(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2に記載の口腔ケア組成物であって、前記高分子化合物は、約0.1から約3までの範囲の酸、エステル、無水物または酸ハロゲン化物の置換度を有する、前記口腔ケア組成物。
請求項1から5までのいずれか1項に記載の口腔ケア組成物であって、キシリトールは、該形成されるポリマーの全質量に対して、約3質量%から約80質量%までを占める、前記口腔ケア組成物。
請求項1から6までのいずれか1項に記載の口腔ケア組成物であって、前記形成されるポリマーは、約500から約1000000までの範囲のMwを有する、前記口腔ケア組成物。
請求項1から7までのいずれか1項に記載の口腔ケア組成物であって、該口腔ケア組成物は、界面活性剤、減感剤、キレート化剤、ホワイトニング剤、歯石除去剤、抗細菌剤、研磨材、結合剤および増粘剤、洗剤、接着剤、起泡調節剤、pH調節剤、舌触り改善剤、甘味料、フレーバリング剤、着色剤、保存剤ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む、前記口腔ケア組成物。
請求項8に記載の口腔ケア組成物であって、前記成分は、トリクロサン、クロロヘキシジンおよびその塩、過酸化物、フェノール類およびそれらの塩、臭化ドミフェン(臭化フェノドデシニウム)、ブロモクロロフェン、亜鉛塩、クロロフィル類、銅塩、グルコン酸銅、銅クロロフィル、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級モノアンモニウム塩、またはピリジニウム塩、ポリリジン、アルギニンのホモポリマー、アルギニンの塩もしくは錯体、フッ化第一スズ、チモール、メントール、サリチル酸メチル、ユーカリプトールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗細菌剤である、前記口腔ケア組成物。
請求項9に記載の口腔ケア組成物であって、前記抗細菌剤は、第四級モノアンモニウム塩、またはピリジニウム塩、ポリリジン、トリクロサン、クロロヘキシジンおよびその塩ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記口腔ケア組成物。
請求項1から10までのいずれか1項に記載の口腔ケア組成物であって、前記形成されるポリマーは、該口腔ケア組成物の全質量に対して、約0.01質量%〜約95質量%の該形成されるポリマーを占める、前記口腔ケア組成物。
請求項1から11までのいずれか1項に記載の口腔ケア組成物であって、該組成物は、口腔可溶性フィルム、ホワイトニングテープ、マウスウォッシュ、練り歯磨き、歯磨剤、口内錠、チューインガム、およびデンタルフロスからなる群から選択される製品である、前記口腔ケア組成物。
【技術分野】
【0001】
本出願は、両者とも2014年4月10日に出願されたものである米国仮出願番号61/977721および61/977713の利益を享受する。本明細書では両者とも参照により全体が援用されたものとする。
【0002】
発明の分野
本出願は、キシリトール、ポリカルボン酸(またはそのエステル、酸ハロゲン化物もしくは無水物)および任意にアルギニンから形成される持続性のあるポリエステルを含む口腔ケア組成物に関する。それらの形成されるポリエステルまたはポリエステルアミドは、バイオフィルムを抑止および溶解し、清潔な歯を保つために有効である。
【0003】
背景
歯垢は、ある程度までは事実上全ての歯面に被膜の形で存在する。歯垢は、微生物増殖の副産物であり、多糖体マトリックス中に取り囲まれた微生物群からなる密集した微生物層を含む。歯垢は歯面にしっかりと付着するため、厳格なブラッシング管理によってさえ除去することが困難であると報告されている。更に、歯垢は除去後に歯面にすばやく再形成する。歯垢は、歯面のあらゆる部分に形成することができ、特に歯肉縁、エナメル質の亀裂中、および歯石表面に見られる。歯への歯垢の形成に関連した問題は、歯垢が蓄積することで、最終的には歯肉炎、歯周炎および他の種類の歯周病を引き起こすのみならず、う蝕、口臭(悪臭呼気)および歯石を引き起こすという傾向にある。
【0004】
歯垢は口腔細菌によって形成されるので、歯垢形成を遅らせ、歯垢形成に関連した口腔感染症を遅らせるために多岐にわたる様々な抗細菌剤が提案されている。例えば、トリクロサンのようなハロゲン化されたヒドロキシジフェニルエーテル化合物は、それらの抗細菌活性については周知技術であり、口腔内の細菌の蓄積による歯垢形成に対抗する口腔組成物において使用されている。
【0005】
またキシリトールは、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptocococcus mutans)、つまり歯垢形成に関連している口腔細菌の増殖を阻害することがよく知られており、この阻害により酸形成の減少が引き起こされ、その減少がまたう蝕形成を抑止すると考えられている。キシリトールの場合、その高い水溶性のため、該化合物は、その口腔内部位からすばやく取り除かれるので、S.ミュータンスからの酸形成の減少に対する抑止効果は限られている。
【0006】
口腔細菌の集団の一時的な減少により歯垢形成を減らすように作用するこれらの抗細菌剤は、市販製品に導入される場合には、様々な管轄の規制体制、洗口製剤との適合性、歯面上への着色効果および口腔表面への持続性に由来する欠点を含む多くの欠点を有する。
【0007】
従って、当該技術分野においては、歯垢形成を減少または抑制する一方で、前記欠点を克服する新たな口腔組成物が求められている。
【0008】
発明の概要
前記の目的は、キシリトールと、ポリカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物および任意にアルギニンとの反応から形成されるポリマーを含む口腔ケア組成物によって達成される。
【0009】
従って、本出願は、タイプ(A)および(B)のポリマーを含む幾つかの口腔ケア組成物を想定している。
【0010】
タイプ(A)は、予め形成されたポリマーにキシリトールおよび任意にアルギニンでグラフトすることにより形成された、構造(I、I’およびI’’)
【化1】
によるこれらのポリマーである。
【0011】
キシリトールは、その立体化学を保つ。
【0012】
タイプ(A)のポリマーは、増粘剤として特に有用である。
【0013】
タイプ(B)は、被縮合物としてのキシリトールおよびポリカルボン酸、そのエステル、無水物または酸ハロゲン化物の化合物ならびに任意にアルギニンとの反応により形成され、該被縮合物が形成されるポリマーの骨格を成すこれらのポリマーである。
【0014】
形成されるポリマー(AおよびB)は、バイオフィルムの抑止、バイオフィルムの破壊、細菌性の酸産生の抑止ならびに口腔組織および歯面への持続性によって特徴付けられる。これらのタイプ(B)のポリマーであって、アルギニンを更に含むポリマーは、歯の過敏性を低下させるために有用である。
【0015】
このように、本出願は、口腔ケア組成物であって、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている、前記口腔ケア組成物に関する。
【0016】
前記口腔ケア組成物は、カルボン酸、無水物もしくはエステルのペンダント基を含む高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物とキシリトールとを反応させて、式(I、I’、I’’)
【化2】
のキシリトール官能化されたポリマーを形成することによって形成されるポリマー(A)であって、1種以上の該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている、前記ポリマー(A)を含んでよい。
【0017】
更に考えられるのは、骨格を含むポリマー(B)であって、該ポリマーの骨格が、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマー(B)を含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている口腔ケア組成物である。
【0018】
キシリトールと、アルギニンと、ポリカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物とから形成される、以下の構造II)、II’)、II’’)によって表されるポリエステルアミドを含む口腔ケア組成物は特許請求の範囲に含まれ、それらの口腔ケア組成物は、新規であると考える。
【0019】
【化3】
【0020】
Aは、直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
20−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、あるいは
Aは、−O−もしくはNR
2−によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
20−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、ここで、
R
1は、水素、非置換の直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレン、C(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、かつ
R
2は、水素、C(O)OHもしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、
Xは、任意の有機もしくは無機の口腔に許容可能なアニオンであり、通常は、ポリグアニジニウムにある正電荷数は、X
-についての負電荷と等しいものとなり、かつ
nは、2から5000までの範囲の整数である。
【0021】
本出願は、幾つかの方法も含む。
【0022】
口腔内の細菌苔を抑止する方法であって、哺乳動物の口腔上皮組織および/または歯を、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている組成物と接触させることによって行う、前記方法。
【0023】
口腔細菌からの酸産生を遅延または抑制する方法であって、哺乳動物の口腔上皮組織および/または歯を、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている口腔ケア組成物と接触させるステップを含む、前記方法。
【0024】
口腔内のバイオフィルムを破壊する方法であって、哺乳動物の口腔上皮組織および/または歯を、治療的有効量の、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている口腔ケア組成物と接触させることによって行う、前記方法。
【0025】
