(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体と、前記積層体における前記樹脂層の、前記ガラス基板とは反対側の少なくとも一方の面上に設けられた金属箔と、を備える、金属張積層体。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体と、前記積層体における前記樹脂層の、前記ガラス基板とは反対側の少なくとも一方の面上に設けられた回路層と、を備える、プリント配線板。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
[積層体]
本実施形態の積層体は、ガラス基板と、ガラス基板の両面に設けられた樹脂層と、を備える。
図1は、本実施形態に係る積層体を示す模式的断面図である。
図1に示すように、積層体10は、ガラス基板1と、ガラス基板1の両面に設けられた樹脂層13a及び樹脂層13bと、を備えている。
【0016】
(ガラス基板)
本実施形態に係るガラス基板の厚さは、用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、30〜500μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜300μmが更に好ましい。ガラス基板の厚さが上記範囲内であることにより、本実施形態のプリント配線板の薄型化を図ることができるだけでなく、取扱いの容易性、信頼性を確保できる。
【0017】
ガラス基板の大きさは、特に限定されるものではないが、取扱いの容易性の観点から、幅10〜1000mm、長さ10〜3000mm(ロールで用いる場合は、長さは適宜適用される)が好ましい。同様の観点から、幅25〜550mm、長さ25〜550mmであることがより好ましい。
【0018】
ガラス基板の素材としては、特に限定されない。ガラス基板の素材としては、例えば、ケイ酸アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラスが挙げられるが、熱膨張率がシリコンチップに近いことから、ホウケイ酸ガラスが好ましい。
【0019】
(樹脂層)
本実施形態に係る樹脂層は、上記ガラス基板の両面に設けられており、樹脂層のうち少なくとも1層が、マレイミド基及びマレイミド基に結合する2価の基を有する化合物を含有する樹脂組成物からなる。
【0020】
このような樹脂組成物からなる樹脂層は、誘電特性がフッ素樹脂層に匹敵するのみならず、ポリフェニレンオキサイド等を含む樹脂組成物と同等の高接着性、高耐熱性及び耐薬液汚染性を有する。
【0021】
(樹脂組成物)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述のとおり、マレイミド基及びマレイミド基に結合する2価の基を有する化合物を含有する。上記2価の基は、マレイミド基に結合する飽和又は不飽和の2価の炭化水素基及びマレイミド基以外の少なくとも2つのイミド基を含む。
【0022】
<マレイミド基及びマレイミド基に結合する2価の基を有する化合物>
本実施形態に係る、マレイミド基及びマレイミド基に結合する2価の基を有する化合物であって、2価の基が、マレイミド基に結合する飽和又は不飽和の2価の炭化水素基及びマレイミド基以外の少なくとも2つのイミド基を含む、化合物を「(A)成分」ということがある。また、(A)成分のうち、マレイミド基を「構造(a)」、マレイミド基に結合する2価の基を「構造(b)」、マレイミド基に結合する飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を「構造(b1)」及びマレイミド基以外の少なくとも2つのイミド基を「構造(b2)」ということがある。(A)成分を用いることで、高周波特性及び導体との高い接着性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
構造(a)は特に限定されず、一般的なマレイミド基である。構造(a)は、後述する構造(b)のうち構造(b1)と結合するが、構造(a)における構造(b1)との結合位置は限定されない。構造(a)における構造(b1)との結合位置としては、例えば、下記式(XIV)で表されるように、マレイミド基の窒素原子が挙げられる。
【0025】
構造(b)は、構造(b1)及び構造(b2)を含む。これらのうち構造(b1)が上記構造(a)と結合する。
【0026】
構造(b1)における飽和又は不飽和の2価の炭化水素基は、特に限定されず、飽和又は不飽和の2価の直鎖状炭化水素基、飽和又は不飽和の2価の分岐状炭化水素基、及び飽和又は不飽和の2価の環状炭化水素基のいずれであってもよい。また、不飽和の2価の環状炭化水素基は、芳香族基であってもよい。飽和又は不飽和の2価の炭化水素基の炭素数は、8〜300、8〜250、8〜200又は8〜100であってもよい。構造(b1)は、炭素数8〜300、8〜250、8〜200又は8〜100の分岐を有していてもよいアルキレン基であることが好ましく、炭素数10〜70の分岐を有していてもよいアルキレン基であるとより好ましく、炭素数15〜50の分岐を有していてもよいアルキレン基であると更に好ましい。(A)成分が構造(b1)を有することで、本実施形態に係る樹脂組成物の可とう性が向上し、樹脂組成物から作製される樹脂フィルムの取扱い性(タック性、割れ、粉落ち等)及び強度を高めることが可能となる。また、上記の炭素数を有する構造(b1)は、分子構造を三次元化し易く、ポリマーの自由体積を増大させて低密度化、すなわち低誘電率化できるため好ましい。
【0027】
構造(b1)としては、例えば、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基等のアルキレン基;ベンジレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、ベンジルプロピレン基、ナフチレンメチレン基、ナフチレンエチレン基等のアリーレンアルキレン基;フェニレンジメチレン基、フェニレンジエチレン基等のアリーレンジアルキレン基などが挙げられる。
【0028】
高周波特性、低熱膨張性、導体との接着性、耐熱性及び低吸湿性の観点から、構造(b1)として下記式(II)で表される基が特に好ましい。
【0030】
式(II)中、R
2及びR
3は各々独立に炭素数4〜50のアルキレン基を示す。柔軟性の更なる向上及び合成容易性の観点から、R
2及びR
3は各々独立に、炭素数5〜25のアルキレン基であることが好ましく、炭素数6〜10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数7〜10のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0031】
式(II)中、R
4は炭素数4〜50のアルキル基を示す。柔軟性の更なる向上及び合成容易性の観点から、R
4は炭素数5〜25のアルキル基であることが好ましく、炭素数6〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数7〜10のアルキル基であることが更に好ましい。
【0032】
式(II)中、R
5は炭素数2〜50のアルキル基を示す。柔軟性の更なる向上及び合成容易性の観点から、R
5は炭素数3〜25のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数5〜8のアルキル基であることが更に好ましい。
【0033】
