特許第6750503号(P6750503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6750503リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体及びその製造方法、並びに、積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750503
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体及びその製造方法、並びに、積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20200824BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20200824BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20200824BHJP
   B29C 41/18 20060101ALI20200824BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200824BHJP
   B29K 27/06 20060101ALN20200824BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20200824BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08K5/12
   C08L83/04
   B29C41/18
   B32B27/30 101
   B29K27:06
   B29L31:58
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-556208(P2016-556208)
(86)(22)【出願日】2015年10月20日
(86)【国際出願番号】JP2015005285
(87)【国際公開番号】WO2016067564
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-217926(P2014-217926)
(32)【優先日】2014年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】西村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇倫
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−46311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
B29C 41/18
B32B 27/30
C08K 5/12
C08L 83/04
B29K 27/06
B29L 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が50μm以上500μm以下であり、平均重合度が1200以上5000以下である塩化ビニル樹脂粒子(a)と、
トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、
平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、平均重合度が1000以上5000以下である塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、
平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、平均重合度が1000未満である塩化ビニル樹脂微粒子(d)と、
シラノール変性シリコーンオイル(e)と、
を含む、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
パウダースラッシュ成形に用いられる、請求項に記載のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体。
【請求項4】
糸が縫い付けられている、請求項に記載のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体。
【請求項5】
自動車インスツルメントパネル表皮用である、請求項3又は4に記載のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体。
【請求項6】
発泡ポリウレタン成形体と、請求項3〜5のいずれか1項に記載のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体とを有する、積層体。
【請求項7】
前記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、前記トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、前記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、前記塩化ビニル樹脂微粒子(d)と、前記シラノール変性シリコーンオイル(e)とを混合することを含む、請求項1に記載のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物、または、請求項に記載のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法に従って製造したリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形することを含む、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での柔軟性が優れ、リアルステッチ性(縫製により修飾された部位における亀裂の生じにくさ)が高い成形体を与える粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体、上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の製造方法、上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車インスツルメントパネルは、発泡ポリウレタン層が、塩化ビニル樹脂からなる表皮と基材との間に設けられた構造を有している。塩化ビニル樹脂からなる表皮は経時的に変色し、また、その耐熱老化性は低下する。この表皮の変色等の原因の1つは、発泡ポリウレタン層の形成時に触媒として使用された第三級アミンの、塩化ビニル樹脂からなる表皮への移行に伴って起こる化学反応である。当該表皮の変色防止のため、発泡ポリウレタン層内で発生する揮発性有機化合物を捕捉する粒状のキャッチャー剤を連通気泡のシート剤で被覆し、発泡ポリウレタン層端末の表皮と基材によるシール箇所近傍に配置したウレタン一体発泡成形品が検討された(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このウレタン一体発泡成形品では、上記表皮と上記発泡ポリウレタン層とが接触している部分があり、上記化学反応による表皮の変色を長期間防止できず、また、表皮の耐熱老化性は低下する。
一方、芯材と表皮を接合する合成樹脂製発泡体層が設けられ、発泡体層で発生するガスを排出するガス抜き孔が前記芯材に設けられている積層体が検討された(例えば、特許文献2参照)。しかし、この積層体においても、上記表皮と上記合成樹脂製発泡体層とが接触しており、上記化学反応による表皮の変色を長期間防止できず、また、表皮の耐熱老化性は低下する。
【0003】
更に、ポリウレタン成形体と、塩化ビニル樹脂を含有して当該ポリウレタン成形体の少なくとも一表面を被覆する表皮層と、当該ポリウレタン成形体と当該表皮層との間に介在するアミンキャッチャー剤層とからなる成形体が検討された(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、上記アミンキャッチャー剤は揮発しやすく、第三級アミンの、塩化ビニル樹脂からなる表皮への移行を長期間阻止できないので、この成形体においても、上記化学反応による表皮の変色を長期間防止できず、また、表皮の耐熱老化性は低下する。
ところで、特定のトリメリテート類可塑剤が配合された粉末成形用塩化ビニル樹脂組成物が自動車内装材の表皮の原料として検討された(例えば、特許文献4参照)。しかし、上記粉末成形用塩化ビニル樹脂組成物の粉末成形により得られる表皮材の耐熱老化性を向上させる場合、上記可塑剤の配合量を増加させなければならず、その結果、表皮材には上記可塑剤に由来するベトツキ感が発生する。更に、平均重合度が1500以上の塩化ビニル系樹脂からなる塩化ビニル系樹脂粒子100質量部と特定のトリメリテート系可塑剤110〜150質量部とを含有する粉体成形用塩化ビニル系樹脂組成物が検討された(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−216506号公報
【特許文献2】特開平8−90697号公報
【特許文献3】特公平4−26303号公報
【特許文献4】特開平2−138355号公報
