特許第6750038号(P6750038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6750038シリコンフレークを含む負極材及びシリコンフレークの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750038
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】シリコンフレークを含む負極材及びシリコンフレークの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20200824BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20200824BHJP
   C01B 33/033 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 C
   C01B33/033
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-556966(P2018-556966)
(86)(22)【出願日】2017年8月18日
(65)【公表番号】特表2019-519067(P2019-519067A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】KR2017009065
(87)【国際公開番号】WO2018034553
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2018年10月30日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0104774
(32)【優先日】2016年8月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウイ−ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ス−ジン・パク
(72)【発明者】
【氏名】チェ−ゴン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン−ペ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョン−ヒュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン−キ・ホン
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/102219(WO,A1)
【文献】 特表2014−513385(JP,A)
【文献】 特表2015−525189(JP,A)
【文献】 特表2014−525651(JP,A)
【文献】 特表2015−524993(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0045420(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0104705(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0147751(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/196092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36 − 4/38
C01B 33/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表され、超気孔構造を有するシリコンフレークを活物質として含み、
前記シリコンフレークは、気孔の大きさが50nm超過500nm以下の大空隙、気孔の大きさが2nm超過50nm以下の中空隙、及び気孔の大きさが0.5nm以上2nm以下の微細空隙を含む超気孔構造を有し、
前記大空隙は、前記シリコンフレーク内部に形成された孔であり、前記中空隙及び微細空隙は、前記大空隙の表面に形成されていることを特徴とする負極材。
xSi・(1−x)A …(1)
上記式において、
0.5≦x≦1.0であり;
Aは不純物であって、Al、MgO、SiO、GeO、Fe、CaO、TiO、NaO、KO、CuO、ZnO、NiO、Zr、Cr及びBaOからなる群より選択される1つ以上の化合物である。
【請求項2】
前記シリコンフレークは、平均気孔径が100nm〜150nmであることを特徴とする請求項1に記載の負極材。
【請求項3】
前記シリコンフレークは、全体体積を基準に10%〜50%の孔隙率を有することを特徴とする請求項1に記載の負極材。
【請求項4】
前記シリコンフレークは、20〜100nmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の負極材。
【請求項5】
前記シリコンフレークは、200nm〜50μmの大きさを有することを特徴とする請求項1に記載の負極材。
【請求項6】
前記シリコンフレークは、BET表面積が70m/g〜250m/gであることを特徴とする請求項1に記載の負極材。
【請求項7】
前記シリコンフレークは、炭素コーティングをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の負極材。
【請求項8】
前記炭素コーティングは、1〜100nmの厚さを有することを特徴とする請求項7に記載の負極材。
【請求項9】
請求項1に記載のシリコンフレークを製造する方法であって、
i)粘土と金属還元剤との混合物を500℃〜800℃で30分〜6時間熱処理する過程;
ii)前記熱処理された混合物を酸性溶液に入れて撹拌する過程;及び
iii)前記撹拌済みの結果物から超気孔構造のシリコンフレークを収得する過程;を含むことを特徴とするシリコンフレークの製造方法。
【請求項10】
前記シリコンフレークの製造方法は、iv)前記収得されたシリコンフレークに炭素含有ガスを供給して熱処理する過程をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項11】
前記粘土は、粘土鉱物としてモンモリロナイト、雲母、滑石及びこれらの組合せからなる群より選択される鉱物を含むことを特徴とする請求項に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項12】
前記金属還元剤は、前記粘土に含まれているシリコン酸化物を除いた金属酸化物と同じ金属であることを特徴とする請求項に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項13】
前記過程i)の粘土と金属還元剤との混合比は、粘土に含まれているシリコン酸化物の酸素と金属還元剤とのモル比率が1:0.5〜1:2になるように調節されることを特徴とする請求項に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項14】
前記過程ii)の酸性溶液に入れて撹拌する過程は、第1酸性溶液に入れて撹拌する過程;及び第2酸性溶液に入れて撹拌する過程を順次行うことを特徴とする請求項に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項15】
前記過程ii)の第1酸性溶液及び第2酸性溶液は、それぞれ独立して、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、ヨウ素酸及びこれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項16】
前記第1酸性溶液は塩酸であり、第2酸性溶液はフッ酸であることを特徴とする請求項14に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項17】
