(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
仮想線Fに対する前記D線の角度が、30〜90°である、請求項1に記載の表示装置。ただし、前記仮想線Fは、前記第1主面を通る、前記端面側に突出した仮想線である。
前記化学強化ガラスは圧縮応力層を有し、前記圧縮応力層の厚さが10μm以上であり、かつ、前記圧縮応力層における表面圧縮応力が500MPa以上である、請求項6に記載の表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載表示装置のカバー部材には、安全性の観点から、車両の衝突事故が発生したときに乗員の頭部等がぶつかっても割れないほどの優れた耐衝撃性が要求される。
【0006】
近年では、特に、カバー部材の端部に優れた耐衝撃性(以下、「端部耐衝撃性」という)が要求される。これは、車載表示装置の搭載位置によっては、衝突事故の際に、カバー部材の端部に向けて斜め方向から、乗員の頭部がぶつかる場合があるためである。カバー部材がガラスである場合、カバー部材の端部は、加工疵が形成されており、特に割れが発生しやすい。
【0007】
本発明者らが特許文献1の表示装置について検討したところ、カバー部材の端部耐衝撃性が不十分である場合があった。
【0008】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、カバー部材の端部耐衝撃性に優れる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[16]を提供する。
[1]表示パネルと、上記表示パネルをカバーするカバー部材とを有する表示装置であって、上記カバー部材は、上記表示パネルに対面する第2主面と、上記第2主面とは反対側の第1主面と、上記第1主面と上記第2主面とに接続する端面とを有し、上記カバー部材における上記第1主面と上記端面とが形成する角Eを通る仮想線をD線とし、nを2以上の整数としたときに、上記D線上には、上記カバー部材を第1層として、第n層までの部材が配置され、上記カバー部材から上記第n層の部材までの間に隙間が設けられ、上記隙間における上記D線が通る領域の上記カバー部材の厚さ方向の距離である隙間量を単位mmでGとしたときに、下記式(1)〜(3)を満たす、表示装置。
(1)…B
1=b
1+b
2<1.33
(2)…b
1=(0.0982G+3.3083)K+0.1427G+0.3651
(3)…b
2=0.1401G+0.5424
ただし、上記式(2)中のKは、上記カバー部材のヤング率を単位GPaでE
1、上記カバー部材の厚さを単位mmでt
1、上記第n層の部材のヤング率を単位GPaでE
n、上記第n層の部材における上記D線が通る領域の上記カバー部材の厚さ方向の距離を単位mmでt
nとしたときに、以下のように定義される。
K=E
1t
12/(E
1t
12+…+E
nt
n2)
[2]仮想線Fに対する上記D線の角度が、30〜90°である、上記[1]に記載の表示装置。ただし、上記仮想線Fは、上記第1主面を通る、上記端面側に突出した仮想線である。
[3]上記仮想線Fに対する上記D線の角度が45°または60°である、上記[2]に記載の表示装置。
[4]上記B
1に関して、さらに、下記式(4)を満たす、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の表示装置。
(4)…B
1=b
1+b
2<1.21
[5]上記カバー部材がガラスである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の表示装置。
[6]上記ガラスが化学強化ガラスである、上記[5]に記載の表示装置。
[7]上記化学強化ガラスは圧縮応力層を有し、上記圧縮応力層の厚さが10μm以上であり、かつ、上記圧縮応力層における表面圧縮応力が500MPa以上である、上記[6]に記載の表示装置。
[8]上記カバー部材の厚さt
1が、0.5〜3.0mmである、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の表示装置。
[9]上記隙間は、上記カバー部材と第2層の部材との間に設けられている、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の表示装置。
[10]上記第2層の部材の材質が、ABS樹脂またはPC樹脂である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の表示装置。
[11]第3層の部材の材質が、ステンレス鋼、アルミニウムまたはマグネシウム合金である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の表示装置。
