【実施例】
【0072】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
なお、本実施例において、酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量、並びに、含金属酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維径、数平均繊維長、重合度、金属量および消臭性能は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0073】
<カルボキシル基量>
乾燥重量を精秤した酸化セルロースナノファイバーのパルプ試料から酸化セルロースナノファイバーの濃度が0.5〜1質量%の分散液を60mL調製した。次に、0.1Mの塩酸によって分散液のpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11になるまでの電気伝導度の変化を観測した。そして、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下式を用いて酸化セルロースナノファイバー中のカルボキシル基量を算出した。
カルボキシル基量(mmol/g)={V(mL)×0.05}/パルプ試料の質量(g)
<数平均繊維径>
含金属酸化セルロースナノファイバー分散液を希釈して含金属酸化セルロースナノファイバーの濃度が0.0001%の分散液を調製した。その後、得られた分散液をマイカ上に滴下し、乾燥させて観察試料とした。そして、原子間力顕微鏡(Dimension FastScan AFM、BRUKER社製、Tapping mode)を使用して観察試料を観察し、含金属酸化セルロースナノファイバーが確認できる画像において、含金属酸化セルロースナノファイバー5本以上の繊維径を測定し、平均値を算出した。
<数平均繊維長>
含金属酸化セルロースナノファイバー分散液を希釈して含金属酸化セルロースナノファイバーの濃度が0.0001%の分散液を調製した。その後、得られた分散液をマイカ上に滴下し、乾燥させて観察試料とした。そして、原子間力顕微鏡(Dimension FastScan AFM、BRUKER社製、Tapping mode)を使用して観察試料を観察し、含金属酸化セルロースナノファイバーが確認できる画像において、含金属酸化セルロースナノファイバー5本以上の繊維長を測定し、平均値を算出した。
<重合度>
調製した含金属酸化セルロースナノファイバーを水素化ホウ素ナトリウムで還元し、分子中に残存しているアルデヒド基をアルコールに還元した。その後、還元処理を施した含金属酸化セルロースナノファイバーを0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解させ、粘度法にて重合度を求めた。具体的には、「Isogai,A.,Mutoh,N.,Onabe,F.,Usuda,M.,“Viscosity measurements of cellulose/SO
2−amine−dimethylsulfoxide solution”, Sen’i Gakkaishi, 45, 299−306 (1989).」に準拠して、重合度を求めた。
なお、水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元処理は、アルデヒド基が残存していた場合に銅エチレンジアミン溶液への溶解過程でベータ脱離反応が起こって分子量が低下するのを防止するために行ったものである。
<金属量>
ICP−AES法により、含金属酸化セルロースナノファイバー中の金属を定性および定量した。なお、測定にはSPS5100(SIIナノテクノロジー製)を用いた。また、イオンクロマトグラフ法により、各イオンの量を定量した。なお、測定には、DX500(DIONEX製)を用いた。
そして、各測定結果から、酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基と塩を形成している金属の量を求めた。
<消臭性能>
調製した含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液(またはTEMPO触媒酸化パルプ水分散液)を、濾紙(ADVANTEC製、定性濾紙No.2、φ150mm)一面に均一に滴下(塗布)した後、その濾紙を105℃のオーブンに入れ乾燥した。ろ紙上に担持されたセルロースナノファイバー(またはTEMPO触媒酸化パルプ)は、2mgであった。その濾紙を容量5Lのサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス社製、スマートバッグ、PA、5L、型式AA)に入れた。
サンプリングバッグ中の空気を真空ポンプで抜いた後、アンモニアに対する消臭性能を評価する時はアンモニア濃度が97質量ppmの窒素・アンモニア混合ガス、メチルメルカプタンに対する消臭性能を評価する時はメチルメルカプタン濃度が58質量ppmの窒素・メチルメルカプタン混合ガス、硫化水素に対する消臭性能を評価する時は硫化水素濃度が54質量ppmの窒素・硫化水素混合ガスを1L作製し、それぞれのガスをサンプリングバッグに注入し、ゴム栓で栓をした。そのサンプリングバッグを室温で放置し、ガス封入から30分後、60分後、180分後のサンプリングバッグ内のアンモニア、メチルメルカプタンもしくは硫化水素の濃度を検知管(ガステック社製)で測定した。さらに、物理吸着における、加温時のガスの再発散を確認するため、サンプリングバッグを40℃のオーブンに1時間入れ、1時間後にオーブンから取り出して、アンモニア、メチルメルカプタンもしくは硫化水素の濃度(質量ppm)を測定した。
【0074】
〔実施例1〕
(発明例1)
<酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
乾燥重量で1g相当分の針葉樹漂白クラフトパルプ、5mmolの次亜塩素酸ナトリウム、0.1g(1mmol)の臭化ナトリウムおよび0.016g(1mmol)のTEMPOを100mLの水に分散させ、室温で4時間穏やかに撹拌し、蒸留水で洗浄することで、TEMPO触媒酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。なお、得られたTEMPO触媒酸化パルプのカルボキシル基量は、1.4mmol/gであった。
その後、未乾燥のTEMPO触媒酸化パルプに蒸留水を加え、固形分濃度0.1%の水分散液を調製した。そして、水分散液に、ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン製、ヒスコトロン)を使用して7.5×1000rpmで2分間、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V−LEVEL4、TIP26Dで4分間の解繊処理を施すことで、酸化セルロースナノファイバーとしてカルボキシル化セルロースナノファイバーを含む水分散液を得た。その後、カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.1%のカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た。なお、カルボキシル化セルロースナノファイバーは、共酸化剤由来のナトリウム(第1の金属)を塩の形で含有していた。
<水素置換した酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
100mLのカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液に対し、撹拌下で1Mの塩酸1mLを加えてpHを1に調整した。そして、60分間撹拌を継続した(水素置換工程)。
その後、塩酸の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離(12000G)により回収し、回収したカルボキシル化セルロースナノファイバーを1Mの塩酸および多量の蒸留水で順次洗浄した(第一の洗浄工程)。
