(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗布膜のリンスが、前記塗布膜において、前記Si化合物(B)の加水分解物の脱水縮合反応が進行している間に行われる、請求項1又は2に記載の半導体基板の製造方法。
前記塗布膜のリンスが、前記Si化合物(B)の脱水縮合物が、リンスに使用される前記有機溶剤に溶解性を示す間に行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる半導体基板の製造方法は、
スピンコーターを用いて、不純物拡散成分(A)を拡散させる対象である半導体基板I上に拡散剤組成物を塗布して30nm以下の膜厚の塗布膜を形成することと、
塗布膜を有機溶剤によりリンスすることと、
拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)を半導体基板Iに拡散させることと、を含み、
拡散剤組成物が、不純物拡散成分(A)と、加水分解によりシラノール基を生成し得るSi化合物(B)と、を含む。
以下30nmの以下の膜厚の塗布膜を形成する工程を、「塗布工程」とも記し、有機溶剤によるリンスを行う工程を「リンス工程」とも記し、不純物拡散成分(A)を拡散させる工程を「拡散工程」とも記す。
また、本明細書及び特許請求の範囲では、不純物拡散成分(A)の拡散処理を施される対象について「半導体基板I」と記し、不純物拡散成分(A)が拡散された基板について「半導体基板」と記す。
【0014】
そして、拡散剤組成物の塗布と、塗布膜のリンスとが、スピンコーターが備える同一のカップ内において半導体基板Iをカップから取り出すことなく連続して行われる。
また、拡散剤組成物は、不純物拡散成分(A)と、加水分解によりシラノール基を生成し得るSi化合物(B)とを含む。
上記特定の成分を含む拡散剤組成物を、スピンコーターを用いて半導体基板I上に塗布する場合、拡散剤組成物の組成によっては、極薄い塗布膜を形成しにくい場合があった。
【0015】
しかし、拡散剤組成物の塗布と、塗布膜のリンスとが、スピンコーターが備える同一のカップ内において半導体基板Iをカップから取り出すことなく連続して行うと、塗布膜をリンスにより良好に薄膜化することができる。その結果、極微細な空隙をその表面に有するような半導体基板Iを用いる場合でも、空隙を含む半導体基板Iの表面全面に、拡散剤組成物を均一に塗布でき、これにより、半導体基板Iの表面全面に、不純物拡散成分(A)を均一に拡散させることができる。
以下、塗布工程、リンス工程、及び拡散工程について順に説明する。
【0016】
≪塗布工程≫
塗布工程では、半導体基板I上に拡散剤組成物を塗布して30nm以下の膜厚の塗布膜を形成する。以下、塗布工程について、拡散剤組成物、半導体基板I、塗布方法の順に説明する。
【0017】
<拡散剤組成物>
拡散剤組成物としては、不純物拡散成分(A)と、加水分解によりシラノール基を生成し得るSi化合物(B)とを含む。本明細書においてシラノール基を生成し得るSi化合物(B)を、加水分解性シラン化合物(B)とも記す。以下、拡散剤組成物が含む、必須又は任意の成分について説明する。
【0018】
〔不純物拡散成分(A)〕
不純物拡散成分(A)は、従来から半導体基板へのドーピングに用いられている成分であれば特に限定されず、n型ドーパントであっても、p型ドーパントであってもよい。n型ドーパントとしては、リン、ヒ素、及びアンチモン等の単体、並びにこれらの元素を含む化合物が挙げられる。p型ドーパントとしては、ホウ素、ガリウム、インジウム、及びアルミニウム等の単体、並びにこれらの元素を含む化合物が挙げられる。
【0019】
不純物拡散成分(A)としては、入手の容易性や取扱いが容易であることから、リン化合物、ホウ素化合物、又はヒ素化合物が好ましい。好ましいリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ジ亜リン酸、ポリリン酸、及び五酸化二リンや、亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、亜リン酸トリス(トリアルキルシリル)、及びリン酸トリス(トリアルキルシリル)等が挙げられる。好ましいホウ素化合物としては、ホウ酸、メタホウ酸、ボロン酸、過ホウ酸、次ホウ酸、及び三酸化二ホウ素や、ホウ酸トリアルキルが挙げられる。好ましいヒ素化合物としては、ヒ酸、トリス(ジアルキルアミノ)ヒ素、及びヒ酸トリアルキルが挙げられる。
【0020】
リン化合物としては、亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、亜リン酸トリス(トリアルキルシリル)、及びリン酸トリス(トリアルキルシリル)が好ましく、その中でもリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、及び亜リン酸トリス(トリメトキシシリル)が好ましく、リン酸トリメチル、亜リン酸トリメチル、及びリン酸トリス(トリメチルシリル)がより好ましく、リン酸トリメチルが特に好ましい。
