特許第6750317号(P6750317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6750317-共重合体およびポジ型レジスト組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750317
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】共重合体およびポジ型レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20200824BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20200824BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   G03F7/039 501
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
   C08F220/22
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-112093(P2016-112093)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-218480(P2017-218480A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】星野 学
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特公平08−003636(JP,B2)
【文献】 特開平04−255856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−アルキルスチレン単位の含有量が35モル%以上45モル%以下であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が55モル%以上65モル%以下である共重合体と、
溶剤と、
を含む、ポジ型レジスト組成物
【請求項2】
前記共重合体の重量平均分子量が4万以上7万以下である、請求項1に記載のポジ型レジスト組成物
【請求項3】
前記α−アルキルスチレン単位の含有量が35モル%以上39モル%以下であり、
前記α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が61モル%以上65モル%以下である、請求項1または2に記載のポジ型レジスト組成物
【請求項4】
前記α−アルキルスチレン単位がα−メチルスチレン単位であり、
前記α−クロロアクリル酸エステル単位がα−クロロアクリル酸メチル単位である、請求項1〜3の何れかに記載のポジ型レジスト組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体およびポジ型レジスト組成物に関し、特には、ポジ型レジストとして好適に使用し得る共重合体および当該共重合体を含むポジ型レジスト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造等の分野において、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光(以下、電離放射線と短波長の光とを合わせて「電離放射線等」と称することがある。)の照射により主鎖が切断されて現像液に対する溶解性が増大する重合体が、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用されている。
【0003】
そして、例えば特許文献1には、高感度な主鎖切断型のポジ型レジストとして、α−メチルスチレン単位を30〜70モル%と、α−クロロアクリル酸メチル単位を30〜70モル%とを含有するα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体よりなるポジ型レジストが開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、高い解像度を有するポジ型レジストとして利用可能なα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体として、α−アルキルスチレン単位を30〜70モル%と、α−クロロアクリル酸エステル単位を30〜70モル%とを含有し、且つ、重量平均分子量が9500〜35000であるα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平8−3636号公報
【特許文献2】特開2016−12104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、露光および現像後にレジスト膜が残って(残膜して)いる部分と、溶解している部分との境界が明瞭なレジストパターンを得る観点からは、主鎖切断型のポジ型レジストには、電離放射線等の照射量が特定量に至らなければ現像液に溶解せず、特定量に至った時点で速やかに主鎖が切断され現像液に溶解される特性を有することが求められている。即ち、主鎖切断型のポジ型レジストには、電離放射線等の照射量の常用対数と、現像後のレジストの残膜厚との関係を示す感度曲線の傾きの大きさを表すγ値を高めることが求められている。
【0007】
そのため、上記従来のα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体よりなる高感度なポジ型レジストにも、γ値を効果的に高めることが求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、感度およびγ値の高いポジ型レジストとして良好に使用し得る共重合体を提供することを目的とする。
また、本発明は、明瞭なパターンを良好に形成し得るポジ型レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の組成を有するα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体が、感度およびγ値の高いポジ型レジストとして良好に使用し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の共重合体は、α−アルキルスチレン単位の含有量が35モル%以上45モル%以下であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が55モル%以上65モル%以下であることを特徴とする。α−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が上記範囲内であるα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体は、ポジ型レジストとして使用した際の感度およびγ値が高く、ポジ型レジストとして良好に使用することができる。
なお、本発明において、「各単量体単位の含有量」は、核磁気共鳴(NMR)法を用いて測定することができる。
【0011】
ここで、本発明の共重合体は、重量平均分子量が4万以上7万以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内のα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体は、α−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位の含有量を上記範囲内とした際のγ値の向上効果が特に優れているからである。
なお、本発明において、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0012】
