(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加水分解性高分子化合物は、エーテル結合、スルフィド結合、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、ウレア結合及びイミド結合のうちの少なくとも1種を含み、
前記熱分解性高分子化合物は、熱重量分析法(TG:Thermogravimetry)を用いて重量を測定した際に、180℃以下の温度において重量減少が生じる化合物のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1又は請求項3に記載の層状物質含有液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に関して詳細に説明する。説明する順序は、下記の通りである。但し、本発明に関する詳細は、以下で説明する態様に限定されるわけではなく、適宜変更可能である。
【0017】
1.層状物質含有液
1−1.イオン液体
1−1−1.カチオン
1−1−2.アニオン
1−2.高分子化合物
1−2−1.加水分解性高分子化合物
1−2−2.熱分解性高分子化合物
1−3.層状物質
1−4.他の材料
2.層状物質含有液の製造方法
2−1.層状物質含有液の調製
2−2.層状物質含有液の精製
3.作用及び効果
【0018】
<1.層状物質含有液>
まず、層状物質含有液の構成に関して説明する。
【0019】
層状物質含有液は、イオン液体と、高分子化合物と、層状物質とを含有しており、その層状物質は、イオン液体中に分散されている。
【0020】
<1−1.イオン液体>
イオン液体は、液体の塩である。このイオン液体は、カチオン及びアニオンを含んでいる。
【0021】
イオン液体の種類は、特に限定されず、任意のイオン液体のうちのいずれか1種類又は2種類以上であればよい。
【0022】
カチオン及びアニオンのそれぞれに関する詳細は、以下で説明する通りである。即ち、イオン液体は、以下で説明する一連のカチオンのうちのいずれか1種類又は2種類以上と、以下で説明する一連のアニオンのうちのいずれか1種類又は2種類以上とを組み合わせた化合物である。但し、カチオンの種類は、以下で説明する一連のカチオンに限定されないと共に、アニオンの種類は、以下で説明する一連のアニオンに限定されない。
【0023】
本発明のイオン液体には、分子内において塩を形成する化合物も含まれる。このようなイオン液体の具体例は、(メトキシカルボニルスルファモイル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド等である。
【0024】
層状物質含有液中におけるイオン液体の含有量は、特に限定されないが、例えば、5重量%〜98重量%であることが好ましく、25重量%〜80重量%であることがより好ましい。
【0025】
<1−1−1.カチオン>
カチオンは、任意の陽イオンのうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。
【0026】
このカチオンは、例えば、イミダゾリウム系イオン、ピリジニウム系イオン、アンモニウム系イオン、ピロリジニウム系イオン、コリン系イオン、ホスホニウム系イオン、スルホニウム系イオン及びそれらの複合系イオン等である。
【0027】
イミダゾリウム系イオンの具体例は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメトキシ−2−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ビニルイミダゾリウム、1,3−ジエトキシイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−メチル−3−(2’,3’−エポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3−ビス(シアノメチル)イミダゾリウム、1,3−ビス(3−シアノプロピル)イミダゾリウム及び下記の式(1)で表される化合物等である。
【0028】
【化1】
(R1及びR2のそれぞれは、1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のうちのいずれかである。R3〜R8のそれぞれは、水素原子、1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のうちのいずれかである。R9は、下記の式(2)及び式(3)のそれぞれで表される2価の基のうちのいずれかである。nは、0以上の整数である。)
【0029】
【化2】
(R10及びR11のそれぞれは、2価の無置換炭化水素基及び2価の有置換炭化水素基のうちのいずれかである。Z1は、エーテル結合(−O−)、スルフィド結合(−S−)、2価の無置換芳香族炭化水素基及び2価の有置換芳香族炭化水素基のうちのいずれかである。m1は、1以上の整数である。)
【0030】
【化3】
(R12〜R15のそれぞれは、2価の無置換炭化水素基及び2価の有置換炭化水素基のうちのいずれかである。Z2は、2価の無置換芳香族炭化水素基及び2価の有置換芳香族炭化水素基のうちのいずれかである。m2及びm3のそれぞれは、1以上の整数である。)
【0031】
R1及びR2のそれぞれの種類は、1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のそれぞれは、直鎖状でもよいし、1又は2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。尚、R1及びR2は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。
【0032】
1価の無置換炭化水素基は、炭素及び水素により構成される1価の基の総称であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基及びそれらの2種類以上が結合された1価の基等である。
【0033】
アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、t−アミル基、ヘキシル基及びヘプチル基等である。アルケニル基の具体例は、ビニル基及びアリル基等である。アルキニル基の具体例は、エチニル基等である。シクロアルキル基の具体例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等である。アリール基の具体例は、フェニル基及びナフチル基等である。
【0034】
1価の無置換炭化水素基の炭素数は、特に限定されないが、極端に多すぎないことが好ましい。具体的には、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基のそれぞれの炭素数は、1〜7であることが好ましい。シクロアルキル基及びアリール基のそれぞれの炭素数は、6又は7であることが好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。
【0035】
1価の有置換炭化水素基は、1価の無置換炭化水素基に1又は2以上の置換基が導入された基である。即ち、1価の有置換炭化水素基では、1価の無置換炭化水素基のうちの1又は2以上の水素原子が置換基により置換される。この置換基の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0036】
置換基の種類は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO
