特許第6750787号(P6750787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750787
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】灯具
(51)【国際特許分類】
   F21V 7/22 20180101AFI20200824BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20200824BHJP
   F21W 107/20 20180101ALN20200824BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200824BHJP
【FI】
   F21V7/22
   F21S2/00 310
   F21W107:20
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-93634(P2016-93634)
(22)【出願日】2016年5月9日
(65)【公開番号】特開2017-204326(P2017-204326A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宗
(72)【発明者】
【氏名】武渕 堅次
(72)【発明者】
【氏名】竹内 治
(72)【発明者】
【氏名】矢田 智春
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−203404(JP,A)
【文献】 特開2015−095452(JP,A)
【文献】 特開2016−038976(JP,A)
【文献】 特開2007−087892(JP,A)
【文献】 特開2012−160356(JP,A)
【文献】 特開2014−175095(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0057234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
該発光部を取り囲むように設置された透明な円筒部材からなる円筒部と、
該円筒部の上部に取り付けられた蓋部と、
前記発光部から放射された光の一部を前記円筒部の開口部に向けて反射する反射部と、を備えた灯具において、
前記円筒部の曲面状の側面が、前記発光部から放射される光の透過を遮る遮光塗料塗布部からなる遮光部と、前記遮光塗料が塗布されずに残り前記発光部から放射される光を透過させる前記開口部とからなり、
前記反射部が、前記発光部から放射され前記反射部で反射させる光を前記開口部の中心部から放射し前記開口部の端部から放射しないように前記開口部の端部と前記発光部とを結ぶ延長線と前記円筒部の側面とが交わる2点の間で前記開口部に対向する領域に配置された反射塗料塗布部からなることを特徴とする灯具。
【請求項2】
請求項1記載の灯具において、
前記反射部が、前記円筒部の内壁の一部に配置された前記反射塗料塗布部からなることを特徴とする灯具。
【請求項3】
請求項1記載の灯具において、
前記反射部が、前記円筒部内に設置された反射板表面の一部に配置された前記反射塗料塗布部からなることを特徴とする灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航海灯等として使用される灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の安全な航行を維持するため、海上衝突防止法や海上交通安全法等により船舶の種類や大きさに応じて、灯火の色や射光範囲が定められている。例えば、マスト灯は白色で船首方向を中心として225°の射光範囲の灯火を、船尾灯は白色で船尾方向を中心として135°の射光範囲の灯火を、右舷灯は緑色で船首方向から右方向へ112.5°の射光範囲の灯火を、左舷灯は赤色で船首方向から左側へ112.5°の射光範囲の灯火をそれぞれ使用すること等が定められており、その許容限界についても厳しく定められている。また、照度や光到達距離等も定められている。
【0003】
従来のこの種の灯具を図3に示す。電源や駆動回路などを収納されている取付台1上に円筒形状の円筒部2が搭載され、円筒部2の上部には蓋部3が取り付けられている。円筒部2の内部には図示しない電球あるいはLED等の光源からなる発光部を備えている。円筒部2の一部は、発光部から放射される光を外部へ放射させない遮光部4と円筒部2を透過して外部へ放射させる開口部5とから構成されている。また光が所定の射光範囲に放射されるように開口部5の両端に遮光板6が取り付けられている。
【0004】
図4は、図3に示す灯具の蓋部3を取り外した状態を模式的に示している。中央にLED等からなる発光部7が配置されている。ここで、発光部7は模式的に点で表示している。円筒部2は、発光部7から放射された光が所定の射光範囲で放出するように遮光部4と開口部5とがそれぞれ所定の範囲となるように区画され、遮光部4と開口部5が一体形成されている。
【0005】
