(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、カメラ100の要部を示す模式的な断面図を示す。カメラ100は、撮像装置の一例としてのレンズ交換式カメラである。カメラ100は、カメラ本体130と、レンズ鏡筒の一例としてのレンズユニット120とを備える。レンズユニット120は、カメラ本体130の被写体側に装着される。レンズユニット120は、交換レンズであり、カメラ本体130に対して着脱可能である。
図1では、レンズユニット120がカメラ本体130に装着された状態を示す。
【0010】
レンズユニット120は、レンズ11、レンズ12、レンズ13、レンズ14、レンズ保持枠21、レンズ保持枠22、レンズ保持枠23、レンズ保持枠24、固定筒30、移動筒31、固定筒部品32、回転筒33、ズームリング34、パッキン36、パッキン38、レンズ側マウント40を備える。レンズユニット120は略円筒状の形状を有する。レンズユニット120の円筒側部の外観は、主としてズームリング34、固定筒30および移動筒31によって提供される。
【0011】
レンズ11、レンズ12、レンズ13およびレンズ14は、光軸AXに沿って配列されている。複数のレンズ11、レンズ12、レンズ13およびレンズ11は、撮像用のレンズ系を構成する。レンズ11、レンズ12、レンズ13、レンズ14は、それぞれ複数のレンズにより構成されたレンズ群であってもよい。レンズ11、レンズ12、レンズ13、レンズ14を通過した被写体光は、カメラ本体130に設けられた撮像素子に入射する。カメラ本体130は、撮像素子が被写体光を受光することによって生成した撮像信号に基づき、被写体像の画像データを生成する。
【0012】
レンズ保持枠21は、レンズ11を保持する。レンズ保持枠22は、レンズ12を保持する。レンズ保持枠23は、レンズ13を保持する。レンズ保持枠24は、レンズ14を保持する。レンズ保持枠24は、固定筒部品32に固定される。固定筒部品32は固定筒30の内側に配置され、固定筒30は固定筒部品32に固定される。したがって、レンズ14は、固定筒30に対して固定される。
【0013】
レンズ11、レンズ12およびレンズ13は、固定筒30の外表面より光軸側、すなわち固定筒30の内側に位置し、固定筒30に対して可動に設けられる。レンズ11、レンズ12、レンズ13は、固定筒30に対して光軸AX方向に可動に設けられる。レンズ11は、レンズ保持枠21に保持された状態で、光軸AX方向に移動する。レンズ12は、レンズ保持枠22に保持された状態で、光軸AX方向に移動する。レンズ13は、レンズ保持枠23に保持された状態で、光軸AX方向に移動する。
【0014】
回転筒33は、固定筒30に対して光軸AXまわりに回転する。レンズ保持枠21、レンズ保持枠22およびレンズ保持枠23は、回転筒33の回転動作やリードスクリューの回転駆動によって、光軸AX方向に直進する駆動力を得て、光軸AX方向に移動する。これにより、レンズ11、レンズ12およびレンズ13は、光軸AX方向に移動する。レンズ11、レンズ12、レンズ13が光軸AX方向に移動することにより、光学系の画角調整やフォーカス位置の調整が実現される。
【0015】
ズームリング34は、固定筒30に対して可動な可動筒の一例である。ズームリング34は、ユーザの操作により固定筒30に対して可動に設けられる。ズームリング34は、ユーザが操作することにより固定筒30に対して回転する操作リングである。ズームリング34は、ユーザから画角調整の操作を受け付ける。ユーザがズームリング34を光軸AXまわりに回転させることにより、レンズ11、レンズ12およびレンズ13が光軸AX方向に移動して、レンズ系の焦点距離が変化する。
【0016】
例えば、ズームリング34が光軸AXまわりに回転した場合、ズームリング34の回転に応じて、機械的またはモータ制御により回転筒33が光軸AXまわりに回転する。回転筒33の回転に応じて、カム機構によりレンズ保持枠21、レンズ保持枠22およびレンズ保持枠23が光軸AX方向に直進する駆動力を得て、レンズ11、レンズ12およびレンズ13が光軸AX方向に移動する。なお、レンズ保持枠21は、回転筒33の回転動作によって光軸AX方向に移動する移動筒31に固定されており、移動筒31が回転筒33の回転に応じて光軸AX方向に移動することにより、レンズ11が光軸AX方向に移動する。
【0017】
