【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、独立特許請求項の特徴により達成される。本発明のさらに他の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つのパラメータのパラメータ範囲で少なくとも1つのパラメータに応じた補正変数を求める方法が提案される。本方法は、測定を実行するステップを含み、変数の測定値がパラメータ範囲の複数の別個の非重複部分領域で提供される。本方法はさらに、変数の測定値を滑らかな関数とパラメータ範囲の部分領域に割り当てられた部分領域関数とにより近似する近似を用いて、変数の測定値の補正を実行するステップを含む。滑らかな関数を用いて、変数の推移(course)をパラメータ範囲において再現可能である。部分領域関数を用いて、変数の個別変化をパラメータ範囲の部分領域で引き起こすことができる。
【0011】
本方法では、変数の測定値は、少なくとも1つのパラメータの関連値に関するものであり、パラメータ範囲の複数の分離した部分領域で提供される。これにより、測定支出をほとんど伴わずに低コストで基礎測定を実行することが可能となる。しかしながら、この手順は、不正確な測定に結び付き得るので、パラメータ範囲の個々の部分領域の変数の測定値は、それぞれが他の部分領域とは無関係な独自の測定誤差を有し得る。
【0012】
このような測定誤差を抑制又は補正するために本方法で利用するのは、実際の変数、すなわち測定誤差のない変数がパラメータ範囲に対して対応する規則性又は予測可能な特性を有し得ると共に、結果としてパラメータ範囲において滑らかな関数により記述され得ることである。これとは対照的に、部分領域の個々の測定誤差では、このような規則性が全く又は実質的に見付からない。
【0013】
こうした状況は、変数の測定値が、パラメータ範囲における変数の推移を反映する滑らかな関数と部分領域に割り当てられた部分領域関数との両方により近似されることにより、本発明により考慮される。近似の範囲内で、部分領域関数それぞれが、変数の個別変化を関連する部分領域で、すなわち他の部分領域とは無関係に引き起こすことができる。このようにして、変数の不正確な測定の効果を該当の部分領域で再現し、ひいては部分領域関数を用いて測定誤差の発生を再現することが可能である。結果として、滑らかな関数及び部分領域関数を用いて、小さな又は最小の偏差で変数の測定値の正確な近似を得ることができる。
【0014】
部分領域関数を用いて引き起こすことができるパラメータ範囲の個々の部分領域の変数の個別変化は、近似に用いられるだけでなく、補正の基礎としての役割も果たす。ここで、個々の部分領域の個々の測定誤差を、抑制すなわち排除するか、又は少なくとも部分的に若しくは実質的に低減することができる。したがって、パラメータ範囲で補正又は再構成された変数を提供することが可能であり、上記変数は、実際の変数に、場合によっては一定の大域的なオフセット値の形態の差まで近づけることが可能である。
【0015】
なお、ここで用いられる場合の「実際の」又は「実際の変数」という語句は、測定誤差のない変数、したがってパラメータ範囲の部分領域で測定誤差の入力のない理想的な測定の範囲内で提供することができる変数に関する。
【0016】
本発明のさらに他の可能な実施形態及び詳細を以下で説明する。
【0017】
近似を実行する目的で、一実施形態によれば、パラメータ範囲が有限数の節に離散化される。このようにして、本方法は、適切な評価デバイスを用いて実行することができる。
【0018】
変数は、1つのパラメータに依存し得るが、複数のパラメータ、例えば2つのパラメータにも依存し得る。このような実施形態では、パラメータ範囲は複数のパラメータを含み、変数の測定値は、複数のパラメータの関連するパラメータ値に関係する。
【0019】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つのパラメータは空間座標である。例として、パラメータ範囲は、空間座標の形態の2つのパラメータを含み得る。2つの空間座標は、例えば2次元直交座標系の座標であり得る。例として、パラメータ範囲は、このような構成の像視野として表すことができる。ここで、変数の測定値は、関連する像点座標を有する像視野の視野点又は像点に関するものであり得る。
【0020】
他のパラメータも本方法で用いることができる。例として、少なくとも1つのパラメータは時間であり得る。さらに別の例は、時間及び1つ又は複数の空間座標を含むパラメータ範囲である。
【0021】