2 )、水酸基(−OH)、チオール基(−SH)、カルボキシル基(−COOH)、アルデヒド基(−CHO)、アミノ基(−NR
2 )、それらの塩及びそれらのエステルなどである。ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)及びヨウ素原子(I)等である。アミノ基(−NR
2 )のうちの2つのRのそれぞれは、水素原子及び1価の無置換炭化水素基のうちのいずれかである。この2つのRは、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。1価の無置換炭化水素基に関する詳細は、上記した通りである。もちろん、置換基の種類は、上記以外の基でもよい。
【0037】
R3〜R8のそれぞれの種類は、水素原子、1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。R3〜R8は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。もちろん、R3〜R8のうちの一部が同じ基でもよい。1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0038】
繰り返し単位の数を決定するnの値は、0以上の整数であれば、特に限定されない。即ち、nの値は、0でもよいし、1以上の整数でもよい。中でも、nは、30以下の整数であることが好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。
【0039】
R7及びR8のそれぞれの種類は、水素原子、1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。R7及びR8は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。nが2以上の整数であるため、R8が複数ある場合には、R7及びR8のうちの一部が同じ基でもよい。1価の無置換炭化水素基及び1価の有置換炭化水素基のそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0040】
中でも、R7及びR8のうちの1又は2以上は、1価の無置換炭化水素基であることが好ましい。この場合には、R7及びR8に1価の無置換炭化水素基が含まれていれば、その1価の無置換炭化水素基の数は、1つだけでもよいし、2つ以上でもよい。即ち、R8が複数ある場合には、R7が1価の無置換炭化水素基でもよいし、複数のR8のうちの1以上が1価の無置換炭化水素基でもよい。R7及びR8のうちの1以上が1価の無置換炭化水素基であるのは、R7及びR8に1価の無置換炭化水素基が含まれていると、R7及びR8に1価の無置換炭化水素基が含まれていない場合と比較して、層状物質の分散性等が向上するからである。
【0041】
より具体的には、nの値が0である場合には、R7は、1価の無置換炭化水素基であることが好ましい。又は、nの値が1以上である場合には、R7及びR8のうちの1以上が1価の無置換炭化水素基であればよいが、中でも、R7及びR8のうちの全ては、1価の無置換炭化水素基であることが好ましい。いずれの場合においても、層状物質の分散性等がより向上するからである。
【0042】
尚、R7及びR8のうちの1以上である1価の無置換炭化水素基の種類は、上記した1価の無置換炭化水素基に関する候補のうちのいずれかであれば、特に限定されない。中でも、1価の無置換炭化水素基は、nの値に関係せずに、アルキル基であることが好ましい。層状物質の分散性等がより向上するからである。
【0043】
R9は、式(2)に示した2価の基でもよいし、式(3)に示した2価の基でもよい。nが2以上の整数であるため、R9が複数ある場合には、その複数のR9は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。もちろん、複数のR9のうちの一部が同じ基でもよい。
【0044】
R10及びR11のそれぞれの種類は、2価の無置換炭化水素基及び2価の有置換炭化水素基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。2価の無置換炭化水素基及び2価の有置換炭化水素基のそれぞれは、直鎖状でもよいし、1又は2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。R10及びR11は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。m1が2以上であるため、R10が複数ある場合には、その複数のR10は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。もちろん、複数のR10のうちの一部が同じ基でもよい。
【0045】
2価の無置換炭化水素基は、炭素及び水素により構成される2価の基の総称であり、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキル基、アリーレン基及びそれらの2種類以上が結合された2価の基等である。
【0046】
アルキレン基の具体例は、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基及びブタン−2,3−ジイル等である。アルケニレン基の具体例は、ビニレン基等である。アルキニレン基の具体例は、エチニレン基等である。シクロアルキレン基の具体例は、シクロプロピレン基及びシクロブチレン基等である。アリーレン基の具体例は、フェニレン基及びナフチレン基等である。
【0047】
2価の無置換炭化水素基の炭素数は、特に限定されないが、極端に多すぎないことが好ましい。具体的には、アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基のそれぞれの炭素数は、1〜4であることが好ましい。シクロアルキレン基及びアリーレン基のそれぞれの炭素数は、6であることが好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。
【0048】
2価の有置換炭化水素基は、2価の無置換炭化水素基に1又は2以上の置換基が導入された基である。尚、置換基の種類等に関する詳細は、上記した通りである。
【0049】
Z1の種類は、エーテル結合、スルフィド結合、2価の無置換芳香族炭化水素基及び2価の有置換芳香族炭化水素基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。m1が2以上であるため、Z1が複数ある場合には、その複数のZ1は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。もちろん、複数のZ1のうちの一部が同じ基でもよい。
【0050】
2価の無置換芳香族炭化水素基は、炭素及び水素により構成されると共に環状の共役系構造を有する2価の基の総称であり、例えば、アリーレン基等である。このアリーレン基の具体例は、単環式のフェニレン環等であると共に、多環式のナフチレン基等である。
【0051】
2価の無置換芳香族炭化水素基は、2つの結合手を有しているが、その2つの結合手の位置は、特に限定されない。一例を挙げると、2価の無置換芳香族炭化水素基がフェニレン基である場合において、1つ目の結合手の位置に対する2つ目の結合手の位置は、オルト位でもよいし、メタ位でもよいし、パラ位でもよい。中でも、2つ目の結合手の位置は、パラ位であることが好ましい。イオン液体の化学的安定性が向上すると共に、分散性等も向上するからである。
【0052】
