特許第6749541号(P6749541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749541
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】超伝導導体
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/02 20060101AFI20200824BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   H01B12/02ZAA
   H01F6/06 140
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-232731(P2017-232731)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-102298(P2019-102298A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年3月7日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 順一
(72)【発明者】
【氏名】寺▲崎▼ 義朗
(72)【発明者】
【氏名】柳 長門
(72)【発明者】
【氏名】田村 仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓也
【審査官】 中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−112227(JP,A)
【文献】 特開2011−113933(JP,A)
【文献】 特開2016−032039(JP,A)
【文献】 実開昭54−114582(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 12/02
H01F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル用の超伝導導体であって、
一本一本が相互に接着することなく積層された複数の超伝導テープ線材と、
テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束する結束部材とを有するコイル用の超伝導導体。
【請求項2】
請求項1記載の超伝導導体であって、
前記結束部材は、曲げを柔軟に行うことができるフレキシブルチューブであり、
前記複数の超伝導テープ線材は、積層された状態で、前記フレキシブルチューブ内に挿入されることにより前記結束が行われている超伝導導体。
【請求項3】
請求項2記載の超伝導導体であって、
前記フレキシブルチューブは、金属製であり、
さらに、前記フレキシブルチューブの外部を覆う絶縁性のテープを有する超伝導導体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の超伝導導体であって、
コイルの構造体の表面に形成された溝に沿って巻回させることで前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状に成形された前記超伝導テープ線材および結束部材を、該形状に保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールドするモールド部材を備える超伝導導体。
【請求項5】
請求項4記載の超伝導導体であって、
前記モールド部材は、融点が150℃以下の低融点金属で金属製である超伝導導体。
【請求項6】
コイル用の超伝導導体の成形方法であって、
(a) 複数の超伝導テープ線材を一本一本が相互に接着することなく積層する工程と、
(b) テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束部材により結束する工程と、
を有するコイル用の超伝導導体の成形方法。
【請求項7】
請求項6記載の成形方法であって、
さらに、
(c) 前記超伝導テープ線材および結束部材をコイルの構造体の表面に形成された溝に沿って巻回して、前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状を成形する工程と、
(d) 前記成形された形状を保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールド部材によりモールドする工程とを有する超伝導導体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導テープ線材を用いた超伝導導体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に77ケルビンという液体窒素温度を超える温度で超伝導性を示す物質を高温超伝導体という。高温超伝導体は、厚さ百マイクロメートル程度の金属製のテープ上に、高温超伝導体からなる層を形成した超伝導テープ線材として供給されるのが通常である。超伝導コイルは、かかる超伝導テープ線材を何重にも巻回するなどして形成される。
超伝導テープ線材に関連する従来技術として、例えば、特許文献1は、超伝導テープ線材を同心円状に巻回した超伝導コイルを開示し、かかる超伝導コイルにおいて、磁場による位置ずれが生じないように超伝導テープ線材を固定する技術を開示している。