[12]第4層の部材の材質が、マグネシウム合金、ステンレス鋼またはアルミニウムである、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の表示装置。
[13]第5層の部材の材質が、ABS樹脂またはPC樹脂である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の表示装置。
[14]上記カバー部材の表面上に、機能層を有する、上記[1]〜[13]のいずれかに記載の表示装置。
[15]上記機能層は、反射防止層、防眩層および防汚層からなる群から選ばれる少なくとも1種の層を含む、上記[14]に記載の表示装置。
[16]車載表示装置である、上記[1]〜[15]のいずれかに記載の表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カバー部材の端部耐衝撃性に優れる表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
以下、本発明の一実施形態説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0014】
以下では、本発明の一実施形態の表示装置を便宜的に「本発明の表示装置」と呼ぶ場合がある。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の表示装置100を示す断面図である。表示装置100は、一例として、自動車などの車両に搭載される車載表示装置である。車載表示装置としては、カーナビゲーション装置;リアシートの乗員が映像等を視聴するためのリアシートエンタテインメント(RSE)装置;等が挙げられる。
【0016】
図1に示すように、表示装置100は、各部を収納する筐体106を有する。筐体106の内部には、バックライトユニット102が配置され、バックライトユニット102の上に、液晶パネルである表示パネル104が配置されている。
表示パネル104およびバックライトユニット102の構成は、特に限定されず、公知の構成を使用できる。例えば、表示装置100は、バックライトユニットの無い有機EL(Electro Luminescence)パネル、電子インク型パネル等を有する表示装置でよく、タッチパネル等を有してもよい。
【0017】
図1に示すように、カバー部材1が、粘着層14によって、表示パネル104に貼合されている。こうして、表示パネル104は、カバー部材1によってカバーされている。カバー部材1は、後述するように、例えばガラスである。
カバー部材1は、一方の主面である第1主面1aと、他方の主面である第2主面1bと、第1主面1aと第2主面1bとに接続する端面1dと、を有する。カバー部材1の第2主面1bが粘着層14を介して表示パネル104に貼合されている。すなわち、第2主面1bは表示パネル104に対面している。一方、第1主面1aは、いわゆる視認側に向いている。
粘着層14としては、例えば、液状の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる透明樹脂からなる層が挙げられる。粘着層14は、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルムまたはOCAテープであってもよい。粘着層14の厚さは、例えば、5〜400μmであり、50〜200μmが好ましい。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態の表示装置100の一部を拡大して示す断面図である。
図2には、カバー部材1の端部1cの近傍を拡大している。表示装置100の形態は、この実施形態に制限されない。
【0019】
表示装置100の筐体106は、複数の部材から構成されている。具体的には、カバー部材1の端部1cの裏面(第2主面1b)側において、カバー部材1の厚さ方向(
図2の上下方向)に、複数の部材が積層して配置されている。より詳細には、
図2に示すように、断面L字状の部材106dの内側かつ上面側に部材106cが配置され、さらに部材106bが配置され、これを断面L字状の部材106aが覆っている。
【0020】
ここで、カバー部材1における第1主面1aと端面1dとが形成する角Eを通る仮想線をD線(
図2中、符号Dで表す)とする。仮想線F(第1主面1aを通る、端面1d側に突出した仮想線)対するD線の角度θは、30〜90°の間から選択でき、45°または60°が好ましく、60°がより好ましい。
図2に示す表示装置100において、D線上には、カバー部材1を第1層として、第5層までの部材が配置されている。すなわち、
図2において、D線上には、カバー部材1を第1層として、第2層である部材106a、第3層である部材106b、第4層である部材106c、および、第5層である部材106dが配置されている。
【0021】