さらに別の実施形態では、変数はいずれの場合も、部分領域関数を用いて関連する部分領域で同じ値だけ変更可能である。この実施形態を用いることができるのは、パラメータ範囲の部分領域に、該当の部分領域の変数の全ての測定値に伴う一定又は実質的に一定の測定誤差(オフセット)がある場合である。上記特性を有する部分領域関数を用いることにより、オフセット誤差の効果を再現すること、及び結果としてパラメータ範囲の部分領域の変数の平均値を確実に再構成することが可能である。異なる表現の仕方をすれば、部分領域に個別に存在する、測定誤差の結果としての変数の測定値の一定又は実質的に一定の改竄を抑制することが可能である。
【0022】
本方法で用いる滑らかな関数は、複数の基底関数を有し得る。例として、滑らかな関数は多項式関数であり得る。単純な多項式基底関数を用いることが可能である。
【0023】
さらに別の実施形態では、補正は、変数の補正値の形成を含む。その際に、変数の誤差のある測定値を変数の対応する補正値で置き換えることができる。再構成値とも称することができる変数の補正値は、変数の実際の、すなわち測定誤差のない値に近付くことができ、実質的にこれに対応する。
【0024】
さらに別の実施形態では、近似は、部分領域関数の係数を求めることを含む。さらに、変数の測定値は、部分領域関数の係数を用いて補正される。このようにして、変数の補正値を形成することが可能であり、これを用いて上述のように変数の誤差のある測定値を置き換えることができる。部分領域関数の入力又は重み付け、したがって個々の部分領域の測定誤差の強度を、上記部分領域関数の係数により再現することができる。したがって、部分領域関数の係数の使用は、測定誤差を確実に修正又は抑制することを可能にする。その際に、パラメータ範囲の部分領域の変数の平均値を確実に再構成することが可能である。
【0025】
部分領域関数の係数の使用に関して、本方法の以下の構成を用いることがさらに可能である。
【0026】
さらに別の実施形態では、近似は、部分領域関数及び滑らかな関数の基底関数から関数行列を形成すること、関数行列の擬似逆行列を形成すること、及び関数行列の擬似逆行列に変数の測定値のベクトルを乗算して係数ベクトルを形成することを含む。係数ベクトルは、部分領域関数の係数と滑らかな関数の基底関数の係数とを含む。上記ステップを用いて、最小偏差での滑らかな関数及び部分領域関数による変数の測定値への近似に対する要求を満たすことが可能である。この結果として、変数の測定値を確実に補正することを可能にする部分領域関数の係数を提供することが可能である。補正は、以下で説明するように実行することができる。
【0027】
さらに別の実施形態では、補正は、部分領域関数の行列に(近似により求められた)部分領域関数の係数のベクトルを乗算して積を形成すること、及び積をその平均値を除いて変数の測定値のベクトルから減算することを含む。この手順により、実際の変数に実質的に対応する変数の補正値を形成することが可能である。積は、全ての近似部分領域関数の入力又は重み付けに関係し得る。関連する平均値は、定数成分とも称することができる。「その平均値を除いて」という語句は、積の平均値が積から減算され、この項が変数の測定値のベクトルから減算されることにより成立し得る。
【0028】
積の平均値の減算により確実にすることが可能なのは、補正されるのが主に変数の測定値の相対的な差、すなわちパラメータ範囲の部分領域毎に存在する差であること、及び全ての部分領域で大域的又は一様な変数補正が実質的にないことである。結果として、変数の補正値は実際の変数に近付き得る。
【0029】
さらに別の実施形態では、ゼロ平均値を有する部分領域関数が用いられる。これらは、パラメータ範囲に関して平均値ゼロを有する部分領域関数である。このような部分領域関数は、平均値を有する各部分領域関数からそれぞれ関連する平均値を減算することにより形成することができる。ゼロ平均値を有する部分領域関数を利用する場合、積の平均値(部分領域関数の全入力の平均値)の上記減算が、近似及び補正に暗示的に含まれる。ゼロ平均値を有する部分領域関数を利用する際、積の平均値がゼロの値を有するので、その減算も省くことができる。したがって、上記補正ステップに関して、ゼロ平均値を有する部分領域関数を他のステップで用いるならば、積を変数の測定値のベクトルから単に減算することが可能である。
【0030】
ゼロ平均値を有する部分領域関数を用いるさらに別の利点は、変数の測定値の近似を一意に実行可能であることから成る。これとは対照的に、部分領域関数の入力の平均値は、平均値を有する部分領域関数の場合、使用関数集合又は関数行列に、正確に言うと滑らかな関数の定数として、また部分領域関数の和として2回含まれ得る。結果として、これは一意的でない近似を有し得る。