次に、100mLの蒸留水を加え、水素置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーが分散した濃度0.1%の水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た(第一の分散工程)。なお、水素置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーの表面のカルボキシル基は、Biomacromolecules (2011年,第12巻,第518-522ページ)に従いFT−IR(日本分光製、FT/IR−6100)で測定したところ、90%以上がカルボン酸型に置換されていた。
<含金属酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
上記濃度0.1%の水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液18gを加え、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。その後、酢酸銅(II)水溶液の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収した後、濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液にて回収したセルロースナノファイバーを洗浄し、次に、回収したセルロースナノファイバーを多量の蒸留水で洗浄した(洗浄工程)。
その後、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V−LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行うことで、銅で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、銅で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.1%の含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た(分散工程)。
<含金属酸化セルロースナノファイバーの性能評価>
2枚の偏光板をクロスニコルの状態に配し、反対側から光を当て、その偏光板の間で含金属酸化セルロースナノファイバー水分散液を揺らすと複屈折を観測できた。これにより、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーが水中で良好に分散していることが確認された。また、AFMによる画像から、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは数平均繊維径が3.13nmで、ミクロフィブリルレベルまで水中で分散していることが確認できた。なお、複屈折と分散性との関係については、国際公開第2009/069641号等に開示されている。
更に、SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーには、銅(Cu)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基のモル量の1/2の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下、塩素イオン量が0.1質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、上記含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーでは、カルボキシル化セルロースナノファイバーのナトリウムイオンが銅イオンで置換されており、カルボキシル基2つに対して1個の銅イオンが結合していると推察される。
なお、上記含金属酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長は550nmであった。また、含金属酸化セルロースナノファイバーの平均重合度は600であった。
【0075】
そして、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従いアンモニアに対する消臭性能を評価した。
評価結果を発明例1として表1に示す。
【0076】
(発明例2)
<酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
発明例1と同様にして濃度0.1%のカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た。
<水素置換した酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
発明例1と同様にして濃度0.1%の水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た。
<含金属酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
金属置換工程において、上記濃度0.1%の水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸亜鉛(II)水溶液19.5gを加えて、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。その後、酢酸亜鉛(II)水溶液の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収した後、濃度0.1%の酢酸亜鉛(II)水溶液にて回収したセルロースナノファイバーを洗浄し、次に、回収したセルロースナノファイバーを多量の蒸留水で洗浄した(洗浄工程)。
その後、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V−LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行うことで、亜鉛で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、亜鉛で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.1%の含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た(分散工程)。
<含金属酸化セルロースナノファイバーの性能評価>
2枚の偏光板をクロスニコルの状態に配し、反対側から光を当て、その偏光板の間で含金属酸化セルロースナノファイバー水分散液を揺らすと複屈折を観測できた。これにより、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーが水中で良好に分散していることが確認された。また、AFMによる画像から、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは数平均繊維径が3.15nmで、ミクロフィブリルレベルまで水中で分散していることが確認できた。
更に、SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーには、亜鉛(Zn)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基のモル量の1/2の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下、塩素イオン量が0.1質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、上記含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーでは、カルボキシル化セルロースナノファイバーのナトリウムイオンが亜鉛イオンで置換されており、カルボキシル基2つに対して1個の亜鉛イオンが結合していると推察される。