特許文献2は、帯状の金属基板上に,超伝導層を形成した後、長手方向に切断することにより超伝導テープ線材の製造方法について開示する。
特許文献3は、超伝導テープ線材が、その面の法線方向に曲がりながら沿うための曲面と、面の幅方向(以下、本明細書において「エッジ方向」ということもある)に部分的に曲げながら沿う捻れ枠部を設けることにより3次元的に湾曲した曲面のコイルを実現する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−91679号公報
【特許文献2】特開2017−10958号公報
【特許文献3】特開2017−98504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超伝導テープ線材は、複数を積層して使用することが通常である。しかし、超伝導テープ線材の基板は金属製であるため、面の法線方向(以下、「フラット方向」ということもある)には曲げやすいものの、エッジ方向には非常に曲げ難いという課題があった。特許文献1のように、同心円状に巻回して超伝導コイルを形成する場合には、この課題は問題とはならないが、エッジ方向の曲げも含む3次元的な形状の超伝導コイル等を形成することは非常に困難であった。特許文献3は、捻れ枠部という特別な支持部材を用意することにより、若干の3次元的な湾曲を実現してはいるものの、その柔軟性は十分とは言えず、やはり形成可能な形状には限界があった。超伝導テープ線材は、特許文献3のような枠を用いてエッジ方向に曲げ歪みが生じると、臨界電流が顕著に低下し、クエンチに至る可能性があるという課題もあった。また、捻れ枠部という特別な支持部材を用いる分、構造が複雑になるという問題もあった。
かかる課題は、超伝導テープ線材を利用する限り、高温超伝導以外にも共通の課題であった。本発明は、かかる課題に鑑み、超伝導テープ線材を用いて、3次元的な湾曲を伴う形成を実現可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
超伝導導体であって、
相互に接着することなく積層された複数の超伝導テープ線材と、
テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束する結束部材とを有する超伝導導体として構成することができる。
【0006】
本発明では、超伝導テープ線材は相互にテープ幅方向、即ちエッジ方向にずれることが可能な状態で結束されている。従って、一本一本の超伝導テープ線材自体はエッジ方向の曲げに限界があるとしても、超伝導テープ線材同士がエッジ方向にずれることによって、曲げの方向に応じて一本一本の超伝導テープ線材に、自在に捻れが生じることができ、この結果、積層した超伝導導体全体としてみたときは、疑似的にエッジ方向の柔軟性を確保することができる。
結束部材としては、種々の部材を適用可能であり、例えば、ワイヤ、ラバーバンド、チューブ、スプリングなどとすることができる。チューブのように連続体を結束部材として使用する場合には、結束部材自体の柔軟性が確保されていることが好ましい。結束部材の材質は、例えば、樹脂、金属などとすることができる。
超伝導テープ線材の積層数は、任意に設定可能である。積層数が多ければ、大電流値を達成することも可能となる。また、積層数が多ければ、エッジ方向の疑似的な柔軟性をより確保しやすくなる利点がある。
【0007】
本発明の超伝導導体において、
前記結束部材は、曲げを柔軟に行うことができるフレキシブルチューブであり、
前記複数の超伝導テープ線材は、積層された状態で、前記フレキシブルチューブ内に挿入されることにより前記結束が行われているものとしてもよい。
フレキシブルチューブとは、管の軸方向の伸縮、横方向の変位、曲げ変位などに適応してたわみが可能な管を言う。樹脂製、金属製などがある。
このようなフレキシブルチューブを利用すれば、柔軟性を確保しながら、超伝導テープ線材を挿入するのみで容易に結束することができる利点がある。
【0008】
このようにフレキシブルチューブを用いる場合、
前記フレキシブルチューブは、金属製であり、
さらに、前記フレキシブルチューブの外部を覆う絶縁性のテープを有するものとしてもよい。
超伝導導体には、磁力など様々な力が作用するが、金属製のフレキシブルチューブを利用することにより、これらの荷重に耐えられる強度を備えることができる。また、絶縁性のテープで外部を覆うことにより、超伝導導体同士の絶縁も確保することができる。
【0009】
フレキシブルチューブを用いるか否かに関わらず、
本発明においては、
前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状に成形された前記超伝導テープ線材および結束部材を、該形状に保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールドするモールド部材を備えるものとしてもよい。
上記態様は、超伝導導体の柔軟性を活かして巻回した後、全体をモールドすることにより、形状を保持するものである。超伝導導体を巻回したコイル等を磁場中で使用すると、超伝導テープ線材に電磁力など様々な荷重が作用し、超伝導テープ線材の変形を招くおそれがあるが、上記態様によれば、モールド部材によってモールドすることにより、こうした弊害を緩和することができる。
【0010】
