(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、一実施の形態によるデジタルカメラ1(以下、カメラ1と呼ぶ)を示す斜視図である。カメラ1は、カメラボディ2と交換レンズ3とで構成され、カメラボディ2に対して交換レンズ3が着脱可能に構成されている。
【0007】
カメラボディ2には、交換レンズ3が取り付けられるボディ側マウント部201が設けられている。また、
図1に示すように、ボディ側マウント部201の内面側には、接続部202が設けられている。この接続部202には、複数の電気接点が設けられている。
【0008】
一方、交換レンズ3には、カメラボディ2に取り付けられるレンズ側マウント部301が設けられている。また、
図1に示すように、レンズ側マウント部301の内面側には、接続部302が設けられている。この接続部302には、複数の電気接点が設けられている。交換レンズ3の鏡筒の外周面に設けられている操作環は、フォーカス環135(以下、MF環とも記す)である。フォーカス環135は、撮影者により操作される操作部として機能する。
【0009】
カメラボディ2に交換レンズ3が装着されると、ボディ側マウント部201に設けられた接続部202の電気接点と、レンズ側マウント部301に設けられた接続部302の電気接点とが、電気的かつ物理的に接続される。これにより、接続部202および接続部302を介して、カメラボディ2から交換レンズ3への電力供給や、カメラボディ2および交換レンズ3間の通信が可能となる。
【0010】
<交換レンズ>
図2は、
図1に例示したカメラ1の要部構成図である。
図2に示すように、交換レンズ3には、複数のレンズ31〜33を含む光学系と、絞り34と、レンズ制御部37と、レンズメモリ38と、通信部39とが内蔵されている。交換レンズ3は、さらに、ズームレンズ駆動モータ321、フォーカシングレンズ駆動モータ331、絞り駆動モータ341などを備えている。
【0011】
レンズ33は、フォーカシングレンズである。フォーカシングレンズ33が光軸L1方向に進退移動することにより、光学系の焦点位置を調節する。フォーカシングレンズ33は、フォーカシングレンズ駆動モータ331によって駆動される。フォーカシングレンズの位置は、レンズ制御部37によって管理される。例えば、フォーカシングレンズ駆動モータ331への信号に基づいてフォーカシングレンズ33の位置を検出するようにしてもよいし、不図示のエンコーダを設けることにより位置を検出するようにしてもよい。
【0012】
フォーカシングレンズ駆動モータ331は、例えばステッピングモータによって構成される。フォーカシングレンズ駆動モータ331に対する駆動指示は、レンズ制御部37によって行われる。例えば、カメラボディ2のボディ制御部21によってフォーカシングレンズ33の移動方向および移動速度が決定され、決定された移動方向および移動速度を示す制御信号がレンズ制御部37へ送信される。レンズ制御部37は、ボディ制御部21からの制御信号に基づき、フォーカシングレンズ駆動モータ331へ駆動指示を送る。
【0013】
レンズ32は、ズームレンズである。ズームレンズ32が光軸L1方向に進退移動することにより、光学系の焦点距離を変化させる。ズームレンズ32は、ズームレンズ駆動モータ321によって駆動され、ズームレンズ用エンコーダ322によってその位置が検出される。ズームレンズ駆動モータ321に対する駆動指示は、レンズ制御部37によって行われる。
【0014】
絞り34は、光束制限部材である。絞り34は、光軸L1を中心に開口径を変化させることにより、上記光学系を通過して撮像素子22に至る光束を制限する。絞り34は、絞り駆動モータ341によって駆動される。絞り駆動モータ341に対する駆動指示は、レンズ制御部37によって行われる。絞り34の開口径は、絞り開口センサ342によって検出される。絞り34の開口径は、レンズ制御部37によって管理される。
【0015】