前記炭素含有ガスは、アセチレンガス、エチレンガス、プロピレンガス、メタンガス、エタンガス及びこれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項10に記載のシリコンフレークの製造方法。
【請求項18】
前記過程iv)の熱処理は、500℃〜1000℃で1分〜30分間行われることを特徴とする請求項10に記載のシリコンフレークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンフレーク(silicon flake)を含む負極材及びシリコンフレークの製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2016年8月18日出願の韓国特許出願第10−2016−0104774号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の使用が急激に増加する一方で、代替エネルギー、クリーンエネルギーの使用に対する要求が高まっており、その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学を用いた発電、蓄電分野である。
【0004】
このような電気化学的エネルギーを用いる電気化学素子の代表的な例としては二次電池が挙げられ、益々その使用領域が拡がっている。
【0005】
近年、携帯用コンピューター、携帯電話、カメラなどの携帯用機器に対する技術開発と需要の増加とともに、エネルギー源として二次電池の需要も急激に伸びている。中でもリチウム二次電池は、高いエネルギー密度と作動電位を有し、サイクル寿命が長くて自己放電率が低いことから活発に研究され、商用化を実現して広く使用されている。
【0006】
また、環境問題への関心が高まるにつれて、大気汚染の主な原因の1つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両に代替可能な電気自動車、ハイブリッド電気自動車などに対する研究が活発に行われている。このような電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力源としては、主にニッケル水素金属二次電池が使用されているが、高いエネルギー密度と放電電圧を有するリチウム二次電池の使用も活発に研究されており、一部は商用化段階にある。
【0007】
リチウム二次電池の負極(anode)活物質としては、黒鉛を含む材料が広く用いられている。黒鉛を含む材料がリチウムを放出するときの平均電位は約0.2V(Li/Li+基準)であり、放電時にその電位が比較的平坦に推移する。そのため、電池の電圧が高くて一定になる長所がある。しかし、黒鉛材料の単位質量当り電気的容量(capacity)は372mAh/gと小さいうえで、現在黒鉛材料の容量はこのような理論的な容量に近接しているため、追加的な容量の増加は困難な実情である。
【0008】
そこで、リチウム二次電池のさらなる高容量化のため、様々な負極活物質が研究されている。高容量の負極活物質としては、リチウムと金属間化合物を形成する材料、例えば、シリコンやスズなどが有望な負極活物質として期待されている。特に、シリコンは黒鉛に比べて約10倍以上の高い理論容量(4,200mAh/g)を有する合金タイプの負極活物質であって、近年リチウム二次電池の負極活物質として脚光を浴びている。
【0009】
しかし、シリコンは充放電時に大きい体積変化(〜300%)が起き、それによって物質間の物理的接触が途切れて破片化するため、急激にイオン伝導性、電気伝導性などが低下して、実質的な寿命特性が急減する傾向を見せる。
【0010】
そこで、Siの体積変化による問題点を解決可能なナノ構造のSiを設計/合成するボトムアップ(bottom−up)方式に多大な関心が寄せられているが、製造工程が複雑であり、収率が低くて製造コストが高いため、商用化には十分でないという短所がある。
【0011】
したがって、シリコンをリチウム二次電池に適用するため、寿命特性及びレート特性の向上と共に、充放電時の体積変化を最小化する技術の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、上記のような従来技術の問題点と要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0013】
本発明者らは徹底した研究と多様な実験を繰り返した結果、安価な粘土(clay)から金属還元剤を用いて超気孔(hyperporous)構造のフレーク状のシリコンを合成する場合、製造コストの減少及び製造工程の単純化が可能であるだけでなく、形成されたシリコンフレークを負極活物質として使用してリチウム二次電池を製造する場合、充放電時の体積膨張を緩衝して、寿命特性及びレート特性が共に向上する効果を発揮することを確認し、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明の負極材は、下記化学式1で表され、超気孔構造を有するシリコンフレークを活物質として含むことを特徴とする。
xSi・(1−x)A …(1)
上記式において、
0.5≦x≦1.0であり;
Aは不純物であって、Al、MgO、SiO、GeO、Fe、CaO、TiO、NaO、KO、CuO、ZnO、NiO、Zr、Cr及びBaOからなる群より選択される1つ以上の化合物である。
【0015】
ここで、前記xは、重量比であり、前記「シリコンフレーク(silicon flake)」とは、具体的に、2次元結晶形態または四面体(tetrahedral)結晶形態を有するシリコン原子が2次元的に周期的に配列されている板状構造または実質的な板状構造を意味する。
【0016】
また、前記「超気孔(hyperporous)構造」とは、気孔の大きさを基準に分類したとき、大空隙、中空隙及び微細空隙が一緒に形成されている構造を意味する。
【0017】
したがって、前記超気孔構造を有するシリコンフレークは、例えば、気孔の大きさが50nm超過500nm以下の大空隙、気孔の大きさが2nm超過50nm以下の中空隙、及び気孔の大きさが0.5nm以上2nm以下の微細空隙を含む超気孔構造を有し得る。
【0018】
このような超気孔構造は、本発明のシリコンフレークが合成されるときに形成されるものであるが、後述されるように、本発明のシリコンフレークは粘土と金属還元剤とを熱処理する金属熱還元法によって合成される。この場合、まず粘土と金属還元剤との表面反応を通じて粘土の表面には中空隙と微細空隙が一緒に形成され、大空隙は形成されない。その後、反応が進むほど、表面に形成された中空隙と微細空隙を通じて粘土の内部に浸透した金属還元剤が内部還元反応を起こし、内部で形成された金属酸化物は後ほど大空隙を形成させる役割を果たしながら、このような金属酸化物を除去する後処理を通じて金属酸化物の位置に大空隙が形成されることで超気孔構造が完成される。
【0019】
このような超気孔構造のシリコンフレークを負極活物質として使用する場合は、超気孔構造によって充放電時のシリコン体積膨張を緩和でき、電解質との接触面積を広げながらリチウムイオンの移動距離を減らすことで、寿命特性及びレート特性が著しく向上する効果を発揮することができる。
【0020】
このような意図する効果をより効果的に発揮し、体積対比優れた容量を具現するため、前記超気孔構造を有するシリコンフレークの空隙の平均気孔径は100nm〜150nmであり、全体体積を基準にして10%〜50%の孔隙率、詳しくは10%〜30%の孔隙率を有し得る。
【0021】
また、シリコンフレークのBET表面積は、70m/g〜250m/gであり得る。詳しくは、120m/g〜210m/gであり得、より詳しくは、150m/g〜190m/gであり得る。
【0022】
ここで、前記孔隙率は空隙の全体体積とタップ密度に基づいて概算し、前記BET表面積は、Micromeritics ASAP 2020 instrumentを用いて窒素吸脱着等温線測定方法(N2 adsorption−desorption isotherm measurement)によって測定した。さらに、上記の結果にBJH(Barrett、Johner and Halenda)方程式を適用して平均気孔径を計算した。