歯の過敏性を低下させる方法であって、哺乳動物の歯面に、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
アルギニンと、
の縮合から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている口腔ケア組成物を適用することを含む、前記方法。
【0026】
口腔ケア組成物に甘味付けする方法であって、該口腔ケア組成物に、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
の縮合から形成されるポリマーを添加することによって行う、前記方法。
【0027】
口腔ケア組成物を増粘する方法であって、該口腔ケア組成物に前記タイプ(A)または(B)のポリエステルによるポリマーを添加することによって行う、前記方法。
【0028】
また、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーであって、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている、前記ポリマーの幾つかの使用も考えられる。
【0029】
前記ポリマーの、口腔内での細菌苔の抑止のための使用。
【0030】
前記ポリマーの、口腔内でのバイオフィルムの破壊のための、および/または口腔細菌からの酸産生の遅延のための使用。
【0031】
前記ポリマーの、哺乳動物の歯の過敏性を低下させるための使用。
【0032】
前記ポリマーの、口腔ケア組成物の甘味付けまたは増粘のための使用。
【0033】
キシリトールのアルギニンジエステルおよびその塩も新規であると考える。このように、以下の中間体:
【化4】
自体も特許請求の範囲に含まれる。
【0034】
更に、前記ポリエステルまたはポリエステルアミドを含む口腔ケア組成物であって、口腔可溶性フィルム、ホワイトニングテープ、マウスウォッシュ、練り歯磨き、歯磨剤、口内錠、チューインガム、およびデンタルフロスからなる群から選択される製品である、前記口腔ケア組成物が考えられる。
【0035】
発明の詳細な説明
口腔ケア
本明細書で使用される場合に、用語「口腔ケア」とは、口腔を冒す疾病および疾患または関連の医学的状況の治療的処置および予防的処置の両方を指す。口腔の疾病および疾患には、制限されるものではないが、歯垢、う蝕、歯周病(例えば歯肉炎、成人性歯周炎、若年性歯周炎等)、粘膜感染症(例えば口腔カンジダ症、単純ヘルペスウイルス感染症、慢性再発性アフタ等)、口腔癌および咽頭癌ならびに前癌性病変が含まれる。
【0036】
口腔に許容可能なキャリヤー
用語「口腔に許容可能なキャリヤー」には、任意の慣用の口腔送達システム、例えばデンタルケア製品、食料品およびチューインガムが含まれる。デンタルケア製品の例は、制限されるものではないが、フィルム(すなわちホワイトニングテープ、可溶性マウスウォッシュテープ)、歯磨剤、局所用溶液またはペースト、例えば練り歯磨き、液剤またはスプレー剤またはスラリー剤、粉剤、ゲル剤または錠剤の形のマウスウォッシュおよびデンタルフロスを含みうる。本明細書に記載される口腔組成物を含有しうる食料品の例には、制限されるものではないが、口内錠、チューインガムおよび糖剤が含まれる。
【0037】
分子量
分子量という用語が使用される場合に、この用語は、特に記載がない限り、通常は質量平均分子量(M
w)を指すものとする。
【0038】
含む
本発明の目的のためには、含む、はオープンエンド形式であり、つまりは他の成分が包含されてよい。含む、は、含有する、または包含する、と同義である。
【0039】
被縮合物
本出願の目的のためには、被縮合物は、一緒になって水、アルコールまたはHCL等の共役酸を脱離することにより共有結合を形成する分子を意味する。通常は、該被縮合物は、例えば多価アルコール、アミン、酸、酸ハロゲン化物、エステルまたは無水物である。C
1〜C
20−グリコールは、アルキル二酸と縮合してポリエステルを形成することとなり、一方でジアミンは、二酸と縮合してポリアミドを形成することとなる。従って本出願人は可能な被縮合物として無水物を包含しているが、無水物が形成されるときに既に水は脱離されている。酸ハロゲン化物または酸塩化物は、キシリトールと縮合して、例えばHCLを脱離することとなる。
【0040】
バイオフィルム
本明細書で使用される場合に、用語「バイオフィルム」とは、微生物が表面に付着して、引き続き細胞からなる多層が生ずることで形成された被膜を指す。
【0041】
歯垢
本明細書で使用される場合に、用語「歯垢」とは、歯面に見られる、細菌由来と唾液由来のポリマーのマトリックス中に取り囲まれた多様な微生物叢(主として細菌)を指す。歯垢は、バイオフィルムと同義に使用される。
【0042】
抑止
本明細書で使用される場合に、用語「抑止」とは、歯垢に付随した細菌増殖および/またはバイオフィルム形成を少なくとも減少させることを指す。
【0043】
キシリトール
キシリトールは、構造
【化5】
によって表される。
【0044】
キシリトールは、甘味料またはスクロースもしくはグルコースのための代用として長く知られている。ストレプトコッカス・ミュータンスの種々の菌株の増殖に影響を及ぼすとともに、酸産生を抑止し、う蝕形成の低下をもたらすこともよく知られている。Waler,S.Mら、Scand.J.Dent Res.1983,91,第253頁〜第259頁および独国特許出願公開第2606533号明細書(DE 2606533)を参照のこと。
【0045】
高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物
タイプ(A)のポリエステル
上述のように、該口腔組成物は、タイプ(A)のポリエステルを含有してよい。これらのポリマーは、キシリトールおよび任意にアルギニンと反応される基であるカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物のペンダント基を含む高分子化合物である、高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物から形成される。
【0046】
カルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物のペンダント基を含む高分子化合物(タイプAのポリマーを形成する)は、例えばアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸およびポリマレイン酸、好ましくはアルギン酸、カルボキシメチルセルロースおよびポリグルタミン酸からなる群から選択される。
【0047】
これらの高分子化合物(タイプAのポリマーを形成する)は、0.1から3までの範囲の、好ましくは0.1から1.5までの範囲の酸、エステル、無水物または酸ハロゲン化物の置換度を有するものとする。
【0048】
例えば、カルボキシメチルセルロースの酸置換は、0.1から0.9までの範囲であるが、ポリアルギン酸は1である(1繰返単位当たりに1酸基)。これらのタイプAのポリマーは、口腔ケア組成物中で甘味料および/または増粘剤として使用することもできる。
【0049】
このように、口腔ケア組成物における甘味料または増粘剤としての式(I)、(I’)または(I’’)
【化6】
のポリマー(A)の使用も本出願の一実施形態である。
【0050】
特に関心が寄せられるタイプAのポリマーは、キシリトールでグラフトされたアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリグルタミン酸およびポリマレイン酸、好ましくはアルギン酸、ポリグルタミン酸およびカルボキシメチルセルロースである。
【0051】
ポリカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物の化合物
タイプBのポリマー
ポリカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物は、本出願の目的のためには、2種以上のカルボン酸または2種以上のカルボン酸の誘導体を意味する。こうして、これらはタイプBのポリマーを形成する。
【0052】
誘導体とは、カルボン酸基が、C
1〜C
4−アルキルエステル、置換もしくは非置換のフェニルエステル、遊離酸、無水物または酸ハロゲン化物でありうることを意味する。この誘導体には、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸、そのエステル、無水物または酸ハロゲン化物が含まれるものとする。
【0053】
用語「ポリカルボン酸、その無水物、エステルまたは酸ハロゲン化物の化合物」は、式(III)
【化7】
によって表すことができる。これらの化合物は、キシリトールのタイプBのポリマー、つまりポリマーの骨格中にキシリトールを有するポリマーの製造で使用される。
【0054】
Aは、直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
20−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、あるいは
Aは、−O−もしくはNR
2−によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
20−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、ここで、
R
1は、水素、非置換の直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレン、C(O)OH、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、かつ
R
2は、水素、またはC(O)OHもしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、
mおよびpは、1または2であり、かつ
R
3およびR
4は、独立して、OH、ハロゲン、OR
5、−OC(O)であり、その−OC(O)はAに結合されて環状無水物を形成するか、またはR
3は酸素であり、R
4は、R
3の酸素に結合されており、
R
5は、C
1〜C
4−アルキルまたは置換もしくは非置換のフェニルである。
【0055】
Aが直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
10−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
10−アルキレンであるか、あるいは
AがNR
2によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
10−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された、NR
2によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
10−アルキレンであり、かつ
R
2が水素またはC(O)OHもしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
10−アルキレンである、
ことが好ましい。
【0056】
最も好ましくは、
Aは、直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
8−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
8−アルキレンであるか、あるいは
Aは、NR
2によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
8−アルキレンであり、かつR
2は、C(O)OHによって置換されたC
1〜C
8−アルキレンである。
【0057】
C
1〜C
20−アルキレンは、C
1〜C
10−アルキレン、C
1〜C
8−アルキレンおよびC
1〜C
6−アルキレンを含む。
【0058】
C
1〜C
20−アルキレンジカルボン酸、C
1〜C
20−アルキレントリカルボン酸およびC
1〜C
20−アルキレンテトラカルボン酸またはそれらのエステルの例は、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、クエン酸、イソクエン酸、ジグリコール酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,1,3,3−プロパンテトラカルボン酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,2,3−プロパンテトラカルボン酸、1,3,3,5−ペンタンテトラカルボン酸、それらのC
1〜C
4−アルキルエステル、それらの酸ハロゲン化物、それらの無水物、例えばエチレンジアミン四酢酸二無水物およびそれらの組み合わせである。
【0059】
−O−もしくはNR
2−によって中断された分枝鎖状もしくは非分枝鎖状の非置換のC
1〜C
20−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された、−O−もしくはNR
2によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンは、例えばエチレンジアミン四酢酸、エチレングリコールビス四酢酸、ジグリコール酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、イミノ二酢酸、1,2−プロピレンジアミン四酢酸、N−メチルイミノ二酢酸、N−エチルイミノ二酢酸、N−プロピルイミノ二酢酸およびN−ブチルイミノ二酢酸、1,3−プロピレンジアミン四酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸である。
【0060】
前記C
1〜C
20−アルキレンのジカルボン酸、トリカルボン酸またはテトラカルボン酸は、ヒドロキシによって置換されていてよい。ヒドロキシルで置換されたC
1〜C
20−アルキレンジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸の例は、リンゴ酸、タルトロン酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸および粘液酸、それらのC
1〜C
4−アルキルエステル、それらの酸ハロゲン化物、それらの無水物ならびにそれらの組み合わせである。
【0061】
無水物の重要な例は、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水アセチルコハク酸、ジグリコール酸の無水物、プロパンテトラカルボン酸の一無水物および二無水物、ブタンカルボン酸の一無水物または二無水物であり、エチレンジアミン四酢酸二無水物が特に関心が寄せられるものである。
【0062】
このように、前記ポリカルボン酸、そのエステル、無水物およびハロゲン化物は、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、クエン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,1,3,3−プロパンテトラカルボン酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,2,3−プロパンテトラカルボン酸、1,3,3,5−ペンタンテトラカルボン酸、リンゴ酸、タルトロン酸、イソクエン酸、酒石酸、粘液酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコールビス四酢酸、ジグリコール酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、イミノ二酢酸、1,2−プロピレンジアミン四酢酸、N−メチルイミノ二酢酸、N−エチルイミノ二酢酸、N−プロピルイミノ二酢酸およびN−ブチルイミノ二酢酸、1,3−プロピレンジアミン四酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸、それらのC
1〜C
4−アルキルエステル、置換もしくは非置換のフェニルエステル、酸ハロゲン化物ならびに無水物からなる群から選択することができる。
【0063】
ポリカルボン酸、エステルまたは無水物の好ましく挙げられるのは、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、粘液酸、ジグリコール酸、エチレンジアミン四酢酸またはそれらのC
1〜C
4−アルキルエステル、それらの無水物(すなわち、例えばエチレンジアミン四酢酸二無水物)、それらの酸ハロゲン化物およびそれらの組合せ物である。
【0064】
特に関心が寄せられるタイプBのポリマーは、
式(IV、IV’、IV’’、IV’’’)
【化8】
[式中、nは、1から5000までの、好ましくは2から3000までの数である]のキシリトールとクエン酸、そのC
1〜C
4−アルキルエステル、酸ハロゲン化物または無水物とのポリエステル、
式(V、V’またはV’’)
【化9】
[式中、EDTAは、エチレンジアミン四酢酸であり、かつnは、1、2または3〜5000であり、好ましくは3〜3000である]としての、キシリトールとエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、そのエステルまたは無水物とのポリエステル、
キシリトールとコハク酸、そのC
1〜C
4−アルキルエステル、または置換もしくは非置換のフェニルエステルもしくはその無水物とのポリエステル、
キシリトール、アルギニンおよびコハク酸のポリエステルアミドのターポリマー、
キシリトール、アルギニンおよびエチレンジアミン四酢酸またはその二無水物のポリエステルアミドのターポリマー、ならびに
キシリトール、アルギニンおよびクエン酸のポリエステルアミドのターポリマー
である。
【0065】
アルギニン
【化10】
【0066】
アルギニンはアミノ酸である。アルギニンがキシリトールと反応すると、遊離酸のアルギニンは、効果的に縮合してエステル結合を形成することとなる。アルギニンは、タイプAかタイプBのいずれかのキシリトール含有ポリマーに組み込まれるが、最も一般的には、前記のタイプBのポリマーから形成される。
【0067】
アルギニンは、例えばキシリトールと縮合することで、アルギニンで末端封鎖されたキシリトールを形成することとなる。この末端封鎖されたキシリトールを次いでポリカルボン酸、エステルまたは無水物と反応させることで、構造(II、II’またはII’’)
【化11】
のポリエステルアミドのターポリマーを形成することができる。
【0068】
Aは、直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
20−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、あるいは
Aは、−O−もしくはNR
2−によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
20−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、ここで、
R
1は、水素、非置換の直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレン、C(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、かつ
R
2は、水素またはC(O)OHもしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
20−アルキレンであり、
Xは、任意の有機もしくは無機の口腔に許容可能なアニオンである。例えば、X
-は、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、塩化物イオン、重硫酸イオン、硫酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、グリコール酸イオン、グルコン酸イオン、マレイン酸イオン、アスコルビン酸イオンおよびエチレンジアミン四酢酸イオンであってよく、それらが考えられる。
【0069】
通常は、ポリグアニジニウムにある正電荷数は、X
-についての負電荷と等しいものとなり、かつnは、1、2または3から5000までの範囲の整数である。好ましくは、nは3〜3000である。
【0070】
Aが直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
10−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
10−アルキレンであるか、あるいは
AがNR
2によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
10−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された、NR
2によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
10−アルキレンであり、
R
2が水素またはC(O)OHもしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
10−アルキレンである、
ことが好ましい。
【0071】
最も好ましくは、
Aは、直鎖状もしくは分枝鎖状の非置換のC
1〜C
8−アルキレン、またはC(O)OR
1、C(O)O