流動性及び回路埋め込み性の観点からは、構造(b1)は、(A)成分中に複数存在すると好ましい。その場合、構造(b1)はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、(A)成分中に2〜40の構造(b1)が存在することが好ましく、2〜20の構造(b1)が存在することがより好ましく、2〜10の構造(b1)が存在することが更に好ましい。
【0034】
構造(b2)としては特に限定されないが、例えば、下記式(I)で表される基が挙げられる。
【0036】
式(I)中、R
1は4価の有機基を示す。R
1は4価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、取扱い性の観点から、炭素数1〜100の炭化水素基であってもよく、炭素数2〜50の炭化水素基であってもよく、炭素数4〜30の炭化水素基であってもよい。
【0037】
R
1は、置換又は非置換のシロキサン基を含んでいてもよい。シロキサン基としては、例えば、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン等に由来する基が挙げられる。
【0038】
R
1が置換されている場合、置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、アミド基、−C(O)H、−NR
XC(O)−N(R
X)
2、−OC(O)−N(R
X)
2、アシル基、オキシアシル基、カルボキシル基、カルバメート基、スルホンアミド基等が挙げられる。ここで、R
Xは水素原子又はアルキル基を示す。これらの置換基は目的、用途等に合わせて、1種類又は2種類以上を選択できる。
【0039】
R
1としては、例えば、1分子中に2個以上の無水物環を有する酸無水物の4価の残基、すなわち、酸無水物から酸無水物基(−C(=O)OC(=O)−)を2個除いた4価の基であることが好ましい。酸無水物としては、後述するような化合物が例示できる。
【0040】
機械強度の観点から、R
1は芳香族基であることが好ましく、無水ピロメリット酸から2つの酸無水物基を取り除いた残基であることがより好ましい。すなわち、構造(b2)は下記式(III)で表される基であることがより好ましい。
【0042】
流動性及び回路埋め込み性の観点からは、構造(b2)は、(A)成分中に複数存在することが好ましい。その場合、構造(b2)は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。(A)成分中の構造(b2)の数は、2〜40であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることが更に好ましい。
【0043】
誘電特性の観点から、構造(b2)は、下記式(IV)又は下記式(V)で表される基であってもよい。
【0046】
(A)成分は、例えば、下記式(XIII)で表される化合物であってもよい。
【0048】
式(XIII)中、Rは飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基は、上記構造(b1)と同じものが使用できる。R
1は式(I)中のR
1と同様の4価の有機基を示し、nは1〜10の整数を表す。
【0049】
(A)成分としては市販されている化合物を使用することもできる。市販されている化合物としては、例えば、デジグナーモレキュールズインコーポレイテッド社製の製品が挙げられ、具体的には、BMI−1500、BMI−1700、BMI−3000、BMI−5000、BMI−9000(いずれも商品名)等が挙げられる。より良好な高周波特性を得る観点から、(A)成分としてBMI−3000を使用することがより好ましい。
【0050】
BMI−1500は、式(XII−1)で表される構造を有し、BMI−1700は、式(XII−1)で表される構造を有し、BMI−3000、BMI−5000及びBMI−9000は、式(XII−3)の構造を有していると推定される。式(XII−1)〜式(XII−3)中、nは1〜10の整数を表す。
【0054】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は特に限定されない。耐熱性の観点から(A)成分の含有量の下限値は、樹脂組成物の全質量を基準として2質量%以上又は10質量%以上であってもよい。また、低熱膨張係数の観点から(A)成分の含有量の上限値は、樹脂組成物の全質量を基準として98質量%以下、50質量%以下、30質量%以下又は20質量%以下であってもよい。耐熱性の観点から、(A)成分の含有量は樹脂組成物の全質量を基準として2〜98質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましく、10〜20質量%であることがより一層好ましい。
【0055】
(A)成分の分子量は特に限定されない。流動性の観点から(A)成分の重量平均分子量(Mw)の下限値は、500以上、1000以上、1500以上、1700以上、2000以上、2500以上又は3000以上であってもよい。また、取扱い性の観点から(A)成分のMwの上限値は、10000以下、9000以下、7000以下又は5000以下であってもよい。取扱い性、流動性及び回路埋め込み性の観点より(A)成分のMwは、500〜10000であることが好ましく、1000〜9000であることがより好ましく、1500〜9000であることが更に好ましく、1500〜7000であることがより一層好ましく、1700〜5000であることが特に好ましい。
【0056】
(A)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0057】
なお、GPCの測定条件は下記のとおりである。
ポンプ:L−6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L−3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L−655A−52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
ガードカラム及びカラム:TSK Guardcolumn HHR−L+TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR[すべて東ソー株式会社製、商品名]
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0058】
(A)成分を製造する方法は限定されない。(A)成分は、例えば、酸無水物とジアミンとを反応させてアミン末端化合物を合成した後、該アミン末端化合物を過剰の無水マレイン酸と反応させることで作製してもよい。
【0059】
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの酸無水物は目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。なお、前述のとおり、上記式(I)のR
1として、上記に挙げられるような酸無水物に由来する4価の有機基を用いることができる。より良好な誘電特性の観点から、酸無水物は、無水ピロメリット酸であることが好ましい。
【0060】
ジアミンとしては、例えば、ダイマージアミン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ポリオキシアルキレンジアミン、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン等が挙げられる。これらは目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