ところで円筒部2は、遮光部4を構成する部材と開口部5を構成する部材を接合して形成される。具体的には、遮光部4を金属板あるいは着色プラスチックで形成し、開口部5を透明プラスチックで形成し、これらを接合して円筒部2としている。
【0006】
このように遮光部4と開口部5を別々の部材で構成する場合、各部材を密着して接合させるため加工精度を上げる必要があり、異なる部材を接合する組立工程が必要となる。また、接着部分が経年変化して接着部から浸水する危険がある等の問題があった。さらにまた、射光範囲が異なる灯具毎に遮光部4と開口部5を構成する部材をそれぞれ用意しておく必要があるという問題があった。
【0007】
そこで接着部分をなくすため、図5に示すように透明プラスチック等からなる円筒部材を用い、円筒部2の外周の一部を覆うように金属筒を取付け、この金属筒が取り付けられた部分を遮光部4とし、金属筒の無い部分を開口部5とすることも可能である。しかしながらこのような構造であっても、金属筒と円筒部材を隙間なく接触させる必要があるため金属筒の加工精度を上げる必要があり、金属筒を取り付ける組立工程が必要となる。また射光範囲が異なる灯具毎に金属筒を用意しておく必要がある。
【0008】
一方、照度を上げ、光到達距離を伸ばすため、円筒部内に反射部を設ける場合、例えば特許文献1に記載のように反射部に相当するリフレクタに金属を蒸着した反射面を形成したり、特許文献2に記載のように、反射鏡により反射面を形成したりすることができる。しかし、これらの反射部の構造は非常に複雑な構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−175776号公報-
【特許文献2】特開2007−27052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の灯具において、遮光部と開口部とをそれぞれ別々の部材で形成し、これらを接合して円筒部を形成する場合には、接合部から浸水等の問題が発生しないように隙間なく接着しなければならず、部材を加工する際に高い精度が要求されていた。また高価な金属部材を使用する必要があるため、組立費用や材料費が嵩んでしまうという問題があった。さらに射光範囲の異なる灯具を形成する場合、それぞれ別の部材を用意しなければならないという問題があった。
【0011】
また反射部を備える構成とする場合には、複雑な構造のリフレクタや反射鏡のような追加の部品が必要となり、灯具の製造コストの上昇を招いてしまうという問題もあった。本発明はこのような問題点を解消するため、複雑な構造をとらずに、所望の射光範囲等が得られる灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、発光部と、該発光部を取り囲むように設置された透明な円筒部材からなる円筒部と、該円筒部の上部に取り付けられた蓋部と、前記発光部から放射された光の一部を前記円筒部の開口部に向けて反射する反射部と、を備えた灯具において、前記円筒部の曲面状の側面が、前記発光部から放射される光の透過を遮る遮光塗料塗布部からなる遮光部と、前記遮光塗料が塗布されずに残り前記発光部から放射される光を透過させる前記開口部とからなり、前記反射部が、前記発光部から放射され前記反射部で反射される光を前記開口部の中心部から放射し前記開口部の端部から放射しないように前記開口部の端部と前記発光部とを結ぶ延長線と前記円筒部の側面とが交わる2点の間で前記開口部に対向する領域に配置された反射塗料塗布部からなることを特徴とする。
【0013】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の灯具において、前記反射部が、前記円筒部の内壁の一部に配置された前記反射塗料塗布部からなることを特徴とする。
【0014】
本願請求項3に係る発明は、請求項1記載の灯具において、前記反射部が、前記円筒部内に設置された反射板表面に配置された前記反射塗料塗布部からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の灯具は、透明な円筒部材の側面の一部に遮光塗料が塗布された遮光塗料塗布部を備えこの領域を遮光部とし、遮光塗料が塗布されずに残る領域を開口部とするため、複雑な組み立てを必要としない。また、射光範囲が異なる灯具を形成する場合には、遮光塗料を塗布する領域を変更すればよく、非常に簡便に形成できるという利点がある。
【0016】
反射部についても、反射塗料が塗布された反射塗料塗布部で構成するため、追加の部品を必要とせず、製造コストの上昇を招くことがない。また反射板を設ける構造としても、プラスチック等の安価な材料で構成できる。
【0017】
特に本発明の反射部は、その反射光を開口部の中央部にのみ放射するように配置することで、開口部中央の照度を上げ、光到達距離を伸ばすことができ好適である。
【0018】
特に本発明によれば、円筒部に接続部が存在しない構造となり、船灯として使用する場合に浸水等の発生を防止することができる。また、遮光塗料を塗布する領域や反射塗料を塗布する領域は簡便に変更することができ、様々な種類の船灯を簡便に形成できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施例の説明図である。
