特許第6750212号(P6750212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6750212トナー用相溶化剤、トナー用相溶化剤を含む静電荷像現像用トナー、及びトナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750212
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】トナー用相溶化剤、トナー用相溶化剤を含む静電荷像現像用トナー、及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20200824BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20200824BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20200824BHJP
   C08F 20/12 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   G03G9/097 365
   G03G9/087
   G03G9/08 381
   C08F20/12
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-237405(P2015-237405)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-102382(P2017-102382A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 慎太郎
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−328305(JP,A)
【文献】 特開平09−120176(JP,A)
【文献】 特開平08−123082(JP,A)
【文献】 特開平08−030020(JP,A)
【文献】 特開2012−032450(JP,A)
【文献】 特開2001−249492(JP,A)
【文献】 特開平05−150547(JP,A)
【文献】 特開2015−011316(JP,A)
【文献】 特開平08−328303(JP,A)
【文献】 特開平07−225496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を有し、ガラス転移温度が50℃以上かつ質量平均分子量(Mw)が50000以上80000以下である、(メタ)アクリル系(共)重合体を含む、トナー用相溶化剤であって、前記(メタ)アクリル系(共)重合体が、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル系単量体を懸濁重合させてなる(共)重合体であり、前記式(1)の単量体単位を、50質量%以上含む、トナー用相溶化剤。
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜17の直鎖又は分岐のアルキル基である。)
【請求項2】
請求項1に記載のトナー用相溶化剤を含むバインダー樹脂。
【請求項3】
請求項1に記載のトナー用相溶化剤を含むトナー。
【請求項4】
請求項に記載のバインダー樹脂を含むトナー。
【請求項5】
請求項1に記載のトナー用相溶化剤、バインダー樹脂、およびワックス成分を混練する工程を含む、トナーの製造方法。
【請求項6】
請求項に記載のバインダー樹脂、およびワックス成分を混練する工程を含む、トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用相溶化剤、トナー及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法とは、例えば、感光体上に静電荷の像を形成し、そこにトナーを現像剤として付着させ、さらにトナーを紙等のシートへ転移させ、定着させる方法等である。トナーをシートへ定着させる方法としては、例えば、加熱されたローラーまたはフィルム等を用いた加熱圧着方式があり、例えば、トナーが付着したシートを回転しているローラーに接触、通過させて、熱、圧力によりトナーをシートに融着させることができる。
近年、複写機、プリンターの要求性能は高度化しており、特に、消費電力低減、カラー化、高画質化が重要である。消費電力低減のため定着ローラー温度を低くする場合、トナーにはより低温での定着性が必要になる。またカラー化する場合、シート上のトナー層が多重になるので、定着ローラー近傍のトナー層とシート近傍のトナー層との間で温度差が生じ易くなるため、トナーにはより広い定着温度幅が必要になる。これら低温定着性を向上させるためにはワックス成分の分散性が必須である。またトナー中のワックス成分の分散性を向上させることによりトナーカートリッジ内でのトナーのブレードおよびキャリアへの付着を低減させることが求められている。
このように、近年の複写機、プリンターの消費電力低減、カラー化、高画質化の要求に対応するため、ワックス分散性のより一層の向上が必要となっている。
トナー用結着樹脂としては、従来、ポリエステル重合体またはビニル重合体(スチレン−アクリル重合体) 等が用いられている。一般に、これら樹脂に対するワックスの分散性は悪く、樹脂に第3成分を添加しそれら欠点を補う試みがなされている。(例えば特許文献1、2参照)特許文献1には長鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を50質量%以上含む組成物を重合してなる相溶化剤を用いることでワックス分散性に優れたトナーを得られることが記載されている。しかしこれら相溶化剤はガラス転移点が低く、配合量によってはトナー自体のガラス転移点が低くなるため保存安定性に課題があった。
特許文献2にはα‐オレフィン−無水マレイン酸共重合体−無水マレイン酸モノエステルの共重合物を相溶化剤として用いることでワックス分散性に優れたトナーを得られることが記載されている。しかしこれら相溶化剤は質量平均分子量Mwが低く、配合量によってはトナーの保存安定性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−011316号公報