【0021】
ホウ素化合物としては、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、及びトリエチルアミンボランが好ましい。
【0022】
ヒ素化合物としては、ヒ酸、トリス(ジメチルアミノ)ヒ素、トリエトキシヒ素、及びトリ−n−ブトキシヒ素が好ましい。
【0023】
拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の含有量は特に限定されない。拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の含有量は、不純物拡散成分(A)中に含まれる、リン、ヒ素、アンチモン、ホウ素、ガリウム、インジウム、及びアルミニウム等の半導体基板中でドーパントしての作用を奏する元素の量(モル)が、加水分解性シラン化合物(B)に含まれるSiのモル数の0.01〜5倍となる量が好ましく、0.05〜3倍となる量がより好ましい。
【0024】
〔加水分解性シラン化合物(B)〕
拡散剤組成物は、加水分解性シラン化合物(B)を含有する。このため、拡散剤組成物を半導体基板Iに塗布して薄膜を形成すると、加水分解性シラン化合物が加水分解縮合して、塗布膜内にケイ素酸化物系の極薄い膜が形成される。塗布膜内に、ケイ素酸化物系の極薄い膜が形成される場合、前述の不純物拡散成分(A)の基板外への外部拡散が抑制され、拡散剤組成物からなる膜が薄膜であっても、良好且つ均一に半導体基板Iに不純物拡散成分(A)が拡散される。
【0025】
加水分解性シラン化合物(B)は、加水分解により水酸基を生成させ、且つSi原子に結合する官能基を有する。加水分解により水酸基を生成させる官能基としては、アルコキシ基、イソシアネート基、ジメチルアミノ基及びハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素原子数1〜5の、直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn−ブトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0026】
加水分解により水酸基を生成させる官能基としては、速やかに加水分解されやすいことと、加水分解性シラン化合物(B)の取り扱い性や入手の容易性の点から、イソシアネート基、及び炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、及びイソシアネート基がより好ましい。
【0027】
炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(B)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−n−ペンチルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、モノメトキシトリエトキシシラン、トリメトキシモノ−n−プロポキシシラン、ジメトキシジ−n−プロポキシラン、モノメトキシトリ−n−プロポキシシラン、トリメトキシモノ−n−ブトキシシラン、ジメトキシジ−n−ブトキシシラン、モノメトキトリ−n−トリブトキシシラン、トリメトキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジメトキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノメトキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、トリエトキシモノ−n−プロポキシシラン、ジエトキシジ−n−プロポキシシラン、モノエトキシトリ−n−プロポキシシラン、トリエトキシモノ−n−ブトキシシラン、ジエトキシジ−n−ブトキシシラン、モノエトキシトリ−n−ブトキシシラン、トリエトキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジエトキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノエトキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、トリ−n−プロポキシモノ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロポキシジ−n−ブトキシシラン、モノ−n−プロポキシトリ−n−プロポキシシラン、トリ−n−プロポキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジ−n−プロポキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノ−n−プロポキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、トリ−n−ブトキシモノ−n−ペンチルオキシシラン、ジ−n−ブトキシジ−n−ペンチルオキシシラン、モノ−n−ブトキシトリ−n−ペンチルオキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−n−ペンチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、及びエチルトリ−n−ペンチルオキシシランが挙げられる。