特許第6751337号(P6751337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751337
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】接着フィルムの破断方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   H01L21/78 W
   H01L21/78 X
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-218730(P2016-218730)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-78180(P2018-78180A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 彬
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−283056(JP,A)
【文献】 特開2009−277837(JP,A)
【文献】 特開2012−164739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成された表面を有したウェーハの裏面に貼着されウェーハの外径よりも大きい外径を有した接着フィルムを該分割予定ラインに沿って破断する接着フィルムの破断方法であって、
ウェーハの該分割予定ラインに沿って分割起点を形成するか、またはウェーハの該分割予定ラインに沿ってウェーハを分割するウェーハ加工ステップと、
該ウェーハ加工ステップを実施した後、ウェーハの裏面にウェーハの外径よりも大きい外径を有した該接着フィルムを貼着するとともに、該接着フィルムにエキスパンドシートを貼着するエキスパンドシート貼着ステップと、
該エキスパンドシート貼着ステップを実施した後、該エキスパンドシートを拡張して該接着フィルムを該分割予定ラインに沿って破断する破断ステップと、を備え、
該エキスパンドシート貼着ステップを実施した後、該破断ステップを実施する前に、ウェーハの外周から露出した該接着フィルムを加熱して該エキスパンドシートに溶着する加熱ステップを更に備えた接着フィルムの破断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルムの破断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハを個々のデバイスに分割する方法として、例えば、分割予定ラインに沿ってウェーハの内部にレーザビームを照射することにより、ウェーハの内部に改質層を形成し、その後、強度の低下した分割予定ラインに沿って外力を加えて改質層を起点にウェーハを分割する方法がある。ウェーハに外力を加える装置としては、エキスパンドテープを介して環状のフレームに支持されたウェーハを面方向に拡張することができる拡張装置が用いられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。ウェーハを分割する際には、ウェーハの裏面に例えば接着フィルムが貼着されており、エキスパンドテープを拡張してウェーハとともに接着フィルムを破断している。そして、分割された各デバイスは、接着フィルムを介してダイボンディングフレーム等に実装される。
【0003】
通常、接着フィルムは、貼着装置等において自動でウェーハに貼着されるため、位置ずれなどを考慮して、ウェーハの外径よりも大きい外径を有している。この接着フィルムをウェーハの裏面に貼着すると、ウェーハの外周から接着フィルムがはみ出した状態となるため、エキスパンドシートを拡張して接着フィルムを破断するときにはみ出した部分が破断して、その破片が周囲に飛散しデバイスに付着してチップ不良の原因となる問題があった。そこで、例えば下記の特許文献2において、エアブロー手段によってウェーハの内側から外側へ流れるようにエアーを噴射することにより、飛散した接着フィルムの破片がウェーハの表面に付着することを防止できる破断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−022382号公報