なお、上記含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーの数平均繊維長は550nmであった。また、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーの平均重合度は600であった。
【0077】
そして、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従いアンモニアに対する消臭性能を評価した。
評価結果を発明例2として表1に示す。
【0078】
(比較例1)
<水分散液の調製>
乾燥重量で1g相当分の針葉樹漂白クラフトパルプ、5mmolの次亜塩素酸ナトリウム、0.1g(1mmol)の臭化ナトリウムおよび0.016g(1mmol)のTEMPOを100mLの水に分散させ、室温で4時間穏やかに撹拌し、蒸留水で洗浄することで、TEMPO触媒酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。なお、得られたTEMPO触媒酸化パルプのカルボキシル基量は、1.4mmol/gであった。
その後、未乾燥のTEMPO触媒酸化パルプに蒸留水を加え、固形分濃度0.1%の水分散液を調製した。
<TEMPO触媒酸化パルプ水分散液の調製>
金属置換工程において、上記濃度0.1%の水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸亜鉛(II)水溶液19.5gを加えて、室温で3時間撹拌を継続した。次いで、そのTEMPO触媒酸化パルプを遠心分離(12000G)により回収した後、濃度0.1%の酢酸亜鉛(II)水溶液にて回収したTEMPO触媒酸化パルプを洗浄した(洗浄工程)。
更に、回収したTEMPO触媒酸化パルプを多量の蒸留水で洗浄した後、50mLの蒸留水を加えて、濃度0.1%のTEMPO触媒酸化パルプ水分散液を得た(分散工程)。
<TEMPO触媒酸化パルプの性能評価>
SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られたTEMPO触媒酸化パルプには、亜鉛(Zn)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基のモル量の1/2の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、上記TEMPO触媒酸化パルプは、TEMPO触媒酸化パルプ中のナトリウムイオンが亜鉛イオンで置換されており、カルボキシル基2つに対して1個の亜鉛イオンが結合していると推察される。
なお、上記TEMPO触媒酸化パルプの数平均繊維径は20μmであり、数平均繊維長は1mmであった。また、TEMPO触媒酸化パルプの平均重合度は再凝集していたため測定できなかった。
【0079】
そして、得られたTEMPO触媒酸化パルプ水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従いアンモニアに対する消臭性能を評価した。
評価結果を比較例1として表1に示す。
【0080】
(比較例2)
含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を用いずに、濾紙(ADVANTEC製、定性濾紙No.2、φ150mm)のみを、105℃のオーブンに入れて乾燥した。その濾紙を、前記アンモニアに対する消臭性能を評価する方法に供した。
すなわち、この比較例は、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用せずに、濾紙のアンモニアに対する消臭性能を評価したものである。
評価結果を比較例2として表1に示す。
【0081】
(比較例3)
何も入れずに、サンプリングバッグ中の空気を真空ポンプで抜いた後、アンモニア濃度が97質量ppmの窒素・アンモニア混合ガス1Lをサンプリングバッグに注入し、ゴム栓で栓をした。そのサンプリングバッグを室温で放置し、ガス封入後、30分後、60分後、180分後のサンプリングバッグ内のアンモニアガスの濃度を検知管(ガステック社製)で測定した。その後、1時間サンプリングバッグを40℃のオーブンに入れ、1時間後にオーブンから取り出して、アンモニアの濃度(質量ppm)を測定した。
すなわち、この比較例は、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用しないサンプリングバッグ自体のアンモニアに対する消臭性能を評価したものである。
評価結果を比較例3として表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1から、本発明の消臭剤に用いる含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは、アンモニアに対して優れた消臭効果があることが分かる。
【0084】
〔実施例2〕
(発明例3)
発明例1で得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従いメチルメルカプタンに対する消臭性能を評価した。
評価結果を発明例3として表2に示す。
【0085】
(比較例4)
<水分散液の調製>
比較例1と同様の手順で分散液を調製し、固形分濃度0.1%の水分散液を調製した。
<TEMPO触媒酸化パルプ水分散液の調製>
金属置換工程において、上記濃度0.1%の水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液18gを加え、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。次いで、そのTEMPO触媒酸化パルプを遠心分離(12000G)により回収した後、濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液にて回収したTEMPO触媒酸化パルプを洗浄した(洗浄工程)。
更に、回収したTEMPO触媒酸化パルプを多量の蒸留水で洗浄した後、50mLの蒸留水を加えて、濃度0.1%のTEMPO触媒酸化パルプ水分散液を得た(分散工程)。
<TEMPO触媒酸化パルプの性能評価>
SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られたTEMPO触媒酸化パルプには、銅(Cu)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基のモル量の1/2の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、TEMPO触媒酸化パルプは、TEMPO触媒酸化パルプ中のナトリウムイオンが銅イオンで置換されており、カルボキシル基2つに対して1個の銅イオンが結合していると推察される。
なお、上記TEMPO触媒酸化パルプの数平均繊維径は20μmであり、数平均繊維長は1mmであった。また、TEMPO触媒酸化パルプの平均重合度は再凝集していたため測定できなかった。
【0086】
そして、得られたTEMPO触媒酸化パルプ水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従いメチルメルカプタンに対する消臭性能を評価した。
評価結果を比較例4として表2に示す。
【0087】
(発明例4)
<酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
発明例1と同様にして濃度0.1%のカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た。
<水素置換した酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
発明例1と同様にして濃度0.1%の水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た。
<含金属酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
