(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コントロールゲート領域およびソース領域を有し、前記コントロールゲート領域と前記ソース領域との間にバイアスを印加して駆動される不揮発性記憶素子を有する電流源と、
前記電流源が出力する電流の電流量の温度依存性に由来する出力信号の温度依存性が前記不揮発性記憶素子によって調整され、かつ不揮発性記憶素子を有さない出力回路と
を備え、
前記不揮発性記憶素子は、電荷注入口を有し、
前記電荷注入口は、前記電流源が出力する電流の経路とは接していない領域に形成される
温度特性調整回路。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここでは一例として温度特性調整回路として使用する不揮発性記憶素子は、
図1に示す、フローティングゲート領域と、コントロールゲート領域とを備えたN型電界効果型トランジスタを例にとって説明するが、不揮発性記憶素子は電荷蓄積領域を持つトランジスタであれば、この構造に限るものではなく、またN型に限るものではない。
【0011】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態による電流源に備えられる不揮発性記憶素子Mは、半導体基板に形成されたPウェル領域10と、Pウェル領域10上に形成されたフローティングゲート領域FGと、フローティングゲート領域FG上に形成されたコントロールゲート領域CGとを備えている。また、不揮発性記憶素子Mは、フローティングゲート領域FGの下方の両側の一方に形成されたドレイン領域Dと、フローティングゲート領域FGの下方の両側の他方に形成されたソース領域Sとを備えている。ドレイン領域Dおよびソース領域Sは、Pウェル領域10に形成されている。不揮発性記憶素子Mは、素子分離領域41,42によって、同一の半導体基板に形成された他の素子と素子分離されている。
【0012】
フローティングゲート領域FGは、電荷保持領域21および絶縁体20で構成されている。すなわち、不揮発性記憶素子Mは、電荷保持領域21と、電荷保持領域21を取り囲んで配置された絶縁体20とを備えている。絶縁体20は、電荷保持領域21の下方に形成されたゲート絶縁膜22と、電荷保持領域21の側壁を酸化させて形成された側壁酸化膜23と、電荷保持領域21の上方に形成された上部絶縁膜24とで構成されている。ゲート絶縁膜22および側壁酸化膜23の周りにはサイドウォール25が形成されている。
【0013】
ゲート絶縁膜22には、トンネル絶縁膜221が形成されている。トンネル絶縁膜221は、ゲート絶縁膜22において相対的に膜厚が薄く形成された部分である。トンネル絶縁膜221が形成された領域が、電荷保持領域21に電荷を注入したり電荷保持領域21から電荷を放出したりする電荷注入口211となる。つまり、電荷保持領域21は、電荷を注入したり電荷を放出したりするための電荷注入口211を有している。
【0014】
コントロールゲート領域CGは、上部絶縁膜24上に形成されたポリシリコン膜31を有している。ポリシリコン膜31の周りには、上部絶縁膜24上に形成されたサイドウォール32が形成されている。
【0015】
ドレイン領域Dは、N型領域11と、N型領域11よりも不純物の濃度が高濃度のN型のN+領域12とを有している。N+領域12は、ドレイン領域Dと後述するコンタクトプラグ52とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0016】
ソース領域Sは、N型領域13と、N型領域13よりも不純物の濃度が高濃度のN型のN+領域14とを有している。N+領域14は、ソース領域Sと後述するコンタクトプラグ53とのオーミック接触を取るために設けられている。なお、ドレイン領域Dとソース領域Sは電流の流れる方向によって定義される。このため、
図1に示す不揮発性記憶素子Mにおいて想定されている電流に対して電流を流す方向を逆にした場合は、
図1中に示すドレイン領域Dがソース領域Sとなり、ソース領域Sがドレイン領域Dとなる。
【0017】
不揮発性記憶素子Mは、コントロールゲート領域CG、フローティングゲート領域FG、ドレイン領域Dおよびソース領域S上に形成された保護膜61を備えている。保護膜61には、コントロールゲート領域CGのポリシリコン膜31の一部を底面に露出する開口部が形成されている。この開口部には、コンタクトプラグ51が埋め込まれて形成されている。これにより、コンタクトプラグ51とコントロールゲート領域CGのポリシリコン膜31とが電気的に接続される。
【0018】
保護膜61には、ドレイン領域DのN+領域12の一部を底面に露出する開口部が形成されている。この開口部には、コンタクトプラグ52が埋め込まれている。これにより、コンタクトプラグ52とN+領域12とが電気的に接続される。また、保護膜61には、ソース領域SのN+領域14の一部を底面に露出する開口部が形成されている。この開口部には、コンタクトプラグ53が埋め込まれている。これにより、コンタクトプラグ53とN+領域14とが電気的に接続される。
【0019】
図示は省略するが、コンタクトプラグ51,52,53にはそれぞれ、保護膜61上に形成された配線が接続されている。コントロールゲート領域CG、ドレイン領域Dおよびソース領域Sは、コンタクトプラグ51,52,53によって配線と接続され、この配線から所定レベルの電圧が印加されるようになっている。
【0020】
不揮発性記憶素子Mの閾値電圧Vthはフローティングゲート領域FGに注入した電荷量で制御される。
図2(a)に示すように、不揮発性記憶素子Mのフローティングゲート領域FGには、電荷注入口211を介して電荷としての電子が注入される。なお、
図2(a)では、理解を容易にするため、不揮発性記憶素子Mの各構成要素の断面に対してハッチングの図示が省略されている。
図2(b)に示すように、フローティングゲート領域FGに電子を注入する場合には、例えばPウェル領域10(すなわちバックゲートB)およびドレイン領域Dを0Vに固定し、コントロールゲート領域CGに10V以上のパルス電圧Vppを印加する。これにより、
図2(a)中の上向き直線矢印で示すように、ドレイン領域Dから電荷注入口211を通って電荷保持領域21に電子が注入される。一方、
図2(c)に示すように、フローティングゲート領域FGから電子を放出する場合には、例えばコントロールゲート領域CGおよびPウェル領域10(すなわちバックゲートB)を0Vに固定し、ドレイン領域Dに10V以上のパルス電圧Vppを印加する。これにより、