【特許文献2】特開2009−272503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したエアブロー手段によるエアーの噴射によっても、ウェーハの外周から露出した接着フィルムのはみ出し部分に生じた破片が確実にデバイスに付着しないように制御することは難しく、さらなる改善が切望されている。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ウェーハの外周から露出した接着フィルムが破断して生じた破片が、デバイスに付着するのを防止できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、交差する複数の分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成された表面を有したウェーハの裏面に貼着されウェーハの外径よりも大きい外径を有した接着フィルムを該分割予定ラインに沿って破断する接着フィルムの破断方法であって、ウェーハの該分割予定ラインに沿って分割起点を形成するか、またはウェーハの該分割予定ラインに沿ってウェーハを分割するウェーハ加工ステップと、該ウェーハ加工ステップを実施した後、ウェーハの裏面にウェーハの外径よりも大きい外径を有した該接着フィルムを貼着するとともに、該接着フィルムにエキスパンドシートを貼着するエキスパンドシート貼着ステップと、該エキスパンドシート貼着ステップを実施した後、該エキスパンドシートを拡張して該接着フィルムを該分割予定ラインに沿って破断する破断ステップと、を備え、該エキスパンドシート貼着ステップを実施した後、該破断ステップを実施する前に、ウェーハの外周から露出した該接着フィルムを加熱して該エキスパンドシートに溶着する加熱ステップを更に備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる接着フィルムの破断方法は、ウェーハの分割予定ラインに沿って分割起点を形成するか、またはウェーハの分割予定ラインに沿ってウェーハを分割するウェーハ加工ステップと、ウェーハ加工ステップを実施した後、ウェーハの裏面にウェーハの外径よりも大きい外径を有した接着フィルムを貼着するとともに、接着フィルムにエキスパンドシートを貼着するエキスパンドシート貼着ステップと、エキスパンドシート貼着ステップを実施した後、該エキスパンドシートを拡張して該接着フィルムを該分割予定ラインに沿って破断する破断ステップとを備え、エキスパンドシート貼着ステップを実施した後、破断ステップを実施する前に、ウェーハの外周に露出した接着フィルムを加熱してエキスパンドシートに溶着する加熱ステップを更に備えたため、エキスパンドシートを拡張して接着フィルムを分割予定ラインに沿って破断する際に、ウェーハの外周から露出した接着フィルムが破断して生じた破片が周囲に飛散することがなく、個片化された各デバイスに破片が付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ウェーハの一例を示す斜視図である。
図2】ウェーハの表面に表面保護テープを貼着する状態を示す斜視図である。
図3】ウェーハ加工ステップのうち、(a)はレーザビームの照射により分割起点を形成する状態を示す断面図であり、(b)は分割予定ラインに沿ってウェーハを分割する状態を示す断面図である。
図4】エキスパンドシート貼着ステップを示す断面図である。
図5】加熱ステップを示す断面図である。
図6】(a)は破断ステップの実施前の状態を示す断面図である。(b)は破断ステップにより接着フィルムを分割予定ラインに沿って破断する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すウェーハWは、円形板状の被加工物の一例であって、その表面Waに交差する複数の分割予定ラインSで区画された各領域にそれぞれデバイスDが形成されている。一方、ウェーハWの表面Waと反対側の裏面Wbは、レーザビームの照射や研削砥石による研削等による加工が施される被加工面となっている。
【0011】
ウェーハWを分割する前に、図2に示すように、ウェーハWの表面Waに表面保護テープ1を貼着しておく。これにより、ウェーハWの表面Waが表面保護テープ1によって覆われてデバイスDが保護される。以下では、ウェーハWを個々のデバイスDに分割するとともに、ウェーハWの裏面Wbに貼着される接着フィルムを破断する接着フィルムの破断方法について説明する。
【0012】
(1)ウェーハ加工ステップ
まず、図3(a)に示すように、被加工物を保持する保持テーブル10によってウェーハWを吸引保持する。保持テーブル10の上面は、図示しない吸引源からの吸引作用を受けて被加工物を吸引保持する保持面11となっている。そして、保持テーブル10の保持面11でウェーハWの表面Wa側を吸引保持し、ウェーハWの裏面Wb側を上向きに露出させる。
【0013】
