(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セラミックシンチレータであって、1mmΦの開口を有する白色基板上に、該セラミックシンチレータの光出力面が該白色基板の開口部に接するように固定し、開口部側から該セラミックシンチレータの光出力面に対して、該セラミックシンチレータの最大発光波長に対応する波長の光線を入射させた際に測定される反射率Rと透過率Tの比T/Rが下記式(1)を満たすセラミックシンチレータ。
3.5−0.2×t < T/R < 4.1−0.2×t (1)
(上記式中、tは光出力面に垂直な方向のセラミックシンチレータの厚み(mm)である。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3では、セラミックシンチレータの光学特性の検討は十分になされておらず、光出力はさらに改良の余地があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、光出力の高いセラミックシンチレータを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記シンチレータを含む、光出力の高いシンチレータアレイを提供することを目的とする。
また、本発明は、光検出器と、上記シンチレータ又はシンチレータアレイを含む、X線に対する感度が高い放射線検出器を提供することを目的とする。
更に本発明は、S/N比の優れたX線像の撮像が可能な放射線検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は鋭意検討を行った結果、セラミックシンチレータの光学特性が特定の条件を満たすものを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明に到達した。
上記構成により、セラミックシンチレータ中での光伝播とセラミックシンチレータ中から光検出への光取出し効率のバランスを最適化することで、光出力の高いセラミックシンチレータを提供することができたものと推測される。
【0006】
即ち、本発明の要旨は、セラミックシンチレータであって、1mmΦの開口を有する白色基板上に、該セラミックシンチレータの光出力面が該白色基板の開口部に接するように固定し、開口部側から該セラミックシンチレータの光出力面に対して、該セラミックシンチレータの最大発光波長に対応する波長の光線を入射させた際に測定される反射率Rと透過率Tの比T/Rが下記式(1)を満たすセラミックシンチレータに存する。
3.5−0.2×t < T/R < 4.1−0.2×t (1)
(上記式中、tは光出力面に垂直な方向のセラミックシンチレータの厚み(mm)である。)
また、本発明の他の要旨は、前記のセラミックシンチレータと反射層を含むシンチレータアレイに存する。
また、本発明の他の要旨は、前記のセラミックシンチレータ又は前記のセラミックシンチレータアレイを含む放射線検出器に存する。
また、本発明の他の要旨は、前記の放射線検出器を備えた放射線検査装置に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、光出力の高いセラミックシンチレータを提供することが可能になる。
また、本発明は、上記シンチレータを含む、光出力の高いシンチレータアレイを提供することが可能になる。
また、本発明は、光検出器と、上記シンチレータ又はシンチレータアレイを含む、X線に対する感度が高い放射線検出器を提供することが可能になる。
更に本発明は、S/N比のX線像の撮像が可能な放射線検査装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態や例示物を示して説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
尚、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
<セラミックシンチレータ>
本願の第一の発明のセラミックシンチレータは、セラミックシンチレータであって、1mmΦの開口を有する白色基板上に、該セラミックシンチレータの光出力面が該白色基板の開口部に接するように固定し、開口部側から該セラミックシンチレータの光出力面に対して、該セラミックシンチレータの最大発光波長に対応する波長の光線を入射させた際に測定される反射率Rと透過率Tの比T/Rが下記式(1)を満たすものである。