レンズ制御部37は、例えば自動露出モードにおいて演算した開口径(絞り値)を示す制御信号を、ボディ制御部21から受信する。また、レンズ制御部37は、操作部材28(例えば絞り環)に対するマニュアル操作によって設定された開口径(絞り値)を示す制御信号を、ボディ制御部21から受信する。
【0016】
レンズメモリ38には、例えば、像面移動係数などのレンズ情報が記録される。像面移動係数とは、フォーカシングレンズ33の移動量と像面の移動量との対応関係を示す値である。レンズメモリ38は、不揮発性の記憶媒体などで構成される。
【0017】
通信部39は、カメラボディ2の通信部29との間で所定の通信を行う。これにより、カメラボディ2側の情報や指示が交換レンズ3のレンズ制御部37へ伝えられ、交換レンズ3側の情報がカメラボディ2のボディ制御部21へ伝えられる。通信部39は、カメラボディ2から信号を受信する受信部として機能し、カメラボディ2に信号を送信する送信部としても機能する。
【0018】
検出部40は、第1フォトインタラプタおよび第2フォトインタラプタを有する。フォーカス環135の内周面には、周方向に一定の間隔で遮蔽板が備えられている。遮蔽板が第1フォトインタラプタおよび第2フォトインタラプタの受光素子に入射する光を遮ることにより、第1フォトインタラプタおよび第2フォトインタラプタの検出信号に変化を生じさせる。検出部40は、フォーカス環135の回転操作を検出し、検出信号(パルス信号)をレンズ制御部37に出力する。レンズ制御部37は、検出部40により出力された検出信号に基づいて、フォーカス環135の操作量(移動量)および操作方向(移動方向)を算出する。
【0019】
<カメラボディ>
カメラボディ2は、ボディ制御部21と、撮像素子22と、シャッター23と、メモリ24と、マイク25と、液晶表示器27と、操作部材28と、通信部29とを含む。
【0020】
ボディ制御部21は、不図示のマイクロコンピュータやメモリ21A等を含み、内蔵されている制御プログラムに基づいて、カメラ1の各部の動作を統括的に制御する。例えば、ボディ制御部21は、撮像素子22から出力されたデータに対して所定の画像処理(色補間処理、階調変換処理、輪郭強調処理、ホワイトバランス調整など)を施す。ボディ制御部21は、交換レンズ3から受信するレンズ情報に基づいて、交換レンズ3の光学系または絞りの駆動を制御する制御信号を生成する。
【0021】
また、ボディ制御部21は、撮像素子22から出力されたデータを用いて所定の露出演算を行うとともに、この露出演算によって求めた露出量に基づいてカメラ1の露出制御を行う。自動露出演算の一例を説明すると、ボディ制御部21は、撮影画面を複数の領域に分割し、分割した各領域に対応するデータを、測光信号として撮像素子22から読み出す。ボディ制御部21は、読み出した測光信号に基づいて露出を演算する。
さらにまた、ボディ制御部21は、光学系の焦点検出処理を行う。焦点検出処理については後述する。
【0022】
撮像素子22は、複数の光電変換素子が二次元状に配置されたものであって、後述する静止画像、動画像、ライブビュー画像(スルー画像とも呼ばれる)を撮像する。ライブビュー画像は、撮像素子22によって所定のフレームレートで逐次取得される観察用の画像である。
【0023】
シャッター23は、ボディ制御部21によって開閉制御される。メモリ24は、着脱可能に構成された記録媒体である。メモリ24は、ボディ制御部21によって画像データや音声データの書き込みおよび読み出しが制御される。マイク25は、集音した音を音声信号に変換する。音声信号は、ボディ制御部21によって増幅、A/D変換され、デジタル音声データとしてメモリ24に記録される。
【0024】
液晶表示器27は、カメラボディ2の背面に設けられている。液晶表示器27は、ボディ制御部21の指示に応じて画像を再生表示したり、シャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報や、カメラボディ2に各種設定を行うためのメニュー画面を表示したりする。
【0025】