レンズ11、レンズ12およびレンズ13は、ズームリング34の操作だけでなく、レンズユニット120またはカメラ本体130が有するモータの駆動力を受けて、光軸AX方向に移動することもできる。例えば、カメラ本体130においてレリーズボタンが半押し操作された場合に、レンズ11、レンズ12およびレンズ13のうちフォーカスを担うレンズがモータ駆動により光軸AX方向に移動される。
【0018】
移動筒31は、ズームリング34に対して光軸AX方向に移動する。また、ズームリング34は、移動筒31に対して光軸AXまわりに回転する。ズームリング34と移動筒31との間には、パッキン36が設けられる。パッキン36は、ズームリング34および移動筒31に接触してズームリング34と移動筒31との間の隙間を埋めて、ズームリング34を移動筒31に対して可動に支持する。
【0019】
パッキン36は、収縮性を有する。移動筒31の材料は例えば樹脂である。パッキン36は例えば人工皮革である。パッキン36は、ズームリング34の内側面に取り付けられ、移動筒31の外側面と摺動する摺動面を有する。パッキン36の摺動面には起毛を有する。そのため、ズームリング34に対して移動筒31が光軸AX方向に摺動することを許容しつつ、ズームリング34と移動筒31との間を通って固定筒30の内側に塵埃が入り込むことを抑制できる。パッキン36が収縮性を有するので、パッキン36は適度な押し圧で移動筒31に接触する。そのため、ズームリング34の操作性は損なわれない。
【0020】
ズームリング34および固定筒30は、導電性を有する。ズームリング34および固定筒30は、例えば金属部材である。パッキン38は、導電性を有する。パッキン38は、ズームリング34および固定筒30に接触しており、ズームリング34と固定筒30との間から固定筒30の内側に塵埃が入り込むことを防止する。パッキン38は、ズームリング34および固定筒30に接触した状態で、固定筒30に対してズームリング34を可動に支持する。したがって、ズームリング34は、パッキン38を介して固定筒30に電気的に接続された状態を保ちつつ、固定筒30に対して可動に支持されている。
【0021】
レンズ側マウント40は、導電性を有する。レンズ側マウント40は、金属部材である。固定筒30は、レンズ側マウント40と接触した状態でレンズ側マウント40に固定されている。したがって、固定筒30は、レンズ側マウント40に電気的に接続されている。そのため、ズームリング34は、レンズ側マウント40に電気的に接続されている。具体的には、ズームリング34は、パッキン38および固定筒30を介して、レンズ側マウント40に電気的に接続されている。
【0022】
レンズ側マウント40は、カメラ本体130にレンズユニット120を装着する装着部を提供する。レンズ側マウント40は、いわゆるマウントリングであり、全体として環状の部材である。レンズ側マウント40は、カメラ本体130が備えるカメラ側マウント50に取り付けられる。
【0023】
カメラ側マウント50は、導電性を有する。カメラ側マウント50は、いわゆるマウントリングであり、全体として環状の金属部材である。レンズ側マウント40がカメラ側マウント50に取り付けられた場合、レンズ側マウント40はカメラ側マウント50に電気的に接続される。
【0024】
レンズ側マウント40は、例えばバヨネット式のマウント構造により、カメラ側マウント50と係合して、レンズユニット120とカメラ本体130とが一体化する。レンズ側マウント40およびカメラ側マウント50はそれぞれ、機械的な係合部の他に電気的な接続部も備え、カメラ本体130からレンズユニット120への電力の供給および相互の通信を実現する。
【0025】
また、カメラ本体130において、カメラ側マウント50は電気的に接地される。カメラ側マウント50は、カメラ本体130が有する電源部の基準電位を提供する基準電極に電気的に接続される。例えば、カメラ本体130内には電源部の基準電極に電気的に接続された内部シャーシ等の導電部材を有し、カメラ側マウント50は当該導電部材に電気的に接続される。
【0026】
ズームリング34を金属製にすることで、レンズユニット120の質感が高まる。ズームリング34は、固定筒30の内側への塵埃の進入を抑制し固定筒30に対して可動に支持するパッキン38を介して、固定筒30に電気的に接地される。そのため、ズームリング34を接地するための接地用導電部材を別途に設けなくても、ズームリング34を電気的に接地できる。また、静電気の発生を抑制できる。また、接地用導電部材を設けなくて済むので、その分スペースを有効利用できる。また、レンズユニット120を組み付ける場合の部品点数を削減できる。また、レンズユニット120の部品の組み付け工程を簡略化できる。