図2(a)中の下向き直線矢印で示すように、電荷保持領域21から電荷注入口211を通ってドレイン領域Dに電子が放出される。このように、不揮発性記憶素子Mは、コントロールゲート領域CG、Pウェル領域10およびドレイン領域Dに印加する電圧を制御することにより、電荷注入口211を介して電荷の出し入れを行うことができる。不揮発性記憶素子Mは、電荷の出し入れにソース領域Sを使用しないため、ソース領域Sは所定の電圧に固定(例えば0V)してもよいし、フローティング状態としてもよい。
【0021】
次に、不揮発性記憶素子Mを用いた温度特性調整回路の電気特性について
図3から
図11を用いて説明する。
図3中に示すグラフの横軸は、電界効果型トランジスタのドレインソース間電圧Vdsを表し、縦軸は、電界効果型トランジスタのドレインソース間電流Idsを表している。
図4中から
図6中に示すグラフの横軸は、電界効果型トランジスタのゲートソース間電圧Vgsを表し、縦軸は、電界効果型トランジスタのドレインソース間電流Idsまたはドレインソース間電流Idsの平方根を表している。
【0022】
不揮発性記憶素子Mは、電界効果型トランジスタであるので、飽和領域と呼ばれるドレイン電圧の大きい領域では、
図3の概念図に示すように、不揮発性記憶素子Mに流れるドレインソース間電流Idsがドレイン電圧(すなわちドレインソース間電圧Vds)に依存しない「定電流特性」を示す。一方、
図4の概念図に示すように、不揮発性記憶素子Mに流れるドレインソース間電流Idsは、飽和領域であっても閾値電圧Vthよりもゲート電圧(すなわちゲートソース間電圧Vgs)を大きくすると、ゲート電圧の電圧値に比例して不揮発性記憶素子Mに流れるドレインソース間電流Idsの電流量が増えていく(
図4では√IdsがVgsに比例する様に表記している)。すなわち、不揮発性記憶素子Mに流れるドレインソース間電流Idsの電流量は、飽和領域ではゲート電圧にのみ依存し、閾値電圧Vthに対するゲートソース間電圧Vgsの大きさ(すなわちVgs−Vth)によって変わる。飽和領域におけるドレインソース間電流Idsは、以下の式(1)で表すことができる。
【0023】
【数1】
【0024】
式(1)において、Wはゲート幅、Lはゲート長、μはキャリア移動度、Coxはゲート絶縁膜容量を表している。
【0025】
次に、電界効果型トランジスタのドレイン電流の温度特性について説明する。式(1)で表わされる電界効果型トランジスタの閾値電圧Vthやキャリア移動度μは、温度Tの関数として、以下の式(2)および式(3)で表すことができる。
【0026】
【数2】
【0027】
【数3】
【0028】
式(2)および式(3)において、Trは室温、αは一般的には1.2〜2.0の無次元の定数、βは一般的には0.5〜3[mV/K]の定数である。
【0029】
すなわち、電界効果型トランジスタでは、温度が上がるほど、閾値電圧とキャリア移動度は共に下がっていく。電界効果型トランジスタの閾値電圧とキャリア移動度にこのような温度依存性があることで、電界効果型トランジスタのドレイン電流は、
図5の概念図に示したような温度依存性を示す。ここで、電界効果型トランジスタの閾値電圧およびキャリア移動度が共に温度に対して同じ方向に変化することで、電界効果型トランジスタのドレイン電流が温度に対して依存しないゲートソース間電圧Vgsのゲート電圧値Vαが存在する。すなわち、この温度依存性を示さないゲートソース間電圧Vgsのゲート電圧値Vαによって作られるドレインソース間電流Idsのドレイン電流値Iαには温度特性が発生しない。以下、電界効果型トランジスタが温度依存性を示さずに動作するゲートソース間電圧Vgsおよびドレインソース間電流Idsを動作点αとする。
【0030】
ここでドレインソース間電流Idsのドレイン電流値Iαよりも低い電流量となるゲートソース間電圧Vgsで電界効果型トランジスタを駆動した場合に流れるドレインソース間電流Idsの電流量は、正の温度特性を持つ。逆に、ドレインソース間電流Idsのドレイン電流値Iαよりも高い電流量となるゲートソース間電圧Vgsで電界効果型トランジスタを駆動した場合に流れるドレインソース間電流Idsの電流量は、負の温度特性を持つ。温度特性の絶対値の大きさは、駆動電流がドレインソース間電流Idsから離れた電流量(つまりゲートソース間電圧VgsがVαから離れた電圧)で電界効果型トランジスタが駆動されるほど大きくなる。なお、不揮発性記憶素子Mの場合は、上述したゲートソース間電圧Vgsとは、コントロールゲート電圧Vcgのことを意味している。
【0031】
本実施形態による温度特性調整回路は、不揮発性記憶素子Mを備えているため、あらかじめフローティングゲート領域FG内に電荷を注入しておくことで、動作点αを任意のコントロールゲート電圧Vcgにコントロールすることが可能である。したがって、温度特性調整回路で温度特性を調整する回路の用途に合わせた電圧において、温度特性調整回路を正/負どちらの温度特性を持たせることも可能である。
【0032】
図6は、
図1に示す不揮発性記憶素子Mのコントロールゲート領域CGに印加されるコントロールゲート電圧Vcgおよび温度に対するドレイン電流特性である。横軸は、コントロールゲート電圧Vcgを表し、縦軸はドレインソース間電流Idsを表している。特性C−40は−40℃でのドレイン電流特性を示し、特性C0は0℃でのドレイン電流特性を示し、特性C25は25℃でのドレイン電流特性を示し、特性C85は85℃でのドレイン電流特性を示し、特性C125は125℃でのドレイン電流特性を示している。なお、
図6に示すドレイン電流特性は、コントロールゲート電圧Vcgが十分大きい飽和領域での特性である。
【0033】
図7は、
図6に示す各温度のドレイン電流特性を25℃の時のドレイン電流量からの変化量で示している。横軸はコントロールゲート電圧Vcgを表し、縦軸はドレイン電流の変化量ΔIdsを表している。特性C−40は−40℃でのドレイン電流の変化量の特性を示し、特性C0は0℃でのドレイン電流の変化量の特性を示し、特性C25は25℃でのドレイン電流の変化量の特性を示し、特性C85は85℃でのドレイン電流の変化量の特性を示し、特性C125は125℃でのドレイン電流の変化量の特性を示している。
【0034】
図8は、