操作部材28は、レリーズボタン、録画ボタン、各種設定スイッチなどを含む。カメラ1は、操作部材28の操作により、静止画撮影モード、動画撮影モード、オートフォーカス(以下、AFと呼ぶ)モード、マニュアルフォーカス(以下、MFと呼ぶ)モードなどの各種モードの切り換えが可能となっている。操作部材28は、操作に応じた操作信号をボディ制御部21へ送出する。なお、操作部材28には、レリーズボタンが半押し操作されるとオンする第1スイッチSW1と、レリーズボタンが全押し操作されるとオンする第2スイッチSW2とが含まれる。
【0026】
MFモードでは、例えば、
図1のフォーカス環135の回転操作に応じて、レンズ制御部37がフォーカシングレンズ33の移動方向および移動速度を決定し、フォーカシングレンズ駆動モータ331へ駆動指示を送る。本実施の形態では、カメラ1は、フォーカシングレンズ33の駆動を制御するための複数の動作モードを有し、動作モードの切り換えを行うことが可能となっている。
【0027】
上記カメラ1は、静止画撮影と動画撮影とが可能に構成されている。
<ライブビュー画像>
ボディ制御部21は、例えば、撮影待機状態においてライブビューモードにする。ライブビューモードにおける動作の一例を説明すると、ボディ制御部21が、シャッター23を開いたままで、交換レンズ3の絞り34を被写体の明るさに応じた開口径へ制御させるとともに、撮像素子22によりライブビュー画像を所定のフレームレートで取得させる。ボディ制御部21は、取得されたライブビュー画像を液晶表示器27に逐次表示させる。
【0028】
<静止画像>
ボディ制御部21は、例えば、ユーザーによって操作部材28を構成するレリーズボタンが全押し操作されると、静止画撮影を開始させる。動作の一例を説明すると、シャッター23を一旦閉じ、交換レンズ3の絞り34を、被写体の明るさに応じた開口径へ制御させるとともに、シャッター23を開いて被写体からの光束を撮像素子22へ導く。ボディ制御部21は、所定のシャッター秒時が経過するとシャッター23を閉じ、撮像素子22によって光電変換された画像のデータに対して所定の画像処理を施す。ボディ制御部21は、ライブビューモードへ戻るために再びシャッター23を開くとともに、画像処理後の画像データをメモリ24に記録する。
【0029】
<動画像>
また、ボディ制御部21は、例えば、ユーザーによって操作部材28を構成する録画ボタンが押下操作されると、静止画撮影モードから動画撮影モードに切り替えられて、動画撮影を開始させる。動作の一例を説明すると、交換レンズ3の絞り34の開口径を、被写体の明るさに応じた開口径へ制御させ、撮像素子22により動画の撮像を所定のフレームレートで行わせる。このとき、上述したマイク25により集音された音声の録音も行う。ボディ制御部21は、動画の撮影中に再び録画ボタンが押下操作されると、動画の撮像および音声の録音を終了させる。動画像のデータおよびデジタル音声データは、ボディ制御部21によってメモリ24に記録される。
【0030】
上記カメラ1は、以下のような焦点検出が可能に構成されている。
<コントラストAF>
ボディ制御部21は、撮像素子22から読み出したデータに基づき、コントラスト検出方式による光学系の焦点調節状態の検出(コントラストAF)を行う。例えば、ボディ制御部21からレンズ制御部37へ制御信号を送出してフォーカシングレンズ33を所定のサンプリング間隔(距離)で移動させながら、フォーカシングレンズ33のそれぞれの位置において撮像素子22で取得されたデータを撮像素子22から読み出す。ボディ制御部21は、読み出したデータに基づいて焦点評価値演算を行う。そして、焦点評価値が最大となるフォーカシングレンズ33の位置を合焦位置として求める。
【0031】