【0031】
上記のように、単純な多項式基底関数を含み得る多項式関数を滑らかな関数として用いることができる。正則化、したがって近似の改善の目的で、直交化又は正規直交化された基底関数を含む滑らかな関数をさらに利用することができる。正規化多項式基底関数を有する多項式基底関数の使用も可能である。
【0032】
さらに別の実施形態では、関数行列を部分領域関数及び滑らかな関数の基底関数から形成し、関数行列の擬似逆行列を形成し、関数行列の擬似逆行列から、部分領域関数の係数を生成可能にする部分行列を形成し、部分領域関数の行列に部分行列を乗算して積を形成し、積を恒等行列から減算して補正行列を形成し、補正行列に変数の測定値のベクトルを乗算することにより、近似及び補正が共に実行される。この実施形態は、変数の補正値を単純に形成することを可能にするものであり、最小偏差での変数の測定値への近似を得るという要求を同様に満たす。その際に、近似及び補正は、変数の測定値に補正行列を単純に乗算することに基づく。これに関して、一度形成された補正行列を用いて、さまざまな測定を用いて得られる変数の測定値をそれぞれ補正することがさらに可能である。
【0033】
上記のように、本方法は、変数の補正値が形成されるように実行することができる。付加的又は代替的に実行することができるさらに別の実施形態では、補正は、変数の近似推移の形成を含む。変数の近似推移は、実際の、すなわち測定誤差のない変数に近付き、実質的にこれに対応し得る。変数の測定値を変数の近似推移で置き換えることが可能である。例として、このようにして、関心のパラメータ範囲全体にわたって変数の推移を再構成することが可能である。変数の近似推移を形成することで、スポット雑音の排除が容易になる。
【0034】
さらに、補間及び/又は外挿が補正の範囲内で起こり得る。このために、さらに別の実施形態は、補正が変数の少なくとも1つの補完値の形成を含むことを提案し、変数の補完値は、変数の測定値が得られない少なくとも1つのパラメータの値に属する。変数の少なくとも1つの補完値の提供は、変数の近似推移に基づいて実行され得る。
【0035】
変数の近似推移は、近似及び補正を同様に共に実行する以下で説明する実施形態を用いて形成することができる。このために、部分領域関数及び滑らかな関数の基底関数から関数行列を形成し、関数行列の擬似逆行列を形成し、関数行列の擬似逆行列から、滑らかな関数の基底関数を生成可能にする部分行列を形成し、滑らかな関数の基底関数の行列に部分行列を乗算して推移生成行列を形成し、推移生成行列に変数の測定値のベクトルを乗算する。変数の近似推移を単純に形成することを可能にするこの実施形態は、最小偏差での変数の測定値への近似を得るという要求を同様に満たす。その際に、近似及び補正は、変数の測定値に推移生成行列を単純に乗算することに基づく。一度形成された推移生成行列を用いて、さまざまな測定を用いて得られる変数の測定値の近似推移をそれぞれ形成することが可能である。
【0036】
本方法の一発展形態では、本方法で実行される測定は、複数の別個の非重複部分領域、及びさらに、別個の非重複部分領域の少なくとも1つと重複するパラメータ範囲の少なくとも1つのさらに別の部分領域に関するものである。この方法変形形態に関して種々の構成が考慮され得る。
【0037】
例として、本方法で考慮される分離した部分領域の少なくとも1つの部分領域が、変数の共通の測定値が提供される一体化部分領域である可能性がある。このような一体化部分領域は、重複部分領域から構成され得る。関心の変数の共通の測定値は、個々の重複部分領域で最初に得られた測定値の適切な前処理又は補正に基づいて提供され得る。例として、ステッチング法をこの目的で実行することができる。続いて、一体化部分領域及び関連する共通の測定値は、滑らかな関数及び部分領域関数を用いて実行される補正又は近似で用いることができる。ここで、対応する部分領域関数を一体化部分領域に割り当てることができ、補正手順を上述したように、又は上記実施形態の1つ(例えば、変数の補正値を形成する、補正目的で部分領域関数の係数を求めて用いる、関数行列、補正行列、推移生成行列等の擬似逆行列を用いる)に従って実行することができる。一体化部分領域に割り当てられた部分領域関数は、これにより変数の個々の変更をもたらすことができるか又は変数がいずれの場合も部分領域で同じ値だけ変更可能であるように選択される。
【0038】
複数の一体化部分領域を形成し、その測定値を提供し、且つ補正及び近似でこれらを考慮することも可能である。測定が他の部分領域と重複する複数のさらに他の部分領域に関するものである場合に、これが考慮され得る。
【0039】
