(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タンタルアルコキシドは、タンタル(V)−メトキシド、タンタル(V)−エトキシド、又はタンタル(V)−n−ブトキシドである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態は、明細書及び特許請求の範囲において見出され得る。異なる実施形態の組み合わせは本発明の範囲に入る。
【0010】
本発明による方法は、水を含まない溶液を加熱することを含む。本発明の文脈において水を含まないとは、典型的には、溶液が500ppm未満、好ましくは200ppm未満、特に100ppm未満、例えば50ppm未満の水分含有量を有することを意味する。 「ppm」という用語は、一般的に使用されているように百万分の一のことを指す。溶液の水分含有量は、例えば、DIN51777−1 part1(1983)に詳細に記載されているカールフィッシャー(Karl Fischer)に従う直接滴定により決定され得る。
【0011】
加熱する前に、溶液は均質であることが好ましいが、これは全ての化合物が溶解していることを意味する。溶液は、常圧で0〜400℃の範囲、より好ましくは25〜350℃の範囲、例えば50〜300℃の範囲で液体であることが好ましい。
本発明によれば、水を含まない溶液は、タンタルアルコキシドを含有する。好ましくは、タンタルアルコキシド中のタンタルは、+5の酸化状態にある。アルコキシドとして、直鎖状及び分枝状アルコキシドが挙げられる。直鎖状アルコキシドの例は、メトキシド、エトキシド、n−プロピルオキシド、n−ブチルオキシド、n−ペンチルオキシド、n−ヘキシルオキシド、n−ヘプチルオキシド、n−オクチルオキシド、n−ノニルオキシド、n−デシルオキシドである。分枝状アルコキシドの例は、イソプロピルオキシド、イソブチルオキシド、sec−ブチルオキシド、tert−ブチルオキシド、2−メチルペンチルオキシド、2−エチルヘキシルオキシド、シクロプロピルオキシド、シクロヘキシルオキシド、インダニルオキシド、ノルボルニルオキシドである。好ましくは、アルコキシドは、C
1〜C
12アルコキシド、より好ましくはC
1〜C
8アルコキシド、特にC
1〜C
4アルコキシドである。タンタルアルコキシド中のアルコキシドは、全て同じであるか又は互いに異なっており、好ましくは全て同じであることが可能である。タンタルアルコキシドの好ましい例は、タンタル(V)−メトキシド、タンタル(V)−エトキシド、タンタル(V)−n−ブトキシドである。
【0012】
水を含まない溶液中のタンタルアルコキシドの濃度は、好ましくは10〜200mmol/l、より好ましくは30〜150mmol/l、特に50〜100mmol/lである。
【0013】
本発明によれば、水を含まない溶液は、酸を含有する。酸は、好ましくは、タンタルアルコキシドのアルコキシドと共にエステルを形成することができる。酸として、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸、スルホン酸が挙げられる。カルボン酸が好ましい。カルボン酸として、直鎖状飽和酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、イコサン酸が挙げられる。カルボン酸として、更に、不飽和直鎖状酸、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、アセン酸(accenic acid)、リノール酸、リノエライジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸が挙げられる。カルボン酸として、更に、分枝状カルボン酸、例えばsec−酪酸又はピバル酸が挙げられる。C
1〜C
26カルボン酸が好ましく、C
4〜C
24カルボン酸がより好ましく、特にC
8〜C
22カルボン酸、例えばオレイン酸が好ましい。
【0014】
水を含まない溶液中の酸のタンタルアルコキシドに対するモル比は、好ましくは2.5〜50、より好ましくは5〜30、特に10〜20である。
【0015】
