特許第6750342号(P6750342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750342
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法及び発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/30 20100101AFI20200824BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20200824BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   H01L33/30
   H01L33/16
   H01L21/205
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-125581(P2016-125581)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-228725(P2017-228725A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】石崎 順也
【審査官】 大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−038152(JP,A)
【文献】 特開平08−264896(JP,A)
【文献】 特開2013−004647(JP,A)
【文献】 特開平05−308052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0041840(US,A1)
【文献】 特開2000−058906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
H01S 5/00 − 5/50
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)からなるn型クラッド層、活性層、p型クラッド層が順次積層された発光層を有し、前記活性層は前記活性層よりバンドギャップの大きい多重障壁層で前記活性層を挟んだ多重活性層構造を有する発光素子の製造方法であって、
結晶方位が(11X)のGaAs基板上(X=1〜7)に、200℃以下のMBE法又はCBE法によりCdS結晶又はCdSe結晶を0.01〜1μmの厚さで成長させ、前記成長したCdS結晶又はCdSe結晶上に前記発光層をエピタキシャル成長させることを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項2】
(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)からなるn型クラッド層、活性層、p型クラッド層が順次積層された発光層を有する発光素子であって、
前記活性層は前記活性層よりバンドギャップの大きい多重障壁層で前記活性層を挟んだ多重活性層構造を有し、前記発光層がウルツ鉱構造であることを特徴とする発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法及び発光素子に関し、特に緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高い発光素子及び発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AlGaInP系発光素子は黄緑色〜赤色に渡って発光する発光素子である。このようなAlGaInP系発光素子としては例えば以下のようにして製造する。
【0003】
図7に示すように、まず、GaAs(001)基板41上に、バッファ層43を介して、機能層たるダブルヘテロ(DH)層(発光層47)を形成する。発光層47は下部クラッド層(n型クラッド層44)、活性層45、上部クラッド層(p型クラッド層46)から構成される。
【0004】
n型クラッド層44及びp型クラッド層46は(AlGa1−xIn1−yP(0.6≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)の組成が選択され、厚さは0.5〜2.0μm(好ましくは1.0μm前後)程度である。活性層45は(AlGa1−xIn1−yP(0.15≦x≦0.8,0.4≦y≦0.6)から選択され、均一組成層あるいは活性層よりバンドギャップの大きい多重障壁層で活性層を挟んだ多重活性層構造が選択される。
【0005】
発光層47上にはGaIn1−yP(0.4≦y≦1.0)からなる緩衝層48を成膜し、GaP層49を50μm以上成膜して、発光素子基板52を作製する。GaP層49は成長ではなく、直接接合等の方法で接合して形成しても良い。ウェットエッチング法によりGaAs基板41及びバッファ層43を除去して自立基板とし、図8に示すように、n型クラッド層44及びGaP層49部に第一電極50及び第二電極51を形成後、ウェハを分割するダイス加工を行い、発光素子500としたものがある(例えば、特許文献1)。
