍率は1.15倍とした。すなわち、ポリエン系偏光フィルムを、第2の工程で形成された塗工層に対して合計6.0倍に延伸した。以下、第2の工程で形成された塗工層に対する合計の延伸倍率を「合計倍率」とも称する。実施例1では合計倍率は6.0となる。また、「Neck−in」は18mmであった。その後、ポリエン系偏光フィルム1を80℃に保持した乾燥炉に投入し、1分間乾燥させた。ポリエン系偏光フィルムの厚さは9μmであった。また、ウエット延伸後の外観を目視で確認したが、特に問題はなかった。第5の工程の結果を表3にまとめて示す。
【0096】
(1−6.積層偏光フィルムの作製)
ついで、ポリエン系偏光フィルムのポリエン面にUV接着剤を厚さ2μmで塗布した。ついで、UV接着剤層上に膜厚50μmの保護フィルム(紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース系フィルム:富士フィルム社製「フジタック(FUJITAC)」)を積層した。次いで、1000mJのUV光をUV接着剤層に照射することで、UV接着剤を硬化させた。ついで、ポリエン系偏光フィルムから基材フィルムを剥離した。
【0097】
ついで、ポリエン系偏光フィルムのポリエン面にUV接着剤を厚さ2μmで塗布した。ついで、ポリエン系偏光フィルムのUV接着剤層上に膜厚50μmの位相差フィルム(1/4波長板、帝人化成社製「WRS」)をポリエン系偏光フィルムの光学吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが45度となるように貼り付けた。ついで、上記と同様の処理によりUV接着剤を硬化させた。これにより、ウエット透過率測定用偏光子を作製した。また、ポリエン系偏光フィルムの代わりに第3の工程を行った後の塗工層を用いて、上記と同様の工程を行った。これにより、ドライ透過率測定用偏光子を作製した。
【0098】
(1−7.偏光特性の評価)
各偏光子の偏光特性として、単体透過率、偏光度、S値、色座標ac、bc、△Ecを測定した。なお、ドライ透過率測定用偏光子に関しては、単体透過率のみ測定した。ドライ透過率測定用偏光子の単体透過率を「ドライ透過率」とも称する。また、ウエット透過率測定用偏光子の単体透過率を「ウエット透過率」とも称する。ドライ透過率を表2に示し、ウエット透過率を表3に示す。
【0099】
具体的には、波長380〜780nmの範囲においてMD透過率とTD透過率を測定した。測定装置は、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、V7100)を使用した。また、「MD透過率」とは、グラントムソンプリズム(glan−thompson prism)から出る偏光の向きと評価用の偏光子の透過軸(すなわち、ポリエンの配向方向に垂直な方向)とを平行にしたときの透過率である。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと評価用の偏光子の透過軸とを直交にしたときの透過率である。また、「MD透過率」及び「TD透過率」は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行ったY値である。そして、MD透過率及びTD透過率と、以下の数式(2)、(3)とに基づいて、単体透過率、及び偏光度を算出(測定)した。評価結果を表1に示す。なお、表1において、単体透過率及び偏光度は、380〜780nmの波長に比視感度曲線で重み付けして積分した値である。
単体透過率(%)=(MD+TD)/2 ・・・・式(2)
偏光度(%)={(MD−TD)/(MD+TD)}×100 ・・式(3)
式(2)、(3)中、MDはMD透過率を意味し、TDはTD透過率を意味する。
【0100】
また、S値、色座標ac、bc、△Ecを測定した。色座標ac、bcは、偏光子をクロスニコルにした時に抜けた光の色である。△Ecは、色座標点の原点からの距離であり、以下の数式(4)で示される。
△Ec=√((ac)^2+(bc)^2) (4)
S値は、以下の数式(5)〜(7)で示される。数式(6)、(7)中、Tpは透過軸透過率(MD透過率)であり、Tsは吸収軸透過率(TD透過率)である。
S=(As−Ap)/(As+2×Ap) (5)
Ap=−logTp (6)
As=−logTs (7)
具体的には、S値は、上記で測定されたMD透過率、TD透過率と、数式(5)〜(7)とに基づいて算出した。色座標ac、bcは、上記分光光度計を用いて測定した。△Ecは、測定された色座標ac、bcと、数式(4)とに基づいて算出した。結果を表3に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
<2.実施例2>
第1の工程では、コーティング液のpHを4.5とした。また、第3の工程では、延伸開始温度を142℃とした。また、ドライ延伸の倍率を4.9倍とした。上記以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1〜3に示す。