続いて、保持テーブル10の上方側に配設されたレーザビーム照射手段20によって、ウェーハWの裏面Wb側からレーザビーム22を照射することにより改質層2を形成する。レーザビーム照射手段20は、レーザビーム22を集光するための集光器21と、ウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビーム22を発振する図示しないレーザ発振器とを少なくとも備える。レーザビーム照射手段20は、上下方向に移動可能となっており、上下に集光器21を移動させてレーザビーム22の集光位置を調整することができる。
【0014】
保持テーブル10に吸引保持されたウェーハWをレーザビーム照射手段20の下方に移動させる。続いて、保持テーブル10を所定の加工送り速度で水平方向(例えばY方向)に加工送りさせつつ、集光器21により、ウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビーム22の集光点をウェーハWの内部に位置付けた状態で、レーザビーム22をウェーハWの裏面Wb側から図1に示した分割予定ラインSに沿って照射する。そして、全ての分割予定ラインSに沿ってレーザビーム22を繰返し照射することにより、ウェーハWの内部に強度の低下した改質層2を形成する。
【0015】
ウェーハWの内部に改質層2を形成した後、図3(b)に示すように、保持テーブル10aの上方側に配設された研削手段30によってウェーハWの裏面Wbを所定の厚みに達するまで研削するとともに、図2に示した個々のデバイスDに分割する。研削手段30は、鉛直方向の軸心を有するスピンドル31と、スピンドル31の下部にマウント32を介して着脱自在に装着された研削ホイール33と、研削ホイール33の下部に円環状に固着された研削砥石34とを備え、研削ホイール33を回転させながら、全体が昇降可能となっている。
【0016】
ウェーハWを研削して分割する際には、表面保護テープ1側を保持テーブル10aで保持してウェーハWの裏面Wbを上向きに露出させ、保持テーブル10aを例えば矢印A方向に回転させる。研削手段30は、研削ホイール33を例えば矢印A方向に回転させながら所定の研削送り速度で下降させ、研削砥石34でウェーハWの裏面Wbを押圧しながら所定の仕上げ厚みに至るまで研削する。ウェーハWの研削中は、回転する研削砥石34が常にウェーハWの裏面Wbの中心を通り、正面視における半径部分に接触する。そして、ウェーハWの裏面Wbに対する研削動作により、改質層2を起点としてウェーハWの表面Waに至るクラックを発生させることで、ウェーハWが個々のデバイスDに分割される。
【0017】
本実施形態では、ウェーハWの内部に形成された改質層2を分割起点としたが、分割起点は改質層2に限定されない。例えば、切削ブレードの切削によって形成される完全切断されていない切削溝やレーザビームの照射によって形成される完全切断されていないレーザ加工溝を分割起点としてもよい。また、ウェーハ加工ステップにおいて分割起点を形成しておき、後の破断ステップにおいて分割起点に外力を付与してウェーハWを分割してもよい。さらに、ウェーハ加工ステップにおいて例えばレーザビームの照射または切削ブレードの切削によって分割予定ラインSに沿って完全切断(フルカット)してウェーハWを分割してもよい。
【0018】
(2)エキスパンドシート貼着ステップ
ウェーハ加工ステップを実施した後、図4に示すように、中央が開口した環状のフレーム5の下面に伸張可能なエキスパンドシート6を貼着し、フレーム5の中央からエキスパンドシート6を露出させる。エキスパンドシート6は、伸張可能なものであれば特に限定されず、例えばポリオレフィンやポリ塩化ビニル等からなる基材層に粘着層が積層された2層構造のエキスパンドシートを用いる。
【0019】
次いで、ウェーハWの裏面WbにウェーハWの外径よりも大きい外径を有した接着フィルム3を貼着するとともに、フレーム5の中央から露出したエキスパンドシート6に接着フィルム3側を貼着する。また、ウェーハWの表面Waから表面保護テープ1を剥離し、表面Waを上向きにさせる。このようにして、ウェーハWの外周Wcから接着フィルム3の周縁側のはみ出し部4が露出した状態で、ウェーハWが接着フィルム3を介してエキスパンドシート6に貼着される。接着フィルム3は、例えば熱可塑性樹脂からなるシート状の接着フィルムを用いる。
【0020】
(3)加熱ステップ
エキスパンドシート貼着ステップを実施した後、後述する破断ステップを実施する前に、図5に示すように、例えば加熱ヒータ40を用いて、ウェーハWの外周Wcから露出した接着フィルム3のはみ出し部4を加熱してエキスパンドシート6に溶着させる。加熱ヒータ40は、接着フィルム3のはみ出し部4の真上に配置されている。この加熱ヒータ40が、接着フィルム3のはみ出し部4に所定の温度に設定された温風を噴射することによって、はみ出し部4が溶融すると、エキスパンドシート6にはみ出し部4が溶着される。なお、接着フィルム3のはみ出し部4を加熱する手段としては、加熱ヒータ40に限定されない。