3.5−0.2×t < T/R < 4.1−0.2×t (1)
(上記式中、tは光出力面に垂直な方向のセラミックシンチレータの厚み(mm)である。)
【0011】
上記式(1)は、後述のシミュレーションと実施例の結果に基づき定めたものであり、高い光出力を得るのに最適な光散乱性の範囲が存在することを意味する。
T/Rが、4.1−0.2×tを超える場合は、焼結体内部での光散乱性が弱く、焼結体内部で全反射を繰り返す光の割合が増えて、光出力面からの光取出し効率が低下するため、十分な光出力を得ることができない。また、T/Rが3.5−0.2×tより小さい場合は、焼結体内部での光散乱性が強く、光出力面まで伝播する光の割合が低下するため、十分な光出力を得ることができない。
【0012】
また、本発明のセラミックシンチレータは、下記式(2)より求められる吸収率Aが35%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下である。また、通常0%以上である。上記範囲であれば、焼結体内部で発光した光の再吸収によるロスを防ぐことが可能となるため、光出力を高めることができる。
A = 100%−(R+T) (2)
【0013】
(反射率R、透過率T及び吸収率Aの測定方法)
本発明のセラミックシンチレータの反射率R、透過率T及び吸収率Aの詳細な測定方法を次に示す
(1)反射率R(%)の測定方法
セラミックシンチレータを直径1mmΦの開口を有する白色基板上に、該セラミックシンチレータの光出力面が開口部に接するように固定し、開口部側から該セラミックシンチレータの光出力面に対して垂直な方向から4°傾けて、該セラミックシンチレータの最大発光波長に対応する波長の光線を入射させる。入射光線はレンズなどを用いて、集光角が2°以下になるようにコリメートした光線を用いる。該セラミックシンチレータの光出力面は、表面を番手700番以上の研磨材で研磨して測定を行う。この時、白色基板のセラミックシンチレータを固定した面と反対の面側に反射した全光線の強度を、6インチ以上の直径を有する積分球に取り付けた分光光度計などの光検出器で計測し、該セラミックシンチレータの代わりにスペクトラロン(商品名、Labsphere)製標準白板を設置して計測した反射光線の強度で除算することにより、反射率Rを求める。白色基板の測定波長における反射率は95%以上とする。
【0014】
(2)透過率T(%)の測定方法
セラミックシンチレータを直径1mmΦの開口を有する白色基板上に、該セラミックシンチレータの光出力面が開口部に接するように固定し、開口部側から該セラミックシンチレータの光出力面に対して垂直な方向から4°傾けて、該セラミックシンチレータの最大発光波長に対応する波長の光線を入射させる。入射光線はレンズなどを用いて、集光角が2°以下になるようにコリメートした光線を用いる。該セラミックシンチレータの光出力面は、表面を番手700番以上の研磨材で研磨して測定を行う。この時、白色基板のセラミックシンチレータ側に透過した全光線の強度を、6インチ以上の直径を有する積分球に取り付けた分光光度計などの光検出器で計測し、セラミックシンチレータを設置しない場合の透過光線の強度で除算することにより、透過率Tを求める。白色基板の測定波長における反射率は95%以上とする。
【0015】
(3)吸収率A(%)の測定方法
反射率R(%)と透過率T(%)より、以下の式(2)に従って計算する。
A = 100%−(R+T) (2)
【0016】
(セラミックシンチレータの組成)
本発明のセラミックシンチレータは、光出力が高く、X線照射後のアフターグローも小さい点から、その組成が
一般式:(Gd
1-aX
a)
2O
2S
(式中XはPr、Tb及びCeからなる群より選ばれる少なくとも1つの希土類元素であり、aは0.0001<a<0.01を満足する数である)
であることが好ましい(本発明ではGOSともいう)。
【0017】
上記一般式のaは、通常0.0001より大きく、好ましくは0.0002以上、より好ましくは0.0005以上、通常0.01より小さく以下、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.002以下である。
上記範囲内であれば、光出力に優れたシンチレータを得ることができる。
【0018】
本発明のセラミックシンチレータは、本発明の課題を奏する範囲でフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素を含有していても良い。