2価の有置換芳香族炭化水素基は、2価の無置換芳香族炭化水素基に1又は2以上の置換基が導入された基である。尚、置換基の種類等に関する詳細は、上記した通りである。
【0053】
繰り返し単位の数を決定するm1の値は、1以上の整数であれば、特に限定されない。中でも、m1は、30以下の整数であることが好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。
【0054】
R12〜R15のそれぞれの種類は、2価の無置換炭化水素基及び2価の有置換炭化水素基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。R12〜R15は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。もちろん、R12〜R15のうちの一部が同じ基でもよい。m2が2以上であるため、R13が複数ある場合には、その複数のR13は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。また、複数のR13のうちの一部が同じ基でもよい。同様に、m3が2以上であるため、R14が複数ある場合には、その複数のR14は、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。また、複数のR14のうちの一部が同じ基でもよい。2価の無置換炭化水素基及び2価の有置換炭化水素基のそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0055】
Z2の種類は、2価の無置換芳香族炭化水素基及び2価の有置換芳香族炭化水素基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。2価の無置換芳香族炭化水素基及び2価の有置換芳香族炭化水素基のそれぞれに関する詳細は、上記した通りである。
【0056】
繰り返し単位の数を決定するm2及びm3のそれぞれの値は、1以上の整数であれば、特に限定されない。中でも、m2及びm3のそれぞれは、30以下の整数であることが好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。
【0057】
中でも、カチオンの構成は、以下の条件を満たしていることが好ましい。容易に合成可能であると共に、層状物質の分散性等がより向上するからである。
【0058】
両末端に位置するR1及びR2のそれぞれは、直鎖状のアルキル基であることが好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基及びn−ヘキシル基等であることが好ましい。イミダゾリウム環に導入されるR3〜R6のそれぞれは、水素原子であることが好ましい。イミダゾリウム環に導入されるR7及びR8のそれぞれは、直鎖状のアルキル基であることが好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基及びn−ヘキシル基等であることが好ましい。イミダゾリウム環同士を接続させる基に導入されるR10〜R15のそれぞれは、直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、より具体的には、エチレン基であることが好ましい。
【0059】
繰り返し単位の数を決定するnの値は、0〜2の整数であることが好ましい。nの値が大きくなりすぎると、イオン液体の粘度が増大するため、後述する層状物質含有液の製造工程において、層状物質が剥離しにくくなる可能性があるからである。また、層状物質含有液の精製処理を行う必要がある場合には、その精製処理を行いにくくなる可能性があるからである。
【0060】
m1の値は、1〜5の整数であることが好ましいと共に、m2及びm3のそれぞれの値は、2又は3であることが好ましい。
【0061】
尚、上記した1価の無置換炭化水素基には、以下で説明する連結基のうちのいずれか1種類又は2種類以上が導入されていてもよい。
【0062】
この連結基の種類は、2価の基であれば、特に限定されない。連結基の具体例は、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−NR−及び−S−等である。Rは、水素原子及び1価の無置換炭化水素基のうちのいずれかである。
【0063】
ここで説明する連結基は、1価の無置換炭化水素基に、炭素鎖を一回又は二回以上分断するように導入される。一例を挙げると、エチル基(−CH
2 −CH
3 )に1つのエーテル基が導入されると、−CH
2 −O−CH
3 になる。又は、
プロピル基(−CH
2 −CH
2 −CH
3 )に2つのエーテル基が導入されると、−CH
2 −O−CH
2 −O−CH
3 になる。
【0064】
このように連結基が導入されてもよいことは、1価の有置換炭化水素基、2価の無置換炭化水素基、2価の有置換炭化水素基、2価の無置換芳香族炭化水素基及び2価の有置換芳香族炭化水素基のそれぞれに関しても同様である。
【0065】
一例を挙げると、エチレン基(−CH
2 −CH
2 −)に1つのエーテル基が導入されると、−CH
2 −O−CH
2 −になる。又は、プロピレン基(−CH
2 −CH
2 −CH
2 −)に2つのエーテル基が導入されると、−CH
2 −O−CH
2 −O−CH
2 −になる。
【0066】
ピリジニウム系イオンの具体例は、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−(3−シアノプロピル)ピリジニウム及び1−ブチル−3−メチルピリジニウム等である。
【0067】
アンモニウム系イオンの具体例は、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラキス(デシル)アンモニウム、テトラドデシルアンモニウム、テトラヘキサデシルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、メチルトリオクタデシルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム及び2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム等である。
【0068】
ピロリジニウム系イオンの具体例は、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム及び1−エチル−1−メチルピロリジニウム等である。
【0069】
コリン系イオンの具体例は、コリン等である。
【0070】
ホスホニウム系イオンの具体例は、テトラブチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、3−(トリフェニルホスホニオ)プロパン−1−スルホン酸等である。
【0071】
スルホニウム系イオンの具体例は、トリエチルスルホニウム及びシクロプロピルジフェニルスルホニウム等である。
【0072】
複合系イオンは、上記した一連のイオン(カチオンの候補)の骨格のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含むイオンである。
【0073】
この複合系イオンは、例えば、イミダゾリウム系イオンの骨格(イミダゾリウム骨格)とピリジニウム系イオンの骨格(ピリジニウム骨格)とを含むイオンであり、そのイオンの具体例は、下記の化合物A等である。
【0075】
中でも、イミダゾリウム系イオンが好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。
【0076】