また、本発明の共重合体は、前記α−アルキルスチレン単位の含有量が35モル%以上39モル%以下であり、前記α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が61モル%以上65モル%以下であることが好ましい。α−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が上記範囲内であれば、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を更に向上させることができるからである。
【0013】
更に、本発明の共重合体は、前記α−アルキルスチレン単位がα−メチルスチレン単位であり、前記α−クロロアクリル酸エステル単位がα−クロロアクリル酸メチル単位であることが好ましい。α−メチルスチレン単位とα−クロロアクリル酸メチル単位とを含む共重合体は、ポジ型レジストとして好適に使用することができるからである。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した共重合体の何れかと、溶剤とを含むことを特徴とする。上述した共重合体をポジ型レジストとして含有すれば、明瞭なパターンを良好に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の共重合体によれば、感度およびγ値の高いポジ型レジストを提供することができる。
また、本発明のポジ型レジスト組成物によれば、明瞭なパターンを良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、共重合体中のα−メチルスチレン単位の含有量がポジ型レジストのγ値に与える影響を示すグラフであり、(b)は、共重合体中のα−メチルスチレン単位の含有量がポジ型レジストの感度に与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の共重合体は、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。また、本発明のポジ型レジスト組成物は、ポジ型レジストとして本発明の共重合体を含むものであり、例えば、半導体素子、フォトマスク、ナノインプリントのマスターテンプレートなどの製造プロセスにおいて微細なレジストパターンを形成する際に用いることができる。
【0018】
(共重合体)
本発明の共重合体は、単量体単位(繰り返し単位)としてα−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位を含有するα−アルキルスチレン・α−クロロアクリル酸エステル共重合体であり、α−アルキルスチレン単位の含有量が35モル%以上45モル%以下であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が55モル%以上65モル%以下であることを特徴とする。
そして、本発明の共重合体は、α位にクロロ基(−Cl)を有するα−クロロアクリル酸エステルに由来する構造単位(α−クロロアクリル酸エステル単位)を含んでいるので、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUVレーザーなど)が照射されると、主鎖が容易に切断されて低分子量化する。また、本発明の共重合体は、α−アルキルスチレン単位の含有量が45モル%以下であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が55モル%以上であるので、ポジ型レジストとして使用した際のγ値が高い。更に、本発明の共重合体は、α−アルキルスチレン単位の含有量が35モル%以上であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が65モル%以下であるので、高感度な主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。
【0019】
なお、共重合体は、α−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位以外のその他の単量体単位を含んでいてもよいが、共重合体を構成する全単量体単位(100モル%)中でα−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位が占める割合は、合計で90モル%以上であることが好ましく、100モル%である(即ち、共重合体はα−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位のみを含む)ことがより好ましい。α−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位の合計含有量が多い共重合体、特には単量体単位がα−アルキルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸エステル単位のみからなる共重合体は、ポジ型レジストとして好適に使用することができるからである。
【0020】
<α−アルキルスチレン単位>
共重合体が含有するα−アルキルスチレン単位は、α−アルキルスチレンに由来する構造単位である。そして、共重合体は、α−アルキルスチレン単位を45モル%以下の割合で含有しているので、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を高めることができる。また、共重合体は、α−アルキルスチレン単位を35モル%以上の割合で含有しているので、感度に優れていると共に、調製が容易である。
なお、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を更に高める観点からは、α−アルキルスチレン単位の含有量は39モル%以下であることが好ましい。
【0021】
なお、共重合体を構成し得るα−アルキルスチレン単位としては、特に限定されることなく、例えば、α−メチルスチレン単位、α−エチルスチレン単位、α−プロピルスチレン単位、α−ブチルスチレン単位などの炭素数が4以下の直鎖状アルキル基がα炭素に結合しているα−アルキルスチレン単位が挙げられる。中でも、共重合体をポジ型レジストとして使用した際の耐ドライエッチング性を高める観点からは、α−アルキルスチレン単位はα−メチルスチレン単位であることが好ましい。
ここで、共重合体は、α−アルキルスチレン単位として上述した単位を1種類のみ有していてもよいし、2種類以上有していてもよい。
【0022】
<α−クロロアクリル酸エステル単位>
また、共重合体が含有するα−クロロアクリル酸エステル単位は、α−クロロアクリル酸エステルに由来する構造単位である。そして、共重合体は、α−クロロアクリル酸エステル単位を65モル%以下の割合で含有しているので、感度に優れている。また、共重合体は、α−クロロアクリル酸エステル単位を55モル%以上の割合で含有しているので、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を高めることができる。
なお、ポジ型レジストとして使用した際のγ値を更に高める観点からは、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量は61モル%以上であることが好ましい。
【0023】
なお、共重合体を構成し得るα−クロロアクリル酸エステル単位としては、特に限定されることなく、例えば、α−クロロアクリル酸メチル単位、α−クロロアクリル酸エチル単位等のα−クロロアクリル酸アルキルエステル単位や、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位等のα−クロロアクリル酸のフッ素置換アルキルエステル単位などが挙げられる。中でも、共重合体をポジ型レジストとして使用した際の感度を高める観点からは、α−クロロアクリル酸エステル単位はα−クロロアクリル酸メチル単位であることが好ましい。