【0023】
また、前記シリコンフレークは、20〜100nmの厚さを有し得、200nm〜50μmの大きさを有し得るが、これらに限定されることはない。
【0024】
ただし、上記範囲を満足するほどに薄くて大面的に形成される場合、リチウムイオンの移動距離をより効果的に減少させる一方、電解質の含浸が容易であるため、さらに望ましい。詳しくは、前記シリコンフレークは30〜50nmの厚さを有し得、1μm〜5μmの大きさを有し得る。
【0025】
このような、シリコンフレークは重ねられて形成される構成を1つの単位(1個)にするとき、1個が形成されても良いが、前記シリコンフレークを形成する合成条件によって、2個〜6個、詳しくは2個〜4個のフレークが積層されることもあり、これらに限定されない。リチウム二次電池の負極活物質として使用する場合は、2個以上のシリコンフレークが積層された形態で使用することができる。したがって、前記「シリコンフレークを活物質として含む」とは、前記シリコンフレーク状の物質を1つの単位体にするとき、1個以上積層された場合を含むことは言うまでもない。
【0026】
一方、本発明によるシリコンフレークは、活物質として使用される場合、さらに電子伝導性を高めてレート特性を向上させるため、炭素コーティングされても良い。
【0027】
このとき、前記炭素コーティングは、シリコンフレークの製造過程で追加的な工程で行われても良く、具体的な内容は以下の製造方法で説明する。
【0028】
前記炭素コーティングは1〜100nm、詳しくは3〜30nm、より詳しくは5nm〜15nmの厚さを有し得る。
【0029】
上記の範囲を満足する場合、炭素コーティングから得ようとしたレート特性が改善され、炭素コーティングを均一に形成でき、結果的に電気化学的性能が向上して、全体体積対比容量を発現するシリコンの含有量が適切に確保されて容量減少の問題を防止することができる。
【0030】
また、本発明は、前記シリコンフレークを製造する方法であって、
i)粘土と金属還元剤との混合物を500℃〜800℃で30分〜6時間熱処理する過程;
ii)前記熱処理された混合物を酸性溶液に入れて撹拌する過程;及び
iii)前記撹拌済みの結果物から超気孔構造のシリコンフレークを収得する過程;を含むことを特徴とするシリコンフレークの製造方法を提供する。
【0031】
上記のような方法によって、粘土と金属還元剤との均一な混合物を金属還元剤の融点付近で反応させれば、金属還元剤が融け始めて粘土の表面で還元反応を起こし、最外郭層のシリカをシリコンに還元させながら過量の熱を放出するようになる。そして、このように放出された熱は粘土内に金属酸化物からなる下位層に伝達され、前記金属酸化物が逆触媒(negative catalyst)の役割を果たしながら還元反応から発生した過量の熱を緩和する熱スカベンジャーの役割も果たす。そして、その後、このような金属酸化物を除去する酸性溶液後処理を通じて金属酸化物の位置に大空隙が形成され、既に存在する中空隙と微細空隙とともに超気孔構造のシリコンフレークが得られる。
【0032】
このとき、シリコンフレークを得るために使用される粘土は層状構造を有し得、詳しくは、シリコンフレークの形状に相応する板状構造に相応する構造を有し得る。
【0033】
このように、入手し易くて安価な粘土から純度90重量%以上、詳しくは95重量%以上の高純度シリコンを得られるため、上記の製造方法による場合、製造コスト及び工程の面から非常に優秀である。
【0034】
前記粘土は、具体的に、層状構造を有する粘土であれば限定されないが、粘土鉱物としてモンモリロナイト(montmorillonite)、雲母(mica)、滑石(talc)及びこれらの組合せからなる群より選択される鉱物を含むものであり得、詳しくは、滑石であり得る。
【0035】
このように粘土に含まれる鉱物の種類によって、含まれる金属酸化物の種類が変わり得る。したがって、粘土に含まれているシリカを還元させてシリコンを得るための金属還元剤は、前記粘土に含まれているシリコン酸化物を除いた金属酸化物と同じ金属であり得、詳しくは、Al、Mg、Ge、Fe、Ca、Ti、Cu、Zn、Ni、Zr、Cr、Ba及びこれらの組合せからなる群より選択される金属であり得、詳しくは、AlまたはMgであり得る。このような金属還元剤は詳しくは粉末状であり得るが、これに限定されることはない。
【0036】
前記過程i)において、前記粘土と金属還元剤との混合比は、粘土に含まれているシリコン酸化物の酸素と金属還元剤とのモル比率が1:0.5〜1:2になるように混合することができる。
【0037】
上記の範囲から外れて、金属還元剤が多過ぎる場合はかえって金属還元剤が不純物になり得、少な過ぎる場合はシリコンに還元されずに残るシリカが存在し得るため、純度を低下させて望ましくない。
【0038】
このように混合された粘土と金属還元剤との混合物は熱処理を経るようになるが、このような熱処理によって、粘土に含有されたシリカは還元されてシリコンフレークを形成し、前記金属還元剤は酸化される。このような過程を1つの例として化学式で表せば下記のようである。
(SiO)x(MgO)y+2xMg→xSi+(2x+y)MgO
(SiO)x(Al)y+4/3xAl→xSi+(2/3x+y)MgO
【0039】
このような還元反応のための前記過程i)の熱処理は、500℃〜800℃で30分〜6時間行われ、詳しくは、600℃〜800℃で1時間〜3時間行うことができる。
【0040】
上記の範囲から外れて、温度が低過ぎるか又は時間が短い場合は、粘土に含まれたシリカが十分還元されずシリコンフレークを収得し難く、温度が高過ぎるか又は時間が長い場合は、結晶構造の再配列が起きるなど所望の形態の超気孔構造を得られず望ましくない。
【0041】
また、前記熱処理は不活性気体を含む雰囲気下で行われ、詳しくは、窒素気体、アルゴン気体、ネオン気体、ヘリウム気体及びこれらの組合せからなる群より選択される気体を含む雰囲気下で行われ、詳しくはアルゴン気体雰囲気下で行われても良い。
【0042】
前記過程で酸化された金属還元剤は酸化物を形成し、これは不純物として作用するため、以後の過程ii)で酸性溶液との撹拌によって除去し、還元されたシリコンフレークのみを高純度で収得することができる。
【0043】
このとき、前記過程ii)の酸性溶液に入れて撹拌する過程は、第1酸性溶液に入れて撹拌する過程;及び第2酸性溶液に入れて撹拌する過程を順次行うことができる。
【0044】
このように二回酸性溶液に入れて撹拌するのは、熱処理を経た還元反応済みの混合物に存在する金属酸化物及び反応できずに残っているシリカを全て除去するためである。
【0045】
このような金属酸化物とシリカの除去に使用される酸性溶液は、詳しくは、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、ヨウ素酸及びこれらの組合せからなる群より選択されるものであり得る。すなわち、第1酸性溶液及び第2酸性溶液は、それぞれ独立して、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、ヨウ素酸及びこれらの組合せからなる群より選択できる。より詳しくは、第1酸性溶液は塩酸であり、第2酸性溶液はフッ酸であり得る。前記塩酸は金属酸化物を溶かし、前記フッ酸はシリカを溶かす役割を果たす。
【0046】
このように酸性溶液と撹拌する過程は、残留する不純物の含有量によって適切に決定でき、詳しくは、24℃〜40℃で5分〜5時間行われ、第1酸性溶液が塩酸であるとき、第1酸性溶液との撹拌時間は具体的に30℃〜40℃で2時間〜5時間行われても良く、第2酸性溶液がフッ酸であるとき、第2酸性溶液との撹拌時間は常温で5分〜30分間行われても良い。
【0047】