図6に示す各温度のドレイン電流特性を25℃の時のドレイン電流量からの変化率で示している。横軸はコントロールゲート電圧Vcgを表し、縦軸はドレイン電流変化率ΔIds/Ids@25℃をパーセントで表している。なお、「Ids@25℃」は25℃でのドレインソース間電流Idsのドレイン電流量を表している。特性C−40は−40℃でのドレイン電流の変化率の特性を示し、特性C0は0℃でのドレイン電流の変化率の特性を示し、特性C25は25℃でのドレイン電流の変化率の特性を示し、特性C85は85℃でのドレイン電流の変化率の特性を示し、特性C125は125℃でのドレイン電流の変化率の特性を示している。電流源としての用途を想定する場合、温度に対する電流変化率が重要になり、
図8に示すように、動作点αでは温度に対する電流変化率がゼロとなる。動作点αよりもコントロールゲート電圧Vcgが低い側は、徐々に弱反転領域での駆動となっていくため、電流変化率が急激に増加していく。したがって、不揮発性記憶素子を用いて温度特性の小さい定電流源を実現する場合、動作点αよりもコントロールゲート電圧Vcgが大きく低い領域では駆動してはならない。
【0035】
図9は、
図8に示すコントロールゲート電圧Vcgの代表値(−0.5V、−0.2V、0V、0.5Vおよび2V)におけるドレイン電流変化率(
図8の縦軸値)を温度に対して示したグラフである。横軸は温度を表し、縦軸はドレイン電流変化率ΔIds/Ids@25℃をパーセントで表している。
図9中に示す◇印を結ぶ直線は−0.5Vのコントロールゲート電圧Vcgにおけるドレイン電流変化率の特性を示し、□印を結ぶ直線は−0.2Vのコントロールゲート電圧Vcgにおけるドレイン電流変化率の特性を示し、△印を結ぶ直線は0Vのコントロールゲート電圧Vcgにおけるドレイン電流変化率の特性を示し、×印を結ぶ直線は0.5Vのコントロールゲート電圧Vcgにおけるドレイン電流変化率の特性を示し、*印を結ぶ直線は2.0Vのコントロールゲート電圧Vcgにおけるドレイン電流変化率の特性を示している。また、
図9中の右側に示す数式は、各特性の近似直線の数式であり、数式中の「x」は横軸の温度を示し、「y」は縦軸のドレイン電流変化率を示している。
【0036】
図9から分かるように、−40℃から125℃までの領域では、ドレイン電流変化率ΔIds/Ids@25℃は、温度に対して1次関数的に変化するとみなせる。以下、温度に対するドレイン電流変化率ΔIds/Ids@25℃の変化を1次関数で表したときの傾きを温度係数(単位:%/℃)と呼ぶ。
図9に示す各特性を例にとると、−0.5Vのコントロールゲート電圧Vcgでの温度係数は0.73(%/℃)であり、−0.2Vのコントロールゲート電圧Vcgでの温度係数は0.16(%/℃)であり、0Vのコントロールゲート電圧Vcgでの温度係数は0.00(%/℃)であり、0.5Vのコントロールゲート電圧Vcgでの温度係数は0.20(%/℃)であり、2.0Vのコントロールゲート電圧Vcgでの温度係数は0.37(%/℃)である。
【0037】
図10は、各コントロールゲート電圧Vcgにおけるドレイン電流の温度係数を示すグラフである。横軸はコントロールゲート電圧Vcgを表し、縦軸は温度係数を表している。不揮発性記憶素子Mの動作点αにおけるゲート電圧値Vαは0Vである。コントロールゲート電圧Vcgのゲート電圧値Vαが0Vでの動作点αにおける不揮発性記憶素子Mのドレインソース間電流Idsのドレイン電流値Iαは、約33nA(
図6参照)であり、100nA未満である。
【0038】
図11は、25℃でのドレインソース間電流Idsのドレイン電流量に対する温度係数を示すグラフである。横軸は、「Ids@25℃」を表し、縦軸は温度係数を表している。すなわち、
図11の横軸は
図10の横軸(コントロールゲート電圧Vcg)をドレインソース間電流Idsの表記に変換したものである。
図11に示すように、25℃でのドレインソース間電流Idsのドレイン電流量が、動作点αでのドレイン電流量より小さいと温度係数は正の値をとり、動作点αでのドレイン電流量より大きいと温度係数は負の値をとる。また、25℃でのドレインソース間電流Idsのドレイン電流量が大きくなるほど、温度係数は単調に減少する。
【0039】
図12は、各コントロールゲート電圧Vcgにおけるドレインソース間電流Idsの温度係数を示し、温度特性を変更した場合のグラフである。横軸はコントロールゲート電圧Vcgを表し、縦軸は温度係数を表している。特性CTは温度特性変更前の特性(
図10に示す特性)を示し、特性CT+は温度特性を正の方向に少しずらした場合を示し、特性CT−は温度特性を負の方向に少しずらした場合を示している。
【0040】
例えばコントロールゲート電圧Vcgを0Vで駆動させる回路で、流れる電流量に正の温度特性を持たせたい場合は、
図12中に特性CT+で示すように、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧が上がる方向にフローティングゲート領域内に電荷を注入する。逆に、例えばコントロールゲート電圧Vcgを0Vで駆動させる回路で、流れる電流量に負の温度特性を持たせたい場合は、
図12中に特性CT−で示すように、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧が下がる方向にフローティングゲート領域内に電荷を注入する。このように温度特性を調整することで回路の用途に合わせた電圧において、正/負どちらの温度特性を持たせることが可能になる。
【0041】
次に、本実施形態による温度特性調整回路における電流量の調整方法について説明する。まず、事前に任意のサイズ(例えば単位面積あたり)と任意の温度(例えば25℃)において、不揮発性記憶素子Mの各電流値に対する温度係数(
図11に相当するデータ)を設計パラメータとして取得しておく。その上で、得たい温度係数を実現できる単位面積あたりの電流値を見積もり、その情報を元に、実回路で流したい電流量を実現できる不揮発性記憶素子Mのサイズ(ゲート長、ゲート幅)を決定する。このようにすることで、得たい温度特性と電流量を同時に実現できる不揮発性記憶素子Mのサイズが決定する。以降、不揮発性記憶素子Mをゲートソース間電圧Vgsが0V、すなわちゲート領域とソース領域をショートして駆動する温度特性調整回路を例に取って、電流調整方法を
図13から
図21を用いて説明する。
【0042】