このようにモールドする場合、モールド部材の材質は、樹脂を利用するものとしてもよいが、
前記モールド部材は、金属製であるものとしてもよい。
金属を用いることにより、強固なモールドを実現することができる。かかる場合の金属は、超伝導層の損傷を抑制するため、200℃または150℃以下の融点を有する低融点金属とすることが好ましい。例えば、融点約80℃のUアロイ78や、ハンダなどを用いることができる。金属でモールドする場合、超伝導テープ線材同士の空隙を金属で埋めることになる。このため、超伝導テープ線材の冷却効率を向上させることができる利点もある。超伝導テープ線材が、荷重や熱などによって局所的に超伝導性を失う状態をクエンチと呼ぶが、クエンチが生じると、超伝導テープ線材の温度上昇が進み、超伝導性が広い範囲で失われるおそれがある。本態様のように、超伝導テープ線材の隙間も金属でモールドしておけば、仮にクエンチが生じたとしても、モールドによって熱伝導を高めることができ、冷却効率を向上させることができるため、クエンチの広がりを抑制することが可能となる。
さらに、モールドする金属を、超伝導テープ線材の基板と同等の熱膨張係数の素材としてもよい。こうすることにより、超伝導テープ線材に熱膨張等の変形が生じたとき、モールド部材も同程度の変形を生じることになり、超伝導テープ線材とモールド部材間の剪断応力の発生を抑制することができる。この結果、超伝導テープ線材の表面の超伝導層が剪断応力によって剥離することを抑制することが可能となる。
【0011】
以上で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、本発明は、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして構成することもできる。また、本発明は、超伝導導体としての構成の他、超伝導導体の成形方法として構成することもできる。
例えば、
超伝導導体の成形方法であって、
(a) 複数の超伝導テープ線材を相互に接着することなく積層する工程と、
(b) テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束部材により結束する工程と、
を有する超伝導導体の成形方法なる構成である。
【0012】
上述の成形方法においては、
さらに、
(c) 前記超伝導テープ線材および結束部材を巻回して、前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状を成形する工程と、
(d) 前記成形された形状を保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールド部材によりモールドする工程とを有するものとしてもよい。
【0013】
成形方法においても、先に超伝導導体で説明した種々の特徴を適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例としての超伝導導体の全体構成を示す説明図である。
図2】超伝導導体の柔軟性を示す説明図である。
図3】超伝導導体のヘリカルコイルへの適用例を示す説明図である。
図4】高温超伝導導体の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例として、高温超伝導テープ線材を利用した場合の超伝導導体について説明する。もっとも本発明は、必ずしも高温超伝導に限らず、利用可能である。
【0016】
図1は、実施例としての超伝導導体の全体構成を示す説明図である。
図1(a)の超伝導導体10は、複数の超伝導テープ線材11を積層し、金属製のワイヤ12で結束して構成されている。超伝導テープ線材11は、種々のサイズを利用可能であるが、本実施例では、幅4mm、厚さ0.2mmのテープ線材を用いた。
本実施例では、ワイヤ12は螺旋状に巻き付けてあるが、リング状の複数のワイヤ12を用いて結束してもよい。ワイヤ12の間隔Wは、任意に決めることができる。間隔Wを広くとれば、積層した超伝導テープ線材11の変形の自由度が増し、超伝導導体10全体の柔軟性を高めることができる。一方、間隔Wが広い場合には、超伝導テープ線材11がばらばらに近い状態となるため、巻回の作業性が低下するおそれもある。間隔Wは、これらの要素を考慮して、定めればよい。
積層数も任意に決定可能である。積層数が増せば、大電流値が達成可能となる。本実施例では、16枚積層するものとした。
【0017】
図1(b)の超伝導導体20は、複数の超伝導テープ線材21を積層し、金属製のスプリング22に挿入して構成されている。超伝導テープ線材21は、図1(a)の超伝導テープ線材11と同じものである。積層数も16枚とした。
スプリング22の寸法は任意に選択可能である。内径がさらに大きいものを利用すれば、超伝導テープ線材21の捻れ等の自由度が高まり、超伝導導体20の柔軟性が向上する。一方、内径が大きくなれば、超伝導テープ線材21の結束が弱くなるため、巻回の作業性が悪くなる。スプリング22のサイズは、これらの要素を考慮して定めればよい。
上述の実施例では、結束部材として、金属製のワイヤ12、スプリング22を用いているが、それぞれ樹脂製を用いても良い。
【0018】
図2は、超伝導導体の柔軟性を示す説明図である。先に図1(b)で説明したのと同様、超伝導導体30Aは、複数の超伝導テープ線材31を積層し、フレキシブルチューブ32に挿入してある。そして、その外側を、ポリイミド等の絶縁テープ33で覆ってある。こうすることにより、フレキシブルチューブ32間の絶縁性を確保することができる。フレキシブルチューブ32は、内径5.2mm、板圧0.4mmのものを用いた。もっとも、サイズは任意に選択可能である。