カバー部材としては、透明な樹脂部材、ガラスなどが挙げられ、ガラスが好ましい。
カバー部材がガラスである場合、化学強化ガラスがより好ましい。
化学強化ガラスの表面には、圧縮応力層が形成される。圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば10μm以上であり、15μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。
化学強化ガラスの圧縮応力層における表面圧縮応力(CS)は、例えば、500MPa以上が好ましく、650MPa以上がより好ましく、750MPa以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、1200MPa以下が好ましい。
ガラスに化学強化処理を施して化学強化ガラスを得る方法は、典型的には、ガラスをKNO
3溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却する方法が挙げられる。KNO
3溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、表面圧縮応力および圧縮応力層の厚さが所望の値となるように設定すればよい。
ガラス種としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス(SiO
2−Al
2O
3−Na
2O系ガラス)等が挙げられる。なかでも、強度の観点からは、アルミノシリケートガラスが好ましい。
ガラス材料としては、例えば、モル%表示で、SiO
2を50〜80%、Al
2O
3を1〜20%、Na
2Oを6〜20%、K
2Oを0〜11%、MgOを0〜15%、CaOを0〜6%およびZrO
2を0〜5%含有するガラス材料が挙げられる。
アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(例えば、AGC社製「ドラゴントレイル(登録商標)」)も好適に用いられる。
【0022】
カバー部材の厚さt
1は、0.5〜3.0mmが好ましく、0.7〜2.0mmがより好ましく、1.1〜2.0mmがさらに好ましく、1.1〜1.3mmが特に好ましい。
【0023】
カバー部材は、表面(特に、第1主面)上に機能層を有するカバー部材であってもよい。機能層の厚さはごくわずかであることから、機能層を有するカバー部材の厚さを、本発明におけるカバー部材の厚さt
1としてよい。
機能層は、カバー部材の表層を処理することにより形成してもよく、カバー部材の表面に他の層を積層することにより形成してもよい。
機能層は、反射防止層、防眩層、防汚層、遮光層などが挙げられ、反射防止層、防眩層および防汚層からなる群から選ばれる少なくとも1種の層を含むことが好ましい。
【0024】
反射防止層は、反射率を低減し、外光の映り込みによる眩しさを低減する層である。また、反射防止層を有するカバー部材を使用した場合、表示パネルからの光の透過率が向上し、表示画像を鮮明にできる。
反射防止層の材料は特に限定されず、光の反射を抑制できる材料であれば各種材料を利用でき、例えば、高屈折率層と低屈折率層とを積層した構成としてもよい。ここでいう高屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.9以上の層であり、低屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.6以下の層である。
高屈折率層と低屈折率層とは、それぞれ1層ずつ含む形態でもよく、それぞれ2層以上含む形態でもよい。高屈折率層と低屈折率層とをそれぞれ2層以上含む場合には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層することが好ましい。
高屈折率層、低屈折率層の材料は特に限定されず、要求される反射防止の程度や生産性等を考慮して選択できる。
高屈折率層を構成する材料としては、例えば、ニオブ、チタン、ジルコニウム、タンタルおよびシリコンからなる群から選択される1種以上含む材料を好ましく利用できる。具体的には、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、窒化シリコン等が挙げられる。
低屈折率層を構成する材料としては、例えば、ケイ素を含有する材料を好ましく利用できる。具体的には、酸化ケイ素(SiO
2)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料等が挙げられる。
反射防止層を形成する方法は特に限定されず、各種方法を利用可能である。特に、パルススパッタ、ACスパッタ、デジタルスパッタ等の方法により形成することが好ましい。
反射防止層の厚さは、例えば、100〜300nm程度である。
【0025】