<マレイミド基を有する化合物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、マレイミド基を有する化合物を更に含むことができる。本実施形態に係るマレイミド基を有する化合物を(B)成分ということがある。なお、上記(A)成分及び(B)成分の双方に該当し得る化合物は、(A)成分に帰属するものとする。(B)成分を用いることで、樹脂組成物は、特に低熱膨張性に優れるものとなる。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分とを併用することにより、良好な誘電特性を維持しつつ、低熱膨張性等を更に向上させることができる。この理由として、(A)成分と(B)成分とを含む樹脂組成物から得られる硬化物は、低誘電特性を備える(A)成分からなる構造単位と、低熱膨張性を備える(B)成分からなる構造単位とを備えるポリマーを含むためと推測される。
【0062】
(B)成分は、(A)成分よりも熱膨張係数が低いことが好ましい。(A)成分よりも熱膨張係数が低い(B)成分としては、例えば、(A)成分よりも分子量が小さい化合物、(A)成分よりも多くの芳香環を有する化合物、主鎖が(A)成分よりも短い化合物等が挙げられる。
【0063】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は特に限定されない。低熱膨張性の観点から、(B)成分の含有量の下限値は、樹脂組成物の全質量を基準として1質量%以上、2質量%以上又は3質量%以上であってもよい。また、誘電特性の観点から(B)成分の含有量の上限値は、樹脂組成物の全質量を基準として95質量%以下、90質量%以下又は85質量%以下であってもよい。低熱膨張性の観点から、(B)成分の含有量は樹脂組成物の全質量を基準として1〜95質量%であることが好ましく、2〜90質量%であることがより好ましく、3〜85質量%であることが更に好ましい。
【0064】
樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分との配合割合は特に限定されない。誘電特性及び低熱膨張係数の観点から、(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)が0.01〜3であることが好ましく、0.03〜2であることがより好ましく、0.05〜1であることが更に好ましい。
【0065】
樹脂組成物中の(A)成分及び(B)成分の含有量の合計は特に限定されない。耐熱性の観点から、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計の下限値は、樹脂組成物の全質量を基準として2質量%以上又は10質量%以上であってもよい。また、低熱膨張係数の観点から(A)成分及び(B)成分の含有量の合計の上限値は、樹脂組成物の全質量を基準として98質量%以下、50質量%以下、30質量%以下又は20質量%以下であってもよい。耐熱性の観点から、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計は、樹脂組成物の全質量を基準として2〜98質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましく、10〜20質量%であることがより一層好ましい。
【0066】
このような(B)成分は特に限定されず、マレイミド基の他に、マレイミド基に結合する芳香族基、マレイミド基に結合する脂肪族基等を有する化合物を含んでいてもよい。熱膨張係数をより効果的に低減させる観点から、(B)成分は、マレイミド基及びマレイミド基に結合する芳香族基を有する化合物を含むことが好ましい。芳香族基は剛直で低熱膨張であるため、マレイミド基及びマレイミド基に結合する芳香族基を有する化合物を用いることで、更に熱膨張係数を低減させることができる。また、マレイミド基を有する化合物は、マレイミド基を2個以上有するポリマレイミド化合物であることも好ましい。
【0067】
(B)成分としてのマレイミド基を有する化合物の具体例としては、1,2−ジマレイミドエタン、1,3−ジマレイミドプロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,7−ジマレイミドフルオレン、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,3−(4−メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)エ−テル、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(2−(3−マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)−1−プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、吸湿性及び熱膨張係数をより低下させる観点からは、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを用いることが好ましい。樹脂組成物から形成される樹脂フィルムの破壊強度及び金属箔引きはがし強さを高める観点からは、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いることが好ましい。吸湿性及び熱膨張係数をより低下させる観点からは、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンを用いることが好ましい。
【0068】
成形性の観点からは、(B)成分は、例えば、下記式(VI)で表される、ポリアミノビスマレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0070】
式(VI)中、A
4は下記式(VII)、(VIII)、(IX)又は(X)で表される基を示し、A
5は下記式(XI)で表される基を示す。
【0072】
式(VII)中、R
10は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。
【0074】
式(VIII)中、R
11及びR
12は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
6は炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基、単結合又は下記式(VIII−1)で表される基を示す。
【0076】
式(VIII−1)中、R
13及びR
14は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
7は炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基又は単結合を示す。
【0078】
式(IX)中、iは1〜10の整数を表す。
【0080】
式(X)中、R
15及びR
16は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1〜8の整数を表す。
【0082】
式(XI)中、R
17及びR
18は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、A
