(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6747986
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】水系アルカリイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20200817BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20200817BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20200817BHJP
C07H 15/04 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
H01M10/36 A
H01M4/58
H01M4/62 Z
C07H15/04 F
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-574857(P2016-574857)
(86)(22)【出願日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】JP2016054106
(87)【国際公開番号】WO2016129668
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2019年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-25845(P2015-25845)
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 重人
(72)【発明者】
【氏名】中本 康介
(72)【発明者】
【氏名】加納 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 修
(72)【発明者】
【氏名】宮地 伸英
(72)【発明者】
【氏名】藤田 賢志
【審査官】
福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−086402(JP,A)
【文献】
特表2011−519122(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/133527(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/094689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/36−10/39
H01M 4/00− 4/62
C07H 15/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極と、ゲル状の電解質を備える水系
ナトリウムイオン二次電池であって、
前記ゲル状の電解質は電解質塩、水及びアルドビオン酸誘導体を含有
し、
前記アルドビオン酸誘導体は下記式(1):
【化1】
(式中、Yは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい、直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表し、X1乃至X8は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表し、該脂肪族基は、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を含んでいてもよい。)で表される化合物であることを特徴とする
、水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記アルドビオン酸誘導体が下記式(2):
【化2】
(式中、R
1及びR
2の一方は水素原子を表し、他方はエステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、請求項
1に記載の水系
ナトリウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記アルドビオン酸誘導体が下記式(3):
【化3】
(式中、Y
1は、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を表し、n
1及びn
2は、繰り返し単位の単位数であって、それぞれ独立して、1乃至23の整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、請求項
1に記載の水系
ナトリウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記アルドビオン酸誘導体が下記式(4):
【化4】
(式中、n
1及びn
2は、繰り返し単位の単位数であって、それぞれ独立して、1乃至23の整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、請求項
1に記載の水系
ナトリウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記ゲル状の電解質が水溶性ポリマーを更に含む、請求項1乃至請求項4のいずれか一
項に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーがゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記正極が正極活物質、導電補助材及びバインダーを含み、前記負極が負極活物質、導電補助材及びバインダーを含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記正極活物質及び前記負極活物質はともに、ナトリウムイオンを挿入および脱離可能なナトリウム−遷移金属複合酸化物からなるが、但し、両活物質は相異なるものであることを特徴とする、請求項7に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記正極活物質がCo、Ni、Mn、Cr、V、Ti及びFeからなる群から選択される1種以上の遷移金属元素を含有するナトリウム−遷移金属複合酸化物からなることを特徴とする、請求項8に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項10】