防眩層は、外光を散乱させることにより、光源の映り込みによる反射光の眩しさを低減する層である。防眩層を備えるカバー部材を表示パネルに設けると、表示パネルの表示画像を見る際に、外光の反射を低減できるので、表示画像を鮮明に見られる。
防眩層を形成する方法は、特に限定されず、例えば、ガラスの表層をエッチングする方法;ガラスの表面に微粒子とマトリックスとを含むコーティング液を塗布し、マトリックスを硬化する方法;等が挙げられる。
【0026】
防汚層は、有機物や無機物の付着を抑制する層である。または、防汚層は、有機物や無機物が付着した場合でも、拭き取り等のクリーニングにより付着物が容易に除去できる層である。防汚層を設けると、カバー部材の表面(第1主面)を触っても指紋が残らず、清浄に保てる。そのため、表示パネルの表示画像を見る際に、表示画像を鮮明に見られる。
【0027】
表示装置の形状は長方形等の矩形が一般的であり、その場合、カバー部材も矩形となる。カバー部材が矩形である場合、例えば、長手方向:180〜850mm、短手方向:85〜180mmである。
【0028】
図3は、面取り加工されたカバー部材1を示す断面図である。カバー部材1がガラスである場合、ガラスであるカバー部材1は、面取り加工が施されていてもよい。面取り加工されたカバー部材1における端面1dは、例えば
図3に示すように、断面視したときに段階的に屈曲した面である。
面取り加工されたカバー部材1においても、第1主面1aと端面1dとが形成する角を角Eとし、角Eを通る仮想線をD線とする。仮想線F(第1主面1aを通る、端面1d側に突出した仮想線)対するD線の角度θは、上述したとおりである。
【0029】
再び
図2の説明に戻る。
図2において第2層である部材106aとしては、樹脂部材であればよく、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)またはPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)が好ましく、ABS樹脂がより好ましい。
部材106aのヤング率は、1〜5GPaが好ましく、2〜5GPaがより好ましい。
部材106aの厚さは、1〜10mmが好ましく、1〜5mmがより好ましく、2.0〜2.7mmがさらに好ましい。
【0030】
図2において第3層である部材106bとしては、金属部材であればよく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはマグネシウム合金が好ましく、ステンレス鋼がより好ましい。
部材106bのヤング率は、40〜220GPaが好ましく、70〜220GPaがより好ましい。
部材106bの厚さは、1〜10mm好ましく、1〜5mmがより好ましく、2.5〜5mmがさらに好ましい。
【0031】
図2において第4層である部材106cとしては、金属部材であればよく、例えば、マグネシウム合金、ステンレス鋼またはアルミニウムが好ましく、マグネシウム合金またはステンレス鋼がより好ましく、ステンレス鋼がさらに好ましい。マグネシウム合金としては、特に限定されず、Az31(Al:3%、Zn:1%)、Az91(Al:9%、Zn:1%)等が適宜用いられる。
部材106cのヤング率は、40〜220GPaが好ましく、70〜220GPaがより好ましい。
なお、部材106cとして特にマグネシウム合金を使用する場合、そのヤング率は40〜220GPaが好ましく、40〜80GPaがより好ましく、40〜50GPaがさらに好ましい。
部材106cの厚さは、1〜10mmが好ましく、2.5〜10mmがより好ましく、2.5〜4.5mmがさらに好ましい。
【0032】
図2において第5層である部材106dとしては、樹脂部材であればよく、例えば、ABS樹脂またはPC樹脂が好ましく、ABS樹脂がより好ましい。
部材106dのヤング率は、1〜5GPaが好ましく、2〜5GPaがより好ましい。
部材106dの厚さは、1〜10mmが好ましく、1〜5mmがより好ましく、1〜2mmがさらに好ましい。
【0033】
このように、本発明の表示装置は、nを2以上の整数としたときに、D線上には、カバー部材を第1層として、第n層までの部材が配置されている(
図2ではn=5)。
第n層までの各部材のヤング率および厚さは、例えば、上述したヤング率および厚さが挙げられ、後述する各式を満たすように適宜選択できる。この式を満たすことによりカバー部材の端部耐衝撃性に優れた表示装置を提供できるためである。
nは、2以上であればよく、3以上が好ましい。また、nは、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。
【0034】
図2に示すように、カバー部材1と部材106aとの間には、両面テープなどの粘着部材108が配置されている。粘着部材108は、粘着層14や表示パネル104に隣接している。カバー部材1と部材106aとは、互いの一部どうしが、粘着部材108によって接着されている。