これらの加水分解性シラン化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記のアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物も加水分解性シラン化合物(B)として使用できる。
【0028】
これらの中では、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、及びエチルトリエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、及びテトラエトキシシランが特に好ましい。
【0029】
イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(B)のとしては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
R
4−nSi(NCO)
n・・・(1)
(式(1)中、Rは炭化水素基であり、nは3又は4の整数である。)
【0030】
式(1)中のRとしての炭化水素基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rとしては、炭素原子数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜12の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜12のアラルキル基が好ましい。
【0031】
炭素原子数1〜12の脂肪族炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、及びn−ドデシル基が挙げられる。
【0032】
炭素原子数1〜12の芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、及びビフェニリル基が挙げられる。
【0033】
炭素原子数1〜12のアラルキル基の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−α−ナフチルエチル基、及び2−β−ナフチルエチル基が挙げられる。
【0034】
以上説明した炭化水素基の中では、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0035】
式(1)で表される加水分解性シラン化合物(B)の中では、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、及びエチルトリイソシアネートシランが好ましく、テトライソシアネートシランがより好ましい。
【0036】
なお、イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(B)と、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(B)とを併用することもできる。この場合、イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(B)のモル数Xと、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(B)のモル数Yとの比率X/Yは、1/99〜99/1が好ましく、50/50〜95/5がより好ましく、60/40〜90/10が特に好ましい。
【0037】
拡散剤組成物中の加水分解性シラン化合物(B)の含有量は、Siの濃度として、0.001〜3.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。拡散剤組成物がこのような濃度で加水分解性シラン化合物(B)を含有することにより、拡散剤組成物を用いて形成された薄い塗布膜からの不純物拡散成分(A)の外部拡散を良好に抑制し、不純物拡散成分を良好且つ均一に半導体基板Iに拡散させることができる。
【0038】
〔有機溶剤(S)〕
拡散剤組成物は、通常、薄膜の塗布膜を形成できるように、溶媒として有機溶剤(S)を含む。有機溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
【0039】
また、拡散剤組成物は、加水分解性シラン化合物(B)を含むため、実質的に水を含まないのが好ましい。拡散剤組成物中が実質的に水を含まないとは、加水分解性シラン化合物(B)が本発明の目的を阻害する程度まで加水分解されてしまう量の水を、拡散剤組成物が含有しないことを意味する。