別個の非重複部分領域の少なくとも1つと重複するパラメータ範囲の少なくとも1つのさらに別の部分領域で変数の測定値が提供される、本方法のさらに別の実施形態では、上記さらに別の部分領域に割り当てられたさらに別の部分領域関数で近似が実行され、このさらに別の部分領域関数を用いて、変数の個別変化をパラメータ範囲の上記さらに別の部分領域で引き起こすことができる。上記さらに別の部分領域関数は、これにより関心の変数がいずれの場合も該当の部分領域で同じ値だけ変更可能であるように選択され得る。複数のさらに他の部分領域がある場合、複数のさらに他の部分領域関数を対応して用いることができる。
【0040】
したがって、上述した変形形態と比べて、部分領域の前処理又は結合がない。その代わりに、さらに別の重複部分領域が残りの部分領域のように処理される。ここで、補正手順を上述したように、又は上記実施形態の1つ(例えば、変数の補正値を形成する、補正目的で部分領域関数の係数を求めて用いる、関数行列、補正行列、推移生成行列等の擬似逆行列を用いる)に従って実行することができる。この構成では、重複部分領域の重複範囲の二重近似又は3つ以上の重複部分領域の場合には多重近似があり得る。
【0041】
本方法及びそのさまざまな実施形態は、種々の変数を考慮して用いることができる。例として、光学変数が考慮される。ここで、パラメータ範囲は、2つの空間座標を含み、像視野を表す。
【0042】
例として、光学変数は歪変数とすることができ、これを用いて像視野で生じる歪、例えば糸巻形又は樽形歪を再現することが可能である。本方法を用いて、上記のような歪変数の誤差のある測定値を補正することができ、上記測定値は、像視野の複数の分離した部分領域で得られる。例として、この場合、例えば歪変数の近似推移を像視野において形成すること及び/又は補間及び/又は外挿の目的で変数の補完値を形成することにより、像視野全体の歪の再構成を考慮することが可能であり得る。
【0043】
光学変数のさらに別の例は、波面収差である。例として、波面収差は、波面展開のゼルニケ多項式の係数の形態で存在し得る。例として、これは、ゼルニケ多項式Z2若しくはZ3の歪再現ゼルニケ係数若しくは場合によっては局所的な像オフセット再現ゼルニケ係数、又はゼルニケ多項式Z4の焦点オフセット再現ゼルニケ係数であり得る。ここで考慮されるゼルニケ多項式Z2、Z3、Z4は、Nollの指数(Noll's indices)に従ったゼルニケ多項式である。上述したように、像視野の分離した部分領域で提供される波面収差の誤差のある測定値を補正するために、本方法を用いることができる。
【0044】
光学変数に関して、さらに別の実施形態によれば、測定を、空間分解センサを用いて実行される放射線測定とする。例として、空間分解センサは、複数の放射線感応センサ素子又はピクセルを有する電子センサであり得る。例として、センサは、放射線感応フォトダイオードを有するCCD(電荷結合素子)センサの形態で実現され得る。適当なさらなる処理又は評価の後、センサの測定信号を、像視野の像点に関する光学変数の空間依存測定値に変換することができる。
【0045】
空間分解センサを用いた像視野の複数の且つ/又は分離した部分領域の像点における光学変数の測定値の提供は、さまざまな方法で実施することができる。例として、測定のために種々の測定位置にセンサを配置することが考慮され得る。その際に、センサを用いて複数の部分測定を連続して実行し、センサを部分測定毎に個々の測定位置に移動させる。このような手順において、光学変数の測定値を像視野の個々の部分領域で異なる程度に改竄し得る測定誤差が、センサの不正確な位置決めの結果生じ得る。
【0046】
測定のために、非隣接且つ非重複の検出領域を有する複数の部分センサを有する空間分解センサを用いることも可能である。このようにして、像視野の分離した部分領域の像点における光学変数の測定値を提供することも可能である。ここで、光学変数の測定値を像視野の個々の部分領域で異なる程度に改竄し得る測定誤差が、センサの部分センサの位置誤差の結果生じ得る。
【0047】
電子センサ又はCCDセンサに加えて、他の空間分解センサも利用することができる。一例は、感光層、例えば写真乾板又はフィルムを有するセンサである。放射線の測定又は感光層の露光後、感光層を現像することができ、光学変数の空間依存測定値を、層の解析の範囲内で像視野の像点において提供することができる。例として、光学変数の測定値を、層の部分領域にのみ関係する解析により像視野の分離した部分領域で提供することができ、層が部分領域のみで照射されるか、又は部分領域に細分された層が用いられる。
【0048】