-もしくはOHによって置換された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
8−アルキレンであるか、あるいは
Aは、NR
2によって中断された直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
8−アルキレンであり、かつR
2は、C(O)OHによって置換されたC
1〜C
8−アルキレンである。
【0072】
特に関心が寄せられる前記形成されるポリエステルの骨格中にキシリトールを導入するポリマーは、以下のものである。
【0073】
式(IV、IV’、IV’’および/またはIV’’’)
【化12】
の、キシリトール、クエン酸およびそのC
1〜C
4−アルキルエステル、置換もしくは非置換のフェニルエステルまたは無水物のポリエステル。
【0074】
式(V、V’および/またはV’’)
【化13】
で示されるキシリトールおよびエチレンジアミン四酢酸、そのエステルまたは無水物のポリエステル。
*EDTAは、エチレンジアミン四酢酸またはテトラカルボン酸のエチレンジアミン四酢酸二無水物である。
【0075】
キシリトールおよびコハク酸、そのC
1〜C
4−アルキルエステル、置換もしくは非置換のフェニルエステルまたは無水物。アルギニンは、構造(IV)および(V)のポリマーのような前記キシリトール含有ポリマーのいずれかのコモノマーまたは被縮合物として含まれていてよい。
【0076】
特に関心が寄せられるアルギニンのターポリマーは、
キシリトール、アルギニンおよびコハク酸のポリエステルアミドのターポリマー、
キシリトール、アルギニンおよびエチレンジアミンテトラカルボン酸(またはその二無水物)のポリエステルアミドのターポリマー、
キシリトール、アルギニンおよびクエン酸のポリエステルアミドのターポリマー
である。
【0077】
これらの前記アルギニン含有ポリマーは、歯の過敏性を低下させるために使用できる。形成されるキシリトールでグラフトされたポリマーは、500から約1000000までの、好ましくは約1000から約800000までの、最も好ましくは約1500から約500000までの質量平均Mwにおいて変動するものとする。
【0078】
例えば、キシリトールおよびアルギン酸の縮合生成物(VI)
【化14】
に関心が寄せられる。
【0079】
アルギン酸における酸置換度は、約1である。
【0080】
キシリトールおよびカルボキシメチルセルロース(遊離酸)の縮合生成物(VII)
【化15】
にも特に関心が寄せられる。
【0081】
該カルボキシメチルセルロースの酸置換度は、約0.1から約3までで、好ましくは約0.5から約2.0まで変動する。
【0082】
タイプAおよびBのキシリトールから形成されるポリマー
本出願の口腔ケア組成物は、キシリトール−ポリカルボン酸(またはエステルもしくは無水物)および任意にアルギニン含有ポリマーの形成されるポリエステル(AまたはBのタイプ)を含有し、約500から約700000までの範囲の、好ましくは約1000から約250000までの範囲の、最も好ましくは約1500から約150000までの範囲のMwを有するものとする。
【0083】
本出願による口腔ケア組成物は、形成されるポリマー(タイプAまたはB)を含有し、その際、キシリトールは、該形成されるポリマーの全質量に対して、約3質量%から約80質量%まで、好ましくは約4質量%から約75質量%まで、最も好ましくは5質量%から約65質量%までを占める。
【0084】
前記口腔ケア組成物は、該口腔ケア組成物の全質量に対して、約0.01質量%から約95質量%までの、好ましくは約0.1質量%から約50質量%までの、最も好ましくは約0.2質量%から約20質量%までの前記形成されるポリマーを含むものとする。
【0085】
前記説明のとおりの本出願には、口腔ケア組成物が含まれるのみならず、様々な方法も含まれる。例えば、以下の方法である。
【0086】
口腔内の細菌苔を抑止する方法であって、哺乳動物の口腔上皮組織および/または歯を、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている口腔ケア組成物と接触させることによって行う、前記方法。
【0087】
口腔細菌からの酸産生を遅延または抑制する方法であって、哺乳動物の口腔上皮組織および/または歯を、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている口腔ケア組成物と接触させるステップを含む、前記方法。
【0088】
口腔内のバイオフィルムを破壊する方法であって、哺乳動物の口腔上皮組織および/または歯を、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含む口腔ケア組成物を含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている組成物と接触させることによって行う、前記方法。
【0089】
本出願の口腔ケア組成物は、もちろん幾つかの他の成分を含有してよい。例えば、本出願のキシリトール含有ポリマーに加えて、前記口腔ケア組成物は、賦形剤、フレーバリング剤、抗微生物剤、う蝕予防薬、歯磨剤用ビヒクル、界面活性剤、湿潤剤、酸化防止剤、光安定剤、歯石予防剤または増粘剤のような成分を含有してよい。
【0090】
賦形剤
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、少なくとも1種の賦形剤を含む。本発明で使用するために適した賦形剤には、口腔ケア組成物で慣用の任意の化合物が含まれる。
【0091】
本発明による口腔組成物に適した賦形剤は、保存剤、研磨材(平滑剤)、更なる抗細菌剤、炎症抑制剤、刺激防止剤、刺激抑制剤、更なる抗微生物剤、酸化防止剤、結合剤、(鉱物)充填剤、緩衝剤、キャリヤー材料、キレート化剤(キレート形成剤)、清浄剤、ケア剤、表面活性物質、乳化剤、酵素、起泡剤、泡安定剤、起泡力増進剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、漂白剤、矯香および/または矯味剤、減香および/または減味剤、増香および/または増味剤、可塑剤、(粘膜)/皮膚清涼化剤(清涼化物質)、(粘膜)/皮膚鎮静剤、(粘膜)/皮膚清浄化剤、(粘膜)/皮膚ケア剤、(粘膜)/皮膚治癒剤、粘膜保護剤、安定化剤、懸濁剤、ビタミン類、着色剤、着色防止剤、顔料、界面活性剤、電解質、シリコーン誘導体、ポリオール、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、酸化アルミニウム、フッ化物、亜鉛塩、スズ塩、カリウム塩、ナトリウム塩およびストロンチウム塩、ピロリン酸塩、ヒドロキシアパタイトから選択することができる。
【0092】
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、少なくとも1種の賦形剤を含み、ここで該少なくとも1種の賦形剤は、界面活性剤、減感剤、ホワイトニング剤、歯石除去剤、抗細菌剤、研磨材、キレート化剤含有シリカ、結合剤および増粘剤、洗剤、接着剤、起泡調節剤、pH調節剤、舌触り改善剤(mouth−feel agent)、甘味料、フレーバリング剤、着色剤、保存剤、それらの組み合わせ等から選択される。
【0093】
フレーバリング剤
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、フレーバリング剤を含む。幾つかの実施形態においては、フレーバリング剤は、粘膜清涼化剤、粘膜温熱化剤、辛味物質、甘味料、代替糖、有機もしくは無機の酸性化剤(例えばリンゴ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸)、苦味物質(例えばキノン、カフェイン、リモニン、アマロゲンチン、フモロン(humolone)、ルポロン、カテコール、タンニン)、可食性ミネラル塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムおよびリン酸ナトリウム)、精油(例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マジョーラム、シナモン、レモン、ライム、グレープフルーツおよびオレンジのオイル)、メントール、カルボン、アネトールならびにそれらの組み合わせから選択されるいずれかである。
【0094】
タイプ(A)および(B)のキシリトールポリマーは、口腔ケア組成物において甘味剤として特に適している。
【0095】
前記教示のように、本出願の一実施形態は、キシリトール(甘味料)を口腔内に遅延放出する方法であって、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
任意にアルギニンと、
から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている、口腔組成物を口腔に適用することによって行う、前記方法である。
【0096】
研磨材
本発明で使用するのに適した研磨材には、シリカ材料、特に100cc/100g(シリカ)未満の、好ましくは45cc/100g(シリカ)から70cc/100g(シリカ)未満までの範囲の吸油値を有するシリカゲルおよび沈降アモルファスシリカが含まれる。吸油値は、ASTM Rub−Out Method D281を用いて測定される。本発明の実施において特に有用な低い吸油量のシリカ研磨材は、商品名Sylodent(登録商標)XWA(W.R.グレース社デヴィソン化学事業部,メリーランド州ボルチモア 21203)として市販されている。Sylodent(登録商標)650 XWA、つまり29質量%の含水量を有し、7ミクロンから10ミクロンまでの平均直径を有し、かつ70cc/100g(シリカ)未満の吸油量を有するコロイダルシリカの粒子から構成されるシリカヒドロゲルは、本発明の実施に有用な低い吸油量のシリカ研磨材の好ましい一例である。本発明の実施において特に有用なもう一つの低い吸油量のシリカ研磨材は、商品名DP−105(商標)(J.M.フーバー社化学事業部,メリーランド州ハバディグレイス 21078)として市販されており、それは5ミクロンから12ミクロンまでの平均粒度分布と50cc/100g〜70cc/100gの範囲の吸油量を有する沈降アモルファスシリカである。本発明の実施に使用できる他の研磨材には、20ミクロンまでの平均粒度を有する沈降シリカ、例えばZeodent(登録商標)115(J.M.フーバー社化学事業部,メリーランド州ハバディグレイス 21078)もしくはSylodent(登録商標)783(W.R.グレース社デヴィソン化学事業部)、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、ケイ酸アルミニウム、焼成アルミナ、ベントナイト、あるいは他の珪質材料またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0097】