本発明によれば、水を含まない溶液は、溶媒を含有する。タンタルアルコキシド及び酸を溶解する全ての溶媒を使用することができる。非極性溶媒が好ましい。非極性溶媒は、典型的には、1.65D(Debye)以下、好ましくは1.6D以下、特に1.5D以下の双極子モーメントを有する。溶媒として、飽和脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、オクタン、デカン、イソウデカン、ヘキサデカン、デカリン;不飽和脂肪族炭化水素、例えばオクテン、ウンデセン、ヘキサデセン;及び芳香族炭化水素、例えばキシレン、メシチレン、テトラリン、ニトロベンゼンを含む炭化水素が挙げられる。更に好適な溶媒は、エーテル、例えばジヘキシルエーテル又はジフェニルエーテル;アミド、例えばジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;エステル、例えば酪酸ブチルエステル、ラウリン酸エチルエステル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド又はスルホランである。炭化水素が好ましく、C
6〜C
30の炭化水素がより好ましく、特にC
12〜C
24の炭化水素が好ましい。
【0016】
本発明によれば、水を含まない溶液は加熱される。好ましくは、水を含まない溶液を、120〜400℃、より好ましくは150〜320℃、特に180〜260℃の温度に加熱する。水を含まない溶液を、好ましくは、この温度で1分〜5時間、より好ましくは5〜60分、特に10〜30分間維持する。水を含まない溶液は、好ましくは、1〜100℃/分、より好ましくは5〜50℃/分、特に10〜30℃/分の加熱速度で加熱される。加熱は、通常、電気加熱又は蒸気システムの熱交換器により達成される。あるいは、マイクロ波を利用した加熱が可能である。好ましくは、水を含まない溶液は、加熱の際に、化合物の均質な分布及び熱を確保するために、例えば攪拌により、運動している状態で維持される。
【0017】
いずれの理論にも拘束されることなく、水を含まない溶液中の酸は、加熱するとタンタルアルコキシドのアルコキシドとエステルを形成し、それによって結晶性タンタル酸化物粒子の形成を引き起こす非常に小さく且つちょうど十分な量の水を提供すると考えられる。
【0018】
好ましくは、水を含まない溶液はアミンを更に含有する。水を含まない溶液に溶解することができる任意のアミンを使用することができる。好ましくは、第1級アミン、特にモノアルキルアミン(アルキル鎖が直鎖状又は分枝状であり得、置換され得、二重又は三重結合などの不飽和結合を含有し得る。)が使用される。モノアルキルアミンの例は、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オレイルアミンである。アミンのタンタルに対するモル比は、好ましくは2.5〜50、より好ましくは5〜30、特に10〜20である。
【0019】
本発明による方法は、タンタル酸化物を含有する結晶性粒子を生成する。これらは、1〜20nm、好ましくは2〜15nm、より好ましくは3〜10nm、特に4〜8nmの重量平均直径を有する。重量平均直径は、好ましくはMie理論を用いて、ISO22412(2008)に従って動的光散乱により好ましく測定される。粒子は、動的光散乱により測定される粒子径分布D90/D50の低い分散度、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下、特に1.1以下のD90/D50値を有する。
【0020】
粒子は結晶性である。本発明の文脈における結晶性は、ナノ粒子の結晶化度が、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも90%であることを意味する。結晶化度は、HR−TEMで視覚的に観察される粒子の重量平均半径と、Debye−Scherrer式を使用するX線回折パターン(XRD)の支配的なピークの半値幅(FWHM)での全幅の評価により決定された粒子の半径との比として定義される。1の比は100%の結晶化度を決定する。
【0021】
粒子は、非極性溶媒中に懸濁された場合、凝集に対して安定である。好ましくは、粒子は、それらの表面上に、安定剤として作用する酸、より好ましくは上記のようなカルボン酸を有する。
【0022】
結晶性粒子は、酸化物超電導体のピンニングセンターとして特に好適である。結晶性粒子の利点は、粒子径が小さいことにより高いピンニング効果を生成する一方で、粒子は高温で超伝導体の形成中に部分的に溶解せず、それ故、超伝導材料を汚染しないことである。好ましくは、超伝導体はREBa