【特許文献5】国際公開第2009/107463号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、発泡ポリウレタン層が積層された自動車インスツルメントパネル表皮が低温で設計通りに割れてエアバッグが膨張した際に当該表皮の破片が飛散しないよう、低温での柔軟性が優れ、縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい(リアルステッチ性が高い)表皮を備える自動車インスツルメントパネルが要求されてきていた。しかし、そのような表皮を備える自動車インスツルメントパネルは実現されていなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、低温での柔軟性が優れ、リアルステッチ性が高い成形体を与えるリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の提供である。本発明が解決しようとする別の課題は、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなる、低温での柔軟性が優れ、且つ、リアルステッチ性が高いリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体、及び、上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを有する積層体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、平均重合度が1200〜5000の塩化ビニル樹脂粒子(a)と、トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、平均重合度が1000〜5000の塩化ビニル樹脂微粒子(c)とを含むリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物が特に優れた低温での柔軟性を有し、リアルステッチ性が高い成形体を与えることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、平均重合度が1200以上5000以下の塩化ビニル樹脂粒子(a)と、トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、平均重合度が1000以上5000以下の塩化ビニル樹脂微粒子(c)とを含む、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物である。
なお、本発明において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。
【0009】
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物において、前記塩化ビニル樹脂粒子(a)の好ましい平均粒子径は50μm以上500μm以下である。
【0010】
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物において、前記塩化ビニル樹脂微粒子(c)の好ましい平均粒子径は0.1μm以上10μm以下である。
【0011】
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、好ましくは、平均重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂微粒子(d)を含む。
ここで、本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物において、前記塩化ビニル樹脂微粒子(d)の好ましい平均粒子径は0.1μm以上10μm以下である。
【0012】
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、好ましくは、極性基変性シリコーンオイル(e)を含む。
【0013】
そして、本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の好ましい用途はパウダースラッシュ成形である。
【0014】
また、本発明は、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体である。
上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体は、好ましくは糸が縫い付けられている。
また、上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体は、好ましくは自動車インスツルメントパネル表皮用である。
【0015】
また、本発明は、発泡ポリウレタン成形体と、上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体とを有する積層体である。上記積層体は、好ましくは自動車インスツルメントパネル用積層体である。
【0016】
更に、本発明は、前記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、前記トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、前記塩化ビニル樹脂微粒子(c)とを混合することを含む、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法である。そして、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、前記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、前記トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、前記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、前記塩化ビニル樹脂微粒子(d)および/または前記極性基変性シリコーンオイル(e)とを混合することを含み得る。
また、本発明は、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物、または、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法に従って製造したリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形することを含む、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、低温での柔軟性が優れ、リアルステッチ性が高い成形体を与える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物)
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、平均重合度が1200以上5000以下の塩化ビニル樹脂粒子(a)と、トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、平均重合度が1000以上5000以下の塩化ビニル樹脂微粒子(c)とを含み、任意に、平均重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂微粒子(d)、極性基変性シリコーンオイル(e)、添加剤を更に含有する。
【0019】
<塩化ビニル樹脂>
ここで、平均重合度が1200以上5000以下の塩化ビニル樹脂粒子(a)、平均重合度が1000以上5000以下の塩化ビニル樹脂微粒子(c)、及び平均重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂微粒子(d)を構成し得る塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニル単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する共重合体が挙げられる。塩化ビニル共重合体の共単量体の具体例は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル−3−クロロ−2−オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などである。以上に例示される単量体は、塩化ビニルと共重合可能な単量体(共単量体)の一部に過ぎず、共単量体としては、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75〜104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの単量体の1種又は2種以上が使用され得る。上記塩化ビニル樹脂粒子(a)、塩化ビニル樹脂微粒子(c)、及び塩化ビニル樹脂微粒子(d)を構成し得る塩化ビニル樹脂には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと前記共単量体とがグラフト重合された樹脂も含まれる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0020】
上記塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。
