【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
図1、2に示すような本発明の発光素子の製造方法の第一の実施形態に基づいて、発光素子100を製造した。
【0053】
まず、
図1に示すように、GaAs(111)基板1を準備し、このGaAs(111)基板1上にMBE法で150℃にてCdS結晶2を0.05μm成長し出発基板とした。
【0054】
CdS結晶2上に、バッファ層3を介して、機能層たるダブルヘテロ層(発光層7)をMOVPE法にて形成した。発光層7は、n型クラッド層4(下部クラッド層)、活性層5、p型クラッド層6(上部クラッド層)を順次積層したものとした。
【0055】
n型クラッド層4として、n型AlInPクラッド層を0.7μm(ドーピング濃度3.0E+17/cm
3)、n型Al
0.6GaInP層0.3μm(ドーピング濃度1.0E+17/cm
3)の2層構造とした。
【0056】
活性層5は(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0.15≦x≦0.8,0.4≦y≦0.6)から選択され、波長によって組成x及びyは変更した。活性層5は多重活性層とし、活性層及び障壁層の膜厚は求める波長により変更し、それぞれ4〜12nmの範囲で波長に合わせて調整した。波長は560nm、570nm、580nm、590nm、600nm、605nm、610nm、615nm、620nm、630nm、640nm、645nmの12種類とした。
【0057】
p型クラッド層6として、p型AlInPクラッド層を0.1μm(ドーピング濃度1.0E+17/cm
3)、p型Al
0.6GaInP層0.9μm(ドーピング濃度3.0E+17/cm
3)の2層構造とした。
【0058】
発光層7上にはGaInPの緩衝層8を成膜し、この緩衝層8上にGaP層9をMOVPE法あるいはHVPE法にて100μm成膜して、発光素子基板12を作製した。
【0059】
GaP層9形成後、
図2に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板1、CdS結晶2及びバッファ層3を除去して自立基板とし、GaP層9及びn型クラッド層4部に接する第二電極11及び第一電極10を形成した。このとき、n型クラッド層4を光取り出し面とし、n型クラッド層4の一部を被覆する第一電極10、GaP層9を一様に被覆する第二電極11を形成した。具体的には、第一電極10はBeを含有するAu電極であり、第二電極11はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これらの電極形成後、ウェハを250μm□(250μm×250μm)に分割するダイス加工を行い発光素子100とした。
【0060】
(実施例2)
図1、3に示すような本発明の発光素子の製造方法の第二の実施形態に基づいて、発光素子200を製造した。
【0061】
まず、実施例1と同様にして
図1に示すような発光素子基板12を作製した。その後、
図3に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板1、CdS結晶2及びバッファ層3を除去して自立基板とし、n型クラッド層4部の一部を切り欠いてp型クラッド層6を露出させた。n型クラッド層4上に第一電極10、露出部に第二電極11を形成した。第一電極10はBeを含有するAu電極であり、第二電極11はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これら電極形成後、ウェハを300μm□(300μm×300μm)に分割するダイス加工を行い、発光素子200とした。
【0062】
(実施例3)
図4、5に示すような本発明の発光素子の製造方法の第三の実施形態に基づいて、発光素子300を製造した。
【0063】
まず、GaAs(111)基板21を準備し、このGaAs(111)基板21上にMBE法で150℃にてCdSe結晶22を0.05μm成長し出発基板とした。
【0064】
CdSe結晶22上に、バッファ層23を介して、機能層たるダブルヘテロ層(発光層27)をMOVPE法にて形成した。発光層27は、n型クラッド層24(下部クラッド層)、活性層25、p型クラッド層26(上部クラッド層)を実施例1と同様にして順次積層したものとした。
【0065】
発光層27上にはGaInPの緩衝層28を成膜し、この緩衝層28上にGaP層29をMOVPE法あるいはHVPE法にて100μm成膜して、発光素子基板32を作製した。
【0066】
GaP層29形成後、
図5に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板21、CdSe結晶22及びバッファ層23を除去して自立基板とした後、GaP層29及びn型クラッド層24部に接する第二電極31及び第一電極30を形成した。このとき、n型クラッド層24を光取り出し面とし、n型クラッド層24の一部を被覆する第一電極30、GaP層29を一様に被覆する第二電極31を形成した。具体的には、第一電極30はBeを含有するAu電極であり、第二電極31はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これらの電極形成後、ウェハを250μm□(250μm×250μm)に分割するダイス加工を行い発光素子300とした。