一般に、コントラストAFでは、フォーカシングレンズ33の移動速度が所定速度を超えることによって焦点評価値のサンプリング間隔が大きくなり過ぎると、合焦精度の低下を招くおそれがある。そこで、ボディ制御部21は、焦点評価値を検出するためにフォーカシングレンズ33を移動させる探索制御において、合焦位置を適切に検出することができるサンプリング間隔に応じた像面駆動速度が得られるようにフォーカシングレンズ33の移動速度を決定し、フォーカシングレンズ33を移動させる。探索制御とは、例えば、ウォブリング、所定位置の近傍のみを探索する近傍サーチ(近傍スキャン)、フォーカシングレンズ33の可動範囲の全域を探索する全域サーチ(全域スキャン)を含む。例えば、ボディ制御部21は、動画撮影モードにおける探索制御ではフォーカシングレンズ33を低速で駆動させ、静止画撮影モードにおける探索制御ではフォーカシングレンズ33を高速で駆動させる。
【0032】
<位相差AF>
また、ボディ制御部21は、位相差検出方式による焦点検出(位相差AF)を行うこともできる。位相差検出方式は、光学系の異なる瞳領域を介して入射された一対のフォーカス検出用光束による像の位相差に基づいてデフォーカス量を検出する方式である。この方式では、ボディ制御部21が、位相差検出用センサの異なる位置に設けられたフォーカス検出用画素列でそれぞれ撮像される一対の像の相対位置ズレ量(相対間隔)に基づいて、合焦に必要なフォーカシングレンズ33の移動方向および移動量を算出する。ボディ制御部21は、例えば、焦点状態が合焦状態から大きく外れている場合は、位相差AFを行う。
【0033】
具体的には、ボディ制御部21が、上記一対の像の強度分布に対して像ズレ検出演算処理(相関演算処理、位相差検出処理)を施すことによって、一対の像の像ズレ量を算出する。ボディ制御部21はさらに、像ズレ量に所定の変換係数を乗算することによって、交換レンズ3の焦点調節状態を表すデフォーカス量を算出する。このような位相差AFにおけるデフォーカス量演算は公知であるので、位相差AFについての詳細な説明は省略する。
【0034】
なお、位相差検出用センサは、あらかじめ撮像素子22に含められているフォーカス検出用画素列を用いてもよいし、フォーカス検出用画素列を備えた専用センサを撮像素子22とは別に備えるように構成してもよい。
【0035】
<フォーカシングレンズの制御の決定>
レンズ制御部37は、MFモードにおいて、検出部40から出力される検出信号およびボディ制御部21から出力される制御信号に基づいて、フォーカシングレンズ33を制御する。レンズ制御部37は、ボディ制御部21から出力される制御信号に従ってフォーカシングレンズ33の動作モードを設定し、フォーカシングレンズ33を制御する。
【0036】
図3は、第1の実施の形態に係るカメラ1におけるフォーカシングレンズ33の制御の一例を示す図である。
図3において、横軸はフォーカス環135の回転速度(単位は、例えばdeg/s)、縦軸は像面速度(単位は、例えばmm/s)を示している。像面速度は、フォーカシングレンズ33を移動させたときの像面の移動速度である。
図3に示すように、レンズ制御部37は、例えば3つの動作モードを有する。レンズ制御部37は、MFモード時において、ボディ制御部21からの制御信号に基づいて、3つの動作モードのうちの1つの動作モードを設定する。
【0037】
第1の動作モードでは、レンズ制御部37は、フォーカス環135の回転速度に基づいて、フォーカシングレンズ33の位置制御と速度制御の切り換えを行う。位置制御はフォーカス環135の操作量に基づく制御であり、速度制御はフォーカス環135の回転速度に基づく制御である。
【0038】
第1の動作モードにおいて、フォーカス環135の回転速度が閾値Ptよりも小さい場合は、フォーカシングレンズ33を、フォーカス環135の操作量に比例する駆動量だけ駆動させる。レンズ制御部37は、例えば、像面移動係数、目標空間周波数および実効F値に基づいて、フォーカシングレンズ駆動モータ331の1パルス当たりのフォーカシングレンズ33の駆動量を算出する。レンズ制御部37は、検出部40により検出されるパルス数によってフォーカシングレンズ33の駆動量が決定される位置制御を行う。位置制御においては、レンズ制御部37は、焦点深度が深いほどフォーカシングレンズ33の駆動量を大きくする制御を行う。このように、フォーカス環135の回転速度が閾値Ptよりも小さい場合は、実効F値や焦点深度等に基づいてフォーカシングレンズ33の駆動を制御する位置制御が行われるため、撮影者は細かいピント合わせを行うことができる。