【0021】
なお、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂粒子(a)は、マトリックス樹脂として機能する。また、塩化ビニル樹脂微粒子(c)、及び塩化ビニル樹脂微粒子(d)は、後述するダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。そして、塩化ビニル樹脂粒子(a)は、懸濁重合法により製造することが好ましい。また、塩化ビニル樹脂微粒子(c)、及び塩化ビニル樹脂微粒子(d)は、乳化重合法により製造することが好ましい。
【0022】
<塩化ビニル樹脂粒子(a)>
上記塩化ビニル樹脂粒子(a)を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、1200以上5000以下であり、好ましくは1200以上4500以下であり、より好ましくは1500以上4500以下であり、更に好ましくは1500以上4000以下であり、特に好ましくは1500以上3000以下であり、最も好ましくは1500以上2500以下である。上記塩化ビニル樹脂粒子(a)を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体に、良好な耐熱老化性を付与できる。なお、「平均重合度」は、JIS K6720−2に準拠して測定される。
【0023】
上記塩化ビニル樹脂粒子(a)の平均粒子径は、好ましくは50μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上250μm以下、更に好ましくは100μm以上200μm以下である。塩化ビニル樹脂粒子(a)の平均粒子径が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が向上し、かつ、上記リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の平滑性が向上する。ここで、「平均粒子径」とは、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法によって測定される体積平均粒子径を指す。
【0024】
<塩化ビニル樹脂微粒子(c)>
上記平均重合度が1000以上5000以下の塩化ビニル樹脂微粒子(c)は、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させるダスティング剤として機能する。
なお、塩化ビニル樹脂微粒子(c)は、通常、重合度が1000以上の塩化ビニル樹脂で構成されている。
【0025】
上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)の好ましい平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下である。塩化ビニル樹脂微粒子(c)の平均粒子径が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が向上するからである。
【0026】
上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)を構成する塩化ビニル樹脂の好ましい平均重合度は、1200以上5000以下であり、より好ましい平均重合度は1500超5000以下であり、更に好ましい平均重合度は1500超3000以下であり、特に好ましい平均重合度は2000超3000以下であり、最も好ましい平均重合度は2000超2500以下である。上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性及び耐熱老化性(加熱後引張特性)を向上させることが可能になる。
【0027】
上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)の含有量は、後述する平均重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂微粒子(d)を用いない場合、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)との合計(100質量%)に対して、好ましくは5質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上25質量%以下である。上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)の含有量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。また、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性、耐熱老化性(加熱後引張特性)及びリアルステッチ性(縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい性能)を向上させることもできる。
【0028】
また、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)の含有量は、後述する平均重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂微粒子(d)を用いない場合、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)との合計(100質量%)に対して、好ましくは65質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上95質量%以下であり、更に好ましくは75質量%以上95質量%以下である。上記塩化ビニル樹脂粒子(a)の含有量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。また、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性、耐熱老化性(加熱後引張特性)及びリアルステッチ性(縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい性能)を向上させることもできる。
【0029】
<塩化ビニル樹脂微粒子(d)>
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、好ましくは、更に、平均重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂微粒子(d)を含有する。上記平均重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂微粒子(d)は、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させるダスティング剤として機能し、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)及び上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と区別される。
なお、塩化ビニル樹脂微粒子(d)は、通常、重合度が1000未満の塩化ビニル樹脂で構成されている。
【0030】
上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)の好ましい平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下である。
【0031】
上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)を構成する塩化ビニル樹脂の好ましい平均重合度は、300以上1000未満であり、より好ましい平均重合度は500以上950以下であり、更に好ましい平均重合度は600以上900以下である。上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を高くできる他、当該組成物の成形加工時の溶融性を向上できる。
【0032】
リアルステッチ表皮用粉体成形性ビニル樹脂組成物が上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)を含有する場合、上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)の含有量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計(100質量%)に対して、好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上12質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以上11質量%以下である。上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)の含有量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させられる他、当該塩化ビニル樹脂組成物の成形加工時の溶融性を向上できる。また、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性、耐熱老化性(加熱後引張特性)及びリアルステッチ性(縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい性能)のバランスを向上させることもできる。