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、研磨用賦形剤を含む。幾つかの実施形態においては、該研磨用賦形剤は、シリカ材料である。幾つかの実施形態においては、該シリカ材料は、3ミクロンから12ミクロンまでの範囲の平均粒度を有するコロイド状粒子である。幾つかの実施形態においては、該コロイド状粒子は、5ミクロンから10ミクロンまでの範囲の平均粒度と、5質量%のスラリーとして測定した場合のpH範囲4〜10、好ましくは6〜9とを有する。幾つかの実施形態においては、該シリカ材料は、低い吸油量のシリカ研磨材である。幾つかの実施形態においては、該低い吸油量のシリカ研磨材は、本発明の口腔ケア組成物中に5質量%から40質量%までの濃度で存在する。幾つかの実施形態においては、該低い吸油量のシリカ研磨材は、10質量%から30質量%までの濃度で存在する。
【0098】
幾つかの実施形態においては、該研磨用賦形剤は、ケイ酸、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび/またはヒドロキシアパタイト、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、ケイ酸アルミニウム、焼成アルミナ、ベントナイト、表面活性物質(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタイン)および他の珪質材料ならびにそれらの組み合わせから選択されるいずれかである。
【0099】
幾つかの実施形態においては、前記研磨用賦形剤は、個別に単独の研磨材として本発明の口腔ケア組成物の製造において使用でき、または他の既知の歯磨剤用研磨材と組み合わせて使用できる。幾つかの実施形態においては、本発明の歯磨剤組成物中に存在する研磨用賦形剤の全量は、5質量%〜60質量%である。幾つかの実施形態においては、前記研磨用賦形剤は、その歯磨剤組成物が練り歯磨きである場合に10質量%〜55質量%の量で存在する。
【0100】
抗微生物剤
本発明で使用するのに適した抗微生物剤には、非イオン性抗細菌剤、例えばハロゲン化ジフェニルエーテル化合物、例えば2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)および2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジブロモジフェニルエーテルが含まれる。他の有用な非イオン性抗細菌剤には、フェノール性化合物、例えばフェノールおよびその同族体、モノアルキルおよびポリアルキルハロフェノールならびに芳香族ハロフェノール、レゾルシノールおよびその誘導体ならびにビスフェノール性化合物が含まれる。そのようなフェノール性化合物は、より十分に米国特許第5,368,844号(U.S.Pat.No.5,368,844)に開示されており、その開示内容は本明細書において参照をもって援用される。
【0101】
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、抗微生物剤を含む。幾つかの実施形態においては、前記抗微生物剤は、トリクロサン、クロロヘキシジンおよびその塩(例えば、その酢酸塩、グルコン酸塩または塩酸塩)、過酸化物、フェノールおよびそれらの塩、臭化ドミフェン(臭化フェノドデシニウム)、ブロモクロロフェン、亜鉛塩、フッ化第一スズ、クロロフィル類、銅塩、グルコン酸銅、銅クロロフィル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリリジン、第四級モノアンモニウム塩、例えば塩化ヤシ脂肪族(cocoaliphatic)ベンジルジメチルアンモニウム、アルギニンのホモポリマー、アルギニン塩もしくは錯体、またはピリジニウム塩、例えば塩化セチルピリジニウムならびにそれらの組み合わせから選択されるいずれかである。
【0102】
チモール、メントール、サリチル酸メチルおよびユーカリプトールならびにそれらの混合物は、抗微生物剤としてよく知られており、歯垢に対して有効である。
【0103】
幾つかの実施形態においては、抗微生物剤は、非イオン性の抗細菌剤である。幾つかの実施形態においては、非イオン性の抗細菌剤は、歯磨剤組成物中に0.001質量%から5質量%までの濃度で含まれている。幾つかの実施形態においては、非イオン性の抗微生物剤は、0.01質量%から1.5質量%までの量で存在する。
【0104】
特に関心が寄せられる抗微生物剤は、第四級モノアンモニウム塩、例えば塩化ヤシ脂肪族ベンジルジメチルアンモニウムか、またはピリジニウム塩、例えば塩化セチルピリジニウム、ポリリジン、チモール、メントール、サリチル酸メチルおよびユーカリプトール、トリクロサン、クロロヘキシジンおよびそれらの塩(例えば、その酢酸塩、グルコン酸塩または塩酸塩)ならびにそれらの組み合わせである。
【0105】
う蝕予防剤
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔組成物は、う蝕防止剤を含む。幾つかの実施形態においては、該う蝕防止剤は、無機フッ化物塩、例えば可溶性のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(例えばフッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム)、銅フッ化物、フッ化第一銅、フッ化亜鉛、フッ化バリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フルオロジルコン酸ナトリウム、フルオロジルコン酸アンモニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸およびジフルオロリン酸アルミニウム、フッ素化されたピロリン酸ナトリウムカルシウムならびにそれらの組み合わせから選択されるフッ化物イオン源である。
【0106】
歯磨剤用賦形剤
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、口腔に許容可能な歯磨剤用賦形剤を含む。幾つかの実施形態においては、該歯磨剤用賦形剤は、そこに湿潤剤を含む。本発明で使用するのに適した湿潤剤には、グリセリン、ソルビトール、キシリトールおよび/または200から1000までの範囲の分子量のプロピレングリコールが含まれる。本明細書で使用される場合に、「ソルビトール」とは、典型的には70%水溶液として市販される材料を指す。幾つかの実施形態においては、湿潤剤濃度は、該口腔組成物の5質量%から70質量%までである。
【0107】
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、水を含む。市販に適した練り歯磨きの製造に使用される水は、好ましくは脱イオン化されており、かつ有機的不純物不含であることが望ましい。幾つかの実施形態においては、水は、該口腔組成物の15質量%から30質量%までの量で存在する。幾つかの実施形態においては、水は、10質量%の量で存在する。幾つかの実施形態においては、これらの水の量は、ソルビトールのような他の材料と一緒に導入された水の他に添加された遊離水を含む。
【0108】
界面活性剤
本発明の組成物で使用するのに適した界面活性剤は、高められた予防作用を達成するとともに、該口腔ケア組成物により高い化粧品への許容可能性を与える任意の材料を含む。該界面活性剤は、好ましくは、該口腔ケア組成物に洗剤特性および起泡特性を付与する洗剤性材料である。
【0109】
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、界面活性剤を含む。幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、界面活性剤の組み合わせを含む。
【0110】
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、界面活性剤を含む。幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、界面活性剤の組み合わせを含む。幾つかの実施形態においては、該界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、例えば高級アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、グルタメートのN−アルキルアミド、例えばココイルグルタミン酸ナトリウム、エトキシル化脂肪アルコールおよびクエン酸のエステル、例えばクエン酸ラウレス−7、ならびにスルホコハク酸モノアルキルエステルおよび/またはジアルキルエステル、例えばラウレススルホコハク酸ナトリウムである。
【0111】
幾つかの実施形態においては、前記界面活性剤は、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポロキサマー407および335から選択される酵素適合性界面活性剤である。これらのポロキサマーは、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央疎水性鎖と、その両側の2つのポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の親水性鎖とから構成されるトリブロックコポリマーである。関心が寄せられる更なる非イオン性界面活性剤は、長鎖脂肪酸、例えばステアリン酸のポリエチレングリコールエーテル、例えばステアレス−3である。
【0112】
ポリソルベート20は、ポリソルベートの範囲内の他の構成員とはポリオキシエチレン鎖の長さおよび脂肪酸エステル部の点で異なるソルビタンモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体であり、口腔ケア組成物において有用である。
【0113】
ポリアルキルグルコシドも関心が寄せられる。それらは、糖類および脂肪アルコール類から誘導される。ポリアルキルグルコシドの例は、幾つかの例を挙げると、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド、カプリリル/カプリルグルコシドおよびココグルコシドである。
【0114】
コカミドプロピルベタインおよびコカミドプロピルベタインラウリルグルコシドのような両性界面活性剤も関心が寄せられる。幾つかの実施形態においては、本発明による口腔組成物は、界面活性剤または界面活性剤の組み合わせを、歯磨剤組成物中の全界面活性剤濃度2質量%〜10質量%で含む。幾つかの実施形態においては、前記界面活性剤または界面活性剤の組み合わせは、3.5質量%から6.5質量%までの量で存在する。
【0115】
歯石予防剤