【0035】
第1層であるカバー部材1と、第2層である部材106aとの間には、カバー部材1の厚さ方向に、粘着部材108の厚さ相当の隙間109が設けられている。
このように、本発明の表示装置においては、カバー部材から第n層の部材までの間に、隙間が設けられている。この隙間は、カバー部材と第2層の部材との間に設けられていることが好ましい。
そして、この隙間における、D線が通る領域のカバー部材の厚さ方向の距離である隙間量を単位mmでG(以下、「隙間量G」ともいう)という。
図2の場合、隙間量Gは隙間109のD線が通る領域のカバー部材1の厚さ方向の距離(
図2中、符号Gで表す)である。
隙間量Gとしては、0.1〜0.8mmが好ましく、0.1〜0.6mmがより好ましく、0.1〜0.4mmがさらに好ましい。
【0036】
カバー部材1の端部1cは、「カバー部材1の裏面(第2主面1b)側に隙間109が設けられている部分」と解釈してもよい。また、カバー部材1の端部1cは、「カバー部材1の角Eを含む部分」と解釈してもよい。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態の表示装置100を示す平面図である。
図4においては、粘着部材108を破線で示している。
粘着部材108は、例えば、カバー部材1の全周にわたって設けられる。このとき、
図4に示すように、部分的に、途切れて間を空けて設けられることが好ましい。これにより、例えば、表示装置100の筐体106に変形等が生じた際にも、カバー部材1にねじれが発生しにくくなり、その結果、表示パネル104の表示面(表示画像)に表示ムラが抑制されるという効果を奏する。
【0038】
これに対して、粘着部材108がカバー部材1の全周にわたって途切れずに設けられ、カバー部材1が筐体106に固定される場合がある。その場合、例えば、筐体106に変形等が生じた際に、カバー部材1にもねじれが発生しやすくなり、その結果、表示パネル104の表示面(表示画像)に表示ムラが生じるおそれがある。
【0039】
図5は、本発明の別の実施形態の表示装置400を示す断面図である。
図5においては、
図1〜
図4と同一の(または対応する)部分は同じ符号を用い、説明を省略する場合がある。
【0040】
図5に示す表示装置400においても、
図1〜
図4に基づいて説明した表示装置100と同様に、D線上には、カバー部材1を第1層として、第5層までの部材が配置されている。しかし、その態様は両者で異なる。
すなわち、
図5に示す表示装置400において、D線上には、カバー部材1を第1層として、第2層である部材106a、第3層であるバックライトユニット102、第4層である部材106c、および、第5層である部材106dが配置されている。
【0041】
t
nは、第n層の部材におけるD線が通る領域のカバー部材1の厚さ方向の距離(単位:mm)である。
図1〜
図4に基づいて説明した表示装置100では、基本的に、t
nは、第n層の部材の厚さに相当していた。しかし、
図5に示す表示装置400では、必ずしも、t
nは、第n層の部材の厚さに相当しない。
例えば、
図5に示す表示装置400において、t
2は、第2層である部材106aのL字部分をまたがる長さであり、t
3は、第3層であるバックライトユニット102の厚さの一部である。
【0042】
ところで、本発明の表示装置が車載表示装置である場合において、車載表示装置の搭載位置によっては、車両の衝突事故の際に、カバー部材の角Eに向けて、斜め方向から、D線に沿って、乗員の頭部がぶつかる場合がある。
このため、カバー部材1の端部1cには、車両の衝突事故時に乗員の頭部等がぶつかっても割れないほどの優れた耐衝撃性(端部耐衝撃性)が要求される。
【0043】
本発明の表示装置は、上述したように、nを2以上の整数としたときに、D線上には、カバー部材を第1層として、第n層までの部材が配置されている。
さらに、本発明の表示装置においては、カバー部材から第n層の部材までの間に、隙間が設けられている。
本発明者らは、このような表示装置について、下記式(1)〜(3)を満たす場合に、カバー部材の端部耐衝撃性が優れることを見出した。
【0044】
(1)…B
1=b
1+b
2<1.33
(2)…b
1=(0.0982G+3.3083)K+0.1427G+0.3651
(3)…b
2=0.1401G+0.5424
【0045】
ただし、式(2)中のK(以下、「K値」ともいう)は、カバー部材のヤング率を単位GPaでE
1、カバー部材の厚さを単位mmでt
1、第n層の部材のヤング率を単位GPaでE
n、第n層の部材におけるD線が通る領域のカバー部材の厚さ方向の距離を単位mmでt
nとしたときに、以下のように定義される。
K=E
1t
12/(E
1t
12+…+E
nt
n2)
【0046】
t