このように不純物まで除去された物質は、前記過程iii)で、前記撹拌済みの結果物から超気孔構造のシリコンフレークを収得することができる。前記超気孔構造のシリコンフレークを収得または分離する方法は、特に制限されないが、例えば、フィルタリングまたは遠心分離機によって行われ得る。
【0048】
前記遠心分離機で溶液に含まれた結果物を収得する方法は、当業界で周知の方法と同様であり、前記フィルタリングは詳しくは真空フィルターを用いる方法であり得る。真空フィルターを通じて結果物を収得する方法では、真空フィルターを適切にセットした後、真空フィルター容器に前記撹拌済みの溶液を注ぐことで酸性溶液及びその他の溶媒をシリコンフレークと分離できる。
【0049】
このとき、遠心分離機を用いて収得する方法は、溶媒の体積が最小200ml以上であり、酸性溶液と中性溶液との場合、完全に分離できないという問題があるため、詳しくは、前記フィルタリングを通じて前記撹拌済みの物質から超気孔構造のシリコンフレークを合成することがより望ましい。
【0050】
一方、前記シリコンフレークの製造方法は、
iv)前記収得されたシリコンフレークに炭素含有ガスを供給して熱処理する過程をさらに含むことができる。
【0051】
このような過程を経ることで、炭素がコーティングされたシリコンフレークを収得することができる。
【0052】
このとき、前記炭素含有ガスは、アセチレンガス、エチレンガス、プロピレンガス、メタンガス、エタンガス及びこれらの組合せから選択でき、詳しくは、アセチレンガスであり得る。
【0053】
また、炭素含有ガスを用いて炭素をコーティングするための前記過程iv)の熱処理は、500℃〜1000℃で1分〜30分、詳しくは、1分〜10分間行うことができる。
【0054】
上記の範囲から外れて、低過ぎる温度で行うか又は短過ぎる時間行う場合は、所望の程度に炭素がコーティングされず、高過ぎる温度で行うか又は長過ぎる時間行う場合は、シリコンフレークの結晶構造及び超気孔構造に影響を及ぼし、炭素がコーティングされる形態ではなく、シリコンフレークと複合体を形成する形態にその構造が変形される恐れがあるため、望ましくない。
【0055】
このように製造完了段階で炭素含有ガスを用いてシリコンフレークに炭素をコーティングする場合は、炭素がシリコンの空隙を塞ぐことなく連結性を有していることから、電子移動通路(path)を効果的に形成するだけでなく、ガス状態でコーティングされるため、シリコンフレークの表面に均一にコーティングできる。なお、製造工程で炭素化合物を入れて一緒に反応させることでシリコンと炭素化合物との複合体が形成され、炭素化合物がシリコンと複合体を形成しながら炭素化合物が空隙の形成を妨害でき、金属熱還元反応で発生した過量の熱によってシリコンカーバイドが形成され得るが、シリコンカーバイドは電気化学的に非活性であるため、シリコンフレークの構造維持と均一な炭素コーティング、及び活物質の損失防止の面からより優れる。
【0056】
また、本発明は、前記負極材を含む負極及び該負極を含む二次電池を提供する。
【0057】
本発明による前記二次電池は、一般に、正極、負極、分離膜及びリチウム塩含有非水電解質を含む。したがって、以下では上述した本発明による負極材以外のリチウム二次電池を構成する他の成分について説明する。
【0058】
前記正極は、正極集電体上に正極活物質、導電材及び結着剤の混合物を塗布した後、乾燥して製造され、必要によっては、前記混合物に充填剤をさらに添加しても良い。
【0059】
前記正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+yMn2−y(ここで、yは0〜0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−y(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、y=0.01〜0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−y(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、y=0.01〜0.1)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLi一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0060】
前記導電材は、通常正極活物質を含む混合物の全体重量を基準に1〜50重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、グラフェン(graphene)、黒鉛ペレット、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;CNTなどの炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが挙げられる。
【0061】
前記結着剤は、活物質と導電材などとの結合や集電体に対する結合を補助する成分であって、通常正極活物質を含む混合物全体重量を基準に1〜50重量%で添加される。このような結着剤の例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分であって、選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発することなく繊維状材料であれば特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が挙げられる。
【0062】
前記正極集電体は、一般に3μm〜500μmの厚さで製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが挙げられる。集電体の表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0063】
前記負極は、当業界で知られた通常の方法によって活物質、導電材及び結着剤の混合物である負極材を負極集電体に結着した形態で製造し、前記正極と同様に、リチウムイオンを吸蔵及び放出する役割を果たす。
【0064】
前記負極活物質は、本発明で定義するシリコンフレークの外に、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、キッシュ黒鉛(Kish graphite、KG)、SFGシリーズ(SFG−6、SFG−15など)、高配向性熱分解グラファイト(highly oriented pyrolytic graphite)、MPCF(Mesophase pitch based carbon fiber)、MCMBシリーズ(MCMB 2800、MCMB 2700、MCMB 2500など)などのように炭素原子のみからなり、2000℃以上の温度で熱処理されて完全に結晶化された構造(ordered structure)の炭素材なども一緒に使用可能である。
【0065】
前記負極集電体は、一般に3μm〜500μmの厚さで製造される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などが挙げられる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用できる。
【0066】
前記負極は、負極集電体上に負極活物質、導電材及び結着剤の混合物を塗布した後、乾燥して製造され、必要によっては、前記混合物に充填剤をさらに添加しても良い。このとき、使用される導電材、結着剤及び充填剤の種類及び含量は前記正極で説明された内容を参考して適用され得る。
【0067】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使用される。分離膜の気孔径は一般に0.01〜10μmであり、厚さは一般に5〜300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどから製造されたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合は、固体電解質が分離膜を兼ねても良い。