【0019】
(セラミックシンチレータの密度)
本発明のセラミックシンチレータは、密度が通常99.0%以上、好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.4%以上、更に好ましくは99.5%以上、特に好ましくは99.6%以上である。
密度が上記範囲であれば、ボイドによる散乱が抑制されセラミックシンチレータ内での吸収が低減されるため好ましい。
なお、本発明においてセラミックシンチレータの密度は、島津製作所社製分析天びんAUW220Dと比重測定キットSMK−401を用いて、6×6×3mmの焼結体を4回測定し2〜4回目を平均して算出できる。
【0020】
(セラミックシンチレータの厚み)
本発明のセラミックシンチレータの光出力面に垂直な方向の厚みは、好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下であることが好ましい。厚みが上記より小さい場合には、セラミックシンチレータと相互作用するX線の割合が減少するために光出力が低下し、厚みが上記より厚い場合には、セラミックシンチレータの光出力面から出力される前に、セラミックシンチレータ内部で吸収される光の割合が増加するため光出力が低下する。
なお、本発明においてセラミックシンチレータの厚みは、光出力面に垂直な方向のセラミックシンチレータの長さをノギスなどを用いて測定する。
【0021】
<セラミックシンチレータの製造方法>
セラミックシンチレータの製造方法は特に制限されず、公知の方法により製造することができる。本発明のセラミックシンチレータを得るには、反射率Rと透過率Tの比T/Rが上記式(1)を満たすよう調整する必要があり、セラミックシンチレータのボイドの量、原料の粉末の形状や焼結条件、熱処理条件を調整することで所望の光学特性を有するセラミックシンチレータを得ることができる。また、セラミックシンチレータの厚さを調整することによって、上記式(1)の範囲を調整しても良く、安定して光出力が高いセラミックシンチレータを供給することが可能となる。
以下、本発明の好ましい態様である、GOSのセラミックシンチレータの製造方法について説明する。
GOSのセラミックシンチレータはGOS粉末を焼結させて、前記GOSの焼結体を作製する焼結工程と、不活性ガス雰囲気において900℃以上1100℃以下で熱処理するアニール工程を含む製造方法で製造することが好ましい。
【0022】
(焼結工程)
焼結工程は、GOS粉末を焼結させて、前記GOSの焼結体を作製する焼結工程である。
原料に用いるGOS粉末は、特に制限されず、市販のものでも良いし、特開平03−192187号公報や特開平9−63122号公報等に記載のものを用いても良く、単独または混合使用することができる。
【0023】
原料に用いるGOS粉末の体積基準の平均粒子径は、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、更に好ましくは1.5.μm以上、特に好ましくは2.5μm以上、また通常30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
上記範囲内であると、焼結後のボイドが低減される点で好ましい。
【0024】
次に、上記したGOS粉末を焼結して、セラミックシンチレータの構成材料となるGOSの焼結体(GOS焼結体)を作製する。GOS粉末を焼結するにあたっては、ホットプレスやHIPなどの公知の焼結法(特開2002−275465号公報や国際公開第2016/047139号等参照)、反応焼結などを適用することができるが、特に高密度のガドリニウム酸硫化物焼結体を容易に得ることが可能であることから、HIP法を適用して焼結工程を実施することが好ましい。
【0025】
HIP法を適用した焼結工程は、まずGOS粉末を適当な形に成形した後、金属容器などに充填封入してHIP処理を施すことにより実施する。
HIPの温度は、通常2000℃以下、好ましくは1800℃以下、より好ましくは1600℃以下、更に好ましくは1500℃以下、特に好ましくは1400℃以下であり、一方通常800℃以上、好ましくは900℃以上、より好ましくは950℃以上、更に好ましくは1000℃以上、特に好ましくは1050℃以上である。