【0006】
または、図9に示すように、n型クラッド層44の一部を切り欠いてp型クラッド層46もしくはGaP層49部を露出させ、この露出部とn型クラッド層44に第二電極51及び第一電極50を形成後、ウェハを分割するダイス加工を行い、発光素子600としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−296707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような発光素子において橙色より短波長になると急速に発光効率が低下し、黄緑色付近では暗い発光素子しか実現していないという問題がある。
【0009】
これは、緑色の発光波長では、間接遷移領域になるため、実用に耐えうる発光効率が得られないためである。また、InGaN系でもIn組成が高くできないため、同様に高効率緑色発光の発光素子は実現していない。
【0010】
ここで、AlGaInP系材料は、基本的には閃亜鉛鉱構造を有し、緑色発光領域では間接遷移型になる。
【0011】
一方、InGaN系材料は、緑色発光を実現するためには高濃度のInを入れる必要があるが、InGaN系は良好な結晶を得るために、そもそもAlGaInP系より高温成長が必要であり、十分なIn組成を有する低温域では結晶性が大幅に低下する。そのため、高In組成で高結晶性は実現できていない。
【0012】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高い発光素子及び発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)からなるn型クラッド層、活性層、p型クラッド層が順次積層された発光層を有する発光素子の製造方法であって、
前記発光層を、CdS結晶またはCdSe結晶上にエピタキシャル成長させることを特徴とする発光素子の製造方法を提供する。
【0014】
このようにCdS結晶またはCdSe結晶上に発光層をエピタキシャル成長させることで、ウルツ鉱構造のAlGaInP系材料を得ることができる。ウルツ鉱構造AlGaInP系材料は直接遷移型であるため、緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高いAlGaInP系発光素子を得ることができる。
【0015】
このとき、前記CdS結晶またはCdSe結晶を、GaAs基板上に前記CdS結晶またはCdSe結晶をMBE法(分子線エピタキシー法)またはCBE法(化学線エピタキシー法)で成長させたものとすることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、比較的容易かつ安価にウルツ鉱構造AlGaInP系材料からなる発光素子を製造することができる。
【0017】
また本発明によれば、(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)からなるn型クラッド層、活性層、p型クラッド層が順次積層された発光層を有する発光素子であって、
前記発光層がウルツ鉱構造であることを特徴とする発光素子を提供する。
【0018】
このような発光層がウルツ鉱構造のAlGaInP系材料からなるものであれば、ウルツ鉱構造AlGaInP系材料は直接遷移型であるため、緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高いAlGaInP系発光素子とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発光素子の製造方法及び発光素子であれば、緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高いAlGaInP系発光素子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の発光素子の製造方法の第一及び第二の実施形態において作製する発光素子基板の一例を示した概略図である。
図2】本発明の発光素子の製造方法の第一の実施形態において製造する発光素子を示した概略図である。
図3】本発明の発光素子の製造方法の第二の実施形態において製造する発光素子を示した概略図である。
図4】本発明の発光素子の製造方法の第三及び第四の実施形態において作製する発光素子基板の一例を示した概略図である。
図5】本発明の発光素子の製造方法の第三の実施形態において製造する発光素子を示した概略図である。
図6】本発明の発光素子の製造方法の第四の実施形態において製造する発光素子を示した概略図である。
図7】比較例1及び比較例2において作製した発光素子基板の一例を示した概略図である。
図8】比較例1において製造した発光素子を示した概略図である。
図9】比較例2において製造した発光素子を示した概略図である。
図10】実施例1、3及び比較例1の結果を示したグラフである。
図11】実施例2、4及び比較例2の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記したような従来の発光素子において、橙色より短波長になると急速に発光効率が低下し、黄緑色付近では暗い発光素子しか実現していないという問題があった。