光学変数の代わりに、パラメータ範囲の複数の分離した部分領域で測定された他の変数に関して、本方法を用いることもできる。可能な例は、試験対象物の高さ又は鉛直方向範囲である。この場合、測定を用いて2次元像視野の分離した部分領域で対応する空間依存測定値を提供し、且つ上記方法を実行することにより測定誤差を補正することが同様に考えられ得る。例として、原子間力顕微鏡を用いて、又は表面干渉計を用いて高さを測定することができる。
【0049】
本発明のさらに別の態様によれば、光学系の結像光学ユニットを調整する方法が提案される。ここで、上記方法又は上記実施形態の1つに従って構成された方法が、結像光学ユニットからの放射線を照射されることができる空間分解センサを用いて補正光学変数を求めるために実行される。さらに、結像光学ユニットは、補正光学変数に基づいて調整される。
【0050】
上記のように例えば種々の測定位置におけるセンサでの測定又は複数の部分センサを有するセンサの使用により実行され得る、像視野の複数の分離した部分領域での光学変数の測定値の提供により、費用効果の高い測定が可能である。これに伴う測定誤差の補正は、高い信頼性及び精度で結像光学ユニットの調整を実行することを可能にする。結像光学ユニットの結像特性は、補正光学変数を用いて正確に再現することができ、その結果として、上記結像特性は、調整の範囲内で考慮及び最適化され得る。光学変数の測定値の改竄につながる想定誤差の影響は、補正によりほぼ排除することができる。
【0051】
調整法を考慮して、近似及び補正で用いられる滑らかな関数又はその基底関数を、結像光学ユニットの光学特性の知識に基づいて設定することができる。
【0052】
例として、補正光学変数を求めることは、調整を実行する基礎となるが、これは光学変数の補正値の形成を含み得る。付加的又は代替的に、光学変数の近似推移を形成し且つ/又は光学変数の少なくとも1つの補完値を形成することができる。
【0053】
空間分解センサは、光学系のコンポーネントであってもそうでなくてもよい。第2変形形態では、センサは、例えば光学系の設計の範囲内で用いることができる。
【0054】
空間分解センサを用いて実行される放射線測定に関して、光学変数の空間依存測定値を提供する際に基づく1つ又は複数の適切な試験構造又はマークを、部分領域毎に又は相互に離れて測定される像視野に結像することがさらに考えられ得る。この目的で、例えば、試験構造(単数又は複数)を有し且つ使用放射線によって照射される物体、例えばレチクルを利用することができる。物体からの放射線、すなわち透過又は反射放射成分は、結像光学ユニットにより空間分解センサへ誘導され得る。
【0055】
本発明のさらに別の態様によれば、少なくとも1つのパラメータのパラメータ範囲で少なくとも1つのパラメータに応じて補正変数を求める装置が提案される。本装置は、パラメータ範囲の複数の別個の非重複部分領域で変数の測定値を提供することを可能にする測定デバイスを備える。本装置は、変数の測定値を補正する評価デバイスをさらに備える。評価デバイスは、変数の測定値を滑らかな関数と部分領域に割り当てられた部分領域関数とにより近似する近似を用いて、補正を実行するよう具現される。滑らかな関数を用いて、変数の推移がパラメータ範囲において再現可能である。部分領域関数を用いて、変数の個別変化をパラメータ範囲の部分領域で引き起こすことが可能である。
【0056】
変数の測定値は、本装置のパラメータ範囲の複数の分離した部分領域で提供され得る。したがって、測定装置は、費用効果の高い設計を有し得る。これに関連して生じ得る影響は、変数の測定値それぞれが、パラメータ範囲の個々の部分領域の他の部分領域とは無関係の個別測定誤差を有するというものだが、これは評価デバイスを用いた補正により抑制することができる。
【0057】
なお、補正法及び調整法に関して上述した態様及び詳細を本装置でも用いることができる。なお、これに関してさらに、光学系の結像光学ユニットの上記調整の範囲内で本装置を用いるという選択肢がある。
【0058】
さらに、本方法及び/又は本装置を用いて共通のパラメータ範囲で複数の補正変数を求めるという選択肢がある。その際に、複数の変数の測定値を、パラメータ範囲の複数の分離した部分領域で提供することができ、上述のように、(いずれの場合も専用の近似を用いた)専用の別個の誤差補正を変数毎に実行することができる。例として、補正値、近似推移、及び/又は少なくとも1つの補完値が、考慮される変数毎に提供され得る。例として、これは、上記波面収差又は波面展開のゼルニケ多項式の係数等の光学変数に関して考慮され得る。
【0059】