前記正極活物質がオリビン型NaFePO4又はオリビン型NaMnPO4であることを特徴とする、請求項9に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項11】
前記負極活物質がV、Ti及びFeからなる群から選択される1種以上の遷移金属元素を含有するナトリウム−遷移金属複合酸化物からなることを特徴とする、請求項8に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項12】
前記負極活物質がナシコン型NaTi2(PO4)3であることを特徴とする、請求項11に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項13】
前記導電補助材がカーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケル及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項14】
前記導電補助材がアセチレンブラックであることを特徴とする、請求項13に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項15】
前記バインダーがポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体及びエチレン−アクリル酸共重合体からなる群から選択さ
れることを特徴とする、請求項7に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項16】
前記バインダーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする、請求項15に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項17】
前記電解質塩がNaNO3、NaOH、NaF、NaCl、NaBr、NaI、NaClO4、Na2SO4、Na(CH3COO)、NaBF4、NaPF6、NaN(CF3SO2)2、NaN(C2F5SO2)2、Na2O、Na2CO3及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1乃至請求項16のうち何れか一項に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項18】
前記電解質塩がNaClO4又はNa2SO4であることを特徴とする、請求項17に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状の電解質を備えた水系アルカリイオン二次電池、特に水系ナトリウムイオン二次電池に関し、詳細には、アルドビオン酸誘導体を用いたイオン伝導性のゲル状の電解質を備えた水系ナトリウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高電圧・高エネルギー密度という利点を有し、かつ、自己放電率も低いことから、鉛電池、ニッケルカドミウム電池等の水溶液系二次電池に代わるものとして、非水電解液二次電池が注目されており、その一部は既に商品化されている。例えば、ノート型パソコンや携帯電話等は、その半数以上が非水電解液二次電池によって駆動している。
【0003】
しかし、非水電解液電池では、電解液としてエステル系化合物及びエーテル系化合物等の可燃性有機溶媒が一般に用いられており、該可燃性有機溶媒が電池の破裂、発火等の問題を引き起こす大きな原因の一つとなっている。
【0004】
このような問題を解決する一例として、従来用いられている液状の電解質を高分子中に含浸させたポリマーゲル電解質が、電池外部への液漏れによる電解液の着火の問題を解決する手法として提案されている。しかしながら、該ポリマーゲル電解質を用いた電池は、液漏れ以外に対する安全性の確保という点では、これまでの非水系電解質を用いた電池と同様の問題(例えば、電池異常時の短絡・過充電等)を抱えており、電池そのものが根本的に安全であるわけではない。
【0005】
また、近年、新たな様式の電池としては、1MのLi
2SO
4を水溶性ポリマーであるポリビニルアセトアミドでゲル化させて、ゲル電解質とした水系リチウムイオン電池が報告されている(特許文献1)。しかしながら、上記リチウムイオン電池は、その原料となる金属リチウムはレアメタルであり、高コストであるとともに、資源の埋蔵量と供給量バランスの観点から、大型化された二次電池の普及には抜本的な課題が残されている。
【0006】
この観点から、金属リチウムと比較して安価で埋蔵量の豊富なナトリウムを用いた水系ナトリウムイオン二次電池に関心が集まっている。これまでに、ナトリウム二次電池を構成する電極活物質に関する学術文献や特許文献がいくつか報告されており、例えば、層状岩塩型構造を有する結晶NaFeO
2からなるもの(非特許文献1)や、ナシコン型構造を有する結晶Na
3V
2(PO
4)
3から成るもの(非特許文献2)がある。一方、負極に関しての知見は少なく、正極活物質と負極活物質の組み合わせにより、フォーミュレーションされた報告が一部あるだけである(例えば、特許文献2)。しかしながら、未だ実用化に耐え得るだけの十分な放電電圧や放電容量、充放電サイクルは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−102086号公報
【特許文献2】特開2013−89391号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S.Okada,Y.Takahashi,T.Kiyabu,T.Doi,J.YamakiandT.Nishida,Abstract of 210th ECS Meeting, B2,#201,(2006).
【非特許文献2】野口良典、小林栄次、L.S.Plashnitsa、土井貴之、岡田重人、山木準一、第49回電池討論会,2E07(2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで提案された水系リチウムポリマーゲル電池は、ゲル化剤を使用していない水系電解液の電池と比較して、ゲル化剤の存在及び溶液の高粘度化に起因してリチウムイオンの移動が低下し、これによる電気伝導度の低下や充放電容量の劣化がみられ、電解液をゲル化させることによる電池特性の低下という別の問題が生じることが懸念されている。また、金属リチウムを原料とした大型化された二次電池では、コスト、埋蔵量と供給量の観点から汎用的に普及するには抜本的な課題が残されている。
【0010】