【特許文献2】特開2005−91707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ワックス分散性およびトナー化時の保存安定性に優れ、消費電力低減、カラー化、高画質化に有用なトナー用相溶化剤並びにそれを用いたトナーを生産性良く提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記式(1)の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を有し、ガラス転移温度が50℃以上かつ質量平均分子量(Mw)が50000以上80000以下である、(メタ)アクリル系(共)重合体を含む、トナー用相溶化剤であって、前記(メタ)アクリル系(共)重合体が、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル系単量体を懸濁重合させてなる(共)重合体であり、前記式(1)の単量体単位を、50質量%以上含む、トナー用相溶化剤に関する。
【化2】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜17の直鎖又は分岐のアルキル基である。)


【発明の効果】
【0006】
本発明により、ワックス分散性およびトナー化時の保存安定性に優れ、消費電力低減、カラー化、高画質化に有用な(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤並びにそれを用いたトナーを生産性良く提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はそれらの形態のみに限定されるものではない。
【0008】
本明細書において、「(共)重合体」には、単独重合体のほか、共重合体も含まれる。また、「(メタ) アクリレート」とは、メタクリレートもしくはアクリレートを意味する。
【0009】
[トナー用相溶化剤]
本発明のトナー用相溶化剤は、下記式(1)の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単
位を有し、ガラス転移温度が50℃以上かつ質量平均分子量(Mw)が50000以上80000以下である、(メタ)アクリル系(共)重合体を含む。
本発明のトナー用相溶化剤は、ワックス分散性およびトナー化時の保存安定性に優れる等の効果を奏する。
【0010】
<式(1)の単量体(単位)>
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系単量体は下記式(1)の構造を有する。
【化1】

式(1)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜17の直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0011】
式(1)の単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロデカニル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピル、メタクリル酸ペンタフルオロプロピル、メタクリル酸オクタフルオロペンチル、メタクリル酸2−(ペルフルオロオクチル)エチル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ヘプタデシル等のメタアクリル酸エステル類が挙げられる。
【0012】
アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチルアクリル酸イソアミル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルアクリル酸トリシクロデカニル、アクリル酸ジシクロペンタジエニル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ヘプタデシルなどのアクリル酸エステルが挙げられる。
【0013】
<(メタ)アクリル系(共)重合体>
本発明の(メタ)アクリル系(共)重合体は、上記式(1)の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む。
(メタ)アクリル系(共)重合体に含まれる(1)構造の(メタ)アクリル酸エステル系単量体構成単位の含有量は特に制限されないが、20〜100質量%が好ましく、40〜100質量%がさらに好ましい。
式(1)構造の(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外の共重合成分としては、特に制限されずスチレン系単量体、ビニル系単量体等を使用することができる。
スチレン系単量体としては、特に制限されないが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−テンシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−フェニルスチレン、3,4−ジシクロシルスチレン等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ケイヒ酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル等の不飽和モノカルボン酸モノエステル等のカルボン酸含基ビニル単量体が挙げられる。
【0014】
<(メタ)アクリル系(共)重合体の重合方法>
上記構造式(1)を含む単量体組成物を重合する方法としては、塊状重合、溶液重合、乳化重合、または懸濁重合する方法等が挙げられる。
得られるビニル重合体に残存するモノマー、溶剤の臭気の観点から、乳化重合法、懸濁重合法により製造することが特に好ましい。
また、懸濁重合法と乳化重合法とでは、乳化重合法は、得られる樹脂組成物中に乳化剤が残存し、これをバインダー樹脂組成物として用いるとトナーの帯電性が低下する傾向にあるため、これらの問題が生じない懸濁重合法の方が好ましい。
重合形態について、以下に説明する。
重合には温度計、冷却管、撹拌機、窒素流入管を備えた反応器を使用し、重合反応中は樹脂特性を一定に保つため一定量の窒素を流入することが好ましい。また窒素による加圧下で反応を行っても良い。
重合時の温度プロファイルとしては単量体の重合率が15%に到達するまで重合温度が大きく変化しないことが好ましい。変化させると樹脂特性の安定性に欠ける。