【0027】
図2は、固定筒30、ズームリング34、パッキン38およびレンズ側マウント40を拡大して示す模式的な断面図である。
図3は、パッキン38と、固定筒30およびズームリング34の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【0028】
固定筒30の筒部308とズームリング34の筒部348とは、光軸AX方向に重なるように設けられる。ズームリング34の筒部348は、固定筒30の筒部308の内側に位置しており、固定筒30との間に隙間が空く位置に設けられる。パッキン38は、光軸AXを囲う環状の部材であり、筒部348と筒部308との間の隙間を埋めるように設けられる。このように、筒部348は、筒部308と同軸に設けられ、筒部308に対して回転可能である。パッキン38は、筒部348および筒部308に挟まれて、筒部308に対して摺動する。
【0029】
パッキン38は、摺動シート200と、ガスケット部210と、導電粘着層220とを有する。摺動シート200、ガスケット部210および導電粘着層220は、ズームリング34の外側面341から固定筒30の内側面302に向かって、導電粘着層220、ガスケット部210、摺動シート200の順で設けられる。
【0030】
摺動シート200の厚みは、例えば0.1mmである。ガスケット部210の厚みおよび導電粘着層220の厚みの合計は、例えば0.3mm以上である。ガスケット部210の厚みおよび導電粘着層220の厚みの合計は、摺動シート200の厚みの3倍以上であってよい。
【0031】
導電粘着層220は、導電性フィラーおよび粘着性を有する樹脂を含む粘着層である。導電粘着層220は、例えば導電性フィラーおよびアクリル系粘着材を含んでよい。導電粘着層220は、ズームリング34の外側面341およびガスケット部210に接している。
【0032】
ガスケット部210は、導電性およびクッション性を有する。ガスケット部210は、導電粘着層220および摺動シート200に接している。ガスケット部210は、摺動シート200が有するクッション性より高いクッション性を有する。例えば、ガスケット部210は、摺動シート200が有する収縮性より高い収縮性を有する。ガスケット部210の構成については後述する。
【0033】
摺動シート200は、固定筒30とガスケット部210との間に設けられ、固定筒30と摺動する。摺動シート200は、ガスケット部210および固定筒30の内側面302に接している。摺動シート200は、導電性を有するとともに、固定筒30の内側面302に対する摺動面を提供する。
【0034】
摺動シート200は、ガスケット部210が有する摺動性より高い摺動性を有する。例えば、摺動シート200は、ガスケット部210が有する硬度より高い硬度を有し、固定筒30に対する摺動面は、ガスケット部210の表面より滑らかである。摺動シート200の構成については後述する。
【0035】
ガスケット部210がクッション性を有し、固定筒30に接触する摺動シート200が摺動性を有することで、適度な押し圧を与えながらズームリング34が固定筒30と摺動できる。
【0036】
図4は、ガスケット部210および導電粘着層220の模式的な断面図である。ガスケット部210は、導電クッション層410と、導電メッシュ層420とを有する。導電メッシュ層420および導電クッション層410は、導電粘着層220側から摺動シート200側に向かって、導電メッシュ層420、導電クッション層410の順で設けられる。
【0037】
導電メッシュ層420は、樹脂内に形成された金属のメッシュ層を含んでよい。導電メッシュ層420が有する金属のメッシュ層は、ポリエステル樹脂内に形成されてよい。導電クッション層410は、発泡樹脂部412と、導電メッキ部418とを含む。発泡樹脂部412の材料は、例えば、オレフィン系発泡樹脂であってよい。
【0038】
発泡樹脂部412は、例えばスルーホール加工により形成された複数の孔部413を有する。発泡樹脂部412は、複数の孔部413で形成される側面414と、摺動シート200に接触する外側面415と、導電メッシュ層420に接触する内側面416とを有する。
【0039】