図13に示すように、本実施形態における温度特性調整回路1は、コントロールゲート領域CGおよびソース領域Sを有しコントロールゲート領域CGとソース領域Sとの間にバイアスを印加して駆動される不揮発性記憶素子Mを有する電流源と、この電流源が出力する電流の電流量の温度依存性に由来する出力信号の温度依存性が不揮発性記憶素子Mによって調整され、かつ不揮発性記憶素子を有さない出力回路6とを備えている。より具体的に、温度特性調整回路1は、少なくとも1つ以上の不揮発性記憶素子Mを備え、不揮発性記憶素子Mは、例えば高電圧が供給される高電圧供給端子Vddと低電圧が供給される低電圧供給端子Vssとの間に配置する。以下、符号「Vdd」は、高電圧供給端子Vddから出力される高電圧の符号としても使用し、符号「Vss」は、低電圧供給端子Vssから出力される低電圧の符号としても使用する。不揮発性記憶素子Mのドレイン領域Dは高電圧供給端子Vddに接続され、ソース領域Sは電流の供給先である出力回路6に接続されている。出力回路6には、出力電圧や出力電流が出力される出力端子8が接続されている。不揮発性記憶素子Mのソース領域Sおよびコントロールゲート領域CGは互いに接続されている。なお、
図13に示した構成は一例であり、不揮発性記憶素子Mを用いた電流源は、必ずしも高電圧供給端子Vddと出力回路6との間に配置される必要はない。
【0043】
出力回路6として、例えば電流電圧変換回路などによる電圧出力を行う回路や、カレントミラー回路などによる電流出力を行う回路が例示される。
図14に示すように、電流電圧変換回路で構成された出力回路6は、例えば抵抗素子Rを有している。抵抗素子Rの一方の端子は不揮発性記憶素子Mのソース領域Sおよびコントロールゲート領域CG並びに出力端子8に接続されている。抵抗素子Rの他方の端子は低電圧供給端子Vssに接続されている。抵抗素子Rで構成された電流電圧変換回路は、不揮発性記憶素子Mを有する電流源から供給される電流を電圧に変換して出力端子8から出力する。電流源は、温度特性を調整した電流を抵抗素子Rに流す。このため、温度特性調整回路1は、温度特性を調整した電圧を出力端子8から出力できる。このように、出力回路6は、電圧の出力信号を出力端子8から出力する。
【0044】
図15に示すように、カレントミラー回路で構成された出力回路6は、例えばゲート端子Gが互いに接続されたトランジスタQ1およびトランジスタQ2を有している。トランジスタQ1およびトランジスタQ2は、例えばN型電界効果型トランジスタである。トランジスタQ1のドレイン端子Dは、トランジスタQ1,Q2のそれぞれのゲート端子G、不揮発性記憶素子Mのソース領域Sおよびコントロールゲート領域CGに接続されている。トランジスタQ1のソース端子Sは低電圧供給端子Vssに接続されている。トランジスタQ2のドレイン端子Dは、出力端子8に接続されている。トランジスタQ2のソース端子は、低電圧供給端子Vssに接続されている。2つのトランジスタQ1,Q2で構成されたカレントミラー回路は、不揮発性記憶素子Mを有する電流源から供給される電流を基準電流として出力端子8に電流を出力する。電流源は、温度特性を調整した電流をカレントミラー回路に流す。このため、温度特性調整回路1は、温度特性を調整した電圧を出力端子8から出力できる。このように、出力回路6は、電流の出力信号を出力端子8から出力する。
【0045】
次に、電流源からの電流が正の温度特性となるように調整する場合について、
図16から
図19を用いて説明する。
図16には、
図12に示す特性CT+のみが図示されている。
【0046】
例えば温度特性調整回路は、出力端子8から出力する出力信号に温度特性を持たせたい回路であると仮定する。また、その出力信号の温度特性を実現するために電流源から出力回路6に供給する電流には+0.3%/℃の温度特性が必要であると仮定する。このとき、不揮発性記憶素子Mを有する電流源は、
図16に示すように、動作点α+の状態(コントロールゲート電圧Vcgが0Vで温度係数が+0.3%/℃となる状態)になるように調整されていることが必要である。不揮発性記憶素子Mは、コントロールゲート領域CGおよびフローティングゲート領域FGを有しており、不揮発性記憶素子Mは、書き込み消去ができ、書き込み状態を長期間にわたって保持できるため、動作点α+の状態とすることを実現できる。
【0047】
図17に示すように、例えば不揮発性記憶素子Mへの書き込みが可能な温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mのドレイン領域Dに一端子が接続されたスイッチSW1を備えている。スイッチSW1の他端子の1つは高電圧供給端子Vddに接続され、スイッチSW1の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW1の他端子のさらに他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。スイッチSW1を適宜切り替えることにより、高電圧Vdd、低電圧Vssおよびパルス電圧Vppのいずれか1つを不揮発性記憶素子Mのドレイン領域D印加できるようになっている。
【0048】
本実施形態による温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mのソース領域Sと出力回路との間に直列接続されたスイッチSW2を備えている。
【0049】
温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mのコントロールゲート領域CGと不揮発性記憶素子Mのソース領域Sとの間に直列接続されたスイッチSW3を備えている。
【0050】
温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mのコントロールゲート領域CGに接続された一端子を有するスイッチSW4と、スイッチSW4の他端子に一端子が接続されたスイッチSW5を備えている。スイッチSW5の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW5の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。温度特性調整回路3は、スイッチSW4が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW5を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vppおよび低電圧Vssのいずれか一方を不揮発性記憶素子Mのコントロールゲート領域CGに印加できるようになっている。
【0051】