金属置換工程において、上記濃度0.1%の水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸銀(I)水溶液18gを加えて、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。その後、酢酸銀(I)水溶液の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収した後、濃度0.1%の酢酸銀(I)水溶液にて回収したセルロースナノファイバーを洗浄し、次に、回収したセルロースナノファイバーを多量の蒸留水で洗浄した(洗浄工程)。
その後、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V−LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行うことで、銀で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、銀で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.1%の含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た(分散工程)。
<含金属酸化セルロースナノファイバーの性能評価>
2枚の偏光板をクロスニコルの状態に配し、反対側から光を当て、その偏光板の間で含金属酸化セルロースナノファイバー水分散液を揺らすと複屈折を観測できた。これにより、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーが水中で良好に分散していることが確認された。また、AFMによる画像から、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは数平均繊維径が3.13nmで、ミクロフィブリルレベルまで水中で分散していることが確認できた。
SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーには、銀(Ag)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量の当量の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下、塩素イオン量が0.1質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、上記含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーでは、カルボキシル化セルロースナノファイバーのナトリウムイオンが銀イオンで置換されていることが分かった。
なお、上記含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーの数平均繊維長は550nmであった。また、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーの平均重合度は600であった。
【0088】
そして、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従いメチルメルカプタンに対する消臭性能を評価した。
評価結果を発明例4として表2に示す。
【0089】
(比較例5)
<水分散液の調製>
比較例1と同様の手順で分散液を調製し、固形分濃度0.1%の水分散液を調製した。
<TEMPO触媒酸化パルプ水分散液の調製>
金属置換工程において、上記濃度0.1%の水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸銀(I)水溶液18gを加え、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。次いで、そのTEMPO触媒酸化パルプを遠心分離(12000G)により回収した後、濃度0.1%の酢酸銀(I)水溶液にて回収したTEMPO触媒酸化パルプを洗浄した(洗浄工程)。
更に、回収したTEMPO触媒酸化パルプを多量の蒸留水で洗浄した後、50mLの蒸留水を加えて、濃度0.1%のTEMPO触媒酸化パルプ水分散液を得た(分散工程)。
<TEMPO触媒酸化パルプの性能評価>
SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られたTEMPO触媒酸化パルプには、銀(Ag)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量の当量の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、TEMPO触媒酸化パルプは、TEMPO触媒酸化パルプ中のナトリウムイオンが銀イオンで置換されていることが分かる。
なお、上記TEMPO触媒酸化パルプの数平均繊維径は20μmであり、数平均繊維長は1mmであった。また、TEMPO触媒酸化パルプの平均重合度は再凝集していたため測定できなかった。
【0090】
そして、得られたTEMPO触媒酸化パルプ水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従いメチルメルカプタンに対する消臭性能を評価した。
評価結果を比較例5として表2に示す。
【0091】
(比較例6)
比較例6として、比較例2と同じ手順により、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用せずに、濾紙のメチルメルカプタンに対する消臭性能を評価した。
評価結果を比較例6として表2に示す。
【0092】
(比較例7)
比較例7として、比較例3と同じ手順により、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用しないサンプリングバッグ自体のメチルメルカプタンに対する消臭性能を評価した。なお、サンプリングバッグ中のメチルメルカプタンは濃度を58質量ppmとした。
評価結果を比較例7として表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2から、本発明の消臭剤に用いる含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは、メチルメルカプタンに対して優れた消臭効果があることが分かる。
【0095】
〔実施例3〕
(発明例5)
発明例4で得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従い硫化水素に対する消臭性能を評価した。
評価結果を発明例5として表3に示す。
【0096】
(比較例8)
比較例5で得られたTEMPO触媒酸化パルプ水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従い硫化水素に対する消臭性能を評価した。
評価結果を比較例8として表3に示す。
【0097】
(比較例9)
比較例9として、比較例2と同じ手順により、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用せずに、濾紙の硫化水素に対する消臭性能を評価した。
評価結果を比較例9として表3に示す。
【0098】
(比較例10)
比較例10として、比較例3と同じ手順により、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用しないサンプリングバッグ自体の硫化水素に対する消臭性能を評価した。なお、サンプリングバッグ中の硫化水素は、濃度を54質量ppmとした。
評価結果を比較例10として表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
表3から、本発明の消臭剤に用いる含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは、硫化水素に対して優れた消臭効果があることが分かる。
【0101】
〔実施例4〕
(発明例6)
<酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