【0033】
また、リアルステッチ表皮用粉体成形性ビニル樹脂組成物が上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)を含有する場合、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)の含有量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計(100質量%)に対して、好ましくは3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上18質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上17質量%以下である。上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)の含有量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させられる他、当該塩化ビニル樹脂組成物の成形加工時の溶融性を向上できる。また、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性、耐熱老化性(加熱後引張特性)及びリアルステッチ性(縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい性能)のバランスを向上させることもできる。
【0034】
更に、リアルステッチ表皮用粉体成形性ビニル樹脂組成物が上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)を含有する場合、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)の含有量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計(100質量%)に対して、好ましくは65質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上92質量%以下であり、更に好ましくは72質量%以上91質量%以下である。上記塩化ビニル樹脂粒子(a)の含有量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。また、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の低温での柔軟性、耐熱老化性(加熱後引張特性)及びリアルステッチ性(縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい性能)のバランスを向上させることもできる。
【0035】
<トリメリット酸エステル可塑剤(b)>
リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物が含有するトリメリット酸エステル可塑剤(b)は、好ましくは、トリメリット酸と一価アルコールとのエステル化合物である。
【0036】
上記一価アルコールの具体例としては、特に限定されることなく、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール等が挙げられる。
【0037】
中でも、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)としては、上述した一価アルコールによりトリメリット酸のカルボキシ基を実質的に全てエステル化したトリエステル化物が好ましい。トリエステル化物におけるアルコール残基部分は、同一のアルコール由来のものであってもよく、それぞれ異なるアルコール由来のものであってもよい。
上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)は、単一の化合物からなるものであってもよいし、異なる化合物の混合物であってもよい。
【0038】
好適なトリメリット酸エステル可塑剤(b)の具体例は、トリメリット酸トリ−n−ヘキシル、トリメリット酸トリ−n−ヘプチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリ−n−ウンデシル、トリメリット酸トリ−n−ドデシル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜12である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、トリメリット酸トリアルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は8〜10である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は8〜10である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、及びこれらの混合物等である。
より好ましいトリメリット酸エステル可塑剤(b)の具体例は、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ−n−ノニル、トリメリット酸トリ−n−デシル、トリメリット酸トリ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は8〜10である。〕を分子内に2種以上有するエステル)、及びこれらの混合物等である。
【0039】
上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)の添加量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対して、好ましくは70質量部以上200質量部以下であり、より好ましくは75質量部以上180質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以上160質量部以下であり、特に好ましくは80質量部以上140質量部以下である。上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)の添加量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の耐熱老化性及びリアルステッチ性(縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい性能)が良好となる。また、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)が上記塩化ビニル樹脂粒子(a)に良く吸収され、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の粉体成形性が良好となる。
【0040】
<極性基変性シリコーンオイル(e)>
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、極性基変性シリコーンオイル(e)を含有し得る。極性基変性シリコーンオイル(e)は、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイロキシ基等の極性基がポリシロキサン構造を有する高分子に導入されているシリコーンオイルである。なお、極性基変性シリコーンオイル(e)における「シリコーンオイル」(極性基未変性のシリコーンオイル)とは、特に限定されず、ポリシロキサン構造を有する高分子を指す。当該高分子としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリ(メチルエチル)シロキサン、及びこれらの混合物等が挙げられる。なお、上記極性基が導入される部位は、ポリシロキサン構造を有する高分子の末端及び/又は側鎖である。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリロイロキシ」とは、アクリロイロキシ及び/又はメタクリロイロキシを意味する。
【0041】
上記極性基変性シリコーンオイル(e)の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000以上100,000以下が好ましく、1,000以上30,000以下がより好ましい。
なお、「極性基変性シリコーンオイル(e)の重量平均分子量」は、以下の方法により求めることができる。
まず、極性基変性シリコーンオイル(e)の、25℃における動粘度ηCS/25(単位:mm2/s)を測定し、以下の式(I)を用いて重量平均分子量Mを求める。
log(ηCS/25)=1.00+0.0123M0.5 ・・・(I)
なお、動粘度ηCS/25は、ASTM D 445−46Tに従い、ウッベローデ粘度計により測定することができる。
【0042】
上記極性基変性シリコーンオイル(e)の添加量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上3質量部以下であり、更に好ましくは0.15質量部以上1質量部以下であり、特に好ましくは0.17質量部以上0.6質量部以下である。極性基変性シリコーンオイル(e)の添加量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の離型性が向上する。また、リアルステッチ性(縫製により修飾された部位に亀裂が生じにくい性能)が良好となる。