8は、炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基、フルオレニレン基、単結合、下記式(XI−1)で表される基又は下記式(XI−2)で表される基を示す。
【0084】
式(XI−1)中、R
19及びR
20は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
9は、炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m−フェニレンジイソプロピリデン基、p−フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基又は単結合を示す。
【0086】
式(XI−2)中、R
21は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
10及びA
11は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基又は単結合を示す。
【0087】
(B)成分は、有機溶媒への溶解性、高周波特性、導体との高接着性等の観点から、上記式(VI)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物として用いることが好ましい。ポリアミノビスマレイミド化合物は、例えば、末端に2個のマレイミド基を有する化合物と、分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物とを有機溶媒中でマイケル付加反応させることにより得られる。
【0088】
分子中に2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物は特に限定されないが、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、1,3−ビス(2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル)ベンゼン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0089】
また、有機溶媒への溶解性が高く、合成時の反応率が高く、かつ耐熱性を高くできる観点からは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン又は1,3−ビス(2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル)ベンゼンが好ましい。これらは目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
ポリアミノビスマレイミド化合物を製造する際に使用される有機溶媒は特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、これらの中でも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが溶解性の観点から好ましい。
【0091】
<触媒>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分の硬化を促進するための触媒を更に含有してもよい。触媒の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物の全質量を基準として0.1〜5質量%であってもよい。触媒としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物、亜鉛化合物(ナフテン酸亜鉛等)などを用いることができる。
【0092】
過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、2−ブタノンパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエイト、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及びtert−ブチルヒドロパーオキシドが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)が挙げられる。
【0093】
<熱硬化性樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分とは異なる熱硬化性樹脂を更に含有することができる。なお、(A)成分又は(B)成分に該当し得る化合物は、熱硬化性樹脂に帰属しないものとする。熱硬化性樹脂を含むことで、樹脂組成物の低熱膨張性等を向上させることができる。
【0094】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、高周波特性及び熱膨張特性の観点からは、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂又はビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0095】
シアネートエステル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、安価である点、高周波特性及びその他特性の総合バランスを考慮すると、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンが好ましい。
【0096】
<硬化剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記熱硬化性樹脂の硬化剤を更に含有してもよい。これにより、樹脂組成物の硬化物を得る際の反応を円滑に進めることができるとともに、得られる樹脂組成物の硬化物の物性を適度に調節することが可能となる。
【0097】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては特に制限されないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジシアンジアミド等のポリアミン化合物;ビスフェノールA、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等のポリフェノール化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物;各種カルボン酸化合物;各種活性エステル化合物などが挙げられる。
【0098】
熱硬化性樹脂としてシアネートエステル樹脂を用いる場合、硬化剤としては特に限定されないが、例えば、各種モノフェノール化合物、各種ポリフェノール化合物、各種アミン化合物、各種アルコール化合物、各種酸無水物、各種カルボン酸化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0099】
<硬化促進剤>
本実施形態に係る樹脂組成物には、上記熱硬化性樹脂の種類に応じて硬化促進剤を更に配合してもよい。エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、例えば、潜在性の熱硬化剤である各種イミダゾール類、BF
3アミン錯体、リン系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤を配合する場合、樹脂組成物の保存安定性、半硬化の樹脂組成物の取扱い性及びはんだ耐熱性の観点から、イミダゾール類及びリン系硬化促進剤が好ましい。
【0100】