【0039】
第1の動作モードにおいて、フォーカス環135の回転速度が閾値Ptよりも大きい場合は、レンズ制御部37は、フォーカス環135の回転速度が増加するにつれて、像面速度が増加する速度制御を行う。速度制御では、フォーカシングレンズ33の駆動速度は、例えば、フォーカス環135の操作量を変数とする2次関数や指数関数などで表される。
【0040】
レンズ制御部37は、速度制御時には、例えば、次式(1)により演算される駆動速度でフォーカシングレンズ33を駆動させる。
v=ax
2+bx+c …(1)
ここで、vはフォーカシングレンズ33の駆動速度、xはフォーカス環135の操作量、a、b、cはそれぞれ所定の定数である。レンズ制御部37は、上述したような関数に従ってフォーカシングレンズ33を駆動させるための制御信号を生成し、フォーカシングレンズ駆動モータ331に出力する。また、レンズ制御部37は、閾値Ptにおいて、位置制御と速度制御の切り替え動作が滑らかになるように定数cを調整する。このように、フォーカス環135の回転速度が閾値Ptよりも大きい場合は、フォーカス環135の回転を早く回すにつれて像面速度が加速される速度制御が行われる。その結果、撮影者は、少ない操作量でフォーカシングレンズ33を素早く移動させることができ、素早いピント合わせを行うことができる。第1の動作モードは、例えば、静止画撮影を行う際に用いられる。
【0041】
第2の動作モードでは、第1の動作モードと同様に、レンズ制御部37は、フォーカス環135の回転速度に基づいて、フォーカシングレンズ33の位置制御と速度制御の切り換えを行う。レンズ制御部37は、フォーカス環135の回転速度が閾値Ptよりも小さい場合は位置制御を行い、フォーカス環135の回転速度が閾値Ptよりも大きい場合は速度制御を行う。
【0042】
第2の動作モードにおける速度制御では、フォーカス環135の操作量(回転角)と、カメラ1と被写体との距離(被写体距離)の逆数とが比例するようなフォーカシングレンズ33の繰り出しを行う。第2の動作モードは、例えば、動画撮影を行う際に用いられる。
【0043】
図4は、第1の実施の形態に係るカメラ1における第2の動作モード時の速度制御の一例を示す図である。
図4(a)は、フォーカス環135を所定の回転速度(基準回転速度)で操作している場合における、フォーカス環135の回転角と、被写体距離Rの逆数との関係を示す図である。
図4(a)に示すように、第2の動作モードにおける速度制御では、フォーカス環135の回転角と被写体距離Rの逆数とは比例関係となる。
図4(b)は、フォーカシングレンズ33の駆動速度と、被写体距離Rの逆数との関係の一例を示す図である。
図4(b)において、フォーカス環135の回転速度は基準回転速度である。フォーカス環135の回転角と被写体距離Rの逆数が比例関係となる場合に、フォーカシングレンズ33の駆動速度と被写体距離Rの逆数は、例えば
図4(b)に示すような関係となる。
【0044】
図4(c)は、フォーカス環135の回転速度とフォーカシングレンズ33の駆動速度との関係の一例を示す図である。
図4(c)に示すように、レンズ制御部37は、フォーカス環135の回転速度が閾値Ptよりも大きい場合は、速度制御を行う。速度制御時におけるフォーカシングレンズ33の駆動速度は、例えば、フォーカス環135の操作量を変数とする1次関数で表される。レンズ制御部37は、例えば、次式(2)により演算される駆動速度でフォーカシングレンズ33を駆動させる。
v=bx+c …(2)
レンズ制御部37は、例えば、フォーカス環135の基準回転速度と、
図4(b)に示すフォーカス環135を基準回転速度で操作した場合のフォーカシングレンズ33の駆動速度とを用いて定数bを演算する。