重合に伴う発熱最大値確認後は、さらに高温で熱処理工程を行う。熱処理温度は低すぎると樹脂内に残留モノマーが多く残り、また高すぎると樹脂を熱分解する恐れがあるため、60℃〜140℃で行うことが好ましい。さらには70℃〜120℃で行うことが好ましい。
【0015】
<ガラス転移温度>
本発明の(メタ)アクリル系(共)重合体は、ガラス転移温度が50℃以上であり、60℃以上であることが好ましく、70℃以上がさらに好ましい。
なお、本発明のガラス転移温度は以下の方法で測定した。
島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用いて、昇温速度10℃/分で測定した時のチャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求めた。
ガラス転移温度が50℃以上であることで、重合後の樹脂乾燥時に樹脂粒子が結着することを抑制することができ、ナー配合物として使用した場合、配合量によってはトナーの保存安定性が低位となる可能性が高い。
【0016】
<質量平均分子量(Mw)>
本発明の(メタ)アクリル系(共)重合体は、質量平均分子量(Mw)は50000以上80000以下である。
なお、本発明のMwの測定は以下の条件で、標準ポリスチレン換算により求めた。
装置:東洋ソーダ工業(株)製、HLC8020
カラム:東洋ソーダ工業(株)製、TSKgelGMHXL(カラムサイズ:7.8mm(ID)×30.0cm(L))を3本直列に連結
オーブン温度:40℃
溶離液:THF
試料濃度:4mg/10mL
濾過条件:0.45μmテフロン(登録商標)メンブレンフィルターで試料溶液を濾過
流速:1mL/分
注入量:0.1mL
検出器:RI
検量線作成用標準ポリスチレン試料:東洋ソーダ工業(株)製、TSK standard
、A−500(分子量5.0×10)、A−2500(分子量2.74×10)、F−2(分子量1.96×10)、F−20(分子量1.9×10)、F−40
(分子量3.55×10)、F−80(分子量7.06×10)、F−128(分子量1.09×10)、F−288(分子量2.89×10)、F−700(分子量6.77×0)、F−2000(分子量2.0×10)。

【0017】
[トナー用バインダー]
本発明のトナー用溶化剤を用いることができるトナー用バインダーとしては、特に制限されず一般トナー用に使用されているポリエステル樹脂およびスチレンアクリル樹脂が使用できる。
【0018】
[ワックス]
本発明のトナー用溶化剤を用いることができるワックス(外添ワックス)としては、特に制限されないが、ライスワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、蜜蝋、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、合成エステル系ワックス、パラフィンワックス、脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等を挙げることができ、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
ワックスの融点としては、特に制限されないが、60〜100℃ が好ましい。ワックスの融点が、60℃以上の場合にトナーの耐ブロッキング性が向上する傾向にあり、100℃以下の場合にトナーの低温定着性が向上する傾向にある。ワックスの融点の下限値は65℃以上がより好ましく、また上限値は95℃ 以下がより好ましい。融点が60〜100℃ のワックスとしては、例えば、ライスワックス(融点79℃)、カルナバワックス(融点83℃)、パラフィンワックス(融点60〜90℃)、蜜蝋(融点64℃)等を挙げることができる。
外添するワックスの含有量は、特に制限されないが、トナー全量中、0.1〜20質量%が好ましい。ワックスの使用量が、0.1質量%以上の場合にトナーの耐高温オフセット性が向上する傾向にあり、20重量%以下の場合にトナー中のワックス成分がブレードやキャリア粒子に付着しない傾向にある。ワックスの使用量の下限値は1.0質量%以上がより好ましく、また、上限値は15質量% 以下がより好ましい。
【0019】
[その他のトナー配合原料]
本発明のトナーに用いることができる着色剤としては、特に制限されず、一般に使用されているカーボンブラック、有彩色の顔料および染料が使用できる。カラートナーの場合には、例えば、C.I.ソルベントイエロー21、C.I.ソルベントイエロー77、C.I.ソルベントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド128、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド13、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド48・2、C.I.ディスパースレッド11、C.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー94、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー15・3等が挙げられる。
【0020】
着色剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性の点から、トナー全量中2〜10質量%の範囲が好ましい。この含有量の下限値は3質量%以上であることがより好ましく、また、上限値は8質量%以下であることがより好ましい。
本発明のトナーに用いることができる流動性向上剤としては、特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウムチタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ藻土、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
流動性向上剤の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中0.1〜5質量%の範囲が好ましい。流動性向上剤の含有量が、0.1質量%以上の場合にフィルミングが改良される傾向にあり、5質量%以下の場合に定着性が良好となる傾向にある。この含有量の下限値は0.2質量%以上がより好ましく、また上限値は3質量%以下がより好ましい。
【0021】