【0040】
有機溶剤(S)の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類のモノエーテル;ジイソペンチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、及びパーフルオロテトラヒドロフラン等のモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコール類の鎖状ジエーテル類;1,4−ジオキサン等の環状ジエーテル類;1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、3−ペンタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、及びイソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、及びイソプロピル−3−メトキシプロピオネート、プロピレンカーボネート、及びγ−ブチロラクトン等のエステル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の活性水素原子を持たないアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、リモネン、及びピネン等のハロゲンを含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、2−メチルプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、及びジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及び2−フェノキシエタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、上記の好ましい有機溶剤(S)の例示において、エーテル結合とエステル結合とを含む有機溶剤はエステル類に分類される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(B)を含むため、有機溶剤(S)は、加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基を持たないものが好ましく使用される。特に加水分解性シラン化合物(B)がイソシアネート基を有する場合、加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基を持たない有機溶剤(S)を用いるのが好ましい。
【0042】
加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基には、加水分解により水酸基を生成し得る基と直接反応する官能基と、加水分解により生じる水酸基(シラノール基)と反応する官能基との双方が含まれる。加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0043】
加水分解性シラン化合物(B)と反応する官能基を持たない有機溶剤の好適な例としては、上記の有機溶剤(S)の具体例のうち、モノエーテル類、鎖状ジエーテル類、環状ジエーテル類、ケトン類、エステル類、活性水素原子を持たないアミド系溶剤、スルホキシド類、ハロゲンを含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤、及び芳香族炭化水素系溶剤の具体例として列挙された有機溶剤が挙げられる。
【0044】
〔その他の成分〕
拡散剤組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。また、拡散剤組成物は、塗布性や、製膜性を改良する目的でバインダー樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては種々の樹脂を用いることができ、アクリル樹脂が好ましい。
【0045】
<半導体基板I>
半導体基板Iとしては、従来から不純物拡散成分を拡散させる対象として用いられている種々の基板を特に制限なく用いることができる。半導体基板Iとしては、典型的にはシリコン基板が用いられる。
【0046】
半導体基板Iは、立体構造を拡散剤組成物が塗布される面上に有していてもよい。本発明によれば、半導体基板Iがこのような立体構造、特に、ナノスケールの微小なパターンを備える立体構造をその表面に有する場合であっても、以上説明した拡散剤組成物を30nm以下の膜厚となるように塗布して形成された薄い塗布膜を半導体基板I上に形成することによって、不純物拡散成分を半導体基板Iに対して良好且つ均一に拡散させることができる。
【0047】
パターンの形状は特に限定されないが、典型的には、断面の形状が矩形である直線状又は曲線状のライン又は溝であったり、円柱や角柱を除いて形成されるホール形状が挙げられる。