【0068】
前記リチウム塩含有非水系電解質は非水電解液とリチウム塩からなり、前記非水電解液としては非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0069】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0070】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0071】
前記リチウム塩は、前記非水電解質に溶解され易い物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LII、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム及びテトラフェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0072】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されても良い。場合によっては、不燃性を与えるため、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませても良く、高温保存特性を向上させるために二酸化炭素ガスをさらに含ませても良い。
【発明の効果】
【0073】
本発明による負極材は、安価な粘土から金属還元剤を用いて合成した超気孔構造のシリコンフレークを含むことで、シリコンフレークの合成による製造コストの低減及び製造工程の単純化が可能であるだけでなく、これを使用してリチウム二次電池を製造する場合、多様な大きさの空隙がシリコンの体積膨張を緩和させ、マイクロメートルサイズのシリコンであるにも超気孔構造によって電解質との接触面積を広げて、従来のバルク(bulk)シリコンに比べてリチウムイオンの移動距離を減らすため、寿命特性及びレート特性が共に向上する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】実施例1で使用した粘土(talc)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】実施例1で製造したシリコンフレークのSEM写真である。
図3】実施例1で製造したシリコンフレークの透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
図4】実施例1で製造したシリコンフレークの高倍率TEM写真である。
図5】実施例1で製造したシリコンフレークのX線回折(XRD)グラフである。
図6】実施例1で製造したシリコンフレークの反応時間による空隙形成過程を示したTEM写真である。
図7】実施例2で製造した炭素コーティングされたシリコンフレークのSEM写真である。
図8】実施例2で製造した炭素コーティングされたシリコンフレークのX線回折グラフである。
図9】比較例1で使用した粘土(Nanoclay)のSEM写真である。
図10】比較例1で製造した多孔性シリコンのSEM写真である。
図11】比較例2で炭素化合物を追加して製造したシリコンフレークのSEM写真である。
図12】比較例2で炭素化合物を追加して製造したシリコンフレークのX線回折グラフである。
図13】比較例3で製造した炭素コーティングされた多孔性バルクシリコンのSEM写真である。
図14】比較例4で製造した超気孔構造のないシリコンフレークのSEM写真である。
図15】比較例4で製造した超気孔構造のないシリコンフレークのX線回折グラフである。
図16】比較例5で製造したシリコンフレークのSEM写真である。
図17】比較例6で製造したシリコンフレークのSEM写真である。
図18】実験例4で実施例1及び実施例2のシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池の初期充放電グラフである。
図19】実験例4で比較例1のバルクシリコンを活物質として使用して製造したコイン電池の初期充放電グラフである。
図20】実験例4で比較例2のカーボン化合物が添加されたシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池の初期充放電グラフである。
図21】実験例4で比較例3の炭素コーティングされた多孔性バルクシリコンを活物質として使用して製造したコイン電池の初期充放電グラフである。
図22】実験例4で比較例4の超気孔構造のないシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池の初期充放電グラフである。
図23】実験例5で実施例1及び実施例2のシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池の充放電寿命特性を示したグラフである。
図24】実験例5で実施例3及び実施例4の異なる厚さのカーボンがコーティングされたシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池の充放電寿命特性を示したグラフである。
図25】実験例5で比較例1のバルクシリコンを活物質として使用して製造したコイン電池の充放電寿命特性を示したグラフである。
図26】実験例5で比較例2のカーボン化合物が添加されたシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池の充放電寿命特性を示したグラフである。
図27】実験例5で比較例3の炭素コーティングされた多孔性バルクシリコンを活物質として使用して製造したコイン電池の充放電寿命特性を示したグラフである。
図28】実験例5で比較例4の超気孔構造のないシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池の充放電寿命特性を示したグラフである。
図29】実験例6で実施例1及び実施例2のシリコンフレークを活物質として使用して製造したコイン電池のC−レートによる充放電特性を示したグラフである。
図30】比較例7で使用された珪藻土のSEM写真である。
図31】比較例7で最終的に収得されたシリコンフレークのSEM写真である。
図32】比較例8で使用されたスラグのSEM写真である。
図33】比較例8で最終的に収得されたシリコンフレークのSEM写真である。
図34】実験例4で実施例1、実施例2、比較例7及び比較例8のシリコン物質を活物質としてそれぞれ使用して製造したコイン電池の初期充放電グラフである。
図35】実験例5で実施例1、実施例2、比較例7及び比較例8のシリコン物質を活物質として使用して製造したコイン電池の充放電寿命特性を示したグラフである。
図36】実験例6で実施例1、実施例2、比較例7及び比較例8のシリコン物質を活物質として使用して製造したコイン電池のC−レートによる充放電特性を示したグラフである。
図37】650℃で6時間の熱処理反応を経たシリコンフレークのTEM写真である。
図38】本発明の一実施例による超気孔構造を有するシリコンフレークの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらのみに限定されることはない。
【0076】
<実施例1>
1gの粘土(talc)を0.7gのマグネシウムと乳鉢を用いて均一に粉砕し混合した。均一に混ぜた混合物を反応容器に入れた後、650℃で3時間アルゴン雰囲気で加熱して還元反応を誘導した。反応を終えたシリコンフレークは0.5Mの200mL塩酸水溶液に入れて35℃で3時間混合して、酸化マグネシウムとその他の異物を除去した。反応の後、残ったシリカの除去は、0.1〜5%のフッ酸に5〜30分間シリコンフレークを混合して行った。真空フィルターを通じて最終的に超気孔構造のシリコンフレークを合成した。
【0077】
<実施例2>
実施例1で合成したシリコンフレークに900℃のアルゴン雰囲気で3分間アセチレンガスを吹き込んで反応を誘導した。常温まで自然に冷却した後、最終的に9nmの厚さで炭素がコーティングされたシリコンフレークを合成した。