<1−1−2.アニオン>
アニオンは、任意の陰イオンのうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。
【0077】
陰イオンは、例えば、pAn
q-で表される。但し、An
q-は、q価の陰イオンである。pは、イオン液体の全体を中性に保つために必要な係数であり、そのpの値は、陰イオンの種類に応じて決定される。pとqとの積(p×q)は、カチオンの全体の価数に等しくなる。
【0078】
1価の陰イオンは、例えば、ハロゲンイオン、無機系イオン、有機スルホン酸系イオン及び有機リン酸系イオン等である。
【0079】
ハロゲンイオンの具体例は、塩素イオン(Cl
- )、臭素イオン(Br
- )、ヨウ素イオン(I
- )及びフッ素イオン(F
- )等である。
【0080】
無機系イオンの具体例は、硝酸アニオン(NO
3-)、過塩素酸イオン(ClO
4-)、塩素酸イオン(ClO
3-)、チオシアン酸イオン(SCN
- )、六フッ化リン酸イオン(PF
6-)、六フッ化アンチモンイオン(SbF
6-)及び四フッ化ホウ素イオン(BF
4-)等である。
【0081】
有機スルホン酸系イオンの具体例は、エタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸イオン及び2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸イオン等である。この他、特開平8−253705号公報、特表2004−503379号公報、特開2005−336150号公報、及び国際公開2006/28006号公報等に記載されている有機スルホン酸イオンでもよい。
【0082】
有機リン酸系イオンの具体例は、ジブチルリン酸イオン、オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン及び2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸イオン等である。
【0083】
この他、1価の陰イオンの具体例は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン((CF
3 SO
2 )
2 N
- )、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドイオン((C
2 F
5 SO
2 )
2 N
- )、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドイオン((C
4 F
9 SO
2 )
2 N
- )、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホネートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボイオン、ジシアナミド、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン及びジベンゾイル酒石酸アニオン等でもよい。
【0084】
2価の陰イオンの具体例は、ベンゼンジスルホン酸イオン及びナフタレンジスルホン酸イオン等である。
【0085】
中でも、アニオンは、塩素イオン、臭素イオン、六フッ化リン酸イオン、四フッ化ホウ素イオン及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンのうちのいずれかであることが好ましく、六フッ化リン酸イオンであることがより好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。
【0086】
<1−2.高分子化合物>
高分子化合物は、加水分解性高分子化合物及び熱分解性高分子化合物のうちの一方又は双方を含んでいる。即ち、高分子化合物は、加水分解性高分子化合物だけを含んでいてもよいし、熱分解性高分子化合物だけを含んでいてもよいし、加水分解性高分子化合物及び熱分解性高分子化合物の双方を含んでいてもよい。
【0087】
<1−2−1.加水分解性高分子化合物>
加水分解性高分子化合物は、加水分解性、即ち水との反応に起因して分解する性質を有する高分子化合物であり、その加水分解性を有する高分子化合物のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。
【0088】
高分子化合物が加水分解性高分子化合物を含んでいるのは、高分子化合物が加水分解性高分子化合物を含んでいない場合と比較して、後述する層状物質含有液の製造工程において、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなるからである。
【0089】
この加水分解性高分子化合物は、上記した加水分解性を有するために、水と反応可能である特定の基(反応基)のうちのいずれか1種類又は2種類以上を分子構造中に含んでいる。
【0090】
反応基は、例えば、エーテル結合(−O−)、スルフィド結合(−S−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NR−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)、ウレア結合(−NR−C(=O)−NR−)及びイミド結合(−C(=O)−NR−C(=O)−)等である。但し、Rは、水素原子又はアルキル基である。反応基が2つのRを含む場合、その2つのRは、同じ基でもよいし、異なる基でもよい。
【0091】
1種類の反応基を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、以下の通りである。
【0092】
エーテル結合を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、ポリアルキレングリコー
ル、エポキシ樹脂、ビニロン、ポリアセタール(POM)及び多糖誘導体等である。ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等である。多糖誘導体は、例えば、デキストリン、ペクチン、グアガム、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グルカン及びカラギーナン等である。
【0093】
スルフィド結合を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、ポリチオエーテル等である。このポリチオエーテルの具体例は、ポリフェニレンスルフィド及びポリチオエーテルスルホン等である。
【0094】
エステル結合を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリへキシレンテレフタレート、PET/PEI共重合体、ポリアリレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート及び液晶ポリエステル等である。
【0095】
アミド結合を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、コラーゲン、ナイロン及びその誘導体等である。
【0096】
カーボネート結合を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、ポリカーボネート樹脂等である。
【0097】
ウレア結合を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、ポリウレア樹脂等である。
【0098】
