(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス排出路は、前記側壁部の外側に配置されたガス排出部に接続されており、該ガス排出部は、前記ガス排出路と接続される内側から外側に向かうにしたがって開口が狭くなるように形成されており、
前記成膜方法は、該ガス排出路を通じて前記反応ガスを外部に排出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜方法。
反応室を加熱するステップをさらに含み、前記反応室を加熱するステップは、前記反応室内に配置されたサセプタの外周に設けられたサセプタリング部の使用によって前記反応ガスを予熱するステップを含み、
前記サセプタリング部は、前記側壁部に配置されたフランジ部に載置される第1リング部と、該第1リング部の上面に配置された凹部に載置される第2リング部を含み、該第2リング部は、前記サセプタの周縁部と前記第1リング部の内側周縁部との間の離間部が狭くなるような内径を有するものであり、
前記成膜方法が、第2リング部の使用により、前記反応ガスが前記サセプタの周縁から該サセプタの下面側に流れ込むのを阻止するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成膜方法。
前記ガス排出路は、前記側壁部の外側に配置されたガス排出部に接続されており、該ガス排出部は、前記ガス排出路と接続される内側から外側に向かうにしたがって開口が狭くなるように形成されることを特徴とする請求項6又は7に記載のエピタキシャル成長装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態となる、エピタキシャル成長装置、および、この装置で行われるエピタキシャル成長を用いた成膜方法について説明する。
【0018】
(エピタキシャル成長装置の構成概要)
まず、本発明の実施形態となるエピタキシャル成長装置1の構成について概説する。
図1はエピタキシャル成長装置1の全体を示す断面図である。また、
図2はエピタキシャル成長装置1の反応室2の構成を示す分解斜視図、
図3はエピタキシャル成長装置1の反応室2の外側の構成を示す分解斜視図である。
【0019】
エピタキシャル成長装置1は、基板W上に、例えばシリコンなどの膜をエピタキシャル成長させるための成膜装置である。
【0020】
エピタキシャル成長装置1は反応室2を有する。反応室2は、基板Wが載置されるサセプタ3と、側壁部4と、天井部5とから構成される。
【0021】
サセプタ3は、上面視において円形状の板状部材であり、基板Wより若干大きくなるように構成されている。サセプタ3には、基板Wを載置するための基板用凹部3aが設けられている。サセプタ3は、複数の腕部を有するサセプタ支持部6により支持されている。
【0022】
サセプタ支持部6は、サセプタ3を支持しながらサセプタ3を昇降させる。サセプタ3の基板Wが載置される面の昇降範囲は、サセプタ3が、基板W上に成膜が行われる成膜位置P1から、基板Wのエピタキシャル成長装置1への出し入れを行う基板搬送位置P2までの間である。そして、サセプタ支持部6は、この成膜位置P1において、サセプタ支持部6の軸を回転中心として回転することによって、サセプタ3および基板Wを回転させることが可能であるように構成されている。
【0023】
サセプタ3は、成膜位置P1においてその周囲に環状のサセプタリング7が配されている。サセプタリング7は、詳しくは後述するが、第1リング11と、第1リング11上に載置された第2リング12とからなる。サセプタリング7は、反応室2の側壁部4に設けられたフランジ部13により支持されている。
【0024】
天井部5は、天井板21と、天井板21を支持する支持部22とからなる。天井板21は、透過性を有するものであり、天井板21の外側上方に設けられた加熱手段23(例えばハロゲンランプ)および上部リフレクタ26からの熱を透過して反応室2内を加熱することができるように構成されている。即ち、本実施形態におけるエピタキシャル成長装置1はコールドウォールタイプのエピタキシャル成長装置である。本実施形態では、天井板21として石英を用いている。
【0025】
天井板21を支持する支持部22は環状である。支持部22の内縁より内側の貫通穴24の基板W側の端部に天井板21が固定されている。固定方法としては、溶接が挙げられる。
【0026】