【0021】
(4)破断ステップ
エキスパンドシート貼着ステップを実施した後であって加熱ステップを実施した後、図6に示すように、拡張手段50を用いてエキスパンドシート6を拡張することにより、接着フィルム3を分割予定ラインSに沿って破断する。拡張手段50は、図示していないが、例えば冷却チャンバの内部に配設されている。冷却チャンバには、その内部の温度を低温にして接着フィルム3を硬化させる冷却手段が配設されている。拡張手段50は、図6(a)に示すように、ウェーハWを下方から支持する支持テーブル51と、支持テーブル51の外周側に配設されフレーム5が載置されるフレーム載置台52と、フレーム載置台52に載置されたフレーム5をクランプするクランプ部53と、フレーム載置台52の下部に連結されフレーム載置台52を上下方向に昇降させる昇降手段54とを備える。昇降手段54は、シリンダ54aと、シリンダ54aにより昇降駆動されるピストン54bとにより構成され、ピストン54bが上下に移動することにより、フレーム載置台52を昇降させることができる。
【0022】
接着フィルム3を破断する際には、支持テーブル51にウェーハW側を載置するとともに、フレーム載置台52にフレーム5を載置する。その後、クランプ部53によってフレーム5の上部を押さえて動かないように固定する。また、冷却手段により冷却チャンバ内の温度を例えば−100°に冷却する。かかる温度に冷却した状態で、図6(b)に示すように、ピストン54bが下方に移動しフレーム載置台52を下降させ、支持テーブル51に対して相対的にフレーム載置台52を下降させる。このとき、冷却された接着フィルム3は、その伸縮性が低下するとともに硬化して割れやすくなることから、エキスパンドシート6が放射状に拡張されると、接着フィルム3に放射方向の外力が付与され、接着フィルム3が図1に示した分割予定ラインSに沿って破断される。
【0023】
このとき、ウェーハWの外周Wcから露出した接着フィルム3のはみ出し部4が破断して破片が生じても、はみ出し部4はエキスパンドシート6に溶着されていることから、接着フィルム3の破片が周囲に飛散することはない。このようにして、接着フィルム3が破断されると、個々の接着フィルム3付きのデバイスDとして形成される。そして、所定の拡張量だけエキスパンドシート6を拡張することにより、各デバイスDの間隔が拡がって各デバイスDの間に隙間7が形成されるため、デバイスDのピックアップを容易にすることができる。
【0024】
このように、本発明にかかる接着フィルムの破断方法は、ウェーハ加工ステップ、エキスパンドシート貼着ステップを順次実施して、分割起点が形成されたウェーハW又は分割されたウェーハWの裏面Wbにウェーハの外径よりも大きい外径を有した接着フィルム3を貼着するとともに接着フィルム3にエキスパンドシート6を貼着した後、破断ステップを実施する前に加熱ステップを実施することにより、ウェーハWの外周Wcから露出した接着フィルム3のはみ出し部4を加熱してエキスパンドシート6に溶着するように構成したため、破断ステップを実施してエキスパンドシート6を拡張して接着フィルム3を分割予定ラインSに沿って破断する際に、ウェーハWの外周Wcから露出した接着フィルム3のはみ出し部4が破断して生じた破片が周囲に飛散することがなく、個々のデバイスDに破片が付着するのを防止することができる。
【0025】
本実施形態に示した破断ステップは、拡張手段50によって、エキスパンドシート6を下方に押し下げて拡張することにより、接着フィルム3を破断する場合を説明したが、この場合に限られない。例えばエキスパンドシートの四辺を挟持して引っ張ることができる拡張装置を用いて、エキスパンドシート6の4辺を挟持し放射状に拡張することによって接着フィルムを破断してから、環状のフレームをエキスパンドシート6に貼着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1:表面保護テープ 2:改質層 3:接着フィルム 4:はみ出し部
5:フレーム 6:エキスパンドシート 7:隙間
10:保持テーブル 11:保持面
20:レーザビーム照射手段 21:集光器 22:レーザビーム
30:研削手段 31:スピンドル 32:マウント 33:研削ホイール
34:研削砥石
40:加熱ヒータ
50:拡張手段 51:支持テーブル 52:フレーム載置台 53:クランプ部
54:昇降手段 54a:シリンダ 54b:ピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6