関心の変数、特に波面収差等の光学変数が多数ある場合、さまざまな変数間のクロストークが生じ得る。ここで、第1変数に関する測定誤差又はオフセット誤差の誤差原因が、少なくとも1つのさらに別の第2変数の測定改竄も引き起こし得る。例として、焦点オフセットを再現するゼルニケ多項式Z4の係数を測定する際に測定誤差を引き起こすセンサの不正確な位置決めは、像オフセットを再現するゼルニケ多項式Z2及び/又はZ3のゼルニケ係数に関する測定誤差にもつながる。
【0060】
クロストークは、第2変数または第2変数の測定値の追加補正を、近似を用いた上記手法に従って実行される第1変数の誤差補正に基づいて実行することにより、抑制することができる。例として、第2変数の追加補正は、第1変数の誤差補正の範囲内で求められた部分領域関数の係数に基づいて実行することができる。第2変数の追加補正は、近似を用いた上記手法に従って実行される第2変数の誤差補正の前又は後に提供され得る。
【0061】
なお、さらに、パラメータ範囲の部分領域で個別に生じるオフセット誤差を抑制するだけでなく測定誤差も抑制するために、本方法及び/又は本装置を用いる可能性もある。このために、パラメータ範囲の部分領域のこのような測定誤差の発生を再現することができる適切な部分領域関数が用いられる。
【0062】
例として、これに関して、全ての部分領域関数又は集約した部分領域関数の一部又は部分群がパラメータ範囲における滑らかな推移を記述する、部分領域関数の使用を考慮することができる。この場合に一意的な近似を容易にするために、全ての部分領域関数に、又は部分領域関数の部分集合に関して、和がゼロに等しい変更部分領域関数を提供することが考えられる。例として、これは、これらの部分領域関数全てのスケーリング和をこれらの部分領域関数のそれぞれから減算することにより可能であり、スケーリングファクタは、これらの部分領域関数の数の逆数とする。一意的な近似を容易にするさらに他の手順が、部分領域関数を変更する代替として考えられる。例として、部分領域関数の関連係数は、考慮される変数の測定値のベクトルからの減算のために提供された上記積(部分領域関数の行列と部分領域関数の係数のベクトルとの積)を形成する前に適宜変更することができる。
【0063】
さらに、複数の波面収差を考慮して以下の手順が考慮され得る。
【0064】
本発明のさらに別の態様によれば、像視野において、2つの空間座標に応じた複数の補正波面収差を求める方法が提案される。本方法は、空間分解センサを用いて放射線測定を実行するステップを含み、複数の波面収差の測定値を像視野の複数の別個の非重複部分領域で提供する。本方法はさらに、波面収差の測定値を波面収差に割り当てられた複数の滑らかな関数と像視野の部分領域に割り当てられた部分領域関数とにより近似する近似を用いて、複数の波面収差の測定値の共通補正を実行するステップを含む。像視野における複数の波面収差の推移は、滑らかな関数を用いて再現可能である。複数の波面収差の測定値に対する空間分解センサの不正確な位置決めの影響は、部分領域関数を用いて再現可能である。
【0065】
測定値が像視野の複数の部分領域で提供されるので、この方法は費用効果の高い測定を容易にする。この結果として、センサの不正確な位置決めに起因して測定値が測定誤差を有し得る。別個の誤差補正を実行する代わりに、上述した方法で、関心の波面収差が共に処理されると同時に近似される。像視野における波面収差の推移を再現可能にする、考慮される波面収差に割り当てられた滑らかな関数と、像視野の部分領域に割り当てられた部分領域関数とが利用される。部分領域関数は、これらが測定波面収差に対するセンサの不正確な位置決めの実際の効果を再現又はモデリングするように選択される。このようにして、波面収差の正確で確実な補正が可能であり、したがって、実際の波面収差とよく対応する補正波面収差を提供することが可能である。
【0066】
測定波面収差に対する空間分解センサの不正確な位置決めの効果は、例えばビーム伝播による測定又はシミュレーションを用いて例えば求めることができる。これに基づいて、本方法で用いる部分領域関数を設定することが可能である。例として、並進自由度及び回転自由度に関する不正確な位置決めを、部分領域関数を用いて記述することができる。直交xyz座標系に関して、dx並進、dy並進、dz並進、及びdrx回転、dry回転、drz回転をモデリングすることが可能である。
【0067】
複数の波面収差の共通補正の方法のさらに他の可能な実施形態及び詳細を以下で説明する。その際に、単一の補正変数を求める方法に関して上述したのと同じか又はこれに対応する特徴及び類似のステップを大部分用いることが可能である。この意味の範囲内で、上記説明を参照されたい。
【0068】