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、歯石予防剤を含む。幾つかの実施形態においては、該歯石予防剤は、ピロリン酸塩、例えば二アルカリ金属もしくは四アルカリ金属ピロリン酸塩、例えばNa
4P
2O
7、K
4P
2O
7、Na
2K
2P
2O
7、Na
2H
2P
2O
7およびK
2H
2P
2O
7、トリポリリン酸ナトリウム、長鎖ポリリン酸塩、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム、ならびに環状リン酸塩、例えばトリメタリン酸ナトリウムから選択される。幾つかの実施形態においては、歯石防止剤は、本発明の歯磨剤組成物中に1質量%から5質量%までの濃度で存在する。
【0116】
減感剤
幾つかの実施形態においては、前記口腔ケア組成物は、減感剤を更に含有してよい。例えば、硝酸塩、重炭酸塩、硝酸カリウム、アルギニン−重炭酸−フィチン酸錯体、クエン酸カリウムまたはシュウ酸塩およびアルギニンは、該口腔組成物へと、本明細書に開示されたターポリマーと組み合わせて添加してよい。
【0117】
更に、本出願は、歯の過敏性を低下させる方法であって、哺乳動物の歯面に、
キシリトールと、
ポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物の化合物、または高分子のポリカルボン酸、その無水物、エステルもしくは酸ハロゲン化物と、
アルギニンと、
の縮合から形成されるポリマーを含み、該形成されるポリマーが口腔に許容可能なキャリヤー中に分布されている口腔ケア組成物を適用することを含む、前記方法に関する。
【0118】
増粘剤
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔ケア組成物は、増粘剤を含む。幾つかの実施形態においては、該増粘剤は、制限されるものではないが、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、タルク、酸化アルミニウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、水酸化マグネシウム、セルロース増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムのようなガム、ポリグリコールおよびポリエチレングリコール、無機増粘剤(例えばアモルファスシリカ化合物、天然クレイおよび合成クレイ、ケイ酸リチウムマグネシウムおよびケイ酸マグネシウムアルミニウム)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0119】
幾つかの実施形態においては、該増粘剤は、天然および合成のガムおよびコロイド、例えばセルロース増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムのようなガム、Polyox(商標)として販売されている様々な分子量のポリグリコールおよびポリエチレングリコールから選択される有機増粘剤である。幾つかの実施形態においては、該増粘剤は、アモルファスシリカ化合物、例えば商品名Cab−o−Sil(登録商標)(キャボット・コーポレーションにより製造され、レナペ・ケミカル社(Lenape Chemical)(ニュージャージー州バウンド・ブルック)によって配給される)、Zeodent(登録商標)165(J.M.フーバー社化学事業部,メリーランド州ハバディグレイス 21078)、Sylodent(登録商標)15(W.R.グレース社デヴィソン化学事業部,メリーランド州ボルチモア 21203)として入手可能なコロイダルシリカ化合物、天然および合成のクレイ、ケイ酸リチウムマグネシウム(Laponite)ならびにケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum)から選択される無機増粘剤である。幾つかの実施形態においては、該増粘剤は、本発明の歯磨剤組成物中に0.1質量%から10質量%までの量で存在する。幾つかの実施形態においては、該増粘剤は、0.5質量%から4.0質量%までの量で存在する。
【0120】
タイプ(A)のキシリトールポリマーは、特に増粘剤として使用される。例えば、キシリトールとカルボキシメチルセルロース(遊離酸)の縮合生成物(VII)
【化16】
であって、カルボキシメチルセルロースの酸置換度が約0.1から約3まで、好ましくは約0.5から約2.0まで変動する縮合生成物は、口腔ケア組成物中で理想的な増粘剤となり、かつ
キシリトールとアルギン酸の縮合生成物(VI)
【化17】
は、口腔ケア組成物用の増粘剤として関心が寄せられる。
【0121】
酸化防止剤
幾つかの実施形態においては、本発明による口腔組成物は、酸化防止剤を含む。幾つかの実施形態においては、該酸化防止剤は、天然産生のトコフェロール類およびそれらの誘導体(例えばビタミンE酢酸塩)、ビタミンCおよびその塩および誘導体(例えばアスコルビルパルミチン酸塩、アスコルビルリン酸マグネシウム、アスコルビル酢酸塩)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミチン酸塩)、トコトリエノール類、フラボノイド類、α−ヒドロキシ酸(例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸)およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩、フラボノイド類、クエルセチン、フェノール性ベンジルアミン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、E320)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、E321)、レシチン類、可食性脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸によるエステル化物、カロテノイド類、カロテン類(例えばα−カロテン、β−カロテン、リコピン)およびそれらの誘導体、フィチン酸、ラクトフェリン、EDTA、EGTA、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールおよびそれらの誘導体、フェルラ酸およびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えばZnO、ZnSO
4)、セレンおよびその誘導体(例えばセレンメチオニン)、オルトリン酸塩ならびにモノリン酸のナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩、ならびに植物から単離された成分、抽出物およびその分画(例えば茶、緑茶、藻類、グレープシード、小麦麦芽、カモミール、ローズマリー、オレガノ)ならびにそれらの組み合わせから選択される。
【0122】
特に関心が寄せられる酸化防止剤は、オクタデシル3−(2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラブチルエチリジンビスフェノールおよびテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)である。
【0123】
光安定剤も該口腔ケア組成物中に含まれていてよい。ベンゾトリアゾール系光安定剤の良い一例は、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノールである。
【0124】
特に関心が寄せられるのは、前記キシリトールポリマーを含む口腔ケア組成物であって、界面活性剤、減感剤、キレート化剤、ホワイトニング剤、歯石除去剤、抗細菌剤、研磨材、例えばシリカ、結合剤および増粘剤、洗剤、接着剤、起泡調節剤、pH調節剤、舌触り改善剤、酸化防止剤、光安定剤、甘味料、フレーバリング剤、着色剤、保存剤ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤を含む前記口腔ケア組成物である。
【0125】
前記キシリトールポリマーを含む口腔ケア組成物は、好ましくは、トリクロサン、クロロヘキシジンおよびその塩(例えば、その酢酸塩、グルコン酸塩または塩酸塩)、過酸化物、フェノール類およびそれらの塩、臭化ドミフェン(臭化フェノドデシニウム)、ブロモクロロフェン、亜鉛塩、クロロフィル類、銅塩、グルコン酸銅、銅クロロフィル、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級モノアンモニウム塩、例えば塩化ヤシ脂肪族ベンジルジメチルアンモニウム、またはピリジニウム塩、例えば塩化セチルピリジニウム、ポリリジンおよびそれらの組み合わせ、第四級モノアンモニウム塩、例えば塩化ヤシ脂肪族ベンジルジメチルアンモニウム、またはピリジニウム塩、例えば塩化セチルピリジニウム、ポリリジン、トリクロサン、フッ化第一スズ、アルギニンのホモポリマーおよびアルギニン塩、クロロヘキシジンおよびその塩(例えば、その酢酸塩、グルコン酸塩または塩酸塩)、アルギニンのホモポリマー、アルギニン錯体もしくはそれらの塩ならびに組み合わせからなる群から選択される抗細菌剤と組み合わされるものとする。
【0126】
キシリトールポリマーの評価
キシリトールポリマーを、幾つかの種々の基準を用いて評価する。
【0127】
バイオフィルムの発生の抑制
多菌種唾液バイオフィルム:
96個のペグ付き蓋(Biosurface Technologies、マサチューセッツ州ボーズマン)のヒドロキシアパタイト(HA)被覆された表面を、96ウェルクリアプレートの1ウェル当たり200μlの集められたヒト唾液で37℃で30分間にわたり好気的条件下で被膜処理する。該増殖プレート、つまり96ウェルクリアプレートの各ウェル中に、160μlの接種された脳心臓浸出物(BHI)ブロスを添加する。試験溶液を所望の最終濃度まで添加し、水を加えて200μlの最終容量にする。該増殖プレートにヒドロキシアパタイト被覆されたペグを加え、37℃で24時間にわたり嫌気条件下でインキュベートする。
【0128】
S.ミュータンスのバイオフィルム:
S.ミュータンス25175を10mlのBHI中に接種し、静置状態で37℃において一晩インキュベートする。次いでその培養を、OD0.1になるまで増殖培地としてのJordanの5%スクロース中に接種する。ヒドロキシアパタイト被覆されたペグ付き蓋を、96ウェルクリアプレートの1ウェル当たり200μlの滅菌人工唾液で37℃で30分間にわたり好気的条件下で被膜処理する。該増殖プレート、つまり96ウェルクリアプレートの各ウェル中に、160μlの接種されたJordanの5%スクロースブロスを添加する。試験溶液を所望の最終濃度まで添加し、水を加えて200μlの最終容量にする。該増殖プレートにペグを加え、37℃で24時間にわたり嫌気条件下でインキュベートする。