イミド結合を含む加水分解性高分子化合物の具体例は、ポリイミド樹脂等である。
【0099】
2種類の反応基を含む加水分解性高分子化合物は、例えば、上記した一連の1種類の反応基を含む加水分解性高分子化合物のうちの2種類以上を組み合わせた化合物である。この化合物の具体例は、ポリエーテルポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド及びポリエーテルエーテルケトン等である。
【0100】
中でも、反応基は、エーテル結合であることが好ましい。層状物質含有液の製造工程において、層状積層物から層状物質がより剥離しやすくなるからである。
【0101】
尚、加水分解性高分子化合物は、イオン液体中に分散又は溶解可能であることが好ましい。また、層状物質含有液が後述する他の材料(溶媒)を含む場合には、加水分解性高分子化合物は、溶媒中に分散又は溶解可能であることが好ましい。
【0102】
この加水分解性高分子化合物の分子量(重量平均分子量)は、特に限定されないが、例えば、600〜70000であることが好ましく、2000〜40000であることがより好ましい。層状物質含有液中において加水分解性高分子化合物が分散又は溶解されやすいからである。
【0103】
層状物質含有液中における加水分解性高分子化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、5重量%〜95重量%であることが好ましく、20重量%〜75重量%であることがより好ましい。
【0104】
<1−2−2.熱分解性高分子化合物>
熱分解性高分子化合物は、熱に起因して分解する性質を有する高分子化合物であり、その熱分解性を有する高分子化合物のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。
【0105】
より具体的には、熱分解性高分子化合物は、熱重量分析法(TG:Thermogravimetry)を用いて重量(質量)を測定した際に、180℃以下の温度、好ましくは150℃以下の温度において重量減少が生じる化合物のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいることが好ましい。重量減少が生じる温度は、180℃以下の温度、好ましくは150℃以下の温度であれば、特に限定されない。
【0106】
高分子化合物が熱分解性高分子化合物を含んでいるのは、高分子化合物が熱分解性高分子化合物を含んでいない場合と比較して、後述する層状物質含有液の製造工程において、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなるからである。
【0107】
熱分解性高分子化合物は、例えば、1種類又は2種類以上のモノマーを用いた重合反応により得られると共に上記した重量減少に関する条件を満たす熱分解性の化合物(重合体)であり、単独重合体でもよいし、共重合体でもよい。このモノマーの種類は、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸及びマレイン酸イミド等である。
【0108】
アクリル酸エステル類の具体例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート及び2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等である。
【0109】
メタクリル酸エステル類の具体例は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート及び2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等である。
【0110】
アクリルアミド類の具体例は、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド及びN−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等である。
【0111】
メタクリルアミド類の具体例は、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド及びN−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等である。
【0112】
ビニルエステル類の具体例は、ビニルアセテート、ビニルブチレート及びビニルベンゾエート等である。
【0113】
スチレン類の具体例は、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン及びカルボキシスチレン等である。
【0114】
より具体的には、熱分解性高分子化合物は、例えば、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂及びアクリル系樹脂等のうちのいずれか1種類又は2種類以上である。ビニル系樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール及びポリビニルクロライド等である。セルロース系樹脂は、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等である。アクリル系樹脂は、例えば、ポリアクリル酸エステル及びポリメチルメタクリレート等である。
【0115】
尚、熱分解性高分子化合物は、イオン液体中に分散又は溶解可能であることが好ましい。また、層状物質含有液が後述する他の材料(溶媒)を含む場合には、熱分解性高分子化合物は、溶媒中に分散又は溶解可能であることが好ましい。
【0116】
この熱分解性高分子化合物の分子量(重量平均分子量)は、特に限定されないが、例えば、600〜70000であることが好ましく、2000〜40000であることがより好ましい。層状物質含有液中において熱分解性高分子化合物が分散又は溶解されやすいからである。
【0117】
層状物質含有液中における熱分解性高分子化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、5重量%〜95重量%であることが好ましく、20重量%〜75重量%であることがより好ましい。
【0118】
尚、高分子化合物は、加水分解性高分子化合物の性質及び熱分解性高分子化合物の性質の双方を有する高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。この高分子化合物は、いわゆる加水分解性熱分解性高分子化合物であり、水との反応に起因して分解する性質を有していると共に、熱に起因して分解する性質も有している。
【0119】
<1−3.層状物質>
層状物質は、上記したように、層状の薄い物質であり、いわゆるナノシートである。
【0120】
この層状物質は、単層に限らず、層数が十分に少なければ、多層でもよい。尚、ここで説明する層状物質は、後述する層状物質含有液の製造工程において、複数の層状物質が積層された多層構造を有する積層物から剥離したものである。尚、層状物質の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0121】
層状物質は、1種類の元素だけを構成元素として含んでいる物質(単元素層状物質)でもよいし、2種類以上の元素を構成元素として含んでいる物質(多元素層状物質)でもよい。但し、多元素層状物質では、複数の層のうちの一部又は全部が2種類以上の元素を構成元素として含んでいてもよい。
【0122】
単元素層状物質の種類は、特に限定されない。この単元素層状物質は、例えば、グラファイト類等である。グラファイト類の具体例は、天然黒鉛、膨張化黒鉛、人造黒鉛及び熱分解黒鉛等である。