<無機充填剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、無機充填剤を更に含有してもよい。任意に適切な無機充填剤を含有させることで、樹脂組成物の低誘電正接性、低熱膨張性、高弾性率性、耐熱性、難燃性等をより効果的に向上させることができる。無機充填剤としては特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0101】
無機充填剤の形状及び粒径についても特に制限はない。無機充填剤の粒径は、例えば、0.01〜20μmであっても、0.1〜10μmであってもよい。ここで、粒径とは、平均粒子径を指し、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことである。平均粒径はレーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0102】
無機充填剤を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、例えば、樹脂組成物中の固形分を全量として無機充填剤の含有比率が3〜75体積%であることが好ましく、5〜70体積%であることがより好ましい。樹脂組成物中の無機充填剤の含有比率が上記の範囲である場合、良好な硬化性、成形性及び耐薬品性が得られ易くなる。
【0103】
無機充填剤を用いる場合、無機充填剤の分散性、有機成分との密着性を向上させる等の目的で、必要に応じ、カップリング剤を併用できる。このようなカップリング剤としては特に限定されず、例えば、チタネートカップリング剤、各種のシランカップリング剤等を用いることができる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。また、カップリング剤の使用量も特に限定されず、例えば、使用する無機充填剤100質量部に対して0.1〜5質量部としてもよいし、0.5〜3質量部としてもよい。この範囲であれば、諸特性の低下が少なく、無機充填剤の使用による特長を効果的に発揮し易くなる。
【0104】
カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物中に無機充填剤を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、予め無機充填剤にカップリング剤を、乾式又は湿式で表面処理した無機充填剤を使用する方式が好ましい。この方法を用いることで、より効果的に上記無機充填剤の特長を発現できる。
【0105】
<熱可塑性樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂フィルムの取扱い性を高める観点から、熱可塑性樹脂を更に含有してもよい。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、分子量も限定されないが、(A)成分との相溶性をより高める点から、数平均分子量(Mn)が200〜60000であることが好ましい。
【0106】
フィルム形成性及び耐吸湿性の観点から、熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマであることが好ましい。熱可塑性エラストマとしては飽和型熱可塑性エラストマ等が挙げられ、飽和型熱可塑性エラストマとしては化学変性飽和型熱可塑性エラストマ、非変性飽和型熱可塑性エラストマ等が挙げられる。化学変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、無水マレイン酸で変性されたスチレン−エチレン−ブチレン共重合体等が挙げられる。化学変性飽和型熱可塑性エラストマの具体例としては、タフテックM1911、M1913、M1943(全て旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)等が挙げられる。一方、非変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、非変性のスチレン−エチレン−ブチレン共重合体等が挙げられる。非変性飽和型熱可塑性エラストマの具体例としては、タフテックH1041、H1051、H1043、H1053(全て旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0107】
フィルム形成性、誘電特性及び耐吸湿性の観点から、飽和型熱可塑性エラストマは、分子中にスチレンユニットを有することがより好ましい。なお、本明細書において、スチレンユニットとは、重合体における、スチレン単量体に由来する単位を指し、飽和型熱可塑性エラストマとは、スチレンユニットの芳香族炭化水素部分以外の脂肪族炭化水素部分が、いずれも飽和結合基によって構成された構造を有するものをいう。
【0108】
飽和型熱可塑性エラストマにおけるスチレンユニットの含有比率は、特に限定されないが、飽和型熱可塑性エラストマの全質量に対するスチレンユニットの質量百分率で、10〜80質量%であると好ましく、20〜70質量%であるとより好ましい。スチレンユニットの含有比率が上記範囲内であると、フィルム外観、耐熱性及び接着性に優れる傾向にある。
【0109】
分子中にスチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマの具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体が挙げられる。スチレン−エチレン−ブチレン共重合体は、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンに由来する構造単位が有する不飽和二重結合に水素添加を行うことにより得ることができる。
【0110】
熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されないが、誘電特性を更に良好にする観点からは樹脂組成物の固形分を全量として0.1〜15質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。
【0111】
<難燃剤>
本実施形態に係る樹脂組成物には、難燃剤を更に配合してもよい。難燃剤としては特に限定されないが、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物等が好適に用いられる。臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂;ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤;トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル;フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル;ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル;ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物;リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物、赤リン等のリン系難燃剤などが挙げられる。金属水酸化物難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの難燃剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記した各成分を、必要に応じて溶媒を用いて均一に分散及び混合することによって得ることができ、その調製手段、条件等は特に限定されない。例えば、所定配合量の各種成分をミキサー等によって十分に均一に撹拌及び混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等を用いて混練し、更に得られた混練物を冷却及び粉砕する方法が挙げられる。なお、混練形式についても特に限定されない。溶媒については特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類などの有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