【0129】
24時間の増殖時間後に、バイオフィルムを含むペグを、200μlの滅菌したBHIまたは滅菌したJordanの5%スクロースを含む96ウェルクリアすすぎプレートへと室温で5分間にわたり移し替える。次いで、該ペグを、200μlのBac−titer−Gloを含む白色の96ウェルプレートへと移し替え、これを室温で10分間にわたり(振盪しながら)インキュベートし、プレートリーダーを使用して発光を読み取る。
【0130】
被縮合物がキシリトール単独の場合と比較した持続性
ヒドロキシアパタイト表面へのポリマーの持続性と、これらのポリマーがストレプトコッカス・ミュータンスの増殖および唾液由来のバイオフィルムに対して有する効果とを評価するための方法
多菌種唾液バイオフィルムについて:
ヒドロキシアパタイト(HA)被覆された表面を、96ウェルクリアプレートの1ウェル当たり200μlの集められたヒト唾液で37℃で30分間にわたり好気的条件下で被膜処理する。新しいヒト唾液をJordanの5%スクロース中にOD0.17で接種する。
【0131】
S.ミュータンスのバイオフィルムについて:
S.ミュータンス(ATCC番号25175)を10mlのBHI中に接種し、静置状態で37℃において一晩インキュベートする。次いでその培養を、OD0.21になるまで増殖培地としてのJordanの5%スクロース中に接種する。ヒドロキシアパタイト被覆されたペグ付き蓋を、96ウェルクリアプレートの1ウェル当たり200μlの滅菌人工唾液で37℃で30分間にわたり好気的条件下で被膜処理する。
【0132】
該ペグ付き蓋を、5%スクロースを有するJordanの培地中で以下に示されるように処理されたものを200μl含む96ウェルクリアプレートに移し替える。このペグ/プレートの集成物を5分間にわたり振盪し、次いで37℃で25分間にわたり好気的条件下でインキュベートする。
【0133】
処理30分後に、2つのペグを、200μlの水を含む96ウェルプレートに移し替え、それを500rpmで10分間にわたりすすぐ。10分後に、該ペグを、200μlのS.ミュータンス培養または唾液を含むプレートに移し替え、24時間にわたりインキュベートする。
【0134】
インキュベート後に、該ペグ付き蓋を200μlの水を含むすすぎプレートへと5分間にわたり移し替え、次いで200μlのBac−titer−Gloを含む白色の96ウェルプレートへと移し替え、これを5分間にわたり振盪し、そして発光を読み取る。
【0135】
確立されたバイオフィルムの破壊を評価する方法
有効成分、実施例のポリマーおよびキレートの組合せ物をスクリーニングして、バイオフィルム破壊についての潜在的な相乗効果を確認する方法
ポリスチレン製ペグを、新たに集められたヒト唾液で37℃で30分間にわたり好気的条件下で被膜処理する。唾液をBHIブロス中に10%唾液の最終濃度で接種する。200μlの接種された培地または未接種培地をそれぞれのウェルに加える。該増殖培地にペグを加え、37℃で嫌気条件下でインキュベートする。
【0136】
24時間の時点で該ペグを取り出し、200μlの滅菌BHIを含む新しいプレートへと移し替える。そして37℃で更に24時間にわたり嫌気条件下でインキュベートする。
【0137】
48時間の増殖時間後に、バイオフィルムを含むペグを、200μlのBHIを含む96ウェルすすぎプレートへと移し替える。室温で5分間にわたりすすいだ後で、該ペグを、有効成分、キレートおよびポリマーの組合せ物を含む処理プレートへと移し替える。これに引き続き5分間の処理(500rpmで振盪)を行う。処理されたペグを、200μlのBac−titer−Glo試薬を含む白色の96ウェルプレートへと移し替え、これを室温で5分間にわたり(振盪しながら)インキュベートし、プレートリーダーで発光を読み取る。
【0138】
細菌性の酸産生の抑止
pH指示薬およびグルコースを含む培地中でのS.ミュータンスの酸産生を観察する方法。キシリトールと実施例のポリマーがどのように酸産生に影響を及ぼすかを観察する。S.ミュータンス(ATCC番号25175)の培養を、10mLの液体ブロス(BHI)中で37℃において静置状態で一晩増殖させる。この培養を、新しいブロモクレゾールパープル(BCP)ブロス中に10%で接種する。
【0139】
10%のpH調整された試験溶液20μLを、96ウェルクリアプレートの各ウェルへと加える。非処理のコントロールは、20μlの水を加えた。それぞれの実験ウェルに、180の接種されたBCPブロスを加える。非接種のコントロールには、20μlの水および20μlの濾過滅菌された一晩培養ブロスを加える。
【0140】
前記プレートを、500rpmで5分間にわたり振盪し、次いで吸光度を588nm(pH6.8での吸収極大−紫色)と427nm(pH5.2での吸収極大−黄色)の両方で読み取る。両方の波長を、1時間毎に数時間にわたって、蒸発が問題になる前まで測定する。該プレートを読取り前に10秒間にわたり振盪する。
【0141】
口腔酵素によるキシリトールポリマーの酵素分解の測定方法
ポリマーの酵素分解を測定する方法は、シグマ社品質管理試験手順(Sigma Quality Control Test Procedure):エステラーゼの酵素アッセイ(Enzymatic Assay of Esterase)によって測定される。しかしながら、このアッセイは、酪酸エチル溶液を試験ポリマーの溶液に置き換える。pH変化を、エステラーゼ活性およびポリマー分解の指標として経時的にモニタリングする。
【0142】
実施例1
キシリトール−クエン酸ポリマーの製造のための実験手順
15.2グラムのキシリトールと19.2グラムのクエン酸の混合物を、短行程回転蒸留装置に取り付けられた500mlの一ツ口フラスコにおいて50torrで真空下に120℃で加熱する。得られた溶融物を6時間にわたり加熱し、そして3.5グラムの水が回収される。室温に冷却した際に、31グラムの無色の固体が得られる。該ポリマーを、重炭酸ナトリウムを添加して脱イオン水中に溶解させることで、pH7の10%溶液が得られる。
【0143】
実施例2
キシリトール−アルギン酸ポリマーの製造のための実験手順
10グラムのキシリトールと11.6グラムのアルギン酸の混合物を、短行程回転蒸留装置に取り付けられた250mlの一ツ口フラスコにおいて50torrで真空下に140℃で加熱する。得られた溶融物を5時間にわたり加熱し、そして1.1グラムの水が回収される。周囲温度にまで冷やしたときに、得られた固体を100mLの脱イオン水と混合し、遠心分離する。上清を脱イオン水で透析(3500の分子量カットオフの膜)し、凍結乾燥することで、2.24グラムのオフホワイト色の粉末が得られる。該ポリマーを、BHI培地およびJordanの培地中に2Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して溶解させることで、pH7の2%溶液が得られる。
【0144】
実施例3
キシリトール−カルボキシメチルセルロースポリマーの製造のための実験手順
500mlの三ツ口フラスコ中で、100gのキシリトールを窒素雰囲気下で120℃において溶融させる。得られた溶融キシリトールへと、2.08グラムのカルボキシメチルセルロースを、撹拌可能な反応溶融物に保たれる速度で170℃に昇温しながら添加する。該反応溶融物を、反応水の除去を容易にするために窒素スウィープしつつ撹拌する。7時間後に、該反応混合物を周囲温度に冷却し、そして反応物を200mlの脱イオン水中に溶解させる。得られた溶液を脱イオン水で透析(3500の分子量カットオフの膜)し、凍結乾燥することで、2.4グラムのオフホワイト色の粉末が得られる。該ポリマーを、BHI培地およびJordanの培地中に2Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して溶解させることで、pH7の2%溶液が得られる。
【0145】
実施例4
キシリトール−EDTAポリマーの製造のための実験手順
50mlの三ツ口フラスコ中で、6.09gのキシリトールを窒素雰囲気下で120℃において溶融させる。得られたキシリトール溶融物に、2.56グラムのエチレンジアミン四酢酸二無水物を添加する。該二無水物の添加が完了した後に、反応温度を130℃に高める。該反応溶融物を、窒素雰囲気下で12時間にわたり撹拌し、次いで周囲温度に冷却し、そして50mlの脱イオン水中に溶解させる。得られた溶液を脱イオン水で透析(3500の分子量カットオフの膜)し、凍結乾燥することで、3.95グラムのオフホワイト色の粉末が得られる。該ポリマーを、2Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して脱イオン水中に溶解させることで、pH7の10%溶液が得られる。
【0146】
実施例5
ビス(p−ニトロフェニル)スクシネートの製造のための実験手順
オーバーヘッド撹拌機、滴加漏斗および温度計を備えた1Lの三ツ口フラスコ中で、40.0g(0.288モル)のp−ニトロフェノールを500mLのアセトン中に窒素雰囲気下で溶解させる。得られた明黄色の溶液に29.1g(0.288モル)のトリエチルアミンを添加する。得られた黄色の溶液を5℃に冷却し、そして21.2gの二塩化スクシノイルを100mLのアセトン中に溶かした溶液を1.5時間の期間にわたり滴加し、その添加の間に発熱が示される。その添加が完了したら、赤褐色の懸濁液を5℃で更に1時間にわたり撹拌し、次いで周囲温度に加温させ、一晩撹拌する。得られた紫褐色の懸濁液に、1gの二塩化スクシノイルを添加し、周囲温度で更に30分間にわたり撹拌する。500mLの脱イオン水を添加し、周囲温度で15分間にわたり撹拌する。生成物を濾過により単離し、その固体を水で洗浄し、25水銀柱インチ/55℃で真空炉内で乾燥させることで、45gの暗赤褐色の粉末が得られる。該生成物を酢酸エチルから再結晶させることにより精製することで、42gの明褐色の粉末が得られる。
【0147】
実施例6
ビス(L−アルギニン)キシリトールジエステルの製造のための実験手順
ディーン・スタークトラップ、オーバーヘッド撹拌機および温度計を備えた2Lの四ツ口フラスコにおいて、17.4g(0.1モル)のL−アルギニン、7.6g(0.05モル)のキシリトール、40g(0.21モル)のp−トルエンスルホン酸一水和物および1Lのトルエンをアルゴン雰囲気下で添加する。得られた混合物を110℃で16時間にわたり加熱し、5.5mLの水が回収される。該反応混合物を冷却することで、黄色の油状物が分離し、トルエン層をデカンテーションする。その黄色の油状物をイソプロパノール中に70℃で溶解させ、4℃に冷却し、イソプロパノールをデカンテーションする。イソプロパノール処理を更に2回繰り返す。生成物を回転蒸発器で乾燥させることで、50gの白色の粉末が得られる。
【0148】
実施例7
アルギニン−キシリトール−コハク酸ポリマーの製造のための実験手順