図2】本発明の第2の実施例の説明図である。
図3】従来のこの種の灯具の説明図である。
図4】従来のこの種の灯具の説明図である。
図5】従来のこの種の別の灯具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の灯具は、透明な円筒部材からなる円筒部の側面の一部に発光部から放射される光を遮る遮光塗料塗布部を備え、遮光塗料が塗布されずに残る円筒部を開口部としている。さらに本発明の灯具は、反射部を備え、この反射部は反射塗料塗布部であり、この反射塗料塗布部を所定の位置に配置することにより、発光部から放射される光が開口部の中心部から放射し、開口部の端部から放射しないようにしている。以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の第1の実施例について説明する。本発明の灯具は、図3に示す上述の従来例同様、取付台1上に円筒形状の円筒部2が搭載され、円筒部の上部に蓋部3が取り付けられている。また円筒部2の内部には、電球あるいはLED等からなる発光部を備えている。本発明の灯具は、遮光部と開口部の形状が上述の従来例と相違している。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施例の灯具の説明図であり、前述の従来例で説明した図4に相当する図面である。図1に示すように本発明の円筒部2aは、透明の円筒形状の部材、例えば透明プラスチックで形成されており、円周方向に接続部は存在していない。また、遮光部4は円筒部2aの外側面の所定の位置に遮光塗料を塗布して形成された遮光塗料塗布部で構成されている。ここで使用する遮光塗料は、発光部7から放射された光が透過しないように塗布できるものを使用している。遮光塗料が塗布されずに残る部分が開口部5となる。
【0023】
灯具は所望の放射範囲で光を放出する必要がある。そのため、遮光塗料を塗布する領域は、発光部7から放出された光が開口部5から所望の放射範囲で放射されるように設定される。図1に示す例では、円筒部2aに遮光板6を備えているので、遮光板6上にも遮光塗料を塗布している。なお、遮光板6は必ずしも必須ではない。
【0024】
さらに本発明は、反射部8を備えている。本実施例の反射部8は、円筒2aの内側面の所定の位置に反射塗料を塗布して形成する。反射塗料を塗布する領域は、開口部5の端部と発光部7とを結ぶ延長線L1の円筒2a上の点P1と、延長線L2の円筒2a上の点P2との間で、開口部5に対向する領域とする。
【0025】
このように形成すると、発光部7から放射された光は、直接開口部5から放射されるとともに、円筒2aの内壁で反射して開口部5から放射されることになる。特に反射部8で反射した光は、円筒2a開口部5から放射される。
【0026】
ここで、反射部8を点P1と点P2の間、即ち反射部8の端部と点P1あるいは点P2との間に反射部が形成されない領域をもって配置することで、反射部8で反射した光が開口部5の中心近傍から放射されることとなる。一方反射部8の無い部分の円筒2aでも反射が生じる。つまり図1の反射部8の左端から点P1の間の円筒2aの内側面で反射した光も開口部5から放射される。同様に反射部8の右端から点P2の間の円筒2aの内側面で反射した光も開口部5から放射される。しかし、円筒2a表面の反射率と反射部8の反射率を比較すると、反射部8の反射率が高いため、開口部5の中央部から放射される光の相対強度を高くすることができ、照度を高め、光到達距離を伸ばすことが可能となる。
【0027】
このように本発明では、円筒2aの外側壁の所定の位置に遮光塗料を塗布するだけで遮光部4を形成することができ、また円筒2aの内側面の所定の位置に反射塗料を塗布するだけで反射部8を形成することができ、非常に簡便に灯具を形成することが可能となる。
【0028】
特に、遮光塗料および反射塗料を塗布する領域を変更するだけで射光範囲を変更することができ、船灯のように遮光範囲の異なる灯具を形成する方法として好適である。
【実施例2】
【0029】
次に第2の実施例について説明する。本発明の反射部8の構造は、第1の実施例で説明した円筒2aの内壁面に直接塗布する代わりに、図2に示すように別の部材で構成することもできる。例えば、透明プラスチックからなる基材上に反射塗料を塗布して反射部8を形成し、円筒部2aの所定の位置に配置してもよい。図2に示す反射部8は、円筒2aの内壁面に直接固定されている例を示しているが、例えば、曲率の異なる形状、直線状の形状等など変更し、出射範囲やその強度やその分布を適宜変更することができる。
【0030】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、遮光塗料を円筒部2aの内壁面に塗布する構成としたり、円筒部2aの外側面からの放熱効果を高めるため、該側面を凹凸形状としてよい。
【符号の説明】
【0031】
1:取付台、2、2a:円筒部、3蓋部、4:遮光部、5:開口部、6:遮光板、7:発光部、8:反射部
図1
図2
図3
図4
図5