ここで、共重合体は、α−クロロアクリル酸エステル単位として上述した単位を1種類のみ有していてもよいし、2種類以上有していてもよい。
【0024】
<重量平均分子量>
また、本発明の共重合体の重量平均分子量は、4万以上7万以下であることが好ましく、4.5万以上7万以下であることがより好ましい。共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であれば、ポジ型レジストとして好適に使用することができるからである。また、重量平均分子量が上記範囲内の共重合体は、α−アルキルスチレン単位の含有量を上記上限値以下とし、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量を上記下限値以上とした際のγ値の向上率が高い(即ち、各単量体単位の含有割合を特定の範囲とした際のγ値の向上効果に優れている)からである。更に、重量平均分子量を上記下限値以上とすれば、γ値が十分に大きな共重合体を得ることができるからである。
【0025】
<分子量分布>
更に、共重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。分子量分布が上記範囲内である共重合体は、ポジ型レジストとして好適に使用することができるからである。
なお、本発明において、数平均分子量は、重量平均分子量と同様に、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0026】
(共重合体の調製方法)
そして、上述した性状を有する共重合体は、例えば、α−アルキルスチレンとα−クロロアクリル酸エステルとを含む単量体組成物を、溶液重合などの既知の重合方法を用いて重合させた後、得られた共重合体を回収し、任意に精製することにより調製することができる。
なお、共重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を高くすれば、小さくすることができる。また、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を短くすれば、小さくすることができる。
【0027】
<単量体組成物の重合>
ここで、本発明の共重合体の調製に用いる単量体組成物としては、α−アルキルスチレンおよびα−クロロアクリル酸エステルを含む単量体と、溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒としては、シクロペンタノンなどを用いることが好ましく、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0028】
なお、共重合体の組成は、重合に使用した単量体組成物中の各単量体の含有割合を変更することにより調整することができる。
【0029】
そして、単量体組成物を重合して得られた重合液中に含まれている共重合体は、特に限定されることなく、例えば、任意にテトラヒドロフラン等の良溶媒を重合液に添加した後、重合液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して共重合体を凝固させ、ろ過などの固液分離手段を用いて凝固した共重合体を分離する(重合液から重合溶媒と残存モノマー等の未反応物とを除去する)ことにより、回収することができる。ここで、重合溶媒および未反応物を十分に除去する観点からは、上述のようにして凝固させて分離した共重合体は、テトラヒドロフラン等の良溶媒に再溶解させた後、得られた溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して共重合体を再び凝固させることにより回収してもよい。
なお、共重合体の回収方法は上述した方法に限定されるものではなく、共重合体は、重合溶媒および未反応物の留去などの既知の方法を用いて回収してもよい。
【0030】
<共重合体の精製>
得られた共重合体を精製する際に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法を用いることができる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、共重合体の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0031】
そして、再沈殿法による共重合体の精製は、例えば、得られた共重合体をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、共重合体の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に共重合体の溶液を滴下して重合物の精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる共重合体の分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する共重合体の分子量を大きくすることができる。
【0032】
なお、再沈殿法により共重合体を精製する場合、精製した共重合体としては、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した共重合体を回収してもよいし、混合溶媒中で析出しなかった共重合体(即ち、混合溶媒中に溶解している共重合体)を回収してもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった共重合体は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0033】
(ポジ型レジスト組成物)
本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した共重合体と、溶剤とを含み、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。そして、本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した共重合体をポジ型レジストとして含有しているので、本発明のポジ型レジスト組成物を塗布および乾燥させて得られるレジスト膜を使用すれば、明瞭なパターンを良好に形成することができる。
【0034】
<溶剤>
なお、溶剤としては、上述した共重合体を溶解可能な溶剤であれば既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としてはアニソールを用いることが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、共重合体の組成、重量平均分子量および分子量分布、並びに、共重合体よりなるポジ型レジストの感度およびγ値は、下記の方法で測定した。
【0036】
<組成>
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、AVANCE III)を用いて測定した。
<重量平均分子量および分子量分布>
得られた共重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC−8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<感度およびγ値>