図17に示すように、不揮発性記憶素子Mが電流源となって出力回路に電流を供給する場合には、スイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替える。
【0052】
スイッチSW1:高電圧供給端子Vdd側
スイッチSW2:接続状態(ショート状態)
スイッチSW3:接続状態(ショート状態)
スイッチSW4:開放状態(オープン状態)
スイッチSW5:任意(
図17では低電圧Vss側)
【0053】
温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mが動作点α+(
図16参照)で動作するときにスイッチSW1からスイッチSW5を
図17に示す切り替え状態とすると、不揮発性記憶素子Mから出力回路に+0.3%/℃の温度特性をもった電流を供給する。つまり、温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mの各端子を所望の電位に設定するスイッチSW1〜SW5を含むスイッチ部を備えている。
【0054】
図18に示すように、温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mを動作点α+で動作させるための書き換え時には、スイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子Mの調整前の閾値電圧が調整したい閾値電圧よりも低い場合を例に取っている。
【0055】
スイッチSW1:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW2:開放状態(オープン状態)
スイッチSW3:開放状態(オープン状態)
スイッチSW4:接続状態(ショート状態)
スイッチSW5:パルス電圧Vpp側
【0056】
このため、不揮発性記憶素子Mのドレイン領域Dに低電圧供給端子Vssが印加され、コントロールゲート領域CGにパルス電圧Vppが印加されるので、電荷注入口211を介してドレイン領域Dからフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)に電子が注入される。これにより、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧が高くなる。逆に、不揮発性記憶素子Mのドレイン領域Dにパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲート領域CGに低電圧供給端子Vssが印加された場合は、電荷注入口211を介してフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)からドレイン領域Dに電子が放出される。これにより、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧が低くなる。
【0057】
図19は、
図17に示す電流源(不揮発性記憶素子M)の実際の出力電流を確認する状態を示す図である。この状態ではスイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替え、ソース領域Sと低電圧Vssの間に電流計4を直列接続させて出力電流を確認する。
【0058】
スイッチSW1:高電圧供給端子Vdd側
スイッチSW2:開放状態(オープン状態)
スイッチSW3:接続状態(ショート状態)
スイッチSW4:開放状態(オープン状態)
スイッチSW5:任意(
図19では低電圧Vss側)
【0059】
図18に示す書き込み状態と、
図19に示す確認状態とを繰り返し実施し、電流源としての所望の電流および温度係数が得られたところで止める。これにより、不揮発性記憶素子Mの出力電流の調整が完了し、その後、
図17に示す状態にスイッチSW1〜SW5を切り替えることにより、電流源としての不揮発性記憶素子Mは、+0.3%/℃の温度特性をもった電流を出力回路6へ供給することが出来る。
【0060】
次に、電流源からの電流が負の温度特性となるように調整する場合について、
図17および
図19を参照しつつ
図20および
図21を用いて説明する。
図20には、
図12に示す特性CT−に対応し、動作点α−の温度係数が−0.3%/℃である特性CT−が図示されている。
【0061】
例えば出力信号の温度特性を実現するために電流源には−0.3%/℃の温度特性が必要である状況を仮定する。このとき、電流源となる不揮発性記憶素子Mは、
図20に示すように、動作点α−の状態(コントロールゲート電圧Vcgが0Vで温度係数が−0.3%/℃となる状態)になるように調整されていることが必要である。不揮発性記憶素子Mは、コントロールゲート領域CGおよびフローティングゲート領域FGを有しており、不揮発性記憶素子Mは、書き込み消去ができ、書き込み状態を長期間にわたって保持できるため、動作点α−の状態とすることを実現できる。
【0062】
温度特性調整回路3の不揮発性記憶素子Mが動作点α−で動作するときにスイッチSW1〜SW5を
図17に示す切り替え状態とすると、不揮発性記憶素子Mから出力回路6に−0.3%/℃の温度特性をもった電流を供給できる。
【0063】
図21に示すように、温度特性調整回路3は、不揮発性記憶素子Mを動作点α−で動作させるための書き換え時には、スイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子Mの調整前の閾値電圧が調整したい閾値電圧よりも高い場合を例に取っている。
【0064】
スイッチSW1:パルス電圧Vpp側
スイッチSW2:開放状態(オープン状態)
スイッチSW3:開放状態(オープン状態)
スイッチSW4:接続状態(ショート状態)
スイッチSW5:低電圧供給端子Vss側
【0065】
このため、不揮発性記憶素子Mのドレイン領域Dにパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲート領域CGに低電圧Vssが印加されるので、電荷注入口211を介してフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)からドレイン領域Dに電子が放出される。これにより、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧が低くなる。逆に、不揮発性記憶素子Mのドレイン領域Dに低電圧Vssが印加され、コントロールゲート領域CGにパルス電圧Vppが印加された場合は、電荷注入口211を介してドレイン領域Dからフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)に電子が注入される。これにより、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧が高くなる。