【0022】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、CdS結晶またはCdSe結晶上に発光層をエピタキシャル成長させることで、ウルツ鉱構造のAlGaInP系材料を得ることができ、ウルツ鉱構造AlGaInP系材料は直接遷移型であるため、緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高いAlGaInP系発光素子を得ることができることに想到した。そして、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0023】
まず、本発明の発光素子について、図2、3を参照して説明する。
図2に示すように、本発明の発光素子100は、(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)からなるn型クラッド層4、活性層5、p型クラッド層6が順次積層された発光層7を有する発光素子であって、発光層7がウルツ鉱構造である。
【0024】
発光素子100の発光層7は、例えば、GaP層9の表面上に、GaIn1−yP(0.4≦y≦1.0)の緩衝層8を介して設けられている。
【0025】
発光素子100の発光層7のn型クラッド層4及びGaP層9には、第一電極10及び第二電極11が設けられている。
【0026】
また、図3の本発明の発光素子200に示すように、第一電極10をn型クラッド層4上に形成し、発光層7のn型クラッド層4の一部を切り欠いてp型クラッド層6もしくはGaP層9部を露出させ、この露出部に第二電極11が設けられているものでもよい。
【0027】
このような本発明の発光素子であれば、発光層がウルツ鉱構造のAlGaInP系材料からなり、ウルツ鉱構造AlGaInP系材料は直接遷移型であるため、緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高いAlGaInP系発光素子とすることができる。
【0028】
(発光素子の製造方法の第一の実施形態)
次に、本発明の発光素子の製造方法の第一の実施形態について、図1、2を参照して説明する。
【0029】
まず、図1に示すように、GaAs基板1を準備することができる。このGaAs基板1上に、MBE法またはCBE法にて比較的低温(200°以下、好ましくは150℃)にてCdS結晶2(CdS層)を0.01〜1μm(好ましくは0.05μm)を成長し、その上に機能層たるダブルヘテロ(DH)層(発光層7)を形成することができる。ここでGaAs基板の結晶方位は(11X)(1≦X≦7)とすることが好ましい。このような結晶方位とすることで、閃亜鉛鉱構造の結晶構造が準安定状態であるウルツ鉱構造に変位しやすくなる。また、このような面は表面エネルギーが高いため、安定状態、準安定状態どちらの結晶構造も、成長条件によって選択可能な面とすることができる。
【0030】
このようにすれば、比較的容易かつ安価にウルツ鉱構造AlGaInP系材料からなる発光素子を製造することができる。
【0031】
このとき、発光層7をウルツ鉱構造とすることができれば、発光層7とCdS結晶2との間に必要に応じてバッファ層3等の所望の層を設けてもよい。
【0032】
発光層7は、(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)からなるn型クラッド層4(下部クラッド層)、活性層5、p型クラッド層6(上部クラッド層)が順次積層される。
【0033】
このとき、n型クラッド層4及びp型クラッド層6は(AlGa1−xIn1−yP(0.6≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)の組成が選択されることが好ましく、厚さは0.5〜2.0μm(好ましくは1.0μm前後)程度とすることができる。
【0034】
また、活性層5は(AlGa1−xIn1−yP(0.15≦x≦0.8,0.4≦y≦0.6)から選択されることが好ましく、均一組成層あるいは活性層よりバンドギャップの大きい多重障壁層で活性層を挟んだ多重活性層構造が選択される。
【0035】
そして、発光層7上には、例えば、GaIn1−yP(0.4≦y≦1.0)からなる緩衝層8を成膜し、該緩衝層8上にGaP層9を50μm以上成膜して、発光素子基板12を作製することができる。GaP層9は成長ではなく、直接接合等の方法で接合して形成しても良い。
【0036】
そして、図2に示すように、例えば、ウェットエッチング法によりGaAs基板1、CdS結晶2及びバッファ層3を除去して自立基板とし、n型クラッド層4及びGaP層9部に第一電極10及び第二電極11を形成することができる。その後、ウェハを分割するダイス加工を行い、発光素子100とすることができる。
【0037】
(発光素子の製造方法の第二の実施形態)
次に、本発明の発光素子の製造方法の第二の実施形態について、図1、3を参照して説明する。
【0038】