nは、第n層を構成する各部材の厚さに相当する場合もあるし、相当しない場合もある。
【0047】
K値は、表示装置において、頭部等がぶつかる箇所に配置された部材の剛性示す指数と言える。
例えば、カバー部材1を第1層として、第5層の部材まで配置されている(すなわち、n=5である)場合、K値の式は、以下のようになる。
K=E
1t
12/(E
1t
12+E
2t
22+E
3t
32+E
4t
42+E
5t
52)
【0048】
各部材のヤング率は、JIS K 7161および/またはJIS Z 2241で規定される引張試験により測定する。
【0049】
式(1)〜(3)の技術的意義について説明する。
まず、カバー部材が割れないためには、衝撃時に、カバー部材の端部の裏面に発生する応力(「端部裏面応力」ともいう)が低いことが求められる。
【0050】
本発明者らは、カバー部材の厚さt
1を1.1mm、1.3mmおよび2.0mmとすることによりK値をそれぞれ0.053、0.073および0.157とし、かつ、隙間量Gを0.1〜0.8mmの範囲で変化させた場合について、カバー部材の角EにD線に沿って球状の剛体模型を衝突させるヘッドインパクト試験(HIT:Head Impact Test)をシミュレーションした。シミュレーションにおいて、特に言及しない他の条件は固定した(以下、同様)。
シミュレーションには、市販の解析プログラムであるPAM−CRASH(日本ESI社製)を使用し、後出[実施例]の〈ヘッドインパクト試験による端部耐衝撃性の評価〉と同様の条件にて、HITをシミュレーションした(以下、同様)。
その結果、いずれのK値においても、隙間量Gが小さくなるに従い、衝撃時におけるカバー部材の端部裏面応力が線形に低下することが見出された。
【0051】
次に、本発明者らは、隙間量Gを0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.6mmおよび0.8mmとし、かつ、カバー部材の厚さt
1を変化させることによりK値を変化させた場合について、HITをシミュレーションした。その結果、いずれの隙間量Gにおいても、K値が小さくなるに従い、衝撃時におけるカバー部材の端部裏面応力の指数b
1が線形に低下することが見出された。具体的には、「b
1=(0.0982G+3.3083)K+0.1427G+0.3651」という式(2)が見出された。
【0052】
次いで、本発明者らは、K値を0.053に固定し、かつ、隙間量Gを変化させた場合について、HITをシミュレーションした。その結果、隙間量Gが小さくなるに従い、衝撃時におけるカバー部材の端部裏面応力の指数b
2が線形に低下することが見出された。具体的には、「b
2=0.1401G+0.5424」という式(3)が見出された。
【0053】
本発明者らは、さらに、HITをシミュレーションした。その結果、上述したカバー部材の端部裏面応力の指数b
1およびb
2の合計値B
1が1.33未満である場合、すなわち、「B
1=b
1+b
2<1.33」という式(1)を満足する場合には、カバー部材の角EにD線に沿って衝撃があったときにも、カバー部材の割れが抑制できる(カバー部材の端部耐衝撃性に優れる)ことが見出された。
【0054】
カバー部材の端部耐衝撃性がより優れるという理由から、上記B
1は1.21未満が好ましい。すなわち、「B
1<1.21」という式(4)を満足することがより好ましい。この場合、より強い衝撃があったときにも、カバー部材の割れを抑制できる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0056】
〈カバー部材の準備〉
カバー部材としては、それぞれ、アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(AGC社製「ドラゴントレイル」)に化学強化処理を施した矩形の化学強化ガラスを用いた。化学強化ガラスは、圧縮応力層の厚さ(DOL)を35μm、圧縮応力層における表面圧縮応力(CS)を750MPaとした。
このようなカバー部材のサイズは、長手方向:250mm、短手方向:145mmであり、カバー部材のヤング率(E
1)は74GPaであった。カバー部材の厚さ(t
1)については、後述する。
【0057】
〈ヘッドインパクト試験による端部耐衝撃性の評価〉
試験体を用いてヘッドインパクト試験を行ない、端部耐衝撃性を評価した。
【0058】
《試験体の作製》
準備したカバー部材を用いて、車載表示装置の試験体を作製した。
図6に基づいて、作製した試験体について説明する。
【0059】
図6は、試験体200を示す断面図である。
図6においては、
図1〜
図4の表示装置100と同一の(または対応する)部分は同じ符号を用い、説明を省略する場合がある。