そこで、本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、従来提案された非水系の溶媒を使用した電池に付随する安全性への不安の問題の解決を図り、且つ、電解液のゲル化による電池特性の低下、充放電サイクルという問題をも解決できる、新規な水系アルカリイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、水系アルカリイオン二次電池の電解質として、アルドビオン酸誘導体、電解質塩及び水とを含むゲル状の電解質を採用することにより、従来の電解質において問題とされた有機溶媒の使用における安全性確保の問題を解決し、且つ、良好なイオン伝導性を有し、従来の液状の電解質を用いた電池と同程度又はそれ以上の充放電特性が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、第1観点として、正極および負極と、ゲル状の電解質を備える水系アルカリイオン二次電池であって、前記ゲル状の電解質は電解質塩、水及びアルドビオン酸誘導体を含有することを特徴とするアルカリイオン二次電池に関する。
第2観点として、前記水系アルカリイオン二次電池が水系ナトリウムイオン二次電池であることを特徴とする、第1観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
【0013】
第3観点として、前記アルドビオン酸誘導体が下記式(1):
【化1】
(式中、Yは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい、直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表し、X
1乃至X
8は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表し、該脂肪族基は、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を含んでいてもよい。)で表される化合物であることを特徴とする、第1観点又は第2観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
【0014】
第4観点として、前記アルドビオン酸誘導体が下記式(2):
【化2】
(式中、R
1及びR
2の一方は水素原子を表し、他方はエステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、第1観点又は第2観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
【0015】
第5観点として、前記アルドビオン酸誘導体が下記式(3):
【化3】
(式中、Y
1は、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を表し、n
1及びn
2は、繰り返し単位の単位数であって、それぞれ独立して、1乃至23の整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、第1観点又は第2観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
【0016】
第6観点として、前記アルドビオン酸誘導体が下記式(4):
【化4】
(式中、n
1及びn
2は、繰り返し単位の単位数であって、それぞれ独立して、1乃至23の整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする、第1観点又は第2観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
【0017】
第7観点として、前記ゲル状の電解質が水溶性ポリマーを更に含む、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第8観点として、前記水溶性ポリマーがゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、第7観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第9観点として、前記正極が正極活物質、導電補助材及びバインダーを含み、前記負極が負極活物質、導電補助材及びバインダーを含むことを特徴とする、第1観点乃至第8観点のいずれか一つに記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第10観点として、前記正極活物質及び前記負極活物質はともに、ナトリウムイオンを挿入および脱離可能なナトリウム−遷移金属複合酸化物からなるが、但し、両活物質は相異なるものであることを特徴とする、第9観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第11観点として、前記正極活物質がCo、Ni、Mn、Cr、V、Ti及びFeからなる群から選択される1種以上の遷移金属元素を含有するナトリウム−遷移金属複合酸化物からなることを特徴とする、第10観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第12観点として、前記正極活物質がオリビン型NaFePO
4又はオリビン型NaMnPO
4であることを特徴とする、第11観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第13観点として、前記負極活物質がV、Ti及びFeからなる群から選択される1種以上の遷移金属元素を含有するナトリウム−遷移金属複合酸化物からなることを特徴とする、第10観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第14観点として、前記負極活物質がナシコン型NaTi
2(PO
4)
3であることを特徴とする、第13観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第15観点として、前記導電補助材がカーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケル及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、第9観点に記載の水系アルカ
リイオン二次電池に関する。
第16観点として、前記導電補助材がアセチレンブラックであることを特徴とする、第15観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第17観点として、前記バインダーがポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム
、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体及びエチレン−アクリル酸共重合体からなる群から選択されることを特徴とする、第9観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第18観点として、前記バインダーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする、第17観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第19観点として、前記電解質塩がNaNO
3、NaOH、NaF、NaCl、NaBr、NaI、NaClO
4、Na
2SO
4、Na(CH
3COO)、NaBF
4、NaPF
6、NaN(CF
3SO
2)
2、NaN(C
2F
5SO
2)
2、Na
2O、Na
2CO
3及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、第1観点乃至第18観点のうち何れか一つに記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
第20観点として、前記電解質塩がNaClO
4又はNa
2SO
4であることを特徴とする、第19観点に記載の水系アルカリイオン二次電池に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゲル状の電解質を有する水系アルカリイオン二次電池によれば、溶媒として非水系の溶媒ではない水を用いていることにより、電池の破損による液漏れ等の原因による引火や爆発の危険性を回避できる。このため、一般のナトリウムイオン電池や非水系溶媒の電解質をゲル化させて用いている電池と比較すると安全性を大幅に向上させることができる。
【0019】
また本発明の水系アルカリイオン二次電池は、従来提案された水系ナトリウムイオン電池にみられた電池性能の低下が抑制され、従来の液状の電解質を用いた電池と同程度又はそれ以上の充放電特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の例1(1)で合成された活物質NaTi
2(PO
4)
3のX線回折図である。
【
図2】本発明の例2(1)で合成された活物質Na
2FeP
2O
7のX線回折図である。
【
図3】本発明の例3で作製された正極Na
2FeP
2O
7、負極NaTi
2(PO
4)
3評価用ビーカー型フルセルの概略図である。
【
図4】本発明の例3で作製された正極Na
2FeP
2O
7、負極NaTi
2(PO
4)
3評価用ビーカー型フルセルの電流密度2.0mA/cm
2でのサイクル特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の水系アルカリイオン二次電池は、正極および負極と、ゲル状の電解質を備えるものであって、前記ゲル状の電解質は電解質塩、水及びアルドビオン酸誘導体を含有する。
そして、特に本発明は、水系アルカリイオン二次電池の電解質として、アルドビオン酸誘導体を含むゲル状の電解質を用いていることを大きな特徴とする。
以下、各構成成分について説明する。
【0022】
[正極]
本発明の水系アルカリイオン二次電池に用いる正極としては、従来より、アルカリイオン二次電池、特にナトリウム二次電池の正極として提案されている正極を使用することができ、その中でもナトリウムに対して4V以下の放電平坦部をもつものが好適である。
正極は、例えば、正極活物質と導電補助材とバインダーとを含むものから構成され、具体的には、該正極活物質と導電補助材にバインダーを加えた正極材料を集電体に担持(積層)することによって製造される。
【0023】
集電体に、正極材料を担持する方法としては、例えば、(1)電極合材を加圧成形する方法、(2)有機溶媒等と正極材料を混合して、正極材料のペーストを調製し、そのペーストを、集電体に塗工し、さらに、集電体に塗工したペーストを乾燥した後、プレスする等して固着する方法が挙げられる。
【0024】
前記有機溶媒としては、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系溶媒;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0025】
集電体に、ペーストを塗工する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。
【0026】
前記正極活物質としては、ナトリウムイオンを挿入および脱離可能なナトリウム−遷移金属複合酸化物からなり、具体的には、ナトリウムイオンの挿入又は脱離に伴って価数が変化する遷移金属元素としてCo、Ni、Mn、Cr、V、Ti、及びFeからなる群から選択される1種以上を含有するナトリウム−遷移金属複合酸化物からなるものが好ましく、例えば、オリビン型NaFePO
4、オリビン型NaMnPO
4、Na
2FePO
4F、O3型NaFeO
2、O3型NaCrO
2、O3型NaFe
0.5Co
0.5O
2、P2型Na
2/3Fe
0.5Mn
0.5O
2、Na
3V
2(PO
4)
3、Na
3V
2(PO
4)
2F
3、及びNa
4Co
3(PO
4)
2P
2O
7等の複合酸化物を挙げることができる。
【0027】
但し、正極活物質は、後述する負極に含まれるナトリウム−遷移金属複合酸化物とは異なる複合酸化物であることが好ましい。
本発明では、前記正極活物質の中でも、オリビン型NaFePO
4又はオリビン型NaMnPO
4を用いることがより好ましい。
【0028】
前記導電補助材としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブなどの炭素材料、或いは、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケルなどの金属又は金属酸化物を使用することが可能である。
これら導電補助材の形状としては、例えば、粉状、球状、フレーク状、フィラメント状、繊維状、スパイク状、針状などから選択される形状を採用することができる。
本発明において、使用する導電補助材としては、アセチレンブラックであることが好ましい。
【0029】
前記バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム
、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体又はエチレン−アクリル酸共重合体を用いることが可能である。