まず、上記第一の実施形態と同様にして図1に示すような発光素子基板12を作製することができる。その後、図3に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板1、CdS結晶2及びバッファ層3を除去して自立基板とし、n型クラッド層4部の一部を切り欠いてp型クラッド層6もしくはGaP層9部を露出させ、この露出部とn型クラッド層4部に第二電極11及び第一電極10を形成することができる。その後、ウェハを分割するダイス加工を行い、発光素子200とすることができる。
【0039】
(発光素子の製造方法の第三の実施形態)
次に、本発明の発光素子の製造方法の第三の実施形態について、図4、5を参照して説明する。
【0040】
まず、図4に示すように、GaAs基板21を準備することができる。このGaAs基板21上に、MBE法またはCBE法にて比較的低温(200°以下、好ましくは150℃)にてCdSe結晶22(CdSe層)を0.01〜1μm(好ましくは0.05μm)を成長し、その上に機能層たるダブルヘテロ(DH)層(発光層27)を形成することができる。ここでGaAs基板の結晶方位は(11X)(1≦X≦7)とすることが好ましい。このような結晶方位とすることで、閃亜鉛鉱構造の結晶構造が準安定状態であるウルツ鉱構造に変位しやすくなる。また、このような面は表面エネルギーが高いため、安定状態、準安定状態どちらの結晶構造も、成長条件によって選択可能な面とすることができる。
【0041】
このようにすれば、比較的容易かつ安価にウルツ鉱構造AlGaInP系材料からなる発光素子を製造することができる。
【0042】
このとき、発光層27をウルツ鉱構造とすることができれば、発光層27とCdSe結晶22との間に必要に応じてバッファ層23等の所望の層を設けてもよい。
【0043】
発光層27は、(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)からなるn型クラッド層24(下部クラッド層)、活性層25、p型クラッド層26(上部クラッド層)が順次積層される。
【0044】
このとき、n型クラッド層24及びp型クラッド層26は(AlGa1−xIn1−yP(0.6≦x≦1.0,0.4≦y≦0.6)の組成が選択されることが好ましく、厚さは0.5〜2.0μm(好ましくは1.0μm前後)程度とすることができる。
【0045】
また、活性層25は(AlGa1−xIn1−yP(0.15≦x≦0.8,0.4≦y≦0.6)から選択されることが好ましく、均一組成層あるいは活性層よりバンドギャップの大きい多重障壁層で活性層を挟んだ多重活性層構造が選択される。
【0046】
そして、発光層27上には、例えば、GaIn1−yP(0.4≦y≦1.0)からなる緩衝層28を成膜し、該緩衝層28上にGaP層29を50μm以上成膜して、発光素子基板32を作製することができる。GaP層29は成長ではなく、直接接合等の方法で接合して形成しても良い。
【0047】
そして、図5に示すように、例えば、ウェットエッチング法によりGaAs基板21、CdSe結晶22、及びバッファ層23を除去して自立基板とし、n型クラッド層24及びGaP層29部に第一電極30及び第二電極31を形成することができる。その後、ウェハを分割するダイス加工を行い、発光素子300とすることができる。
【0048】
(発光素子の製造方法の第四の実施形態)
次に、本発明の発光素子の製造方法の第四の実施形態について、図4、6を参照して説明する。
【0049】
まず、上記第一の実施形態と同様にして図4に示すような発光素子基板32を作製することができる。その後、図6に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板21、CdSe結晶22及びバッファ層23を除去して自立基板とし、n型クラッド層24部の一部を切り欠いてp型クラッド層26もしくはGaP層29部を露出させ、この露出部とn型クラッド層24部に第二電極31及び第一電極30を形成することができる。その後、ウェハを分割するダイス加工を行い、発光素子400とすることができる。
【0050】
以上説明したような本発明の発光素子の製造方法であれば、CdS結晶またはCdSe結晶上に発光層をエピタキシャル成長させることで、ウルツ鉱構造のAlGaInP系材料を得ることができる。ウルツ鉱構造AlGaInP系材料は直接遷移型であるため、緑色〜黄緑色領域において、発光効率の高いAlGaInP系発光素子を得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
図1、2に示すような本発明の発光素子の製造方法の第一の実施形態に基づいて、発光素子100を製造した。
【0053】
まず、図1に示すように、GaAs(111)基板1を準備し、このGaAs(111)基板1上にMBE法で150℃にてCdS結晶2を0.05μm成長し出発基板とした。
【0054】
CdS結晶2上に、バッファ層3を介して、機能層たるダブルヘテロ層(発光層7)をMOVPE法にて形成した。発光層7は、n型クラッド層4(下部クラッド層)、活性層5、p型クラッド層6(上部クラッド層)を順次積層したものとした。