側壁部4は、環状の上部側壁部31と、環状の下部側壁部32とからなる。下部側壁部32の内周側には、前述したフランジ部13が設けられている。このフランジ部13よりも下方側に、基板搬送口30が設けられている。上部側壁部31は、その上面に、支持部22の突出部25の外側の斜面部に対応する斜面部を有している。この上部側壁部31の斜面上に支持部22が配置される。
【0027】
下部側壁部32の上面は外周部の一部が切り欠かれ、この切り欠きが設けられていない領域は、上部側壁部31が載置される載置面33として構成されている。下部側壁部32の切り欠きにより、下部側壁部32には第1凹部34が形成されている。即ち、第1凹部34は、下部側壁部32の上面の載置面33が形成されていない部分に形成された凹部である。上部側壁部31には、下部側壁部32への載置時にこの第1凹部34に対応する位置に、第1凹部34の形状に対応し、かつ、この第1凹部34との間に間隙35が形成されるように、第1凸部36が設けられている。そして、この第1凸部36と第1凹部34との間の間隙35が反応ガス供給路41(供給路)として機能する。反応ガス供給路41については詳しくは後述する。
【0028】
また、下部側壁部32の第1凹部34と対向する領域において、下部側壁部32の上面はその外周部の一部が切り欠かれて第2凹部37が形成されている。上部側壁部31には、下部側壁部32への載置時にこの第2凹部37に対応する位置に、第2凹部37の形状に対応し、かつ、この第2凹部37との間に間隙38が形成されるように、第2凸部39が形成されている。この第2凹部37と上部側壁部31の第2凸部39とでガス排出路42が形成されている。
【0029】
このように反応ガス供給路41とガス排出路42とは反応室2において対向し、反応室2において反応ガスは基板W上を水平方向に流れる。
【0030】
また、下部側壁部32の第2凹部37を構成する壁面43には、パージガスが排出されるパージ孔44が形成されている。パージ孔44は、フランジ部13よりも下方に設けられている。そして、このパージ孔44が第2凹部37を構成する壁面43に設けられていることから、パージ孔44はガス排出路42に臨んでいる。従って、ガス排出路42には、反応ガスとパージガスの両方が排出される。
【0031】
側壁部4の下部側壁部32の下面側には、環状の載置台45が設けられ、側壁部4が載置台45に載置されている。
【0032】
天井部5、側壁部4、載置台45の外周側には、環状の挟持部51が設けられており、環状の挟持部51は、これら天井部5、側壁部4及び載置台45をクランプして支持している。挟持部51には、それぞれ反応ガス供給路41に連通する供給側連通路52と、ガス排出路42に連通する排出側連通路53とが設けられている。供給側連通路52にはガス導入チューブ55が内挿されている。また、排出側連通路53にはガス排出チューブ58が内挿されている。
【0033】
挟持部51の外側には、反応ガス導入部54が設けられており、反応ガス導入部54と供給側連通路52とは通路が連通している。反応ガス導入部54からは、本実施形態では、第1原料ガスと、第2原料ガスとが導入されている。なお、第2原料ガスはキャリアガスとしても機能する。反応ガスとしては3種類以上のガスを混合して用いることも可能である。供給側連通路52と反応ガス導入部54との接続部分には、ガス流路に対して垂直となるように整流板56が設けられている。整流板56には、複数の孔部56aが周方向に沿って一列に設けられており、この孔部56aを反応ガスが通過することで、第1原料ガスと第2原料ガスとが混合されると共に整流される。また、挟持部51の外側には、ガス排出部57も設けられている。ガス排出部57は、反応室2の中心を挟んで反応ガス導入部54と対向する位置に設けられている。ガス排出部57と排出側連通路53とは通路が連通している。即ち、反応ガス供給路41には、供給側連通路52を介して反応ガス導入部54が接続されている。また、ガス排出路42は、排出側連通路53を介してガス排出部57が接続されている。ガス排出路42は、反応室2の中心を挟んで反応ガス供給路41と対向するように設けられている。
【0034】
また、載置台45の内周側下部には、装置底部61が設けられている。装置底部61の外側には、別の加熱手段62および下部リフレクタ65が設けられており、基板Wを下方からも加熱することが可能である。
【0035】
装置底部61の中央には、サセプタ支持部6の軸部63が挿入されると共に、パージガスが導入されるパージガス導入部(図示せず)が設けられている。パージガスは、パージガス導入部に設けられた図示しないパージガス導入手段から装置底部61、下部側壁部32及び載置台45とから構成された反応室下部64に導入される。また、パージ孔44は反応室下部64に連通している。