【0123】
多元素層状物質の種類は、特に限定されない。この多元素層状物質は、例えば、金属カルコゲン化物、金属酸化物・金属オキシハロゲン化物、金属リン酸塩、粘土鉱物・ケイ酸塩、複水酸化物、層状チタン酸化物、層状ペロブスカイト酸化物及び窒化ホウ素類等である。
【0124】
金属カルコゲン化物の具体例は、MX(Mは、Ga、Ge及びIn等である。Xは、S、Se及びTe等である。)、MX
2 (Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo及びW等である。Xは、S、Se及びTe等である。)及びMPX
3 (Mは、Mg、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd及びIn等である。Xは、S、Se及びTe等である。)等である。
【0125】
金属酸化物・金属オキシハロゲン化物の具体例は、M
x O
y (Mは、Ti、Mn、Mo及びV等である。)、MOXO
4 (Mは、Ti、V、Cr及びFe等である。Xは、P及びAs等である。)、MOX(Mは、Ti、V、Cr及びFe等である。Xは、Cl及びBr等である。)、LnOCl(Lnは、Yb、Er及びTm等である。)、K[Ca
2 Na
n-3 Nb
n O
3n+1](nは、3≦n<7を満たす。)で表されるニオブ酸塩、及びチタン酸塩等である。尚、M
x O
y の具体例は、MoO
3 、Mo
18O
52、V
2 O
5 、LiNbO
2 及びLi
x V
3 O
8 等である。チタン酸塩の具体例は、K
2 Ti
4 O
9 及びKTiNbO
5 等である。
【0126】
金属リン酸塩の具体例は、M(HPO
4 )
2 (Mは、Ti、Zr、Ce及びSn等である。)及びZr(ROPO
3 )
2 (Rは、H、Rh及びCH
3 等である。)等である。
【0127】
粘土鉱物・ケイ酸塩の具体例は、スメクタイト族、カオリン族、パイロフィライト−タルク、バーミキュライト、雲母群、脆雲母群、緑泥石群、セピオライト−パリゴルスカイト、イモゴライト、アロフェン、ヒシンゲライト、マガディアイト及びカネマイト等である。尚、スメクタイト族の具体例は、モンモリロナイト及びサポナイト等である。カオリン族の具体例は、カオリナイト等である。
【0128】
複水酸化物の具体例は、[M
2+1-x M
3+x (OH)
2 ][An
- ]
x/n ・zH
2 O(M
2+は、Mg
2+及びZn
2+等である。M
3+は、Al
3+及びFe
3+等である。An
- は、任意のアニオンである。)等である。
【0129】
層状チタン酸化物の具体例は、二チタン酸カリウム(K
2 Ti
2 O
5 )及び四チタン酸カリウム(K
2 Ti
4 O
9 )等である。
【0130】
層状ペロブスカイト酸化物の具体例は、KCa
2 Nb
3 O
10、KSr
2 Nb
3 O
10及びKLaNb
2 O
7 等である。
【0131】
窒化ホウ素類は、窒素(N)及びホウ素(B)を構成元素として含む化合物の総称である。この窒化ホウ素類の具体例は、窒化ホウ素(BN)及び窒化炭素ホウ素(BCN)等である。
【0132】
尚、層状物質の平均粒径は、特に限定されないが、中でも、100μm以下であることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。層状物質の分散性等が向上するからである。この平均粒径は、いわゆるメジアン径(累積50%に相当するD50)である。
【0133】
<1−4.他の材料>
尚、層状物質含有液は、上記したイオン液体、高分子化合物及び層状物質と一緒に、他の材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含有していてもよい。
【0134】
他の材料は、例えば、溶媒(イオン液体を除く)である。この溶媒は、例えば、水性溶媒及び有機溶剤等である。水性溶媒の具体例は、水及びエタノール等である。有機溶剤の種類は、特に限定されない。
【0135】
<2.層状物質含有液の製造方法>
次に、上記した層状物質含有液の製造方法に関して説明する。尚、以下では、複数の層状物質が積層された多層構造を有する物質を「層状積層物」という。
【0136】
<2−1.層状物質含有液の調製>
層状物質含有液を調製する場合には、最初に、イオン液体と高分子化合物と層状積層物とを含有する溶液(層状積層物含有液)を調製する。この場合には、上記したように、高分子化合物が加水分解性高分子化合物及び熱分解性高分子化合物のうちの一方又は双方を含むようにする。
【0137】
具体的には、例えば、イオン液体に高分子化合物を添加して、そのイオン液体中に高分子化合物を分散又は溶解させる。
【0138】
続いて、高分子化合物が分散又は溶解されたイオン液体に層状積層物を添加して、そのイオン液体中に層状積層物を分散させる。この場合には、必要に応じて、イオン液体を撹拌してもよい。これにより、層状積層物含有液が得られる。
【0139】
最後に、層状積層物含有液に、音波及び電波のうちの一方又は双方を照射する。
【0140】
音波の種類は、特に限定されないが、中でも、超音波を用いることが好ましい。層状積層物含有液中において、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなるからである。超音波を用いる場合には、例えば、任意の超音波分散機を使用可能であるが、中でも、ホーンタイプの超音波分散機を用いることが好ましい。超音波の周波数、振幅及び照射時間等の条件は、特に限定されない。一例を挙げると、周波数は10kHz〜1MHz、振幅は1μm〜100μm(ゼロツーピーク値)であると共に、照射時間は1分間以上、好ましくは1分間〜6時間である。
【0141】
電波の種類は、特に限定されないが、中でも、マイクロ波を用いることが好ましい。層状積層物含有液中において、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなるからである。マイクロ波を用いる場合には、例えば、任意のマイクロ波オーブンを使用可能である。マイクロ波の出力、周波数、及び照射時間等の条件は、特に限定されない。一例を挙げると、出力は500W、周波数は2.4GHzであると共に、照射時間は10秒間以上、好ましくは10秒間〜10分間である。但し、出力が1W〜100W、周波数が2.4GHz、照射時間が0.2時間〜48時間である低エネルギーのマイクロ波を用いてもよい。
【0142】
この照射処理により、層状積層物含有液中では、層状積層物から1又は2以上の層状物質が剥離すると共に、その層状物質がイオン液体中に分散されるため、層状物質含有液が得られる。この層状物質含有液中には、層状積層物が残存していてもよいし、残存していなくてもよい。
【0143】
尚、照射工程では、上記した照射条件(周波数等)を変更することで、層状物質の剥離量、即ち層状物質含有液の濃度を制御できる。このため、層状物質の剥離量が増大するように照射条件を設定することで、高濃度の層状物質含有液が得られる。具体的には、照射時間を長くすれば、層状物質の剥離量が増大するため、層状物質含有液の濃度が高くなる。これにより、層状物質含有液の濃度は、最大で10mg/cm
3 (=10mg/ml)以上、好ましくは20mg/cm
3 (=20mg/ml)以上、より好ましくは40mg/cm
3 (=40mg/ml)以上になる。
【0144】
又は、最後に、層状積層物含有液を加熱する。この場合には、層状積層物含有液を撹拌することが好ましい。層状積層物含有液が均一に加熱されやすくなるからである。
【0145】