【0055】
n型クラッド層4として、n型AlInPクラッド層を0.7μm(ドーピング濃度3.0E+17/cm)、n型Al0.6GaInP層0.3μm(ドーピング濃度1.0E+17/cm)の2層構造とした。
【0056】
活性層5は(AlGa1−xIn1−yP(0.15≦x≦0.8,0.4≦y≦0.6)から選択され、波長によって組成x及びyは変更した。活性層5は多重活性層とし、活性層及び障壁層の膜厚は求める波長により変更し、それぞれ4〜12nmの範囲で波長に合わせて調整した。波長は560nm、570nm、580nm、590nm、600nm、605nm、610nm、615nm、620nm、630nm、640nm、645nmの12種類とした。
【0057】
p型クラッド層6として、p型AlInPクラッド層を0.1μm(ドーピング濃度1.0E+17/cm)、p型Al0.6GaInP層0.9μm(ドーピング濃度3.0E+17/cm)の2層構造とした。
【0058】
発光層7上にはGaInPの緩衝層8を成膜し、この緩衝層8上にGaP層9をMOVPE法あるいはHVPE法にて100μm成膜して、発光素子基板12を作製した。
【0059】
GaP層9形成後、図2に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板1、CdS結晶2及びバッファ層3を除去して自立基板とし、GaP層9及びn型クラッド層4部に接する第二電極11及び第一電極10を形成した。このとき、n型クラッド層4を光取り出し面とし、n型クラッド層4の一部を被覆する第一電極10、GaP層9を一様に被覆する第二電極11を形成した。具体的には、第一電極10はBeを含有するAu電極であり、第二電極11はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これらの電極形成後、ウェハを250μm□(250μm×250μm)に分割するダイス加工を行い発光素子100とした。
【0060】
(実施例2)
図1、3に示すような本発明の発光素子の製造方法の第二の実施形態に基づいて、発光素子200を製造した。
【0061】
まず、実施例1と同様にして図1に示すような発光素子基板12を作製した。その後、図3に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板1、CdS結晶2及びバッファ層3を除去して自立基板とし、n型クラッド層4部の一部を切り欠いてp型クラッド層6を露出させた。n型クラッド層4上に第一電極10、露出部に第二電極11を形成した。第一電極10はBeを含有するAu電極であり、第二電極11はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これら電極形成後、ウェハを300μm□(300μm×300μm)に分割するダイス加工を行い、発光素子200とした。
【0062】
(実施例3)
図4、5に示すような本発明の発光素子の製造方法の第三の実施形態に基づいて、発光素子300を製造した。
【0063】
まず、GaAs(111)基板21を準備し、このGaAs(111)基板21上にMBE法で150℃にてCdSe結晶22を0.05μm成長し出発基板とした。
【0064】
CdSe結晶22上に、バッファ層23を介して、機能層たるダブルヘテロ層(発光層27)をMOVPE法にて形成した。発光層27は、n型クラッド層24(下部クラッド層)、活性層25、p型クラッド層26(上部クラッド層)を実施例1と同様にして順次積層したものとした。
【0065】
発光層27上にはGaInPの緩衝層28を成膜し、この緩衝層28上にGaP層29をMOVPE法あるいはHVPE法にて100μm成膜して、発光素子基板32を作製した。
【0066】
GaP層29形成後、図5に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板21、CdSe結晶22及びバッファ層23を除去して自立基板とした後、GaP層29及びn型クラッド層24部に接する第二電極31及び第一電極30を形成した。このとき、n型クラッド層24を光取り出し面とし、n型クラッド層24の一部を被覆する第一電極30、GaP層29を一様に被覆する第二電極31を形成した。具体的には、第一電極30はBeを含有するAu電極であり、第二電極31はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これらの電極形成後、ウェハを250μm□(250μm×250μm)に分割するダイス加工を行い発光素子300とした。
【0067】
(実施例4)
図4、6に示すような本発明の発光素子の製造方法の第四の実施形態に基づいて、発光素子400を製造した。
【0068】