中でも、本発明において、使用するバインダーとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが好ましい。
【0030】
さらに、前記集電体としては、ステンレスメッシュ、ニッケルメッシュ、金メッシュ等を用いることができる。
【0031】
[負極]
本発明の水系アルカリイオン二次電池において用いる負極としては、従来より、アルカリイオン二次電池、特にナトリウムイオン二次電池の負極として提案されている負極を使用可能である。
負極は、例えば、負極活物質と導電補助材とバインダーとを含むものから構成され、具体的には、該負極活物質と導電補助材にバインダーを加えた負極材料を集電体に担持(積層)することによって製造される。
ここで、集電体に負極材料を担持する方法としては、例えば、上記[正極]において説明した方法と同様の方法が挙げられ、また負極に用いられる導電補助材、バインダー及び集電体は、上記[正極]において挙げたものを好適に使用できる。
【0032】
前記負極活物質としては、ナトリウムイオンを挿入および脱離可能なナトリウム−遷移金属複合酸化物からなり、具体的にはナトリウムイオンの挿入および脱離に伴って価数が変化する遷移金属元素としてV、Ti、及びFeからなる群から選択される1種以上を含有するナトリウム−遷移金属複合酸化物からなるものが好ましく、例えば、ナシコン型NaTi
2(PO
4)
3、NaV
2(PO
4)
3等の複合酸化物を挙げることができる。
【0033】
但し、負極活物質は、前述した正極に含まれるナトリウム−遷移金属複合酸化物とは異なる複合酸化物であることが好ましい。
本発明では、前記負極活物質の中でも、ナシコン型NaTi
2(PO
4)
3を使用することがより好ましい。
【0034】
[ゲル状の電解質]
<アルドビオン酸誘導体>
本発明に用いられるアルドビオン酸誘導体としては、アルドビオン酸から誘導される化合物であって、電解質をゲル化させることができれば特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化5】
(式中、Yは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい、直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表し、X
1乃至X
8は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表し、該脂肪族基は、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を含んでいてもよい。)
【0036】
上記直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基からn−トリコシル基までの直鎖状脂肪族基;iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基等の他、炭素原子数が23までの範囲で且つ任意の箇所で分岐している分岐状脂肪族基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等の単環式脂肪族基、並びにノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ヘキサシクロヘプタデカニル基、アダマンチル基、ジアマンチル基、スピロデカニル基、スピロウンデカニル基等の多環式脂肪族基等の環状脂肪族基が挙げられる。
【0037】
また、上記脂肪族基は、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を含んでいてもよい。
したがって、本発明における「脂肪族基」には、脂肪族部分からなる基の他、脂肪族部分の中に上記エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合がとり入れられた基が該当する。
【0038】
本発明において、上記アルドビオン酸誘導体としては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【化6】
(式中、R
1及びR
2の一方は水素原子を表し、他方はエステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基を表す。)
【0039】
上記式(2)において、R
1及びR
2が表す直鎖状、分岐状又は環状の炭素原子数1乃至23の脂肪族基は、式(1)における脂肪族基と同義である。
【0040】
また、本発明において、上記アルドビオン酸誘導体としては、下記式(3)で表される化合物がより好ましい。
【化7】
(式中、Y
1は、エステル結合、エーテル結合、ウレア結合、芳香環、二重結合又は三重結合を表し、n
1及びn
2は、繰り返し単位の単位数であって、それぞれ独立して、1乃至23の整数を表す。)
【0041】
さらに、本発明において、上記アルドビオン酸誘導体としては、下記式(4)で表される化合物が特に好ましい。
【化8】
(式中、n
1及びn
2は、繰り返し単位の単位数であって、それぞれ独立して、1乃至23の整数を表す。)
【0042】
本発明に用いられるアルドビオン酸誘導体の具体例としては、例えば、N−オレイルラクトビオナミドが挙げられる。
【0043】
本発明に用いられるアルドビオン酸誘導体は公知の方法で合成することができ、例えば、上記式(1)乃至式(4)で表される化合物は、特許第3516460号公報に従って、合成することができる。
【0044】
本発明における水系アルカリイオン二次電池に用いるゲル状の電解質において、前記アルドビオン酸誘導体の割合は、得られるゲル状の電解質の総質量の0.1乃至30質量%、好ましくは、0.5乃至20質量%、より好ましくは、1乃至5質量%である。なお、本明細書等では、質量%をwt%とも表記する。
【0045】
<水溶性ポリマー>
本発明では、上記ゲル状の電解質は水溶性のポリマーを更に含んでいても良い。水溶性ポリマーを使用することにより、ゲル状の電解質の機械的強度を高めることができ、またゲルの離水防止剤としての役割をも担えることから有用である。
前記水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。
【0046】
前記水溶性ポリマーの中でも、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドンであることが好ましく、特にポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。