スピンコーター(ミカサ製、MS−A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ500nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS−S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液として酢酸アミル(日本ゼオン社製、ZED−N50)を用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った後、イソプロピルアルコールで10秒間リンスした。なお、電子線の照射量は、4μC/cmから200μC/cmの範囲内で4μC/cmずつ異ならせた。次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(大日本スクリーン製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。
そして、得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、残膜率0.20〜0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成した。また、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth(μC/cm)を求めた。なお、Ethの値が小さいほど、感度が高く、ポジ型レジストとしての共重合体が少ない照射量で良好に切断され得ることを示す。
また、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、Eは、残膜率0.20〜0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、Eは、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。なお、γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭なパターンを良好に形成し得ることを示す。
【数1】
【0037】
(実施例1)
<共重合体の調製>
単量体としてのα−クロロアクリル酸メチル3.0gおよびα−メチルスチレン1.7499gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0080081gとを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で2時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)30gを加えた。そして、THFを加えた溶液をメタノール300g中に滴下し、共重合体を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(共重合体)を得た。
そして、得られた共重合体の組成、重量平均分子量および分子量分布を測定した。結果を表1に示す。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた共重合体を溶剤としてのアニソールに溶解させ、共重合体の濃度が11質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)を調製した。そして、共重合体よりなるポジ型レジストの感度およびγ値を評価した。結果を表1および図1に示す。
【0038】
(実施例2〜8)
共重合体の調製時に使用するα−メチルスチレンの量を、それぞれ、2.0001g(実施例2)、2.2500g(実施例3)、2.4999g(実施例4)、2.7501g(実施例5)、3.0000g(実施例6)、4.5000g(実施例7)、6.0000g(実施例8)に変更した以外は実施例1と同様にして共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1および図1に示す。
【0039】
(比較例1)
以下のようにして共重合体を調製した以外は実施例1と同様にして共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1および図1に示す。
<共重合体の調製>
単量体としてのα−クロロアクリル酸メチル3.0gおよびα−メチルスチレン6.8800gと、重合溶媒としてのシクロペンタノン2.47gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.01091gとを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6.5時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)30gを加えた。そして、THFを加えた溶液をメタノール300g中に滴下し、共重合体を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(共重合体)を得た。
【0040】
【表1】
【0041】
表1および図1(a)より、α−アルキルスチレン単位の含有量が45モル%以下であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が55モル%以上である実施例1〜8の共重合体を使用すれば、γ値の高いポジ型レジストが得られることが分かる。更に、表1および図1(a)より、α−アルキルスチレン単位の含有量が39モル%以下であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が61モル%以上である実施例1〜4の共重合体を使用すれば、γ値を著しく向上させ得ることが分かる。一方、表1および図1(a)より、α−アルキルスチレン単位の含有量が45モル%超であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が55モル%未満である比較例1の共重合体では、実施例8との比較からも明らかなように、γ値を十分に向上させることができないことが分かる。
また、表1および図1(b)より、α−アルキルスチレン単位の含有量が35モル%以上であり、且つ、α−クロロアクリル酸エステル単位の含有量が65モル%以下である実施例1〜8の共重合体を使用すれば、感度に優れるポジ型レジストが得られることが分かる。
【0042】
(実施例9〜10および比較例2〜3)
続いて、共重合体の組成変更によるγ値の向上効果に対して共重合体の分子量が与える影響を確認するため、共重合体の調製時に使用するα−メチルスチレンおよびアゾビスイソブチロニトリルの量、並びに、単量体組成物を温度78℃の恒温槽内で撹拌する時間を下記表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして共重合体を調製した。
そして、得られた共重合体の組成、重量平均分子量および分子量分布を測定した。結果を表2に示す。
また、得られた共重合体を使用した以外は実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、実施例1と同様にしてγ値の評価を行った。
そして、実施例9のポジ型レジスト組成物のγ値と、比較例2のポジ型レジスト組成物のγ値との差(Δγ=実施例9のγ値−比較例2のγ値)、並びに、実施例10のポジ型レジスト組成物のγ値と、比較例3のポジ型レジスト組成物のγ値との差(Δγ=実施例10のγ値−比較例3のγ値)を算出した。また、実施例7のポジ型レジスト組成物のγ値と、比較例1のポジ型レジスト組成物のγ値との差(Δγ=実施例1のγ値−比較例1のγ値)も算出した。結果を表3に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表1〜3より、重量平均分子量が4万未満および7万超の範囲では、共重合体に含まれているα−メチルスチレン単位およびα−アクリル酸メチル単位の割合を変更することによるγ値の向上効果がやや低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の共重合体によれば、感度およびγ値の高いポジ型レジストを提供することができる。
また、本発明のポジ型レジスト組成物によれば、明瞭なパターンを良好に形成することができる。
図1