【0043】
<添加剤>
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)、上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)、及び上記極性基変性シリコーンオイル(e)以外に、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)以外の可塑剤(以下、「その他の可塑剤」ということがある。)、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、脂肪酸金属塩、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)及び塩化ビニル樹脂微粒子(d)以外のダスティング剤(粉体流動性改良剤。以下、「その他のダスティング剤」ということがある。)、並びにその他の添加剤が挙げられる。
【0044】
[その他の可塑剤]
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物が含有し得る、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)以外の可塑剤の具体例としては、以下の一次可塑剤及び二次可塑剤などが挙げられる。
【0045】
いわゆる一次可塑剤としては、
ピロメリット酸テトラ−n−ヘキシル、ピロメリット酸テトラ−n−ヘプチル、ピロメリット酸テトラ−n−オクチル、ピロメリット酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ−n−ノニル、ピロメリット酸テトラ−n−デシル、ピロメリット酸テトライソデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ウンデシル、ピロメリット酸テトラ−n−ドデシル、ピロメリット酸テトラ−n−アルキルエステル(炭素数が異なるアルキル基〔但し、炭素数は6〜12である。〕を分子内に2種以上有するエステル)等の、ピロメリット酸エステル可塑剤;
エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;
ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;
ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体;
ジ−n−ブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;
ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;
ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソデシルセバケート、ジ−(2−ブチルオクチル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;
ジ−n−ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;
ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;
トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;
モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;
ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;
メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;
n−ブチルステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体;ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;
トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;
ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール誘導体;
グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;
エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ誘導体;
アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤;
などが挙げられる。
【0046】
また、いわゆる二次可塑剤としては、塩素化パラフィン、トリエチレングリコールジカプリレートなどのグリコールの脂肪酸エステル、ブチルエポキシステアレート、フェニルオレエート、ジヒドロアビエチン酸メチルなどが挙げられる。
【0047】
なお、本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の、その他の可塑剤を使用しうる。また、二次可塑剤を用いる場合、それと等質量以上の一次可塑剤を併用することが好ましい。
【0048】
そして、上記その他の可塑剤の中でも、好ましい可塑剤は、ピロメリット酸エステル可塑剤及びエポキシ化植物油であり、より好ましい可塑剤は、ピロメリット酸テトラ−(2−エチルヘキシル)及びエポキシ化植物油であり、更に好ましい可塑剤は、エポキシ化大豆油である。
【0049】
また、上記その他の可塑剤の合計含有量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対して、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、更に好ましくは2質量部以上80質量部以下であり、特に好ましくは3質量部以上10質量部以下である。
【0050】
[過塩素酸処理ハイドロタルサイト]
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、過塩素酸処理ハイドロタルサイトを含有していてもよい。過塩素酸処理ハイドロタルサイトは、例えば、ハイドロタルサイトを過塩素酸の希薄水溶液中に加えて撹拌し、その後必要に応じて、ろ過、脱水または乾燥することによって、ハイドロタルサイト中の炭酸アニオン(CO32-)の少なくとも一部を過塩素酸アニオン(ClO4-)で置換して(炭酸アニオン1モルにつき過塩素酸アニオン2モルが置換する)、容易に製造することができる。上記ハイドロタルサイトと上記過塩素酸とのモル比は任意に設定できるが、一般には、ハイドロタルサイト1モルに対し、過塩素酸0.1〜2モルとする。
【0051】
未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。また、未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率は、好ましくは95モル%以下である。未処理(未置換)のハイドロタルサイト中の炭酸アニオンの過塩素酸アニオンへの置換率が上記の範囲内にあることにより、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与することができる。
【0052】
ハイドロタルサイトは、一般式:[Mg1-xAlx(OH)2]x+[(CO3)x/2・mH2O]x-で表される不定比化合物で、プラスに荷電した基本層[Mg1-xAlx(OH)2]x+と、マイナスに荷電した中間層[(CO3)x/2・mH2O]x-とからなる層状の結晶構造を有する無機物質である。ここで、上記一般式中、xは0より大きく0.33以下の範囲の数である。天然のハイドロタルサイトは、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oである。合成されたハイドロタルサイトとしては、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oが市販されている。合成ハイドロタルサイトの合成方法は、例えば特公昭61−174270号公報に記載されている。
【0053】
上記過塩素酸処理ハイドロタルサイトの、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対する好ましい含有量は0.5質量部以上7質量部以下であり、より好ましい含有量は1質量部以上6質量部以下であり、更に好ましい含有量は1.5質量部以上5.5質量部以下である。過塩素酸処理ハイドロタルサイトの含有量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与できる。
【0054】
[ゼオライト]
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、ゼオライトを安定剤として含有し得る。ゼオライトは、一般式:Mx/n・[(AlO2x・(SiO2y]・zH2O(一般式中、Mは原子価nの金属イオン、x+yは単位格子当たりの四面体数、zは水のモル数である)で表される化合物である。当該一般式中のMの種類としては、Na、Li、Ca、Mg、Znなどの一価又は二価の金属及びこれらの混合型が挙げられる。