【0066】
その後、
図19を用いて説明した方法で電流源としての不揮発性記憶素子Mの出力電流を確認する。
図21に示す書き込み状態と、
図19に示す確認状態とを繰り返し実施し、電流源としての所望の電流および温度係数が得られたところで止める。これにより、不揮発性記憶素子Mの出力電流の調整が完了し、その後、
図17に示す状態にスイッチSW1〜SW5を切り替えることにより、電流源としての不揮発性記憶素子Mは、−0.3%/℃の温度特性をもった電流を出力回路6へ供給することが出来る。
【0067】
図17から
図21に示すように、温度特性調整回路3は、スイッチSW1〜SW5を適切に切り替えることにより、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧を所望の温度特性をもった電流量が得られる値に書き換え、最終的に
図17に示す状態で所望の温度特性をもった電流量を出力回路へ出力することができる。以上説明したように、本実施形態によれば、温度特性調整回路3から得られる出力の温度特性を自由にコントロールすることが出来る。
【0068】
本実施形態による温度特性調整回路1,3では、出力回路6の出力信号の温度特性を正・負両方様々に調整できることを特徴としている。温度特性調整回路1,3の電流源に使用される半導体素子に不揮発性記憶素子Mが用いられている。これによって、電流源が出力する電流の電流値の調整が可能になるため、極めて小さい特性バラつきで、正・負両方様々な温度特性に調整することができるようになり、且つ、簡易的な回路構成で、チップ面積の拡大や消費電流を抑制できる。
【0069】
また、本実施形態による温度特性調整回路1,3は、電流源および出力回路を含み、この出力回路の出力信号が温度依存性を持つ回路で、かつ、その出力信号の温度依存性が回路内を流れる電流量の温度依存性に由来している回路である。温度特性調整回路1,3は、不揮発性記憶素子Mを電流源として使用することで、出力回路6が出力する出力信号の温度特性を自由にコントロールすることができる。また、本実施形態による温度特性調整回路1,3は、非常に単純な回路で構成することが可能であるため、回路規模や回路内で消費する電流を最小限にとどめることが出来る。
【0070】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態による温度特性調整回路について
図22から
図27を用いて説明する。本実施形態による不揮発性記憶素子は、
図1に示す不揮発性記憶素子Mと同一の構造を有する不揮発性記憶素子Mwと、
図22に示す不揮発性記憶素子Mrとを一組とし、不揮発性記憶素子Mwおよび不揮発性記憶素子Mrのそれぞれのフローティングゲート領域同士が接続され、不揮発性記憶素子Mwおよび不揮発性記憶素子Mrのそれぞれのコントロールゲート領域同士が接続された構成を有している。
【0071】
図22に示すように、不揮発性記憶素子Mrは、電荷注入口を有していない点を除いて、不揮発性記憶素子Mwと同様の構成を有している。不揮発性記憶素子Mrは、電荷保持領域71と、電荷保持領域71を取り囲んで配置された絶縁体70とを備えている。絶縁体70は、電荷保持領域71の上方に形成された上部絶縁膜74と、電荷保持領域71の側壁に形成された側壁酸化膜73と、電荷保持領域71の下方に形成されたゲート絶縁膜72とを有している。ゲート絶縁膜72には、トンネル絶縁膜が形成されておらず、膜厚が略一定である。
【0072】
図23に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子Mは、
図1に示す不揮発性記憶素子Mと同一の構造を有する不揮発性記憶素子Mwと、
図22に示す不揮発性記憶素子Mrとを備えている。不揮発性記憶素子Mwのコントロールゲート領域CGと、不揮発性記憶素子Mrのコントロールゲート領域CGとは接続されている。不揮発性記憶素子Mwのフローティングゲート領域FGと、不揮発性記憶素子Mrのフローティングゲート領域FGとは接続されている。
【0073】
図24に示すように、本実施形態による温度特性調整回路5は、少なくとも1つ以上の不揮発性記憶素子Mを備えている。不揮発性記憶素子Mは、
図23に示す不揮発性記憶素子Mと同一の構成を有している。不揮発性記憶素子Mは、不揮発性記憶素子Mw,Mrを備えている。不揮発性記憶素子Mwは、
図1に示す不揮発性記憶素子Mと同一の構成を有し、不揮発性記憶素子Mrは、
図22に示す不揮発性記憶素子Mrと同一の構成を有している。したがって、以下、必要に応じて、不揮発性記憶素子Mwの構成の説明において
図1を参照し、不揮発性記憶素子Mrの構成の説明において
図22を参照する。
【0074】
温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子(第一不揮発性記憶素子の一例)Mwと、不揮発性記憶素子(第二不揮発性記憶素子の一例)Mrを備えている。不揮発性記憶素子Mrは、不揮発性記憶素子Mwのゲート領域に設けられたコントロールゲート領域(第一コントロールゲート領域の一例)CGと電気的に接続されたコントロールゲート領域(第二コントロールゲート領域の一例)CGを有している。また、不揮発性記憶素子Mrは、不揮発性記憶素子Mwの電荷保持領域(第一電荷保持領域の一例、
図1参照)と電気的に接続された電荷保持領域(第二電荷保持領域の一例、
図22参照)と、電荷保持領域に接触して形成されたゲート絶縁膜(
図22参照)とを有している。不揮発性記憶素子Mwに設けられた電荷注入口211(
図1参照)は、不揮発性記憶素子Mrに形成される電流経路に接していない領域に形成されている。不揮発性記憶素子Mwに設けられた電荷注入口は、不揮発性記憶素子Mrのドレイン領域Dおよびソース領域Sを含む電流パスと、その電流パスとは接していない領域に形成されている。本実施形態では、不揮発性記憶素子Mw,Mrは電流源として用いられ、この電流源が出力する電流の経路は不揮発性記憶素子Mrのドレイン領域Dおよびソース領域Sを含む電流パスとなる。このため、不揮発性記憶素子Mwに設けられた電荷注入口211は、この電流源が出力する電流の経路とは接していない領域に形成される。