【0036】
(エピタキシャル成長を用いた成膜方法の概要)
次に、本実施形態のエピタキシャル成長装置を用いた成膜方法について説明する。
【0037】
まず、サセプタ3を基板搬送位置P2まで移動させ、基板Wを基板搬送口30から搬入し、サセプタ3を成膜位置P1まで移動させる。基板Wとしては、直径が例えば200mmのシリコン基板を用いる。次に、加熱手段23、62により待機温度(例えば800℃)から成長温度(例えば1100℃)に加熱される。パージガス導入部からパージガス(例えば水素)を反応室下部64に導入する。また、反応ガス(例えば第1原料ガスとしてトリクロロシラン、第2原料ガスとして水素)を反応ガス導入部54から反応ガス供給路41を介して反応室2内に導入する。反応ガスは、基板Wの表面に境界層を形成し、この境界層において反応が生じる。これにより、基板W上にシリコン膜が成膜される。反応ガスは、反応室2に臨んだガス排出路42から排出される。また、パージガスはパージ孔44を介してガス排出路42へ排出される。このようにしてエピタキシャル成長が終了した後、待機温度まで降温してから、基板Wは搬出され、半導体製造装置の別のチャンバに移動される。
【0038】
(エピタキシャル成長装置・方法の詳細)
次に、本実施形態のエピタキシャル成長装置1の構成部材の詳細について説明するとともに、本実施形態の成膜方法の詳細についても説明する。
【0039】
図4は、本実施形態における天井部5の構成を示す斜視断面図である。図に示したように、天井板21を支持する支持部22の内縁は、基板側に向かって徐々に径が小さくなっている。そして、内縁の基板W側の端部に天井板21が固定されている。また、支持部22を裏面側(下面側)からみると、内周部が突出して突出部25となっている。この突出部25も突出方向に向かって徐々に径が小さくなるように形成されている。このように、支持部22は2つの斜面部から構成される。即ち、支持部22は、天井板21の周縁部において、周縁部の上方かつ外側から天井板21を支持する。一方、
図20は、従来のエピタキシャル成長装置の天井部5’の一例を示す斜視断面図である。図に示したように、従来の装置の天井部5’では、天井板21’の周縁部において、支持部22’が、天井板21’と同一平面上から天井板21’を支持し、支持部22’は略直角の角部25’を有する形状となっている。
【0040】
このように、本実施形態では、従来のものに比べて、支持部22を応力が集中しにくい形状としていることから、基板Wと天井板21との距離Hを短く、即ち10mm未満とすることができる。
【0041】
具体的には、天井板21(21’)を加熱手段23からの赤外線は概ね通過するが、天井板21(21’)自体はサセプタ3、又は基板Wからの輻射熱を吸収する。この吸収された熱は天井板21(21’)から支持部22(22’)との接合部を介して支持部22(22’)へ入力される。ここで、基板Wと天井板21(21’)との距離Hを短くすると、この輻射熱の吸収量が高くなり、支持部22(22’)に入力される熱が多くなる。したがって、従来の天井部5’のように、支持部22’が略直角の角部25’を有すると、この角部25’に応力が集中してしまい、割れなどが発生するおそれがある。
【0042】
一方、本実施形態では、支持部22に突出部25を設け、天井板21の周縁部において、周縁部の上方かつ外側から天井板21を支持させることによって、なるべく応力が集中しやすい角部(25’)を設けずに天井板21を基板側で支持することができるようしている。
【0043】
また、本実施形態では、上述のように境界層を狭くするために天井板21と基板Wとの距離Hを短くしているので、反応ガスが基板Wの外側に逃げてしまいやすく、基板において膜厚分布の均一化が難しい場合も考えられるので、これを防止することが好ましい。このため、本実施形態では、以下に説明するように、ガス流れを均一化するために、反応ガス供給路41にガイド部を設けている。
【0044】
反応ガス供給路41に設けられたガイド部について、
図5から
図7を用いて詳細に説明する。前述のとおり、反応ガス供給路41は、下部側壁部32の第1凹部34と上部側壁部31の第1凸部36とから形成されて、供給側連通路52内のガス導入チューブ55を介して反応ガス導入部54まで連通している。また、反応ガス供給路41は、反応ガス導入部54からのガスの導入方向と一致する方向(水平方向)に延設された第1供給路71と、第1供給路71に連通し、ガスの導入方向に対して垂直な方向(鉛直方向)に延設された第2供給路72と、第2供給路72に連通し、ガスの導入方向に一致する方向(水平方向)に延設された第3供給路73とを有している。そして、第3供給路73は、反応室2に連通している。即ち、反応ガス供給路41は、反応ガスの入口である供給側連通路52側から、反応ガスの出口である反応室2に接続される出口に向かって上り階段状に形成されている。