【0048】
半導体基板Iが、立体構造として平行な複数のラインが繰り返し配置されるパターンをその表面に備える場合、ライン間の幅としては60nm以下、40nm以下、又は20nm以下の幅に適用可能である。ラインの高さとしては、30nm以上、50nm以上、又は100nm以上の高さに適用可能である。
【0049】
<塗布方法>
拡散剤組成物は、拡散剤組成物を用いて形成される塗布膜の膜厚が30nm以下、好ましくは0.2〜10nmとなるように半導体基板I上に塗布される。拡散剤組成物の塗布は、スピンコーターを用いて行われる。なお、塗布膜の膜厚は、エリプソメーターを用いて測定された5点以上の膜厚の平均値である。
【0050】
塗布膜の膜厚は、半導体基板Iの形状や、任意に設定される不純物拡散成分(A)の拡散の程度に応じて、30nm以下の任意の膜厚に適宜設定される。
【0051】
≪リンス工程≫
拡散剤組成物を半導体基板Iの表面に塗布した後に、半導体基板Iの表面を有機溶剤によりリンスする。塗布膜の形成後に、半導体基板Iの表面をリンスすることにより、塗布膜の膜厚をより均一にすることができる。特に、半導体基板Iがその表面に立体構造を有するものである場合、立体構造の底部(段差部分)で塗布膜の膜厚が厚くなりやすい。しかし、塗布膜の形成後に半導体基板Iの表面をリンスすることにより、塗布膜の膜厚を均一化できる。
【0052】
リンス工程では、拡散剤組成物の塗布と、塗布膜のリンスとは、スピンコーターが備える同一のカップ内において半導体基板Iをカップから取り出すことなく連続して行われる。
他方、塗布膜を備える半導体基板Iをスピンコーターが備えるカップより取り出した後に、リンスを行う場合、半導体基板Iを取り出すためにスピンコーターの回転を停止させるための制動時間や、別途リンス工程を行うための装置又は場所への半導体基板Iの移送時間を考慮すると、例えば、塗布開始から数分以上の時間の経過が避けられない。
他方、加水分解性(B)シラン化合物の加水分解反応性は高く、加水分解されたシラン化合物の脱水縮合の速度はかなり速い。このため、拡散剤組成物を薄膜化した場合には、空気中の水分と、加水分解性(B)シラン化合物との加水分解反応が速やかに進行し、その結果シリカ系材料からなる薄膜が速やかに形成される。
このように、拡散剤組成物の塗布開始から、リンス開始までの所要時間が長いと、塗布膜が、有機溶剤に対する溶解性・親和性が低く、リンス液に難溶性のシリカ系被膜に変化してしまう。
そうすると、拡散剤組成物の塗布後にリンスを行ったとしても、所望する厚さよりも過剰な量の塗布膜が、有機溶剤によりリンスで洗い流されないため、所望する膜厚の薄い塗布膜を得ることが困難である。
【0053】
対して、拡散剤組成物の塗布と、塗布膜のリンスとが、スピンコーターが備える同一のカップ内において半導体基板Iをカップから取り出すことなく連続して行われれば、半導体基板Iを取り出すためにスピンコーターの回転を停止させるための制動時間や、別途リンス工程を行うための装置又は場所への半導体基板Iの移送時間がほぼ不要であるため、拡散剤組成物の塗布開始から有機溶剤によるリンス開始までの時間を極めて短くできる。
その結果、加水分解性シラン化合物(B)からなる塗布膜が、リンス液である有機溶剤に不溶であるシリカ系被膜に完全に反応して変化してしまう前に有機溶剤によるリンスを行うことができ、立体構造の底部(段差部分)でシラン化合物の体積による膜厚の不均一化を防ぎ、塗布膜の膜厚を均一化できる。
【0054】
以上説明した理由より、塗布膜のリンスは、塗布膜において、加水分解性シラン化合物(B)の加水分解物の脱水縮合反応が進行している間に行われるのが好ましい。
【0055】
ここで、「加水分解性シラン化合物(B)の加水分解物の脱水縮合反応が進行している間」について、例えば、以下の方法に従って求めることができる。
以下、「加水分解性シラン化合物(B)の加水分解物の脱水縮合反応が進行している間」の求め方の好適な例について、
図1を参照しつつ、説明する。
【0056】
具体的には、以下の1)〜4)の好適を含む方法が好ましい。
1)塗布液の滴下開始からリンス開始までのタイミングを何点か変更し、各リンス開始時間ごとにリンス後の塗布膜の膜厚を測定する。
2)1)で得られた結果を、
図1に示されるように、リンス開始時間(塗布開始からの経過時間)を横軸に、リンス後の塗布膜厚を縦軸に有する座標平面にプロットし、リンス開始時間と、リンス後の塗布膜厚との関係についての近似曲線(S字曲線)を得る。
3)得られた近似曲線について、短時間側と、長時間側とに2本の接線を引き、これらの接線と近似曲線とが乖離する点A、点Bを、
図1に示されるように定める。
4)点Aに相当するリンス開始時間と、点Bに相当するリンス開始時間との間の時間Trを求める。
なお、リンス開始時間とは、塗布液の滴下開始の時点を始点として、リンス開始までに経過した時間である。
【0057】
「加水分解性シラン化合物(B)の加水分解物の脱水縮合反応が進行している間」は、点Aに相当するリンス開始時間を始点とする時間である。