【0045】
図4(b)に示すフォーカシングレンズ33の駆動速度は、例えば、フォーカス環135の回転角と被写体距離Rの逆数とが比例するように仮想的に設計されたカムのカム形状(カム軌跡)に基づいて算出される。設計されたカム形状(カム軌跡)を示すカムデータは、電子データとしてレンズメモリ38に記憶されている。
【0046】
図5は、第1の実施の形態に係るカムデータの一例を示す図である。
図5(a)はズームレンズ32の位置とフォーカシングレンズ33の位置とに応じて変化する仮想カム形状(以下、仮想カムパターンとも記す)を示し、
図5(b)はフォーカシングレンズ33の位置に応じて変化する仮想カム形状を示している。
図5(a)および
図5(b)において、横軸はカムの回転角度(単位は、例えばdeg)を示している。フォーカシングレンズ33の駆動速度は、
図5(a)に示すカムおよび
図5(b)に示すカムの合成カムによるカムデータを用いて算出される。ズームレンズ32の位置Z、フォーカシングレンズ33の位置Kにおいて、1deg/sでカムを駆動する場合におけるフォーカシングレンズ33の駆動速度は、FC(Z’+K’)×FHC(K’)となる。ここで、FC(Z’+K’)は
図5(a)に示す仮想カムパターンの微分値(傾き)であり、FHC(K’)は
図5(b)に示す仮想カムパターンの微分値である。フォーカシングレンズ33の駆動速度の単位は、例えばmm/degとなる。このように、第2の動作モードにおける速度制御では、フォーカス環135の回転角と被写体距離Rの逆数が比例するように、仮想カムパターンの微分値を掛け合わせることで駆動速度を求める。算出された駆動速度は、式(2)の傾きのパラメータに反映される。
【0047】
第3の動作モードでは、レンズ制御部37は、速度制御は行わずに、常に位置制御を行う。第3の動作モードは、例えば、ライブビューモードにおいて拡大表示を行う際に用いられる。撮影者は、画像を拡大表示させながら、細かいピント合わせを行うことができる。
【0048】
<フローチャートの説明>
図6は、第1の実施の形態に係る交換レンズ3とカメラボディ2における動作例を示すフローチャートである。
図6(a)は交換レンズ3における処理の一例を示すフローチャートであり、
図6(b)はカメラボディ2における処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS100において、交換レンズ3は、接続部202および接続部302を介して、レンズ情報をカメラボディ2に送信して、ステップS110へ進む。レンズ情報には、交換レンズ3に設定可能な動作モードを示す情報が含まれる。
【0050】
ステップS200において、カメラボディ2は、交換レンズ3からレンズ情報を受信して、ステップS210へ進む。ステップS210において、カメラボディ2は、例えばレンズ情報と撮影モードに基づいて、交換レンズ3の動作モードを決定する。カメラボディ2は、例えば、静止画撮影モードの場合は第1の動作モード、動画撮影モードの場合は第2の動作モード、ライブビューモード等において拡大表示を行っている場合は第3の動作モードを選択する。カメラボディ2は、交換レンズ3を制御するための制御信号を生成し、ステップS220へ進む。ここで、制御信号には、決定した動作モードを示す情報と、後述するMF環の操作の検出感度を示す情報とが含まれる。ステップ220において、カメラボディ2は、接続部202および接続部302を介して、交換レンズ3に制御信号を送信して、
図6(b)に示す処理を終了する。
【0051】
図7は、第1の実施の形態に係るカメラ1におけるフォーカス環135の操作判定閾値の一例を示す表である。レンズ制御部37は、ボディ制御部21から受信する制御信号に含まれるビット群(