【0105】
<3.実施例3>
第1の工程では、コーティング液のpHを4.5とした。また、第3の工程では、延伸開始温度を142℃とした。また、ドライ延伸時間を7分とした。上記以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1〜3に示す。
【0106】
<4.実施例4>
第1の工程では、コーティング液のpHを8.6とした。また、第3の工程では、延伸開始温度を141℃とした。また、ドライ延伸の倍率を5.0倍とした。上記以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1〜3に示す。
【0107】
<5.比較例1>
第1の工程では、酸触媒含有水溶液のpHを4.5とし、かつ、酸触媒含有水溶液にアンモニアを溶解させなかった。また、基材フィルムとしてポリプロピレンフィルムを使用した。第3の工程では、乾燥炉の設定温度を130℃とし、延伸開始温度を120℃とした。ここで、ドライ延伸時の温度は、脱水反応の温度である165℃よりも低くした。ドライ延伸時に脱水反応をなるべく起こらないようにするためである。しかし、後述するように、偏光特性が低下したことから、ドライ延伸時に脱水反応が起こってしまったと推定される。また、第5の工程では、合計倍率を6.2倍とした。上記以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1〜3に示す。表3に示されるように、比較例1では、基材フィルムが収縮してしまったために、ポリエン系偏光フィルムがトタン形状になってしまった。また、このことに起因し、色ムラが散見された。
【0108】
<6.比較例2>
第1の工程では、酸触媒含有水溶液にアンモニアを溶解させなかった。また、第3の工程では、乾燥炉の設定温度を130℃とし、延伸開始温度を124℃とした。また、ドライ延伸時間を6分とした。上記以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1〜3に示す。
【0109】
<7.比較例3>
第1の工程では、酸触媒含有水溶液にアンモニアを溶解させなかった。また、第3の工程では、乾燥炉の設定温度を130℃とし、延伸開始温度を125℃とした。また、ドライ延伸倍率を4.9倍とし、ドライ延伸時間を6分とした。上記以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1〜3に示す。
【0110】
<8.結果の解析>
図2は、ドライ透過率とウエット透過率との対応関係を示す。図2の横軸はドライ透過率を示し、縦軸はウエット透過率を示す。また、点P1は実施例の結果を示し、点Q1は比較例の結果を示す。また、直線L1は点P1の近似直線(最小二乗法による)であり、直線L2は点Q1の近似直線(最小二乗法による)である。
【0111】
図2から明らかな通り、実施例では、ドライ透過率に対してウエット透過率が大きく上昇したが、比較例ではそこまでの上昇は見受けられなかった。実施例では、ドライ延伸時のポリエン化が抑制されたために、このような結果が得られたと推測される。一方、比較例では、ドライ延伸時にポリエン化が進行したため、ポリエン鎖の配向が実施例に比べて乱れたと推測される。この結果、ウエット透過率が十分に上昇しなかったと推測される。
【0112】
図3は、ウエット透過率と偏光度との対応関係を示す。図3の横軸はウエット透過率を示し、縦軸は偏光度を示す。また、点P2は実施例の結果を示し、点Q2は比較例の結果を示す。また、曲線L3は、S値=0.920となる際の透過率と偏光度との対応関係を示す。すなわち、曲線L3は、上昇した関数y=f(x)を示す。実施例を示す点P2は、いずれも曲線L3の上方に配置されているのに対し、比較例を示すQ2は、いずれも曲線L3の下方に配置されている。このように、実施例では、高い偏光度及び透過率が実現された。実施例では、ポリエン鎖がより正確に配向されており、かつ、ポリエンブロックがより均一に分散されている。このため、上記の結果が得られたと推測される。
【0113】
図4は、コーティング液のpHとS値との対応関係を示す。図4の横軸はコーティング液のpHを示し、縦軸はS値を示す。また、点P3は実施例の結果を示し、点Q3は比較例の結果を示す。図4から明らかな通り、実施例では、比較例よりも良好なS値を得ることができた。また、実施例によれば、pHに依存せずに安定した偏光特性が得られている。
【0114】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0115】
10 積層偏光フィルム
11 ポリエン系偏光フィルム
12、14 UV接着層
13 保護フィルム
15 位相差フィルム
16 感圧接着層
図1
図2
図3
図4