導電メッキ部418は、発泡樹脂部412の側面414および外側面415に、例えば金属メッキ処理によって形成されている。導電メッキ部418は、側面414および外側面415を覆うように形成されている。したがって、導電メッキ部418は、導電メッシュ層420に電気的に接続している。接触摺動シート200は、外側面415に形成した導電メッキ部418に接触して設けられる。そのため、摺動シート200は導電メッシュ層420に電気的に接続される。
【0040】
導電クッション層410が発泡樹脂層を有するので、パッキン38は全体として伸縮性を有する。そのため、パッキン38の固定筒30に対する密着性を高めつつ、固定筒30に適度な押し圧を加えることができる。
【0041】
図5は、摺動シート200の模式的な断面図である。摺動シート200は、導電粘着層520と、導電織布部510とを有する。導電粘着層520および導電織布部510は、ガスケット部210側から固定筒30側に向かって、導電粘着層520、導電織布部510の順で設けられる。
【0042】
導電粘着層520は、導電性フィラーおよび粘着性を有する樹脂を含む粘着層である。導電粘着層520は、ガスケット部210の外側面415に形成された導電メッキ部418および導電織布部510に接している。
【0043】
導電織布部510は、例えば繊維布に金属メッキ処理が施された導電布である。導電織布部510において固定筒30が接触する側の表面511には、カーボンコート処理が施されている。表面511は、固定筒30に対する摺動面を提供する。そのため、固定筒30に対するパッキン38の摺動性を高めることができる。また、表面511にカーボンコート処理で形成されたカーボン層により、導電織布部510の耐久性を高めることができる。
【0044】
以上に説明したように、パッキン38は、導電粘着層220でズームリング34に接着され、ズームリング34と固定筒30との間に挟まれた状態で、固定筒30に押しつけられる。ガスケット部210が発泡樹脂部412を有するので、パッキン38を固定筒30に密着させることができるとともに、パッキン38は適度な圧力で固定筒30に押し付けられる。摺動シート200の表面511にはカーボンコート処理が施されているので、摺動シート200の表面511が硬質となり、固定筒30との間の摩擦係数を低減することができる。そのため、パッキン38によれば、防塵防湿性、ズームリング34の操作性および摺動性を高めつつ、ズームリング34を固定筒30に電気的に接続することができる。
【0045】
なお、本実施形態において、移動筒31は樹脂部材である。しかし、移動筒31は金属部材であってよい。移動筒31が金属部材である場合、パッキン36に代えて、導電性を有するパッキンを適用してよい。例えば、パッキン36に代えて、パッキン38と同様の構成のパッキンを適用してよい。
【0046】
本実施形態のズームリング34は、ユーザが操作する操作リングの一例である。操作リングとしては、ズームリングの他、焦点調節の操作を受け付けるフォーカスリングであってよい。例えば、レンズユニット120は、ズームリング34に代えて、または、ズームリング34に加えて、金属部材のフォーカスリングを有してよい。金属部材のフォーカスリングを設ける場合、フォーカスリングと固定筒30との間に、パッキン38と同様の構成のパッキンを設けてよい。
【0047】
また、本実施形態では、パッキン38は、ズームリング34に固定され、固定筒30に対して摺動する。しかし、固定筒30に固定され、ズームリング34に対して摺動するパッキンに、パッキン38と同様の構成を適用できる。
【0048】
また、本実施形態において、撮像装置の一例として、レンズ交換式のカメラ100を取り上げて説明した。しかし、撮像装置は、一眼レフレッククカメラ等のレンズ交換式のカメラ以外のカメラを含む概念である。例えば、撮像装置は、レンズ非交換式カメラ、ビデオカメラなど、撮像機能を有する種々の機器を含む概念である。
【0049】
なお、撮像装置は、受光装置の一例である。レンズユニット120と同様の構成を持つレンズ鏡筒を、撮像機能を有しない受光装置に適用できる。また、受光装置以外の様々な電子機器に、導電性を有する固定筒と、導電性を有し固定筒と同軸に設けられ固定筒に対して回転可能な可動筒と、固定筒および可動筒に挟まれて固定筒および可動筒の少なくとも一方に対して摺動する導電性のパッキン部とを備えるレンズ鏡筒を適用できる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0051】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。