【0045】
ここで、第2供給路72は、上述のように鉛直方向に延設されているので、反応ガス導入部から導入されたガスが第2供給路72の反応ガス導入部54に対向する壁面74に接触する。これにより、反応ガスが拡散され、反応ガスの混合性が高まる。即ち、第2供給路72は反応ガスの混合室として機能する。この場合に、第2供給路72で反応ガスが停滞しないように、本実施形態では、第2供給路72の壁面74には、鉛直方向に延びた溝部75が形成されており、この溝部75がガイド部として機能する。このように溝部75が設けられていることで、第2供給路72の壁面74に接触することで拡散されたガスも第3供給路73へ流入しやすく、さらにこの溝部75に沿って整流されることで、反応ガスの直進性が向上して、反応室2に流入した場合の反応ガスの広がりを抑制できる。
【0046】
溝部75について詳細に説明する。溝部75は、第2供給路72の壁面74の全面に複数本連続して凹部として形成されている。
図7(2)に示すように、凹部である溝部75は、溝部75の幅方向において湾曲している。本実施形態では、溝部75は、上面視において円弧状である。溝部75が幅方向において湾曲していることから、反応ガスが、壁面74の溝部75の底部に接触した場合に、拡散しにくく(集中しやすく)、反応ガスが反応室2へ流入した場合にも基板Wの外側へより広がりにくい。なお、この溝部75の深さが深すぎると拡散を抑制することはできるが、反応ガス中の第1原料ガスと第2原料ガスとの混合をすることが難しくなる。本発明の一実施形態では、溝部75の深さは1mm〜5mmとすることが好ましい。さらに、3mmとすることがより好ましい。
【0047】
また、溝部75は、それぞれが下部側壁部32の面内方向の中央Cに向かうように設けられている。即ち、溝部75は、下部側壁部32の周方向に沿って設けられている。このように設けることで、各溝部75によりガイドされて反応室2内に導入された反応ガスの流れの向きの水平方向の成分が、反応ガス供給路41の反応室2側の開口の中心から反応室2の中心に向かう向きの水平方向の成分と一致するように整流性が高められ、反応ガスが反応室2内で分散されてしまうことが抑制される。
【0048】
さらに、各溝部75の幅方向の中心と反応ガス導入部54に設けられた整流板56の孔部56aの中心とが略一致する(対応する)位置に、各溝部75は設けられている。即ち、本実施形態では壁面74における溝部75の数と孔部56aの数とは一致する。これにより、整流板56より整流された反応ガスがそのまま各溝部75に流入するので、さらに整流作用が高まり、反応ガスの直進性を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態では第2供給路72の壁面74の全面に溝部75を設けたが、第2供給路72の壁面74のうち、少なくとも端部部分に設ければよい。端部部分とは、整流板56の孔部が複数の領域に分けられて設けられているが、この領域のうち、最も端部の領域に対応する部分をいう。例えば、
図7に示す場合では、整流板56は3つの領域81に分けられており、この領域のうち、最も端部の領域82、83の孔部に対応して溝部75が設けられていればよい。上記のように反応ガスは基板Wの外側に逃げやすいので、特に反応ガス供給路41の端部部分において反応ガスの直進性を高めるために溝部75を設けることが好ましいのである。そして、この場合にガイド部として機能する溝部75を凹部として形成することでこのような効果を簡易に得ることができる。例えば、整流部材を第2供給路72に別途設けるとなると反応ガスの混合性や製造コスト等の問題が発生するが、本実施形態のように溝部75を凹部として形成することにより、これらの問題は解決される。
【0050】
図8は、整流板56の例を示した斜視図である。図に示したように、整流板56は、溝部75のパターンに応じたものを用意すればよい。整流板56の開口率は、成長速度の観点だけでなく、スクラバーや、外部の配管の形状、長さ等の付帯設備を含めて最適な値に決定することが好ましい。
【0051】