図6に示すように、試験体200は、筐体106を有する。具体的には、部材106dの内部に、部材106c、部材106bおよび部材106aが配置され、筐体106を構成している。カバー部材1を第1層として、部材106aが第2層、部材106bが第3層、部材106cが第4層、部材106dが第5層となる。
筐体106の中に、バックライトユニット102と表示パネル104とが配置されている。バックライトユニット102の上面側の端部は、断面L字状のL字部材208により覆われている。L字部材208の上面と表示パネル104の下面側の端部とは、両面テープ207によって接着されている。カバー部材1が粘着層14によって、表示パネル104の上面に貼合されている。さらに、カバー部材1と部材106aとが粘着部材108によって接着されている。試験体200において、粘着部材108は、カバー部材1の全周にわたって途切れずに絶え間なく貼り付けた。
【0060】
試験体200における各部の詳細は、以下のとおりである。
・粘着層14…OCA(日栄化工株式会社製「MHM−FWD」)
・表示パネル104…ソーダライムガラス(板厚1.1mm)の両面に偏光板(材質:TAC)を貼合した代替品を用いた。
・バックライトユニット102…板状体102a(材質:PC、板厚:4mm)を凹状体102b(材質:アルミニウム、板厚:1mm)で覆った代替品を用いた。
・両面テープ207…材質:PET、テープ厚:0.5mm
・L字部材208…材質:PVC、板厚:1mm、L字1辺の長さ:5mm
・第2層の部材106a…材質:ABS樹脂、ヤング率(E
2):2.2GPa
・第3層の部材106b…材質:ステンレス鋼、ヤング率(E
3):206GPa
・第4層の部材106c…材質:マグネシウム合金(Al:3%、Zn:1%)、ヤング率(E
4):45GPa
・第5層の部材106d…材質:ABS樹脂、ヤング率(E
5):2.2GPa
・粘着部材108…材質:PET、厚さ:0.1〜0.8mm(隙間量Gと同じ厚さ)
【0061】
図6中のL
1〜L
3で表されるサイズは、以下のとおりである。また、
図6中のGおよびt
1〜t
5で表されるサイズは、下記表1に示す。
・L
1:1mm
・L
2:8mm
・L
3:2mm
【0062】
《ヘッドインパクト試験》
図7は、ヘッドインパクト試験を示す模式図である。
図7では、試験体200を簡略化しており、カバー部材1のみ図示している。
作製した試験体200を、図示しないスポンジ(厚さ:27mm)上に配置して固定し、球状の剛体模型300(材質:鉄、直径:165mm、質量:12.9kg)を、カバー部材1の角Eに向けて、D線に沿って、衝突させた。剛体模型300を衝突させる角度(すなわち、D線の角度θ)は、カバー部材1の第1主面1aを通る、端面1d側に突出した仮想線Fに対して、60°にした。
試験体200においては、
図7に示すように、第1層のカバー部材1から、第5層の部材106dまでがD線上に配置されていた。また、nは2〜5であるが、第n層の部材におけるD線が通る領域のカバー部材1の厚さ方向の距離(t
n)は、第n層を構成する各部材の厚さに相当していた。
【0063】
ヘッドインパクト試験は、剛体模型300の衝突時のエネルギーが100Jとなるようにした「HIT試験1(HIT−1)」と、同エネルギーが150Jとなるようにした「HIT試験2(HIT−2)」とを行なった。
【0064】
《耐衝撃性の評価》
ヘッドインパクト試験後に、カバー部材の割れの有無を目視で確認した。割れが無かった場合には「A」を、割れが有った場合には「B」を下記表1に記載した。「A」であれば耐衝撃性に優れる。
【0065】
【表1】
【0066】
上記表1に示すように、式(1)「B
1=b
1+b
2<1.33」を満足する場合には、HIT試験1において、カバー部材の割れを抑制できた。
さらに、式(4)「B
1=b
1+b
2<1.21」を満足する場合には、HIT試験2においても、カバー部材の割れを抑制できた。
【0067】
次に、別の試験体を用いて、上記と同様してヘッドインパクト試験を行ない、端部耐衝撃性を評価した。ここで用いた試験体では、D線上の部材の数を増減させた。具体的には、D線上に第3層までの部材が配置された試験体、D線上に第4層までの部材が配置された試験体、および、D線上に第6層までの部材が配置された試験体の3種を上記と同様にして作製し、これらの試験体について、ヘッドインパクト試験を行なった。結果を下記表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
上記表2に示すように、部材の層数nに拘らず、式(1)「B
1=b
1+b
2<1.33」を満足する場合には、HIT試験1において、カバー部材の割れを抑制できた。特に層数nが3以上のときにカバー部材の割れを抑制できた。
さらに、式(4)「B
1=b
1+b
2<1.21」を満足する場合には、HIT試験2においても、カバー部材の割れを抑制できた。