HIPの圧力は通常200MPa以下、好ましくは180MPa以下、より好ましくは160MPa以下、更に好ましくは150MPa以下、特に好ましくは140MPa以下であり、一方通常50MPa以上、好ましくは60MPa以上、より好ましくは70MPa以上、更に好ましくは80MPa以上、特に好ましくは90MPa以上である。
HIPの時間は通常48時間以下、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下、特に好ましくは10時間以下であり、一方通常0.5時間以上、好ましくは0.8時間以上、より好ましくは。1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上、特に好ましくは2時間以上である。
上記条件でHIP処理を行うことによって、GOS焼結体が得られる。
【0026】
なお、焼結工程では、前処理工程(洗浄、乾燥、真空脱気などを行う工程)、後処理工程(洗浄、乾燥などを行う工程)等を任意に含んでいてもよい
【0027】
(アニール工程)
アニール工程は、上記焼結工程で得られたGOS焼結体を、不活性ガス雰囲気において900℃以上1100℃以下で熱処理する工程である。
GOS焼結体の表面に硫酸塩ができないように、アニール工程の温度、時間、空気量を調整することで、本発明の好適な光学特性を有するセラミックシンチレータを得ることが可能となる。
なお、アニール工程前にGOS焼結体をブレードソーやワイヤーソーなどにより所望の形状および寸法に切り出しておくことが好ましい。
【0028】
アニール工程は、アルゴンガス、窒素等の不活性ガス雰囲気にて行う。これらの中でも生産コスト抑制の点から工業用アルゴンないしは窒素ガス下で行うことが好ましい。
不活性ガスの流量としては、0.1L/分以上、20L/分以下が好ましい。
熱処理温度は、通常900℃以上、好ましくは950℃以上、より好ましくは1000℃以上、更に好ましくは1050℃以上であり、一方、通常1150℃以下、好ましくは1140℃以下、更に好ましくは1100℃以下である。
上記範囲は6×6×3mmの焼結体に対して有効であって、焼結体の大きさによってはその限りではない。
【0029】
また、熱処理時間は、通常8時間以上、好ましくは8.5時間以上、より好ましくは9時間以上、更に好ましくは9.5時間以上、通常19時間以下、好ましくは17時間以下、更に好ましくは15時間以下である。
上記範囲は6×6×3mmの焼結体に対して有効であって、焼結体の大きさによってはその限りではない。
【0030】
(その他の工程)
本発明のセラミックシンチレータの製造方法は、上記工程の他に任意の工程を含んでよい。
【0031】
<シンチレータアレイ>
本発明のシンチレータアレイは、上記の本発明のシンチレータを複数含むものである。
また、本発明のシンチレータは光出力および解像度の向上を目的として、セラミックシンチレータの表面に反射層及び/又は空隙を設けても良い。
反射層としては、TiO
2、Al
2O
3、ZnO等の無機粒子とバインダー樹脂を含む。
反射層の厚さとしては、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.15μm以上、また通常10000μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下である。
上記範囲であればシンチレータで発光した光を効率的に受光面へ到達させることができる。
本発明のシンチレータアレイは、より低いX線照射量においても使用可能である。
【0032】
<放射線検出器>
本発明の放射線検出器は、光検出器と、上記本発明のシンチレータ又は本発明のシンチレータアレイを含むものである。
光検出器は、シンチレータ又はシンチレータアレイに対向して光電変換部を備え、シンチレータ又はシンチレータアレイで発せられた蛍光を、電気信号等に変換する機能を有する。このような機能を有する限り光検出器は特段限定されず、既知の光検出器を適宜用いることができる。
【0033】
<放射線検査装置>
放射線検査装置の一例としては、X線CT装置が挙げられる。X線CT装置としては、被検体にX線を照射するX線照射部と、前記被検体を介して前記X線照射部と対向し、前記被検体を透過した透過X線のうちの前記被検体の内部の検査対象物に応じた特定のエネルギ範囲における前記透過X線の個数を測定するX線測定部と、前記X線測定部で測定した前記透過X線の個数に基づいて前記検査対象物の厚さを演算する厚さ演算部と、前記厚さ演算部で演算された前記検査対象物の厚さに基づいてCT画像を再構成する画像再構成部とを備える。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<シミュレーションによるセラミックシンチレータの光出力評価>