樹脂組成物の固形分(不揮発分)濃度は、特に限定されないが、例えば5〜80質量%とすることができる。
【0115】
本実施形態に係る樹脂層のうち少なくとも1層は、上述した樹脂組成物の半硬化物又は硬化物からなる樹脂層である。本実施形態の積層体は、ガラス基板の片面にのみ該樹脂層を備えていてもよく、ガラス基板の両面に該樹脂層を備えていてもよい。また、本実施形態の積層体は、該樹脂層の他に、その他の樹脂層を備えていてもよい。
【0116】
その他の樹脂層を形成するための樹脂組成物は、上述した(A)成分を含まないものであれば特に限定されるものではなく、樹脂及び必要に応じて上記樹脂組成物において使用できる他の成分(上記(B)成分、触媒、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤、難燃剤等)を含有することができる。上記樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等であってよく、誘電特性、耐熱性、耐溶剤性、及びプレス成形性を改良する観点から、熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂で変性した樹脂であってよい。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂としては、上記樹脂組成物における熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂と同様のものを使用することができる。
【0117】
上記各樹脂組成物は、上記した各成分を、必要に応じて溶媒を用いて均一に分散及び混合することによって得ることができ、その調製手段、条件等は特に限定されない。溶媒については特に限定されないが、例えば上述した溶媒と同様のものを使用することができる。
【0118】
本実施形態に係る樹脂層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜200μmが好ましく、2〜100μmがより好ましい。厚さを上記範囲とすることにより、本実施形態のプリント配線板の薄型化を図ることができるだけでなく、高速信号の伝送特性に優れ、且つ膜厚精度の高い樹脂層を形成することができる。
【0119】
本実施形態の積層体の製造方法としては、ガラス基板に樹脂組成物を塗布する方法、予め樹脂組成物から樹脂フィルムを形成し、当該樹脂フィルムをガラス基板にラミネートする方法等が挙げられる。生産の容易性の観点から、樹脂フィルムをガラス基板にラミネートする方法が好ましい。
【0120】
以下に各製造方法について詳細に説明する。
【0121】
ガラス基板に樹脂組成物を塗布する方法は、樹脂組成物をガラス基板の表面に塗布して樹脂層を形成して積層体を製造する方法である。例えば、樹脂組成物を上述した溶媒に溶解及び/又は分散することにより樹脂ワニスを調製し、該樹脂ワニスを、各種コーターを用いてガラス基板に塗布し、加熱、熱風吹き付け等によって溶媒を乾燥・硬化させることにより、樹脂層を形成する。この樹脂層は、半硬化状態としてもよい。このようにして、樹脂組成物が半硬化物又は硬化物となっている積層体を製造することができる。
【0122】
樹脂ワニスをガラス基板上に塗布する際に用いるコーターは、形成する樹脂フィルムの厚さ等に応じて適宜選択すればよく、例えば、ダイコーター、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター等であってよい。
【0123】
樹脂ワニスをガラス基板上に塗布した後の乾燥条件は、例えば、乾燥後の樹脂フィルム中の溶媒の含有量が10質量%以下となる条件とすることができ、また、5質量%以下となる条件とすることができる。例えば、30〜60質量%の溶媒を含むワニスを50〜150℃で3〜10分間程度乾燥させることにより、樹脂フィルムを形成することができる。乾燥条件は、予め簡単な実験により好適な乾燥条件を設定することができる。
【0124】
樹脂フィルムをガラス基板にラミネートする方法は、真空ラミネータ、ロールラミネータ等の加圧ラミネート装置を用いて、樹脂フィルムとガラス基板とをラミネートすることで積層体を製造する方法である。樹脂フィルムは、公知の方法で製造することができる。例えば、上記と同様にして調製した樹脂ワニスを各種コーターを用いて支持体に塗布し、加熱、熱風吹き付け等により乾燥する方法が挙げられる。樹脂ワニスを支持体に塗布するし、加熱、熱風吹き付け等により乾燥する方法は、上記樹脂ワニスをガラス基板に塗布する場合と同様の方法を用いてもよい。
【0125】
樹脂フィルムの支持体は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミドなどからなるフィルム、更には離型紙、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。なお、支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理、離型処理等を施してもよい。
【0126】
支持体の厚さは、例えば、10〜150μmとすることができ、また、25〜50μmとすることができる。樹脂フィルムの厚さは、形成する樹脂層の厚さに応じて適宜決定すればよい。
【0127】
樹脂フィルムの支持体が設けられていない面には、保護フィルムを更に積層することができる。保護フィルムは、支持体の材質と同じであってもよく、異なっていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、異物混入を防止することができ、樹脂フィルムをロール状に巻き取って保管することもできる。
【0128】
樹脂フィルムをガラス基板にラミネートする際には、保護フィルムがある場合は保護フィルムを剥離してからラミネートし、ラミネート後に支持体を剥離すればよい。また、更に必要に応じて加熱処理を行い、樹脂層を硬化させてもよい。このようにして、樹脂組成物が半硬化物又は硬化物となっている積層体を製造することができる。
【0129】
[金属張積層体]
本実施形態の金属張積層体は、上述した本実施形態の積層体と、積層体における樹脂層の、ガラス基板とは反対側の少なくとも一方の面上に設けられた金属箔と、を備える。
【0130】
(金属箔)
金属箔は、例えば銅箔を用いることができる。金属箔は、プリント配線板用途として一般的に市販されているものを使用することができ、特に仕様を限定するものではないが、高周波領域での信号の伝送損失を低減させるためには、金属箔の表面粗さが小さいものを使用することが好ましい。表面粗さが小さい金属箔を用いることで、導体の粗さに起因する導体損失を低減することができる。
【0131】