図2(b)には、この超伝導導体30Aを曲げた状態を例示した。図示する通り、超伝導導体30Aは、非常に柔軟に屈曲することができる。図の例では、超伝導テープ線材31のフラット方向に曲げるとともにエッジ方向にも若干、曲げた状態を示しているが、エッジ方向にさらに大きく曲げることも可能である。
【0019】
図3は、超伝導導体のヘリカルコイルへの適用例を示す説明図である。
図3(a)は、小型のヘリカルコイルの構造体を示している。この構造体には、表面に超伝導導体を二重の螺旋に巻回するための溝40、41が形成されている。この溝に沿って巻回させるためには、超伝導導体をフラット方向のみならずエッジ方向にも曲げる必要が生じるが、本実施例の超伝導導体によれば、こうした3次元的な巻回も実現することが可能となる。
図3(b)は、より大型のヘリカルコイルの構造を示した。大型のヘリカルコイルでは、超伝導導体30Aを複数本用意し、これらをコイル挿入孔50に配列して挿入することにより、ヘリカルコイルを形成する。形成されるヘリカルコイルも、全体としては図3(a)のような形状となるが、サイズが大きいため、複数の超伝導導体30Aを長手方向にも接続することになる。かかる接続は、接合する2本の超伝導導体30Aをそれぞれ構成する超伝導テープ線材の表面の超伝導層同士が接触するように接続し、両者をインジウムやハンダで貼り合わせればよい。
ヘリカルコイルは、本実施例の超伝導導体30Aを適用する一例に過ぎず、本実施例の超伝導導体30Aは、さらに種々の用途に利用可能である。また、必ずしもエッジ方向の曲げを伴う巻回に限られるものではなく、フラット方向の曲げのみで巻回する用途に利用しても差し支えない。
【0020】
図4は、高温超伝導導体の製造工程を示すフローチャートである。
この工程では、まず高温超伝導導体テープ線材を積層する(ステップS10)。そして、この積層体を、フレキシブルチューブに挿入する(ステップS11)。その後、フレキシブルチューブの外側にポリイミドテープを巻く(ステップS12)。これらの工程により、図2(a)に示した状態の超伝導導体20Aを形成することができる。
【0021】
次に、この超伝導導体30Aでコイルを巻線する(ステップS13)。この工程では、超伝導導体30Aをフラット方向だけでなくエッジ方向にも曲げて巻回することが可能である。
【0022】
巻回が完了すると、巻線部分を密閉して、低融点金属で真空含浸を行う(ステップS14)。低融点金属としては、融点が150℃程度のハンダまたは融点が80℃程度のUアロイ78などを用いることができる。低融点金属は、ステップS14の工程を行う際には溶融しているが、77ケルビン程度の温度で超伝導コイルとして使用する際には、凝固し、超伝導テープ線材を強固に金属体で強固にモールドすることになる。
【0023】
このように金属でモールドする利点は次の通りである。
超伝導コイルを強磁場の中で利用すると、超伝導導体には電磁力が作用する。金属でモールドしていない場合には、それぞれの超伝導テープ線材が電磁力の作用によって移動または変形することになり、その状態によっては、局所的に臨界電流が顕著に低下するクエンチが生じるおそれもある。上述の実施例のように、金属でモールドすれば、こうした減少を回避でき、超伝導コイルを安定して動作させることが可能となる。
また、金属でモールドすることにより、機械的な強度を実現することもできる。
さらに金属でモールドすることにより、冷却効率を向上させることができる利点もある。金属でモールドすれば、超伝導テープ線材の空隙を金属で埋めることができるため、空隙をそのまま残しておく場合に比較して、超伝導導体の熱伝導率を高めることが可能となるのである。この結果、超伝導テープ線材に局所的なクエンチが発生した場合であっても、速やかに冷却することが可能となり、クエンチの拡散を抑制することができる。
さらに、金属でモールドした場合、例えば、クエンチが発生し多量の熱が発生したとしても、その熱は、金属の溶融に利用されることになり、クエンチの拡散を抑制することができる利点がある。
冷却効率を向上させるため、超伝導導体の巻き線の際に、冷却用の配管を沿わせるようにしてもよい。このような構造とすれば、冷却効率がより向上するだけでなく、冷却用の配管が、超伝導導体を支持する効果を奏し、全体の強度を向上させることも可能となる。
【0024】
巻き線した後のモールドは、金属に代えて樹脂を用いるようにしてもよい。樹脂でモールドする際にも、熱伝導率を高めるため、樹脂内に金属粉を混ぜるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、超伝導テープ線材を用いて、3次元的な湾曲を伴う形成を実現可能とする超伝導導体を実現するために利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 :超伝導導体
11 :超伝導テープ線材
12 :ワイヤ
20 :超伝導導体
20A :超伝導導体
21 :超伝導テープ線材
22 :スプリング
30A :超伝導導体
31 :超伝導テープ線材
32 :フレキシブルチューブ
33 :絶縁テープ
40 :溝
41 :溝
50 :コイル挿入孔

図1
図2
図3
図4