「加水分解性シラン化合物(B)の加水分解物の脱水縮合反応が進行している間」としては、点Aに相当するリンス開始時間を始点とし、点Aに相当するリンス開始時間からTr×1.1経過した時間以内が好ましく、Tr経過した時間以内がより好ましく、Tr経過した時間より短い場合が特に好ましい。
【0058】
上記方法により定められる「加水分解性シラン化合物(B)の加水分解物の脱水縮合反応が進行している間」に塗布膜の有機溶剤によるリンスを行うと、シラン化合物の堆積による膜厚の不均一化を防ぎ、塗布膜の膜厚を均一化しやすい。
【0059】
また、リンスは、加水分解性シラン化合物(B)の脱水縮合物が、リンスに使用される有機溶剤に溶解性を示す間に行われるのが好ましい。
加水分解性シラン化合物(B)の脱水縮合物が、リンスに使用される有機溶剤に溶解性を示す間とは、通常、
図1中において、点Bに相当する時間以前のタイミングであって、点Aに相当する時間から点Bに相当する時間までのタイミングであるのが好ましい。
【0060】
リンス液を半導体基板I上に滴下する際、半導体基板Iは停止していてもよく、回転していてもよい。半導体基板Iを停止させる場合、リンス開始までに時間を要してしまうため、拡散剤組成物の塗布後、半導体基板Iの回転を停止させずにリンスを行うのが好ましい。
半導体基板Iを回転させたままリンスを行う場合、リンス液供給時の半導体基板Iの回転数は、特に限定されないが、回転数調整の時間が不要であることから、拡散剤組成物の塗布時の回転数と同様であるのが好ましい。
リンス液の供給後、半導体基板の回転数を高めてもよい。この場合、回転数を上げるほど、薄膜の塗布膜を形成しやすくなる一方で、塗布膜において、加水分解性シラン化合物(B)の加水分解反応及びその結果生じた加水分解物の脱水縮合が、開始する時間、進行する速度・反応時間も速くなる。
例えば、4〜12インチのサイズの半導体基板Iを用いる場合、リンス液供給開始時からリンス液供給後の半導体基板Iの回転数は、300〜1000rpmであるのが好ましい。
【0061】
リンスに用いる有機溶剤としては、拡散剤組成物が含有していてもよい前述の有機溶剤を用いることができる。
【0062】
スピンコーターが備えるカップ内で有機溶剤を半導体基板Iに滴下してリンスを行う場合、リンスに用いる有機溶剤の量は特に限定されないが、1〜200mLが好ましく、2〜50mLがより好ましい。
【0063】
≪拡散工程≫
拡散工程では、拡散剤組成物を用いて半導体基板I上に形成された薄い塗布膜中の不純物拡散成分(A)を半導体基板Iに拡散させる。不純物拡散成分(A)を半導体基板Iに拡散させる方法は、加熱により拡散剤組成物からなる塗布膜から不純物拡散成分(A)を拡散させる方法であれば特に限定されない。
【0064】
典型的な方法としては、拡散剤組成物からなる塗布膜を備える半導体基板Iを電気炉等の加熱炉中で加熱する方法が挙げられる。この際、加熱条件は、所望する程度に不純物拡散成分が拡散される限り特に限定されない。
【0065】
通常、酸化性気体の雰囲気下で塗布膜中の有機物を焼成除去した後に、不活性ガスの雰囲気下で半導体基板Iを加熱して、不純物拡散成分を半導体基板I中に拡散させる。
有機物を焼成する際の加熱は、好ましくは300〜1000℃、より好ましくは400〜800℃程度の温度下において、好ましくは1〜120分、より好ましくは5〜60分間行われる。
不純物拡散成分を拡散させる際の加熱は、好ましくは800〜1400℃、より好ましくは800〜1200℃の温度下において、好ましくは1〜120分、より好ましくは5〜60分間行われる。
【0066】
また、25℃/秒以上の昇温速度で半導体基板Iを速やかに、所定の拡散温度まで昇温させることができる場合、拡散温度の保持時間は、30秒以下、10秒以下、又は1秒未満のようなごく短時間であってもよい。この場合、半導体基板表面の浅い領域において、高濃度で不純物拡散成分を拡散させやすい。
【0067】
以上説明した本発明にかかる方法によれば、ナノメートルスケールの微小な空隙を有する三次元構造をその表面に備える半導体基板Iを用いる場合であっても、微小な空隙の内表面全面を含め、基板上に極薄い塗布膜を形成でき、これにより半導体基板Iの拡散剤組成物が塗布された箇所全体に良好且つ均一に不純物拡散成分を拡散させることができる。
このため、本発明にかかる方法は、微小な立体的な構造を有するマルチゲート素子の製造に好適に適用できる。本発明にかかる方法は、特に、CMOSイメージセンサーのようのCMOS素子や、ロジックLSIデバイス等の製造に好適に適用できる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
〔実施例1〕
テトライソシアネートシランの濃度0.7質量%の酢酸n−ブチル溶液を、試験液として用いて以下の方法で製膜試験を行った。
なお、拡散剤組成物の製膜性は、ほぼ加水分解性シラン化合物(B)に依存するため、実施例1で用いた試験液に、不純物拡散成分(A)を加えたとしても、製膜性についての挙動はほとんど影響を受けない。