2Cu
3O
7−x(式中、REは希土類又はイットリウムを表し、xは0.01〜0.3である。)を含有し、より好ましくは超伝導体はYBa
2Cu
3O
7−xを含有する。
【0023】
好ましくは、超電導体は、
(a)イットリウム又は希土類含有化合物、
(b)アルカリ土類金属含有化合物、
(c)遷移金属含有化合物、
(d)アルコール、及び
(e)本発明による粒子、
を含有するインクの化学溶液堆積(chemical solution deposition)により作製される。
【0024】
イットリウム又は希土類金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物及び遷移金属含有化合物には、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、カルボキシレート、アルコキシレート、ナイトレート又はスルフェートが含まれる。カルボキシレート、特にアセテート又はプロピオネートが好ましい。カルボキシレート及びアルコキシレートは、好ましくはフッ素により置換されていてよく、例えばジフルオロアセテート、トリフルオロアセテート、又は部分的に又は完全にフッ素化されたプロピオネートである。
【0025】
希土類金属又はイットリウム含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物及び遷移金属含有化合物のうちの少なくとも1つは、フッ素を含有する。好ましくは、アルカリ土類金属含有化合物は、例えばトリフルオロアセテートとしてフッ素を含有する。
【0026】
好ましくは、イットリウム又は希土類金属は、イットリウム、ジスプロシウム、又はエルビウム、特にイットリウムである。好ましくは、アルカリ土類金属はバリウムである。好ましくは、遷移金属は銅である。
【0027】
好ましくは、インク中の遷移金属含有化合物とイットリウム又は希土類金属含有化合物のモル比は、3:0.7〜3:2の間、より好ましくは3:1.2〜3:1.4である。好ましくは、インク中の遷移金属含有化合物とアルカリ土類金属含有化合物のモル比は、3:1〜3:2の間、より好ましくは3:1.7〜3:1.9である。
【0028】
インクは、上記プロセスについて記載したようなアルコールを更に含有する。好ましくは、アルコールは、メタノールとC
2〜C
12アルコールとの混合物である。
【0029】
インクは、希土類金属又はイットリウム含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物及び遷移金属含有化合物を、製造されるべき超伝導体におけるそれぞれの金属のモル組成を考慮して、超伝導体の成長及び/又は特性にとって最適とされるモル比で含有する。それ故、それらの濃度は、製造される超伝導体に依存する。それ故、それらの濃度は、製造される超伝導体に依存する。一般に、溶液中のそれらの濃度は、互いに独立して、0.01〜10mol/l、好ましくは0.1〜1mol/lである。
【0030】
好ましくは、インクは、タンタル酸化物粒子を、タンタル酸化物粒子中の金属のイットリウム又は希土類含有化合物に対するモル比が1〜30%、より好ましくは3〜20%、特に5〜15%である濃度で含有する。多くの場合、これは、インクに対して0.1〜5質量%のナノ粒子に相当する。
【0031】
好ましくは、タンタル酸化物を含有する結晶性粒子は、少なくともリン酸基及びエステル基又は少なくとも2つのカルボン酸基を含有する有機化合物により追加的に安定化される。より好ましくは、タンタル酸化物を含有する結晶性粒子は、一般式(I)の化合物により追加的に安定化される。
【0033】
(式中、aは0〜5であり、
b及びcは、互いに独立して、1〜14であり、
nは1〜5である。)
【0034】
好ましくは、aは0である。好ましくは、bは2〜10、より好ましくは3〜8である。好ましくは、cは2〜10、より好ましくは3〜6である。好ましくは、nは2〜4である。一つの好ましい例では、aは0であり、bは6であり、cは5であり、nは3である。
【0035】
また、好ましくは、少なくともリン酸基及びエステル基又は少なくとも2つのカルボン酸基を含有する有機化合物は、一般式(II)の化合物である。
【0037】
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、H、OH、又はCOOHであり、