50mlの丸底フラスコにおいて、14g(12.2ミリモル)の、ビス(L−アルギニン)キシリトールジエステルのテトラ−p−トルエンスルホン酸塩、4.4g(12.2ミリモル)のビス(p−ニトロフェニル)スクシネートおよび14gのジメチルスルホキシドを窒素雰囲気下で添加する。その混合物をボルテックスミキサーで混合することで、褐色の溶液が形成され、次いでそれを75℃で加熱する。得られた反応混合物に、2.7g(26.8ミリモル)のトリエチルアミンを滴加する。得られた黄色の溶液を窒素下で48時間にわたり75℃で加熱し、次いで周囲温度に冷却する。得られた反応混合物に3mLの酢酸エチルを添加し、撹拌し、そして上清をデカンテーションする。ポリマーをメタノール中に溶解させ、酢酸エチル中に沈殿させ、上清をデカンテーションする。そのメタノール/酢酸エチルでの沈殿手順を更に2回繰り返し、その生成物を回転蒸発器で乾燥させることで、7.4gの黄褐色の粉末が得られる。該ポリマーをpH7の緩衝液で3500の分子量カットオフの膜を使用した透析によって精製し、凍結乾燥することで、白色の粉末が得られる。該ポリマーの10%水溶液を調製し、pHを7に調整する。
【0149】
実施例8
アルギニン−キシリトール−EDTAポリマーの製造のための実験手順
オーバーヘッド撹拌機および熱電対を備えた500mlの三ツ口フラスコにおいて、5.75g(5ミリモル)の、ビス(L−アルギニン)キシリトールジエステルのテトラ−p−トルエンスルホン酸塩を35mlの無水ジメチルホルムアミド中にアルゴン雰囲気下で溶解させる。得られた溶液に、1.28グラム(5ミリモル)のエチレンジアミン四酢酸二無水物に続き、5mlの無水トリエチルアミンを連続的に添加する。得られた混合物を、50℃で6時間にわたり加熱し、次いで周囲温度に冷却する。揮発物を減圧下で10torrで60℃において1時間にわたり除去する。濃縮された反応混合物を、100mlの脱イオン水中に溶解させる。得られた溶液を脱イオン水で透析(3500の分子量カットオフの膜)し、凍結乾燥することで、2.3グラムのオフホワイト色の粉末が得られる。該ポリマーを、2Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して脱イオン水中に溶解させることで、pH7の10%溶液が得られる。
【0150】
実施例9
アルギニン−キシリトール−クエン酸ポリマーの製造のための実験手順
オーバーヘッド撹拌機、窒素ガス入口および蒸留取出口を備えた250mlの三ツ口フラスコにおいて、8.82g(10ミリモル)の、ビス(L−アルギニン)キシリトールジエステルの二塩酸ジ−p−トルエンスルホン酸塩を70mlの無水ジメチルホルムアミド中に窒素スウィープ下で溶解させる。得られた溶液に、1.92グラム(10ミリモル)の無水クエン酸を添加する。クエン酸が溶解した後に、10mlの無水トリエチルアミンを添加することで、白色の沈殿物が生じ、それを溶液から分離する。得られた混合物を、形成したときには蒸留物を除去しながら130℃で加熱する。6時間後に、反応混合物は澄明な溶液であり、それを周囲温度に冷却する。揮発物を減圧下で12torrで60℃において0.5時間にわたり、次いで0.1torrで120℃において1時間にわたり除去する。濃縮された反応混合物を、250mlの脱イオン水中に溶解させる。得られた溶液の140ml分を脱イオン水で透析(3500の分子量カットオフの膜)し、凍結乾燥することで、0.43グラムのベージュ色の粉末が得られる。該ポリマーを、2Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して脱イオン水中に溶解させることで、pH7の10%溶液が得られる。
【0151】
実施例10
アルギニン−キシリトール−クエン酸ポリマー(ランダム)の製造のための実験手順
オーバーヘッド撹拌機、窒素ガス入口および蒸留取出口を備えた250mlの三ツ口フラスコにおいて、1.52グラム(10ミリモル)のキシリトール、2.11グラム(10ミリモル)のL−アルギニン塩酸塩および1.92グラム(10ミリモル)の無水クエン酸の混合物を130℃で窒素スウィープ下で加熱する。形成した場合には反応水を除去する。130℃で3時間後に、反応温度を140℃にまで高め、反応混合物の圧力を更に1.5時間にわたり50torrに下げる。反応溶融物をアルゴン下で冷却し、そして50mlの脱イオン水中に溶解させる。その水溶液を濾過(ミディアムサイズのガラスフリット)し、次いで脱イオン水で透析(3500の分子量カットオフの膜)し、凍結乾燥することで、1.28グラムのオフホワイト色の粉末が得られる。該ポリマーを、2Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して脱イオン水中に溶解させることで、pH7の10%溶液が得られる。
【0152】
適用例
バイオフィルムの形成の抑制
ポリマーを、上述のバイオフィルム抑制法を使用してS.ミュータンス由来のバイオフィルムおよび多菌種唾液由来のバイオフィルムの両者について評価する。
【0153】
試験されたポリマーの例は、同様の濃度での縮合物の組み合わせであるコントロールと同様かまたはそれより良好に機能することが観察された。この観察は、S.ミュータンスのバイオフィルムおよび唾液バイオフィルムの両者の抑制について一貫している(第1表および第2表を参照のこと)。
【0154】
前記キシリトール−クエン酸ポリマーの組成は1:1のモル比であり、形成されたポリマーの全質量に対して44質量%のキシリトールおよび56質量%のクエン酸である。
【0155】
前記キシリトール−EDTAポリマーの組成は1:1のモル比であり、形成されたポリマーの全質量に対して37質量%のキシリトールおよび63質量%のEDTAである。
【0156】
前記キシリトール、アルギニンおよびコハク酸のポリマーの組成は、1:2:1のキシリトール:アルギニン:コハク酸のモル比であり、形成されたポリマーの全質量に対して25質量%のキシリトール、56質量%のアルギニンおよび19質量%のコハク酸である。
【0157】
キシリトール−コハク酸ポリマーの組成は、1:1のキシリトール:コハク酸のモル比であり、56質量%のキシリトールおよび44質量%のコハク酸である。
【0158】
第1表:ストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルムの発生の抑制。値は、非処理のコントロールからの百分率での減少率として表される。
【0159】
【表1】
【0160】
第2表:多菌種唾液バイオフィルムの発生の抑制。値は、非処理のコントロールからの百分率での減少率として表される。
【0161】
【表2】
【0162】
被縮合物がキシリトール単独の場合と比較した持続性
結果:ポリマーは、上述のバイオフィルム抑制法についての持続性を使用してS.ミュータンス由来のバイオフィルムおよび多菌種唾液由来のバイオフィルムの両者について評価する。
【0163】
0.7%の塩化セチルピリジニウムをポジティブコントロールとして使用して、モデルにおけるすすぎ後の活性の保持が裏付けられ、持続性があるとみなされる。
【0164】
キシリトール−コハク酸−アルギニンポリマーは、同等の濃度の個々の成分と比較した場合に持続性を示す。
【0165】
キシリトール−EDTAは、幾らかの持続性を示すが、コントロールであるEDTAもこのモデルにおいては持続性がある。それらの観察は、S.ミュータンスのバイオフィルムおよび唾液バイオフィルムの両者の抑制について一貫している(第3表および第4表を参照のこと)。
【0166】
第3表:前処理されたヒドロキシルアパタイト表面での24時間後の多菌種唾液由来のバイオフィルム増殖
【表3】
【0167】
第4表:前処理されたヒドロキシアパタイト表面での24時間後のストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム増殖
【表4】
【0168】
定着したバイオフィルムの破壊:
ポリマーを、前記のバイオフィルム破壊モデルを使用して評価する。
【0169】
実施例のポリマー(キシリトール−EDTAポリマーおよびキシリトール−アルギニン−コハク酸ポリマー)を、実施例の有効成分(ε−ポリリジンおよびクロロヘキシジン)ならびにキレート化剤(CaEDTA)と組み合わせる。
【0170】
特定の組み合わせにより、コントロールの組み合わせよりも大きな改善が得られた(第5表を参照のこと)。
【0171】
1000ppmのε−ポリリジンはそれ自身、バイオフィルムを破壊する。ε−ポリリジンと1%のアルギニン−キシリトール−コハク酸ポリマーの組み合わせ(CaEDTAを有する場合か有さない場合)により大きな利益が得られる(第5表を参照のこと)。
【0172】
1%のキシリトール−EDTAポリマーおよびクロロヘキシジンの組み合わせにより、該ポリマー単独またはクロロヘキシジン単独よりも大きな活性の改善が得られる(第5表)。
【0173】
第5表:5分間の処理後の48時間の唾液バイオフィルムの破壊
【表5】
【0174】
細菌性の酸産生の阻害
コントロール:非接種のコントロールは、予想していたより非常に僅かな変化しか示さなかった。非処理のコントロールは、酸産生を裏付ける大きな変化を示した。キシリトールのコントロールは、OD588を用量に応じて最小限の減少を示し、またOD427では最小限の増加を示しており、それは、試験した全ての濃度での酸の阻害を示している。L−アルギニンのコントロールは、非処理の場合と同様の結果を示し、酸阻害効果を示さない。クエン酸、コハク酸およびEDTAのコントロールは、酸阻害効果を裏付ける変化を全く示さないか、または殆ど示さなかった。この実験において、ポリマー:アルギニン−キシリトール−EDTAポリマー、アルギニン−キシリトール−クエン酸ポリマーでは殆どpHの変化は観察されない(またはキシリトールのコントロールと同様の変化が観察される)。
【0175】
第6表:OD588での変化値
【表6】
【0176】
口腔酵素によるキシリトールポリマーの酵素分解の測定方法
実施例のポリマーの分解は、ブタエステラーゼを使用して実施する。エステラーゼ活性は、溶液のpHを低下させる。pHは、アッセイの開始と終わり(90分)にモニタリングされる(第7表を参照のこと)。キシリトール−CMCポリマーおよびキシリトール−コハク酸ポリマーの両者とも、エステラーゼによって分解された。
【0177】
第7表:
【表7】
【0178】
本発明のキシリトールポリマーを含有する口腔ケア製剤
マウスウォッシュ
【表8】
【0179】
マウスウォッシュ
【表9】
【0180】
過酸化物マウスウォッシュ
【表10】
【0181】
練り歯磨き製剤
【表11】
【0182】
練り歯磨き製剤
【表12】
【0183】
口内錠製剤
【表13】
【0184】
口内錠製剤
【表14】
【0185】
口内錠製剤
【表15】
【0186】
チューインガム
【表16】