図7に示すビット2からビット0)を、0(000)から7(111)の値として扱い、その値に応じて操作判定閾値を設定する。操作判定閾値は、フォーカス環135が操作されたと判定するための閾値である。例えば、値「7」、「6」、「5」、「4」、「3」、「2」、「1」、「0」は、それぞれ操作の検出感度を「とても敏感」、「敏感」、「やや敏感」、「普通」、「やや鈍感」、「鈍感」、「とても鈍感」、「普通」に設定する値となる。レンズ制御部37は、検出感度に応じて、例えば、操作判定閾値を「1」、「2」、「4」、「8」、「16」、「32」、「64」、「8」に設定する。レンズ制御部37は、フォーカス環135の操作により、検出部40により操作判定閾値のパルス数が検出された場合に、フォーカス環135が操作されたと判定する。
【0052】
図6に戻り、ステップS110において、交換レンズ3は、カメラボディ2から制御信号を受信して、ステップS120へ進む。ステップS120において、交換レンズ3は、受信した制御信号に基づいて、動作モードおよび操作判定閾値を設定して、ステップS130へ進む。ステップS130において、交換レンズ3は、撮影者によりフォーカス環135が操作されると、検出部40により操作判定閾値のパルス数が検出されたか否かを判定する。交換レンズ3は、操作判定閾値のパルス数に基づいてフォーカス環135の操作を検出すると、ステップS140へ進む。
【0053】
ステップS140において、交換レンズ3は、第1の動作モードまたは第2の動作モードに設定されている場合は、フォーカス環135の回転速度を算出し、フォーカス環135の回転速度に基づいてフォーカシングレンズ33の位置制御または速度制御を行う。交換レンズ3は、第3の動作モードに設定されている場合は、フォーカス環135の操作量に基づいて、フォーカシングレンズ33の位置制御を行う。レンズ制御部37は、フォーカシングレンズ33の駆動制御が終了すると、
図6(a)に示す処理を終了する。
【0054】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)交換レンズ3は、撮影者に操作される操作部135に対する操作を検出し検出信号を出力する検出部40と、カメラボディ2から制御信号を受信する受信部39と、検出部40から出力された検出信号と、受信部39により受信された制御信号とを用いて、光学系31〜33及び絞り34の少なくとも一方を制御する制御部37と、を備える。このようにしたので、交換レンズ3は、カメラボディ2からの制御信号に基づいて、フォーカシングレンズ33の駆動制御を行うことができる。
(2)受信部39は、制御信号として第1制御信号及び第2制御信号の少なくとも一方を受信し、制御部37は、受信部39により第1制御信号が受信された場合と、受信部39により第2制御信号が受信された場合とで光学系31〜33及び絞り34の少なくとも一方に対する制御を異ならせる。本実施の形態では、レンズ制御部37は、ボディ制御部21から受信した制御信号に基づいて、フォーカシングレンズ33の駆動を制御するための動作モードを設定する。そのため、カメラボディ2からの制御信号に基づいて、フォーカシングレンズ33の制御を変更することができる。
【0055】
(3)制御信号は、カメラボディ2の動作モードに基づいて生成される。このようにしたので、カメラボディ2の各動作モードに適したフォーカシングレンズ33の制御を行うことができ、マニュアルフォーカスの操作性を向上させることができる。
【0056】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形
態と組み合わせることも可能である。
【0057】
(変形例1)
図8は、変形例に係るカメラ1Bの要部構成図である。カメラ1Bの交換レンズ3Bは、撮影者に操作されるスイッチ50を備える。スイッチ50は、
図1に例示したフォーカス環135と共に操作部として機能する。変形例1においては、撮影者がスイッチ50を操作した場合には、スイッチ50の操作位置に従ってフォーカシングレンズ33の動作モードを変更できる構成にする。そのため、撮影者の操作に基づいて、フォーカシングレンズ33の制御を変更させることができる。
【0058】