まず、実施例3と同様にして図4に示すような発光素子基板32を作製した。その後、図6に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板21、CdSe結晶22及びバッファ層23を除去して自立基板とし、n型クラッド層24部の一部を切り欠いてp型クラッド層26を露出させた。n型クラッド層24上に第一電極30、露出部に第二電極31を形成した。第一電極30はBeを含有するAu電極であり、第二電極31はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これら電極形成後、ウェハを300μm□(300μm×300μm)に分割するダイス加工を行い、発光素子400とした。
【0069】
(比較例1)
図7、8に示すような従来の発光素子の製造方法に基づいて、発光素子500を製造した。
【0070】
まず、GaAs(001)基板41を準備し、このGaAs(001)基板41上に、バッファ層43を介して、機能層たるダブルヘテロ層(発光層47)をMOVPE法にて形成した。発光層47は、n型クラッド層44(下部クラッド層)、活性層45、p型クラッド層46(上部クラッド層)を順次積層したものとした。
【0071】
このとき、活性層45は(AlGa1−xIn1−yP(0.15≦x≦0.8,0.4≦y≦0.6)から選択され、波長によって組成x及びyは変更した。活性層は多重活性層とし、活性層及び障壁層の膜厚は求める波長により変更し、それぞれ4〜12nmの範囲で波長に合わせて調整した。波長は570nm、580nm、590nm、600nm、605nm、610nm、615nm、620nm、630nm、640nm、645nmの11種類とした。n型クラッド層44及びp型クラッド層46は、実施例1と同様とした。
【0072】
発光層47上にはGaInPの緩衝層48を成膜し、この緩衝層48上にGaP層49をMOVPE法あるいはHVPE法にて100μm成膜して、発光素子基板52を作製した。
【0073】
GaP層49形成後、図8に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板41及びバッファ層43を除去して自立基板とした後、GaP層49及びn型クラッド層44部に接する第二電極51及び第一電極50を形成した。このとき、n型クラッド層44を光取り出し面とし、n型クラッド層44の一部を被覆する第一電極50、GaP層49を一様に被覆する第二電極51を形成した。具体的には、第一電極50はBeを含有するAu電極であり、第二電極51はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これらの電極形成後、ウェハを250μm□(250μm×250μm)に分割するダイス加工を行い発光素子500とした。
【0074】
(比較例2)
図7、9に示すような従来の発光素子の製造方法に基づいて、発光素子600を製造した。
【0075】
まず、比較例1と同様にして図7に示すような発光素子基板52を作製した。その後、図9に示すようにして、ウェットエッチング法によりGaAs基板41及びバッファ層43を除去して自立基板とし、n型クラッド層44部の一部を切り欠いてp型クラッド層46を露出させた。n型クラッド層44上に第一電極50、露出部に第二電極51を形成した。第一電極50はBeを含有するAu電極であり、第二電極51はSi,Zn,Sを含有するAu電極とし、それぞれの膜厚は1.5μmとした。これら電極形成後、ウェハを300μm□(300μm×300μm)に分割するダイス加工を行い、発光素子600とした。
【0076】
実施例1〜4及び比較例1〜2で製造した発光素子について、素子輝度の各波長依存性を測定した。
【0077】
図10には、比較例1と実施例1及び3の素子輝度の各波長依存性を示した。実施例1及び実施例3は比較例1に対して波長560〜600nmの範囲において輝度(発光効率)が高くなっているのが分かる。
【0078】
また、図11に比較例2と実施例2及び4の素子輝度の各波長依存性を示した。図11に示すように、実施例2及び実施例4は比較例2に対して波長560〜600nmの範囲において輝度(発光効率)が高くなっているのが分かる。
【0079】
このように、比較例1、2で製造した発光素子では、AlGaInP系材料が閃亜鉛鉱構造を有すため、波長560〜600nmの範囲(緑色〜黄緑色領域)において発光効率が低下する。
【0080】
一方、実施例1〜4で製造した本発明の発光素子は、CdS結晶またはCdSe結晶上に発光層をエピタキシャル成長させることで、ウルツ鉱構造のAlGaInP系材料を得ることができるため、波長560〜600nmの範囲において発光効率が低下するのが抑制された、発光効率の高いAlGaInP系発光素子を得ることができた。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0082】
1、21…GaAs基板、 2…CdS結晶、 3、23…バッファ層、
4、24…n型クラッド層、 5、25…活性層、 6、26…p型クラッド層、
7、27…発光層、 8、28…緩衝層、 9、29…GaP層、
10、30…第一電極、 11、31…第二電極、
12、32…発光素子基板、 22…CdSe結晶、
100、200、300、400…発光素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11