例として、波面収差は、光学系の結像光学ユニットにより引き起こされ得る。放射線測定の範囲内で、空間分解センサに結像光学ユニットからの放射線を照射することができる。なお、これに関しては、複数の補正波面収差を求める方法を実行すると共にそれに基づいて結像光学ユニットを調整する可能性がある。
【0069】
例として、本方法を用いて補正された波面収差は、波面展開のゼルニケ多項式の係数の形態で利用可能であり得る。例として、本方法を用いて、ゼルニケ多項式Z2、Z3、及びZ4のゼルニケ係数を共に補正することが可能である。
【0070】
さらに別の実施形態では、空間分解センサは種々の測定位置に配置される。ここで、センサの不正確な位置決めにより測定誤差が生じ得る。
【0071】
空間分解センサが複数の部分センサを有することも可能である。ここで、不正確な位置決め及びその結果としての測定誤差が、センサの部分センサの位置誤差の結果生じ得る。
【0072】
用いられる滑らかな関数は、それぞれが複数の基底関数を含み得る。例として、滑らかな関数は多項式関数であり得る。
【0073】
さらに別の実施形態では、補正は、複数の波面収差の補正値の形成を含む。ここで、波面収差の誤差のある測定値を、再構成値とも称することができる対応する補正値で置き換えることができる。
【0074】
さらに別の実施形態では、近似は、部分領域関数の係数を求めることを含む。さらに、複数の波面収差の測定値が、部分領域関数の係数を用いて補正される。このようにして、波面収差の誤差のある測定値を置き換えるために補正値を形成することが可能である。
【0075】
例えば関数行列又はその擬似逆行列等の成分を用いる上記方法の変形形態を同様に用いることができる。可能な実施形態を以下でより詳細に説明する。
【0076】
さらに別の実施形態では、近似は、部分領域関数及び滑らかな関数の基底関数から関数行列を形成すること、関数行列の擬似逆行列を形成すること、及び関数行列の擬似逆行列に複数の波面収差の測定値のベクトルを乗算して係数ベクトルを形成することを含む。係数ベクトルは、部分領域関数の係数及び滑らかな関数の基底関数の係数を含む。このようにして、最小偏差での滑らかな関数及び部分領域関数による波面収差の測定値への近似に対する要件を満たし、且つ部分領域関数の係数を確実に提供することが可能である。
【0077】
さらに別の実施形態では、補正は、部分領域関数の行列に(近似により求められた)部分領域関数の係数のベクトルを乗算して積を形成すること、及び積をその平均値を除いて複数の波面収差の測定値のベクトルから減算することを含む。このようにして、実際の波面収差に実質的に対応し得る波面収差の補正値を形成することが可能である。
【0078】
積は、全ての近似部分領域関数の入力又は重み付けに関係し得る。「その平均値を除いて」という語句は、積の平均値が積から減算され、この項が複数の波面収差の測定値のベクトルから減算されることにより成立し得る。これにより達成可能なのは、波面収差の測定値の主に相対的な差、すなわち像視野の部分領域毎に存在し且つ測定誤差に基づく差の補正である。したがって、像視野の全ての部分領域にわたる一様又は大域的な補正が回避される。
【0079】
さらに別の実施形態では、ゼロ平均値を有する部分領域関数が用いられる。これらは、像視野に関して平均値ゼロを有する部分領域関数である。このような部分領域関数は、平均値を有する各部分領域関数からそれぞれ関連する平均値を減算することにより形成することができる。ゼロ平均値を有する部分領域関数の使用は、一意的な近似を容易にし、積の平均値の上記減算が近似及び補正に暗示的に含まれることを可能にする。ここで、積は平均値ゼロを有し、その結果として減算を省くことが可能である。したがって、上記補正ステップに関して、ゼロ平均値を有する部分領域関数を用いるならば、積を複数の波面収差の測定値のベクトルから単に減算することが可能である。
【0080】
さらに、一意的な近似を容易にする以下のさらに他の実施形態が考えられる。例として、簡単のために不正確な位置決めの程度を部分領域関数毎に同じサイズとして、特定の自由度に関するセンサの不正確な位置決めの効果を部分領域関数の全部または一部により再現しようとする場合、これらの部分領域関数に対して、和がゼロに等しい変更部分領域関数を提供することが可能である。これは、これらの部分領域関数全てのスケーリング和をこれらの部分領域関数のそれぞれから減算することにより可能であり、スケーリングファクタは、これらの部分領域関数の数の逆数とする。これにより達成され得ることとして、これらの部分領域関数は、この自由度に関するセンサの位置決めの差のみを検出するが大域的な不正確な位置決めは検出しない。部分領域関数を変更する代替として、これは、複数の波面収差の測定値のベクトルからの減算のために提供された上記積(部分領域関数の行列と部分領域関数の係数のベクトルとの積)を形成する前に、関連係数を適宜変更することにより達成され得る。