金属箔の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜35μmとすることができる。後述するビアホールの形成をサンドブラスト又はレーザーにより行う場合、その厚みは1〜5μmが好ましい。金属箔の厚みを小さくすることにより、銅箔をエッチングすることなく、スルーホールの形成が可能となる。
【0132】
本実施形態の金属張積層体の大きさは、特に限定されるものではないが、取扱い性の観点から、幅10〜100mm、長さ10〜3000mm(ロールで用いる場合は、長さは適宜適用される。)の範囲で選択されることが好ましい。特に、幅25〜550mm、長さ25〜550mmであることが好ましい。
【0133】
本実施形態の金属張積層体の厚さは、その用途により35μm〜1000mmの範囲で選択されることが好ましく、より好ましくは50μm〜300μmである。
【0134】
本実施形態の金属張積層体は、例えば、上記で得られた本実施形態の積層体における樹脂層の、ガラス基板とは反対側の少なくとも一方の面上に金属箔を積層させ、樹脂成分を硬化させて得ることができる。
【0135】
積層体における樹脂層の、ガラス基板とは反対側の少なくとも一方の面上に金属箔を積層させる方法としては、上記面上に金属箔を1枚又は複数枚貼り合わせたものを貼り合わせ、加熱及び/又は加圧する方法が挙げられる。なお、金属箔は金属箔の積層によって形成してもよく、乾式めっき等の公知の方法を使用して形成してもよい。
【0136】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、上述した本実施形態の積層体と、積層体における樹脂層の、ガラス基板とは反対側の少なくとも一方の面上に設けられた回路層と、を備える。
【0137】
(回路層)
回路層は、特に限定されず、例えば上記金属箔から構成されてもよい。金属箔としては、例えば、上述した金属箔張積層体に適用可能な金属箔を使用することができる。
【0138】
本実施形態のプリント配線板は、上記積層体を用いて当業者に公知の方法に従って製造することができる。以下、本実施形態のプリント配線板の製造方法について詳細に説明する。
【0139】
(ビアホール等の形成)
まず、上記積層体に、必要に応じてドリル、サンドブラスト、レーザー、放電加工、ウェットエッチング、これらの組合せ等の方法により穴あけを行い、ビアホール、スルーホール等を形成する。レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等を用いることができる。ビアホール等の形成後、酸化剤を用いてデスミア処理を施してもよい。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素、硫酸、硝酸等が好適であり、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)などがより好適である。
【0140】
(配線パターンの形成)
配線パターンの形成としては、例えば、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法等を用いることができる。
【0141】
本実施形態の積層体にサブトラクティブ法を用いて配線パターンを形成する場合は、まず、上記本実施形態の金属張積層体を得る。その後、得られた金属張積層体にエッチングレジストを形成し、不要な部分の金属箔をエッチング除去することにより、所望の配線パターンを有する回路層を形成し、プリント配線板を得ることができる。
【0142】
本実施形態の積層体にセミアディティブ法を用いて配線パターンを形成する場合は、まず粗化処理を行う。この場合の粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ素化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液等の酸化性粗化液を用いることができる。粗化処理としては、例えば、まず膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルとNaOHとの水溶液を70℃に加温して積層体を5分間浸漬処理する。次に、粗化液として、KMnO
4とNaOHとの水溶液を80℃に加温して10分間浸漬処理する。引き続き、中和液、例えば塩化第一錫(SnCl
2)の塩酸水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和する。
【0143】
粗化処理後は、パラジウムを付着させるめっき触媒付与処理を行う。めっき触媒処理は、塩化パラジウム系のめっき触媒液に浸漬して行われる。次に、無電解めっき液に浸漬して、積層体の表面及びビアホール又はスルーホール内全面に厚さが0.3〜1.5μmの無電解めっき層を析出させる無電解めっき処理を行う。
【0144】
次にめっきレジストを形成し、電気めっき処理を行う。さらに、レジストを剥離してから、不要な箇所の無電解めっき層をエッチング除去することにより、所望の配線パターンを形成することができる。無電解めっき処理に使用する無電解めっき液、及びめっきレジストは、公知のものを使用することができる。また、電気めっき処理についても公知の方法を用いることができる。これらのめっきは銅めっきであることが好ましい。
【0145】
(多層配線の形成)
上記のようにして配線パターンを形成した積層体上に、更に配線パターンを形成して多層配線とすることもできる。
【0146】
この多層配線を形成するには、上記の配線パターンを形成した積層体上に、上述の樹脂フィルム等をラミネートした後、レーザーなどによるブラインドビアホールの形成と、めっき又は導電性ペーストによる層間接続と、配線パターンの形成を行う。このようにして、多層配線が形成されたプリント配線板(多層プリント配線板)を製造することができる。
【実施例】
【0147】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0148】
[樹脂組成物(樹脂ワニス)]
下記手順に従って、各種の樹脂組成物を調製した。調製例1〜7の樹脂組成物の調製に用いた各原材料の使用量(質量部)は、表1にまとめて示す。
【0149】
温度計、還流冷却管及び撹拌装置を備えた300mLの4つ口フラスコに、表1に示す各成分を投入し、25℃で1時間撹拌した後、#200ナイロンメッシュ(開口75μm)によりろ過し樹脂組成物を得た。
【0150】
なお、表1における各材料の略号等は、以下のとおりである。
(1)BMI−1500[Mw:約1500、Designer Molecules Inc.製、商品名]
(2)BMI−1700[Mw:約1700、Designer Molecules Inc.製、商品名]
(3)BMI−3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]
(4)BMI−5000[Mw:約5000、Designer Molecules Inc.製、商品名]
(5)BMI−1000[ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、大和化成工業株式会社製、商品名]
(6)BMI−4000[2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、大和化成工業株式会社製、商品名]
(7)NC−3000H[ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、商品名]
(8)BADCY[2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ロンザ社製、商品名]