例えば、スイッチ50は、第1の状態から第3の状態の何れかの操作位置に設定可能であり、設定された状態を示す操作信号をレンズ制御部37へ送信する。レンズ制御部37は、受信した操作信号に基づいてフォーカシングレンズ33の動作モードを設定する。例えば、レンズ制御部37は、スイッチ50が第1の状態に設定されているとき上述した第1の動作モードで動作し、スイッチ50が第2の状態に設定されているとき上述した第2の動作モードで動作し、スイッチ50が第3の状態に設定されているとき上述した第3の動作モードで動作する。例えば、レンズ制御部37は、フォーカス環135の回転操作の検出信号、及び、スイッチ50の状態(第1の状態〜第3の状態)を用いて、フォーカシングレンズ33の移動方向および移動速度を決定する。
【0059】
また、例えば、スイッチ50は、第1の状態から第3の状態の何れかの操作位置に設定可能であり、設定された状態を示す操作信号をレンズ制御部37へ送信する。レンズ制御部37は、受信した操作信号に基づいて絞り34の動作モードを設定する。例えば、レンズ制御部37は、操作部材28(例えば絞り環)の回転操作の検出信号、及び、絞り34の動作モード設定を用いて、絞り34の移動方向および移動速度を決定する。例えば、フォーカス環135、絞り環、及び、スイッチ50の少なくとも1つは、カメラボディ2に備えられていてもよいし、交換レンズ3に備えられていてもよい。
【0060】
(変形例2)
図9は、変形例に係るフォーカシングレンズ33の制御の一例を示す図である。交換レンズ3は、低い駆動音でフォーカシングレンズ33を移動させたい場合に用いる静音速度情報を、例えば測定により予め求めて、レンズメモリ38に記憶している。レンズ制御部37は、フォーカシングレンズ33の駆動速度の上限値を、静音速度情報に基づいて決定する。
図9に示すように、フォーカシングレンズ33の駆動速度を、静音速度情報が示す静音速度で制限することにより、撮影時に記録されるレンズ駆動音を抑制することができる。
【0061】
(変形例3)
上述した実施の形態では、フォーカス環135の操作に応じた検出信号とカメラボディ2からの制御信号に基づいてフォーカシングレンズ33の制御を変更する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。フォーカス環135の操作に応じた検出信号とカメラボディ2からの制御信号に基づいて、ズームレンズ32などの光学系または絞り34の制御を変更するようにしてもよい。
【0062】
また、制御信号に従ったフォーカシングレンズ33の動作モードの設定は、上述した実施の形態に限定されるものではない。動作モードとしては、例えば、フォーカス環135の回転速度に基づいた速度制御を行い、フォーカス環135の回転位置に基づいた位置制御を行わないものであってもよいし、フォーカス環135の回転位置に基づいた位置制御を行い、フォーカス環135の回転速度に基づいた速度制御を行わないものであってもよいし、フォーカス環135の回転速度及び回転位置の少なくとも一方に基づいた速度制御及び位置制御を行うものであってもよい。
【0063】
(変形例4)
上述した実施の形態では、フォーカシングレンズ駆動モータ331としてステッピングモータを例に説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、超音波モータ、DCモータ、ボイスコイルモータ等、他のモータを用いることもできる。
【0064】
(変形例5)
上述した実施の形態では、カメラボディ2が第1から第3の動作モードを交換レンズ3に指示して、交換レンズ3がフォーカス環135の操作量に応じてフォーカシングレンズ33を駆動させる例について説明した。しかし、交換レンズ3がカメラボディ2にフォーカス環135の操作量を通知し、カメラボディ2はカメラ1の状態に応じてフォーカシングレンズ33の駆動速度を決定して、交換レンズ3に指示するようにしてもよい。
【0065】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。