【0055】
上記ゼオライトの、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対する好ましい含有量は、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0056】
[脂肪酸金属塩]
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、脂肪酸金属塩を含有していてもよい。好ましい脂肪酸金属塩は、一価脂肪酸金属塩であり、より好ましい脂肪酸金属塩は、炭素数12〜24の一価脂肪酸金属塩であり、更に好ましい脂肪酸金属塩は、炭素数15〜21の一価脂肪酸金属塩である。脂肪酸金属塩の具体例は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等である。脂肪酸金属塩を構成する金属としては、多価陽イオンを生成しうる金属が好ましく、2価陽イオンを生成しうる金属がより好ましく、周期表第3周期〜第6周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が更に好ましく、周期表第4周期の、2価陽イオンを生成しうる金属が特に好ましい。最も好ましい脂肪酸金属塩はステアリン酸亜鉛である。
【0057】
上記脂肪酸金属塩の、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対する好ましい含有量は0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましい含有量は0.1質量部以上1質量部以下であり、更に好ましい含有量は0.1質量部以上0.5質量部以下である。脂肪酸金属塩の含有量が上記範囲であると、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形してなるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体に、良好な低温での柔軟性を付与でき、更に色差の値を小さくできる。
【0058】
[その他のダスティング剤]
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)及び塩化ビニル樹脂微粒子(d)以外のダスティング剤(以下、「その他のダスティング剤」ということがある。)を含有し得る。その他のダスティング剤としては、炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウムなどの無機微粒子;ポリアクリロニトリル樹脂微粒子、ポリ(メタ)アクリレート樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ポリアミド樹脂微粒子などの有機微粒子;が挙げられる。中でも、平均粒子径が10nm以上100nm以下の無機微粒子が好ましい。
【0059】
その他のダスティング剤の含有量は特定の範囲に限定されない。当該含有量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下である。
【0060】
[その他の添加剤]
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、着色剤、耐衝撃性改良剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等)、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、光安定剤、発泡剤、β−ジケトン類等の、その他の添加剤を含有し得る。
【0061】
着色剤の具体例は、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ポリアゾ縮合顔料、イソインドリノン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、チタンホワイト、カーボンブラックである。1種又は2種以上の顔料が使用される。
キナクリドン系顔料は、p−フェニレンジアントラニル酸類が濃硫酸で処理されて得られ、黄みの赤から赤みの紫の色相を示す。キナクリドン系顔料の具体例は、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンバイオレットである。
ペリレン系顔料は、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物と芳香族第一級アミンとの縮合反応により得られ、赤から赤紫、茶色の色相を示す。ペリレン系顔料の具体例は、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ、ペリレンマルーン、ペリレンバーミリオン、ペリレンボルドーである。
ポリアゾ縮合顔料は、アゾ色素が溶剤中で縮合されて高分子量化されて得られ、黄、赤系顔料の色相を示す。ポリアゾ縮合顔料の具体例は、ポリアゾレッド、ポリアゾイエロー、クロモフタルオレンジ、クロモフタルレッド、クロモフタルスカーレットである。
イソインドリノン系顔料は、4,5,6,7−テトラクロロイソインドリノンと芳香族第一級ジアミンとの縮合反応により得られ、緑みの黄色から、赤、褐色の色相を示す。イソインドリノン系顔料の具体例は、イソインドリノンイエローである。
銅フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン類に銅を配位した顔料で、黄みの緑から鮮やかな青の色相を示す。銅フタロシアニン系顔料の具体例は、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルーである。
チタンホワイトは、二酸化チタンからなる白色顔料で、隠蔽力が大きく、アナタース型とルチル型がある。
カーボンブラックは、炭素を主成分とし、酸素、水素、窒素を含む黒色顔料である。カーボンブラックの具体例は、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、ボーンブラックである。
【0062】
耐衝撃性改良剤の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンなどである。本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物では、1種又は2種以上の耐衝撃性改良剤が使用できる。なお、耐衝撃性改良剤は、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物中で微細な弾性粒子の不均一相となって分散する。リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物では、当該弾性粒子にグラフト重合した鎖及び極性基が塩化ビニル樹脂粒子(a)と相溶し、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。
【0063】
酸化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などである。
【0064】
防黴剤の具体例は、脂肪族エステル系防黴剤、炭化水素系防黴剤、有機窒素系防黴剤、有機窒素硫黄系防黴剤などである。
【0065】
難燃剤の具体例は、塩素化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸エステル等のリン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;などである。
【0066】
帯電防止剤の具体例は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、スルホン酸塩類等のアニオン系帯電防止剤;脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン系帯電防止剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類等のノニオン系帯電防止剤;などである。
【0067】
充填剤の具体例は、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレーなどである。
【0068】
光安定剤の具体例は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケルキレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などである。
【0069】
発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物などの有機発泡剤;フロンガス、炭酸ガス、水、ペンタン等の揮発性炭化水素化合物、これらを内包したマイクロカプセルなどの、ガス系の発泡剤;などである。
【0070】