【0078】
<実施例3>
前記実施例2で炭素の厚さを5nmにしたことを除き、同様にしてシリコンフレークを合成した。
【0079】
<実施例4>
前記実施例2でコーティングされた炭素の厚さを15nmにしたことを除き、同様にしてシリコンフレークを合成した。
【0080】
<比較例1>
前記シリコンフレークの合成実施例で使用された粘土の種類を除いて、すべての過程は同様である。すなわち、比較例1で使用した粘土はナノクレイ(Nanoclay)である。
【0081】
<比較例2>
前記実施例1で1gの粘土とともに0.05gの炭素化合物をさらに添加して反応させたことを除いて、実施例1と同様にして酸化グラフェンが一緒に含まれたシリコン複合体を得た。
【0082】
<比較例3>
50gのバルクシリコンを40mMのCuSOと5MのHFとの混合溶液100mLに添加した後、50℃で12時間撹拌させる。反応の後、フィルターを通じて大空隙を含む多孔性シリコンを濾過し、残っているCu金属は50mLの硝酸溶液で50℃で3時間撹拌して除去した。前記多孔性シリコンに900℃のアルゴン雰囲気で28分間アセチレンガスを吹き込んで反応を誘導した。常温まで自然に冷却した後、最終的に15重量%のカーボンがコーティングされた多孔性シリコンを合成した。
【0083】
<比較例4>
実施例1で使用した粘土の種類をイライト(Illite)にしたことを除き、同様にしてシリコンフレークを合成した。
【0084】
<比較例5>
実施例1で還元反応温度を400℃にしたことを除き、同様にしてシリコンフレークを合成した。
【0085】
<比較例6>
実施例1で還元反応時間を10分間にしたことを除き、同様にしてシリコンフレークを合成した。
【0086】
<比較例7>
粘土(talc)の代りに珪藻土(diatomite)を使用した点を除き、実施例1と同様の方法でシリコンフレークを合成した。
【0087】
<比較例8>
粘土(talc)の代りにスラグを使用した点を除き、実施例1と同様の方法でシリコンフレークを合成した。ここで使用されたスラグは鉄スラグ(iron slag)とも呼ばれ、その組成はCaO(43.3wt%)、SiO(34.5wt%)、Al(13.3wt%)、MgO(3.6wt%)、TiO(1.7wt%)及びFe(1.1wt%)であった。
【0088】
<実験例1>
実験例1−1
外観評価のため、実施例1、2及び比較例1〜6で使用された粘土と、それを使用して製造されたシリコンフレークまたはバルクシリコンのSEM写真及び/またはTEM写真を図1〜4、7、9〜11及び13、14、16、17に示した。
【0089】
具体的に、図1は実施例1で使用された粘土(talc)のSEM写真であり、図2は実施例1で最終的に収得されたシリコンフレークのSEM写真である。
【0090】
図1を参照すれば、原料物質である粘土(talc)の層状構造を確認できるが、これはシリカと金属酸化物との共有結合を通じて2〜4個の積層されたフレークを含み、このように積層された複数のフレークを1つの単位構造とするとき、50〜200nmの厚さを有することを確認できる。
【0091】
図2を参照すれば、実施例1で合成したシリコンフレークが超気孔構造を有していることが分かる。
【0092】
また、実施例1で最終的に収得されたシリコンフレークの構造をより具体的に捉えるため、TEM写真を撮影して図3に示した。
【0093】
図3を参照すれば、シリコンフレークの表面に100〜150nm大きさの大空隙が均一に形成されたことを確認でき、シリコンフレークが2〜4層に積層されていることを確認できる。
【0094】
図4の内部図面は図4の高倍率イメージである。図4を参照すれば、シリコンフレークの表面に中空隙及び微細空隙が形成されていることを確認できる。
【0095】
すなわち、図3及び4を総合的に分析すれば、実施例1によるシリコンフレークは超気孔構造を有していることが分かる。
【0096】
また、図7は実施例2で製造された炭素コーティングされたシリコンフレークのSEM写真であり、図7の内部図面は図7の高倍率イメージである。
【0097】
図7を参照すれば、炭素層がコーティングされた後もシリコンフレークが超気孔構造をよく維持していることが分かる。
【0098】
一方、図9は比較例1で使用された粘土(Nanoclay)のSEM写真であり、図10は比較例1で最終的に収得されたバルクシリコンのSEM写真である。
【0099】
図9を参照すれば、原料物質である粘土(Nanoclay)の層状構造を確認できるが、これはシリカと金属酸化物との共有結合を通じて積層されたナノシート(nanosheet)を含み、積層されたナノシートを1つの単位構造とするとき、約10〜50nmの厚さを有することを確認できる。
【0100】
一方、図10を参照すれば、比較例1で合成したシリコンでは従来の層状構造を確認することができず、100〜300nmの大空隙を主に有する3次元バルクシリコンの構造であることが分かる。
【0101】
ナノクレイの場合、内部の金属酸化物(すなわち、アルミニウムオキサイド)が逆触媒(heat scavenger)の役割を果たすことができないため、還元反応で発生した過量の熱がそのまま構造に伝達されながら小さいナノクレイ同士が固まった様子を確認できる。そして、還元の結果物で生成されたMgOを除去しながら生じた100〜300nmの大空隙が全部であり、それによって超気孔構造を有しない。このような理由から当然従来の層状構造やシリコンフレークのような層状構造を維持できなくなる。
【0102】
図11は比較例2で製造された炭素化合物が添加されたシリコンフレークのSEM写真であり、図11の内部図面は図11の高倍率イメージである。
【0103】
図11を参照すれば、炭素化合物を添加して合成したシリコンフレークの場合、フレークの構造はある程度維持されることを確認したが、還元反応時に炭素化合物が還元反応を妨害することから、気孔の構造が明確でなく、不均一な構造が形成されたことを確認できる。
【0104】
図13は、比較例3で製造された炭素コーティングされた多孔性バルクシリコンのSEM写真である。
【0105】
図13を参照すれば、大空隙のみで構成された多孔性構造が3次元構造のバルクシリコンに形成されており、超気孔構造は確認できなかった。
【0106】
さらに、比較例4で最終的に収得されたシリコンフレークの構造をより具体的に把握するため、SEM写真を撮影して図14に示した。
【0107】
図14を参照すれば、原料物質である粘土(illite)から製造されたシリコンはフレーク構造を見せるが、表面の超気孔構造が存在しないことを確認できる。
【0108】
図15は、比較例4で製造した超気孔構造のないシリコンフレークのX線回折グラフである。
【0109】
また、図16は比較例5で収得されたシリコンフレークのSEM写真であり、図16の内部図面は図16の高倍率イメージである。
【0110】
図16を参照すれば、400℃の温度条件で合成されたシリコンフレークは使用された粘土(talc)のフレーク構造を有しているが、気孔構造が不規則であって超気孔構造を具現できなかったことが分かる。
【0111】
通常のマグネシウム還元反応は、マグネシウムの融点付近でマグネシウムが融けてシリカと反応しながら行われるが、400℃ではマグネシウムが完全に反応に参加しないため、シリコンフレークの完璧な還元を達成できず、それによって超気孔構造も形成できなかった。
【0112】
図17は、比較例6で収得されたシリコンフレークのSEM写真である。
【0113】
図17の内部図面は図17の高倍率イメージである。図17を参照すれば、650℃、10分の反応条件ではシリコンフレークの表面に大空隙が形成されず、中空隙と微細空隙で構成された層が表面を覆っていることが分かる。反応時間が10分である場合、反応が十分行われず、シリコンフレークは超気孔構造を完璧に形成できないことが分かる。
【0114】
すなわち、図16及び図17を総合的に分析すれば、実施例1で適用された反応温度及び反応時間を含む合成条件の妥当性を確認できる。