【0047】
本発明における水系アルカリイオン二次電池に用いるゲル状の電解質において、前記水溶性ポリマーが使用される場合のその割合は、得られるゲル状の電解質の総質量の0.1乃至30質量%、好ましくは、0.5乃至20質量%、より好ましくは、1乃至5質量%である。
【0048】
<電解質塩>
本発明においてゲル状の電解質に用いられる電解質塩としては、従来より、アルカリイオン二次電池、特にナトリウムイオン二次電池に使用可能であるとして提案されている電解質塩が使用できる。具体例としては、例えば、NaNO
3、NaOH、NaF、NaCl、NaBr、NaI、NaClO
4、Na
2SO
4、Na(CH
3COO)、NaBF
4、NaPF
6、NaN(CF
3SO
2)
2、NaN(C
2F
5SO
2)
2、Na
2O、Na
2CO
3等のナトリウム塩及びこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
本発明におけるゲル状の電解質に用いられる電解質塩(ナトリウム塩)としては、特にNaClO
4又はNa
2SO
4であることが好ましい。
【0050】
本発明におけるゲル状の電解質において、電解質塩は、得られるゲル状の電解質に0.01乃至5mol/kg、好ましくは、1乃至3mol/kgの濃度で用いられる。
【0051】
<セパレータ>
本発明のアルカリイオン二次電池は、通常、セパレータをさらに備えている。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体等の材質からなる多孔質フィルム、不織布、織布等の形態を有する材料を用いることができる。
【0052】
セパレータの厚さは、電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。セパレータの厚さは、一般に、5乃至200μm程度であることが好ましく、より好ましくは5乃至40μm程度である。
【0053】
<アルカリイオン二次電池の製造方法>
本発明において、アルカリイオン二次電池がセパレータを備える場合には、例えば、上述の正極、セパレータおよび負極を、この順に積層および巻回することによって、正極、セパレータおよび負極から構成される電極群を得た後、この電極群を電池缶内に収納し、電池缶内にゲル状の電解質を注入して、電極群にゲル状の電解質を含浸させることによって、アルカリイオン二次電池を製造することができる。
【0054】
電極群の形状としては、例えば、この電極群を巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円形、楕円形、長方形、角が取れたような長方形等をなすような形状が挙げられる。
【0055】
また、アルカリイオン二次電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型等の形状が挙げられる。
【実施例】
【0056】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
本実施例に用いた下記のアルドビオン酸誘導体(5)は、特許第3516460号公報に従って合成した。
【化9】
【0058】
[例1]
(1)活物質NaTi
2(PO
4)
3の合成
負極となるNaTi
2(PO
4)
3はsol−gel法にて合成した。過酸化水素30%溶液40mLに純度97%のTi(OCH
2CH
2CH
2CH
3)
4試薬0.01molを溶かし、そこに28%のアンモニア水15mLおよびTiの2倍モル量のクエン酸を加え、さらにNa
2CO
3を溶かして0.25mol/Lに調製した水溶液10mLとNH
4H
2PO
4を溶かして1.5mol/Lに調製した水溶液10mL、エチレングリコール0.02molを加えて、80℃で1〜2時間で蒸発乾固させた後、140℃でさらに2〜4時間加熱して橙色のゲルを得た。これを350℃および800℃でそれぞれ大気中焼成することでNaTi
2(PO
4)
3を得た(
図1)。同図のXRDパターンから、主相はICDD#33−1296と一致し、ナシコン型NaTi
2(PO
4)
3単相と同定された。
【0059】
(2)負極の作製
上記例1(1)で合成した活物質とアセチレンブラック(AB)を70:25の質量比で混合し、遊星ボールミルを用いて400rpm、1時間カーボンコート処理を行った。得られた粉末(活物質およびAB)を800℃、1時間、窒素雰囲気下で熱処理した。得られた粉末(活物質/C)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を質量比95:5で混合し、ペレットに成形したものを負極とした。
【0060】
[例2]
(1)活物質Na
2FeP
2O
7の合成
正極となるNa
2FeP
2O
7は固相法にて合成した。NaH
2PO
4とFe(COO)
2・2H
2Oを化学量論比2:1で混合し、Ar雰囲気下で600℃、6時間焼成することでNa
2FeP
2O
7を得た(
図2)。同図のXRDパターンから、主相はNa
2FeP
2O
7と同定された。
【0061】
(2)正極の作製
上記例2(1)で合成した活物質とアセチレンブラック(AB)を70:25の質量比で混合し、遊星ボールミルを用いて300rpm、10時間カーボンコート処理を行った。得られた粉末(活物質およびAB)を600℃、10時間、Ar雰囲気下で熱処理した。得られた粉末とPTFEを質量比95:5で混合し、ペレットに成形したものを正極とした。
【0062】
[例3:水系ナトリウムイオン電池フルセルの作製]
上記例(1)及び(2)で得られた上記Na
2FeP
2O
7、NaTi
2(PO
4)
3をそれぞれアニール処理したアニール品についてペレットを作製しそれぞれ正極、負極とし、電解質として、電解質塩のNa
2SO
4を超純水に溶かし作製した2M Na
2SO
4水系電解液と、作製した電解液にN−オレイルラクトビオナミド(LA608)、ラクトビオン酸(LA)をそれぞれ3wt%添加したものを使用し、ビーカー型のフルセルを作製した(
図3)。
【0063】
[例4:水系ナトリウムイオン電池フルセルの充放電プロファイル]
図4に電流密度2.0mA/cm
2における上記例3で得られたナトリウムイオン電池フルセルのサイクル特性を示す。LA608を添加した場合は、無添加の電解液および他の添加剤を添加した電解液よりサイクル特性が改善している。これは、電解液がゲル化することにより緩衝効果が高まり、電解質がアルカリ性になることによる作用極の劣化が抑えられたためと考えられる。