β−ジケトン類は、本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られるリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の初期色調の変動をより効果的に抑えるために用いられる。β−ジケトン類の具体例は、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタンなどである。これらのβ−ジケトン類は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、β−ジケトン類の含有量は特定の範囲に限定されない。β−ジケトン類の好ましい含有量は、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)との合計100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0071】
<リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法>
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、上述した成分を混合して製造することができる。即ち、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、少なくとも、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)とを混合する工程を含む。また、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)および/または上記極性基変性シリコーンオイル(e)を配合する場合には、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(d)および/または上記極性基変性シリコーンオイル(e)とを混合する工程を含む。
ここで、上記塩化ビニル樹脂粒子(a)と、上記トリメリット酸エステル可塑剤(b)と、上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)、極性基変性シリコーンオイル(e)、及び添加剤の混合方法は限定されない。好ましい混合方法は、可塑剤及びダスティング剤(上記塩化ビニル樹脂微粒子(c)と、必要に応じて添加される塩化ビニル樹脂微粒子(d)とを含む)を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、可塑剤、ダスティング剤を順次、混合する方法である。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は好ましくは50℃以上100℃以下、より好ましくは70℃以上80℃以下である。
【0072】
(リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体)
本発明のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体は、上述した本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を、粉体成形、好ましくはパウダースラッシュ成形して得る。パウダースラッシュ成形時の金型温度は、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは220℃以上280℃以下である。
【0073】
本発明のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体を製造する際には、例えば、上記温度範囲の金型に本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とし、さらに30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型する。
【0074】
本発明のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に用いられる。
【0075】
なお、本発明のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体は、糸が縫い付けられていることが好ましい。
【0076】
糸が縫い付けられているリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体は、意匠性に優れ、高級品として称揚される。糸の色は、好ましくは、意匠性向上の面から、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の色とは異なる。糸の材質は、特に限定されないが、好ましくはポリエステルである。
【0077】
上記糸をリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体に縫い付ける際には、針を用いることが好ましい。なお、針を用いる場合、用いる針の種類により、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体の熱履歴によるリアルステッチ部への破損の生じやすさ(裂けやすさ)が異なる。例えば、丸針と呼ばれる断面が略円形状の針と、メス針と呼ばれる断面が略楕円形状の針とでは、メス針を使用した方が、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体が熱履歴によりステッチ部に破損が生じやすく(裂けやすく)なる。本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を用いることにより、メス針を用いて糸を縫い付けてもリアルステッチ部に破損が生じにくい(裂けにくい)リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体を得ることができる。
【0078】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体を積層して得ることができる。積層方法は、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体と、発泡ポリウレタン成形体とを別途作製した後に、熱融着、熱接着又は公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行い、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法;などが挙げられる。後者の方が、工程が簡素であり、かつ、種々の形状の積層体を得る場合においても、リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体との接着を確実に行うことができるのでより好適である。
【0079】
本発明の積層体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等として好適に用いられる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0081】
なお、以下の実施例及び比較例において、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子の平均重合度は、JIS K6720−2に準拠し、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子のそれぞれを、シクロヘキサノンに溶解させて粘度を測定することにより、算出した。
また、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子を、それぞれ水槽内に分散させ、以下に示す装置を用いて、光の回折・散乱強度分布を測定・解析し、粒子径及び体積基準の粒子径分布を測定することにより、算出した。
・装置:レーザー回折式粒度分布測定機(島津製作所製、SALD−2300)
・測定方式:レーザー回折及び散乱
・測定範囲:0.017μm〜2500μm
・光源:半導体レーザー(波長680nm、出力3mW)
更に、極性基変性シリコーンオイルの重量平均分子量Mは、ASTM D 445−46Tに従いウッベローデ粘度計により測定した、25℃における極性基変性シリコーンオイルの動粘度(ηCS/25[単位:mm2/s])と、以下の式(I)とを用いて求めた。
log(ηCS/25)=1.00+0.0123M0.5 ・・・(I)
【0082】
(実施例1〜3及び比較例1)
表1に示す配合成分のうち、可塑剤(トリメリット酸エステル可塑剤、及びエポキシ化大豆油)とダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で可塑剤を添加し、ドライアップ(可塑剤が塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が70℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
そして、得られたリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物を250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、塩化ビニル樹脂成形シートの厚みが1mmになるよう調整した時間(具体的には14〜17秒間)放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、200℃に設定したオーブンに静置し、60秒経過した時点で金型を冷却水により冷却し、金型温度が40℃まで冷却された時点で150mm×200mm×1mmのリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S1)(黒色)を金型から脱型した。そして、得られたリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S1)について、以下の方法で各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