本実施形態では、上述のように境界層を狭くするために天井板21と基板Wとの距離を狭くしているので、反応室2下部への反応ガスの周りこみが発生しやすいと共に、基板Wの温度分布が均一化されにくいことが考えられ、その結果、厚膜形成時の膜厚分布や膜質の低下(例えば抵抗率の分布や結晶欠陥の発生など)も考えられる。本実施形態では、これを防止すべく、サセプタリング7が2つの部材で構成されている。この点について説明する。
【0052】
図9に拡大して示したように、サセプタリング7を構成する第1リング11は、サセプタの外周に対して離間して設けられており、この第1リングの内周側には上面が低い段差部91が形成されている。段差部91には、第2リング12が載置されており、この第2リング12は、第1リング11とサセプタ3との間に形成された離間部92に臨んで、即ち離間部92にせり出すように設けられている。第2リング12は、その上面がサセプタ3の上面と等しくなるように設けている。このように第2リング12の上面がサセプタ3の上面と等しくなるように設けていることで、反応ガス供給路41等で混合されて整流された状態が維持された反応ガスを、速度をできるだけ低下させること無く、スムーズに基板Wに供給できる。なお、ここでいうサセプタ3の上面とは、サセプタ3の基板用凹部3a (
図1,2,11,12参照)の形成されていない領域の上面をいう。本実施形態の第2リング12は、熱伝導性に鑑みてシリコンカーバイドを材料としている。
【0053】
そして、このように第2リング12と第1リング11とを別部材で構成していることで、より精度良くサセプタリング7を構成することができる。即ち、サセプタリング7とサセプタ3との距離を限界まで近づけることができ、これにより基板Wの裏面側、即ち反応室下部64への反応ガスの回り込みを低減できると共に、基板Wの温度分布を均一化することができる。これにより、本実施形態では、形成された膜の膜厚分布や膜質分布が均一化される。
【0054】
また、第1リング11と第2リング12の2つの部材にすることで、第1リング11と第2リング12との間の熱の移動を第1リング11と第2リング12を1つの部材で構成する場合よりも抑制することができる。
【0055】
さらに、このように第2リング12が離間部92に臨むように構成されていることで、成膜時にサセプタリング7とサセプタ3との間から反応ガスが下方に漏れ出すことを低減できて、反応ガスの流れが乱れにくく、また、反応ガスが下方に漏れ出すことを低減できることから、パーティクルを低減できる。
【0056】
この場合に、第2リング12は第1リング11に比べて薄く形成してある。これにより、サセプタ3からの輻射による熱損失を抑制することができる。また、第2リング12が薄いことで、第2リング12を所定の高温に維持する(プリヒート)ために必要な加熱量を少なくすることができる。他の実施形態として、第1リング11を熱伝導率の小さい材質にした場合には、第1リング11が断熱材として機能し、上記の効果をさらに高めることができる。
【0057】
なお、本実施形態では第2リング12が離間部92に臨むように構成したが、これに限定されない。第2リング12は、第1リング11の段差部91に少なくとも載置されるように構成されていれば、精度良くサセプタリング7を構成することができるので、サセプタリング7とサセプタ3との距離を限界まで近づけることができ、これにより基板Wの裏面側への反応ガスの回り込みを低減できると共に、基板の温度分布を均一化することができる。
【0058】
また、本実施形態では、境界層を狭くするために天井板21と基板Wとの距離を狭くしているので、天井板21の天井面も反応ガスによりコーティングされやすい。天井面がコーティングされると、天井面が曇ってしまい、天井板21を介して加熱手段23から加熱するコールドウォールタイプのエピタキシャル成長装置では十分に成膜ができないおそれがある。これに対し、本実施形態では、上述のように反応ガス供給路41の壁面に溝部75を設け、かつ、サセプタリング7を2つの部材で構成することで、反応ガスが反応室2において滞留しにくく、その結果、コート材の付着を抑制できる。これにより、連続して十分な成膜を行うことが可能である。
【0059】
図10は、サセプタリング7の変形例を示したものである。本変形例では、第2リング12Aが離間部92Aを覆うように設けられている点において
図9に示した実施形態とは異なる。本変形例でも、第1リング11Aは側壁部32Aのフランジ部13Aに載置されている。第2リング12Aは、この第1リング11Aの段差部91Aに載置されており、かつ、その内周側はサセプタ3Aの外周に臨んでいる。
【0060】