【0081】
さらに別の実施形態では、関数行列を部分領域関数及び滑らかな関数の基底関数から形成し、関数行列の擬似逆行列を形成し、関数行列の擬似逆行列から、部分領域関数の係数を生成可能にする部分行列を形成し、部分領域関数の行列に部分行列を乗算して積を形成し、積を恒等行列から減算して補正行列を形成し、補正行列に複数の波面収差の測定値のベクトルを乗算することにより、近似及び補正が共に実行される。この実施形態は、複数の波面収差の補正値を単純に形成することを可能にするものであり、最小偏差での滑らかな関数及び部分領域関数による波面収差の測定値への近似を得るという要求を同様に満たす。
【0082】
波面収差の補正値を形成するのに加えて、又はその代替として、補正が複数の波面収差の近似推移の形成を含むさらに別の実施形態を実行することが可能である。これは、スポット雑音の排除を容易にする。複数の波面収差の測定値を近似推移で置き換えることが考慮され得る。
【0083】
さらに、波面収差の少なくとも1つの、波面収差の測定値が存在しない空間座標に属する少なくとも1つの補完値を形成することにより、補間及び/又は外挿を実行することができる。この実施形態は、該当の波面収差の近似推移に基づいて実行され得る。
【0084】
複数の波面収差の近似推移の形成は、以下の実施形態を用いて実施することができる。ここで、部分領域関数及び滑らかな関数の基底関数から関数行列を形成し、関数行列の擬似逆行列を形成し、関数行列の擬似逆行列から、滑らかな関数の基底関数の係数を生成可能にする部分行列を形成し、滑らかな関数の基底関数の行列に部分行列を乗算して推移生成行列を形成し、推移生成行列に複数の波面収差の測定値のベクトルを乗算する。複数の波面収差の近似推移を単純に形成することを可能にするこの実施形態は、最小偏差での波面収差の測定値への近似を実現するという要求を同様に満たす。
【0085】
上記方法に関して、放射線測定が複数の別個の非重複部分領域と、さらに、当該別個の非重複部分領域の少なくとも1つと重複する像視野の少なくとも1つのさらに別の部分領域とに関するものであることが考えられる。ここで、本方法で考慮される分離した部分領域の少なくとも1つの部分領域は、複数の波面収差の共通の測定値が提供され且つ割り当てられた部分領域関数が不正確なセンサ位置決めの影響の再現に用いられる一体化部分領域であるとみなすことができる。このような一体化部分領域は、重複部分領域から構成され得る。一体化部分領域の複数の波面収差の共通の測定値は、個々の重複部分領域で最初に得られた測定値の適切な前処理(例えばステッチング)に基づいて提供され得る。続いて、一体化部分領域及び関連する測定値を、滑らかな関数及び部分領域関数を用いて実行される共通の補正又は近似で用いることができる。複数の一体化部分領域を形成及び考慮することも可能である。
【0086】
一体化部分領域の処理の代わりに、以下の実施形態も可能である。ここで、複数の波面収差の測定値が、別個の非重複部分領域の少なくとも1つと重複するパラメータ範囲の少なくとも1つのさらに別の部分領域で提供され、上記さらに別の部分領域に割り当てられ且つ空間分解センサの不正確な位置決めを再現可能にするさらに別の部分領域関数を用いて、近似が実行される。さらに別の部分領域が複数ある場合、複数の関連する部分領域関数が対応して用いられる。
【0087】
さらに、像視野において2つの空間座標に応じて複数の補正波面収差を求める対応の装置を利用することができる。本装置は、放射線測定を実行する空間分解センサを備え、これを用いて、像視野の複数の別個の非重複部分領域で複数の波面収差の測定値を提供することが可能である。本装置はさらに、複数の波面収差の測定値を共に補正する評価デバイスを備える。評価デバイスは、波面収差の測定値を波面収差に割り当てられた複数の滑らかな関数と像視野の部分領域に割り当てられた部分領域関数とにより近似する近似を用いて、補正を実行するよう具現される。滑らかな関数を用いて、像視野における複数の波面収差の推移が再現可能である。部分領域関数を用いて、複数の波面収差の測定値に対する空間分解センサの不正確な位置決めの影響を再現可能である。
【0088】
複数の波面収差の共通補正の方法に関して上述した態様及び詳細を本装置でも用いることができる。
【0089】
上述し且つ/又は従属請求項で再現される本発明の有利な実施形態及び発展形態は、例えば明確な従属関係又は不適合な代替形態の場合を除いて個別に、又は相互に任意の組み合わせで用いることができる。
【0090】
概略図に基づいて、本発明を以下でより詳細に説明する。