各種物性の測定方法は次の通りである。
(1)初期引張試験
上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S1)をJIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、−35℃における引張応力(引張強さ)及び引張伸びを測定した。塩化ビニル樹脂成形シートは、−35℃での引張伸びが高いほど、低温の柔軟性が優れている。
(2)加熱後引張試験
測定用試料を調製するため、得られたリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S1)2枚を、210mm×300mm×10mmの金型中に重ならないようにシボ付き面を下にして敷いた。また、プロピレングリコールのPO(プロピレンオキサイド)・EO(エチレンオキサイド)ブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)50質量部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)50質量部、水2.5質量部、トリエチレンジアミンのエチレングリコール溶液(東ソー(株)製、商品名:「TEDA−L33」)0.2質量部、トリエタノールアミン1.2質量部、トリエチルアミン0.5質量部及び整泡剤(信越化学工業(株)製、商品名:「F−122」)0.5質量部からなるポリオール混合物と、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)とを、インデックスが98になる比率で混合して混合液を作製した。次に、得られた混合液を、前記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S1)2枚の上にそれぞれ注ぎ、金型に305mm×395mm×2mmのアルミ板で蓋をし、金型を密閉した。5分後、1mm厚のリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S1)からなる表皮に9mm厚、密度0.18g/cm3の発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた試料(積層体)が金型内に形成された。そして、得られた試料を金型から取り出した。
次に、得られた試料をオーブンに入れ、130℃で200時間加熱した後、発泡ポリウレタン層を当該試料から剥離し、加熱後リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S2)を得た。得られた加熱後リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S2)について、上記(1)初期引張試験と同様にして、−35℃における引張応力(引張強さ)及び引張伸びを測定した。塩化ビニル樹脂成形シートは、−35℃での引張伸びが高いほど、低温での柔軟性が優れている。
(3)リアルステッチ性
丸針とメス針とを一つずつ有するミシンを使用し、ポリエステル樹脂系の糸による2本の略平行な縫い目(糸−糸間距離10mm、糸ピッチ4mm、糸の色は赤色)を、上記リアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S1)(黒色)の4箇所に対してそれぞれ略同時に施した。そして、リアルステッチ加工されたリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S3)を得た。
次に、210mm×300mm×10mmの金型内の下部に、250mm×340mm×2mmのアルミ板を置いた。そして、2枚のリアルステッチ加工されたリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S3)を、シボ付き面が金型の上側(蓋側)になるように、それぞれ金型の蓋に接着させた。また、プロピレングリコールのPO・EOブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)50質量部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)50質量部、水2.5質量部、トリエチレンジアミンのエチレングリコール溶液(東ソー(株)製、商品名:「TEDA−L33」)0.2質量部、トリエタノールアミン1.2質量部、トリエチルアミン0.5質量部及び整泡剤(信越化学工業(株)製、商品名:「F−122」)0.5質量部からなるポリオール混合物と、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)とを、インデックスが98になる比率で混合して混合液を作製した。次に、得られた混合液を金型に注ぎ、前記金型の蓋で金型を密閉した。5分後、1mm厚のリアルステッチ加工されたリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S3)からなる表皮に、9mm厚、密度0.18g/cm3の発泡ポリウレタン成形体及び上記アルミ板がこの順で裏打ちされた試料(積層体)が形成された。そして、得られた試料を金型から取り出した。
次に、得られた試料を130℃に設定したオーブンに入れ、24時間毎に(最長504時間まで)オーブンから取り出して、リアルステッチ加工されたリアルステッチ表皮用塩化ビニル樹脂成形シート(S3)のリアルステッチ部への破損の有無を確認した。リアルステッチ部に破損が認められはじめた時間をもってリアルステッチ性の評価結果とした。リアルステッチ部に破損が認められはじめた時間の長い(即ち、遅い)方がリアルステッチ性に優れている。なお、表1中、504時間経過後もリアルステッチ部に破損が認められなかったものは、「>504」と表記している。
【0084】
【表1】
【0085】
1)新第一塩ビ(株)製、ZEST 1700Z(塩化ビニル系樹脂粒子(塩化ビニル樹脂粒子(a))、平均重合度1700、平均粒子径130μm)
2)新第一塩ビ(株)製、ZEST 1000Z(塩化ビニル系樹脂粒子、平均重合度1000、平均粒子径130μm)
3)花王(株)製、トリメックスN−08
4)(株)ADEKA製、アデカサイザーO−130S
5)協和化学工業(株)製、アルカマイザー5
6)水澤化学工業(株)製、MIZUKALIZER DS
7)昭和電工(株)製、カレンズ DK−1
8)堺化学工業(株)製、SAKAI SZ2000
9)(株)ADEKA製、LA−72
10)(株)ADEKA製、アデカスタブ 522A
11)(株)ADEKA製、アデカスタブ LS−12
12)信越シリコーン(株)製、KF−9701(重量平均分子量5000)
13)新第一塩ビ(株)製、ZEST PQLTX(塩化ビニル系樹脂微粒子(塩化ビニル樹脂微粒子(d))、平均重合度800、平均粒子径2μm)
14)東ソー(株)製、リューロンペースト761(塩化ビニル系樹脂微粒子(塩化ビニル樹脂微粒子(c))、平均重合度2100、平均粒子径2μm)
15)大日精化工業(株)製、DA PX−1720ブラック(A)
【0086】
実施例1〜3のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体(塩化ビニル樹脂成形シート)は、低温での初期及び加熱後引張特性とリアルステッチ性に優れていた。
なお、実施例2と実施例3のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体の物性はそれぞれ同等である。ここで、表記してはいないが、リアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物そのものの溶融性の点において、実施例2のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物の方が、実施例3のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物よりも溶けやすく、より優れていた。
【0087】
一方、塩化ビニル樹脂粒子の平均重合度が小さすぎ、且つ、平均重合度が1000以上5000以下の塩化ビニル樹脂微粒子(c)を含有しない比較例1のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形して得られた成形体は、低温での初期引張伸び及び加熱後引張伸びが低く、初期及び加熱後の低温での柔軟性が劣っていた。更に、当該成形体のリアルステッチ性は低かった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のリアルステッチ表皮用粉体成形性塩化ビニル樹脂組成物は、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装材の表皮の成形材料として好適に用いられる。