本発明のトナーに用いることができる荷電制御剤としては、特に制限されないが、従来電子写真用に用いられている荷電制御剤を使用することができる。負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、オリエント化学社製のボントロンS−31、ボントロンS−32、ボントロンS−34、ボントロンS−36等、保土ヶ谷化学社製のアイゼンスピロンブラックTVH等の含金属アゾ染料;ヘキスト社製のCopy ChargeNXVP434等の四級アンモニウム塩; 銅フタロシアニン染料等が挙げられる。また、正帯電性の荷電制御剤としては、例えば、四国化成社製のPLZ−2001、PLZ−8001等のイミダゾール誘導体;ヘキスト社製のCopy Charge BLUE PR等のトリフェニルメタン誘導体;オリエント化学社製のボントロンP−51、ヘキスト社製のCopy Charge PXVP435、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩;オリエント化学社製のAFP−B等のポリアミン樹脂等が挙げられる。本発明では、荷電制御剤の1種または2種以上を使用することができる。また、主荷電制御剤と逆極性の荷電制御剤との併用も可能である。
荷電制御剤の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中0.1〜5質量%の範囲が好ましい。荷電制御剤の含有量が0.1質量%以上の場合、トナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下の場合に凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
【0022】
本発明のトナーは、磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤、磁性2成分現像剤、非磁性2成分現像剤の何れの現像剤としても使用できる。
本発明のトナーを磁性1成分現像剤として用いる場合には、トナーは磁性体を含有する。磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等をはじめとする、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金;マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む所謂ホイスラー合金等のように、化合物や強磁性元素を含まないが適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金; 二酸化クロム等が挙げられる。
磁性体の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中30〜70質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、40〜60質量%の範囲である。磁性体の含有量が30質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下の場合にトナーの定着性が良好となる傾向となる。この磁性体の含有量の下限値は40質量%以上であることがより好ましく、上限値は60質量%以下であることがより好ましい。
また、本発明のトナーを磁性2成分現像剤または非磁性2成分現像剤として用いる場合には、キャリアと併用して用いられる。キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等の公知のものを使用することができる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、一般に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などを使用することができる。併用するキャリアの量としては、特に制限されないが、トナー100質量部に対して900質量部以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり好ましい。
【0023】
[トナー製造方法]
本発明のトナーの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いて製造することがで
きる。
例えば、前述下記式(1)の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含み、ガラス
転移点が50℃以上かつ質量平均分子量(Mw)が50000以上80000以下である(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤および所望により、トナー用バインダー組成物、低分子量体樹脂組成物、着色剤、荷電制御剤、および磁性体等を混合した後、二軸押出機などで溶融混練、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて無機粒子をトナー表面に付着させて製造することができる。また上記工程において事前にワックス相溶化剤をトナー用バインダーを混合したものと低分子量体樹脂組成物、着色剤、荷電制御剤、および磁性体等を混合した後、二軸押出機などで溶融混練、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて無機粒子をトナー表面に付着させて製造してもよい。また、上記いずれの工程においても、微粉砕〜分級後にトナー粒子を球形にするなどの処理を行ってもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例において示される評価の方法は次の通りである。
(1)(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤のワックス分散性
(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤およびバインダー樹脂とワックス成分を二軸押出機を用いて120℃で溶融混練し、得られた塊状の混練物をミクロトームで切削し薄膜片を成形した。得られた薄膜片を走査型電子顕微鏡SEMを用いて観察し、混練物中のワックス成分の分散性を評価した。大きさ1μm以上の凝集物がみられなければ分散性良好で、使用可能レベルとし、以下の通り評価した。またワックスはパラフィンワックス(日本精蝋社製 商品名:NHP−9、融点75℃)を使用した。