加熱方法は、特に限定されないが、例えば、層状積層物含有液を直接的に加熱する方法(直接加熱法)及び層状積層物含有液を間接的に加熱する方法(間接加熱法)等である。直接加熱法では、例えば、層状積層物含有液が収容された容器中にヒータ等を投入して、そのヒータ等を用いて層状積層物含有液を加熱する。間接加熱法では、例えば、加熱器具のうちのいずれか1種類又は2種類以上を用いて、層状積層物含有液が収容された容器を加熱する。この加熱器具としては、例えば、オイルバス、オーブン及びホットプレート等を使用可能である。加熱温度及び加熱時間等の条件は、特に限定されない。一例を挙げると、加熱温度は、70℃〜300℃であることが好ましく、100℃〜200℃であることがより好ましい。加熱時間は、0.1時間〜50時間であることが好ましく、1時間〜10時間であることがより好ましい。
【0146】
この加熱処理により、層状積層物含有液中では、層状積層物から1又は2以上の層状物質が剥離すると共に、その層状物質がイオン液体中に分散されるため、層状物質含有液が得られる。この層状物質含有液中には、層状積層物が残存していてもよいし、残存していなくてもよい。
【0147】
上記したように、層状物質含有液を得るためには、層状積層物含有液に音波等を照射してもよいし、層状積層物含有液を加熱してもよい。中でも、層状積層物含有液を加熱することが好ましい。加熱処理は照射処理よりも簡単であるため、層状物質含有液を得るための効率(生産性)が向上するからである。
【0148】
<2−2.層状物質含有液の精製>
層状物質含有液を調製した後、必要に応じて、その層状物質含有液を精製してもよい。
【0149】
層状物質含有液を精製する場合には、例えば、遠心分離法、ソックスレー法及びクロスフロー濾過法等を用いて層状物質を単離精製する。但し、他の方法を用いて層状物質含有液を精製してもよい。
【0150】
中でも、遠心分離法が好ましい。層状物質含有液中から層状物質を容易に単離精製できるからである。この場合には、例えば、任意の遠心分離機を使用可能であり、その遠心分離条件は、任意に設定可能である。この遠心分離処理により、層状物質含有液は、例えば、残存する層状積層物及び不純物等を含む固相と、層状物質を含む液相(上澄み液)とに分離される。尚、層状物質含有液を遠心分離する場合には、その層状物質含有液のうちの一部だけを遠心分離してもよいし、全部を遠心分離してもよい。
【0151】
この遠心分離処理の後、層状物質含有液から液相を回収してもよい。これにより、層状物質含有液から不純物等が除去されるため、その層状物質含有液が精製される。この場合には、遠心分離条件を変更することで、層状物質含有液の濃度(層状物質の純度)を調
整できる。
【0152】
<3.作用及び効果>
上記した層状物質含有液及びその製造方法によれば、イオン液体と高分子化合物(加水分解性高分子化合物及び熱分解性高分子化合物のうちの一方又は双方を含む。)と層状積層物と含有する層状積層物含有液に音波等を照射し、又は層状積層物含有液を加熱している。この場合には、層状積層物含有液の調製処理、照射処理及び加熱処理という簡単な処理だけを用いているにも関わらず、層状積層物から層状物質が簡単に剥離するため、その層状物質がイオン液体中において高濃度に分散される。しかも、層状物質は安定かつ再現性よく剥離するため、その層状物質の層数は均一化する。また、剥離時において層状物質は破損しにくいため、その層状物質の面積は十分に大きくなる。よって、高品質な層状物質を容易に得ることができる。
【0153】
特に、高分子化合物が加水分解性高分子化合物を含んでおり、その加水分解性高分子化合物がエーテル結合等を含んでいれば、照射処理及び加熱処理により層状積層物から層状物質が剥離しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0154】
また、照射処理において、音波として超音波、電波としてマイクロ波を用いれば、層状積層物から層状物質から剥離しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【実施例】
【0155】
以下、本発明の実施例に関して詳細に説明する。説明する順序は、下記の通りである。但し、本発明の態様は、ここで説明する態様に限定されない。
【0156】
1.層状物質含有液の製造
2.層状物質含有液の評価
【0157】
<1.層状物質含有液の製造>
(実験例1)
以下の手順により、層状物質含有液を製造した。ここでは、層状積層物から層状物質を剥離させる方法として、層状積層物含有液に電波(マイクロ波)を照射する処理を用いた。
【0158】
最初に、イオン液体(下記の化合物1)74質量部と、高分子化合物(加水分解性高分子化合物)であるポリエチレングリコール1(和光純薬工業株式会社製のPEG−20000,重量平均分子量=約20000)26質量部とを混合して、そのイオン液体中に加水分解性高分子化合物を溶解させた。この化合物1は、ヘキサフルオロリン酸・1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMIM−PF
6 )である。
【0159】
【化5】
【0160】
続いて、混合液中に層状積層物(和光純薬工業株式会社製の天然黒鉛,2θ=約27°)を分散させて、混合物を得た。この場合には、混合液中における層状積層物の含有量を25mg/cm
3 (=25mg/ml)とした。続いて、乳鉢を用いて混合物を磨り潰して(15分間)、層状積層物含有液を得た。尚、上記した「2θ」は、XRD法の分析結果(XRDチャート)において、層状積層物の存在に起因して生じるピークの位置(回折角2θ)を表している。この「2θ」の意味は、以降においても同様である。
【0161】
続いて、マイクロウェーブ合成装置(バイオタージ・ジャパン株式会社製Initiator
+ )用のバイアル(0.5cm
3 =0.5ml)に層状積層物含有液(0.60g)を採取した後、そのバイアルを密閉した。最後に、マイクロウェーブ合成装置を用いて層状積層物含有液にマイクロ波を照射した。この場合には、温度=170℃、照射時間=30分間とした。これにより、層状物質含有液が得られた。
【0162】
(実験例2)
高分子化合物(加水分解性高分子化合物)を用いなかったことを除き、実験例1と同様の手順により層状物質含有液を得た。
【0163】
(実験例3)
層状積層物から層状物質を剥離させる方法として、層状積層物含有液を加熱する処理を用いた。この場合には、層状積層物含有液にマイクロ波を照射する代わりに、層状積層物含有液を加熱したことを除き、実験例1と同様の手順を経た。具体的には、茄子型フラスコに層状積層物含有液(5cm
3 =5ml)を採取した後、オイルバス(130℃)を用いてオイルを撹拌しながら茄子型フラスコを加熱(6時間)した。
【0164】
(実験例4)
層状積層物の含有量を200mg/cm
3 (=200mg/ml)に変更したことを除き、実験例3と同様の手順により層状物質含有液を得た。
【0165】
(実験例5)
高分子化合物(加水分解性高分子化合物)を用いなかったことを除き、実験例3と同様の手順により層状物質含有液を得た。
【0166】
(実験例6〜36)
表1〜表3に示したように、イオン液体の種類、高分子化合物の種類、層状積層物の種類及び剥離方法等を変更したことを除き、実験例1,3,4と同様の手順により層状物質含有液を得た。
【0167】