本実施形態におけるセラミックシンチレータにおいて、種々のセラミックシンチレータの反射率R、透過率T及び吸収率Aと光出力をシミュレーションにより評価した。光出力のシミュレーションにおいては、セラミックシンチレータのX線に対する線減弱係数を40cm
-1、複素屈折率を2.2+1.0×10
-6iと設定し、光出力面と対向する面から、光出力面に対して垂直にX線を入射させた際に、光出力面から出力される相対光出力を評価した。光出力面を含む全ての面は鏡面を仮定し、光出力面以外の面には白色の反射材が設置されているものとして、鏡面反射せずに透過した光の80%が拡散反射光としてシンチレータ内に戻ることを仮定した。反射材の屈折率は1.5と仮定してシンチレータと反射材界面の鏡面反射を計算した。さらに、光出力面は接着剤により光検出面に接着されていることを想定し、接着剤の屈折率を1.5に設定して、セラミックシンチレータの形状や内部の光散乱体の数密度を種々に変化させた際に、光出力面から出力される光量を評価した。
さらに、シミュレーションにより得られた光出力を、同一の形状のセラミックシンチレータにおいて、光散乱体の数密度を変化させた時に得られた最大光出力で除算することにより、相対光出力を求めた。
【0035】
一方、反射率R、透過率T、吸収率Aのシミュレーションにおいては、光出力シミュレーションと同様の光学特性を持つセラミックシンチレータを設定し、該セラミックシンチレータを1mmΦの開口を有する反射率95%の白色基板に、該セラミックシンチレータの光出力面が接するように固定して、開口部側から該セラミックシンチレータの光出力面に対して垂直な方向から4°傾けて、波長514nm、ビーム径1mmの光線を入射させた時の入射光の反射率R、透過率T及び吸収率Aを計算した。全ての面に鏡面を仮定したが、反射材は設定せずに、鏡面反射されなかった光については空気への出射を仮定した。計算にはSynopsis社の照明設計解析ソフトウェアであるLightTools(登録商標)を用い、光線追跡法によりシミュレーションを実施した。
以下の表1に各シンチレータの形状、T/R、吸収率A及び相対光出力を示した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、式(1)を満たすセラミックシンチレータは高い相対光出力を示すことがわかる。また、
図4に各シミュレーション結果において、相対光出力が85%以上と、85%以下のものについて、T/Rを厚みに対してプロットした結果を示す。
【0038】
(実施例1)
<シンチレータの作成>
・焼結工程
体積基準の平均粒子径9μmのGd
2O
2S:Prの粉末を、軟鋼カプセルに封入し、温度1300℃、2時間、圧力100MPaにてHIP処理を行い、Gd
2O
2S:Prの焼結体を得た。
次いで、得られた焼結体をダイシングソーにて6×6×3mm厚に加工した。
・アニール工程
得られた焼結体片をモトヤマ社製タンマン炉SUPER−BURNに入れた。アルゴンガス(0.3L/分)雰囲気で、1100℃まで200℃/時間で昇温し、10時間熱処理を行った後、200℃/時間で降温し熱処理したセラミックシンチレータを得た。
【0039】
・反射率R、透過率T及び吸収率Aの測定
熱処理したセラミックシンチレータの反射率R、透過率T、吸収率Aを前述した方法に従って測定した。
・光出力の測定
試料を光取り出し面以外の5面に100um厚の反射材コクヨTW−40を塗布し、ジョブ製PORTA 100HFを80kV12mAsに設定し、10cmのファントムを設置し750mmの距離でRadEye Image Sensorを用いて測定した。
光出力は同一条件で測定した三菱化学社製DRZ−highの光出力を100とした相対強度である。
【0040】
(比較例1〜2)
セラミックシンチレータの反射率、透過率及び吸収率を調整するために、HIPの条件を調整し、実施例1と同様に熱処理したセラミックシンチレータを得た。
各シンチレータの形状、T/R、吸収率A及び相対光出力を評価した結果を下表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2より式(1)を満たす実施例1のセラミックシンチレータは、式(1)を満たさない比較例1〜2のシンチレータに比べて高い相対光出力を示すことが分かる。