【0070】
まず、6インチのシリコン基板をスピンコーター中で10rpmで回転させた後、0.5秒間でシリコン基板上に試験液を供給した。
試験液の供給から1秒後、シリコン基板の回転数を300rpmに上げた。シリコン基板の回転数が300rpmに到達してから60秒間、同回転数で回転を継続し、次いで、回転数1000rpmに上げた後、1000rpmでの回転を30秒間継続させた。
試験液の供給開始から、表1に記載の時間の経過後、300rpmでシリコン基板が回転している状態で、リンス液(酢酸n−ブチル)4mLをシリコン基板上に供給した。
1000rpmでの回転の終了後、シリコン基板をスピンコーターから取り出した。リンス終了後のシリコン基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、塗布膜の膜厚を測定した。塗布膜の膜厚の測定結果を表1に記す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1より、加水分解性シラン化合物(B)を含む試験液のシリコン基板への塗布と、塗布膜のリンスとを、スピンコーターが備える同一のカップ内においてシリコン基板をカップから取り出すことなく連続して行う場合、膜厚10nm以下の極薄い塗布膜でも容易に形成できることが分かる。
また、試験液の供給開始45秒後以降にリンス開始する場合、若干、塗布膜の膜厚をリンスにより低減させにくくなっていることが分かる。
【0073】
〔実施例2及び3〕
拡散剤組成物として、メチルトリイソシアネートシラン0.164質量%と、トリ−n−ブトキシヒ素0.22質量%とが、酢酸n−ブチルに溶解した溶液を調製した。
幅100nmのラインと、幅60nmのスペースとを有し、深さ100nmのラインアンドスペースパターンをその表面に備えるシリコン基板(6インチ、P型)の表面に、スピンコーターを用いて上述の拡散剤組成物を塗布し、膜厚1.5nmの塗布膜を形成した。
回転数10rpmの状態で拡散剤組成物のシリコン基板への供給を開始した後、回転数を300rpmに上げた後に、リンス液(酢酸n−ブチル)4mLをシリコン基板上に供給した。
なお、拡散剤組成物の供給開始から1秒後に、回転数を300rpmに上げた。300rpmで60秒間、同回転数で回転を継続し、次いで、回転数1000rpmに上げた後、1000rpmでの回転を30秒間継続させた。
【0074】
塗布膜形成後のシリコン基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、塗布膜の膜厚を測定した。SEM観察の結果、表面に微細な凹凸を有する基板であっても、凹部表面も含む基板方面前面に、極薄い塗布膜を均一な膜厚で形成可能であることが分かった。
【0075】
上記のようにして塗布膜を形成した後、以下の方法に従って、不純物拡散成分の拡散処理を行った。
まず、ホットプレート上で塗布膜をベークした。ベーク後のシリコン基板の表面に対して、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)を行ったところ、パターンの側壁にヒ素が存在していることが確認された。
次いで、ラピッドサーマルアニール装置(ランプアニール装置)を用いて、流量1L/mの窒素雰囲気下において昇温速度25℃/秒の条件で加熱を行い、1000℃、保持時間7秒の条件で拡散を行った。拡散の終了後、半導体基板を室温まで急速に冷却した。
【0076】
不純物拡散処理が施された基板について、表面に形成した拡散層を希フッ酸で剥離処理し、処理後の基板の表面についてTEM観察及びEDX分析を行い、基板の最表面にヒ素が拡散していることを確認した。
【0077】
〔実施例4及び5〕
拡散剤組成物として、メチルトリイソシアネートシラン0.164質量%と、トリス(ジメチルアミノ)ヒ素0.23質量%とが、酢酸n−ブチルに溶解した溶液を調製した。
幅100nmのラインと、幅60nmのスペースとを有し、深さ100nmのラインアンドスペースパターンをその表面に備えるシリコン基板(6インチ、P型)の表面に、スピンコーターを用いて上述の拡散剤組成物を塗布し、膜厚1.5nmの塗布膜を形成した。
回転数10rpmの状態で拡散剤組成物のシリコン基板への供給を開始した後、回転数を300rpmに上げた後に、リンス液(酢酸n−ブチル)4mLをシリコン基板上に供給した。
なお、拡散剤組成物の供給開始から1秒後に、回転数を300rpmに上げた。300rpmで60秒間、同回転数で回転を継続し、次いで、回転数1000rpmに上げた後、1000rpmでの回転を30秒間継続させた。
【0078】
塗布膜形成後のシリコン基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、塗布膜の膜厚を測定した。SEM観察の結果、表面に微細な凹凸を有する基板であっても、凹部表面も含む基板方面前面に、極薄い塗布膜を均一な膜厚で形成可能であることが分かった。