(9)KA1165[ノボラック型フェノール樹脂、DIC株式会社製、商品名]
(10)PCP[p−クミルフェノール、和光純薬工業株式会社製、商品名]
(11)タフテックH1041[数平均分子量が6万未満のスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(スチレン含有比率:30%、Mn:58000)、旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名]
(12)シリカスラリー[球状溶融シリカ、表面処理:フェニルアミノシランカップリング剤(1質量%/スラリー中の全固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、固形分濃度:70質量%、平均粒子径:0.5μm、密度:2.2g/cm
3、株式会社アドマテックス製、商品名「SC−2050KNK」]
(13)パーヘキシン25B[2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、日油株式会社製、商品名]
(14)2E4MZ[2−エチル−4−メチル−イミダゾール、四国化成工業株式会社製、商品名]
(15)ナフテン酸亜鉛[東京化成工業株式会社製]
【0151】
【表1】
【0152】
[半硬化(Bステージ)状態の樹脂層を備える樹脂フィルム]
上記で得られた樹脂ワニスを、コンマコーターを用いて、支持体フィルムとして厚さ38μmのPETフィルム(G2−38、帝人製)上に塗工し、温度130℃で乾燥して厚さ50μmのPETフィルム付き樹脂フィルムを作製した。
【0153】
樹脂フィルムの誘電特性は、以下に示す方法によって測定した。
【0154】
<両面金属張硬化樹脂フィルム>
上述のPETフィルム付き樹脂フィルムのPETフィルムを剥離し、得られた樹脂フィルムを2枚重ね、その両面に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(F3−WS、M面Rz:3μm、古河電気工業株式会社製、商品名)をその粗化(M)面が接するように配置し、その上に鏡板を乗せ、200℃/3.0MPa/70分のプレス条件で加熱加圧成形して、両面金属張硬化樹脂フィルム(厚さ:0.1mm)を作製した。
【0155】
<両面金属張硬化樹脂フィルムの特性評価>
上述の調製例1〜7の樹脂組成物からそれぞれ得られた両面金属張硬化樹脂フィルムについて誘電特性を評価した結果を表2に示す。誘電特性の特性評価方法は以下のとおりである。
【0156】
<誘電特性(比誘電率、誘電正接)の測定>
誘電特性は、硬化樹脂フィルムの外層銅箔をエッチングしたものを空洞共振器摂動法により測定した。条件は、周波数:10GHz及び20GHz、測定温度:25℃とした。
【0157】
【表2】
【0158】
表2に示した結果から明らかなように、調製例1〜7の樹脂組成物から得られた半硬化樹脂フィルムは、高周波信号の伝送損失特性に影響を及ぼす重要特性である比誘電率と誘電正接に優れたものであることを確認した。
【0159】
(実施例1〜7)
[積層体]
支持体のPETフィルムに対し、上述した調製例1〜7で得られた樹脂組成物を10μmの厚みで塗布乾燥し、PETフィルム付きの半硬化の樹脂フィルムを作製した。上記PETフィルム付き樹脂フィルムを、厚さ200μmのガラス基板(OA−10G、日本電気硝子製、幅250mm×長さ250mm)の両面に、真空ラミネータ(MVLP−500、名機製作所製)を用いて、真空度30mmHg、温度130℃、圧力0.5MPaの条件でラミネートし、室温に冷却後に支持体フィルム(PETフィルム)を剥離後、温度200℃、時間70分の条件で樹脂層を加熱硬化させ、積層体を作製した。なお、調製例1〜7で得られた樹脂フィルムを用いて作製した積層体が実施例1〜7にそれぞれ相当する。
【0160】
(比較例1)
樹脂組成物として、BMI−3000の代わりにビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬製)18.7gと、クレゾールノボラック樹脂(KA−1165、DIC株式会社製)7.7gを用い、トルエン11.3gの代わりにメチルエチルケトン11.3gを用い、有機過酸化物の代わりに2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業株式会社製)0.53gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0161】
(比較例2)
公証厚さ0.2mmのフッ素系樹脂を用いたガラス布基材樹脂銅張積層板(CGN−500、中興化成工業製)の銅箔をエッチング除去して、積層板を得た。
【0162】
(比較例3)
公証厚さ0.2mmのポリフェニレンオキサイド系樹脂を用いたガラス布基材樹脂銅張積層板(R−5775、パナソニック製)の銅箔をエッチング除去して、積層板を得た。
【0163】
上記実施例1〜7及び比較例1で作製した積層体、比較例2、3で作製した積層板の比誘電率、誘電正接、熱膨張率及び弾性率を、下記の方法に従って測定した。結果を表3に示す。
【0164】
<比誘電率及び誘電正接>
比誘電率及び誘電正接は、空洞共振器摂動法により、周波数10GHz、測定温度25℃の条件で測定した。
【0165】
<熱膨張率>
熱膨張率は、積層体についてはレーザー干渉法により、また積層板については熱機械分析法の引張モードにより、30℃から150℃の平均熱膨張率として測定した。
【0166】
<弾性率>
弾性率は、3点曲げ試験法により、スパン3.2mm、曲げ強度0.05mm/分、測定温度25℃の条件で測定した際の応力歪曲線より求めた。
【0167】
【表3】
【0168】
表3から明らかなように、本発明に係る積層体は、比誘電率及び誘電正接がともに低く、低熱膨張性及び高弾性を有していたのに対し、本発明に係る樹脂層を備えていない比較例1では、比誘電率及び誘電正接がともに高くなった。
さらに、ガラス基板の両面に樹脂層を有する積層体ではなく、ガラス布に樹脂を含浸させたガラス布基材樹脂積層板である比較例2及び3においては、熱膨張率が大きく、低弾性となった。
【0169】
以上より、本発明に係る積層体は、比誘電率及び誘電正接が低く、且つ低熱膨張・高弾性であることがわかる。それゆえ、このような積層体を用いたプリント配線板は、高速信号の伝送特性に優れ、且つ、従来のガラス布基材樹脂積層板を用いた場合と比較して、実装時にそりの問題を生じ難いということができる。
【0170】
[金属張積層体]
支持体のPETフィルムに対し、上述した調製例1〜7で得られた樹脂組成物を10μmの厚みで塗布乾燥し、PETフィルム付きの半硬化の樹脂層を作製した。
【0171】
ガラス基板(OA−10G)の両面上に、上記PETフィルム付きの半硬化の樹脂層を、樹脂層を介してガラス基板と接するように配置し、バッチ式の真空加圧ラミネータ(MVLP−500)を用いてラミネートした。この際の真空度は30mmHg以下であり、温度は80℃、圧力は0.5MPaの設定とした。
【0172】
室温に冷却後、支持体のPETフィルムを剥離し、キャリア銅箔付き3μm銅箔(MT18E×(P)3、三井金属工業製、商品名)を、樹脂層に接するように配置し、真空加熱プレス(IMC−1A31、井本製作所製、商品名)により銅箔を積層するとともに、樹脂層を硬化させた。この際の真空度は30mmHg以下であり、温度は180℃、加圧時間は120分、圧力は0.1MPaの設定とした。
【0173】
室温に冷却後、キャリア銅箔を剥離し、金属張積層体を得た。