○:ワックスドメイン径が1μm未満
×:ワックスドメイン径が1μm以上
(2)(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤を用いたトナーの保存安定性
得られた(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤およびトナー用バインダー組成物、低分子量体樹脂組成物、着色剤、荷電制御剤、および磁性体等用いてトナーを作製し、そのトナーを約5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを40℃、湿度50%以下に保持された乾燥機に約24時間放置し、トナーの凝集程度を評価して保存安定性の指標とした。評価基準を以下の通りとした。
◎(非常に良好) :サンプル瓶を逆さにするだけで分散する。
○(良好) :サンプル瓶を逆さにし、2〜3回叩くと分散する。
△(使用可能) :サンプル瓶を逆さにし、4〜5回叩くと分散する。
×(劣る) :サンプル瓶を逆さにし、5回叩いた際に分散しない。
【0025】
実施例1
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸メチル20質量%、メタクリル酸ラウリル80質量%、並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤1を得た。
【0026】
実施例2
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸イソブチル100質量%、並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤2を得た。
【0027】
実施例3
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸イソブチル40質量%、アクリル酸−2−エチルヘキシル10質量%、スチレン45質量%、メタクリル酸5質量%並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤3を得た。
【0028】
実施例4
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸メチル80質量%、メタクリル酸ラウリル15質量%、スチレン4.5質量%、メタクリル酸0.5質量%並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤4を得た。
【0029】
実施例5
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸エチル100質量%、並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤5を得た。
【0030】
実施例6
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸メチル85質量%、アクリル酸エチル10質量%、メタクリル酸5質量%並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤6を得た。
【0031】
実施例7
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてアクリル酸nブチル15質量%、スチレン85質量%並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤7を得た。
【0032】
実施例8
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸ヘプタデシル20質量%、メタクリル酸メチル80質量%並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化8を得た。
【0033】
比較例1
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてアクリル酸nブチル40質量%、スチレン60質量%並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤9を得た。
【0034】
比較例2
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸メチル20質量%、メタクリル酸ラウリル80質量%、並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル3質量%およびn−ドデシルメルカプタン3質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤10を得た。
【0035】
比較例3
撹拌機および温度計を備えた反応容器に、脱イオン水170質量%、分散剤を0.05質量%、硫酸ナトリウム0.4質量%を仕込み、次いで単量体成分としてメタクリル酸メチル20質量%、メタクリル酸ベヘニル80質量%、並びに重合開始剤として2,2‘−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.2質量%およびn−ドデシルメルカプタン0.25質量%を添加した。内容物を攪拌しながら80 ℃で2時間重合し、さらに95℃で1時間保持した後、冷却し、重合体粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から重合体を分離、洗浄、乾燥し、(メタ)アクリル系ワックス相溶化剤11を得た。
【0036】
比較例4
市販品(豊国製油(株)HS2H−458T)の結晶性ポリエステル樹脂を入手し、相溶化剤12とした。
【0037】
上記相溶化剤1〜12を用いて、上記(1)及び(2)の方法でワックス分散性及び保存安定性の評価を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
実施例1〜8に示す通り、本発明に係る相溶化剤含むポリエステル樹脂を用いたトナーは、ワックス分散性及び保存安定性に優れることが確認された。
比較例1(Tg50℃未満)、比較例2(Mw15000未満)、比較例3(本発明の式(1)においてR2がC18以上のもの)及び比較例4((メタ)アクリル系重合体以外の樹脂)に示す通り、本発明とは異なる相溶化剤含むポリエステル樹脂を用いたトナーは、ワックス分散性及び保存安定性に劣ることが確認された。