【0075】
不揮発性記憶素子Mに備えられた不揮発性記憶素子Mwのコントロールゲート領域CGと、不揮発性記憶素子Mrのコントロールゲート領域CGとは接続されている。不揮発性記憶素子Mwのフローティングゲート領域FGと、不揮発性記憶素子Mrのフローティングゲート領域FGとは接続されている。
【0076】
不揮発性記憶素子Mrは、例えば高電圧が供給される高電圧供給端子Vddと低電圧が供給される低電圧供給端子Vssとの間に配置する。より具体的には、不揮発性記憶素子Mrのドレイン領域Dは高電圧供給端子Vddに接続され、ソース領域Sは電流の供給先である出力回路6に接続されている。不揮発性記憶素子Mrのソース領域Sおよびコントロールゲート領域CGは互いに接続されている。
【0077】
不揮発性記憶素子Mwは、フローティングゲート領域FGの下方の両側の一方に設けられた第一領域A1と、この両側の他方に設けられた第二領域A2とを有している。本実施例における温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子Mwの第一領域A1に一端子が接続されたスイッチSW1を備えている。スイッチSW1の他端子の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW1の他端子の他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。温度特性調整回路5は、スイッチSW1を適宜切り替えることにより、低電圧Vssおよびパルス電圧Vppのいずれか一方を不揮発性記憶素子Mwの第一領域A1に印加できるようになっている。
【0078】
温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子Mrのソース領域Sと出力回路との間に直列接続されたスイッチSW2を備えている。
【0079】
温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子Mwのコントロールゲート領域CGと不揮発性記憶素子Mrのソース領域Sとの間に直列接続されたスイッチSW3を備えている。
【0080】
温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子Mwのコントロールゲート領域CGに接続された一端子を有するスイッチSW4と、スイッチSW4の他端子に一端子が接続されたスイッチSW5を備えている。スイッチSW5の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW5の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。温度特性調整回路5は、スイッチSW4が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW5を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vppおよび低電圧Vssのいずれか一方を不揮発性記憶素子Mのコントロールゲート領域CGに印加できるようになっている。
【0081】
不揮発性記憶素子Mwの第二領域A2は、電流源における不揮発性記憶素子Mのソース領域Sのように接続されておらず、フローティング状態となっている。なお、不揮発性記憶素子Mwは不揮発性記憶素子Mrのフローティングゲート領域FGへの電荷注入のために存在する領域であり、トランジスタとして電流を流さない。そのため、不揮発性記憶素子Mwは、ソース領域Sやドレイン領域Dを有している必要はなく、電荷注入口211をもった構造であればその形態は問わない。
【0082】
図24に示すように、温度特性調整回路5では、電荷注入時には、不揮発性記憶素子Mwを通ってフローティングゲート領域FGに電荷が注入される。温度特性調整回路5を動作させる時には不揮発性記憶素子Mrを通って電流が流れる。温度特性調整回路5では、不揮発性記憶素子M(すわなち不揮発性記憶素子Mw,Mr)は第1実施形態と同様に所望の温度特性をもち、かつ所望の電流量を供給できる電流源となっている。
【0083】
図24に示すように、温度特性調整回路5が出力回路6に電流を供給する場合には、スイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替える。
【0084】
スイッチSW1:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW2:接続状態(ショート状態)
スイッチSW3:接続状態(ショート状態)
スイッチSW4:開放状態(オープン状態)
スイッチSW5:任意(
図24では低電圧Vss側)
【0085】
本実施形態では、不揮発性記憶素子Mが所望の温度特性をもち、かつ所望の電流量を供給できる電流源のときにスイッチSW1〜SW5を
図24に示す切り替え状態とすると、不揮発性記憶素子Mから出力回路に所望の温度特性をもった電流を供給する。
【0086】
次に、電流源からの電流が正の温度特性となるように調整する場合について
図16、
図24を参照しつつ
図25および
図26を用いて説明する。
【0087】
第1実施形態と同様に、例えばこの温度特性調整回路5は、出力端子8から出力する出力信号に温度特性を持たせたい回路であると仮定し、その出力信号の温度特性を実現するために電流源から出力回路6に供給する電流には+0.3%/℃の温度特性が必要であると仮定する。このとき、電流源となる不揮発性記憶素子Mrは、
図16に示すように動作点が動作点α+(コントロールゲート電圧Vcgが0Vで温度係数が+0.3%/℃となる動作点)になるように調整されていることが必要である。
【0088】
図25に示すように、温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子Mを動作点α+で動作させるための書き換え時には、スイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子Mの調整前の閾値電圧が調整したい閾値電圧よりも低い場合を例に取っている。
【0089】
スイッチSW1:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW2:開放状態(オープン状態)