イオン液体としては、下記の化合物2〜化合物9を用いた。化合物2は、塩化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムである。化合物3は、ヘキサフルオロリン酸・ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)アミド・1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである。化合物4は、ヘキサフルオロリン酸・1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムである。化合物5は、ヘキサフルオロリン酸・1,3−ジエトキシイミダゾリウムである。化合物6は、ヘキサフルオロリン酸・1,3−ジプロパルギルイミダゾリウムである。化合物7は、ヘキサフルオロリン酸・1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムである。化合物8は、ヘキサフルオロリン酸・1−(4−ヒドロキシブチル)−3−メチルイミダゾリウムである。化合物9は、ヘキサフルオロリン酸・1,1’−((エタン−1,2−ジイルビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(3−ブチルイミダゾリウム)である。
【0168】
【化6】
【0169】
【化7】
【0170】
【化8】
【0171】
【化9】
【0172】
【化10】
【0173】
【化11】
【0174】
【化12】
【0175】
【化13】
【0176】
高分子化合物(加水分解高分子化合物)としては、ポリエチレングリコール2(和光純薬工業株式会社製のPEG−2000,重量平均分子量=約2000)、ポリエチレングリコール3(和光純薬工業株式会社製のPEG−600
,重量平均分子量=約600)、ポリエチレングリコール4(和光純薬工業株式会社製のPEG−6000,重量平均分子量=約6000)、ポリエーテルポリオール1(株式会社ADEKA製のP−3000,重量平均分子量=約5000)、ポリエーテルポリオール2(株式会社ADEKA製のSP−600,重量平均分子量=約400)、ジオール型ポリアルキレングリコール(株式会社ADEKA製のPH−2000,重量平均分子量=約23000)、メチルセルロース(東京化成工業株式会社製の10%水溶液(90mPa・s〜110mPa・s
,5%,トルエン:エタノール=80:20,25℃))、グアガム(シグマアルドリッチジャパン合同会社製,重量平均分子量=約85000〜124000)を用いた。
【0177】
高分子化合物(熱分解性高分子化合物)としては、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製のPVA−217)、ポリビニルアセテート(和光純薬工業株式会社製の50%メタノール溶液,重合度=1500,)、ポリメチルメタクリレート(日本合成化学工業株式会社製)を用いた。
【0178】
層状積層物としては、三津和化学薬品株式会社製の硫化スズ(IV)(SnS
2 ,2θ=約15°)、三津和化学薬品株式会社製のテルル化モリブデン(MoTe
2 ,2θ=約12.6°)、三津和化学薬品株式会社製の硫化ゲルマニウム(II)(GeS,2θ=約34.1°)、三津和化学薬品株式会社製の硫化ジルコニウム(ZrS
2 ,2θ=約15.1°)、三津和化学薬品株式会社製のセレン化ニオブ(NbSe
2 ,2θ=約14°)、和光純薬株式会社製の合成雲母(2θ=約6.2°)、和光純薬株式会社製のタルク(2θ=約9.4°)、伊藤黒鉛工業株式会社製の膨張化黒鉛EC1500(2θ=約27°)を用いた。
【0179】
<2.層状物質含有液の評価>
X線回折(XRD)法(集中法)を用いて、層状物質含有液を分析した。この場合には、照射処理前の層状物質含有液、照射処理後の層状物質含有液、加熱処理前の層状物質含有液及び加熱処理後の層状物質含有液のそれぞれを試料板の表面に塗布して、分析用サンプルを作製した。
【0180】
XRD法の分析結果(XRDチャート)では、層状積層物の種類ごとに、上記した2θの値の近傍に、その層状積層物の存在に起因して生じるピークが検出された。
【0181】
このXRDチャートに基づいて、照射処理後及び加熱処理後におけるピークの強度を調べたところ、表1〜表3に示した結果が得られた。この場合には、照射処理前及び加熱処理前におけるピークの強度を100として、照射処理後及び加熱処理後におけるピークの強度の換算値(規格化強度)を求めた。
【0182】
【表1】
【0183】
【表2】
【0184】
【表3】
【0185】
層状積層物含有液が高分子化合物(加水分解性高分子化合物又は熱分解性高分子化合物)を含んでいない場合(実験例2,5)には、剥離方法(照射処理又は加熱処理)に依存せずに、規格化強度が100のままであった。この結果は、照射処理及び加熱処理を経ても、層状積層物の存在に起因するピークの強度が変化しなかったことを表している。即ち、層状積層物含有液中において、層状積層物から層状物質が剥離しなかった。
【0186】
これに対して、層状積層物含有液が高分子化合物(加水分解性高分子化合物又は熱分解性高分子化合物)を含んでいる場合(実験例1,3,4,6〜36)には、層状積層物の種類及び剥離方法に依存せずに、規格化強度が100未満になった。この結果は、照射処理及び加熱処理を経ることで、層状積層物の存在に起因するピークの強度が減少したことを表している。即ち、層状積層物含有液中において、層状積層物から層状物質が剥離した。
【0187】
特に、層状積層物含有液が高分子化合物を含んでいる場合には、剥離方法として加熱処理を用いた場合(実験例3)よりも照射方法を用いた場合(実験例1)において、規格化強度がより減少した。即ち、剥離方法として加熱処理を用いると、層状積層物から層状物質がより剥離した。
【0188】
尚、加水分解性高分子化合物と熱分解性高分子化合物とを併用した場合に関しては、具体的に検証していない。しかしながら、上記したように、加水分解性高分子化合物を用いた場合において、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなる。同様に、熱分解性高分子化合物を用いた場合においても、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなる。しかも、上記したように層状積層物から層状物質が剥離しやすくなる傾向を考えると、加水分解性高分子化合物と熱分解性高分子化合物とを併用した場合において層状積層物から層状物質が剥離しにくくなる理由は、特に考えられない。よって、加水分解性高分子化合物と熱分解性高分子化合物とを併用した場合においても、層状積層物から層状物質が剥離しやすくなるはずである。
【0189】
これらの結果から、イオン液体と高分子化合物(加水分解性高分子化合物及び熱分解性高分子化合物のうちの一方又は双方を含む。)と層状積層物とを含有する層状積層物含有液に電波等を照射し、又は層状積層物含有液を加熱すると、層状物質が簡単に得られた。
【0190】
以上、実施形態及び実施例を挙げながら本発明を説明したが、本発明は実施形態及び実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
【0191】
本出願は、日本国特許庁において2015年3月18日に出願された日本特許出願番号第2015−054556号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0192】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、及び変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲の趣旨やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。