【0067】
(実施例4)
図4、6に示すような本発明の発光素子の製造方法の第四の実施形態に基づいて、発光素子400を製造した。
【0068】
まず、実施例3と同様にして
図4に示すような発光素子基板32を作製した。その後、
図6に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板21、CdSe結晶22及びバッファ層23を除去して自立基板とし、n型クラッド層24部の一部を切り欠いてp型クラッド層26を露出させた。n型クラッド層24上に第一電極30、露出部に第二電極31を形成した。第一電極30はBeを含有するAu電極であり、第二電極31はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これら電極形成後、ウェハを300μm□(300μm×300μm)に分割するダイス加工を行い、発光素子400とした。
【0069】
(比較例1)
図7、8に示すような従来の発光素子の製造方法に基づいて、発光素子500を製造した。
【0070】
まず、GaAs(001)基板41を準備し、このGaAs(001)基板41上に、バッファ層43を介して、機能層たるダブルヘテロ層(発光層47)をMOVPE法にて形成した。発光層47は、n型クラッド層44(下部クラッド層)、活性層45、p型クラッド層46(上部クラッド層)を順次積層したものとした。
【0071】
このとき、活性層45は(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0.15≦x≦0.8,0.4≦y≦0.6)から選択され、波長によって組成x及びyは変更した。活性層は多重活性層とし、活性層及び障壁層の膜厚は求める波長により変更し、それぞれ4〜12nmの範囲で波長に合わせて調整した。波長は570nm、580nm、590nm、600nm、605nm、610nm、615nm、620nm、630nm、640nm、645nmの11種類とした。n型クラッド層44及びp型クラッド層46は、実施例1と同様とした。
【0072】
発光層47上にはGaInPの緩衝層48を成膜し、この緩衝層48上にGaP層49をMOVPE法あるいはHVPE法にて100μm成膜して、発光素子基板52を作製した。
【0073】
GaP層49形成後、
図8に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板41及びバッファ層43を除去して自立基板とした後、GaP層49及びn型クラッド層44部に接する第二電極51及び第一電極50を形成した。このとき、n型クラッド層44を光取り出し面とし、n型クラッド層44の一部を被覆する第一電極50、GaP層49を一様に被覆する第二電極51を形成した。具体的には、第一電極50はBeを含有するAu電極であり、第二電極51はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これらの電極形成後、ウェハを250μm□(250μm×250μm)に分割するダイス加工を行い発光素子500とした。
【0074】
(比較例2)
図7、9に示すような従来の発光素子の製造方法に基づいて、発光素子600を製造した。
【0075】
まず、比較例1と同様にして
図7に示すような発光素子基板52を作製した。その後、
図9に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板41及びバッファ層43を除去して自立基板とし、n型クラッド層44部の一部を切り欠いてp型クラッド層46を露出させた。n型クラッド層44上に第一電極50、露出部に第二電極51を形成した。第一電極50はBeを含有するAu電極であり、第二電極51はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これら電極形成後、ウェハを300μm□(300μm×300μm)に分割するダイス加工を行い、発光素子600とした。
【0076】
実施例1〜4及び比較例1〜2で製造した発光素子について、素子輝度の各波長依存性を測定した。
【0077】
図10には、比較例1と実施例1及び3の素子輝度の各波長依存性を示した。実施例1及び実施例3は比較例1に対して波長560〜600nmの範囲において輝度(発光効率)が高くなっているのが分かる。
【0078】
また、
図11に比較例2と実施例2及び4の素子輝度の各波長依存性を示した。
図11に示すように、実施例2及び実施例4は比較例2に対して波長560〜600nmの範囲において輝度(発光効率)が高くなっているのが分かる。
【0079】
このように、比較例1、2で製造した発光素子では、AlGaInP系材料が閃亜鉛鉱構造を有すため、波長560〜600nmの範囲(緑色〜黄緑色領域)において発光効率が低下する。
【0080】
一方、実施例1〜4で製造した本発明の発光素子は、CdS結晶またはCdSe結晶上に発光層をエピタキシャル成長させることで、ウルツ鉱構造のAlGaInP系材料を得ることができるため、波長560〜600nmの範囲において発光効率が低下するのが抑制された、発光効率の高いAlGaInP系発光素子を得ることができた。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。