スイッチSW3:開放状態(オープン状態)
スイッチSW4:接続状態(ショート状態)
スイッチSW5:パルス電圧Vpp側
【0090】
このため、不揮発性記憶素子Mwの第一領域A1に低電圧供給端子Vssが印加され、コントロールゲート領域CGにパルス電圧Vppが印加されるので、電荷注入口211を介して第一領域A1からフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)に電子が注入される。これにより、不揮発性記憶素子Mwの閾値電圧が高くなる。逆に、不揮発性記憶素子Mwの第一領域A1にパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲート領域CGに低電圧供給端子Vssが印加された場合は、電荷注入口211を介してフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)から第一領域A1に電子が放出される。これにより、不揮発性記憶素子Mwの閾値電圧が低くなる。
【0091】
図26は、
図24に示す電流源(不揮発性記憶素子M)の実際の出力電流を確認する状態を示す図である。この状態ではスイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替え、不揮発性記憶素子Mrのソース領域Sと低電圧Vssの間に電流計4を直列接続させて出力電流を確認する。
【0092】
スイッチSW1:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW2:開放状態(オープン状態)
スイッチSW3:接続状態(ショート状態)
スイッチSW4:開放状態(オープン状態)
スイッチSW5:任意(
図24では低電圧Vss側)
【0093】
図25に示す書き込み状態と、
図26に示す確認状態を繰り返し実施し、電流源としての所望の電流および温度係数が得られたところで止める。これにより、不揮発性記憶素子Mの出力電流の調整が完了し、その後、
図24に示す状態にスイッチSW1〜SW5を切り替えることにより、不揮発性記憶素子Mは、+0.3%/℃の温度特性をもった電流を出力回路6へ供給することが出来る。
【0094】
次に、電流源からの電流が負の温度特性となるように調整する場合について
図20および
図24を参照しつつ
図27を用いて説明する。
【0095】
例えば出力信号の温度特性を実現するために電流源には−0.3%/℃の温度特性が必要である状況を仮定する。このとき、電流源となる不揮発性記憶素子Mは、
図20に示すように、動作点が動作点α−(コントロールゲート電圧Vcgが0Vで温度係数が−0.3%/℃となる動作点)になるように調整されていることが必要である。
【0096】
図24に示す温度特性調整回路5の不揮発性記憶素子Mrが動作点α−で動作するときにスイッチSW1〜SW5を
図24に示す切り替え状態とすると、不揮発性記憶素子Mから出力回路6に−0.3%/℃の温度特性をもった電流を供給する。
【0097】
図27に示すように、温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子Mを動作点α−で動作させるための書き換え時には、スイッチSW1〜SW5を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子Mの調整前の閾値電圧が調整したい閾値電圧よりも高い場合を例に取っている。
【0098】
スイッチSW1:パルス電圧Vpp側
スイッチSW2:開放状態(オープン状態)
スイッチSW3:開放状態(オープン状態)
スイッチSW4:接続状態(ショート状態)
スイッチSW5:低電圧供給端子Vss側
【0099】
このため、不揮発性記憶素子Mwの第一領域A1にパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲート領域CGに低電圧Vssが印加されるので、電荷注入口211を介してフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)から第一領域A1に電子が放出される。これにより、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧が低くなる。逆に、不揮発性記憶素子Mwの第一領域A1に低電圧Vssが印加され、コントロールゲート領域CGにパルス電圧Vppが印加された場合は、電荷注入口211を介して第一領域A1からフローティングゲート領域FG(電荷保持領域)に電子が注入される。これにより、不揮発性記憶素子Mwの閾値電圧が高くなる。
【0100】
その後、
図26を用いて説明した方法で電流源としての不揮発性記憶素子Mの出力電流を確認する。
図27に示す書き込み状態と、
図26に示す確認状態とを繰り返し実施し、電流源としての所望の電流および温度係数が得られたところで止める。これにより、不揮発性記憶素子Mの出力電流の調整が完了し、その後、
図24に示した状態にスイッチSW1〜SW5を切り替えることにより、電流源としての不揮発性記憶素子Mは、−0.3%/℃の温度特性をもった電流を出力回路6へ供給することが出来る。
【0101】
図24から
図27に示すように、温度特性調整回路5は、スイッチSW1〜SW5を適切に切り替えることにより、不揮発性記憶素子Mの閾値電圧を所望の温度特性をもった電流量が得られる値に書き換え、最終的に
図24に示す状態で所望の温度特性をもった電流量を出力回路6へ出力することができる。以上説明したように、本実施形態によれば、温度特性調整回路5から得られる出力の温度特性を自由にコントロールすることが出来る。
また、本実施形態による温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子Mwのフローティングゲート領域FGの電荷量を調整して閾値電圧を調整できるので、上記第1実施形態による温度特性調整回路3と同様の効果が得られる。
【0102】
また、本実施形態における温度特性調整回路5は、
図23に示す構成の不揮発性記憶素子Mを備えることにより、電荷注入時および電荷放出時の電流経路と、温度特性調整回路5の動作時の電流経路とを分離できる。これにより、温度特性調整回路5は、不揮発性記憶素子の予期せぬ書き換えを防止し、信頼性の向上を図ることができる。
【0103】
以上説明したとおり、上記第1および第2実施形態による温度特性調整回路は、不揮発性記憶素子を備える高品質アナログ回路である。