本変形例では、第2リング12Aが離間部92Aを覆うように設けられていることで、反応室2Aに流入した反応ガスが反応室下部64Aへ入ることをより抑制することができる。ただし、第2リング12Aが、
図10中に図示しない加熱手段23からサセプタ3Aへの加熱を遮るのを抑制すべく、第2リング12Aとサセプタ3Aとのオーバーラップ量は少ない方が好ましい。
【0061】
本変形例において、第2リング12Aの厚みは、例えば0.5mm〜2mmとすることが好ましい。さらに、約0.8mmとすることがより好ましい。このような厚みとすることで、サセプタ3Aから第2リング12Aへの輻射による熱損失を可能な限り抑制することができる。
【0062】
図11および
図12は、本発明の実施形態におけるサセプタ3の一例を示す平面図である。図に示したように、サセプタ3A,3Bは、リフトピン123(
図13参照)が貫通するリフトピン用貫通穴110A,110Bが設けられている。また、
図12に示したように、多数の貫通穴111Bを有していてもよい。この貫通穴111Bにより、基板をサセプタに載置した瞬間に間に挟まれた気体を逃がすことができ、基板Wが水平方向に滑ってしまうという問題を解決することができる。また、このようなサセプタ3Bを用いた場合、サセプタ3Aを用いた場合と比較すると、基板Wの膜厚分布の均一化や抵抗率分布の均一化の点で優位である。これは、貫通穴111Bの直径が小さければ小さいほど、貫通穴111Bの数が多ければ多いほど顕著である。また、開口率は4%を超えるものとするのが好ましく、また、サセプタの基板用凹部3Baのみではなく、その周囲にも貫通穴111Bを設けるのがより好ましい。
【0063】
図13から
図16までは、サセプタ支持部6の一実施形態を示したものである。
図13に示したとおり、サセプタ支持部6は、サセプタ・シャフト121と基板リフト部122とリフトピン123とから構成されている。サセプタ3はサセプタ・シャフト121の3本の腕部によって支持されている。基板リフト部122の3本の腕部には、リフトピン123の下端が配置される凹部を有する台座124が設けられている。また、基板リフト部122の軸部分は筒状になっており、この基板リフト部122の軸部分は、サセプタ・シャフト121の軸部分が挿入可能となっている。
【0064】
本実施形態では、サセプタ支持部6において、各腕部の太さは通常のものよりも細く構成されている。これにより、加熱手段62がサセプタ3上の基板Wを加熱する際におけるサセプタ支持部6の影響を小さくすることができるので、サセプタ3の温度分布を均一にすることが可能である。なお、本実施形態のサセプタ支持部6の構成の詳細、および、昇降動作は、本出願人による国際公開WO2013/005481号公報に記載のサセプタ装置と同様である。ただし、同公報記載のサセプタ装置はサセプタ・シャフト(載置部シャフト)が1本となっているが、本実施形態のサセプタ支持部6のサセプタ・シャフト(腕部)121は3本となっている。
【0065】
図16は、本実施形態におけるガス排出チューブ58の一例を示した斜視断面図である。図に示したように、ガス排出チューブ58は、反応室2側からガス排出部57に向かうにしたがって開口が中央に向かって絞られて狭くなるように形成されている。これにより、排気が中央に整流され、排気効率の向上が図られている。
【0066】
また、
図21は、従来のエピタキシャル成長装置における反応室2の外側の構成を示す分解斜視図である。図に示したように、ガス導入チューブ55と55’、ガス排出チューブ58と58’とを比較すると、本実施形態では、各々の中央部にある仕切り部が除去されている。これにより、膜厚分布に影響するガスの流れがスムーズになる。
【0067】
なお、ガス排出路42とパージ孔44は、開口率が大きすぎると、反応ガスが反応室下部64に潜り込み、開口率が小さすぎると、パージガスが反応室2内での成膜プロセスに影響を及ぼしてしまうので、最適な値となるように開口が形成される。
【0068】
図17は、本発明の実施形態における上部リフレクタ26の一例を示す斜視図である。図に示したように、上部リフレクタ26は、加熱手段23からの熱線を反応室2の中心に向かって反射させる傾斜部26aと、加熱手段23からの熱線を鉛直下向きに反射させる平坦部26bとを有している。一方、
図22は、従来のエピタキシャル成長装置における上部リフレクタ26’の一例を示す斜視図である。図に示したように、従来の上部リフレクタ26’も傾斜部26a’と平坦部26b’とを有しているが、本発明の実施形態の上部リフレクタ26とは傾斜部26aの配列が異なっている。具体的には、本発明の実施形態の上部リフレクタ26は、従来の上部リフレクタ26’の平坦部26b’の中央に傾斜部を1つ追加した配列となっている。このように、傾斜部26aと平坦部26bの面積比が所定の比率となるように、かつ、傾斜部26aと平坦部26bの分布が偏らないように、傾斜部26aと平坦部26bとを配列することにより、基板Wの温度分布の均一化が図られている。