mは1〜12である。)
【0038】
mが1より大きい場合、R
1及びR
2は、全て同じであるか又は互いに異なっている。一般式(II)の化合物の例として、R
1及びR
2が水素であるジカルボン酸、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸;ヒドロキシル基を有するジカルボン酸、例えばタルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸;又はトリカルボン酸、例えばクエン酸又はイソクエン酸が挙げられる。
【0039】
少なくともリン酸基及びエステル基又は少なくとも2つのカルボン酸基を含有する別の好ましい有機化合物は、一般式(III)の化合物である。
【0041】
(式中、e及びfは、互いに独立して、0〜12である。)好ましくは、eは0である。好ましくは、fは2〜6である。
【0042】
少なくともリン酸基及びエステル基又は少なくとも2つのカルボン酸基を含有する別の好ましい有機化合物は、一般式(IV)の化合物である。
【0044】
(式中、fは0〜5であり、
p及びqは、互いに独立して、1〜14、好ましくは2〜12である。)qに対するpの比は、好ましくは20:80〜80:20、特に40:60〜60:40である。
【0045】
アセトンなどの高極性溶媒により結晶性粒子を懸濁液から沈殿させ、沈殿物を分離し、沈殿物をアルコール中で少なくともリン酸基及びエステル基又は少なくとも2つのカルボン酸基を含有する有機化合物と再分散させることにより、少なくともリン酸基及びエステル基又は少なくとも2つのカルボン酸基を含有する有機化合物をタンタル酸化物を含有する結晶性粒子と接触させる。あるいは、少なくともリン酸基及びエステル基又は少なくとも2つのカルボン酸基を含有する有機化合物を結晶性粒子の懸濁液に添加し、高沸点アルコールを添加し、低沸点溶媒を蒸発により除去する。
【0046】
好ましくは、インクは、安定化剤、湿潤剤及び/又は他の添加剤を更に含有する。これらの成分の量は、使用される乾燥化合物の総質量に対して0〜30質量%の範囲で変動し得る。添加材は粘度を調整するために必要とされ得る。添加剤には、ルイス塩基;アミン、例えばTEA(トリエタノールアミン)、DEA(ジエタノールアミン);界面活性剤;ポリカルボン酸、例えばPMAA(ポリメタクリル酸)及びPAA(ポリアクリル酸)、PVP(ポリビニルピロリドン)、エチルセルロースが含まれる。
【0047】
好ましくは、インクを加熱及び/又は撹拌して、全ての成分を均質化(還流など)する。また、インクは、溶液の安定性を高め、堆積プロセスを容易にするために、様々な添加剤を更に含み得る。このような添加剤の例には、湿潤剤、ゲル化剤、及び酸化防止剤が含まれる。
【0048】
本発明のインクで超伝導体を作製するために、インクは通常、基板上に堆積される。インクの堆積は様々な手法で行うことができる。インクは、例えば、ディップコーティング(インク中への基板の浸漬)、スピンコーティング(回転する基板へのインクの適用)、スプレーコーティング(基板上へのインクの噴霧又は霧化)、キャピラリーコーティング(毛細管を介するインクの適用)、スロットダイコーティング(狭いスリットを介するインクの適用)、及びインクジェット印刷により適用され得る。スロットダイコーティング及びインクジェット印刷が好ましい。
【0049】
好ましくは、溶媒の沸点より低い温度、例えば溶媒の沸点より10〜100℃、好ましくは溶媒の沸点より20〜50℃低い温度で、インクを堆積後に蒸発させて膜を形成する。
【0050】
基板は、緩衝及び/又は超伝導層を支持することができる任意の材料であってよ。例えば、好適な基板は、EP830218、EP1208244、EP1198846、EP2137330に開示されている。しばしば、基板は、金属及び/又は合金ストリップ/テープであり、その金属及び/又は合金は、ニッケル、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデン、タングステン及び/又はそれらの合金であってよい。好ましくは、基板はニッケル系である。より好ましくは、基板はニッケル系であり、1〜10at%、特に3〜9at%のタングステンを含有する。積層金属テープ、ガルバニックコーティングなどの第2の金属でコーティングされたテープ、又は好適な表面を有する任意の他の複材料テープも基板として使用することができる。