【0079】
上記の実施例2〜5の結果より、不純物拡散成分(A)と加水分解性シラン化合物(B)とを含む拡散剤組成物のシリコン基板への塗布と、塗布膜のリンスとを、スピンコーターが備える同一のカップ内においてシリコン基板をカップから取り出すことなく連続して行う場合、膜厚1.5nm以下の極薄い塗布膜を形成することができ、当該極薄の塗布膜を加熱する場合でも、不純物拡散成分(A)が良好に拡散されることが分かる。
【0080】
〔実施例6〕
1.0質量%の濃度のテトライソシアネートシランと、B/Si元素比が1.29となる量のトリメトキシホウ素とを酢酸n−ブチル中に含む拡散剤組成物を調製した。
6インチのシリコン基板をスピンコーター中で10rpmで回転させた後、0.5秒間でシリコン基板上に拡散剤組成物を供給した。
拡散剤組成物の供給開始から1秒後、シリコン基板の回転数を、300rpm、500rpm、又は1000rpmに上げた。シリコン基板の回転数が所定の回転数に到達してから60秒間、同回転数で回転を継続し、次いで、回転数1000rpmでの回転を30秒間継続させた。
拡散剤組成物の供給開始から、リンス液供給開始までの時間を各5点変更して、リンス開示時間ごとに形成される塗布膜の膜厚を測定した。各試験でのリンス液(酢酸n−ブチル)の供給量は4mLであった。
得られた結果を、
図1に示されるように、リンス開始時間(塗布開始からの経過時間)を横軸に、リンス後の塗布膜厚を縦軸に有する座標平面にプロットし、リンス開始時間と、リンス後の塗布膜厚との関係についての近似曲線(S字曲線)を得た。
得られた近似曲線から、
図1中の点Bに相当する時間を求めたところ、回転数300rpmでのリンスでは約45秒であり、回転数500rpmでのリンスでは30秒であり、回転数1000rpmでのリンスでは約15秒であった。
つまり、実施例6から、リンス時のシリコン基板の回転数が低いほど、膜厚を低減させることができるリンスタイミングに関するマージンが長いことが分かる。
なお、300rpm、500rpm、又は1000rpmのリンスのいずれでも、膜厚20nm以下の極薄い膜厚の塗布膜を形成可能であった。
【0081】
〔実施例7〕
1.0質量%の濃度のテトライソシアネートシランと、B/Si元素比が1.29となる量のトリメトキシホウ素とを酢酸n−ブチル中に含む拡散剤組成物を調製した。
表面に幅45nm深さ150nmの8インチの溝を備えるシリコン基板をスピンコーター中で10rpmで回転させた後、0.5秒間でシリコン基板上に拡散剤組成物を供給した。
拡散剤組成物の供給開始から1秒後、シリコン基板の回転数を1000rpmに上げた。シリコン基板の回転数が1000rpmに到達してから90秒間、同回転数で回転を継続させた。
拡散剤組成物の供給開始から、15秒後にリンス液(酢酸n−ブチル)4mLをシリコン基板上に供給した。
リンス終了後のシリコン基板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、凹部の底に拡散剤組成物がたまることなく、基板の全表面に均一な膜厚の塗布膜を形成できたことが分かった。
【0082】
〔実施例8〕
表2に記載の濃度のテトライソシアネートシラン(TICS)と、B/Si元素比が2.59となる量のトリメトキシホウ素とを酢酸n−ブチル中に含む拡散剤組成物を調製した。
6インチのシリコン基板をスピンコーター中で10rpmで回転させた後、0.5秒間でシリコン基板上に拡散剤組成物を供給した。
拡散剤組成物の供給開始から1秒後、シリコン基板の回転数を、300rpmに上げた。シリコン基板の回転数が300rpmに到達してから60秒間、同回転数で回転を継続し、次いで、回転数1000rpmでの回転を30秒間継続させた。
拡散剤組成物の供給開始から、リンス液供給開始までの時間を各7点変更して、リンス開示時間ごとに形成される塗布膜の膜厚を測定した。各試験でのリンス液(酢酸n−ブチル)の供給量は4mLであった。
得られた結果を、
図1に示されるように、リンス開始時間(塗布開始からの経過時間)を横軸に、リンス後の塗布膜厚を縦軸に有する座標平面にプロットし、リンス開始時間と、リンス後の塗布膜厚との関係についての近似曲線(S字曲線)を得た。
得られた近似曲線から、
図1中の点Aに相当する時間と、点Bに相当する時間を求めた。点Aに相当する時間と、点Bに相当する時間の凡その値を表2に記す。
また、点Bに相当する時間での塗布膜厚の凡その値を表2に記す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2によると、拡散剤組成物中の加水分解性シラン化合物(B)の含有量が多いほど、点B相当時間が早くなり、膜厚を低減させることができるリンスタイミングに関するマージンが短いことが分かる。
また、拡散剤組成物中の加水分解性シラン化合物(B)の含有量が少ないほど、薄い塗布膜を形成しやすいことが分かる。
なお、いずれのTICS濃度でも、膜厚30nm以下の薄い塗布膜を形成可能である。