【0069】
図18は、本発明の実施形態における下部リフレクタ65の一例を示す斜視図である。
図23は、従来のエピタキシャル成長装置における下部リフレクタ65’の一例を示す斜視図である。下部リフレクタ65も上部リフレクタ26と同様に、加熱手段62からの熱線を反応室2の中心に向かって反射させる傾斜部65aと、加熱手段62からの熱線を鉛直上向きに反射させる平坦部65bとを有しており、従来の下部リフレクタ65’の平坦部65b’の中央に傾斜部を1つ追加した配列となっている。このように、傾斜部65aと平坦部65bの面積比が所定の比率となるように、かつ、傾斜部65aと平坦部65bの分布が偏らないように、傾斜部65aと平坦部65bとを配列することにより、基板Wの温度分布の均一化が図られている。
【0070】
かかる本実施形態のエピタキシャル成長装置によれば、支持部22が天井板21を支持することで、天井板21の中央部の反応室側の天井面と基板Wとの距離Hを10mm未満とすることができる。これにより、本実施形態におけるエピタキシャル成長装置1は、この天井板21とサセプタ3との間を流れる反応ガスにより形成される境界層が天井側に広がるのを抑制でき、結果として境界層が狭くなる。そうすると、この境界層内におけるガス速度が上昇するので、結果としてガス密度が向上し、基板W表面における反応効率を高めることができる。これにより、エピタキシャル成長装置1では、成長速度を向上させることができる。
【0071】
なお、本発明の一実施形態では、天井板21と基板Wとの距離Hは10mm未満であり、好ましくは天井板21と基板Wとの距離Hが10mm未満、かつ、基板Wの成膜された膜の表面から天井板21との距離を1mm以上である。この範囲とすることで、境界層を形成しつつも、反応ガスのガス流れをスムーズに行うことができる。
【0072】
即ち、本実施形態における反応室2では、基板Wと天井板21との距離を従来よりも短く(従来は20mm程度)することで、境界層を狭くして基板表面における反応効率を高め、結果として成長速度を向上させている。
【0073】
(実施例)
以下、実施例により発明の詳細について説明する。
【実施例1】
【0074】
図10に示したサセプタリングを用いたエピタキシャル成長装置1A(基板W表面と天井板21との距離Hは9.27mm)により、以下の成長条件に基づいてエピタキシャル成長を行った。
第1原料ガス(トリクロロシラン)流量 8.5 SLM
パージガス(水素)流量 15.0 SLM
成長時間 600.0秒
成長温度 1100.0℃
回転速度 20.0 RPM
【実施例2】
【0075】
実施例1とは、第1原料ガス量を13.5 SLMに変更した点以外は同一条件でエピタキシャル成長を行った。
【実施例3】
【0076】
実施例1とは、第1原料ガス量を17.0 SLMに変更した点以外は同一条件でエピタキシャル成長を行った。
(比較例1)
【0077】
従来のエピタキシャル成長装置(基板W表面と天井板21との距離Hは20mm、溝部75はなく、サセプタリングは1つの部材からなる)により、回転速度を35.0 RPMとした点以外は、実施例1と同一の成長条件に基づいてエピタキシャル成長を行った。
(比較例2)
【0078】
従来のエピタキシャル成長装置(基板W表面と天井板21との距離Hは20mm、溝部75はなく、サセプタリングは1つの部材からなる)により、回転速度を35.0 RPMとした点以外は、実施例2と同一の成長条件に基づいてエピタキシャル成長を行った。
(比較例3)
【0079】
従来のエピタキシャル成長装置(基板W表面と天井板21との距離Hは20mm、溝部75はなく、サセプタリングは1つの部材からなる)により、回転速度を35.0 RPMとした点以外は、実施例3と同一の成長条件に基づいてエピタキシャル成長を行った。
各実施例及び比較例による膜の成長速度を検出した。検出された成長速度と第1原料ガスとの関係を
図19に示す。
【0080】
図19に示すように、本発明の実施形態となるエピタキシャル成長装置1Aによれば、成長速度が50%以上向上され、第1原料ガス量が多くなれば多くなるほど成長速度の改善率は向上した。従って、本実施形態のエピタキシャル成長装置を用いることで、成長速度が向上した。