【0051】
基板は好ましくはテクスチャード加工されている、すなわちテクスチャ加工された表面を有する。基板は、典型的には20〜200μm、好ましくは40〜100μmである。長さは典型的には1mより大きく、幅は典型的には1cmと1mとの間である。
【0052】
好ましくは、イットリウム又は希土類金属、アルカリ土類金属及び遷移金属を含む膜を基板表面に堆積させる前に、例えば電解研磨により基板表面は平坦化される。しばしば、このように平坦化された基板を熱処理に付すことが有利である。この熱処理は、基板を600〜1000℃で2〜15分間加熱する工程を含むが、その時間は、基板が最高温度にある時間のことを指す。好ましくは、熱処理は、水素含有雰囲気などの還元性雰囲気下で行われる。平坦化及び/又は熱処理を繰り返してよい。
【0053】
好ましくは、基板の表面は、15nm未満のDIN EN ISO 4287及び4288に従うrmsを有する粗さを有する。その粗さは、基板表面の微結晶粒の境界内の10×10μmの領域のことを指し、これにより金属基板の粒界が特定の粗さ測定に影響を与えないようになる。
【0054】
好ましくは、基板と膜との間には、1つ以上の緩衝層が存在する。緩衝層は、超伝導体層を支持することができる任意の材料を含有し得る。緩衝層の材料の例には、金属及び金属酸化物、例えば銀、ニッケル、TbOx、GaOx、CeO
2、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、Y
2O
3、LaAlO
3、SrTiO
3、Gd
2O
3、LaNiO
3、LaCuO
3、SrRuO
3、NdGaO
3、NdAlO
3及び/又は当業者に知られているようないくつかの窒化物が含まれる。好ましい緩衝層の材料は、イットリウム安定化酸化ジルコニウム(YSZ);様々なジルコネート、例えばジルコン酸ガドリニウム、ジルコン酸ランタン;チタネート、例えばチタン酸ストロンチウム;及び単純な酸化物、例えば酸化セリウム、又は酸化マグネシウムである。より好ましくは、緩衝層は、ジルコン酸ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、ガドリニウムドープ酸化セリウム及び/又はチタン酸ストロンチウムを含有する。更により好ましくは、緩衝層は、ジルコン酸ランタン及び/又は酸化セリウムを含有する。
【0055】
拡散障壁としてのテクスチャ転写の程度及び効率を高めるために、異なる緩衝材料をそれぞれ含有する複数の緩衝層が基板と膜との間に存在する。好ましくは、基板は、2つ又は3つの緩衝層、例えばジルコン酸ランタンを含む第1の緩衝層及び酸化セリウムを含有する第2の緩衝層を含む。
【0056】
膜を、好ましくは、300〜600℃、好ましくは350〜450℃の温度に加熱して、前駆体の残りの有機部分を除去する。基板をこの温度において1〜30分、好ましくは5〜15分の間、維持する。
【0057】
その後、水及び酸素を含有する雰囲気中で700〜900℃、好ましくは750〜850℃の温度に加熱して膜を結晶化させることが好ましい。水の分圧は、大気の全圧の1〜99.5%であり、酸素の分圧は、大気の全圧の0.5〜90%、好ましくは2〜90%である。更により好ましくは、700〜900℃に加熱する第1段階の間において、水の分圧は大気の全圧の1〜20%、好ましくは1.5〜5%であり、この加熱の第2段階の間において、水の分圧は全圧の90〜99.5%、好ましくは95〜99%である。
【0058】
しばしば、超電導体ワイヤは、より小さなバンドに切断され、例えば電着により、銅などの導電性金属でコーティングすることにより安定化される。
【実施例】
【0059】
実施例1
4.3mLのオレイン酸及び9mLのオクタデセンを真空下で120℃で1時間脱気した。次いで、温度を180℃に上げ、0.25mLのタンタルエトキシドを混合物中に迅速に注入した。反応混合物を更に260℃に加熱し、その温度で15分間維持した後、サンプルを室温に冷却した。粒子を沈殿させ、クロロホルムに再溶解させた。この精製手順を2回繰り返した。
図1に図示する透過型電子顕微鏡(TEM)分析は、粒子はサイズが均一であることを示しており(直径5nm)、粒子が結晶であることが高分解能画像から結論付けることができる。
図2は得られたサンプルのX線回折図を示しており、ピークはタンタル酸化物の結晶面に割り当てられている。