【0115】
実験例1−2
外観評価のため、比較例7及び8で使用された珪藻土及びスラグ、これらを使用して製造されたシリコンフレークのSEM写真を図30〜33に示した。
【0116】
具体的に、図30は比較例7で使用された珪藻土のSEM写真であり、図31は比較例7で最終的に収得されたシリコンフレークのSEM写真である。
【0117】
また、図32は比較例8で使用されたスラグのSEM写真であり、図33は比較例8で最終的に収得されたシリコンフレークのSEM写真である。
【0118】
粘土として滑石(talc)を使用して製造されたシリコンフレークを示した図2では2次元構造の多孔性シリコンが合成されている一方、比較例7では3次元構造の多孔性シリコンが、比較例8では500nm大きさのメソポーラスシリコン粒子が合成され、超気孔構造は形成されなかった。
【0119】
<実験例2>
実施例1で最終的に収得されたシリコンフレークの反応時間による空隙構造形成過程をより具体的に捉えるため、TEM写真を撮影して図6に示した。
【0120】
図6を参照すれば、反応時間が10分である場合、前記シリコンフレークの大空隙構造をほとんど観察できず、すべての表面が中空隙からなっていることを確認できる。厚さも粘土よりかえって大きくなったことが分かる。また、シリコンの結晶性が低下することを確認できる。
【0121】
反応時間が30分の場合、大空隙の構造が具現され始め、反応熱によって、粘土の積層構造から剥離した一層のシリコンフレークが形成されたことが分かる。
【0122】
また、シリコンフレークの表面の50〜70%が中空隙からなっていることを確認でき、結晶性は増加したことが分かる。
【0123】
反応時間が1時間の場合、大空隙の大きさがより均一になって、大空隙同士が重なって見えることから、剥離したシリコンフレークが2〜3層に積層され始めることが分かる。
【0124】
また、シリコンフレークの表面の10〜30%が中空隙からなっていることを確認でき、結晶性は増加したことが分かる。
【0125】
反応時間が3時間の場合、大空隙の大きさが多少小さくなって、3〜4層に積層されたことを確認できる。
【0126】
また、シリコンフレークの表面の中空隙構造が無くなり、密集した構造の骨組を確認できる。
【0127】
結論的に、図6のTEM写真を総合的に分析すれば、金属還元剤による反応初期には表面に中空隙が過量形成され、時間が経つほど、粘土の内部まで反応が進みながら剥離及び大空隙構造が明確になることを確認でき、反応時間が30分を超過する場合、再度積層される様子を見せて、大空隙の大きさも小さくなることが分かる。したがって、本願によるシリコンフレークを収得するためには最小30分の反応時間を必要とし、詳しくは1時間〜3時間の反応時間を有することが最も望ましい。
【0128】
図37は、650℃、6時間の熱処理反応を経たシリコンフレークのTEM写真である。図37を参照すれば、熱処理時間を長くすることによって全体的な粒子のサイズが大きくなることが分かる。これは典型的に高温で長時間反応させたときに現れる凝集(aggregation)現象であると見られ、もう1つ特異な点は、上述したように大空隙の大きさが微細に小さくなって、その境界がはっきり見えないことが分かる。その理由としては、多くの層のシリコンフレークが固まりながら現れる現象であるとも考えられる。
【0129】
<実験例3>
実施例1、2、比較例2及び4で最終的に収得されたシリコンフレークの構造をより具体的に捉えるため、XRDグラフを作成して図5、8、12及び15に示した。
【0130】
本測定に使用したXRD装備(D8 Advance、Bruker)は3kWのX−ray発電電力、20kV測定電圧、50mA測定電流、そして10℃〜90℃の測定範囲で測定した。
【0131】
図5、8及び12を参照すれば、他の不純物なく、純粋なシリコンが合成されたことを確認できる。
【0132】
図8を参照すれば、薄い炭素層がコーティングされているが、これはXRD分析を通じて観測されないほどの僅かな水準であり、図12を参照すれば、シリコンと酸化グラフェンが一緒に存在することを確認できる。
【0133】
<実験例4>
実験例4−1
実施例1及び比較例1〜4で製造された多様なシリコンを負極活物質として使用し、結着剤としてPAA(ポリアクリル酸)/CMC及び導電材としてカーボンブラックを使用した。負極活物質:結着剤:導電材を重量比で8:1:1になるように水に十分混ぜた後、18μm厚さのCuホイルに塗布し、150℃で乾燥して負極を製造した。正極としてはリチウムホイルを使用し、EC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート)=3:7の溶媒に1MのLiPF及び10重量比のFEC(フルオロエチレンカーボネート)が含まれた電解液を使用してコイン型半電池を製造した。
【0134】
製造されたコイン型半電池を、25℃で0.05Cの印加電流と0.01〜1.2Vの電圧範囲で充放電容量を測定し、放電容量及び充放電効率の結果を図18〜22に示した。
【0135】
図18を参照すれば、シリコンフレーク及び炭素コーティングされたシリコンフレークで製造したコイン型半電池はそれぞれ2209/2383及び2984/3216の充/放電比容量を示し、92.67%及び92.77%の初期充放電効率を示す。
【0136】
一方、図19を参照すれば、ナノクレイから製造されたバルクシリコンで製造したコイン型半電池は1772/2497の充/放電比容量、70.96%の初期充放電効率を示す。
【0137】
図20を参照すれば、炭素化合物が添加されたシリコンフレークで製造したコイン型半電池は2027/2475の充/放電比容量、81.9%の初期充放電効率を示す。
【0138】
図21を参照すれば、Metal−assisted chemical etching法で製造された炭素コーティングされた多孔性シリコンで製造したコイン型半電池は2565/2886の充/放電比容量、88.88%の初期充放電効率を示す。
【0139】
図22を参照すれば、超気孔構造を有しないシリコンフレークで製造したコイン型半電池は1243/1381の充/放電比容量を示し、90.05%の初期充放電効率を示す。
【0140】
実験例4−2
実施例1、実施例2、比較例7及び比較例8で製造された多様なシリコンを負極活物質として使用し、結着剤としてPAA(ポリアクリル酸)/CMC及び導電材としてカーボンブラックを使用した。負極活物質:結着剤:導電材を重量比で8:1:1になるように水に十分混ぜた後、18μm厚さのCuホイルに塗布し、150℃で乾燥して負極を製造した。正極としてはリチウムホイルを使用し、EC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート)=3:7の溶媒に1MのLiPF及び10重量比のFEC(フルオロエチレンカーボネート)が含まれた電解液を使用してコイン型半電池を製造した。
製造されたコイン型半電池を、25℃で0.05Cの印加電流と0.01〜1.2Vの電圧範囲で充放電容量を測定し、放電容量及び充放電効率の結果を図34に示した。
【0141】
図34を参照すれば、シリコンフレーク(実施例1)及び炭素コーティングされたシリコンフレーク(実施例2)で製造したコイン型半電池はそれぞれ2209/2383及び2984/3216の充/放電比容量を示し、92.67%及び92.77%の初期充放電効率を示す。
【0142】
一方、珪藻土及びスラグからそれぞれ合成したシリコンの場合(比較例7及び比較例8)、それぞれ2742/3483及び2320/2674の充放電比容量を示し、78.77%及び86.76の初期充放電効率を示した。
【0143】
結論的に、本発明によるシリコンフレークを活物質として使用する場合、バルクシリコン及び超気孔構造のないシリコンフレークを使用する場合に比べて、かなり高い初期充放電効率を示し、さらに、炭素化合物を含むシリコンフレーク及び炭素コーティングされた多孔性シリコンよりも高い初期充放電効率を有することが分かる。