発明例1と同様にして濃度0.1%のカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た。
<含金属酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
上記濃度0.1%のカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液50gを撹拌し、そこへ銅の塩の水溶液として濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液18gを加え、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。その後、酢酸銅(II)水溶液の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収した後、濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液にて回収したセルロースナノファイバーを洗浄し、次に、回収したセルロースナノファイバーを多量の蒸留水で洗浄した(洗浄工程)。
その後、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V−LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行うことで、銅で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、銅で置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用した遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.1%の含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た(分散工程)。
<含金属酸化セルロースナノファイバーの性能評価>
2枚の偏光板をクロスニコルの状態に配し、反対側から光を当て、その偏光板の間で含金属酸化セルロースナノファイバー水分散液を揺らすと複屈折を観測できた。これにより、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーが水中で良好に分散していることが確認された。また、AFMによる画像から、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは数平均繊維径が3.13nmで、ミクロフィブリルレベルまで水中で分散していることが確認できた。なお、複屈折と分散性との関係については、国際公開第2009/069641号等に開示されている。
更に、SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーには、銅(Cu)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基のモル量の1/2の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーでは、カルボキシル化セルロースナノファイバーのナトリウムイオンが銅イオンで置換されており、カルボキシル基2つに対して1個の銅イオンが結合していると推察される。
なお、上記含金属酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維長は550nmであった。また、含金属酸化セルロースナノファイバーの平均重合度は600であった。
【0102】
そして、得られた含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従い硫化水素に対する消臭性能を評価した。評価結果を発明例6として表4に示す。
【0103】
(比較例11)
<酸化セルロースナノファイバー分散液の調製>
発明例6と同様の手順で分散液を調製し、固形分濃度0.1%の水分散液を調製した。
<含金属酸化セルロースナノファイバー水分散液の調製>
金属置換工程において、上記濃度0.1%の水分散液50gを撹拌し、そこへ濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液18gを加えて、室温で3時間撹拌を継続した。次いで、そのゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離(12000G)により回収した後、濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液にて、回収したゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーを洗浄した(洗浄工程)。
更に、回収したゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーを多量の蒸留水で洗浄した後、50mLの蒸留水を加えて、濃度0.1%の含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た(分散工程)。
<ゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーの性能評価>
SPS5100(SIIナノテクノロジー製)のICP−AES測定による測定の結果、得られたゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーには、銅(Cu)がカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボキシル基のモル量の1/2の割合で存在しており、ナトリウムの量は1質量ppm以下であることが分かった。また、DX500(DIONEX製)を用いたイオンクロマトグラフ法によるイオン量の定量の結果、酢酸イオン量が0.5質量ppm以下であることが分かった。そして、これらの結果より、ゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーでは、ゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバー中のナトリウムイオンが銅イオンで置換されており、カルボキシル基2つに対して1個の銅イオンが結合していると推察される。
なお、上記ゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーの数平均繊維径は20μmであり、数平均繊維長は1mmであった。また、ゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバーの平均重合度は再凝集していたため測定できなかった。
【0104】
そして、得られたゲル化した含金属酸化カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液をスプレー状の消臭剤として用いて、前記消臭性能を評価する方法に従い硫化水素に対する消臭性能を評価した。評価結果を比較例11として表4に示す。
【0105】
(比較例12)
比較例12として、比較例2と同じ手順により、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用せずに、濾紙の硫化水素に対する消臭性能を評価した。
評価結果を比較例12として表4に示す。
【0106】
(比較例13)
比較例13として、比較例3と同じ手順により、含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を使用しないサンプリングバッグ自体の硫化水素に対する消臭性能を評価した。なお、サンプリングバッグ中の硫化水素は濃度を54質量ppmとした。
評価結果を比較例13として表4に示す。
【0107】
【表4】
【0108】
表4から、本発明の消臭剤に用いる含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーは、硫化水素に対して優れた消臭効果があることが分かる。