【0144】
<実験例5>
実験例5−1
実施例3及び実施例4で製造された炭素コーティングされたシリコンを負極活物質として使用し、結着剤としてPAA/CMC、及び導電材としてカーボンブラックを使用した。負極活物質:結着剤:導電材を重量比で8:1:1になるように水に十分混ぜた後、18μm厚さのCuホイルに塗布し、150℃で乾燥して負極を製造した。正極としてはリチウムホイルを使用し、EC:DEC=3:7の溶媒に1MのLiPF及び10重量比のFECが含まれた電解液を使用してコイン型半電池を製造した。
【0145】
該製造されたコイン型半電池、及び実験例4で製造されたコイン型半電池を用いて、0.2C(1C=3A/g)の電流で100回充放電して寿命特性を評価し、その結果を図23図28に示した。
【0146】
図23を参照すれば、シリコンフレーク(実施例1)及び炭素コーティングされたシリコンフレーク(実施例2)を活物質として用いて製造したコイン型半電池は0.2C−レートの100回充放電サイクルの後、それぞれ89.0%及び94.6%のサイクル寿命を示す。
【0147】
図24を参照すれば、実施例3及び実施例4のシリコンフレークを活物質として用いて製造したコイン型半電池の0.2C−レートの100回充放電サイクル後の寿命特性評価を示した。他の比較例に比べてかなり良い寿命特性を見せた。
【0148】
図25を参照すれば、比較例1のバルクシリコンを活物質として使用して製造したコイン型半電池は0.2C−レートの100回充放電サイクル後、その寿命が終わることを確認できる。
【0149】
図26を参照すれば、炭素化合物が付け加えられたシリコンフレークで製造したコイン型半電池は0.2C−レートの充放電サイクルでも急激な減少を見せるだけでなく、0.5C−レートの70回充放電サイクル後には18.3%のサイクル寿命しか示すことができなかった。
【0150】
図27を参照すれば、炭素コーティングされた多孔性シリコンで製造したコイン型半電池も0.2C−レートの100回充放電サイクル後、その寿命が終わることを確認できる。
【0151】
図28を参照すれば、超気孔構造のないシリコンフレークで製造したコイン型半電池は0.2C−レートの90回充放電サイクル後、71.74%のサイクル寿命を示す。
【0152】
実験例5−2
実施例1、実施例2、比較例7及び比較例8で製造された多様なシリコンを負極活物質として使用し、結着剤としてPAA/CMC、及び導電材としてカーボンブラックを使用した。負極活物質:結着剤:導電材を重量比で8:1:1になるように水に十分混ぜた後、18μm厚さのCuホイルに塗布し、150℃で乾燥して負極を製造した。正極としてはリチウムホイルを使用し、EC:DEC=3:7の溶媒に1MのLiPF及び10重量比のFECが含まれた電解液を使用してコイン型半電池を製造した。
【0153】
製造されたコイン型半電池を用いて、0.2C(1C=3A/g)の電流で50回充放電して寿命特性を評価し、その結果を図35に示した。
【0154】
図35を参照すれば、シリコンフレーク(実施例1)及び炭素コーティングされたシリコンフレーク(実施例2)で製造したコイン型半電池は0.2C−レートの50回充放電サイクル後、それぞれ100%及び95.97%のサイクル特性を示す。一方、珪藻土とFerro−Siから合成したシリコンの場合(比較例7及び比較例9)、それぞれ56.47%及び71.36%の寿命特性を示した。
【0155】
結論的に、本発明によるシリコンフレークを活物質として使用する場合、バルクシリコン及び超気孔構造のないシリコンフレークを使用する場合と比べて優れたサイクル寿命を示し、さらにカーボン化合物が付け加えられて存在するシリコンフレークより炭素コーティングされたシリコンフレークを使用する場合は、その寿命特性がかなり向上する効果がある。
【0156】
<実験例6>
実験例4に従って、実施例1及び実施例2で製造されたシリコンフレークを負極活物質として使用したコイン型半電池を用いて、0.2C、0.5C、1C、2C、5C、10Cの電流で充放電する条件でレート特性を評価し、その結果を図29に示した。
【0157】
図29を参照すれば、シリコンフレーク(実施例1)及び炭素コーティングされたシリコンフレーク(実施例2)で製造したコイン型半電池は10C−レートで約25及び585の比容量を示す。
【0158】
また、実験例4に従って、実施例1、実施例2、比較例7及び比較例8で製造されたシリコンフレークを負極活物質として使用したコイン型半電池を用いて、0.2C、0.5C、1C、2C、5Cの電流で充放電する条件でレート特性を評価し、その結果を図36に示した。
【0159】
図36を参照すれば、実施例1のシリコンフレーク及び実施例2の炭素コーティングされたシリコンフレークを負極活物質として使用した場合、5Cで各134及び958の比容量を示し、比較例7の珪藻土及び比較例8のFerro−Siからそれぞれ合成したシリコンを使用した場合、それぞれ28及び87の比容量を示した(比容量の単位mAhg−1)。
【0160】
結論的に、本発明によるシリコンフレークを活物質として使用する場合、レート特性においても優れた性能を示すが、炭素コーティングされたシリコンフレークを使用する場合がレート特性の面では格段に優れることが分かる。
【0161】
以上のような電気化学的分析を通じて本発明の一実施例によるシリコンフレーク及び炭素コーティングされたシリコンフレークが、Mg還元(reduction)を通じて合成された他のシリコン物質より初期効率、寿命特性、レート特性で全て優れることが分かる。
【0162】
このような性能向上の理由は、以下のように説明することができる。
【0163】
第一、本発明の一実施例によるシリコンフレークは、超気孔構造を通じて電解液含浸特性を大きく向上させることができる。殆どの多孔性シリコン構造は表面のみに気孔が存在する一方、本発明の一実施例によるシリコンフレークは構造全体に大きい大空隙(Macropore)が形成されているため、初期サイクルから電解液が電極物質に均一に接触されてリチウムイオンの拡散性向上に役立つことができる。
【0164】
第二、本発明の一実施例によるシリコンフレークは大空隙を含めて中空隙及び微細空隙の多様な種類の気孔から構成されているため、体積膨張収容の面で有利である。多孔性構造を通じて体積膨張を緩和したという従来の研究があったが、これらは3次元の多孔性構造を有するものである反面、本発明の一実施例によるシリコンフレークは2次元の多孔性構造を有するシリコン負極活物質として適用されるという点で完全に差別化される。
【0165】
また、本発明の一実施例によるシリコンフレークは、大きい粒子の大きさにもかかわらず、高いC−レートで優れた可逆容量を示すことができ、これは超気孔構造を通じて電解液含浸特性が大きく向上してリチウムイオンの拡散性向上に役立ち、体積膨張収容の面で有利であるためである。3次元構造より2次元構造を有する物質が体積膨張において有利な理由は、同じく体積膨張するとしても、2次元構造の物質がその構造をより完全に維持でき、3次元構造の物質もサイクルを繰り返した後は構造が2次元構造に変わる様子を見せるためである。2次元構造の場合、面方向と垂直方向の膨張を有するが、同じ体積膨張を考慮しても、実際電極内の膨張比率が遥かに低いため、あらゆる方向に膨脹する3次元構造の物質より優位にある。
【0166】
図38は、本発明の一実施例による超気孔構造を有するシリコンフレークの模式図である。図38を参照すれば、最も大きくて丸く形成された部分が大空隙であり、その表面に位置した空隙が中空隙と微細空隙に該当する。すなわち、中空隙及び微細空隙はシリコンフレークのフレーム表面に形成されており、大空隙はシリコンフレークのフレーム内部、すなわちフレーム自体に形成された孔に該当する。
【0167】
以上のように、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
図1
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